米子市現地研修レポート(平成21年11月27∼28日実施) 米子市におけるまちづくりのPOINT 米子市の中心市街地では、にぎわい拠点を創出しネットワーク化して、にぎわいを周辺に波及させる「にぎわいトライアン グルゾーン」(下:マップ参照)の取り組みを進めています。研修で取り上げられた、この取り組みの3つのPOINTをご紹介 します。 POINT 1 局所的な活性化でまちのポテンシャルをあげる POINT 2 点から軸線へ―まちの機能をあげて回遊性を創出 POINT 3 ラインからゾーンへ―にぎわいトライアングルの完成へ POINT 1 局所的な活性化でまちのポテンシャルをあげる-1 〇 米子市の中心市街地も近年(2010年1月時点)では空き店舗 率が35%、経営者の高齢化も進み、現在営業している店舗の内 で後継者のいる店舗は1/5程度と、さらなる賑わいの低下が懸念 されます。 〇 しかしながら、トライアングル外(左マップ参照)の西部の川沿 いのエリアでは地元の建築士が中心になって、『夢蔵プロジェク ト』として2000年に地震で被災した古い蔵を少しずつ修繕し、まち づくりの拠点として、主に歴史的環境を活かしたまちづくりを展開 し(写真:3段目左)、その周辺の町屋でも飲食店が出店し始めま した。(写真:3段目右) 〇 四日市町・加茂町を中心とした商店街エリア(マップ:赤丸で 囲まれたエリア)でも、伝統的な町屋や重厚感のある元銀行の建 物など既存ストックを活かして、若い世代の企業家が物販と飲食 を兼ねた店舗等を出店し、若者だけでなく中高年の集客にも成功 しています。この成功はコンパクトシティが叫ばれる中、これまで の飲食店を中心とした「歓楽街」と物販を中心とした「商店街」とい う従来のあり方とは違う、飲食と物販を同時に楽しむ「まち暮らし」 というライフスタイルの萌芽です。 〇 こうした動きをより促進させるため、松江市や米子市の郊外 に出店している若い企業家3名を選んで説得し、経営上のサポー トもしながら出資金100万円で共同出資会社を設立させ、旧書店 の建物をリノベーションし、ブティックや雑貨店が入る新しいテナ ントビルへと生まれ変わらせようとしています。(写真・図:4段目) 若い企業家達は横のつながりが強いため、この取り組みが成功 すれば、連鎖的に出店してくれることも期待されます。 〇 このエリアでは鳥取大学がサテライトキャンパスを開講させる 構想があることや、市役所や民間企業の集積するエリア、図書館 や美術館等の集客がある拠点に隣接していることから、これら属 性の違った人々を上手く取り込む必要があります。そこで、このエ リアに滞留させ、個店へ客を送り込む仕掛けとして、オープンカ フェを検討しています。また、個店サイドもテイクアウトできるラン チセットやお惣菜、地元産の野菜などを扱うコーナーを作るなどこ れらのエリアからの集客に向けた努力が見られます。 POINT 1 局所的な活性化でまちのポテンシャルをあげる-2 〇 若者が出店し、賑わいが戻りつつある状況を目の当たりにした隣接の商店 街『法勝寺商店街』を中心としたエリアでも(マップ:青で囲まれたエリア)、4名の 地元商店主が共同出資でまちづくり会社を設立し、活性化へ向けた取り組み を始めています。研修当日も老朽化が進み危険なアーケードの撤去作業が進 められ(写真:全頁下段左)、まちづくり会社が、現存する歴史ある商家を活か しながら開放的で季節感ある商店街づくり(図:全頁下段右)を着実に進めて いる様子を確認できました。 〇 また、築120年の三連蔵をリニューアルして、現在の『法勝寺商店街』にはな い、地元素材にこだわった飲食店や日替わりのカフェ、セレクトショップとギャラリー を併設した複合施設『善五郎蔵』の工事も、平成22年の1月オープン目指し て進行していました。(写真・図:上段) 〇 その他に、商店街を元気にしようと、商店街内で台車や三輪車を使ったトラ イアスロンを企画するなどユニークな発想で活動しているNPOが株式会社になっ て、起業支援も伴ったテナント誘致やコミュニティFM、地域ブランド研究所が入 った複合施設を、退去した銀行の建物を利用してプロデュースしています。(図・ 写真:2段目) POINT 2 点から軸線へ―まちの機能をあげて回遊性を創出 〇 高島屋等のデパートと商店街からなる既存商業集積地(マップ:緑で 囲まれたエリア)と四日市町・加茂町を中心としたエリア(マップ:赤で囲ま れたエリア)の間の回遊性を高め、相乗効果で発展してゆく為に現在の駐 車場(写真:3段目右)の機能を向上させる計画が推進されています。この 駐車場は、車の収容台数を増加させる駐車場の立体化だけでなく、両エ リアを繋ぐ小路には店舗を張り付かせ回遊性と、イベント開催時には会場 としても利用できる、商業者向け月極め駐車場の整備することで機能をよ り高めています(図:4段目左)。 〇 研修当日にはこの駐車場で、『夢蔵プロジェクト』でも活躍されている 方が、利用実態を調べるアンケート調査(写真:4段目右)を行っていまし た。「まちづくり」に携わる様々な団体や人々が、横断的にプロジェクトを 推進している様子が窺えました。 POINT 3 ラインからゾーンへ―にぎわいトライアングルの完成へ 〇 このように、米子のまちづくりは賑わいを創出する3つのエリアを結び、 まずはこのトライアングルゾーンのポテンシャルを上げて、300haの中心市 街地という大きなエリアで俯瞰した際に賑わいを創出するコアにするとい う、スキームで進めています。このトライアングルゾーン内の密集市街地 (写真:5段目左)を解消しながら、安心して暮らせるケアを備えた住宅を 高齢者に供給し、都心居住を進める事業(図:5段目右)は、地権者との 交渉等難しい面も多くありますが、ゾーンをボトムアップする大切な取り組 みです。 〇 トライアングル内にある既述以外の2つの商店街(写真6段目左)につ いても、関係者が動き始め、アーケードを撤去して、来街者がくつろげる 空間づくり(図:6段目右)を模索しています。また、高齢者の都心居住を 推進することもあり、現在観光休憩案内所として機能している「笑い庵」 (写真:下段左)に高齢者向け生活支援サービス等も充実させる予定です。 この改装・運営資金を調達するため、市民ファンドを運営する「米子まちづ くり基金」を現在まちづくりに関わっている様々な人々が設立するなど、連 携も進んできています。
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