宗教学通論(3) 「宗教学通論」授業用ハンドアウト(3):現代世界と宗教(1) ──尖鋭化と拡散── Ⅰ 尖鋭化 1 宗教の絡む紛争 2 ファンダメンタリズム(原理主義)、ペンテコスタリズム、聖霊派 3 近代の合理性と「ファンダメンタリズム」の排他主義・不寛容との関係(試論) Ⅱ 拡散 Ⅲ グローバル化がもたらした諸問題 参考文献) 教科書、序章第 2 節「現代世界と宗教」pp.5-7 教科書、第 4 章「世俗化論」pp.193-194 教科書、第 4 章「暴力」pp.202-203 教科書、第 4 章「ナショナリズム」 教科書、第 4 章「ファンダメンタリズム」pp.207-208 教科書、第 4 章「新宗教・ニューエイジ」pp.125-131 教科書、第 4 章「医療と宗教」pp.213-214 教科書「コラム 宗教と科学」p.154 教科書、第 4 章「グローバル化」pp.199-200 ジル・ケペル『復讐する宗教』晶文社、1993 年 メレディス・B・マクガイア『宗教社会学──宗教と社会のダイナミックス』明石書店、 2008 年 井上順孝編『現代宗教事典』弘文堂、2005 年 ジョン・ヒック『ジョン・ヒック自伝──宗教多元主義の実践と創造──』トランスビュ ー、2006年 保呂篤彦「授業のページ」(ホームページ)に掲載している新聞記事などの資料 以下は、特に「ファンダメンタリズム」に関する資料 森孝一『宗教からよむ「アメリカ」』講談社、1996 年 栗林輝夫『ブッシュの「神」と「神の国」アメリカ』日本基督教団出版局、2003 年 蓮見博昭『宗教に揺れるアメリカ』日本評論社、2002 年 坪内隆彦『キリスト教原理主義のアメリカ』亜紀書房、1997 年 井上順孝・大塚和夫(編)『ファンダメンタリズムとは何か』新曜社、1994 年(絶版) マリーズ・リズン(中村圭志)『ファンダメンタリズム』岩波書店、2006 年 世界の宗教状況──尖鋭化と拡散── 宗教は胡散臭いので無関心であるという日本人の意識とは裏腹に、世界では、宗教がさ まざまな紛争を引き起こしているほか、宗教と切り離せない生活を送っている多くの人々 がおり、無関心という姿勢を取ることを許さない状況がある。(「尖鋭化」) F.シュライアマハー:『宗教について──宗教を軽蔑する人々のなかにいる教養ある人 々への講話』(1799) ジル・ケペル『復讐する宗教』晶文社、1993 年 -1- 宗教学通論(3) それとは別に、特に科学技術の発展した諸国には、宗教が従来のように人々を統合し、 大きな力を発揮するといったあり方とは異なるあり方に変化しつつあるようにも見える現 象も顕著になってきている。(「拡散」) Ⅰ 尖鋭化 1 宗教の絡む紛争 ☆中東 ○パレスチナ問題 「ディアスポラ」 「シオニズム」(「シオン」はエルサレムの別名、「約束の地」にユダヤ人国家を作ろうと する運動) 1947 年、国連による分割案(イスラエル 52 %、パレスチナ 48 %) 1948 年、イスラエル独立宣言─→第一次中東戦争 第一次中東戦争の結果、エルサレムは東地区をアラブ人国家ヨルダン領、西地区をイスラ エル領、東地区にある旧市街地(各宗教の聖地がある歴史的に最も重要な地区*)は「国 際管理地区」として国連が管理するという取り決めが行われた。しかし、1967 年の第三 次中東戦争の結果、事実上イスラエルが東エルサレム全体をも支配下に置くようになった。 (国際的に認められているわけではないが。) *キリスト教の「聖墳墓教会」、イスラームの「岩のドーム」、ユダヤ教の「嘆きの壁」 がここに、それぞれ隣接してある。─→この授業で鑑賞する予定のビデオに何れも登場す る。 また、ホームページ上に置いてあるヤコブ・ラブキンの論文「イスラエル 建国を祝え ぬユダヤ人も」を参照のこと ☆ヨーロッパ ○北アイルランド カトリック系住民とプロテスタント系住民〈ナショナリストとユニオニスト〉の間の紛争。 