3-3 安全管理体制の見直し 輸送の安全を確保するための監査は、従来から、自主監査として現場部門を対象に行っ てきましたが、新たな安全管理体制の構築にあたり、管理部門を対象として、安全管理に 関する内部監査を実施します。 この内部監査は、安全マネジメント態勢が適切に確立・実施・維持・機能しているかど うかを定期的に確認するもので、その結果を踏まえて、安全マネジメント態勢の継続的改 善を行い、輸送の安全性の向上に取り組んでいきます。 4.安全対策の実施状況 輸送の安全の確保は、交通事業経営の根幹であることを深く認識し、交通事業者の使命で ある「お客さまの安全の確保」をめざして、事故・災害の未然防止に努めています。以下に 安全対策の実施状況を紹介します。 4-1 安全に関する設備投資 安全関連設備投資の主なものは、施設・車両の維持管理に必要な更新・改良、地下鉄駅 火災対策設備の整備(火災対策基準に適合) 、耐震補強などです。 安全に係る設備に必要な施策を計画的に実施しており、平成 18 年度は全体の投資額 193 億円(新線建設除く)のうち 56%にあたる 108 億円を安全関連設備対策に投資しました。 安全関連設備投資実績 300 250 225 億円 227 億円 193 億円 200 150 安全以外 約 44% 安全以外 約56% 安全以外 約57% 安全関連 約44% 安全関連 約43% 安全関連 約56% H16年度 H17年度 H18年度 100 50 0 8 ① 輸送指令所(運転指令所・車両指令) 輸送指令所(運転指令所)は、全列車の運行状況がひ と目でわかる列車集中表示盤、各駅の信号やポイントを 1 箇所で制御する集中制御盤、列車無線及び駅ホーム等を 映し出す CCTV システム(運転指令用テレビジョン装置) を備え、全列車の運行を集中管理しています。 現在、平成 24 年度を目標に各号線の運転指令所の統合 化を進めています。輸送指令所を統合することにより、 路線にわたる情報の共有化を図り、より迅速な対応がで き、効果的な事故復旧体制や危機管理体制の確立をめざ 輸送指令所 しています。 輸送指令所内には、車両指令があり、車両に関わる異常が発生すれば、直ちに情報 収集し対処します。電気設備関係の異常が発生した場合は、別途、各種電気設備を 24 時間体制で監視・運用する電気指令所が受け付け、システムを総合的に判断し対処し ます。運転・車両・電気指令所が連携をとることにより、迅速な対応ができ、列車運 行上の安全確保、輸送の安定確保ができています。 運転保安システムについては、昭和 47 年に地下鉄全線において、ATS(自動列車停 止装置:停止信号過走時に機械的に列車に情報を伝え非常制動で停止させるものです) から ATC(自動列車制御装置)への切り替えを完了しています。 なお、長堀鶴見緑地線・ニュートラムは ATO 運転を行っています。 ATC(自動列車制御装置) 大阪市の地下鉄の列車は閉そく区間ごとに設けられた信号機の現示に従って運行 します。例えばある区間内に列車が存在する時、その後方の信号機は赤・赤・黄・ 緑といったように現示します。 赤は停止でそこから進めません。黄は注意を意味し、40km/h を超えない速度で運 転しなければなりません。緑は進行で、70km/h を超えない速度で運転できます。 もし、列車が信号機の現示する速度以上で、ある区間に進入した場合、自動的に ブレーキを作動させ、規定速度以下に制御する装置が ATC です。 9 ATO(自動運転装置) ATO は、ATC を基本にして、発車制御、定速制御、定位置停止制御などの機能を 追加したもので、発車から停車まで速度を自動的に制御するシステムです。長堀鶴見 緑地線の場合、発車は運転士がボタンを押すことによって行われますが、停車は自動 的に行われます。 システムとしては発車後、定められた速度まで自動的に加速し、その後は定速運転 を行い、速度制限箇所は自動的に制限速度で運転し、停車駅に近づくと駅手前に設置 した地上子から停止位置までの距離情報を得て、定位置停止制御によって停車させま す。 ② ホーム転落防止対策 (1) 可動式ホーム柵 平成 18 年 12 月に開業した今里筋線では、お客さまの 駅ホームからの転落や列車との接触を防止するため、駅ホ -ムに可動式ホーム柵を設置しました。また、長堀鶴見緑 地線では、平成 22 年度の運用開始に向けて各種準備作業 可動式ホーム柵 に着手しました。 (2) 非常停止合図装置 お客さまがホームから線路に転落した場合などに、駅員、 お客さまがこの非常停止合図装置を操作することで、ホー ム及びトンネル内に設置した非常停止合図器を点灯させ、 これを乗務員が確認し、ブレーキを操作して列車を停止さ せることができます。非常停止合図装置は全駅に設置して 10 非常停止合図装置 います。 また、長堀鶴見緑地線、今里筋線では非常停止装置を設置しており、操作します と、列車を自動的に停止させ、お客さまの安全を確保します。 (3) 連結面間転落防止装置 駅のホームで、よろめいたり、出入口と間違えたりして、連結 器のすきまから軌道への転落を防止するため、車体側面に沿 って幌布と同材料の保護布を張り、お客さまの転落を防止して います。 連結面間転落防止装置 ③ 地下鉄駅の火災対策設備の整備(火災対策基準適合の推進) 平成 15 年 2 月に韓国で発生した地下鉄火災事故を受け、更なる安全性の向上を図る ため、平成 16 年 12 月に国の火災対策基準が改正されました。