レガシー家電製品の ネットワーク制御に関する研究 静岡大学 情報学部 情報科学科 峰野 博史 ([email protected]) 1 出展「平成17年度 情報通信白書,ブロードバンド契約数等の推移(2005年4月)」 研究の背景 z ~ インターネット利用人口 ~ 技術進展と常時接続・定額制によるネット環境の整備 z z インターネット利用人口約8000万人(国民の約62%) ブロードバンド接続約2000万,モバイルインターネット接続約7500万 (6,246) (3,457) (750) 22 86 (6,973) (7,515) 1,495 1,866 (5,193) 387 943 ※ 平成16年度は12月末の数値, ブロードバンド:FTTH,DSL,Cable,無線(FWA)の合計 2 ホームネットワークへの期待 z 情報を得るために利用したい z z 問題解決のために利用したい z z z 多種多様な趣味嗜好に合った情報収集 治安,防犯といった,生活者に高まる不安を解消 自身の健康状態に対する不安解消 日常生活のニーズを満たすため利用したい z 効率化とこだわり(食洗機,薄型TV,ホームシアター) z 臨場感のあるコミュニケーション(ビデオチャット) ※ NRI 生活者1万人アンケート調査(2003年) ※ 総務省 デジタル情報家電のネットワーク化に関する調査研究会 報告書(H16年8月)など,より 3 ホームネットワーク構築の課題 z デジタル通信技術を組み込んだ高機能な情報家電 z TV,HDDレコーダ等(AV機器),洗濯機,掃除機等(白物家電) but z 情報家電への買い替えはホームネットワーク構築に際し ての一番のネック 便利になるのはいいけれど お金が掛かるのはねぇ… レガシー家電 情報家電 レガシー家電もネットワーク 越しに制御できれば... Legacy: 長年使われいろいろな事情で完全に捨てることのできないもの 4 HAT: Home Appliance Translator ① PLCとZigBeeを併用したNo New Wireでの高信頼通信 ② SCPを用いたレガシー家電間通信 ③ レガシー家電の状態把握と制御反映 PLCやZigBeeを使った No New Wire での高信頼通信 レガシー家電のコンセント にHATを接続 通知 制御 HAT Home Network! タップ PLC: Power Line Communication 命令 状態把握 レガシー家電 家電の状態を把握しネットワークへ通知, ネットワークから命令を受けて家電を制御 レガシー家電の高信頼なネットワーク制御を可能に! 5 レガシー家電制御に関する研究 z u-コンセント(NTTネオメイト(東京工科大学,2003~)) z z z 家電製品の消費電気特性(電流値,電流波形など)を監視し,ASP サーバ上の蓄積データと比較することで,どのメーカのどの製品が, どのu-コンセントに接続かを判別 電源ON/OFF(赤外線送信機設置でリモコン家電制御可) × u-コンセントへイーサケーブルを挿す必要あり × 状態特定にサーバが必要 × 詳細な状態特定は困難 X10デバイス(米X10社) z z スイッチとレシーバを内臓し,接続家電の電源ON/OFF 様々な対応デバイス(ライト,センサ,赤外線送信機,カメラなど) × 詳細な状態特定はしていない × 制御成功かのフィードバックがない 6 HATを使って実現できる応用サービス 遠隔制御 一括制御 連動制御 外から録画予約 家中の電気を 一括消灯 自動制御 指定時刻に 部屋を暖める Home network! 消し忘れの際は 自動でOFFに 洗濯が終わった ら電話を鳴らす ホームオートメーション レガシー家電 も管理可能 エネルギーマネージメント ホームセキュリティ 7 HATの詳細 8 HAT: Home Appliance Translator ① PLCとZigBeeを併用したNo New Wireでの高信頼通信 ② SCPを用いたレガシー家電間通信 ③ レガシー家電の状態把握と制御反映 PLCやZigBeeを使った No New Wire での高信頼通信 レガシー家電のコンセント にHATを接続 通知 制御 HAT Home Network! タップ 命令 状態把握 レガシー家電 家電の状態を把握しネットワークへ通知, ネットワークから命令を受けて家電を制御 レガシー家電の高信頼なネットワーク制御を可能に! 