16 世紀に宗教改革が起こり、プロテスタントキリスト教の一つである英国国教会を立て たイギリスが、アイルランドを攻めて植民地化した。イギリス政府はアイルランドに元々 住んでいたカトリックの住民に、国教会への改宗を迫るとともに、国教会の信者をアイル ランドに移住させる政策を採った。 1922 年、アイルランド南部は自治領(アイルランド自由国)、北部(アルスター地方の 6 州)はイギリスの支配下に。南部のアイルランドは、1944 年 アイルランド共和国とし て完全に独立したが、この北部アルスター地方では、多数派(6 割)のアングロ・サクソ ン系のプロテスタントがイギリスとの関係を重視し、イギリス政府の支援の下、カトリッ ク系住民を政治的・経済的に差別する政策を行ったため、少数派(4 割)でケルト系のカ トリックは公民権運動を行ったり、アイルランドへの統合を求めたりして抵抗した。これ に対してプロテスタント側が、イギリスの警察・軍による武力的鎮圧で対処したため、カ トリック側も IRA〈Irish Republic Army〉(その政治組織が「シン・フェイン党」)による テロ活動などで応戦した。1972 年にデモをしていたカトリック系住民がイギリス軍によ って殺害された「血の日曜日」事件が起こるなど、多くの犠牲が出た。 なお、メレディス・B・マクガイア『宗教社会学──宗教と社会のダイナミックス』明 石書店、2008 年、pp.328-351 において、この問題が宗教社会学的に分析されている。そ こでは、この紛争が、二つの「市民宗教」(civil religion)の対立として理解されている。 -2- 宗教学通論(3) ○ユーゴースラビア紛争(バルカン半島) 旧ユーゴスラビアの分裂(チトーの死によって):モンテネグロ、セルビア、クロアチア、 スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア セルビア正教: セルビア人 ローマ・カトリック: ムスリム: スロベニア人、クロアチア人 ボスニア人、アルバニア人(アルバニアという国は別にあるが、アルバニア 系住民が、ボスニアに住んでいる。) 1992 年 セルビア人、クロアチア人、ムスリムの 3 勢力でボスニア戦争 1995 年 和平協定 セルビア・モンテネグロのコソボ自治州で人口 90 %のイスラム教徒アルバニア系住民が 独立を求め、ギリシャ正教を信じるセルビア人を対立している。 ☆アジア ○カシミールの印パ戦争およびインドにおけるヒンドゥー教とイスラームの対立 ●インド・パキスタン戦争(1947-49、1965-66、1971) カシミール帰属問題に端を発する。1947 年印パ分離独立の際、カシミール地方は、ヒ ンドゥー 20 %、イスラーム 70 %。しかし、藩王(マハラジャ)ハリ・シングはヒンドゥ ー教徒だった。彼は元々印パ両国間で中立を保つ自治領の地位を求めていたが、独立の前 後に併合をねらったパキスタンが、パシュトゥーン人の民兵を投入したため、藩王がイン ドに助けを求め、引き替えにインドへの帰属を承認した。これによって、第 1 次印パ戦争 が起こった。1948 年末には、帰属決定を住民投票に委ねるとした国連決議を両国が受諾 し、翌年には停戦ラインが確定され、暫定的な分割領有が開始された。しかしその後もカ シミールでの緊張を原因として停戦が破られ、第二次・第三次の印パ戦争が起こり、その 後停戦ラインを若干変更した実行支配線が決められ、それが事実上の国境となっている。 1998 年には両国とも核武装を果たしており、紛争の激化が大いに危惧されている。 ●インド北部アヨーディア(ayodia)にあるモスクをめぐるヒンドゥー原理主義者とム スリムとの激しい緊張。アヨーディア(ayodia)はヒンドゥー教の聖地『ラーマーヤナ』 の主人公ラーマも生誕地。ガンジス川の支流ガーガラ河畔にあり、岸はすべて「ガート(沐 浴場)」になっている。(Cf. 