2014年8月19日 主要国の石炭火力CO2削減ポテンシャルの評価: 運用補修と新設の効果 (公財)地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ 問い合わせ先:小田潤一郎、徳重功子、秋元圭吾 TEL: 0774-75-2304、E-mail: [email protected] 1.1 資料の構成、本評価の特徴 資料の構成 1. イントロダクション 2. 主な想定 3. CO2削減ポテンシャルの評価結果 4. まとめ 付録 本評価の特徴 既往のCO2削減ポテンシャル評価においては、既存設備含め全て新技術 水準の発電効率となる(理想的な)場合を想定することが多い 本評価は「運用補修改善による効果」と「新設・リプレースによる効果」を切 り分け、時系列的に示した点に特徴がある 2035年までを評価対象とする 評価対象地域はOECD諸国、及びアジア途上国(p.25参照) 2 1.2 問題意識 • • 3 世界のCO2排出量は2000年以降も増加 経済成長に伴う電力需要増大、及び石炭火力新設の影響も 世界のエネルギー起源CO2排出量 世界の発電量 25000 水力・その他 300 3557 20000 119 250 200 石炭火力 82 150 100 194 156 その他 発電端発電電力量 (TWh/年) エネルギー起源CO2排出量 (億tCO2/年) 350 931 2584 15000 10000 2657 220 2591 2740 原子力 4852 1058 1200 5000 50 天然ガス火力 石油火力 9144 6002 0 再生可能エネルギー 石炭火力 0 2000年 2011年 2000年 2011年 出典) IEA (2013)を基にRITE整理 • • このように既に多くの石炭火力を保有する中、石炭火力の発電効率向上によるCO2削減ポテンシャ ルを把握することは、具体的なCO2削減対策を進める上で重要な基礎情報となる 特に、既存設備に対応できる「運用補修の改善」によってどの程度のCO2削減が期待できるか定量 化することは短中期的方策の検討の際にも有効である 1.3 高効率石炭火力の概要 略称 概要(発電効率は全てLHV基準) USC USCはUltra Super Criticalの略。超々臨界圧微粉炭火力と呼ばれる。2014年時 点において商用運転中の石炭火力の中で最高の発電効率を誇る(ただし下の IGCCを除く)。70万kWクラスで発電端44.5%、送電端42%*1の発電効率。 4 A-USCはAdvanced Ultra-Supercriticalの略。先進超々臨界圧微粉炭火力と呼 A-USC ばれる。USCの次のフェーズの発電システム。600℃級のボイラー、蒸気タービ ンを用いるUSCに対し、 A-USCは700℃級。目標は48%(送電端)*1。 IGCC IGCCは、Integrated coal Gasification Combined Cycleの略。石炭ガス化複合 発電と呼ばれる。石炭をガス化し、そのガス燃焼によりガスタービンを回す。ガス タービンを回した後の排ガスで蒸気を発生させ蒸気タービンを回す。発電効率の 目標は49.2%(発電端)*2。 IGCC2 IGCC2は、1500℃級のガスタービンであったIGCCをさらに発展させ1700℃級と したもの。IGCCよりもさらに高い発電効率を目指す。発電効率の目標は51.3% (発電端)*2。 *1 http://www.env.go.jp/policy/assess//4-6tpg/attach/130426a-3.pdf *2 NEDO技術ロードマップ2009 補足) 発電端発電電力量とは発電所で発電した総電力量を指す。送電端発電電力量とは発電所から正味で送電した電力量を指す。発電所所内で自己 消費する電力(所内ロス)を発電端発電電力量から差し引くと送電端発電電力量となる。LHV(低位発熱量、真発熱量)は、HHV(高位発熱量、総発熱 量)と比較し、潜熱(水分の蒸発に使われる)の分だけ数値が小さい。LHV基準の発電効率はHHV基準の発電効率よりも見かけ上数値が大きくなる。 2. 主な想定 2.1 想定する3ケースの概要 ケース名称 運用補修と 発電効率の推移 5 新設・リプレースの種類 (詳細はp.9) (詳細はp.7,8) 基準 ケース • 現状トレンドに沿った運用 • 2015年から超々臨界圧微粉 補修が行われる 炭火力(USC)を導入 • 運転経過に伴い、発電効 • 2035年からIGCC*相当を導入 率が低下すると想定 対策 ケース • 基準ケースに比べ、早い時期 からIGCC*相当を導入 新技術 ケース • 現状と比較し運用補修の 積極的な改善が行われる • 運転経過に伴う発電効率 • 対策ケースよりさらに早い時期 低下を回避できると想定 からIGCC*、IGCC2*相当を導 入 * IGCC、IGCC2の概要についてはp.4を参照のこと。 2. 