ブラジル白物家電市場調査 概要 1.ブラジル経済の動向 2.ブラジルの白物家電市場の現状と動向 経済動向 概況 ・ ブラジルは BRICs を構成する大国 ・ 南北アメリカ大陸における白物家電市場において、ブラジルは米国(58.1%)に次ぐシェア(15.6%)を占める。 ・ 広大な国土を擁するブラジルは世界有数の資源国、農業国。その一方で南米有数の工業国としても台頭 ・ 2008 年のブラジルの白物家電市場の規模は 92 億ドルで、2013 年には 113 億ドルに拡大する見込み。 ・ 中国、インドに比べると経済成長率は低いが、一人当たり GDP は大きく伸びており、その水準は中国の約 2.5 倍、イン 主要メーカー・マーケットシェア ドの約 8 倍。また人口構成に占める若い世代が多く、さらに内外に紛争要因を抱えていない点もブラジルの優位性。 ・ 米国系の Whirlpool(現地でのブランド名は Brastemp)、欧州系の Electrolux,、メキシコ系の Mabe の 3 社が市場の 7 ・ しかし地域間の経済格差は大きい。また地域を問わず所得間格差が大きく、貧富の格差は犯罪の多発というブラジ 割を占める。特に Brastemp、Electrolux はブラジルの白物家電の 2 強ブランド。 ルのカントリーリスクの一因に ・ 近年では韓国系、中国系メーカーの製品が増加しており、一部メーカーは現地生産も開始。中でも韓国系は薄型テレ ・ こうした中、ルーラ前大統領は最低賃金の引き上げや貧困家庭支援を進め、経済を成長軌道に乗せたことから国民 ビと携帯電話で既に高い市場シェアとブランド力を確立しており、次いで白物家電市場を狙う戦略。 からの高い支持率を維持。2011 年 1 月に就任した後継者のジルマ大統領も前政権の経済政策を継続する見込み ・ 主要メーカーのマーケットシェアは下記の通り(2009 年、上位 3 社、単位%) 外国貿易・投資 ルームエアコン ・ 90 年代初頭に「輸入代替」工業化政策を改め、貿易の自由化、高関税の引き下げ、外国からの投資障壁撤廃など、 経済構造改革を推進 ・ 近年では輸出、輸入共に貿易相手として中国が台頭(輸出 1 位、輸入 2 位) 冷蔵庫 洗濯機 電子レンジ 掃除機 Carrier 28.0 Whirlpool 50.0 Whirlpool 25.6 Whirlpool 42.3 Electrolux 68.9 LG 21.9 Electrolux 30.0 Electrolux 19.4 Electrolux 30.5 SEB 15.8 Whirlpool 14.9 Mabe 12.3 Suggar 18.6 Panasonic 16.9 Philips 1.5 ・ 南米においてブラジルは最大の投資先(南米への直接投資の 5 割弱が対ブラジル) ・ しかし隣国のチリやアジア諸国などと比べて必ずしも外資の誘致に積極的ではないとの指摘も 販売チャネルの動向 ・ ブラジルの流通業界においては CBD(民族系)、Carrefour、Walmart の 3 社が際立って大きい。彼らは主に豊かな南 ビジネス環境 東部、南部に店舗を展開。 ・ 道路は主要幹線道路を除いて整備状態は良好とは言えない状況(舗装率 13%) ・ 中でも CBD は 2009 年に家電量販店 2 位の Pont Frio を買収し、さらに同年に同 1 位の Casas Bahia と合併。家電流 ・ 電力については地域、都市によって電圧がまちまちで、電圧変動も大きい。また人口増加と経済成長に伴い電力消 通において大きな影響力を有する存在に。 費量が増大しているが、発電所の建設プロジェクトが進まず電力不足の問題は深刻。 ・ メルコスール(南米南部共同市場)向けの貿易は近年低迷(背景はアルゼンチンとの貿易摩擦) 関連政策の動向 ・ ブラジル・コストは現地の企業にとって大きな悩み ・ 消費電力に応じた IPI(工業製品税)の引き下げによる省電力型家電への置き換えを促進中(2009 年 2 月~) →社会主義的であり労働者の解雇が容易ではない労働法制 ・ これまで 14 種類にも及んだ電気プラグの形状の統一(2010 年より義務付け) →種類が多く複雑で、負担率が高い税制(対 GDP 比 30%超) →本格的なブラジルへの市場参入に際しては、現地生産を視野に入れる必要あり 生産・貿易 ・ ブラジル・コストへの対応策としてのマナウス進出の可能性 ・ 世界的な不況にもかかわらず 2009 年後半~2010 年 4 月の生産は大幅に増加(大型家電は対前年比 20~40%増) →税制恩典が手厚く、二輪車、電子産業の企業が多く進出 ・ 輸出入については輸出が急減する一方で、輸入が急増(ルームエアコン、電子レンジは 05 年→09 年で約 3 倍) →しかし基盤産業の集積が少なく、アマゾン中流域という地理的条件は物流面でも不利 ・ 輸出はメルコスール諸国向け、輸入は中国、韓国からが増加 今後の日本・ブラジル経済関係の展望 世帯普及率 ・ 日本企業は早くからブラジルに進出していたが、80 年代後半から 90 年前半のハイパー・インフレの時期に多くの企業 ・ 冷蔵庫の世帯普及率は際立って高く(92.8%)、貧困層の間でも広く普及。 が撤退。このため 90 年代後半以降のブラジル経済の再生期に日本企業は大きく出遅れる結果に ・ 一方、洗濯機は 41.5%、掃除機は 34.6%、電子レンジは 35.0%の普及率に留まり、ルームエアコンは 12.4%に過ぎない。 ・ 近年は右肩上がりで拡大している対伯投資(07 年→09 年で倍増)、日伯貿易(01 年→09 年で倍増) ルームエアコンは富裕層の間でも普及率は 40%に満たない。 ・ ジルマ新大統領は、ルーラ前政権の閣僚として二度の訪日経験を有し、デジタルテレビの日本方式の採用にイニシ ・ 地域別には、広く普及している冷蔵庫を除き、豊かな南東部と貧しい北東部の普及率の格差は大きい。 アチブを発揮。このため親日的であると見られ、日本・ブラジル経済関係の進展にプラスの影響が期待できる。 1 3.ブラジル白物家電市場の将来展望と日系メーカーの方向性 商品タイプ構成・ブラジル人の家電に対する嗜好 エアコン 冷蔵庫 洗濯機 電子レンジ 掃除機 ・ これまで市場の主流はウィンドウタイプであったが、最近ではスプリットタイプが支持を集め ている。 ・ 食材をまとめ買いする習慣が定着しているため、広い冷凍室を持つ大型冷蔵庫が人気。 複数台所有も一般的。 ・ キッチンで用いるものに加えて友人たちを集めたパーティー用に購入する例も。 ・ 必要不可欠な家電であることから、機能やデザインに対する消費者の関心度も高い。 ・ メーカーもジュースの容器や冷凍食品の個装のサイズなど、十分に計算した内装を設計。 ・ 歴史的背景から縦型の洗濯機はアジテーター方式が消費者に広く受け入れられている。 パルセーター方式は専ら機能が限定された廉価商品に用いられている。 ・ 中流以上の家庭では洗濯はファシネイラ(家政婦)の仕事とされることが多く、消費者は機 能やデザインに関心を持たない傾向があった。 ・ しかし最近サンパウロなどでは自ら洗濯を行う家庭も増えており、機能やデザインに対す る関心も高まる可能性あり。 ・ 調理にはレンジとオーブンが一体化した「フォゴン」の使用が一般的であり、電子レンジは 解凍と温める機能のみが求められがち。 ・ 洗濯機同様に、中流以上の家庭では掃除はファシネイラの仕事とされることが多く、彼女 たちも掃除に掃除機を使わないことがある。 ・ このためメーカーは洗濯機以上に掃除機のデザイン、性能については力を注いでおらず、 流通業者も掃除機についてはあまり販売に力を入れていない。 ・ ただし最近サンパウロなどでは自ら掃除を行う家庭も増えており、機能やデザインに対す る関心も高まる可能性あり。 