映画『ボンベイ』(監督:マニラトナム)「ガート(沐浴場)」 は、授業で鑑賞予定のビデオ「ヒンドゥー教」に登場する。 ○スリランカにおける民族対立 シンハラ人(1400 万人、仏教徒)とタミル人(350 万人、ヒンドゥー教徒)の対立。 1972 年にイギリスから独立し、国名を「セイロン」から「スリランカ」に変更した政 府は、シンハラ語を公用語、仏教を国教に定め、シンハラ人優遇政策をとり、タミル語を 話すヒンドゥー教徒タミル人がこれに反発した。彼らはインド南部に住む同じタミル人に 支持されて、分離独立を求めて暴動を起こした。1987 年にタミル語も公用語に加えられ、 2002 年には一応の停戦が実現したが、対立が解決したわけではない。 ○東ティモール独立 インドネシア東部の東ティモールの人口は約 93 万人(2004 年)で、ローマ・カトリッ ク教徒が多く、1974 年のポルトガル植民地支配が終わると独立派とインドネシア帰属派 に分かれて内戦となった。1976 年にインドネシアが軍隊を送って併合を宣言し、独立運 動をする市民を弾圧、20 万人の犠牲者が出た。1999 年、国連監視の下、住民投票が行わ れ、独立派が 80 %の圧勝を収めた。インドネシア政府はこれを認めなかったが、2002 年、 -3- 宗教学通論(3) 国連の多国籍軍によって守られながら、新しい国造りが始まった。 ○中国の少数民族問題 共産主義で一党独裁の中華人民共和国が成立。宗教の自由を大きく制限。 ●チベット:1951 年、チベットを武力で併合し、自治区とする。寺院を破壊するなど し、10 万人がインドに逃れる。1959 年、ダライ・ラマがインドに亡命政府を樹立。 ●新疆(シンキョウ、シンチャン)ウイグル:ウイグル人はイスラーム信仰を有する人々で、700 万人以上。18 世紀半ばから中国が支配。二度にわたり、「東トルキスタン」として独立す るも、失敗。1991 年のソ連崩壊を機に中央アジアのトルコ系民族が独立するなか、それ に刺激されて再び独立の機運がある。 ☆アメリカなど ○オサマ・ビン・ラディン率いるアルカーイダによる 2001 年 9 月 11 日アメリカ同時多発 テロ以来のアメリカと「イスラーム原理主義者」たちとの対立構造。 2 ファンダメンタリズム(原理主義)、ペンテコスタリズム、聖霊派 「ファンダメンタリズム(原理主義)」とは元来、キリスト教の用語。教科書を参照。 「自由主義」(リベラル・リベラリズム)のキリスト教を厳しく批判。 この「ファンダメンタリズム(原理主義)」という言葉を、キリスト教だけではなく、 イスラームやヒンドゥー教にも適用し、「イスラーム原理主義」、「ヒンドゥー原理主義」 について語ることに対しては批判もある。─→「政治的イスラーム」や「イスラーム主義」、 「イスラーム復興主義」という呼称が用いられることが多いが、「イスラーム急進主義」、 「イスラーム過激派」等の用語を用いる人もいる。 ただし、キリスト教ファンダメンタリズムと共通点があるとして、「ファンダメンタリ ズム」という概念の普遍的適用を進める学者もいる。 アメリカ人の宗教(2004 年 5 月のギャラップ者の世論調査の結果) プロテスタント 50 % ローマ・カトリック 東方正教会 23 % 1% キリスト教(宗派を特定しない)9 % モルモン教 1% ユダヤ教徒 2% その他(イスラームを含む) なし 3% 10 % 無回答 1% (ヨーロッパで「世俗化論」を指示する傾向が強く、アメリカ合衆国ではその反対の傾向 が見えるとよく指摘される。教科書 pp.193-194.「世俗化論」) 「ファンダメンタリズム」(Fundamentalism 原理主義・根本主義と訳されることもある) の誕生と展開 《誕生》 1910 年代のアメリカ合衆国のプロテスタント教派内で、リベラルな風潮や聖書理解に 反対し、 「根本的」な信仰箇条を掲げる運動を指すものとして使われ始めた用語。──「ユ ニテリアン」への反動。