9 No New Wire 通信技術 有線:イーサネット,電力線,電話線,TV同軸ケーブル 経路の割合(%) z 60 50 40 30 20 10 0 通信不能! 3階建て家屋 100 90 80 70 60 50 大学棟内 40 30 20 10 0 到達率(%) ※PLC実環境での到達率調査結果(相間問題,搬送波の吸収など) z 無線: IEEE802.11b / a / g Bluetooth ZigBee UWB 帯域 2.4 / 5 / 2.4 GHz 2.4GHz 2.4GHz 3.1~10.6GHz 速度 11 / 54 / 54 Mbps 1Mbps 250kbps 110 / 480 Mbps 距離 150 / 50 / 100 m 10m 30m 10 / 3m 価格 約8ドル 約3ドル 約3ドル 約1000mW 約100mW 約30mW 約200mW 消費電力 ― ※無線通信の特性(通信範囲,障害物,干渉などの影響大) 10 ① No New Wire での高信頼通信 ■HATは通信手段にPLCとZigBeeを併用 ■PLC…電力線を通信媒体とする伝送方式 ■ZigBee…低消費電力無線通信規格 z z z 新しい通信回線の配線が不要 「コンセントに指すだけ」で分かりやすい 電力供給と通信が一体化しており効率的 HAT HAT No New Wire! HAT HAT 特性の異なる媒体を併用し通信不能な部分を相互補完! 11 HAT: Home Appliance Translator ① PLCとZigBeeを併用したNo New Wireでの高信頼通信 ② SCPを用いたレガシー家電間通信 ③ レガシー家電の状態把握と制御反映 PLCやZigBeeを使った No New Wire での高信頼通信 レガシー家電のコンセント にHATを接続 通知 制御 HAT Home Network! タップ 命令 状態把握 レガシー家電 家電の状態を把握しネットワークへ通知, ネットワークから命令を受けて家電を制御 レガシー家電の高信頼なネットワーク制御を可能に! 12 SCP: Simple Control Protocol ※Microsoft SCP DDKをルネサスソリューションズが配布中 ■HATは通信プロトコルとしてSCPを採用 ■SCP…小型デバイス制御用の低コストなプロトコル ★自立的なP2P通信が可能 ★ネットワークの自動構築が可能 SCPデバイス ★UPnPとの高い親和性 HAT HAT レガシー家電がSCPデバイスとして, 他のSCPデバイスやUPnPデバイスと P2Pに通信可能になる! SCPデバイス SCPデバイス UPnPデバイス UPnPデバイス 13 SCPを採用するメリット(1/2) z z 自律的なP2P通信が実現可能 ネットワークの自動構築 一度サブスクリプションを構築してしまえば… Establised! 一旦,電源を落としても… 違うコンセントに差し替えても… 移動 Re-establised! d! e s i l t ab s e Re 電源再投入時に自動的に通信が再開! 14 SCPを採用するメリット(2/2) z UPnP(DLNA)ネットワークとの親和性 ブリッジ SCPネットワーク UPnP(DLNA)ネットワーク レガシー家電(SCPデバイス)と情報家電(UPnPデバイス) の相互運用可能なホームネットワークを構築可能! ※DLNA:Digital Living Network Alliance.UPnPを中核としたデジタル AV機器の相互接続ガイドライン 15 ② SCPを用いたレガシー家電間通信 A. 状態通知サービス HAT サービス「状態通知」 プロパティ 家電の状態 家電の状態変化をネットワーク上の 他デバイスに通知するサービス 家電の状態情報を保持する プロパティ B. 家電制御サービス サービス「家電制御」 アクション 家電の制御 ネットワーク上から家電を制御する サービス 家電の制御を実行するアクション (引数に制御命令をとる) HATは,レガシー家電をSCPデバイスにする! 16 HAT: Home Appliance Translator ① PLCとZigBeeを併用したNo New Wireでの高信頼通信 ② SCPを用いたレガシー家電間通信 ③ レガシー家電の状態把握と制御反映 PLCやZigBeeを使った No New Wire での高信頼通信 レガシー家電のコンセント にHATを接続 通知 制御 HAT Home Network! タップ 命令 状態把握 レガシー家電 家電の状態を把握しネットワークへ通知, ネットワークから命令を受けて家電を制御 レガシー家電の高信頼なネットワーク制御を可能に! 