<2014 職員研究活動援助事業⑤> 知的障害児の家族支援を考える ~知的障害児の保護者のレジリエンスと日常の気分の関係についての一考察から~ 愛名やまゆり園 地域サービス課 城所友里 斉藤盛仁 1.はじめに は、夫婦の子育て観に関するもの(野澤・篠置 1990)、 ソーシャルサポートが与えるストレス感情についての研究 (尾野・茂木 2012)、母親の育児ストレスを誘発する要 因を報告したもの(野口、三浦ら 2015)等、早くからスト レス研究の一領域として、様々な視点からの研究報告が 行われている。 一方障害児の親のストレス研究については、特殊教育 や教育心理学から派生した臨床研究が出発点となって いる。新見・上村(1980)の心身障害児をもつ母親のスト レスを構成する要素についての研究、稲浪・小椋・西ら (1980)の、障害児をもつ母親の心的ストレスに関する研 究等が黎明期のものとして挙げられる。その後は障害児 の母親のストレス研究は一つの研究領域として認知され てきた中で、様々な先行研究の多くは、健常児の母親に 比べ障害児の母親の方が心的ストレスが高い(尾野・茂 木 2012 等)、という報告がなされている。 レジリエンスと子育てストレスについての研究は、それ ぞれ単体としての研究報告は多いが、それらの関係につ いて研究報告するものは少ない。そこで、子育て中の母 親のレジリエンスとストレスの関係について研究すること を通じ、知的障害児の家族支援、子育て支援の一助に なるのではないかと考えたことが、本研究の動機となっ た。 レジリエンスという用語は、そもそもの出発点は工業領 域にあると言われる。金属の棒に力を加えると、一定の 力で折れ曲がったり、断裂してしまったりするが、同じ金 属でも、環境によってダメージの受ける力は同様ではな い。一定の力を加えても、折れることなく再び元の状態に 戻ろうとする力を、レジリエンスという用語で表現されてい る。それが転じて、ストレス研究等の心理学領域では、心 の回復力、つまり“折れない心”“困難に打ち勝とうとする 自分の内発的な力”を意味する用語として用いられるよう になった。 このレジリエンスの考えを基にして、近年では教育や 競技スポーツ等の分野においての様々な実践研究が行 われている。例として、森・石田ら(2001)の大学生の自 己教育力に関する研究、小原・武藤(2005)の保育の質 とレジリエンス概念との関連の研究、原・都築(2014)の小 学校 5 年生のレジリエンス育成プログラムの試行的研究 などが挙げられる。 心理学領域におけるレジリエンスとは概念的な用語で ある。そのため、この概念をより具体的にとらえようと、 様々な分野でレジリエンスの構成要素についての研究 が行われている。古内・長田(2015)は保育園児のレジエ ンスについて「気質」「傷付きにくさ」「自己調整」 を、石 毛・無藤(2006)は、中学生のレジリエンスについて「意欲 的活動性」「内面共有性」「楽観性」を、井原・尾形ら (2010)は、看護師のレジリエンスについて「肯定的な看 護への取り組み」「対人スキル」「プライベートでの支持の 存在」「新規性対応力」を見出している。また宮野・藤本 ら (2014)は、育児場面でのレジリエンスとして「周囲か らの支援」「問題解決力」「受け止め力」の 3 要素を報告し ている。 これらの研究に見られるように、今ではレジリエ ンスはいくつかの小さな構成要素(小さなレジリエンス)の 集合体であるという考え方が一般的である。 レジリエンスは人間が生まれつき持ちながらも、その強 弱には個人差がある(田中・兒玉 2010)。この個人差の あるレジリエンスをサポートするということは、その人のオ ーバーストレスへの予防的介入につながるものであり(久 保・西岡ら 2015)、結果としてストレス環境への適応性、 生きる力のサポートであると言えよう。 次に、本研究のもう一つのテーマである日常の気分に ついて、ここでは子育て中の親のストレス研究の歴史を 紹介しながら触れる。一般的な子育てストレスについて 2.本研究の仮説 (1) 個々のレジリエンスの持ち方により、ストレスを含む 日常の気分に何らかの差異があるのではないか。 (2) 育児中の母親の属性(取り巻く環境)によって、レジリ エンスや日常の気分に何らかの違いはあるのではな いか。 (3) (1)、(2)のことをあきらかにすることで、知的障害児の 家族支援・子育て支援についての何らかの知見を得 ることができるのではないか。 3.研究方法 (1)研究対象者 A市とその近隣自治体に在住する、小学生から高校 生の子を持つ母親とした。研究チームがそれぞれの母 親に直接調査用紙を配布し後日回収する方法、また配 1 <2014 職員研究活動援助事業⑤> 布後速やかに回答をしてもらい即時回収する 2 種類の回 収方法を用いた。 (2)研究協力者の内訳 フェイスシートの回答から、6 つのカテゴリーについて 群分けを行った。「母親の年齢」については“40 歳未満” と“40 歳以上”、「就労状況」は“就労中”と“専業主婦”、 「きょうだい」については“なし”か“あり”、「家族構成」は “核家族”か“多世代”、「所属学校」は“養護/支援級等” か“通常級”、「療育手帳の有無」は文中の通り“あり”か “ない”と分類した。各カテゴリーの内訳は Table1の通り である。)。なお「年齢」「きょうだい」「家族構成」「所属学 校」については、回答に欠損があったため、合計人数が 33 名となっていない(表 1)。 (2)調査用紙 研究協力者に対し、フェイスシートと2つの質問紙の実 施を依頼した ①フェイスシート フェイスシートでは 6 つのカテゴリー(「母親の年齢」「就 労状況」「きょうだい」「家族構成」「所属学校」「療育手帳 の有無」)について回答を求めた。 調査用紙回収後、研究チームにより検査結果の比較 検討のためそれぞれのカテゴリーを 2 群に分類した。 ②SH レジリエンス検査(以下 SHR) 加齢や環境、社会経験等と共に発達・変容していくそ の時々のレジリエンスを測定するために開発された検査 である。この検査では、レジリエンスの構成要素を「サポ ート環境(ソーシャルサポート)」「自己効力感」「社会性」 の3つに分類しており、検査を通じてそれぞれの得点とレ ジリエンスの総得点を求めることができる。 ③POMS 短縮版(以下 POMS) 検査時点での直近の日常の気分について、少ない質 問項目で測定することができることから、多くの臨床場面 で用いられている。 日常の気分を「緊張-不安」「抑うつー落込み」「怒り ー敵意」「活気」「疲労」「混乱」の6つの因子に分類し。そ れぞれの因子の得点を求めることができる。またこの6つ の因子の得点を換算し(「活力」以外の 5 つの因子の得 点を合計したものに「活力」の得点を引く)、総合的な気 分状態の指標(総合的感情指数/TMD)を求めることもで きる。TMD は直近のマイナス気分の強さともされることか ら、本研究では TMD の得点を研究協力者のストレス指 標として扱う。 カテゴリー 群 人数 母親の年齢※ 40 歳未満 40 歳以上 10 22 就労状況 専業主婦 就労中 12 21 きょうだい※ なし あり 7 25 家族状況※ 核家族 多世帯 24 6 所属学校※ 通常級 養護/支援級等 24 7 療育手帳 なし あり 26 7 表 1.研究協力者の内訳 (※は欠損値のあるカテゴリー) (3)SHR の結果 フェイスシートの各カテゴリー毎に、得られた SHR の総 得点についてt検定 ※注1 を用いて比較した。その結果、 「母親の年齢」「就労状況」でレジリエンスの総得点にあ きらかな差※注2がみられた(表 2) (注:「あきらかな差(有意な差)」とは、統計学的な確 認を行った上で確実に両者に差がみられるという意味で ある。これは同じ実験を我々と別の研究チームが行った としても、同様な結果がみられるということ、つまり本研究 だけの偶然の差ではなく、およそ95%から99%同じ結 果が出るということを意味する)。 4.本研究における倫理的配慮 本研究では、かながわ共同会のプライバシーポリシー に基づき、研究協力者に対する倫理的配慮を以下の通 り行った。 ・ 対象者に対し、検査に先立ち本研究について、研究 説明書をもとに周知した。 ・ 本検査に同意されない場合は、検査を行わずにそ のまま研究者へ検査用紙を提出していただくこととし た。 ・ 発表や外部公表については、研究説明書の中に 「公表時は、個人が特定されないよう十分な配慮を 行う」ことを明記した。 表 2.カテゴリーごとの SHR の総得点 5.