さらに、1960 年代以降はカトリック勢力の中で第二ヴァチカン -4- 宗教学通論(3) 公会議(1962-65 年)のリベラルな姿勢に対する反動勢力がこれに加わったと見ることも できる。 1910 年から 1915 年にかけて発行された「ザ・ファンダメンタルズ The Fundamentals: A Testimony to the Truth, 12 vols」という小冊子(1910 ∼ 1915 年):「聖書の逐語霊感説」 「キ リストの身体的復活」「キリストの可視的再臨」。 《展開1》:反「進化論」 1925 年 7 月テネシー州デイトンにおける「猿裁判 Monky trial」(「スコープス裁判」「デ イトン裁判」):生物教師ジョン・T・スコープスが公立学校で進化論を教えたとして訴え られたる事件。第 1 審で有罪判決(罰金 100 ドル)。 「スコープス裁判」以後の経過: 1925 年 3 月 1925 年 7 月 テネシー州「進化論」禁止法(その他、13 州に同様の法律が存在した。) テネシー州デイトン、レイセントラル高校の教師ジョン=トーマス・スコ ープスの裁判(100 ドルの罰金刑) 1926 年 手続きの不備を理由に判決が破棄される。(「進化論」を教えることの違法 性については判断されないまま) 1967 年 1973 年 テネシー州「進化論」禁止法の廃止 進化論は「理論」であって「科学的事実」ではないことを教えなければな らないという法律が成立(テネシー州) 1975 年 上記の法律の無効確認。 以後、進化論を教えることに関する判断は下されていない。 1981 年 「進化論」とともに、「創造科学」を教えることを定めた法律(「授業時間 均等化法」)(アーカンソー州やルイジアナ州) さらに最近では、「ID(インテリジェント・デザイン)」という考え方を学校で教える べきだという主張が生じてきている。 《展開2》:政治化の傾向 1970 年代後半から 80 年代にかけて:ファンダメンタリストの積極的な政治関与。 ─→「宗教右派」「キリスト教右派」と呼ばれている。 「バイブルベルト」とブッシュ支持層とのつながり。資料の新聞記事などを参照。アメ リカの「宗教右派 The Religious Right」とネオコンサバティヴやブッシュ政権。ブッシュ 政権は、保守的キリスト教徒を利用しているとも言われた。 「宗教右派」「キリスト教右派」(1)と(2)の集合 (1)信仰的に保守的プロテスタントでかつ政治的に活発な人々 (2)福音派や原理主義者・ファンダメンタリストではないが、保守愛国的な政治信条に は共鳴する人々 主張:人工妊娠中絶反対、学校での祈りの時間の復活、銃規制への反対、宗教と政治を 区分する近代原理への反対、同性婚を法的に認めることへの反対など。 注意事項: 「福音派」Evangerical(s)、Evangelicalism という表現について:ドイツの"Evangelisch" との相違。ドイツ語で Evangelisch というのは、単に「プロテスタンティズム」という のと同義の広い意味を持つ語。 -5- 宗教学通論(3) 《まとめ》: (1)ファンダメンタリズムの意義:細切れの世界観ではなく、人間や世界をトータルに説 明する原理への欲求、社会の細分化や「アノミー」に対する非難、多元化する現代におい て人々との連帯を可能にするアイデンティティの提供。 (2)ファンダメンタリズムの問題点:現代社会の問題の原因をすべて価値観の変化に求め、 「古きよき時代の家族」へのノスタルジーになる。男性中心主義、女性に対する宗教的制 裁。 「ペンテコスタリズム」、「聖霊派」の興隆 付論:イスラームにおける不寛容と筑波大学五十嵐一助教授殺人事件について サルマン・ラシュディ〈インド系イギリス人〉(著)五十嵐一(訳)『悪魔の詩』(上・ 下)プロモーションズ・ジャンニ、新泉社、1990 年 Salmann Rushdie(1947 ∼):The Satanic Verses この本(小説)はムハンマドの生涯を題材にして自由にこれをアレンジしているが、イ スラームを侮辱するものとして、当時のイランの指導者であったアーヤットラー・ホメイ ニ師によって著者は死刑の宣告を受け、刺客を恐れて当人が今日まで潜伏する事態となっ た。