平成26年度発行(H25年度研究分)

(平成25年度実施分)
静岡県工業技術研究所
平成26年6月
工業技術研究所
P.
成
果
1
飲料残さの資源化による地域ゼロエミッションシステムの開発
2
レーザーによる新しい金型補修技術の開発
3
環境調和型めっき技術の開発
分
野
新成長戦略
金属材料
金属材料
-耐磨耗性付与を目的とした鉄合金めっきの検討-
4
樹脂材料の特性可視化技術の開発-樹脂材料の選択-
化学材料
5
分子シミュレーション技術の産業への応用
化学材料
6
視覚・色覚特性の簡便な計測装置の開発と個人差の定量化
7
生体力学シミュレーションによる健康・福祉機器の高効率な設計手法の開発
機械
機械
-体圧分散型マットレス開発への応用-
8
9
透明樹脂内部ひずみの複屈折位相差測定による評価
光学部品の形状誤差が光学性能に与える影響予測
機械
機械
-光学シミュレーションによる検討-
10
樹脂製光学レンズの実形状を再現した三次元 CAD データの作成
機械
11
負荷検知型方式による車椅子の走行補助装置の開発
電子
12
工業製品の騒音対策を支援するための音響技術の研究
電子
13
静岡発 世界を結ぶ新世代茶飲料と素材の開発 -茶生葉紅茶飲料の開発-
食品
14
苦渋味抑制素材の開発
食品
15
現場でのアスベスト迅速定性・定量手法の確立
環境
16
オゾンを利用した化学系小規模排水処理装置の開発
環境
17
簡単で使いやすいディジタルオーディオプレイヤーの開発 -置物型の製作-
ユニバーサルデザイン
18
スポーツ産業振興へ向けた観察記録・生体計測に基づく運動評価技術の開発
ユニバーサルデザイン
19
遮熱塗料と熱対流を考慮した省エネルギー住宅の開発
工芸
沼津工業技術支援センター
P.
成
果
分
野
20
自然界からの新たな香味を有する清酒醸造用酵母の開発
バイオ
21
海藻資源を活用した新規発酵食品の開発
バイオ
22
超高感度簡易迅速感染症診断システムの開発
バイオ
-超高感度化の鍵となる酵素融合抗体の開発-
23
手術支援ロボットの要素技術の研究開発
機械電子
-先行技術調査と医療現場のニーズ調査-
24
運動錯覚現象を用いたリハビリテーション装置の開発
機械電子
-運動錯覚誘起のための物理刺激方法と刺激条件の確立-
富士工業技術支援センター
P.
25
26
成
果
トイレットペーパーのクレープ形状がやわらかさに与える影響
紙に含まれる木材パルプの複合的評価手法の開発
分
野
製紙
製紙
-紙の LBKP と NBKP の定性・定量分析、ろ水度の測定-
27
28
ドライトナー印刷物のリサイクル適性評価について
ファルマバレープロジェクトを推進する医療・介護用機器の開発
製紙
機械電子
-地域包括ケアシステムを支える見守りシステムの開発-
29
高耐久コーティングの応用展開
機械電子
浜松工業技術支援センター
P.
成
果
分
野
30
フェムト秒レーザーピーンフォーミングによる微細部品加工
光
31
透明樹脂内部の屈折率分布推定 -波面計測センサの応用-
光
32
レーザーによる焼結ダイヤモンドの切削
光
33
レーザー式三次元測定機の測定精度評価
光
-被測定物の材質が測定精度に及ぼす影響-
34
電波識別装置の評価環境構築と識別実験
電子
35
絶縁被膜処理ステンレス製品のノイズ遮蔽性能評価
電子
36
被測定物と伸縮同調可能マイクロメータの開発
機械
37
紫外線を用いた鉄材部品表面の親水・撥水領域のパターニングに関する研究
機械
38
次世代自動車の素材加工技術及びその評価技術に関する研究開発
材料
39
チタン合金の陽極酸化処理における色調の安定化に関する研究
材料
40
材料解析のための前処理プロセスのデータベース化
材料
-迅速かつ正確な試験・分析を目指して-
41
製織技術を生かした振動特性に優れるハイブリッド繊維複合素材の開発
繊維高分子材料
平成23~25年度
(県新成長戦略研究)
研究成果事例
飲料残さの資源化による地域ゼロエミッション
システムの開発
[背景・目的]
本県の清涼飲料製造業における出荷額は全国1位(H22 工業統計)で、多くの企業が
静岡に集積しています。本研究では、これら工場から大量に排出される飲料加工残さを
有用な資源としてとらえ、付加価値の高い有用成分(アロマ原料)や、新素材となる炭
化物(キャパシタ用電極材料・水処理剤)の開発、更には燃料化し、エネルギー回収す
る技術を開発しました。これらの成果は、県内企業と連携して実施し、環境性・経済性
に適った地域バイオマス利活用システムとして広く普及します。
[研究成果]
① 柑橘搾汁残さを原料にアロマ製品を開発!
 県特産柑橘ダイダイの搾汁残さから、安全で芳香性の良いアロマオイル(精油)
を抽出し、アロマソープとアロマウェット製品を試作しました(写真1)
。
② コーヒー飲料残さの活性炭で蓄電&浄水!
 缶コーヒー飲料の残さを原料に、高比表面積で安価な活性炭の開発に成功した。
電極材料や浄水剤として十分な性能が得られることを明らかにし、電気二重層キ
ャパシタと水質浄化装置を試作しました。
③ コーヒー飲料残さを燃料に!
 缶コーヒー飲料の残さを原料に、高カロリーで安価なバイオマス燃料の開発に成
功しました。重油の代わりに工業用熱源として利用するため、5トン/日規模の実
証プラントを構築しました(写真2)
。実証プラントは、年間 576 トンの二酸化炭
素削減効果があり、国内クレジット制度排出削減事業として承認されています。
写真1 ダイダイ搾汁残さを原料とした
写真2 コーヒー飲料残さ燃料ペレットによる
アロマ製品
実証プラント
[研究成果の普及・技術移転の計画]
成果を基に、県内企業と協力し、地域循環型のバイオマス利活用システムを普及します。
共同研究機関
静岡大学工学部
お問い合わせ先
静岡油化工業(株)(平成 23 年度)
- 1 / 41 -
工業技術研究所
工芸科
電話 054-278-3024
平成24~25年度
(共同研究)
研究成果事例
レーザーによる新しい金型補修技術の開発
[背景・目的]
金型補修等に用いられるレーザー肉盛は、装置の設置場所へ金型を持ち込んで作業す
るため、
作業量の軽減や作業時間の短期化が求められています。
また肉盛できる材料が、
ワイヤ状に加工できる材料に限定されるという課題もあります。
そこで、現場での補修作業が可能なレーザー肉盛装置の開発及び様々な材料を利用す
るための粉末原料を用いた肉盛技術の開発を行いました。
[研究成果]
・ファイバーレーザーを用いた装置開発により、メンテナンスが容易で持ち運びが可能
な肉盛装置が開発できました。レーザー照射ヘッドを自由に可動できる設計にするこ
とで、より現場補修に適した装置にすることができました。
(テクノコート(株))
・原料粉末をフィルム状に加工することで、安全で効率的な肉盛補修が可能になるとと
もに、これまで肉盛補修に使用できなかった材料の利用など、材料選択の幅を大きく
広げることができました。
・粉末原料の利用により、複数の材料を複合化させた皮膜の作製が可能となりました。
ステライト No.6 とタングステンカーバイトを混合することにより、硬度 870HV のき
裂のない複合皮膜を作製することができました。
皮膜
基材
図1 開発したレーザー肉盛装置
図2 粉末原料シートを用いて作製した複合皮膜
[研究成果の普及・技術移転の計画]
・本技術の活用により、金型等を装置から取り外すことなく補修することが可能となり、
生産性の向上が期待できます。
・また材料選択の幅が大きく広がったことで、今後新たな用途への展開が期待できます。
・開発した肉盛装置は、共同研究機関が販売しています。シートについても、販売を目
指し取組を進めています。
共同研究機関
テクノコート(株)
お問い合わせ先
- 2 / 41 -
工業技術研究所
金属材料科
電話 054-278-3025
平成24~25年度
(共同研究)
研究成果事例
環境調和型めっき技術の開発
-耐磨耗性付与を目的とした鉄合金めっきの検討-
[背景・目的]
ニッケル・クロム等レアメタルの価格高騰や世界的な環境規制が進む中、主に自動車・
オートバイ・電子機器部品等への表面処理を主力としている県内めっき業界は、
厳しい経
営環境に立たされています。そこで、本研究では安価で環境負荷の少ない鉄に注目し、
耐摩耗性の向上を目的として、鉄合金めっきの開発を目指しました。
電流密度(A/dm2)
[研究成果]
・ Fe-Mo 合金めっきを熱処理することで、硬さが 1003HV0.01 に向上、更に耐食性も向
上しました。
・ 有機物を添加することによる Fe-Mo 合金めっき浴の安定化を確認しました。
・ Fe-Mo 合金めっきの浴組成と電解条件を最適化しました。
N2 雰囲気中、一定温度で2時間保持後、
14.3