結果 (1)調査用紙の回収 本研究では、35 名の母親に調査用紙を配布し、33 名 より回答を得た(回収率 94.3%)。 2 カテゴリー 群 SHR 総得点 t値 母親の年齢 40 歳未満 40 歳以上 110.10 94.23 3.519** 就労状況 専業主婦 就労中 89.50 106.05 ‐3.090** きょうだい なし あり 88.57 102.16 ‐1.910 家族状況 核家族 多世帯 93.17 100.58 1.042 <2014 職員研究活動援助事業⑤> 所属学校 通常級 養護/支援級等 102.46 89.17 1.939 療育手帳 なし あり 101.81 91.33 1.572 相関は見られなかったが、「養護・支援級」で“「自己効力 感×活気」”に強い正の関連がみられた他、いくつかの 相関がみられた。また「療育手帳あり」群では、“「自己効 力感」×「活気」”にのみ強い正の相関がみられた。全体 の結果は添付表 2 に記す。 ②SHR 各因子の得点差による POMS 各因子の得点差に ついて SHR の 3 因子について、平均値からそれぞれの因子 を高群と低群の 2 群に分け、両群における POMS の 6 因 子の得点との関係を調べた。その結果、「サポート環境」 における「緊張-不安」の得点について、高群よりも低群 の方の得点が有意に高いことがわかった(p<.05)(図1か ら図3)。 (**:p<.01、*:p<.05)※注3 「母親の年齢」「就労状況」については、前者は 40 歳 以上よりも 40 歳未満、後者は専業主婦よりも就労中のグ ループの平均得点が、SHR を構成する 3 因子すべてに おいて有意に高かった。また「所属学校」については、 SHR3 因子の 1 つである「サポート環境」について、養護/ 支援級に比べ通常級の群の平均得点の方が有意に高 かった(表 3)。 表 3.カテゴリーごとの SHR3 因子の得点 カテゴリー 群 サポート環境 自己効力感 社会性 40 歳未満 40 歳以上 51.70 46.14 (2.691)* 37.90 31.71 (3.589)** 20.20 17.10 (2.918)** 就労状況 専業主婦 就労中 42.83 51.00 (-3.097)** 30.50 35.50 (-2.298)* 16.17 19.40 (-2.628)* きょうだい なし あり 家族状況 核家族 多世帯 41.71 49.12 (-2.188) 48.00 45.33 (0.673) 30.86 34.32 (-1.265) 34.31 30.33 (1.273) 16.00 18.00 (-1.539) 18.15 17.50 (0.394) 所属学校 通常級 養護/支援級等 療育手帳 なし あり 49.50 40.71 (2.347)* 48.96 42.14 (1.807) 34.29 31.00 (1.125) 34.15 31.00 (1.090) 18.54 16.00 (1.442) 18.58 16.43 (1.168) 母親の 年齢 p<.05 図1.サポート環境の高低別の POMS 因子の平均得点 (カッコ内は t 値、**:p<.01、*:p<.05) (4)POMS 短縮版の結果 TMD は、それぞれのカテゴリーでのあきらかな差はみ られなかった。POMS の6因子毎にカテゴリー間の差を確 認した結果、「就労状況」の「活気」について、専業主婦 よりも就労中の母親の方が有意に高いことがわかった (専業主婦 3.42、就労中 6.45、p<.01)。また「家族構成」 の「怒り-敵意」についても、多世代よりも核家族の方が有 意に高いことがわかった(核家族 7.46、多世代 4.17、 p<.05)。全体の結果は添付表1に記す。 図 2.自己効力感の高低による POMS 因子の平均得点 (5)SHR と POMS の結果の関連 ①両検査の各因子間の相関について 知的障害児の母親と健常児の母親の比較をするため、 「学校種別」と「療育手帳の有無」の 2 つのカテゴリーに ついて、それぞれのグループごとに SHR の 3 因子と、 POMS の 6 因子(3×6)のの相関係数を調べた。その結 果、「療育手帳なし」「通常級」群では、すべてについて 図 3.