ブラジル白物家電市場における日本企業の競争環境 内部環境 外部環境 プラス要因(positive) <強み(Strength)> ①日本製品に対する高いイメージ ②高い技術力 マイナス要因(negative) <弱み(Weakness)> ①高い製品コスト ②ブラジルのライフスタイル、家電の嗜好への 対応 ③製品ラインナップ ④サービス網の整備 <脅威(Threat)> ①欧米系のマーケット支配と韓国勢、中国勢の 攻勢 ②欧米系 2 強メーカーのブランド力、販売・サービ ス網 ③量販店からの厳しい値下げ要求 ④貧富の格差に起因する犯罪発生率の高さ、 アルゼンチンとの貿易摩擦、深刻な電力不足等 <機会(Opportunity)> ①人口増加と経済成長 ブラジル白物家電市場への参入に向けた日本企業の課題 強みをいかに活かすか? ・ 日本及び日本製品に対する高い信頼感、イメー ジの良さ(日系人社会も大きく貢献) トラブル例 ・ ブラジル製の白物家電については、故障の多発、基本性能の低さが指摘されることが多い。 弱みをいかに克服するか? ・ 日本製品のブランド維持のためには素材等のコ ストアップが免れない ・ ブラジルの消費者ニーズに適した製品の開発の 経験に乏しい ・ 現地で販売する製品ラインナップが限られている 日本製品は、家電量販店などでの注目度が低い ・ 広大なブラジルの国土でサービス網を整備する ことは容易ではない ・ メーカーの誇大広告に対する苦情も目立つ。 流通業者の販売促進策 ・ 量販店は中~上流階層向け(一括払いが基本)、下~中流階層向け(月賦販売が基本)に分化。展示方法、内装は 大幅に異なる。 ・ 月賦の金利はかなり高いが(2 年間で 100%近い金利の例あり)、一般のブラジル人にとっては月々に払える金額であ ⇒ ・ 日本のブランドであること、日本文化をアピール ・ 高い技術力を活かした高機能家電を市場に投入 ⇒ ・ 大市場に近い南東部、南部での現地生産、コストダ ウンに向けた現地調達率の向上 ・ 現地人材の積極登用によるブラジルのライフスタイ ル、家電の嗜好への対応 ・ 製品輸入も視野に入れた製品ラインナップの充実 ⇒ ⇒ ⇒ ・ まずは GDP の 7 割弱を占める南東部、南部で、ある 程度地域を限定したサービス網を整備 ⇒ ・ 高付加価値製品の市場の開拓に注力すると共に、テ レビなど黒物家電と共に売り込む戦略を展開 ⇒ ・ 韓国勢に対するベンチマーキングを強め、彼らの戦 略と対抗策について研究を強める ・ 製品輸入も視野に入れた製品ラインナップの充実、 ある程度地域を限定した販売・サービス網の整備 ・ パートナーとして長期的な取引関係が見込まれれ ば、ある程度の値引きに応じる経営判断が必要 ・ リスクについて現地の専門家や公的機関などとの情 報交換を密にするなど、リスク軽減の対策が必要 るかが重要であって、気にかけていない模様。 どのように機会を活用するか? ・ サッカーワールドカップ、夏季五輪の開催を控 え、一層の成長が期待される大市場 ・ 月賦販売の量販店では POP での価格の表示も支払い総額、金利の表示は小さく、月々の支払額を強調。 ・ ハイパーマーケットは月賦販売が基本。金利なしを謳っているが実際には店頭価格には金利分を上乗せ。 ・ 量販店では人気ブランドは冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど白物家電をトータルでコーディネートしたコーナーが店内の 脅威をいかに取り除くか? ・ 近年では韓国系の攻勢が顕著であり、消費者の 評価も高い ・ 欧米系 2 強メーカーはブランド力が高く、販売・サ ービス網も充実 ・ 流通業者の商品取り扱いのハードルは低いが、 値下げ要求が厳しい ・ 貧富の格差に起因する犯罪発生率の高さ、アル ゼンチンとの貿易摩擦、深刻な電力不足など 目立つ場所に設けられる(場所代はメーカー負担である例が多い)。 ・ メーカーにとっては商品を取り扱ってもらうためのハードルは低いものの、売れ行きが芳しくない商品についての値下 げ要求は厳しい。 2 ⇒ ⇒ ⇒
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