自然空冷する熱処理を行いました。(図2)
11.9
9.5
7.1
4.8
2.4
3
4
5
6
7 8 9 10
pH
●外観良好、▲外観不良、×成膜しない
図1 電解条件によるめっき外観の変化
熱処理なし
300℃
400℃
図2 塩水噴霧試験(24 時間後)
[研究成果の普及・技術移転の計画]
開発した Fe-Mo 合金めっき法は、硬さについては目標をほぼ達成できましたが、一方
で耐食性については課題が残っており、普及までには至っていません。今後、耐食性等
の課題が解決されれば、有害物質を主原料としている硬質クロムめっきの代替が可能と
なり、環境負荷の低減や、安価な方法による価格競争力の向上も期待できます。これま
での成果については当所の研究発表会および「静岡環境フォーラム 21」
(静岡県立大学)
で発表しました。研究課題終了後も、課題の克服に向け開発を進め、学術発表会や展示
会等の機会を捉えて関連業界に情報発信するとともに、共同研究先企業による製品展開
や産総研の研究会を通じた情報共有等により、県内外に向けて普及を図ります。
共同研究機関
県内企業
お問い合わせ先
- 3 / 41 -
工業技術研究所
金属材料科
電話 054-278-3025
平成23~25年度
(A-STEP)
研究成果事例
樹脂材料の特性可視化技術の開発
-樹脂材料の選択-
[背景・目的]
国内の樹脂業界では多様化するニーズに合わせ、一つの種類の樹脂でも耐熱性グレー
ド、高剛性グレードなど多様なグレードの材料が各樹脂メーカーから販売されており、
生産現場では製品に合った適切な材料を選択することが難しくなっています。
そこで、ニューラルネットワークの一種である自己組織化マップ(SOM)を応用して樹
脂材料の特性が近いもの同士を近くに配置できる樹脂特性可視化マップを作成し、多数
のグレードの中から目的に合った材料を迅速に選択するためのツールを開発しました。
[研究成果]
本技術を活用して医療用器具の樹脂部品(図1)の材料の選択を支援しました。
・3社 32 グレードの透明ポリプロピレン樹脂材料の自己組織化マップ(図2)を作成
し、5つのグループに分類しました。
・3つのグループから代表的な材料を用いて、第一次試作を行い、試作品の物性評価試
験を行いました。
・この結果をもとに、製品に求められる物性値を満たす材料の候補を特性可視化マップ
から絞り込むことにより、製品に使用する材料の選択を迅速に行うことができました。
図1 県内企業で製造している医療器具部品
図2 透明ポリプロピレン樹脂の
特性可視化マップ
[研究成果の普及・技術移転の計画]
透明ポリプロピレン樹脂の他に、透明 ABS 樹脂やスチレン系エラストマーについても
特性可視化マップを作成しており、成形品を扱う技術者に本技術を紹介しています。
また、樹脂の材料選択やグレードの特性把握など、樹脂材料についての技術相談に対
応するツールとして利用しており、今後は、対応する樹脂の種類を増やしていき、Web
上から検索できる総合的な樹脂材料検索システムを作成する予定です。
協力機関
(独)産業技術総合研究所
お問い合わせ先
- 4 / 41 -
工業技術研究所
化学材料科
電話 054-278-3025
平成25~26年度
(県単独研究)
研究成果事例
分子シミュレーション技術の産業への応用
[背景・目的]
色素や触媒等の機能性材料や医薬品等の開発時には、材料の選抜及び機能の検証に多
くの人・物・金を費やしており、特に中小企業の現場においては、開発にかけるコスト
は、大きな負担になっています。一方、分子の働きをコンピュータで計算できる分子シ
ミュレーション技術は、膨大な計算が必要なため学術的な研究に留まっていましたが、
近年のパソコンの性能の向上や計算方法の改良により、中小企業でも利用できる環境に
なりました。そこで、県内中小企業が分子シミュレーション技術を活用することにより、
製品開発力を強化できるよう、本研究では、その有効性を検証します。
[これまでに得られた成果]
本研究では、稀少金属を使用しない太陽電池用色素の開発やカテキン分子の効能の解
明等の小課題を設定して、その有効性を検証しています。
・次世代太陽電池として期待されている色素増感太陽電池(図1)の色素をコストダウン
するため、稀少金属のルテニウム(Ru)に代わる中心金属(M)の候補をモデル化(図2)
した色素で計算した結果、鉄(Fe)が代替候補として有望であることが分かりました。
・茶カテキン分子の構造を計算した結果、エネルギー状態が変わると構造が大きく変化
することが分かりました。カテキン分子が有する多様な効能を解明する手がかりとし
て活用します。
M
M(NH3)6n+ 錯体
図1 色素増感太陽電池の例
図2 計算に使用した色素のモデル
(ペクセル・テクノロジーズ(株)HP より)
(中心金属M:Ru,Cr,Mn,Fe,Co,Ni)
[期待される効果・技術移転の計画]
太陽電池用色素については、鉄原子を中心金属とした色素を試作し、シミュレーショ
ン結果と比較して、高効率で安価な色素を開発します。また、カテキン分子については、
これまで不明であった効能を発現する機構を解明し、茶業振興に寄与します。こうした
分子シミュレーション応用事例を積み重ねて技術ノウハウを蓄積し、この技術を導入し
て製品開発力を強化しようとする企業の支援を行います。
協力機関
(独)産業技術総合研究所
茨城大学
静岡大学
お問い合わせ先
- 5 / 41 -
工業技術研究所
化学材料科
電話 054-278-3025
平成23~25年度
(共同研究)
研究成果事例
視覚・色覚特性の簡便な計測装置の開発と個人差の定量化
[背景・目的]
人間の視覚特性に個人差があり、それを考慮した作業環境の構築が必要となってきま
す。特に色覚特性については個人差があることが知られていましたが、色覚特性を簡便
に測定する方法がなく、
その個人差は定量的に評価されていませんでした。
本研究では、
色覚特性を簡便に計測する装置を開発し、
色覚の個人差の定量化について検討しました。
[研究成果]
 単色 LED を光源とすることで装置を小型化するとともに、測定方法を工夫し、およそ
30 分以内(従来法だと約4時間)で、個人の色覚特性を計測・推定できる小型な装置
を開発しました。
 色覚特性(等色関数)の個人差が測定できることを確認しました(図1)
。
 個人の色弁別能力(どのくらい微妙な色を見分けられるか)が計測できることを確認
しました(図2)
。
原色, 427nm, 626nm, 472nm
1.6
CIE1931
標準観測者
r (λ)
g (λ)
b (λ)
1.4
等色関数感度
1.2
1
CIE 1976 UCS 色度図
測定結果
R
0.8
G
0.6
B
0.4
0.2
0
380
430
480
53 0
580
63 0
68 0
‐0.2
波長(nm)
‐0.4
図1 色覚特性(等色関数)の標準値(点線)と
図2 計測した個人の色弁別能力
個人の計測結果(○)
この被験者は表楕円の範囲が同じ
等色関数に個人差あることが確認できます。
色に見えることを示しています。
[研究成果の普及・技術移転の計画]
個人の色覚特性が測定可能になり、その特性を考慮した表示や照明環境の構築が可能
となります。具体的には、個人の色覚特性を考慮して忠実に色を再現するディスプレイ
や表示機器の開発に応用できます。また、色覚特性の個人差を考慮した色管理を行うこ
とで、調色や製品の色合わせの際に生じる個人の色の見えの差による不具合を防ぐこと
ができます。
共同研究機関
山形大学理工学研究科
横浜国立大学環境情報研究院
お問い合わせ先
- 6 / 41 -
工業技術研究所
機械科
電話 054-278-3027
平成23~25年度
(共同研究)
研究成果事例
生体力学シミュレーションによる健康・福祉機器の高効率
な設計手法の開発-体圧分散型マットレス開発への応用-
[背景・目的]
マットレスの要求性能に体圧分散性能がありますが、同じマットレスでもユーザーの
体型によってその性能は大きく異なります。身体組織の形状と物性値から生体に発生す
る変形や応力を計算する生体力学シミュレーションは、試作と実験を行わずに人体とマ
ットレスの応力や変形が予測できます。そこで本研究では、マットレスの設計に活用で
きる要素技術として、生体力学シミュレーションによるマットレス設計技術の確立を目
指しました。
[研究成果]
① CT、MRI から作成した内部組織の形状情報を含む三次元人体形状データから、生体
力学シミュレーションに活用できる人体のシミュレーションモデルを構築しました。
② マットレス素材であるポリウレタンフォームの材料試験を行い、生体力学シミュレ
ーションに活用できる力学的特性値
(圧縮性超弾性体Ogden-foam)
