第一回~第三回 「西日本高速道路サービス・ホールディングス株式会社 様」

西日本高速道路サービス・ホールディングス(株)取締役平山博登様と柏木吉基講師の対談(2014.6.12)
西日本高速道路サービス・ホールディングス様の中堅社員向けに「明日から実務で使えるデー
タ分析研修」を行いました。研修後実施した
タ分析研修」を行いました。研修後実施した平山取締役(当時)との対談の中で、経営の向かう
実施した平山取締役(当時)との対談の中で、経営の向かう
方向、そこ
方向、そこでの実務や人材育成の課題についてお伺いしました。また、その課題対応の一つとし
ての研修への期待値や背景をお伺いしました。
この対談の全体を、3
この対談の全体を、3 回に分けてご紹介いたします。
【第一回】
●「西日本高速道路サービス・ホールディングス」はどのよう
●「西日本高速道路サービス・ホールディングス」はどのような会社なのですか?
西日本高速道路サービス・ホールディングス」はどのような会社なのですか?
平山取締役(以下敬称略)
平山取締役(以下敬称略) 日本道路公団が平成 17 年に分割民営化されて、東日本、中日本、西
日本という 3 つの地域に分かれ、それぞれが高速道路を建設、管理する会社と、サービスエリア
(SA)
・パーキングエリア(PA)を管理・運営する会社に分かれました。西日本高速道路サービ
ス・ホールディングスは、西日本地域の SA・PA を管理・運営する会社です。民営化されて約 9
年が経ち、多くの方々に、
「高速道路の SA・PA はちょっと変わって来たな」と思って頂いている
のではないでしょうか。
柏木 そうですね。休みの日に行くと、車が止められないですよ。(笑)
平山 ありがたいことです。民営化前の考え方は、道路区域の中の建物でお客様が休憩するだけ
の施設ですから、華美にせずに、必要な機能を持たせればよいというものでした。民営化の時に、
休憩機能が主体だった SA・PA をお客様に支持されるものにしていこうとなったのです。それで
今では東日本、中日本、西日本の各社が、いろいろな独自の取り組みをしています。
西日本の SA・PA は、土地が広くなく、大規模なことはできないため、PA にハイウェイコン
ビニを導入しました。ハイウェイコンビニは、飲食が可能なコンビニで、さらにそこで必要なお
土産物を売ってもらうものです。今まで午後 8 時位になったら閉まっていた PA を 24 時間営業と
し、ATM を設置しました。今までになかったサービスです。それが西日本には約四十箇所ありま
す。
他にも例えば一度仕事に出たらなかなか自宅に帰ることのできないトラックの運転手さん達に
提供するサービスとして、シャワーステーションを作りました。
また、近年はペットを一緒に連れて回られるお客様が結構いらっしゃいます。ペットも車の移
動では凄いストレスがかかるので、SA にドッグランを整備しています。結構広いスペースが必要
ですが、休憩施設の園地を有効活用してドッグランを設けていけます。トイレの機能と商業施設
の機能と、園地でゆったりして頂くのが基本的な機能です。
あとは、カフェ店舗です。例えば、スターバックスコーヒーなどのカフェ専門店を導入してい
ます。広島県の宮島サービスエリアのスターバックスコーヒーの店舗は、県内で 2 店舗目の店舗
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で、お客様にも支持され喜んでもらえました。儲けるというよりもお客様が欲しいと思うものを
提供していくということです。そういったことが民営化してスピーディにできるようになってき
ました。
我々の営業エリアは、滋賀県の黒丸 PA から沖縄の伊芸 SA 及び中城 PA までを担当しており、
全体のエリア数でいうと 287 エリア、SA が 92 エリア、PA が 90 エリア、自動販売機のみを置い
て無人 PA がその他の 105 エリアです。皆様、SA・PA って何の意味で分けられているのかとい
う疑問をお持ちではないかと思います。昔の基準でいうと、SA には給油所を設置し、レストラン、
フードコート、ショッピングコーナーがあるフル装備のエリアで、50km に一箇所位を目安に設
置しています。PA は、その SA の間に配置して給油所が無い小規模なもので、15km 毎に設置し
ています。
我々は、まず接客が良くなれば商品が売れると考え、接客コンテストを開催して店舗スタッフ
の意識を改革するなど、売上をあげるために店舗をどのように作ったらいいのかをテナント様と
も意見交換しながら進めています。
柏木 では、研修に御参加頂いた御社の店舗支援課の方というのは、まさに会社のコア業務を推
進する方、そのものということですね。
平山 はい。そういうことをやり始めたということですね。それが実現できているかというと、
