ブラジルでのAHCC使用報告

NEWS LETTER
2011 Winter
Vol. 8
No. 1
寄稿
ブラジルでのAHCC使用報告
Fatima大学 栄養学部 教授
Francisco Juarez A. Karkow
年頭のごあいさつ
医療法人社団 恵水会 田島クリニック臨床顧問 石塚
玲器
3
AHCC研究会 2011年の活動
3
寄稿 ブラジルでのAHCC使用報告
Fatima 大学 栄養学部 教授
Francisco Juarez A. Karkow
4
米国コロンビア大学においてAHCCセミナー開催
−統合泌尿器科学会の支部会にて−
6
最近の論文・学会発表から
7
学会参加報告
8
■ 7th Anuual Society for Integrative Oncology(SIO)Conference
■ 第13回 日本補完代替医療学会学術集会
編集後記
8
第18回 統合医療機能性食品国際会議(2010年
表
月)
紙
の
写
真
解
説
AHCCに関する初の医学書
『AHCC
(
の )
基 礎 と 臨 床 』
担子菌培養
抽出物
B5版 本文271頁 上製本
定価:3,990円
(税込)
発行元
■監修:細川眞澄男
北海道大学名誉教授
北海道医療大学教授
■編集:山﨑 正利
帝京大学薬学部教授
上山 泰男
関西医科大学外科教授
※ご所属・お役職は初版発行時のものです。
株式会社ライフ・サイエンス
(医学専門出版社)
〒150‒0001 東京都渋谷区神宮前5‒53‒67 コスモス青山
TEL 03(3407)8963
(代)
FAX 03
(3407)8938
2011 Winter
Vol.8 No.1
年頭のごあいさつ
えられます。
)活性化自己リンパ球療法
)樹状細胞がんワクチン療法
)超高濃度ビタミンC点滴療法
今後、奏効率、生存期間の延長などが検討され臨床的
EBMとなる成果が期待される所です。問題点はいずれも
公的医療保険でカバーされないため高額な医療費を要する
ことと、
)と
)は施設が限定されることです。
)は小
さなクリニックでも可能であり、費用対効果の点で今後の
EBMが期待できると実感しています。
一方、予防医学への関心が向上して健康食品がマスコミ
医療法人社団 恵水会
田島クリニック臨床顧問
で宣伝されていますが、重要なのは自分の健康管理で、禁
石塚玲器
煙と適度な運動、毎日の安全な食生活の実践が基本となり
ます。国の食育推進基本計画にあるバランスガイドを参考
として免疫的に有益な野菜、果物を摂取することが前提で
す。これで健康であれば、サプリメントは不要と思います。
2011年、新年おめでとうございます。昨年の日本は政治
しかし予期せぬがんが発見された場合、自己管理可能の経
の迷走に暮れ、内政、外交、経済いずれも失政の暗いニュー
済的免疫療法は必要です。健康食品のみに偏らず、安全性
スが多い年でした。唯一の朗報が科学分野で北海道から鈴
と効果が十分信頼できる製品を選択することが条件です。
木 章名誉教授がノーベル化学賞を受けられ、日本の国際
健康食品にはEBMがないためにこれを無視する専門家
評価を高めていただいたという嬉しいニュースでした。
が多いことは事実です。しかし、私はⅣ期症状のがん難民
がん治療においては、科学的根拠に基づいた医療(EBM)
と直面して14年になりますが、その上でAHCCの併用によ
とQOLを重視した全人的医療が求められています。近年、
る著明なQOLの向上と大幅な生存期間の延長例が稀でない
遺伝子治療の進歩と分子標的治療の導入により、がん免疫
ことも事実です。がん治療で抗がん剤の役割は否定しませ
の病態像に対応したガイドライン改訂の動きが見られます。
んが、患者サイドに立ったEBMで在りたいものです。
基礎的EBMにより次々と新規抗がん剤が臨床に導入され
AHCC研究会も第18回より、名称を統合医療機能性食品
ていますが、死因のトップであるがん死亡数はなお増加を
国際会議(ICNIM)と改めました。AHCCやオリゴノールな
続け342,849人(厚生労働省 人口動態統計2008年)になり、
どの国内外で評価を得ている機能性食品の安全性と効果の
がん死亡
研究が、より多くの臨床の場にさらなる発展をもたらすこ
位の肺がんを始め、膵がんなどリスクの高い進
行、再発がんでは大幅な生存期間の延長に至っていません。
また抗がん剤に期待される効果と副作用のリスクによって
腫瘍の縮小を重視すると必然的にQOLが犠牲となるといっ
た乖離が現実の問題となっています。「進行、再発がん患
者の求めるEBMとは何か?」が臨床医に問われています。
がん免疫の基礎的研究は大きく進歩していますが、臨床で
は後述する問題点が普及のハードルとなっています。施設
で行う免疫治療のうち、次の
つが現在の主な選択肢と考
とを願って新年のご挨拶とさせていただきます。
■石塚玲器