を導出しました。
③ ①、②の成果と「身体組織の物性値データベース」から引用した人体の力学的特性
値を用いて生体力学シミュレーションを実施することで、人がマットレスに寝た時
のマットレス変形量を誤差 20%未満で予測できる技術を確立しました。
④ ③の成果を活用して、体圧値をコントロールできるマットレスを設計しました。
80
70
マットレス高さ(mm)
500~650mm間平均誤差
実験‐合わせ込み:8%
55~335mm間平均誤差
実験‐合わせ込み:4%
60
50
40
30
20
実験結果
合わせこみ
10
0
0
図1 マットレス変形量の予測
図2 マットレス変形量
生体力学シミュレーションにより、 CT、MRI の断層画像から、マッ
人がマットレスに寝たときのマット トレスの変形量を実験値とし
レス上面の変形量を予測
て取得
100
200
300
400
500
X座標(mm)
600
700
図3 予測精度の確認
実験値と予測値を比較し、誤差
20%未満でマットレス変形量が予
測できることを確認
[研究成果の普及・技術移転の計画]
 生体力学シミュレーションに必要な、身体組織の物性値データベースは、共同研究
先である(独)理化学研究所の web(http://cfd-duo.riken.jp/cbms-mp/index.htm)
にて公開しています。
 確立した生体力学シミュレーションによるマットレス設計技術を共同研究先企業に
技術移転し、事業化を進めています。
共同研究機関
ソフトプレン工業(株)
(独)理化学研究所
お問い合わせ先
- 7 / 41 -
800
工業技術研究所
機械科
電話 054-278-3027
平成24~26年度
(県新成長戦略研究)
研究成果事例
透明樹脂内部ひずみの複屈折位相差測定による評価
[背景・目的]
近年、照明モジュールの光学部品として、ガラスより軽く設計自由度の高い透明樹脂
が利用され始めています。しかしながら、樹脂は成形や加工によってその内部にひずみ
が発生し、これが変形や破損といった不具合の原因となることが知られています。した
がって、樹脂内部のひずみ情報を把握することは、品質を管理するうえで非常に重要で
す。そこで、我々は透明樹脂内部のひずみ情報を可視化する複屈折位相差測定により部
品の不具合を予測する手法を検討しています。この取り組みの一環として透明樹脂の溶
剤による亀裂発生(ソルベントクラック)の評価を行いました。
[これまでに得られた成果]
· 複屈折位相差測定装置((株)フォトニックラティス WPA-100PRO)を用い、複数のアク
リル樹脂(PMMA)に対して 0nm~1,000nm 以上の複屈折位相差を測定するワイドレン
ジ測定を実施しました。
· PMMA をアセトンに浸漬させソルベントクラックを発生させる実験を行ったところ、浸
漬処理前に複屈折位相差が高い部分でき裂が発生し、その部分の複屈折位相差が減少
するといった結果を得ました。一方、処理前に複屈折位相差分布が小さい領域ではき
裂の発生は確認されませんでした。
多数のき裂が発生
エッジに高複屈折位相差領域
板面方向
複屈折位相差(nm)
0
板面方向
複屈折位相差減少
複屈折位相差(nm)
00
300
300
板厚方向
板厚方向
図1 アセトン浸漬前の観察画像(左)と複屈折
図2 アセトン浸漬後の観察画像(左)と複屈折
位相差分布(右)
位相差分布(右)
[期待される効果・技術移転の計画]
複屈折位相差とソルベントクラックの発生とが密接に関係していることから、樹脂光
学部品の内部ひずみ起因の不具合箇所を予測・評価に利用できると考えられます。
お問い合わせ先
- 8 / 41 -
工業技術研究所
機械科
電話 054-278-3027
平成24~26年度
(県新成長戦略研究)
研究成果事例
光学部品の形状誤差が光学性能に与える影響予測
-光学シミュレーションによる検討-
[背景・目的]
近年、長寿命・省電力のLEDと樹脂製の光学部品(レンズなど)を組み合わせた光
関連製品が急速に普及しています。樹脂は、軽量で複雑な形を実現しやすいという利点
があるため、樹脂光学部品を用いた繊細な光の制御技術のニーズが高まっています。そ
の一方で、こうした光学部品の僅かな形状誤差が製品性能に与える影響が懸念されてい
ます。本研究では、こうした問題を光学シミュレーション技術により予測・解決する方
法を開発しました。
[これまでに得られた成果]
本研究では、光学部品の性能評価と製品開発の効率化を図るため、形状計測技術・リ
バースエンジニアリング技術・光学シミュレーション技術の融合を実現しました
(図1)
。
その事例として、自動車用LED照明装置のシミュレーションモデルを作成し、実際の
樹脂レンズの形状をモデルに反映させて、照明性能の再現を試みました。一般に樹脂レ
ンズは射出成形と呼ばれる方法で、金型に樹脂を充填して成形されますが、冷却時に樹
脂の性質に由来する、熱による収縮が生じるため、製品形状に誤差が発生します。こう
した形状誤差と照明性能の関係について、自動車用照明装置の国際規格で規定されてい
る投影距離 25m の投影像を対象に、光学シミュレーションにより解析しました。設計で
は、図2(a)に示すような、明暗部の境界が鮮明に分かれた像が投影されるものと想定し
ていますが、図2(b)に示すように、樹脂レンズ形状を再現したモデルに対する投影像で
は、明暗部の境界が不鮮明になっていることがわかります。これは、形状誤差による光
学設計値の変化が影響したものと考えられます。
(a) 設計CADデータ
設計評価
製品評価
設計・製造
保有技術
設計
CADデータ・物性データ等
製品
製造
形状精度
CADデータ
評価
★は保有設備で実施可能
光学シミュレーション★
形状データ測定★
(三次元測定機等)
(b) 形状再現CADデータ
形状再現CADデータ作成★
(リバースエンジニアリングソフト)
性能予測結果(成型・設計変更の指針)
結像性能、配光特性、照度分布、
色分布などの計算結果
図1 光学製品の開発を支援するスキーム
図2 投影状態の可視化結果
[期待される効果・技術移転の計画]
光学シミュレーション技術は、製品の形状誤差や組み立て時の取付け誤差が光学特性
に与える影響を予測できるため、高い寸法精度が要求される光学部品の金型加工や製品
製造において、試作回数の軽減など、効率的なものづくりに役立ちます。
お問い合わせ先
- 9 / 41 -
工業技術研究所
機械科
電話 054-278-3027
平成24~26年度
(県新成長戦略研究)
研究成果事例
樹脂製光学レンズの実形状を再現した
三次元 CAD データの作成
[背景・目的]
樹脂製光学レンズは、レンズ成型時に収縮を起こすことで設計通りの形状にならなか
ったり、レンズ内部の残留ひずみが生じたりし、これらの影響で予定した光学性能が得
られないことがあります。この場合、形状と残留ひずみがそれぞれどの程度光学性能に
影響を与えているかを把握する必要があります。成型したレンズの実形状を反映した三
次元 CAD データを活用した光学シミュレーションが実施できれば、レンズ形状が光学性
能に与える影響を定量的に把握することができます。そこで本研究では、樹脂レンズの
形状測定を行い、実形状を反映した(目標値:測定結果に対して誤差 10μm 以下)三次
元 CAD データの作成を行いました。
[これまでに得られた成果]
① 接触式三次元測定機で樹脂製レンズの形状を±1μm 程度の精度で測定し、図1に示す
ように約 1,300 点の点群データとしてレンズ面形状を取得しました。
② ①で取得した点群データを活用し、レンズの実形状を反映した三次元 CAD データを作成
しました。作成にあたっては、レンズの面構成を維持するように留意し、図2に示すよ
うにレンズ面を構成する9つの面ごとに自由曲面を作成しました。
③ ②で作成した三次元 CAD データがどの程度実形状を反映しているかを確認するため、①
の測定結果と②の三次元 CAD データの形状比較を行いました。その結果、±3μm 程度
の誤差で、測定結果を反映した三次元 CAD データが作成できたことを確認しました。
図1 レンズ形状の計測
接触式三次元測定機により、レ
ンズ面の形状を±1μm 程度の
精度で測定
図2 自由曲面作成
測定結果に基づいて、レンズの
実形状を反映した三次元 CAD デ
ータを作成
図3 精度確認
①の測定結果と②の三次元 CAD
データを比較し、両者の差を確認
[期待される効果・技術移転の計画]
 本研究の成果を活用して、レンズの実形状を反映した三次元 CAD データを活用した光
学シミュレーションを実施することで、試作レンズの光学性能予測が可能となります。
 測定結果と設計 CAD データの比較を行い、その差分を考慮した三次元 CAD データを作