社会性の高低による POMS 因子の平均得点 3 <2014 職員研究活動援助事業⑤> 6.考察 (1)レジリエンスについて 今回の研究では、SHR でのレジリエンス総得点につい て、「母親の年齢」と「就労状況」による違いがあきらかと なった。この2つのカテゴリーでは、同時に SHR の 3 つの 因子すべてにおいても明らかな差がみられた。この結果 から考えられることとして、まず「母親の年齢」についてで あるが、親が年齢を重ねるとともに子も成長し、子の養護 やコミュニティーへの参加といった社会的責任、一方で 加齢にともなう体力的な変化等、様々な自身を取り巻く 環境変化が予想される。こういった加齢にともなう環境変 化が、レジリエンスを低下させる要因の一つになっている のかもしれない。 また「就労状況」についてであるが、就労中の母親は、 就労を通じコミュニケーション参加や自己実現欲求の充 足等が得やすい環境にあるのではないかと考えられる。 そういった環境の中で過ごすことが、レジリエンスの維持 向上に寄与しているのではないだろうか。 ところで、「所属学校」においては、SHR3 因子のうちの 「サポート環境」について、通常級群に比べ養護/支援級 等群の方が低いこともわかった。子どもは障害のあるなし に関わらず一人ひとりが独自の個性を持っている中で、 より個別性が求められる養護/支援級といった教育環境 内では、まだまだ母親がそのサポートに対する不全感を 感じられているのかもしれない。子の対応方法について のアドバイスや、学校での過ごしの組み立て、放課後の 過ごしの確保等、ソフト、ハード両面からのサポート環境 のレジリエンスを高めるための取り組みが求められる。 (3)レジリエンスと日常の気分の関係について 「所属学校」「療育手帳」の各カテゴリーについて、そ れぞれの群ごとの SHR3 因子と POMS6 因子の相関を調 べたところ、「通常級」「療育手帳なし」群では中から強の 相関は見られなかったのに対し、「養護/支援級等」「療 育手帳あり」群では、中から強の相関がいくつか見られ た。 両群に共通してみられた相関は、「自己効力感」と「活 力」での正の(比例の関係の)強い相関であった。この相 関が「通常級」「療育手帳なし」群でみられなかったことを 考えると、自己効力感のレジリエンスを高めるためのサポ ートが、知的障害児の母親にとっては生活での活力を高 めるための有効な取り組みになる、ということが示唆され る。 「療育手帳あり」群では、「サポート環境」「社会性」と 「抑うつ-落込み」「怒り-敵意」の間で、また「サポート環 境」と「疲労」について、中から強の負の(反比例の関係 の)相関が見られた。この結果からは、知的障害児の母 親への「サポート環境」「社会性」のレジリエンスへのサポ ートが、母親自身のストレス因子への耐性を強め、『折れ ない心』を支える取り組みに繋がるものと思われる。 (4)最後に 本研究では、知的障害児の母親のレジリエンスと日常 の気分の関係について検討を行ってきたが、子の障害 の有無のみでなく、母親自身の属性によっても、特にレ ジリエンスについては差がみられることがわかった。 子の障害像に応じた家族支援の視点は欠かせないが、 「障害」という点に強くとらわれない、家族全体の生活の 歴史や現在の生活環境、また一般的な子どもの発達課 題などを総合的に考えた、極めて基本的な視点に立つ ことも忘れてはならない。 (2)日常の気分について 今回の研究では、各カテゴリーで TMD にあきらかな差 が見られず、POMS6 因子についても、「就労状況」の「活 気」について、専業主婦よりも就労中の母親の方が有意 に高いのみであった。この結果は SHR における就労中 の母親のレジリエンスの高さと関連することは明確である と思われるが、「活気」以外の 5 つのストレス関連因子に ついて、特に「所属学校」「療育手帳の有無」でそれぞれ のグループ感に差がなかったことは、先に紹介した尾 野・茂木らに代表される見解(健常児の母親に比べ障害 児の母親の方が心的ストレスが高い)とは異なる結果で ある。この結果の相違については精査が必要であろうが、 障害児の母親が抱えやすいストレスについては、今回用 いた POMS では計りきれない何らかのタイプがあり、どの ストレスタイプを測定するかで結果に変化が生じるのであ ろうと思われる。 