(いしづか・れいき)
医療法人社団恵水会田島クリニック臨床顧
問。1957年北海道大学医学部卒業。1962年聖路加国際病院外科及び東京女
子医大心臓血管外科研究員。1965年米国ハーバード大学医学部小児病院外
科研究員。1966年ピッツバーグ大学医学部外科研究員。1968年北海道大学
第一外科助手。1970年国立西札幌病院外科。1977∼1998年北海道大学第一
外科非常勤講師。1983年米国メイヨークリニック内分泌外科の臨床研修。
1995年国立西札幌病院院長を経て1999年から現職。内分泌外科、中心静脈
栄養、超高齢者の外科治療が専門。2004年よりAHCC研究会幹事。
AHCC研究会 2011年の活動
昨年から名称を変更した本会の研究報告会は、毎年
の開催でしたが、今年は10月15日(土)、16日(日)の
月
日間
募の締め切りは
月20日ごろを予定しています。ホーム
ページ上にもご案内いたしますのでご覧ください。
に渡って「第19回統合医療機能性食品国際会議(ICNIM)」と
http://ahcc.jpn.org/
して開催の予定です。会場は例年通りホテルロイトン札幌
本会の幹事会は
(札幌市)を予定しています。ICNIMへの演題募集、参加申
し込みのご案内は
月頃から事務局よりご案内いたします。
会員の皆様で興味深い研究成果や症例をお持ちの方がい
月に開催の予定で、2010年の活動報告
と2011年の事業計画が話し合われます。NEWS
も年
LETTER
号の発行を予定しています。会員の皆様からのご寄
稿もお待ちしておりますので、事務局までお寄せください。
らっしゃいましたら、事務局までお寄せください。演題応
AHCC News Letter Vol.8 No.1
3
ブラジルでのAHCC使用報告
ブラジルでのAHCC使用報告
Francisco Juarez A. Karkow
Fatima 大学 栄養学部 教授
■はじめに
量は小さく5,000ダルトン以下という独
表
2009年にニューオリンズで開催され
特の特徴がある。α-1-4グルカンが活
たClinical Nutrition Weekにて共通の
知 人 で あ る テ キ サ ス 大 学 のAnil D.
性の主要成分の一つと考えられている
が、そのメカニズムはまだ解明されて
成分
Kulkarni 先生から株式会社アミノアッ
プ化学のフランシスコ デミンゴ氏、
いない。特にアセチル化α-グルカン
は消化吸収された後に全身に免疫増強
若命浩二氏を紹介され、本会議参加に
作用を示す可能性がある。対照的に
よりAHCCという製品および特性を知
る好機に恵まれた。“AHCC”の名前で
β-グルカンの分子量は通常数万から
数十万ダルトンであり、消化吸収は難
よく知られている活性化糖類関連化合
しいとされている。分子量は大きいも
物は担子菌の菌糸体を原料として生産
されている。
のの、消化管を刺激することにより免
疫増強効果を示す2)。
健康食品は機能性食品、健康補助食
品、栄養補助食品とも呼ばれている。
これまでの研究から、AHCCは免疫
調 節 効 果 や T 細 胞 の 増 強、CD4+ や
■AHCCについて
CD8+ リンパ球の増加、宿主の先天性
および適応性免疫反応を抑制し、われ
■ブラジルでAHCCを使用
古来よりキノコには治癒効果がある
と崇められていた。これらキノコは真
われの免疫系を強化する特性のある天
然物由来のサプリメントである。その
私はブラジルでAHCCを重篤な内臓
疾 患 の 患 者 に 使 用 す る こ と と し、
菌類(カビも真菌類である)に属してお
り、真菌類は分類上担子菌類である。
シイタケ、マツタケ、マイタケ、ナメコ、
機能にはα-グルカンの役割は大きい
が、β-グルカンや他の構成物質の役
割も無視できないものがあり、メカニ
AHCCの適応例を参考に病態の良くな
アガリクスのように食用のキノコは一
般的に担子菌である。
ズムについては検討の余地がある。
また、酸化ストレス、炎症、一酸化
グレンシンドロームのような免疫系疾
患、多発性神経障害(四肢麻痺)
、筋萎
AHCCは健康食品に分類されている
窒素合成酵素、免疫賦活作用を減少さ
縮性側索硬化症、肝硬変を伴うC型肝
が、医療関係者には生理的機能、免疫
系の強化や免疫促進効果のある機能性
食品として使用されている1)。
せ る と 報 告 し て い る 研 究 者 も あ り、
AHCCとこれらグルカンとの関係につ
いてはさらなる研究が必要であると思
AHCCの成分組成を表 に示す。
驚いたことに、AHCCの構成要素は
多くが炭水化物であり、そのほとんど
が多糖である。通常、キノコの多糖の
主要構成成分はβ-グルカンであるが、
AHCCはα-グルカンが主成分で分子
われる1-3)。
AHCCの免疫調整機能としてT細胞
の増殖を強化し、CD4+およびCD8+リ