成することで、成型時のひけを見込んだ金型形状データ作成が可能です。
お問い合わせ先
- 10 / 41 -
工業技術研究所
機械科
電話 054-278-3027
平成24~25年度
(共同研究)
研究成果事例
負荷検知型方式によるアシスト型車椅子の開発
[背景・目的]
現在、国民の4人に1人が 65 歳以上の超高齢社会となっており、介護は大きな問題
です。そこで、単身老人や障害者が自立して行動することを支援するためにアシスト型
の車椅子を県内企業と共同で開発することとしました。
この車椅子は、搭乗者にとって負荷が大きすぎる場合のみ走行する力を補助する形式
です。走行時には、ある程度の力を必要とするため、電動車椅子と比較して、運動機能
低下を防ぐ効果が期待できます。
[研究成果]
アシスト型の車椅子を製作するために開発した内容は以下のとおりです。
・走行する力をひずみセンサを利用して検出する回路
・滑らかな走行が可能なモータ制御回路
・市販の車椅子に大幅な改造を必要とせず着脱して使用できる補助車輪機構
・介助者が操作するときにもアシストするための力の検出回路
・傾斜にあわせてアシストする力を自動設定するための角度測定装置
図 センサ部分
図 アシスト機構付き車椅子
図 着脱可能な補助車輪
[研究成果の普及・技術移転の計画]
開発したアシスト型車椅子の利用により、行動範囲が広がるなど、生活の質の向上に
役立ちます。また、介助者が操作するときにもアシスト機能が働くため介助者の負担も
軽減できます。
共同研究企業への制御関連の技術移転については、今後、検討して行きます。
この研究で蓄積した、センシングやパワーアシストに関する技術を利用して、福祉機
器分野をはじめとする成長が期待される新たな産業分野への地域企業の参入を支援し
ます。
共同研究機関
県内自動車部品製造企業
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工業技術研究所
電子科
電話 054-278-3027
平成23~25年度
(共同研究)
研究成果事例
工業製品の騒音対策を支援するための音響技術の研究
[背景・目的]
吸音材料は、自動車・住宅・家電等多分野の工業製品の騒音対策に使われています。
その中でも特に、軽量化が推進されている自動車分野の開発競争は激しく、従来よりも
軽くて高い吸音性能を発揮する材料が求められています。
この様な状況下、本研究課題において、吸音の仕組みが十分に分かっていないために
経験的な開発が行われている2種類の吸音材料の研究に取り組みました。
繊維不織布の表面を薄膜状の素材で覆った吸音材料について、その接着条件を含めた
音響モデルを研究しました。また、ポリウレタンフォームについて、セルウィンドウの
薄膜の有・無という構造上の条件と物性値の関係を研究しました。
平成 22 年度末までの6年間の吸音材料の依頼試験は、1,330 件と多く、企業が材料開
発に旺盛に取り組んでいたことが分かります。本研究の成果により、企業では材料開発
を合理的に進めることができ、高性能で安価な製品開発が期待できます。
[研究成果]
・ 薄膜状素材とポリエステル繊維不織布を接着材で積層した材料の吸音率の予測ができ
ました。
・ ポリウレタンフォームの薄膜の有・無は、通気抵抗値・粘性熱交換に関する長さに大
きく影響するが、弾性率には影響が小さいことが分かりました。
1
垂直入射吸音率
0.9
0.8
予測値
0.7
計測値
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
100
1000
周波数(Hz)
10000
接着剤を使用した積層吸音材の
薄膜を有するポリウレタンフォームの
予測値と計測値の比較
電子顕微鏡写真
[研究成果の普及・技術移転の計画]
研究した予測技術や物性値情報は、共同研究機関において次世代自動車用吸音材料の
効率的な開発に利用され、3~5割の開発期間の短縮及び試作費用の削減効果が見込ま
れています。今後は、新たに開発された吸音材の性能予測に取り組んでいきます。
共同研究機関
自動車内装材製造企業
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工業技術研究所
電子科
電話 054-278-3027
平成20~25年度
(JST 地域結集型研究開発プログラム)
研究成果事例
静岡発 世界を結ぶ新世代茶飲料と素材の開発
-茶生葉紅茶飲料の開発-
[背景・目的]
近年、日本国内の茶の消費量は減少の一途を辿っていますが、世界に目を向けるとそ
の消費量は増加を続けており、日本の茶産業には海外市場を視野に入れた展開が求めら
れています。そのような中、
「静岡発 世界を結ぶ新世代茶飲料と素材の開発」と銘打っ
てスタートした地域結集型研究開発プログラムがフェーズⅢ(実用化段階)に突入いた
しました。これまで、我々は海外市場を視野に入れ、緑茶を元にしながらも酵素を用い
て苦渋味を低減した発酵茶飲料や茶素材の開発を行ってきました。ここではその成果の
一部をご紹介します。
[研究成果]
・海外で敬遠される緑茶の渋味を軽減するため、緑茶抽出物に生茶葉中の酵素を加える
ことで渋味の原因となるカテキン類をテアフラビン類に変える方法を確立しました
・上記テアフラビン類は紅茶色素の一種で、抗酸化作用や抗肥満作用が知られていまし
たが、本プログラムの独自研究により血流改善効果を持つことも判明しました
図1 茶生葉紅茶飲料のイメージ
・本飲料は緑茶を元に製造するため発酵茶製造設備を新たに導入する必要がありません
・本飲料は通常の紅茶等と異なる独特の風味を持ち、市販紅茶飲料の数倍程度のテアフ
ラビン類を含有しています
・飲料製造の実機を使用して製造ラインテストを行い、実際に工業規模での発酵/製造
が可能であることが確認できました
[研究成果の普及・技術移転の計画]
現在、大手飲料メーカーと商品化を前提に共同開発を推進中です。
静岡県は飲料出荷額が全国1位であり、大手メーカー商品の OEM 生産も盛んに行われ
ています。本製品が商品化されれば県内飲料製造業の振興に寄与できます。また、本技
術は茶葉を飲料ベースとしてだけでなく、酵素として用いることが特徴で、これまでは
価値の低かった番茶等に新たな用途を提案でき、茶農家の収入増が期待できます。
共同研究機関
静岡ジェイエイフーズ(株)
大手飲料メーカー 1社
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工業技術研究所
食品科
電話 054-278-3026
平成20~25年度
(JST 地域結集型研究開発プログラム)
研究成果事例
苦渋味抑制素材の開発
[背景・目的]
近年国内の茶系飲料の出荷量が伸び悩み、海外では地域により依然として炭酸飲料や
加糖飲料が清涼飲料の大多数を占め、無糖の茶飲料の普及には至っていません。これら
は茶の飲用経験の少ない地域や世代において、茶の苦渋味が敬遠されていることが要因
の一つと言われています。茶系飲料の苦渋味を抑制するには、砂糖やミルクを加えたり
シクロデキストリンを添加する方法が知られていますが、砂糖は味が甘くなり、ミルク
は茶が濁り、シクロデキストリンは特許により工業使用の制限があります。そこで茶の
風味を保ちながら濁りを生じない新たな苦渋味抑制素材を開発し、この苦渋味抑制素材
を利用した飲料や粉末茶を試作しました。
[研究成果]
・ 大豆由来の苦渋味抑制素材(静岡県立大学石井剛志助教/東海物産(株)製造)を用
いた茶飲料や抹茶ミックスを試作
・ 茶飲料はカテキン類やテアフラビン類の苦渋味を抑制していることを確認
・ 抹茶は低価格品に苦渋味抑制素材を添加すると、高価格品のカテキン類含有量程度
まで遊離のカテキン類が減少し、さらに味覚センサーにより測定したうまみレベル
は高価格品程度まで上がった
熱水抽出
↓
濃度調整およびアスコルビン酸による
pH調整
↓
苦渋味抑制素材の添加
↓
UHT殺菌(136℃40秒)
↓
充填と密閉
図 苦渋味抑制茶飲料の試作
表 苦渋味抑制素材添加茶飲料の官能評価
苦渋味抑制
溶解性
香り
不沈殿
苦味抑制
素材コード名
TS2
良い
可
可
非常に良い
TS3
非常に良い やや良い 非常に良い
良い
TS4
非常に良い やや良い
良い
良い
渋味抑制
非常に良い
良い
良い
TS2は苦渋味抑制が非常に良かったが、1週間冷蔵保管したと
ころペットボトル底面に沈殿が生じた。TS3およびTS4は溶解性
を改善し、沈殿が出ない品質改善をした。
[研究成果の普及・技術移転の計画]
共同研究企業による素材の提供および受注生産が可能です。
共同研究機関
東海物産(株)
静岡県立大学食品栄養科学部
お問い合わせ先