ところで、「家族構成」の「怒り-敵意」について、多世 代よりも核家族の方が有意に高いことがわかった。この結 果については、核家族の環境内で生活する母親の家族 間葛藤などが考えられる。今回の研究テーマとは離れる が、家族間葛藤によるストレス研究についても、子育て支 援の視点からも無視できないであろう。 7.今後の課題 本研究においては一定の研究結果は見いだせたと考 えるが、さらに多くのデータを分析することで研究結果の 信頼性がより向上すると思われる。本研究をもとに、今後 はより様々な視点から結果を分析して、今後の知的障害 児の家族支援・子育て支援に寄与する結果を報告して いきたいと思う。 8.謝辞 本研究は、研究協力者の皆様からいただいた調査結 果があるからこそ成立している。日々多忙の中、本研究 にご協力いただいたお母様方に感謝いたします。 9.参考文献 ・稲浪正充、西信高ほか.障害児の母親の心的態度に 4 <2014 職員研究活動援助事業⑤> ついて.特殊教育学研究.18(3).pp33-41.1980 ・井原裕、尾形宏行ほか.看護師レジリエンス尺度の開 発と心理計測学的検討.総合病院精神医学.22(3). pp210-220.2010 ・小椋たみ子、西信高ほか.障害児をもつ母親の心的ス トレスに関する研究.島根大学教育学部紀要.人文・社 会学部.14.pp57-74.1980 ・尾野明未、茂木俊彦.障害児をもつ母親の子育てスト レスへの対処とソーシャルサポートについてー多母集 団同時分析による健常児との比較検討ー.ストレス科学 研究.pp23-31.2012 ・小原敏郎、武藤安子.「保育の質」と「レジリエンス」概 念との関連.日本家政学会誌.56(9).pp643-651. 2005 ・野口純子、三浦浩美ほか.子育て支援センターを利用 している母親の育児ストレスと育児に対する自己効力感 の検討.香川県立保健医療大学雑誌.6.pp29-36. 2015 ・野澤みつえ、篠置照男.親役割ストレスと子育てに関す る研究.日本教育心理学会総会発表論文集.32 . pp541.1990 ・原郁水、都築繁幸.小学校 5 年生のレジリエンス育成 プログラムの試行的研究.障害者教育・福祉学研究. 10.pp85-90.2014 ・古内さや子、長田洋和.就学前のレジリエンスが問題 行動に及ぼす影響.専修人間科学論集心理学篇.5. pp23-29.2015 ・宮野遊子、藤本美穂ほか.育児関連レジリエンス尺度 の開発.日本小児看護学会誌.23(1).pp1-7.2014 ・森敏明、石田潤ら.大学生の自己教育力に関する研究 ーレジリエンス尺度の開発ー.日本心理学会大会発表 論文集.65.p746.2001 に“あきらかな差(有意な差)がある”と述べることができ る。 p はパーセント(percent)の頭文字。統計学では、慣習 的にその確率が 5%未満(p<.05)であればあきらかな差 (有意な差)があると結することが可能であり、主に 3 つの 基準(5%未満、1%未満、0.1%未満)で判断される。 t 検定で例えれば、『p<.01 であきらかな差がある』とい うことは、求められた t 値が 99%以上の確率で偶然に発 生したものでない(偶然発生する確率は 1%未満)という ことができる。 ただし、有意な差がみられたことで「確実に偶然では ない」と断定できるわけではなく、単に「偶然とは考えにく い」ということが言えることに過ぎない。例えば P<.01 であ きらかな差がみられたということは、「差がみられる確率は 99%」ということが言えるが、一方「1%の確率で差がみら れないことがある」ということも言える。統計的な手続き上 の確認であることに注意したい。 【補足説明】 ※注1:『t 検定』 2つの平均値の大きさの違いを示す目安として、決め られた算出方法から t という値(t 値)を求め検証する、統 計的仮説検定方法のこと。 t 値の絶対値が大きければ大きい程(一般に t 値が -2 以下か+2 以上)、あきらかに差がある(有意である)と 判断される。 ※注 2:『あきらかな差(有意な差)』 t 検定などの統計学的な検定を行った上で、比較した データ間に統計処理を経て差が判明した時に用いる言 葉である。 ※注 3:『p<.01、p<.05』 「あきらかな差」と結論づけるために使用する、比較結 果が偶然に発生する確率のこと。この条件を満たした時 5 <2014 職員研究活動援助事業⑤> (添付表1)カテゴリー毎の POMS6 因子と TMD の得点 カテゴリー グループ 緊張-不安 抑うつ-落込み 怒り-敵意 活気 疲労 混乱 TMD 母親の 年齢 40 歳未満 40 歳以上 6.40 8.05 (-0.957) 3.80 5.50 (-0.965) 5.60 7.41 (-1.027) 6.20 4.95 (0.945) 9.50 8.86 (0.228) 6.90 8.77 (-1.397) 25.70 33.05 (-0.985) 就労状況 専業主婦 就労中 きょうだ い なし あり 家族状況 核家族 多世帯 8.92 6.50 (1.465) 8.86 7.16 (0.752) 7.92 5.83 (0.961) 7.00 3.65 (1.904) 5.43 4.84 (0.266) 5.42 3.00 (1.467) 8.00 6.00 (1.170) 5.86 7.12 (-0.616) 7.46* 4.17 (2.269) 3.42** 6.45 (-2.889) 4.57 5.56 (-0.719) 5.60 4.33 (1.053) 10.08 8.40 (0.770) 7.57 9.48 (-0.714) 9.46 7.33 (0.748) 8.00 7.75 (0.187) 7.29 8.44 (-0.613) 8.50 6.83 (1.017) 38.58 25.60 (1.773) 30.43 30.84 (-0.042) 32.58 22.83 (1.116) 7.00 8.00 (-0.495) 4.71 6.14 (-0.670) 6.83 7.43 (-0.288) 5.79 4.00 (1.417) 8.75 10.29 (-0.597) 7.63 9.00 (-0.573) 28.92 35.29 (-0.729) 7.31 8.71 (-0.602) 5.08 4.86 (0.015) 7.15 5.71 (0.851) 5.68 3.86 (1.494) 9.19 9.29 (-0.039) 7.77 10.14 (-0.942) 30.62 33.29 (-0.333) 所属学校 療育手帳 通常級 養護/支援級等 なし あり (カッコ内はt値。**:p<.01、*:p<.05) (添付表 2)「所属学校」「療育手帳」の SHR3 因子と POMS6 因子の相関 療育手帳なし 通常級 緊張-不安 抑うつ-落込み 怒り-敵意 活気 疲労 混乱 サポート環境 自己効力感 -0.191 0.072 -0.040 0.358 0.161 0.110 -0.060 0.002 -0.016 0.427 0.131 -0.122 社会性 -0.119 0.148 -0.028 0.350 0.284 -0.014 抑うつ-落込み 怒り-敵意 活気 疲労 混乱 自己効力感 -0.254 -0.047 -0.157 0.352 0.072 0.089 -0.074 -0.011 -0.018 0.435 0.106 -0.140 サポート環境 自己効力感 -0.644 -0.777 -0.801 0.019 -0.736 -0.699 -0.332 -0.646 -0.157 抑うつ-落込み 怒り-敵意 活気 疲労 混乱 養護/支援級等 緊張-不安 サポート環境 緊張-不安 社会性 -0.115 0.123 -0.059 0.329 0.277 0.012 療育手帳あり サポート環境 自己効力感 -0.221 -0.212 -0.097 0.464 0.129 -0.082 -0.061 -0.198 0.230 0.913 0.228 0.036 社会性 -0.071 -0.212 -0.190 0.511 0.284 0.193 緊張-不安 抑うつ-落込み 怒り-敵意 活気 疲労 混乱 0.868 -0.364 -0.449 社会性 -0.380 -0.756 -0.908 0.188 -0.401 -0.173 (斜体文字は中~強程度の相関が認められたもの) 6
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