ンパ球の増加や先天的および後天的に
免疫系反応を抑制する効果がある4-6)。
炎、ストレスやうつ状態そしてアト
ピー性疾患が含まれている。
プロトコールには体重、食欲、QOL
そして生化学検査を含み、その項目と
して白血球、赤血球、血小板、CD4+
およびCD8+ 数測定を実施した。患者
のAHCC摂取期間を ヵ月、 ヵ月、
年に分け、毎月医師の診察を行った。
いずれの患者にもQOLの改善や生化
AHCCの成分組成
炭水化物
脂肪
タンパク質
ビタミンB1
ビタミン B2
ビタミンB3
(ナイアシン)
食物繊維
ミネラル
ナトリウム
カリウム
水分
成分分析
(100g当たり)
44.0 g
37.3 g
7.2 g
0.3 g
0.3 g
0.3 g
5.7 g
4.5 g
550 mg
1,200 mg
1.3 g
北海道薬剤師会公衆衛生検査センター調べ
い患者を選び、 日 回、各回 gを
摂取させた。患者群には乳がん、シェー
■Francisco Juarez A. Karkow:Fatima大学 栄養学部 教授
1973年カシアス・ド・スル大学医学部卒業。ブラジル外科学会会員。1984年アメリカ外科学会の国際客員研究員。1987∼1988年サンタ・カサ医科大学
博士課程(サン・パウロ)
、ブラジル静脈経腸栄養学会前会長 1975年 月∼2009年 月カシアス・ド・スル大学医学部(ブラジル、リオ・グランデ・ド・
スル州)
外科学教授。2009年 月より現職
4
AHCC News Letter Vol.8 No.1
ブラジルでのAHCC使用報告
【年齢・性別】
51歳女性
【年齢・性別】
61歳女性
【症状】乳がん;右胸定型的乳房切除
で 入 院( 浸 潤 性 乳 腺 管 が ん、
Nottingham分類、Van Nuys分類によ
りグレード と判定。 ヵ所にリン
パ節転移)
。体力低下、疲労、憂うつ
/不機嫌、脱毛症。
【症状】多発性神経障害(Chronic
Inflammatory
Demyelination
Polyneuropathy)
; 年前に発症。
おそらく自己免疫または遺伝的
要因に起因する(父*、母*、祖母
が発病している。*は第一親等)。
筋電図(EMG)を使用しこの
【投与期間】
名は診断された。本患者の症状
・化 学 療 法:2009年11月12日 ∼2010
に 体 力 低 下、 し び れ、 う ず き、
年 月31日
歩行困難、肥満、不機嫌/憂うつ
・放射線療法とホルモン療法の併用:
がみられた。
2010年 月22日∼ 月21日
【投与期間】
AHCCを 日 回
【改善点】
2010年 月20日の測定でヘ
g:2010年 月 日∼2010年 月
モグロビン9.4g/dL、へマトクリット
18日の期間摂取。
28.6%、正常値より低いCD4+/CD8+
値を得た。AHCC使用 ヵ月後、QOL 【改善点】
CD4+/CD8+ 値は上昇。
に有意な改善がみられ、検査では貧 EMGには変化はなかったが、体調
血はみられなかった(ヘモグロビン は著しく改善。体重の減少がみら
13g/dL、へマトクリット38.4%)
。
れ、
憂うつな感覚はなくなった。
図
【年齢・性別】62歳女性
【年齢・性別】51歳女性
【症状】筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・
ゲーリック病、運動ニューロン疾患と
して知られている);13年前に発症。運
動ニューロン疾患の ∼10%は遺伝し、
20%は遺伝的欠陥(酵素変異(SOD1))で
ある。グルタミン酸塩は血清/髄液中に
高濃度にみられる。
EMGによりALSと診断された。一般
的な症状は疲労、体力低下、移動困難、
不全失語症、構音障害、痙性、反射異常、
不機嫌/憂うつ。認知能力は保たれる。
【 症 状 】シ ェ ー グ レ ン シ ン ド
ローム; 年前に発症。症状
はドライアイ、嚥下障害、ド
ライマウス、膣の乾燥、性交
時 の 痛 み、 レ イ ノ ー 症 候 群、
生 化 学 検 査 で の 陽 性 結 果( 抗
SSA/Ro( 抗核抗体))、(抗SS/
LA+(抗核抗体))。
【 投 与 期 間 】2010年 月13日 ∼2010年
月14日の期間経過観察した。
【 投 与 期 間 】AHCCを 日 回
g:2010年 月10日 ∼2010年
月 日の期間摂取。
【改善点】CD4+/CD8+値の改善
がみられ、使用後 ヵ月でド
【改善点】生化学検査でCD4+/CD8+値の ライマウスや膣の乾燥(性交時
改善はみられたが、EMGでは変化はみ の痛み)がなくなり、QOLの改
られなかった。QOLは向上され、不満 善がみられた。
や憂うつな症状はなくなった。
ブラジルでAHCCを使用した症例とその予後
学検査各項目の向上がみられた。これ
防御作用が働くからである7-10)。
らないのだろうか?