西洋の作家たちは表現の自由への忠誠を誓い、ホメイニの「蛮行」を批判した。 ラシュディは今なお無事であるが、同著を日本語に翻訳した筑波大学助教授(当時)五 十嵐一氏が、筑波大学の人文社会学系棟の 7 階エレベーターホールで鋭利な刃物によって 刺殺され(1991 年 7 月 12 日)、犯人はまだ捕まっていない。 クルアーンやムハンマドを題材にした風刺漫画などが問題を引き起こす例は最近もいく つかあり、記憶に新しい。2005 年 9 月デンマークの日刊紙に掲載されたものなど。 この問題に関する参考文献の一例) ジャネット・アブー=ルゴット「グローバル・バブルを越えて」(.A.D.キング(編)『文 化とグローバル化──現代社会とアイデンティティ表現──』玉川大学出版部、1999 年、 pp.179-188 所収) 3 近代の合理性とファンダメンタリズムの排他主義・不寛容との関係 ファンダメンタリストは、単純な反近代主義や復古主義ではない。彼らは、たしかに近 代主義に一面では強く反対しているが、他面では自身が近代主義の子であると見ることが できる。(彼らの主張には伝統内に本来は存在しないものが多いと言われる。)彼らの不 寛容は、近代の特徴としての「目的合理性」と「目的合理性」追求の結果としての予測可 能性・画一性への志向に通じていると理解することが出来るのではなかろうか。 Ⅱ 拡散 「ニューエイジ」「新霊性運動」「精神世界」と呼ばれる動き:先進工業社会を中心に して生じている動きで、既存の宗教の枠組みを超えて、あらたな「霊性(スピリチュアリ ティ)」を探求しようとする人々の運動。自己変容や霊性的覚醒の体験による自己実現な どを求める。伝統的な意味での宗教の枠組みを越えて、東洋医学、気功、瞑想、アロマセ ラピーなどさまざまな領域に拡散している。権威主義的で個人の自由を束縛する伝統的な 宗教の時代、自然と精神、身体と心を分割する二元論的近代科学の時代は終わり、新たな -6- 宗教学通論(3) 「霊性(スピリチュアリティ)」の時代が来たという考え方が、さまざまな思想や実践に 携わる人々の間で共有される。この「霊性(スピリチュアリティ)」という概念はもとも と「宗教」と不可分な者関係にあるものとして用いられてきたが、「ニューエイジ運動」 では組織や教義で束縛する「宗教」に対して、個人の主体性を尊び、自由な精神的向上を 目指す「霊性」というように、対比的に用いられることが増えている。固定した組織に人 を縛ることをよしとせず、緩やかなネットワークの構築を理想とする。書物、ビデオ、パ ソコン、ワークショップなどのメディアや集いを通じて、情報の共有や学習・修練が目指 される他、ボランティアの集いや営利的な企業組織が役割を果たすこともある。書店にあ る「精神世界」という名称を与えあられたコーナーの本棚を見れば、この種の運動に含ま れる書籍が並んでいる。 またこのような傾向を捉えて、「見えない宗教」(トーマス・ルックマン)や「内面倫 理化」(井門富二夫)と呼ぶ研究者もいる。 Ⅲ グローバル化とそれがもたらす諸問題 (1)西ヨーロッパの先進諸国の都市における問題: 宗教多元的状況? イスラム化? ガラガラの教会、教会をモスクに? ミナレット(モスクの尖塔)の新規建設? 宗教多元状況の問題スカーフ、宗教教育、 Cf.ジョン・ヒック『ジョンヒック自伝』トランスビュー:イギリスの都市バーミンガ ムでどのような問題が起こってきたかの具体的な報告が見られる。 (2)カルト/セクト問題 これについては別途扱う。 -7-
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