主な想定 2.2 運用補修改善ポテンシャル参考データ 6 運用補修改善ポテンシャルの設定 – アジア途上国は、1) アンケート調査、2) GSEP調査、3) NEDO調査、などを参考とした – インドは、「インド省エネルギー達成認証制度 Perform, Achieve and Trade (以下PATと記載)」 を実施しており、この中で発電所ごとの発電効率などを公表しており、今回、参考とした 運用補修改善により期待される効果(参考値) インド 中国 インドネシア (参考) ポーランド 調査主体など 改善ポテンシャル (%ポイント) インド電力省 (2012) PAT に基づく整理 *0 (右下の補足参照) NEDO調査*1 1.9%から2.4% Hajime Murata (2013)*2 4.2% アンケート調査 2.6% Hajime Murata (2011)*3 1.2% GSEP 電気事業連合会*4 2%以上 GSEP 電気事業連合会*5 約3% GSEP 日立製作所*6 4.8% およそ2% 補足) 「アンケート調査」は、各国の石炭火力保有の事業者に対し行ったものである。GSEPはGlobal Superior Energy Performance Partnershipの略であり、エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップと呼ばれる。 *1インド国石炭火力発電所における効率改善事業の案件(組成)調査 (2013) ※選炭の効果を除く *2 Assessment of Aged Power Plants to Improve the Efficiency, WEC *ただし最新鋭の蒸気タービンへ更新した場合 *3 Efficient and Clean Use of Coal (ECUC) Assessment of Suralaya Unit 7, WEC, 2011 http://www.worldenergy.org/documents/44b_assessment_of_suralaya_unit_7_murata_japan_.pdf *4 「エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ(GSEP)」によるインドネシアワークショップへの参加について http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/sonota/__icsFiles/afieldfile/2013/01/28/20130128_GSEP.pdf *5 GSEP Site Visit Activity in Poland http://www.pwc.com/jp/ja/japan-seminar/2013/assets/pdf/global-superior-energy131014-16-d5.pdf *6 Hitachi Coal Fired Power Plant Technology (2013) 9% 設計値に対する効率低下(%ポイント) 国 インドPATデータ( 2007-09年度平均) *0 民営 NTPC 州営・国営他 6% 州営・国営他 平均 3% ▲2.3% NTPC・民営平均 ▲1.6% 0% 0 10 20 30 40 50 2008年度時点の運転期間(年) “BEE_PAT_Booklet_Final.pdf” (2012)を基にRITE整理 補足) NTPC はインドの最大の電力会社。国営。NTPC・民営が設計効率まで、州 営・国営他がNTPC・民営水準まで、それぞれ効率改善が期待できると想定する と、それぞれ1.6%、2.3%の改善となる *0 インド電力省 2. 主な想定 2.2 運用補修と発電効率の推移(既設) 7 補足) 「アンケート結果」は、各国の石炭火力保有の事業者に対 し行ったアンケート調査を整理・集約したものである。 現状の発電効率や運用補修改善余地は、多くの場合、企業に とって秘匿すべきデータとされる。一方で、これらデータの観測評 価を行っていない発電所もある。そのためアンケートの有効回答 数・回答比率をいかに確保するかが鍵である。 運用補修改善ポテンシャルの設定 – 「日本」「先進国(日本以外)」「途上国」の3地域別に設定 日本 :日本でのアンケート結果を適用 先進国(日本以外):米国でのアンケート結果を適用 アジア途上国 :中国でのアンケート結果、インドPATデータなどを基に設定 <詳細についてはp.6及び付録を参照のこと> – 発電効率は運開後15年まで線形で低下し、その後は一定で推移すると想定 発電効率一定後の運用補修改善ポテンシャル (%ポイント値) 評価対象地域 蒸気条件 先進国 日本 以外 アジア途上国 発電効率(%) 新技術ケース 対策ケース 運用補修改善ポテン シャル (%ポイント) 既存設備 日本 発電効率推移と運用補修改善ポテンシャル 亜臨界圧 (PC) 0.48% 超臨界圧 (SC) 0.40% その他 - 亜臨界圧 (PC) 0.62% 超臨界圧 (SC) 0.59% その他 - 分類せず 2.0% 新規設備 運用補修改善 ポテンシャル 0.40% 基準ケース 0.40% 0~4年 2.0% 5~9年 10~14年 15年以降 運開からの経過年 2. 