短 所 10.スターリングエンジン自動車について 1816年、スコットランドの牧師、ロバート・スターリングは当時、全盛であった蒸気機関に対抗して、新し い熱機関を発明しました。高圧の蒸気ボイラーが爆発する事故をしばしば引き起こしていた蒸気機関に対し て、低圧空気を使うスターリングエンジンは爆発の危険性がないことで、当時注目を集め、たくさん生産さ れました。数十年後、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンが発明されてからは、スターリングエンジン は動力の主流でなくなりました。しかし、その後も、研究は続けられ、原理的に高い熱効率も実証されまし た。近年、省エネルギー、石油以外のエネルギー利用を目的とした研究の中で、スターリングエンジンの研 究はさらに発展しました。 資料:土浦工業高校 理科研究部(ホームページ) ● スターリングエンジンのしくみ スターリングエンジンは、右図に示すように2つのピ ストンで構成されており、バルブを設けずに作動ガス を繰り返して用いる密閉式の外燃機関です。熱エネル ギーを有効に利用し、高効率を達成するために蓄熱式 熱交換器(再生器)が採用されているのが大きな特徴 です。発明当時は作動ガスに空気を用いたもので、エ リクソンエンジンとともに『熱空気エンジン』と呼ば れていました。その後、様々な開発がなされ、現在の 高性能スターリングエンジンは、作動ガスに高圧のヘ リウムや水素などを用いることで高出力化・高効率化 がなされています。このエンジンは、エンジン重量が 重いこと、製作コストが高いことなどの問題があるた め、未だ民生レベルでの実用化には至っていません。 暖かい空気 冷たい空気 ● 重さ大きさ(比出力) 気体の熱膨張・熱収縮を利用するのですから、たくさんの仕事をさせるために必要な気体の量は多くなりま す。したがって、どうしても出力の割に大型なエンジンになってしまいます。このことは初期のスターリン グエンジンがガソリンエンジンなどの手軽な内燃機関に押されてしまった原因の一つです。現在では、中身 の作動気体として大気圧の空気ではなく、ヘリウムガス等を高圧で詰め込み、この問題を解決できる事が知 られています。しかし、それに伴って、気体漏れなどの新たな問題点も生まれます。 ● シーリングの難しさ ヘリウムガスなどを使用する理由は、軽い分子(小さな分子)の方が熱の伝わる速度が速いためです。また、ピ ストンの力は気体の圧力に比例して大きくなるので、気体をたくさん詰め込み、高圧(10気圧∼100気圧程度) にしています。こうして、小型でも出力の大きなスターリングエンジンを作ることが出来ます。しかし、スター リングエンジンは気体を気密に保ったままで膨張・収縮を行なわなければなりません。小さな分子の気体はせ まい隙間を通過して漏れやすいのです。そういう気体を高圧に詰め込んで高レベルな気密を保ちながら、ピス トンや出力軸を摩擦なく動かすようにすることは、非常に難しい技術になります。 資料:土浦工業高校 理科研究部(ホームページ) 高温側ピストン 低温側ピストン フライホイル クランク軸 回転方向 ここに90度の位相 差をつけておく。 11.ガスタービンエンジン自動車について 航空機用エンジンの主流となっているガスタービンエンジンは、さまざまな燃料を使用でき、排出ガスの清 浄化が比較的容易、かつ小型軽量といった長所があります。反面、レスポンスが悪い、構造が複雑などの短 所もあるため、現時点ではまだ実用化されていません。しかし、タービンの高熱部分に耐熱性に優れたセラ ミックスを用いたセラミックスガスタービンが次世代エンジン候補の1つとして注目されています。 燃料 圧縮機 資料:独立行政法人 海上技術安全研究所 ● スターリングエンジンの特徴 燃焼室 ノズル タービン 排気 空気 長 所 ● 静かなエンジン 車やバイクのエンジンは爆発音のために騒音が発生します。そのため、消音マフラーや遮音材などの工夫を していますが、完全に消すことは出来ません。スターリングエンジンは爆発音が発生しないので、きわめて 静かです。 燃料 ▲航空機用ジェットエンジン ● 原理的に高効率 熱エネルギーの何%を仕事に変えられるか、という値が熱効率です。スターリングエンジンは爆発を行わず スムーズに気体を変化させるので、原理的に非常に熱効率の高いエンジンです。企業が実際に試作した際の データでも、ディーゼルエンジン並みの熱効率がすでに得られています。 燃料 タービン タービン ● 排気ガスがクリーン ガソリンやディーゼルの内燃機関は燃料と空気を混ぜて、密室で爆発させるため、高温高圧下で様々な化合 物が生じてしまい、窒素酸化物(NOx)をはじめ有害な成分が排気ガスに含まれてしまいます。スターリン グエンジンでは、燃料を使う場合でも爆発によって発生する有害成分は出ません。静かに燃焼させクリーン な排ガスを得ることが可能です。 ● 熱源を選ばない スターリングエンジンは温度差を作り出せば動くので、バイオマスなどのあらゆる可燃物、地熱、太陽熱など、 色々な熱源の利用が可能です。また、設計によって数十度、あるいは数度の温度差でも動く低温度差型のエン ジンを製作することが出来ます。温排水などの現在捨てられている熱を利用する方法の一つになります。 加熱器 燃焼器 軸 軸 負荷 空気 放熱器 負荷 排気 ▲開放サイクルガスタービン ▲密閉サイクルガスタービン 資料:独立行政法人 海上技術安全研究所(ホームページ)
© Copyright 2024 Paperzz