らの結果からヒトへのAHCC投与は臨
床および生化学的に効果があることが
わかった。
AHCCには多数の有効性を示す有力
な証拠があり、主要構成物質の一つで
あるα-グルカンが低分子量という構
・罹患期間(多くの患者はC型肝炎に罹
患している事を偶然発見し、20年以上
前の輸血による可能性が高い)
AHCCを異なる疾患患者に投与し経
造的特性に由来し吸収利用されると推
・AHCC摂取期間が短いため?
過観察を続け、生体的、生化学側面か
測される。特にアセチル化α-グルカ
・AHCCの摂取量が少ないため?
ら検証した(図 )。
図 に示した症例以外にも、AHCC
ンが低分子量(5,000ダルトン以下)であ
るため吸収効率が良く免疫系を強化す
■AHCC使用の結論
をC型肝炎、C型肝炎と肝硬変、アル
コール性肝硬変の患者に投与した。血
ると考えられる。その低分子量である
α-グルカンが末梢血リンパ球、単球、
AHCC使用についての結論として、
次のことがいえるであろう。
小板数、肝酵素に改善がみられたが、
IL-12、IL-6、腫瘍壊死因子の増加を
・抵抗力を高める。
特筆すべきはQOLの向上である。すぐ
に体調改善がみられた。しかし、無償
助け、宿主の免疫系反応の早熟活性を
誘発し4)、ついては栄養吸収率の増加
・全被験者のQOL向上に有効である。
・AHCC摂取期間を長くするべきであ
提供の治療にも関わらず、50%の患者
が治療を中止した(アルコール性肝硬
により腸内で資化が促進され、白血球
が増加し生体防御機能が増強されると
る。
・摂取量を多くしてもいいのではない
変患者)。
推察する11-19)。
AHCCはこれら以外にも多数の疾患
に応用が可能であると思われる。
AHCCの特性は多岐にわたり、体内
で広く作用し免疫系の調節因子として
・適応症:免疫系疾患、肝疾患、腎疾患、
心疾患、栄養不足
例えば、心疾患、肝がん、前立腺がん、
働 く。 同 時 にT細 胞 の 増 殖 を 高 め、
・AHCCの更なる理解が必要である。
多発性骨髄腫、ALS、慢性感染症、ス
トレス/憂うつ、高血圧、肝硬変、肝炎、
自己免疫疾患、成人型アトピー性皮膚
CD4+やCD8+リンパ球の増加、先天的
抑 制 や 宿 主 反 応 に 使 用 可 能 で あ る。
AHCCは免疫を強化するサプリメント
・治療法として広く用いられているプ
ロバイオティクスとプレバイオティ
クスの理解を深めることが必要であ
炎、関節リウマチ、慢性疲労症候群、
多発ニューロパシー、日和見感染症、
インフルエンザウイルス、鳥インフル
である4),20-21)。
る。
・栄養、統合医療(ドイツなどヨーロッ
パ、オーストラリアおよびアメリカ
エンザ、カンジダアルビカンス(イー
スト菌感染症)、肺炎桿菌(肺炎)、緑
■これからブラジルにおいてAHCCを
使用するには
か。
私の住むブラジル南部の町Caxias do
では積極的に取り入れられつつある
ものの、科学的根拠に基づいた医療
膿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
-MRSA( 耐 抗 生 物 質 ブ ド ウ 球 菌 感 染
Sulとその周辺都市では、ワインの消
費量が特に多い。この地域はブラジル
(EBM)を十分に重視していない分野
のため、多くの西洋医学の医師は切
症)、マウスの西ナイルウイルスなど、
で一番の生産量を誇り、人々は早くか
り捨ててしまう傾向があるが、もっ
多くの疾患が挙げられるのではないだ
ろうか。
らワインを飲み始める。ゆえにアル
コール性肝硬変が多くみられる。ワイ
と受け入れられるべきである)は医
学分野で大きな存在感を示すことに
■AHCCの考察
重大な疾患に直面するたびに“どの
ように易感染性患者の免疫系に対処す
るか”という問題が浮上する。多くの
場合、急性または慢性疾患には隠れた
原因があり、それは感染により宿主の
ンの飲酒なしにAHCCを摂取した場合
では肝機能の向上がみられたが、試験
的研究のために無料にもかかわらず治
療をやめてしまう傾向にある。C型肝
炎やAIDS患者にもその傾向があった。
興味深い疑問として、私のAHCC摂
取試験でC型肝炎ウイルスがゼロにな
なるだろう。治療法としての統合医
療はすべての患者にとって最も有用
である。
・西洋医学の中で統合医療はどの患者
にとっても最善の治療法であるので、
代替医療の使用を除外するべきでな
い。
AHCC News Letter Vol.8 No.1
5
ブラジルでのAHCC使用報告
参照文献
)Daddaoua A, Martinez-Plata E, LopesPousadas R,
.:Active Hexose
Correlated Compound act as a Prebiotic
and is antiinflamatory in rats with
Hapten-induced colitis. J Nutr. 136:
1222-1228, 2007
)Amino Up Chemical Co., Ltd. AHCC
2009. Available at:http://www.aminoup.
co.jp/e/ahcc.html. Accessed November
24, 2010.
)Matsui K, Kawaguchi Y, Ozaki T,
.:
Effect of active hexose correlated
compound on the production of nitric
oxide in hepatocytes. JPEN J Parenter
Enteral Nutr, Sep-Oct 31
(5)
:373-380,
discussion 380-381, 2007
)Gao Y, Zhang D, Sun B,
.:Active
hexose correlated compound enhances
tumor surveillance through regulating
both innate and adaptive immune
responses. Cancer Immunol Immunother,
Oct 55
(10)
:1258-1266, 2006
)Spierings EL, Fujii H, Sun B,
.:A
Phase I study of the safety of the
nutritional supplement, active hexose
correlated compound, AHCC, in healthy
volunteers. J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo)
,
Dec 53
(6)
:536-539, 2007
)Wang S, Welte T, Fang H, Chang GJ,
Born WK, O Brien RL, Sun B, Fujii H,
Kosuna K, Wang T:Oral administration
of active hexose correlated compound
enhances host resistance to West Nile
encephalitis in mice. J Nutr. 139
(3)
:
598-602, 2009
)Lee WW, Nam KH, Terao K, Yoshikawa
Y:Possible role of genetic factor
(s)on
age-related increase of peripheral CD4+
CD8+ double positive T cells in
cynomolgus monkeys. Exp Anim. 52(4):
309-316, 2003
)Jiang H, Chess L :How the immune
system
achieves
self-nonself
discrimination during adaptive immunity.
Adv Immunol. 102:95-133, 2009
)Ritz BW:Supplementation with active
hexose correlated compound increases
survival following infectious challenge in
mice. Nutr Rev. 66(9):526-531, 2008
10)Nogusa S, Gerbino J, Ritz BW:Lowdose supplementation with active hexose
correlated compound improves the
immune response to acute influenza
infection in C57BL/6 mice. Nutr Res. 29
(2)
:139-143, 2009
11)Aviles H, O Donnell P, Orshal J, Fujii H,
Sun B, Sonnenfeld G:Active hexose
correlated compound activates immune
function to decrease bacterial load in a
murine model of intramuscular infection.
Am J Surg. 195(4):537-545, 2008
12)Aviles H, O Donnell P, Sun B, Sonnenfeld
G:Active hexose correlated compound
(AHCC)enhances resistance to infection
in a mouse model of surgical wound
infection. Surg Infect (Larchmt) 7(6):
527-535, 2006
13)Nogusa S, Gerbino J, Ritz BW:Lowdose supplementation with active hexose
correlated compound improves the
immune response to acute influenza
infection in C57BL/6 mice. Nutr Res 29
(2)
:139-143, 2009
14)Wang S, Welte T, Fang H, Chang GJ,
Born WK, O Brien RL, Sun B, Fujii H,
Kosuna K, Wang T:Oral administration
of active hexose correlated compound
enhances host resistance to West Nile
encephalitis in mice. J Nutr 139(3):
598-602, 2009
15)Gao Y, Zhang D, Sun B, Fujii H, Kosuna K,
Yin
Z:Active
hexose
correlated
compound enhances tumor surveillance
through regulating both innate and
adaptive immune responses. Cancer
Immunol Immunother 55(10)
:1258-1266,
2006
16)Lee WW, Nam KH, Terao K, Yoshikawa
Y:Possible role of genetic factor
(s)on
age-related increase of peripheral CD4+
+
CD8
double positive T cells in
cynomolgus monkeys. Exp Anim 52(4)
:
309-316, 2003
17)Jiang H, Chess L:How the immune
system
achieves
self-nonself
discrimination during adaptive immunity.