主な想定 2.2 運用補修と発電効率の推移(新設・リプレース) 8 運用補修改善の対象となるのは、5年以上経過した新設・リプレース設備 – 基準ケースでは、これら新設・リプレース分も運転経過に伴い発電効率が低下すると想定(これら が運用補修改善の対象) 運用補修改善ポテンシャルの設定 – 既設のポテンシャルと同等と設定 既設・新設・リプレース設備の推移イメージ 新設(5年未満) 発電効率推移と運用補修改善ポテンシャル 発電効率(%) 新設(5年以上経過したもの): 運用補修改善の対象 新技術ケース 対策ケース リプレース(5年以上経過したもの): 運用補修改善の対象 リプレース(5年未満) 発電量 (TWh/y) 4000 運用補修改善 ポテンシャル 既設: 運用補修改善の対象 3000 基準ケース 2000 1000 0~4年 5~9年 10~14年 15年以降 (設計効率) 0 2005 2010 2015 2020 2025 注) リプレースによる容量拡大、経年的な稼働率の変化はないものと仮定 新設・リプレースからの経過年 2. 主な想定 2.3 新設・リプレースによる発電効率向上 9 – 石炭火力新設量はIEA “World Energy Outlook 2013”のCurrent Policiesシナリオに基づく – リプレース設備容量は、50年(途上国は40年)経過した石炭火力の容量から算定(運開時点は Plattsデータに基づく) – 新設・リプレース共に、下の表に示した設備(相当の発電効率を持つ設備群)が導入されると想定 時点別の新設・リプレース設備の想定 シナリオ 地域 基準 ケース 先進国 対策 ケース 新技術 ケース 2010 2015 PC相当 アジア途上国 先進国 USC相当 アジア途上国 PC相当 2020 2025 2030 2035 USC相当 USC相当 IGCC相当 IGCC相当 先進国 USC相当 アジア途上国 新設・リプレース USC相当 IGCC相当 IGCC2相当 石炭火力の種類 発電効率 (発電端・LHV) 備考・出典 亜臨界圧微粉炭火力 (PC) [新規分] - 地域別の既設発電効率 +運用補修改善ポテンシャル 超々臨界圧微粉炭火力 (USC) 43.1% 石炭ガス化複合発電 (IGCC) [1500℃級] 49.2% 〃 (IGCC2) [1700℃級] NEDO技術ロードマップ2009 51.3% 注) 超臨界圧微粉炭火力(SC)に加え、A-USCなどの導入は明示的に考慮していない。ただし、PC、USC、IGCCなどの組合せにより 表現できているものとして扱う。発電システムの概要についてはp.4を参照のこと。 3.1 2020年の評価地域CO2削減ポテンシャル : 対策ケース 10 「①運用補修(既設・新設・リプレース設備)改善によるCO2削減量」、「②高効率プラント導入による CO2削減量」を別々に評価 対策ケースCO2削減量(基準ケース比・2020年)の評価結果から、主に次のことが言える – 評価地域合計のCO2削減量は538 (百万tCO2/年) – その内、①は229 (百万tCO2/年)と約43%を占め、運用補修による効果も大きい 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 対策ケースCO2削減量 (基準ケース比・2020年) 1000 1000 高効率プラント導入の効果 参考) 左図の内、米国、 日本を再掲 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 運用補修改善による効果(既設分) 538 500 500 309 299 169 60 169 0 57 32 3 22 OECD Americas 評価地域計 4 14 0 10 5 14 0 9 OECD Europe OECD Asia Oceania 先進国 119 45 85 中国 インド 途上国 80 7 32 35 19 5 11 その他アジア 53 0 米国 31 2 20 3 日本 0 0 3 3.2 2030年の評価地域CO2削減ポテンシャル : 対策ケース 11 対策ケースCO2削減量(基準ケース比・2030年)の評価結果から、主に次のことが言える – 評価地域合計のCO2削減量は925 (百万tCO2/年) – 2020年の結果と比べ2030年は図の赤部、即ち運用補修改善による効果(新設・リプレース分)が 大きく伸びる – 長期的には図の緑部、即ち日本の貢献により高効率プラント導入を加速させ、その後の運用補 修についても日本が関わっていくことで図の赤部の削減が期待できる 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 対策ケースCO2削減量 (基準ケース比・2030年) 1000 