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工業技術研究所
食品科
電話 054-278-3026
平成25年度
(測定技術)
研究成果事例
現場でのアスベスト迅速定性・定量手法の確立
[背景・目的]
大気中アスベストの現場等環境測定は大気汚染防止法等で定められていますが、作業
への規制を伴う性格上、
一定レベルの測定精度が要求され迅速な対応が難しい状況です。
しかし、飛散防止規制の強化や災害時の非常時における対応の必要性から、現場におけ
る迅速な対応が不可欠であるため、従来法とある程度整合性が確保され、現場で迅速に
測定可能な定量・定性手法を検討しました。
[得られた成果]
・現場分析可能な簡易法として、1分毎に連続データが得られる市販の繊維状粒子自動
測定機を用い、アスベスト作業環境測定用カートリッジを用いて走査型電子顕微鏡で
定性・定量する従来法(現場分析不可能)と比較試験した結果、相対濃度 0.93、相関
係数2乗 0.81(p>0.05)で高い類似性が確認されました。
・簡易法の測定機に内蔵されたバックアップカートリッジを用い、採取された試料を蛍
光顕微鏡法で定性する新提案法(現場分析可能)と、従来法を比較した結果、相対濃
度 0.22、相関係数2乗 0.74(p>0.10)で類似性が確認されたものの、新提案法は明
らかに低めの結果が得られました。新提案法は、定性は可能ですが、定量する場合は、
濃度補正係数を設定する必要があることがわかりました。
簡易法[f/L]
800
繊維径0.2~3μm
y = 0.93x
2
R = 0.81
600
400
200
0
0
写真 簡易法測定機と新提案法の採取フィルター
200
400
従来法[f/L]
600
800
図 従来法と簡易法の濃度比較
[成果の普及・技術移転の計画]
・簡易法は、従来法と高い類似性が確認されたこと、従来法が試料採取現場で定量結果
が得られないのに対し、簡易法はオンサイトで結果を計測できることから、アスベス
トが高濃度に漏洩する現場では、迅速に半定量を行う手段として活用できます。
・簡易法で高濃度のアスベストが懸念された場合には、バックアップフィルターを用い
て定性分析も可能となります。
・今回検討した測定手法は、規制行政を実施する自治体や民間の分析機関、さらには建
築物の解体作業を行う建設業の事業者への技術移転が期待されます。
協力機関
静岡県環境衛生科学研究所
お問い合わせ先
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工業技術研究所
環境科
電話 054-278-3026
平成24~25年度
(共同研究)
研究成果事例
オゾンを利用した化学系小規模排水処理装置の開発
[背景・目的]
本研究では、共同研究企業の持つオゾン水製造に関する「コア技術」と、当研究所の
オゾンを利用した排水処理に関する「技術蓄積」を組み合わせ、発展させることで、県
内企業から寄せられた
「オゾンを利用した低コストでコンパクトな排水処理設備ニーズ」
に対応した装置開発を目指しました。
[研究成果]
研究協力企業のグループ会社で発生する2種類の化学系排水(有機性色素排水・水溶
性高分子排水)を対象とし、共同研究企業が試作した処理装置で分解特性を調べました。
・各排水について、各々7時間(有機性色素排水)
、9時間(水溶性高分子排水)処理
を行うことで、研究協力企業が要求する水質の処理水(TOC(全有機体炭素)濃度:
50mg/L 未満)が得られました(図)
。また、本条件による処理コストは同社が要求す
るコストに収まりました。
・排水中の有機物をより短時間で凝集沈殿させるオゾン処理条件を各排水について見出
しました(写真は有機性色素排水の場合)
。
・さらに、排水基準以下の鉄塩を添加しオゾン処理を行うことで、水溶性高分子排水の
処理が 1.6 倍促進されました。本条件を基に、試作装置の経済性を試算した結果、初
期コストが 1,800 万円の装置であれば、
償却に 9.6 年必要であることがわかりました。
図 化学系排水のオゾン単独処理結果
写真 オゾン処理による有機性色素排水中の
有機物の凝集沈殿(左:処理前、右:処理後)
[研究成果の普及・技術移転の計画]
今後は、本研究で得られた成果を基に、処理効率のさらなる向上を図り、初期コスト
の償却期間に対する企業の要望を満足できるようにすることで、オゾンを利用した低コ
ストでコンパクトな排水処理設備の普及を目指します。
共同研究機関
研究協力機関
(株)ハマネツ
県内化学メーカー
お問い合わせ先
- 16 / 41 -
工業技術研究所
環境科
電話 054-278-3026
平成24~25年度
(共同研究)
研究成果事例
簡単で使いやすいディジタルオーディオプレイヤーの開発
-置物型の製作-
[背景・目的]
2005 年頃から、小型・高機能化の進んだディジタルオーディオプレイヤーが、本格的
に普及しています。しかし、当研究所が中高年(162 名)を対象に実施したアンケート調
査では、約 3/4 の人が使用していませんでした。使用しない主な理由は「多すぎる機能」
や「複雑な操作」であり、
「簡単ならば使ってみたい」という意見が多くありました。
そこで、ディジタルデータの扱いに慣れていない高齢者を主対象に「簡単で使いやす
いオーディオプレイヤー」の開発を県内電気機器企業と取り組みました。
[研究成果]
・アンケート調査の結果を反映して、
「乾電池で駆動」
「クリック感があるスイッチ」
「曲は
SD カードで物理的に交換」
「曲番のみ表示」というシンプルな機能のプレイヤーを開発
しました。
・最初に試作した「携帯型プレイヤー」
(写真1)について、高齢者(49 名)と高齢者に
贈り物を贈る世代の人(19 名)を対象に調査を行った結果、
「外出中にヘッドフォンで
聴かない」という意見が大半でした。
・家の中で聴くことを目的とした「スピーカー内蔵の置物型プレイヤー」
(写真2)を試作
しました。筺体は、
「湯呑み茶碗」をモチーフにしたデザインで、静岡の伝統工芸技術
である「挽物と漆塗」で仕上げました。
・試作した「置物型プレイヤー」について、高齢者(48 名)を対象にして主観評価を行っ
た結果、
「簡単な操作」
「親しみやすいデザイン」
「高級感のある仕上げ」により、大変
好評でした。
写真1
携帯型プレイヤー
写真2
置物型プレイヤー
[研究成果の普及・技術移転の計画]
今後、音楽好きな高齢者の QOL 向上に貢献するために、
「贈り物」の分野での展開を視
野に入れ、県内外での展示会への参考出品を計画しています。
共同研究機関
県内電気機器企業
お問い合わせ先
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工業技術研究所
ユニバーサルデザイン科
電話 054-278-3024
平成25年度
(科学研究費助成事業※)
研究成果事例
スポーツ産業振興へ向けた観察記録・生体計測に
基づく運動評価技術の開発
[背景・目的]
本研究では、静岡県総合計画に基づき、今後の経済成長を担う次世代産業の育成を目
指します。将来の成長が期待される、スポーツ産業の振興を目指します。
近年、メタボ予防、介護予防など健康寿命向上のために、フィットネスクラブ、介護
予防運動施設などへ通う人が増えています。運動を続けるには、楽しみながらすること
と、運動を的確に評価してこの効果を知ってもらうことが重要です。
運動評価には、正しいやり方をしているかどうかを判断するために、視覚的な情報の
解析と筋活動量を計測する必要があります。前者には運動評価者の経験値への依存、後
者には計測・解析の煩雑さ、フィードバックまでに時間がかかるといった課題がありま
す。
これらの課題を解決するために、人間工学に基づく生体計測データや自動抽出された
視覚的情報など、運動評価に必要な客観的に情報を一つのシステム上に運動評価者に提
示し、運動評価者の経験値も加えた上、迅速にフィードバックできるシステムを開発す
ることにしました。
[研究成果]
・映像と同期して、運動中の筋電計測データ、加速度データ、関節角度、運動評価者の
観察記録を一同に記録・再生できるシステムを試作しました(写真1)
。
・実際にポールエクササイズの運動を行う場面において、運動評価者が、初めて同運動
を行う人の動きを評価し、動きを改善するために、試作システムを使用するユーザビ
リティ評価実験を実施した結果、有効に利用できることが確認できました(写真2)
。
統合制御ソフトウエア
関節角度センサ
加速度センサ
筋電センサ
写真2 試作システムのユーザ
写真1 試作システム
ビリティ評価実験風景
[研究成果の普及・技術移転の計画]
・今後、論文投稿、学会発表を通じて成果の公表、スポーツ産業に進出する県内企業に