まだできていない状況です。
柏木 ありがとうございます。凄く面白い取組みですね
●ビジネス拡大の切り札として数字(データ)を
ビジネス拡大の切り札として数字(データ)をどう
の切り札として数字(データ)をどう活か
どう活かしていくのか
活かしていくのか
平山 我々は、今迄のデータの取扱いについては、システムで売上高が見られればいいという状
況でした。しかし、それではお客様のニーズをタイムリーに把握できない。そこで、平成 24 年 4
月から TOMS(トムス)というシステムの導入を始めたのです。テナント様と我々がお互い数字
を見られるようにしようというのが TOMS(トムス)システム開発の端緒です。旧来のシステム
は、一週間後にデータが出てくるものを、遅くても翌日には数字を見られるようなシステム作り
から始まりました。必要と考える両輪のうちの片輪のハードはそれで動き始めました。
ただハードは変わっても、出て来た数字をどう料理するかという、もう片輪が大切です。数字
を扱えて、テナント様と同じベースで話ができることが重要です。目標としている方向は同じで
すから、テナント様も売上高が上がって欲しい、我々も売上高を上げたい。お客様の満足が得ら
れれば、売上に繋がるという構造になっていますので、そのためには数字を分析しなければいけ
ないと。どちらかというと今までは、やってみたら成功したという成功体験を基にものを語る傾
向があった訳です。そうではなくて、お互い同じ土俵で数字を見て、動きを分析して、方向が見
えたらテナント様と一緒に前に向かっていこうと捉え始めたのです。独断でやってもお互いモヤ
モヤが残ります。テナント様としてはいろんな販促アイデアを考えながらも、やってこうとして
いる訳ですね。ただそれは外れることもある。お互いがそれを両方で見ながら、話しながら、納
得して目指す方向を一つにすることが重要です。例えば我々の遊・悠・West という雑誌の中でい
ろいろなイベント企画を広報できる訳です。するとたまたまそのエリアに行ったらイベントがあ
ったではなくて、そのイベントがいつあるからお客様に来てくださいとした方が勿論良い結果に
繋がります。そういったことを一緒にやりながら、売上を上げていこうという風に使っていきた
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い。ハードに対するもう片輪として、我々は社員をそういう風に育てなければいけない。我々が
分析をして、テナント様と一緒の言葉を、一緒の理解をして、一緒の方向を向かないと、なかな
か難しい。そのためには数字で語れる店舗支援というのをやっていかなければいけないというこ
とで、研修が良いかと話をした時に、統計学に関する本を何冊か購入し、その中で最も分かり易
い内容の本が柏木さんの書かれた『「それ、根拠はあるの?」と言わせない データ・統計分析が
できる本」
』でした。そのことがきっかけで、柏木さんに研修をお願いした次第です。
柏木 ありがとうございます。
(次号に続く)
【第二回】
●データ分析研修を業務の価値向上に活かす発想とは
●データ分析研修を業務の価値向上に活かす発想とは
平山 Excel をマスターするために研修をやらないといけないねと店舗支援課の担当者と話した
のです。そうしたら、「Excel ですか?Excel なんて皆知っていますよ!」と返ってきました。そ
こで私は、
「Excel 関数については、若い人は理解している部分もある。そのような人達には背中
を押してあげればいい。でも数字に表れない成功体験に縛られている人も結構いる。そこは数字
で議論できるようにしていこう」と思いました。上の人達についても、若者が数字で議論するの
を頭ごなしにしないような研修をしようと。中間管理者は、中間管理者で研修しなければいけな
い。各人の発想は、いろいろ出てくる訳ですから、基本ベースのスキルを与えておけば、数字の
見方に対する発想が出て来る。それがいい回転をしていくのが一番望ましいと思っています。
柏木 よくわかります。
平山 私が日本道路公団にいた時に、高速道路を建設して本当に地域の人口が増えるのかどうか
を 10 年スパンで見てみようとインター周辺の 5km、10km 圏の開通年度と過去の人口の増減を
調べたのです。東北では、仙台とか、盛岡に人が集まっているのですが、山形やその他の所は、
地域のインターチェンジの周辺から人が減っているのです。高速道路ができれば地域が賑わうと
は限らないというデータが出て来たのです。それが良い、悪いではなく、データから事実を見る
ことの重要性を学びました。そういう経験があったので、我々が皆そういう見方ができる勉強を
しようとなったのです。
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柏木 仰るように、若い人達は Excel を使える人は多いと思いますが、より本質を見るには、そ