1000 925 高効率プラント導入の効果 参考) 左図の内、米国、 日本を再掲 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 運用補修改善による効果(既設分) 596 486 500 500 265 180 177 103 85 149 0 7 11 OECD Americas 評価地域計 11 19 2 6 11 19 1 7 OECD Europe OECD Asia Oceania 先進国 125 130 29 18 96 中国 インド 途上国 121 94 16 11 その他アジア 96 0 米国 80 7 9 7 日本 4 0 2 3.3 日本のCO2削減ポテンシャル 12 – 運用補修改善によるCO2削減ポテンシャルは2.7 (百万tCO2/年)程度 – ただし、日本は適正な運用補修を行っているため、この削減ポテンシャルは既に達成済み*1 – つまり「仮に適正な運用補修を実施できなかった場合、潜在的にこの程度の排出増となる」と解釈 すべき *1 このように、運用補修を努力し既に図の青部を一部達成している地域としては、ドイツ、韓国などが考えられる – より大きな削減量を確保するには、新技術ケースで想定したような高効率発電設備の導入が必要 対策ケース (基準ケース比) 新技術ケース (基準ケース比) 20 高効率プラント導入の効果 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 15 運用補修改善による効果(既設分) 10 5 0.1 0.0 2.8 0.1 0.0 2.9 0.1 0.0 2.7 0.1 0.2 2.5 2010 2015 2020 2025 4.2 4.2 0.4 2.3 0.6 1.8 2030 2035 0 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 20 高効率プラント導入の効果 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 15 運用補修改善による効果(既設分) 10 11.6 13.3 6.4 5 2.6 0.1 0.0 2.8 0.1 0.0 2.9 0.0 2.7 0.1 2.5 0.3 2.3 0.6 1.8 2010 2015 2020 2025 2030 2035 0 3.4 中国のCO2削減ポテンシャル 13 – 中国は多くの石炭火力を保有していると同時に、今後の新設規模も大きいと見込まれる – 2030年時点の「①運用補修改善によるCO2削減量」は213ないし221 (百万tCO2/年)、「②高効率 プラント導入によるCO2削減量」は265ないし465 (百万tCO2/年)と共に大きい – 中国の①だけで、日本の石炭火力からのCO2排出総量と近い水準である(p.16参照) 対策ケース (基準ケース比) 新技術ケース (基準ケース比) 1000 高効率プラント導入の効果 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 750 運用補修改善による効果(既設分) 500 175 268 169 250 158 0 265 163 0 32 15 61 45 85 2010 2015 2020 87 125 155 101 96 88 2025 2030 2035 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 1000 高効率プラント導入の効果 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 750 運用補修改善による効果(既設分) 500 345 494 252 250 158 0 465 163 0 32 15 61 45 85 2010 2015 2020 85 117 142 101 96 88 2025 2030 2035 3.5 インドのCO2削減ポテンシャル 14 – 今後、インドでも新設が大きく見込まれており、比率で見れば新設時に高効率プラントを導入するこ との効果が大きい – 「②高効率プラント導入によるCO2削減量」は、2030年時点で130ないし227 (百万tCO2/年)である – また新設・及びリプレース設備の運用補修も大きなポイントであり、これら新プラントの運用補修の 改善によるCO2削減ポテンシャルは、2030年時点で26ないし29 (百万tCO2/年)となる 対策ケース (基準ケース比) 新技術ケース (基準ケース比) 400 高効率プラント導入の効果 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 300 運用補修改善による効果(既設分) 200 100 0 84 130 131 74 77 80 0 30 2 32 7 32 17 27 29 18 44 13 2010 2015 2020 2025 2030 