技術移転を図ります。
・県内企業と協力して、介護予防運動での利用に沿った評価システムの改良を行います。
*本研究は、日本学術振興会学術研究助成基金助成金(課題番号 25560333)を受けて行いました。
連携研究機関
花園大学、千葉大学、国立スポ
ーツ科学センター
※(独)日本学術振興会 科学研究費助成事業
お問い合わせ先
- 18 / 41 -
工業技術研究所
ユニバーサルデザイン科
電話 054-278-3024
平成24~25年度
(県単独研究)
研究成果事例
遮熱塗料と熱対流を考慮した省エネルギー住宅の開発
[背景・目的]
1997 年の京都議定書締結以降、地球温暖化対策に向けて様々な取り組みが進められて
います。また、福島第一原発の事故以降、電力不足も深刻化し、省エネ高効率空調住宅
の開発は喫緊の課題となっています。そこで、当所では、県内メーカーと共同研究によ
り、リサイクル骨材を用いた遮熱塗料の研究、改良を続けています。平成 24 年度、塗装
工程の改善により、施工時のスプレーガンの詰まりや、骨材の沈降などの課題を解決し
ました。平成 25 年度は、遮熱・雨音の低減効果の検証、また、新たな販路開拓に向けて、
滑り止め塗料を目指した耐摩耗性の評価を行いました。
[研究成果]
・鋼製物置2棟を当所に設置し、1棟のみ、遮熱塗料を施工し、夏季(8/9~9/18)
、冬
季(11/12~12/31)の屋根表裏面および室内温度を比較しました。夏季では、遮熱塗
料を施工した物置は、そうでないものと比べて、屋根表面温度が低下しました(図1)。
また、冬季に、東、南、西の壁面にアルミ断熱シートを張って比較したところ、室内
温度低下が、2℃以上となったことから、夏季も壁面からの熱を減らせば、遮熱塗料
の効果がより大きく生ずると予想されます。
・雨天時に雨音の比較実験を行い、遮熱塗料を施工した方が、10~14dB 低減することを
確認しました(図2)。
・耐摩耗性では、摩耗減量(100 回転当たり)が、30~60mg であり、JIS K 5665 路面標示
用塗料の基準値 200mg の 1/3 以下という優れた性質が確認できました。
図1 夏季屋根表面最高温度
(右が遮熱塗料塗工)
図2 雨音計測結果
(右が遮熱塗料塗工)
図3 浜松駅バスターミナル
白囲い内が施工部分
[研究成果の普及・技術移転の計画]
屋根用塗料は、すでに施工実績を上げています。また、新たな販路としての滑り止め
塗料も施工が始まっており、遠州鉄道浜松駅バスターミナル乗車口(図3)など、主に浜
松市内で実績を上げています。今後も企業からの相談に応じ、改良を続けていきます。
協力機関
(株)名倉ルーフ
お問い合わせ先
- 19 / 41 -
工業技術研究所
工芸科
電話 054-278-3024
平成24~26年度
(共同研究)
研究成果事例
自然界からの新たな香味を有する清酒醸造用酵母の開発
[背景・目的]
近年、清酒業界は厳しい状況が続いており、本県の清酒製成数量は減少傾向にありま
す。このような状況を踏まえ、本県酒造業界から、静岡県地酒のさらなる差別化及び商
品幅の拡大の要望が寄せられています。そこで本研究では、新商品開発の推進及び酒造
業界の発展・活性化に寄与することを目的とし、新たな清酒醸造用酵母(新規静岡酵母)
の開発を目指しています。
[これまでに得られた成果]
開発する酵母は、県内の花等の自然界試料から清酒醸造に適したものを分離すること
としました。研究計画2年目の平成 25 年度は、平成 24 年度に引き続き試料の採取及び
酵母選抜試験を行うとともに、実験室規模での清酒小仕込試験を実施しました。
これまで、約 2,400 サンプルを採取し、うち約 2,000 サンプルを試験しました。糖・
アルコール耐性などが確認された3次選抜サンプルの一部について4次選抜を行ったと
ころ、3サンプルが良好な発酵を示しました(図1)
。また、清酒小仕込試験では、従来
法から乳酸やエタノール量を最適化し、酵母の酒造適性の差異をより明確に判別できる
本県独自の新法を開発しました。良好な発酵を示したサンプルからの分離株の一部につ
いて開発した新法により試験しました。その結果、得られた製成酒はややアルコール度
数が低めで酸度が高く、既存の静岡酵母 HD-1 とは異なる酒質を示しました(表1)
。
次年度は、酵母育種によりこれら分離株の発酵力の強化等を行うとともに、誉富士を
用いたプラント規模での清酒製造実証試験を行い、
オール静岡の地酒開発を目指します。
表1 清酒小仕込試験における製成酒成分
注)減少量が大きいほど発酵が良好。
図1 4次選抜における培地の重量減少
[期待される効果・技術移転の計画]
最終目標の新たな清酒醸造用酵母開発に向け、県内酒造場1社にてプラント規模(製
成数量 約 150 L 以上)の実証試験を行います。現状はまだ酵母の選抜中であり、達成
度は 25 年度 90 % で全体 65 % です。酵母が開発できれば、県酒造組合と共に県内酒
造場へ普及を行い、酒造業界の発展・活性化に寄与するものと期待されます。
共同研究機関
静岡県酒造組合
お問い合わせ先
(ページ番号は企画で付ける)
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工業技術研究所 沼津工業技術支援センター
バイオ科
電話 055-925-1101
平成25年度
(県単独研究)
研究成果事例
海藻資源を活用した新規発酵食品の開発
[背景・目的]
静岡県における海藻の年間生産量は、テングサが約 150 トン(日本一)
、ヒジキ、ワカ
メなどその他海藻が約 50 トンです。テングサは、ところてん、寒天への加工、その他海
藻は直接的な食用が主となっています。そこで、これら県特産の海藻類の用途拡大を目
指して、これら海藻に多く含まれる多糖類を食品製造用に使用されている麹菌を用いる
ことで単糖やオリゴ糖類に分解させ、それら分解物を酵母で発酵させて風味を加え、海
藻の風味豊かなペースト状発酵食品の製造とその工程の開発を目的としました。
[研究成果]
・テングサを発酵させるための糖化(多糖類の分解)は、焼酎用黄麹菌で最も進むこと
を確認しましたが、酵母が発酵するには不十分でした。
・そこで、麹菌が生育した後に、発酵補助剤として米麹を加えて耐塩性酵母で発酵させ
たところ、発酵風味を付与したペースト状発酵調味料原料を試作することができまし
た。この製造工程は、酵素材を用いていないため、発酵風味が保持でき、糖化コスト
が酵素材使用の約 10 分の1となる特徴を有しています。
発酵作用
による泡
写真 耐塩性酵母による発酵の様子
図 海藻発酵調味料の製造工程
[研究成果の普及・技術移転の計画]
今後は、さらに糖化の効率化等の検討を進めつつ、実際のテングサ原料(端物、寒天
抽出後等)や他の海藻にも応用できるようにしていきます。それら成果の普及・技術移
転は、県内水産加工企業等とも連携しながら進めていく予定です。
お問い合わせ先
- 21 / 41 -
工業技術研究所 沼津工業技術支援センター
バイオ科
電話 055-925-1101
平成24~25年度
(競争的資金※)
研究成果事例
超高感度簡易迅速感染症診断システムの開発
-超高感度化の鍵となる酵素融合抗体の開発-
[背景・目的]
インフルエンザウイルスの感染拡大防止には、感染初期段階で感染の有無を簡便かつ
正確に判別できる検査技術の開発が重要です。現在多くの病院では抗原抗体反応を利用
した検査キットが使用されています。しかし、検出感度が不十分なことから、感染初期
段階の患者のウイルス感染を見逃してしまうことがあり、現行の検査キットに対する検
出感度の向上が医療現場では求められています。
そこで、現行の検査キットと比べ 1,000 倍以上高感度なインフルエンザウイルス検出
法の開発を大学や企業と共に進めています。開発中の検出方法は、インフルエンザウイ
ルスと結合した酵素融合抗体の酵素反応で生じた色素を、増感して測定することを計画
しています。そのため本研究では、検出法の実用化の鍵となる酵素融合抗体の迅速かつ
安価な生産方法の開発を行いました。
[研究成果]
・色素を生成させるための酵素を抗体に遺伝子工学的手法で結合させ、酵母で生産する
技術を開発しました。この技術は、平成 22~24 年度の新成長戦略研究での抗体を酵母
で大量・安価に生産する技術を活用することで実現しました。
・酵母溶液から回収し、精製した酵素融合抗体(図)は、高感度化に必要な酵素活性と
抗体活性を維持していることを確認しました。
・酵素融合抗体は酵母培養により迅速かつ安価に生産可能です。
抗体(ウイルスに結合)
酵素(色素生成反応を触媒)
酵素融合抗体
図 本研究で開発した酵素融合抗体
[研究成果の普及・技術移転の計画]