Adv Immunol 102:95-133, 2009
18)Groeneveld IF, Proper KI, van der Beek
AJ, Hildebrandt VH, van Mechelen W:
Lifestyle-focused interventions at the
workplace to reduce the risk of
cardiovascular
disease-a
systematic
review. Scand J Work Environ Health 36
(3):202-215, 2010
19)Dobos G, Altner N, Lange S, Musial F,
Langhorst J, Michalsen A, Paul A:Mindbody medicine as a part of German
integrative medicine. Bundesgesundheitsblatt
Gesundheitsforschung Gesundheitsschutz
49(8):723-728, 2006
20)Bauer H:The emergence of Integrative
Medicine in Australia:The Growing
Interest of Biomedicine and Nursing in
Complementary Medicine in a Southern
Developed Society. New Series 22:1
(52-56),2008
21)Kiefer D, Pitluk J, Klunk K:An
overview of CAM:components and
clinical uses. Nutr Clin Pract 24 (5)
:
549-559, 2009
米国コロンビア大学においてAHCCセミナー開催
−統合泌尿器科学会の支部会にて−
2010年11月10日、米国コロンビア大学において
SIU
(Society of Integrative Urology:統合泌尿
器科学会)の支部会の一部としてAHCCセミナーが
開催された。がん治療における統合医療的なアプ
ローチを紹介することを目的とした本セミナーでは、
コロンビア大学、ハーバード大学、テキサス大学か
らの講演のほか、日本からも大阪大学から講演が
あった。
本セミナーではコロンビア大学全体観的泌尿器科
学の Aeron Katz 先生が全体の司会進行を務め、
現在進行中のAHCCの乳がんでの臨床試験の概要
についても紹介した。
ハーバード・メディカルスクー
ルの Tom Walshe 先生がAHCCと脳機能について、
テ キ サ ス 大 学MDア ン ダ ー ソ ン が ん セ ン タ ー の
Judith Smith 先生がAHCCの化学療法の副作用低
減 機 能 に つ い て、 テ キ サ ス 大 学 外 科 の Anil D.
Kulkarni 先生がAHCCの健康維持、ストレス回復
効果について、それぞれ講演された。日本からも大
阪大学大学院医学系研究科生体機能補完医学講座の
前田和久先生が大阪大学での臨床試験について紹介
され、その他、四国がんセンター、関西医科大学の
6
AHCC News Letter Vol.8 No.1
臨床試験の紹介
もあった。
日本での補完
代替医療・統合
医療分野での機
能性食品の利用
についての現状
が紹介され、日
Anil D.Kulkarni 先生(テキサス大学)
米でのAHCCの
のセミナーの様子
広範にわたるア
プリケーション
の一部が紹介さ
れたことで、参
加した研究者の
ネットワーキン
グの役割を果た
していた。また、
前田和久先生(大阪大学)のセミナー
研究者以外にも
の様子
患者の参加も多
く、患者からの質問も多くなされ米国における情報
提供の良い機会となった。
論文・学会発表
最近の論文・学会発表から
■最近の論文・学会で発表された本会に関連のある研究テーマをお知らせいたします。
論文発表
Anti-Cancer Drugs, 20
(3)
:215-216
(2010)
「Dramatic prostate-specific antigen response with activated
hemicellulose compound in metastatic castration-resistant prostate
cancer」
Jeffrey Turner,
.
(Medical University of South Carolina, USA)
Japanese Journal of Clinical Oncology, 40
(10):
967-972
(2010)
「Dietary Administration of Mushroom Mycelium Extracts in Patients
with Early Stage Prostate Cancers Managed Expectantly:A Phase II
Study」
住吉義光 ら
(四国がんセンター)
心臓,42
(9)
:1153-1158
(2010)
「HepG2細胞におけるインスリンと酸化ストレスのPAI-1産生に対する影
響の解析:メタボリックシンドロームの易血栓性の病態解明を指向して」
藤井 聡 ら
(名古屋市立大学)
Phytomedicine, 17
(13)
:1047-1056
(2010)
「Oligonol a low molecular weight polyphenol of lychee fruit extract
inhibits proliferation of influenza virus by blocking reactive oxygen
species-dependent ERK phosphorylation」
Mehran Haidari,
.