2035 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 400 高効率プラント導入の効果 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 300 運用補修改善による効果(既設分) 200 166 100 0 227 246 117 74 77 0 30 2 32 7 32 15 27 26 18 38 13 2010 2015 2020 2025 2030 2035 3.6 対策ケースと新技術ケースの比較 15 今回の評価対象地域におけるCO2削減ポテンシャルの結果から、主に次のことが言える – 2020年といった時間軸で考えると、プラント建設に比べ相対的に障害となる要素が少ないと考え られる運用補修の改善は重要であり、今後とも注目すべき手段だと考えられる(図の青部のCO2 削減を目指す方向性)。 – 長期的には、高効率プラントの開発・普及の重要性が増す。日本の貢献により高効率プラントを 世界的に普及させ(図の緑部)、その後の運用補修についても日本が関わっていくことが重要で ある(図の赤部のCO2削減もさらに目指す方向性)。 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 評価地域計(OECD諸国、アジア途上国) 1500 1,334 高効率プラント導入の効果 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 1000 運用補修改善による効果(既設分) 925 1,017 711 538 596 500 482 309 0 60 169 59 169 180 168 149 149 対策ケース 新技術ケース 対策ケース 新技術ケース 2020年 2030年 3.7 石炭火力からのCO2排出見通し 16 基準ケース 及び 対策ケース 温暖化対策を進めるために は、このようなCO2排出量や CO2削減ポテンシャルの規模 感を共有することが重要であ る 6000 中国 中国の基準ケース 石炭火力からのCO2排出量 (MtCO2/年) 今後とも中国、インドの石炭 火力の増加が見込まれ、これ に伴いCO2排出の上昇が予 想される 中国の削減ポテンシャルは、 日本の石炭火力CO2排出総 量よりも大きい(p.13参照) 5000 中国の対策ケース 4000 3000 2000 補足)石炭火力発電量・設備容量はIEA “World Energy 1000 Outlook 2013”のCurrent Policiesシナリオに基づく。 そのため、例えば米国の場合、米国EPAが2014年6 月に示した規制案とは大きく異なる。 注) 図中の実線は基準ケース、点線は対策ケースの推移。 本図では主要地域のみ抜粋。 米国 OECD Europe 0 2005 インド 日本 2010 2015 2020 2025 2030 2035 4. まとめ 17 短中期(2020年) 1. 2020年の石炭火力CO2削減ポテンシャル(評価地域計)は、 対策ケースで538 (百万tCO2/年)である [対基準ケース] 2. この内、運用補修改善による削減ポテンシャルは229 (百万tCO2/年)と、削減 ポテンシャルのおよそ4割を占める 3. 日本の役割を考えると、率先して海外石炭火力の運用補修改善に取り組むこ とが重要である 中長期(2030年) 4. 2030年の石炭火力CO2削減ポテンシャル(評価地域計)は、対策ケースで925 (百万tCO2/年)、新技術ケースで1,334 (百万tCO2/年)である[対基準ケース] 5. 中長期的にはやはり高効率プラント導入の直接効果が大きくなる 6. 中長期的に、発電効率に優れた石炭火力(例えばA-USC*やIGCC*)の開発・ 世界的普及を進めることが日本の役割として期待される * A-USC、IGCCの概要については、p.4を参照のこと。 付録1. 2020年の評価地域CO2削減ポテンシャル :新技術ケース 18 「①運用補修(既設・新設・リプレース設備)改善によるCO2削減量」、「②高効率プラント導入による CO2削減量」を別々に評価 新技術ケースCO2削減量(基準ケース比・2020年)の評価結果から、主に次のことが言える – 評価地域合計のCO2削減量は711(百万tCO2 /年) – その内の①は229 (百万tCO2 /年)と約32%を占め、運用補修による効果も十分大きい – 地域別に見ると、中国、インド、米国などのシェアが大きい一方、日本は評価地域計の1%未満 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 新技術ケースCO2削減量 (基準ケース比・2020年) 800 800 711 高効率プラント導入の効果 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 600 600 運用補修改善による効果(既設分) 482 382 400 参考) 左図の内、米国、 日本を再掲 400 252 200 156 59 169 0 64 39 2 22 OECD Americas 評価地域計 36 25 0 10 OECD Europe OECD Asia Oceania 先進国 117 7 32 45 12 20 0 9 85 中国 200 インド 途上国 53 37 5 11 その他アジア 60 0 米国 38 2 20 5 日本 3 0 3 付録1. 