本研究成果を活用して大学や企業とともに更に研究を進め、インフルエンザウイルス
の超高感度検出診断システムの平成 29 年度実用化を目指します。本研究で開発した酵
素融合抗体は、抗体や酵素の種類を変えることによって様々な機能を付与できることか
ら、産業界のニーズを調査して研究成果の普及拡大に努めることも計画しています。
※本研究は(独)科学技術振興機構の先端計測分析技術・機器開発プログラムで実施しま
した。
共同研究機関
研究協力
徳島文理大学香川薬学部
(株)テクノアソシエ
(株)ビーエル
お問い合わせ先
工業技術研究所 沼津工業技術支援センター
バイオ科
電話 055-925-1102
※(独)科学技術振興機構 先端計測分析技術・機器開発プログラム
- 22 / 41 -
平成25~27年度
(県新成長戦略研究)
研究成果事例
手術支援ロボットの要素技術の研究開発
-先行技術調査と医療現場のニーズ調査-
[背景・目的]
新成長分野として期待される医療機器産業への地域企業の参入を促すため、手術室の
ロボット化に活用できる要素技術の研究を行っています。
平成 25 年度は、手術支援ロボットの要素技術の先行技術調査と医療現場のニーズ調査
を行いました。
[これまでに得られた成果]
(1)先行技術調査
先行技術に係る出願特許の状況を把握するため、特許電子図書館(IPDL)で特許分類
検索を行いました。
「手術用鉗子」または「手術または診断のための補助具」で、かつ「主
従形マニプレータ」に分類された公開特許公報の年別検索件数を図に示します。公開さ
れた出願特許は、2000 年以降に触覚を付加した手術支援ロボットの開発が進み、増加し
ていることが分かりました。
(2)医療現場ニーズ調査
静岡がんセンターを含む県内外6医療機関において、医療現場における機械(システ
ム)化のニーズを調査しました。その結果、
「医療関連機器圧迫創傷」の予防を実現でき
るシステム開発に対するニーズが共通して存在しました(表)。
手術用鉗子・手術または診断のための補助具
[主従形マニプレータ]
表 手術室内における機械システム化の要望
20
6医療機関の手術室内における医療機器に
15
関するニーズの抜粋。医療関連機器圧迫創傷予
件
数 10
防が共通のニーズとして存在しました。
5
・医療関連機器圧迫創傷の予防 (5 機関)
0
・カテーテルのナビゲーション (2 機関)
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
西暦1995-2013
・医療機器配線の簡素化 (2 機関)
図 特許電子図書館分類検索結果
「手術用鉗子」または「手術または診断のための
補助具」で、かつ「主従形マニプレータ」に分類
・手術器具のカウント (1機関)
・呼吸器回路の結露防止 (1 機関)
された公開特許公報の件数(1995~2013 年)
。
[期待される効果・技術移転の計画]
医療現場のニーズ調査結果を踏まえ、医療現場で喫緊の課題になっている「医療関連
機器圧迫創傷予防」に役立つソフトアクチュエータ等の要素技術の開発を行います。
お問い合わせ先
- 23 / 41 -
工業技術研究所 沼津工業技術支援センター
機械電子科
電話 055-925-1103
平成25~26年度
(県単独研究)
研究成果事例
運動錯覚現象を用いたリハビリテーション装置の開発
-運動錯覚誘起のための物理刺激方法と刺激条件の確立-
[背景・目的]
脳卒中は一度発作が起きると発症者の約6割の人に何らかの後遺症が残るといわれて
おり、発症後のリハビリテーションが重要となります。動いていないのに動いたと錯覚
する運動錯覚中に活動する脳内部位が実際に四肢等を動かす時と同じである事に着目し、
人の運動錯覚現象を利用した新しいリハビリシステムの実現を最終目標とした研究を行
っています。本研究課題では、提案システムにおいて最も重要な要素となる運動錯覚を
自在に誘発・コントロールさせるための振動刺激条件の確立と体系化を目指します。
[これまでに得られた成果]
・ 平成 24 年度までに開発した錯覚量評価装置では、押し込み力3 N 未満であれば、
周波数 40 Hz 以上の振動刺激で、最大 100 m/s2 の加速度を提示できることが分かり
ました (図1)。
・ 錯覚が誘発され始める刺激値(閾値)が、40 m/s2 付近に存在することが分かりまし
た(図2)
。
今後は、振動刺激を変化させた時の錯覚量の変化を調査するとともに、錯覚量を増大
させるための刺激方法の研究を進めていきます。
刺激箇所
押し込み力
< 3 N
とうそくしゅこんくっきん
橈 側 手 根 屈 筋腱
図1 刺激提示方法と刺激箇所
錯覚なし
加速度 (m/s2)
最大 100 m/s2
錯覚あり
40 Hz 以上で
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
50
閾
70
90
周波数 (Hz)
図2 錯覚誘発刺激閾
[期待される効果・技術移転の計画]
・ 自宅で麻痺手の運動機能(維持・回復)訓練が行えるような、単純構造で安全性の
高い安価なリハビリシステムの実現を目指しています。
・ 新しいリハビリシステムの実現に向けて必要となる錯覚量評価装置の特性や振動刺
激と運動錯覚との基本的な関係がこれまでの研究で分かりました。
・ 本研究終了後、研究協力機関である病院・介護施設への試験導入を試みます。
・ 最終目標達成後、静岡県内における脳卒中による要介護者数5万3千人(2020 年の
予測値)への普及に努めていきます。
協力機関
名古屋大学、静岡理工科大学、ヒ
ルズかどいけ、こども病院、明電
システムソリューション(株)
お問い合わせ先
- 24 / 41 -
工業技術研究所 沼津工業技術支援センター
機械電子科
電話 055-925-1104
平成25~26年度
(県単独研究)
研究成果事例
トイレットペーパーのクレープ形状が
やわらかさに与える影響
[背景・目的]
富士地域の家庭紙メーカーから、古紙を原料としたトイレットペーパーの品質面での
優位性を確保したい、という要望があります。そこで、トイレットペーパーの品質で最
も重要であるやわらかさに影響が大きいと言われているクレープ(トイレットペーパー
の表面にある細かいしわ)に着目しました。本研究は、①クレープ形状の評価法を確立す
ること、②クレープとやわらかさの関係を明らかにすること、③やわらかさを向上させ
るクレープ形状を提案することを目標にしています。
[これまでに得られた成果]
平成 25 年度は、クレープ形状の評価法を検討しました。評価法として、①形状観察、
②表面粗さ試験機による表面形状の測定を行いました。形状観察は、デジタルマイクロ
スコープを用いてトイレットペーパーをロールの断面方向から観察し、クレープの幅と
高さを計測できました。計測の結果、測定したトイレットペーパーのクレープは、幅
0.040~0.130mm、高さ 0.012~0.034mm に多く分布していることがわかりました。また、
トイレットペーパー毎にクレープの幅の細かさが異なっていることがわかりました。表
面粗さ試験機による測定は、クレープ形状をロールからほどいた状態で測定できる可能
性があり、測定条件や解析方法などをより詳細に検討する予定です。
拡大
拡大
高さ
幅
トイレットペーパーのロール断面
ロール断面の拡大写真(×175)
個々のクレープ計測
図 クレープ形状の観察
[期待される効果・技術移転の計画]
・平成 25 年度は、クレープ形状の評価法を検討しました。今後、様々なトイレットペ
ーパーのクレープ形状とやわらかさを測定し、やわらかさとクレープ形状の関係を調
べます。
・クレープ形状とやわらかさの関係が明確になることで、やわらかさを向上させるクレ
ープ形状がわかり、品質の向上につながることが期待されます。
協力機関
県内家庭紙メーカー
お問い合わせ先
- 25 / 41 -
工業技術研究所 富士工業技術支援センター
製紙科
電話 0545-35-5190
平成25~27年度
(県単独研究)
研究成果事例
紙に含まれる木材パルプの複合的評価手法の開発
-紙の LBKP と NBKP の定性・定量分析、ろ水度の測定-
[背景・目的]
近赤外分光法は食品・薬品などの多くの分野で活用されています。製紙分野でも水分
計として利用されていますが、水分計以外の用途としてはあまり知られていないのが現
状です。従来、県内の製紙工場に原料として収集される古紙は製造現場の長年の経験や
勘によりパルプ繊維の種類などを判断し、原料を配合していますが、古紙に含まれる木
材パルプをより客観的に判断できる手法があれば、より安定した原料の供給につながり
ます。
そこで本研究は近赤外分光法を利用し、
原料を評価する手法の開発を目指します。
LBKP
NBKP
染色法
vs.