この新基準に適合させ るため、乗降階段に防火シャッターを整備、売店の不燃化・区画、避難経路図の整備 などを進めています。 平成 18 年度は 8 駅整備し、達成率は 25%になりました。平成 19 年度は、7 駅整備 予定であり、平成 25 年度整備完了予定です。 防火シャッター(開) 防火シャッター(閉) ④ AED(自動体外式除細動器)の設置 地下鉄をご利用いただくお客さまの救命率向上を図る ため、駅に AED を設置しています。 AED を用いた除細動については、心肺蘇生法の一部で あり、心肺蘇生法全体の正しい理解が必要であるため、 大阪市消防局の協力を得ながら応急手当普及員を養成し、 全駅職員を対象に AED の取扱いを含めた応急手当に関 する講習を行っています。 平成 18 年度は、68 駅に 77 台設置済みです。 平成 19 年度は、65 駅に 65 台設置し、全駅に設置完了 11 AED(自動対外式除細動器) の予定です。 AED (自動体外式除細動器) Automated External Defibrillator AED とは、心臓の突然停止(心室細動)の際に電気ショックを与え、心臓の動きを戻す ことを試みる医療機器です。突然の心停止状態になったとき「AED」を使って緊急に処 置すれば、救命率が増加すると言われています。 (心停止状態では、1 分経過するごとに救命率が約 10%低下します。AED は、一般 の方でも使用できる医療機器であり、少しでも早い処置による救命が期待できます) ⑤ 鉄道テロ対策 地下鉄内でのテロを防止するために、警察等の関係機関と連携して、自主警備体制 の徹底を図り、駅構内、列車内などの巡視の強化等を実施しています。 (1) 職員による駅構内・列車内の巡回 (2) 駅構内における防犯監視カメラの増設 (3) お客さまへの不審物等発見の場合の協力要請 (放送及び掲示) (4) 事故・事件等発生時の通報・連絡・指示体制の 整備 (5) 「見せる警備」として、「防犯カメラ作動中」の表 示、駅売店職員等「テロ防止協力者ワッペン」 駅構内巡回 の着用 (6) 接近表示器の流し文字による注意喚起 接近表示器の流し文字 ⑥ 車掌用列車監視設備 お客さまの乗降状況の安全を車掌が確認するための補助手段として、ホームにモニ ターテレビを設置しています。また、御堂筋線の特にお客さまの多い主要駅には、ホ ーム駅職員が戸閉めの状況を車掌に知らせる戸閉合図装置を設置し、安全輸送に努め ています。 ホームのモニターテレビ 12 戸閉合図装置(○表示) ⑦ 列車無線設備 列車と輸送指令所(運転指令所)との間の連絡に使用する もので、路線ごとに独立したシステムとなっており、業務連 絡の他、緊急保安通信用として、非常通話機能に切り換える と、優先して通話でき、また、緊急時、非常停電の機能があ ります。 運転席内無線電話 ⑧ 車内非常通報装置 非常時においてお客さまが、列車に設置している車内非 常通報装置の押しボタンを押すことで乗務員(車掌・運転 士)とインターホンで通話ができます。現在、220 列車中 199 列車(91%)に設置しています。 車内非常通報装置 4-2 施設・車両の保守管理状況 安全・安定輸送を目的として、電気・車両・土木等施設の保守管理を適切に行い、お客 さまが安心して、地下鉄・ニュートラムをご利用頂けるよう、日々努めております。 ① 電気指令システム 電気指令所では、多種多様な電気設備をトータルに管理 しています。列車の運転や駅の照明などに必要な電力の供 給を、コントロールするとともに、列車の運行や営業に必 要な電気設備を 24 時間監視し、故障等の迅速な対応を行 い、列車運行の信頼性の向上を図っています。 ② 車両の保守 電気指令所 地下鉄車両の検査は安全輸送を支える重要な要素です。 その検査は検車場で行っています。検車場では 8 年以内に行う車両の最高検査である 全般検査、4 年以内に行う重要部検査、3 ヶ月以内に行う月検査、10 日以内に行う列 車検査等、法に定められた検査や車体、車内の清掃等の日常整備に加えて、車両改造、 故障修理などを行っています。 中百舌鳥検車場 緑木検車場 13 ③ 土木等施設の保守 軌道は、レール、締結装置、まくらぎ、道床砕石などで構成されており、列車が安 全で快適に走るための通路といえます。軌道の保守作業は、列車の安全運行を維持す るための重要な作業であって、主に営業が終わる深夜から翌朝の初発列車までの短い 時間帯に行わなければならず、効率的に作業をすすめるため、さまざまな保線用大型 作業車を導入し、安全で、乗り心地のよい地下鉄をめざしています。 また、トンネル等の土木構造物や駅の仕上げ材などについても、定期的に点検を実 施し、安全に列車が運行できるように、維持管理に努めています。 構築点検 4-3 ① 保線用大型作業車 職員の安全に関する取組み 輸送の安全を確保するために必要な知識、技能を 備えた人材の育成や、技術の継承と向上などを目的 として、現場において、年間教育計画に基づき緊急 時の対応処置訓練、機器取扱い訓練などの職場研修 を実施しています。 応急用工具取扱訓練 ② その他安全に関する職場内活動としては、「KYT (危険予知トレーニング)活動」 「ゼロ災運動」 「OJT (職業指導手法の一つ。仕事の中で知識・技能などを 指導し、修得させる方法) 」などに取り組み、職員の 安全意識の高揚や職場の安全管理に努めています。 KYT 大会 14
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