(The University of Texas Health Science Center at Houston, USA)
British Journal of Nutrition, 104(8):1120-1128
(2010)
「Hypolipidaemic and antioxidative effects of oligonol, a low-molecularweight polyphenol derived from lychee fruit, on renal damage in type 2
diabetic mice.」
横澤隆子 ら
(富山大学)
Nutrition Research and Practice, 4(3):203-207
(2010)
「The effect of Oligonol intake on cortisol and related cytokines in
healthy young men」
Jeong-Beom Lee, Hun-Mo Yanga,
.
(Soonchunhyang University, Korea)
Phytotherapy Research, DOI:10.1002/ptr.3296
(2010)
「Comparison of the effect of oligonol, a new lychee fruit-derived low
molecular form of polyphenol, and epigallocatechin-3-gallate on
lipolysis in rat primary adipocytes」
小笠原準悦、大野秀樹 ら
Biochemical and Biophysical Research
Communications, 402:554-559(2010)
(杏林大学)
「Oligonol, an oligomerized lychee fruit-derived polyphenol, activates
the Ras/ Raf-1/ MEK1/2 cascade independent of the IL-6 signaling
pathway in rat primary adipocytes」
小笠原準悦、大野秀樹 ら
(杏林大学)
学会発表
第26回 機能性食品用ペプチド研究会(大阪、日本)
「機能性食品AHCCによるiNOS誘導の阻害」
奥村忠芳 ら
第31回 日本肥満学会(群馬、日本)
(関西医科大学)
2010年10月1日
(金)
∼2日(土)
「メタボリックステムセルを使用した機能性食品のスクリーニング」
伊藤壽記 ら
(大阪大学)
第13回日本アロマセラピー学会学術総会(大阪、日本)
2010年10月10日
(日)
∼11日(月)
「ランチョンセミナー
『炎症性疾患患者へのアロマセラピーの実地と基礎
∼中国での展開を交えて∼』
」
として
町田 久(セラ治療院)、安部 茂(帝京大学)、
第54回 日本医真菌学会総会(東京、日本)
2010年10月16日
(土)
∼17日(日)
「口腔カンジダ症に対するOligonolの効果」
羽山和美、安部 茂 ら
(帝京大学)
第23回 日本色素細胞学会学術大会(東京、日本)
2010年11月27日
(土)
∼28日(日)
「メラノサイトにおける低分子ポリフェノール(オリゴノール)の生物学
的・生化学的活性」
萩原千也
(札幌医科大学)
第33回日本分子生物学会年会・第83回日本生化学会
大会 合同大会(兵庫、日本)
2010年12月7日
(火)
∼10日(金)
「Oligonol, oligomerized polyphenols derived from lychee fruit, inhibits
the induction of iNOS gene in rat hepatocytes.」
西澤幹雄
(立命館大学)
第8回 日本予防医学会学術総会(石川、日本)
2010年12月11日
(土)
∼12日(日)
「老化促進モデルマウスの認知機能障害に対するOligonolの予防効果」
櫻井拓也、大野秀樹 ら
(杏林大学)
第13回 日本補完代替医療学会学術集会(東京、日本)
「天然物による生体防御機構の増進」
「がん治療における機能性食品の意義」
上山泰男
2010年4月21日(水)
2010年12月11日
(土)
∼12日(日)
山
正利
(関西医科大学)
25th International Conference on Polyphenols
(モンペリエ、フランス)
2010年8月23日(月)∼27日
(金)
「Bioactivity of an enhanced lychee fruit extract(Oligonol)on select
markers of vascular health and oxidant defense in experimental
animals and humans」
Sun Jung Yim, Robert M. Hackman,
.
(University of California, Davis, USA)
2010 ISNFF Conference and Exhibition
(バリ、インドネシア共和国)
2010年10月11日(月)∼15日
(金)
「Enhancing mushroom power−the AHCC story」
Robert M. Hackman
(University of California, Davis, USA)
「Suppression of NO and iNOS production in primary cultured
hepatocytes by mono-saccharide fraction of AHCC」
佐藤健司
(京都府立大学)
「Facilitative effects of oligonol for fatty acid oxidation in a high-fat
diet murine model」
本間康平
(株式会社アミノアップ化学)
7th Annual International Conference of the Society
for Integrative Oncology(ニューヨーク、アメリカ)
2010年11月11日(木)∼13日
(土)
「Integrated and individualized lifestyle intervention for the patients
with cancer and obesity」
前田和久、伊藤壽記 ら
(大阪大学)
「Active hexose correlated compound (AHCC) reduces a variety of
anticancer drug-induced side effects in mice」
若命浩二 ら
(株式会社アミノアップ化学)
2010 International Chemical Congress of Pacific
Basin Societies(ホノルル、アメリカ)
2010年12月15日(水)∼20日
(月)
「Oligonol, a highly bioavailable lychee-derived polyphenolic
antioxidant, in preventing obesity and metabolic syndrome」
Manashi Bagchi,
.