の使い方だけではなく、数字の見方とか、裏にある要因を考えるプロセスも凄く大事ですね。
平山 そうです。Excel はツールな訳ですから、データの考え方、見方というのを丁寧に書いて
頂いたのが、この 『「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析が出来る本』だと思
っています。3 冊見た中で凄くいいなと思ったのは、まさしくその点です。これをネタに研修を
と思ったら、著者の方が自ら来て頂いて大変ありがたかったです。
柏木 私の勤務する職場も同じです。今迄はこういうやり方をしていたけれど、数字で見たらこ
っちの方が良かったということがわかった。じゃ今迄ここで垂れ流していたお金はどうなるんだ、
無駄だったというのが実はいっぱいあるんですね。今お話聞いていて、私が思ったのは、もし御
社で使っている典型的なデータを先に頂いていれば、それをベースに皆が普段見ているこの数字
を使って演習を行うことができ、効果はさらに何倍にもなるかも知れないと。
平山 SA・PA のコーナー別売上とその経年データがあって、それを見た時にどうかという風に、
してやるとかですね。
そして、実際に分析するにあたって、仮説が立てられないというのは、多いですね。
柏木 数字見ていても、仮説が無いと何もでてこない、浮かんでこないのです。仮説アプローチ
は重要です。
平山 そうですね。Excel ができればいいという話ではないのです。私がテレビで印象に残った
のが、国鉄から JR になった頃の JR の話です。新幹線の中でどうやったらもっとコーヒーが売れ
るかというのを一生懸命女性の管理者の方が考えていて、売れる時間帯と、列車の席との関係を
数字で調べているのを見たのです。そうしたら一番売れているのは、駅を出発した後の喫煙車両
というのがわかり、ワゴンサービスだと間に合わないので、バスケットに温かいコーヒーを入れ
て、走って売りに行ったという話を聞いて、あーこれだよなと思って。要は数字って意味を持っ
て見たらそういうのが出て来るということを皆に体験させたいのです。こういうことを店でやっ
て、数字で結果に現れたということになると、我々の社員のやりがいにもなりますから。あるい
はテナント様との信頼関係に関して、我々が好き勝手なことを言って失敗して知らぬ振りをした
ら、もう信頼関係が無くなります。そこは一緒の方向を向いて親身になってしっかりやって行か
ないと、売上は伸びていきません。
柏木 そうですね。そういうときには、テナントの方というのは理系のバリバリのデータ分析者
ではないでしょうから、そこで適切なコミュニケーションを取るというのは非常に大事で、その
時に小難しいデータ分析の結果をいくら綺麗なものを見せても、スーっと引かれちゃいますよね。
ですからベーシックなところで、だれが見てもわかる位のレベルでやらないと、いくらいい分析
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をしても理解してもらえませんね。
平山 だから数字をもってどう語れるか、理解して頂けるか、ということが重要です。
柏木 そうですね。仰るとおりだと思います。
平山 先程言った両輪でハードとソフト、いわゆる研修という部分と、ネットワークを使ったい
ろいろな仕掛けをやらなければいけません。店舗支援と言いましたが、相手方の懐に飛び込まな
いと、支援なんておこがましいのですね。支援される側の論理と、支援する側の論理がわかって
いないと、支援する方も相手の気持ちがわからないですね。そこをきっちりとやって、いわゆる
翻訳ができる人にしないと、支援される側の人達は、そんなこと求めていないとか、言っている
意味がわからないとかになると、これまた大変です。その時にわかる言葉に変換しなければなら
ない。これを実現するには、社内的にも切り開いて行かなければならない部分がいっぱいありま
す。
柏木 何がネックですか。技術的なものなのか、人の心理的なものなのか、制度的なものなのか、
いろいろあると思うのですけれど。
平山 多分、中堅層以下で、
「先輩がこう言っている」ということに盲目的に従うことよりも、
「先
輩、数字こうですよ」と言える環境が必要と思っています。そのためには時間がかかりますが、
そういった仕掛けをちゃんと作っておいてあげて、やれるようにしないといけないと思います。
柏木 そうですね。若い人も自分で考えたことを提案できて、それが実現できるようになってい
くと、自信にもなるし、仕事をしていても面白いなと思えるようになりますね。
平山 そうです。仕事が面白くなると、もっと違う切り口が無いかってどんどん自分で考えるよ
うになります。やっぱりそこまで持っていきたいですね。
柏木 十分、背景がわかりましたし、どういうことを今後やって行こうとしているかよくわかり