2030年の評価地域CO2削減ポテンシャル :新技術ケース 19 新技術ケースCO2削減量(基準ケース比・2030年)の評価結果から、主に次のことが言える – 評価地域合計のCO2削減量は1,334 (百万tCO2/年) – その内の「①運用補修の改善による効果」は317 (百万tCO2/年)と約24%を占める – 2020年と比較し2030年は新設量の増大に伴い「②高効率プラント導入によるCO2削減量」の比 率が上昇 – 長期的には、高効率プラント導入の効果がより大きくなる 年間CO2削減ポテンシャル (MtCO2/年) 新技術ケースCO2削減量 (基準ケース比・2030年) 1500 1500 1,334 高効率プラント導入の効果 参考) 左図の内、米国、 日本を再掲 運用補修改善による効果(新設・リプレース分) 運用補修改善による効果(既設分) 1000 1,017 1000 679 500 465 168 149 0 175 159 6 11 OECD Americas 評価地域計 55 47 2 6 25 33 1 7 OECD Europe OECD Asia Oceania 先進国 500 271 227 26 18 117 96 中国 インド 途上国 121 94 16 11 その他アジア 165 0 米国 150 6 9 12 14 0 2 日本 付録2. 石炭火力からのCO2排出見通し 基準ケース 及び 新技術ケース 20 6000 石炭火力からのCO2排出量 (MtCO2/年) 中国の基準ケース 中国 5000 中国の新技術ケース 4000 3000 2000 1000 米国 OECD Europe 補足)石炭火力発電量・設備容量はIEA “World Energy Outlook 2013”の Current Policiesシナリオに基づく。 そのため、例えば米国の場合、米国 EPAが2014年6月に示した規制案と 大きく異なる。 インド 日本 0 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 注) 図中の実線は基準ケース、点線は 新技術ケースの推移。 本図では主要地域のみ抜粋。 付録3. インドPAT発電効率(実績値実数) 21 インド石炭火力 発電効率実績値( 2007-09年度平均PATデータ、発電所別) 85 85 87 32% 53 73 74 78 28% 62 44 24% 90 93 87 79 85 送電端発電効率 (%, LHV) 民営 NTPC 36% 72 89 51 82 85 74 75 81 77 80 93 77 75 99 78 82 73 78 50 68 58 77 60 71 81 59 75 82 85 85 70 59 39 66 60 42 78 60 61 38 81 79 65 20 57 51 72 66 15 53 62 81 56 58 74 20% 注) は、褐炭を 主燃料としている 「州営・国営他」 の発電所 91 88 94 州営・国営他 64 55 補足)図注の数値は 稼働率(%)を表す。 「NTPC」は、インド最 大の電力会社。国営。 51 25 40 59 21 76 42 38 16% 0 10 20 30 2008年度時点の運転期間(年) 出典)インド電力省 “BEE_PAT_Booklet_Final.pdf” (2012)を基にRITE整理(N = 82発電所) 40 50 付録3. インドPAT発電効率(実績値実数) 22 送電端 発電効率 実績値(2007-09年度平均) – 発電効率実績値が、どのような要素と連関があるかを重回帰により評価(N = 82発電所) – 統計的有意性及び論理的説明力の観点から有力と見られる回帰式が多数特定されたが、ここで その中から2つの式を示す 回帰式1 送電端発電効率実績値(%) =20.2%+1.9%*全容量(GW)–0.09%*運転期間(年)+0.12*稼働率(%) –2.5%*褐炭ダミー +0.041*海外炭比率% (4.4) (-3.7) (7.3) (-2.6) (1.9) 回帰式2 送電端発電効率実績値(%) =20.7%+1.7%*全容量(GW)–0.10%*運転期間(年)+0.11*稼働率(%) –2.6%*褐炭ダミー (3.9) (-4.1) (6.8) (-2.7) ()内はt値、R2=0.71 +1.2%*NTPC・民営ダミー (1.9) ()内はt値、R2=0.71 重回帰分析の結果 – 