17 ③ レガシー家電の状態把握 z 家電の消費電流量や,家電に送信された赤外 線信号を使って状態を推定 電流量 測定部 HAT 赤外線 受光部 今、ビデオを早送り しているらしい 状態通知 消費電流量の変化 を計測 家電に送信された赤外 線信号をHATも受信 18 ③ レガシー家電の制御反映 z 供給電力の調節命令や赤外線信号を送信して レガシー家電の制御反映 家電に供給する電力を 調整しON/OFF制御 制御命令 ・電源を切れ/入れろ ・録画予約を入れろ ・ビデオを巻き戻して etc… 電力 制御部 HAT 赤外線 発光部 リモコンと同じ信号を 出力して家電を制御 19 HATのプロトタイプ 開発状況 20 MANET: Mobile Ad-hoc Network ① PLCとZigBeeを併用した高信頼通信 z 相互補完ネットワーク用通信プロトコルの評価 z z z ブロードキャスト方式(BC方式) 中継確認方式(RC方式) 4 MANETのOLSR準拠方式 8 2 1 家屋を想定したトポロジ (ネットワークシミュレーション) 2F 12 6 3 16 14 10 5 9 7 電力線 (A相) 13 11 15 電力線 (B相) 50 40 損失メッセー ジ数 損失メッセージ数 衝 突 メッセー ジ 数 衝突メッセージ数 1F BC 30 RC 20 10 0 0 6 12 18 24 ノード数 30 36 42 ノード数 BC RC 40 30 応答メッセージの 損失の影響 20 10 0 0 6 12 18 24 ノード数 30 36 42 ノード数 21 HATプロトタイプのハードウェア構成 HATプロトタイプ PLCモデム(ルネサス製EVB4) 電力制御部 赤外線送受信部(秡川先生) メイン処理部 (ルネサス製M16Cマイコン) 電流量測定部 (Dominion製Watts Up? PRO) レガシー家電を接続 (電灯,ビデオ,洗濯機,エアコンなど) 22 HAT制御ソフトウェア:HAT-Sub z PC上で動作するHAT制御ソフトウェア z 家電状態情報取得や操作指示用アプリ(VC++) USB-PLCモデム(デジタルストリーム製) Internet HAT HAT-Sub HAT 23 ② SCPを用いたレガシー家電間通信 18000 消費電流量(mA) ■状態通知,遠隔制御 14000 12000 1.2 閾値 消費電流量 状態 10000 6000 0.4 0.2 2000 0 HATプロトタイプ PLC 状態情報を他のSCP デバイスに通知 0.8 0.6 8000 4000 他のSCPデバイス 1 動作状態(0:停止状態 1:動作状態) 16000 0 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 時間(s) 消費電流量や赤外線 リモコン信号から状態 推定 他のSCPデバイスから 接続家電を制御 24 ③ レガシー家電の状態把握と制御反映 ■既存家電の連動制御 HATプロトタイプB HATプロトタイプA 状態 パブリッシャ サブスクライバ 1 TVの電源をONし, ビデオ入力へ切替 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 時間(s) 特定家電の動作状態に 合わせた連動制御 HDDレコーダ再生 25 HATを使って実現できる応用サービス 遠隔制御 一括制御 連動制御 外から録画予約 家中の電気を 一括消灯 自動制御 指定時刻に 部屋を暖める Home network! 消し忘れの際は 自動でOFFに 洗濯が終わった ら電話を鳴らす ホームオートメーション レガシー家電 も管理可能 エネルギーマネージメント ホームセキュリティ ※屋外でPLC可能なら無線LANと組合せてセキュリティセンサネットワーク も構築可能! 26 まとめと今後の課題 z z z 情報家電に買い換えることなく...安く 通信回線を敷設することなく...すぐに 家電をコンセントに指すだけで...簡単に レガシー家電の高信頼なネットワーク制御を可能に! z HATプロトタイプの改良と性能面での評価 z z z z z 相互補完ネットワーク用通信プロトコルの評価と実装 UPnPネットワークとの連携 HAT接続時の制御可能,制御反映に要する時間 制御コマンドの長さに対する反映時間の関係 レガシー家電状態推定手法の汎用化,など 27 水野研究室の研究テーマ紹介 z ユビキタスンピューティンググループ z z z z 既存家電によるホームネットワーク構築(HAT) 移動機器を利用したロケーショントラッキングシステム(MobiTra) 不規則センサネットワークに対応したセンサノード測位方式 モバイルコンピューティンググループ z z 多種多様なネットワークインタフェースを活用した通信 z 相互補完ネットワークによる高信頼通信 z PAN2PAN通信制御ミドルウェア z 遅延揺らぎや帯域変動を考慮した複数経路通信(SHAKE) 携帯端末からの周辺機器利用 z 携帯端末を想定したリモートUSBデバイス制御(iUSB) z SIPによる携帯電話と情報家電間のセッション転送 http://www.mizulab.net 28
© Copyright 2024 Paperzz