ました。
平山 店舗支援課という形になって未だ 1 年です。それまでは、管理・運営主体でした。勿論、
高速道路上ですから、安心・安全が重要ですので、GS のガス欠だとか、給油のキャップを閉め忘
れたとか、食中毒が起こってはいけません。ですから安心・安全の部分は今後も引き続き徹底し
てやらないといけない。どちらかというと管理運営の方が主な業務だったんですね。データを使
って分析してっていう考えがあまりなかったというところが正直なところで、新しいシステムを
入れて、初めてデータに触れて、それを使っていろいろ活動していこうとしています。
柏木 そういう意味では、可能性、ポテンシャルは、いっぱいありますね。
平山 まだまだ掘るところはいっぱいあります。
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【第三回】
●社内人材の育成にどう生かすのか
柏木 若い人のモチベーションはどうですか。そういうことを身に着けて自分からやりたいと思
っているのか、また何かこんな仕事増えちゃったのとか、人にもよると思うのでしょうけれども。
平山 全体的にあのシステムを入れて、数字について研修をさせていると、半々かなと思います。
そこで成功体験とかを含めて、KGI(Key Goal Indicator)とか KPI(Key Performance Indicator)
を設定させてやらせていくと、自分のスキルになり、その結果横展開ができたり、後輩にも伝え
られますので、それは面白いという人がいます。以前の旧態依然の考えの人もどうしてもいます。
柏木 それはいると思います。どこの会社でもそうだと思います。
平山 面白いと言う人が多くなって来たなと、見て気付くことが多くなっていているので、数字
に慣れてきている人が多くなって来たかなとは思います。
柏木 いきなりシステムを導入して、やり方をあるとき教えたから、皆ハッピーになって変わる
かというのは有り得ないですね。恐らく時間はかかるのでしょうけれど、本当にベーシックなと
ころを皆がボトムアップで上げていけるようになったら、少しずつ成功体験を積んで行くことで
変わって行くのだろうと思います。結果としてそれで売上が上がって、お客様が喜ぶというので
あったら尚更良いですね。
●今後の事業ポテンシャルとデータの活躍
●今後の事業ポテンシャルとデータの活躍
柏木 西日本の SA・PA は先進的、先駆的なのですか。
平山 東日本の SA・PA や中日本の SA・PA と比べれば西日本としてはまだ寂しい感があります。
柏木 それは何故ですか。
平山 NEXCO 東日本や中日本はメディアもうまく使っていますね。
「めちゃいけサービスエリア」
とか。メディアを使えるのは、やはり関東周辺なのですね。NEXCO 東日本も中日本も関東に SA・
PA をもっていますから、これは強いですよね。
柏木 なるほど。逆にそういうことをやっているということをお客様にアピールすればする程、
集客には繋がるのですか。街のデパートだったら、宣伝すればお休みの日にたくさんお客様が来
ると思いますが、SA とか PA は高速道路に乗らない限り行けないですよね。そこに行くために行
く人ってそれほど多くないと思いますが。
平山 多くないですね。SA・PA はもともと自動車専用道で道路区域でしたから、人がみだりに
立ち入ってはいけない区域でした。それが、民営化して道路区域を外れましたので、周りの住家
の方々が、SA・PA に食べに来ていただけるようになりました。例えば、広島県の小谷サービス
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エリアでは、アンデルセンっていうパン屋さん、高木ベーカリー、が入っています。サービスエ
リア裏から入れるウェルカムゲートというものを作り始めて、お客様が高速道路外からも入れる
ようになりました。
地域を支える社会インフラにもなってきているという状況があるのです。
柏木 そういう意味では、発想次第で、どんどん事業が拡大する可能性があるということですね。
平山 あります。
柏木 なるほど。では益々知恵を絞って、どうやって利益を出すのかは、数字にもっと活躍の場
はありそうですね。
平山 ええ。今でも今後の展開についていろいろな議論はしています。例えば中山間地であれば、
近隣の住民へのデリバリーとか考えられると思います。高速道路外から来て頂けるのであれば、
外から来て頂ける人用に何かできる。それは逆に言えば地域を支えることになるということです。
こういった新たな取り組みにも、ますますデータに基づいた発想が必要になると感じています。
柏木 お時間も来ました。貴重なお時間、どうもありがとうございました。
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