全容量(発電所の設備容量合計)、運転期間、稼働率は発電効率と連関が強い – 褐炭を利用する発電所は、相対的に2.5%ポイント程度、劣る発電効率と評価される – 海外炭を利用する発電所、あるいは運営がNTPC・民営であれば、そうでない発電所よりも優れ た発電効率となっている – これはNTPC・民営の方が海外炭(灰分がインド国内の石炭よりも少ない)を活用する傾向にあ るためと考察される [海外炭比率とNTPC・民営ダミーの相関係数は0.3] 出典)インド電力省 “BEE_PAT_Booklet_Final.pdf” (2012)を基にRITE整理 付録4. インドPAT発電効率(対設計値) 23 インド石炭火力 設計値と実績値の差( 2007-09年度平均PATデータ、発電所別) 9% 設計値に対する効率低下(%ポイント) 61 注) は、褐炭 を主燃料として いる「州営・国 営他」の発電所 75 64 39 6% 60 77 60 68 58 44 85 74 59 78 74 75 58 82 38 66 20 70 80 91 10 76 62 40 補足)図注の数値は 稼働率(%)を表す。 「NTPC」は、インド最 大の電力会社。国営。 72 55 15 81 82 79 25 77 85 82 74 0% 66 66 77 50 51 65 56 59 42 78 51 78 85 71 57 99 73 93 73 87 88 81 85 90 93 85 72 94 87 78 81 51 89 85 75 79 53 42 53 59 21 0 州営・国営他 38 62 3% 民営 NTPC 20 80 30 2008年度時点の運転期間(年) 出典)インド電力省 “BEE_PAT_Booklet_Final.pdf” (2012)を基にRITE整理(N = 82発電所) 40 50 付録4. インドPAT発電効率(対設計値) 24 設計値に対する発電効率実績(2007-09年度平均)の低下(乖離)%ポイント – 設計値と実績発電効率の差異が、どのような要素と連関があるかを重回帰により評価 – サンプル数(N)= 82発電所 – 統計的有意性、及び論理的説明力の観点にて選択された重回帰式は次の通り 設計値と実績値の差(%ポイント) =6.5% –0.039*稼働率(%) –1.5%*(NTPC・民営ダミー) (-3.8) (-3.5) ()内はt値、R2=0.37 出典)インド電力省 “BEE_PAT_Booklet_Final.pdf” (2012)を基にRITE整理 ※1 稼働率低下により発電効率が低下するという技術的影響もある。さらに、出力低下も深刻 となるほど著しい発電効率低下となった場合、設計MW当たりの発電量で算定した今回の稼 働率は(例え稼働時間が長い場合でも)低下する。 ※2 州営の石炭火力は、相対的により灰分の多い石炭を使用している可能性がある。インド国 内炭の典型的灰分は36%から44% 。 CEA, Review of Performance of Thermal Power Stations, 2013 も参照のこと。 9% 設計値に対する効率低下(%ポイント) 重回帰分析の結果 – 稼働率が高いほど設計値に近い優れた 発電効率となる(あるいは、優れた発電効 率の設備を優先的に稼働)※1 – 国営かつインド最大の電力会社NTPC、 及び民営の石炭火力は、州営・国営他に 比べ稼働率差異を考慮しても1.5%ほど設 計値との乖離が小さい(これはNTPC、民 営が相対的に優れた運転補修を行ってい る影響もあると考えられる)※2 インド石炭火力 設計値と実績値の差 ( 2007-09年度平均PATデータ) NTPC 民営 州営・国営他 6% 3% 0% 0% 25% 50% 稼働率(%) 75% 100% 付録5. 評価対象地域と具体的な国名 分析対象地域 具体的な国名 OECD Americas 米国、カナダ、メキシコ、チリ OECD Europe EU15ヶ国、チェコ、エストニア、ハンガリー、アイスランド、ポーランド、 スロバキア、トルコ、ノルウェー、スイス、スロベニア、イスラエル OECD Asia Oceania 日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国 中国 中国 インド インド その他アジア 台湾、シンガポール、フィリピン、モンゴル、ベトナム、ラオス、 カンボジア、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー、 バングラデュ、スリランカ、ブータン、ネパール、パキスタン、 アフガニスタン、北朝鮮、クック諸島、東ティモール、フィジー、 仏領ポリネシア、キリバス、マカオ、モルディブ、ニューカレドニア、 パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、バヌアツ 25
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