(NutriToday LLC, USA)
(帝京大学)
AHCC News Letter Vol.8 No.1
7
学会参加報告
学会参加報告
■7th Anuual Society for Integrative Oncology
(SIO)
Conference
正利先生と関西医科大学名誉教授の上山泰男先生による
2010年11月11日∼13日、 New
of
先生は「天然物による生体防御機構の増進」と題して、が
Medicineにおいて、
York
Academy
食事療法をテーマとしたシンポジウムが開催され、山
th Anuual SIO Conference が開
ん予防に関する食事の重要性について講演された。
「喫
催 さ れ た。12日 の「Moderated Abstract Session 5:
煙」や「肥満」よりも「(食事が偏りやすいといわれる)
独身
Natural Products Research」
のセッションにおいて若命
男性」というファクターがより寿命を短縮するという
浩二氏
(株式会社アミノアップ化学)
より
「Active Hexose
データを紹介し、バランスのとれた栄養摂取が多くの疾
Correlated Compound(AHCC)Reduces a variety of
病を予防することを示した。特に「栄養素」に対しては、
Anticancer Drug - Induced Side Effects in Mice」と題
「非栄養素」と位置づけられているファイトケミカルの役
して口頭発表があった。質疑応答では、AHCCの経口投
割を示し、具体例としてキウイフルーツの高い抗酸化作
与による代謝、吸収、また化学療法自体に対する影響な
用とそれに続きオリゴノールが吸収性の高い抗酸化食品
どに及び関心を集めていた。その他、Canadian College
であると紹介した。さらに免疫系を強化する食品として
of Naturopathic Medicineの研究者らのグループでビタ
キノコの多糖類に触れ、これまでAHCCで研究されてき
ミンDや緑茶などを用いた肺がんに対する大規模な試験
た基礎データを紹介した。
の発表など、関連する分野での興味深い発表があった。
上山先生は「がん治療における機能性食品の意義」
と題
して、腫瘍外科医の立場から「がんは最悪の生活習慣病」
と定義し、がんにならない、また再発させないために、
食を中心とする生活習慣全般を改善させることが必須で
あると述べた。海外のコホートスタディーのデータを紹
介し、肉食中心生活における疾病発生リスクを指摘、菜
食を推奨した。特にキノコで腫瘍症例に効果のあった臨
床経験に端を発し、AHCCの臨床研究に着手した経緯を
紹介。関西医科大学で実施されたこれまでのAHCC臨床
研究データを示した。さらに医師や患者へ対する統合医
療の啓蒙について、栄養サポートチーム(NST)等を窓
口とした教育を行う重要性にも触れ締めくくった。
12日には市民公開講座として金沢大学特任教授の鈴木
SIOで発表する若命浩二氏
(株式会社アミノアップ化学)
信孝先生による「がん患者とサプリメントの上手な使い
方」が開催された。CAM、特に機能性食品をがん患者が
■第13回 日本補完代替医療学会学術集会
選択するにあたり注意すべきポイント(安全性やエビデ
日本補完代替医療学会の第13回学術集会が東京の帝京
ンス)を「厚労省がん研究班ガイドブック」を抜粋しなが
平成大学で開催された。今回のテーマは「がんの補完代
ら紹介された。その他、シイタケ菌糸体エキス、ガゴメ
替医療」を掲げ、機能性食品をはじめとする様々な補完
昆布フコイダン、タヒボ、ピクノジェノールなどのシン
代替医療のアプローチによるシンポジウムが開催された。
ポジウムや、霊芝菌糸体培養抽出物に関するポスター発
当会の副会長を務められている帝京大学名誉教授の山
表があった。
● 編 集 後 記 ●
新年あけましておめでとうございます。本年もAHCC研究会をよろしく
お願い申し上げます。本誌もVol.8を迎え通算27号目を数えます。また、
ICNIMと名前を変えた研究報告会も年々知名度が高まり、研究奨励表彰等
とともにニュースに取り上げられるまでになりました。ひとえに会員の先
生方からのご支援・ご協力の賜物と心より御礼申し上げます。本誌では会
員の先生方からのご寄稿をお待ちしております。統合医療、補完代替医療、
機能性食品などにまつわるご研究分野のトピックスや、症例報告などお寄
せいただきたく、お願い申し上げます。
(事務局運営委員 三浦 健人)
AHCC研究会NEWS LETTER
2011 Winter Vol.8 No.1
2011年1月28日発行
発行:AHCC研究会事務局
〒004‒0839札幌市清田区真栄
363番地32
株式会社アミノアップ化学 内
TEL :011‒889‒2233
FAX:011‒889‒2375
E‒mail:[email protected]
制作: 株式会社ライフ・サイエンス
[禁無断転載]