日 本 ビュッヒ(株)
NIRF l ex N-500
近赤外分光法
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
1230
LBKP配合率
(回帰分析による予測値)(%)
[これまでに得られた成果]
・製紙工場で最も一般的に使われている漂白クラフトパルプ(BKP)であれば、広葉樹・
針葉樹に含まれる成分の割合が異なることから、近赤外分光法で広葉樹(LBKP)と針葉
樹(NBKP)をはっきりと分類できることが分かりました。
・今回検討した LBKP と NBKP は、近赤外分光法により得られた検量線から精度よく定量
分析できることが分かりました(図2)。
・ろ水度が異なるスラリーから抄いた紙に近赤外分光法を適用すると、精度よくろ水度
が測定できることが分かりました。
100
y = 0.9367x + 3.3992
R² = 0.9751
80
60
40
20
0
0
20
40
60
80
100
120
LBKP配合率(基準値)(%)
1730
波 長 (nm)
2230
図1 染色法(従来法)と近赤外分光法
図2 LBKP と NBKP 混合試料の PLS 回帰分
析から得られた検量線
[期待される効果・技術移転の計画]
・近赤外分光法は従来法より圧倒的に測定時間が短縮できます。繊維組成試験やろ水度
の測定などの有効な解析法の一つになりうるものと期待できます。
・最終的には、これらの手法の適用範囲をさらに拡大し、パルプ繊維の種類や紙の劣化
度合いが近赤外分光法を使用して客観的に評価できることを目標とします。
・これらの成果は技術相談や繊維組成分析の依頼試験等に役立てられます。
協力機関
名古屋大学大学院生命農学研
究科、(株)カモソフトウェアジ
ャパン
お問い合わせ先
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工業技術研究所 富士工業技術支援センター
製紙科
電話 0545-35-5190
平成24~26年度
(県単独研究)
研究成果事例
ドライトナー印刷物のリサイクル適性評価について
[背景・目的]
近年、
家庭用だけでなく印刷工場などで印刷される印刷物でもデジタル印刷物(トナー
印刷物、インクジェット印刷物)の割合が増加しています。しかし、デジタル印刷物のリ
サイクル適性は明らかになっておらず、このまま古紙への混入量が増加した場合、再生
紙品質の低下などが懸念されます。そこで、こういったトラブルを未然に防ぐために、
デジタル印刷物についてリサイクル適性評価法の開発を行い、リサイクル適性の有無を
実験により判定できるようにすることを目指しました。また、デジタル印刷物が県内の
製紙工場に古紙原料として混入した際の影響も明らかにする予定です。
[これまでに得られた成果]
・デジタル印刷物のうち、ドライトナー印刷物について製紙工場の古紙処理工程を実験
的に再現できる試験法を確立しました。
・実験的に古紙処理した結果から、日本製紙連合会と協力してリサイクルの可否を判定
する評価基準を決めました。評価は、実験的に作製した再生紙に残るきょう雑物(小さ
な黒く見える斑点)のうち 0.04mm2 以上のものの総面積などで判断します。
・試験法および評価基準は、(公財)古紙再生促進センターと(一社)日本印刷産業連合会
から公表されて、規格化された試験法として運用されます。
写真2 実験的に作製された再生紙
再生紙にはきょう雑物(小さな黒い斑点)が無
数にあり、ダートカウンターと呼ばれる計測機
写真1 評価試験用にA4サイズで印刷され
器で数と面積を測定します。
たドライトナー印刷物の例
[期待される効果・技術移転の計画]
・本研究で決めた評価基準を上回る印刷物は、グリーン購入法における調達基準として
運用される予定で、ドライトナー印刷物が国や地方自治体などで活用可能となります。
・ドライトナー印刷物のリサイクル適性を県内製紙会社に情報提供することで、将来予
想される古紙処理トラブルを未然に防ぐことができます。
・リサイクル適性の有無が判断可能となることで、デジタル印刷機メーカーでは従来よ
りもリサイクル適性のある印刷技術の開発が期待されます。
協力機関
(公財)古紙再生促進センター
(一社)日本印刷産業連合会
お問い合わせ先
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工業技術研究所 富士工業技術支援センター
製紙科
電話 0545-35-5190
平成25~27年度
(県新成長戦略研究)
研究成果事例
ファルマバレープロジェクトを推進する医療・介護用機器
の開発-地域包括ケアシステムを支える見守りシステムの開発-
[背景・目的]
現在、日本は世界一の超高齢社会であり、今後も高齢化の急速な進行が懸念されてい
ます。一方、要介護者のケア体制づくりが不十分なのが現状となっています。また、介
護・医療産業は新成長分野として期待されており、本県では県民の健康増進と介護・医
療・健康産業の集積を図るファルマバレープロジェクトを推進しています。
そこで、ベッド上の要介護者の状態(呼吸や脈拍等の動き、転倒・転落・徘徊等)を
判別検知できる新規見守りセンサシートを開発し、地域包括ケアシステムを支える見守
りシステムの開発及び構築を目指します。
[これまでに得られた成果]
・見守りシステム開発に向けた在宅介護現場のニーズ調査
要介護者の「呼吸や脈拍等の異変」
「呼吸や脈拍の状態」
「離床/在床状態」を携帯電
話や無線ブザー、外部端末等で知りたい等のニーズが高いことが分かりました。
今後、ニーズ調査結果を基にして、見守りシステムの設計を行います。
・寝具下でも呼吸や脈拍(心拍)を検知できるセンサシートの試作
マットレスの下に設置しても、呼吸バンドや脈波センサ等の生体計測機器と同様に、
呼吸や脈拍が検知できるセンサシートを試作しました(図)
。
今後、介護施設等での実証試験を行い、介護現場でも利用可能なセンサシートの開
発を目指します。
図 開発したセンサ信号と生体信号の比較
[期待される効果・技術移転の計画]
本研究により、在宅介護に係わる県民の安心・安全や精神的・肉体的負担の軽減に大
きく寄与するとともに、企業の介護・医療分野への参入を促し、ファルマバレープロジ
ェクトを推進します。
共同研究機関
協力機関
(株)メディカルプロジェクト
(株)富士セラミックス
訪問介護・看護事業所
お問い合わせ先
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工業技術研究所 富士工業技術支援センター
機械電子科
電話 0545-35-5190
平成24~25年度
(共同研究)
研究成果事例
高耐久コーティングの応用展開
[背景・目的]
県の新成長戦略研究として取り組んだ金型向け高耐久コーティング技術の開発で他分
野での潜在的ニーズを予期し、他分野への展開も見据えた応用を目指しました。特に、
食品製造機械、製紙、電子部品製造分野では生産性や品質向上に対して利用余地が大き
いと予想されます。本研究では、技術の普及展開を行う事を軸に、使用状況を把握して
さらに改良し、県内企業のニーズに応えられる技術的蓄積を行いました。
[研究成果]
・樹脂加工メーカーと共同研究の結果、微細射出成型へ利用及び従来不可能だった微細
加工が可能となりました。現在、製品化されています。
((株)東洋レヂン)
・金属加工メーカーのステンレスボトルに非粘着性コーティングをテスト処理しました。
現在、市販化のための実証試験を行っているところです。
・非粘着性コーティング技術応用の製品を開発、共同出願中、市販化しています。
・ダイカスト用コーティングは特に自動車産業で利用が増加しています。
・PVD コーティングの平滑性向上のため、PVD プロセス条件に対して品質工学的分析を
実施し、平滑性が向上する条件を求めました。
(ビヨンズ(株))
2mm
(微細射出成型のテスト金型
(微細射出成型のテスト成型品
非粘着性コーティングを利用)
非粘着性コーティングで付着変形防止)
[研究成果の普及・技術移転の計画]
平成 24 年度から約 40 件の展示発表を行い普及に努めました。問い合わせは 100 社以
上、テスト使用は 50 社以上です。開発した技術を採用する企業は 10 社以上で、技術利
用による製品化が2件検討中です。技術応用による特許の共同出願が1社。今後も利用
は拡大すると予想されます。
今後も、共同研究企業と併せて年間 10 件以上の展示発表を目標とします。そして、こ
れまでの採用及び不採用の原因を詳細に分析し普及に努めていきます。
共同研究機関
ビヨンズ(株)
(株)東洋レヂン
お問い合わせ先
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工業技術研究所 富士工業技術支援センター
機械電子科
電話 0545-35-5190
平成24~25年度
(A-STEP)
研究成果事例
フェムト秒レーザーピーンフォーミングによる
微細部品加工
[背景・目的]
浜松工業技術支援センターでは、フェムト秒レーザーピーンフォーミングによる薄板
曲げを世界で初めて開発しました。本法は、非熱、非接触、ダイレス、スプリングバッ
クレスなど、既存の曲げ加工法にはない特殊な加工特性を持っています。さらに、本法
は微細部品の曲げ加工にも適しています。そこで、医療、バイオ機器、電子機器用の微
細部品への応用を目的として、レーザー切断と板曲げの複合加工を行い、微細部品製造
の可能性を検討しました。
[これまでに得られた成果]
・ 板厚 50m の純チタンについて、空気中と水中でのピコ秒レーザーとフェムト秒レー
ザーの加工特性を比較し、空気中でフェムト秒レーザーを照射するのが最も加工効
率が優れていることが分かりました。
・ フェムト秒レーザーによる複合加工で図1から3に示すような微細部品を成形でき
ました。S字曲げのようなプレス加工には難しい形状も成形できます。
・ 片持ち固定で加工すると自由端の形状ばらつきが避けられませんが、切断形状を工
夫することで図1、2に見られる程度に自由端ばらつきを抑えることができました。
R0.63
1
1mm
1mm
図1 S字曲げ
図2 3連のS字曲げ
図3 3方向曲げ
[期待される効果・技術移転の計画]
・ 従来の加工法では製造不可能であった形状にも対応できますので、本法を用いてよ
り付加価値の高い微細部品の製造を目指します。
・ 微細部品の試作品の製造にも利用できるので、性能評価用や工程検討用の試作品の
製造に応用して、微細部品の開発コスト削減に貢献します。
・ 曲げ部品の矯正、修正にも応用できるのでそのような用途も検討します。
お問い合わせ先
- 30 / 41 -
工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
光科
電話 053-428-4157
平成24~26年度
(県新成長戦略研究)
研究成果事例
透明樹脂内部の屈折率分布推定
-波面計測センサの応用-
[背景・目的]
近年、LEDは電球の代替光源として普及が進んでいます。LEDは電球と異なり熱
線を発しない特徴があるため、ガラスと比べて熱に弱い樹脂光学部品の照明機器への利
用が進んでいます。この樹脂光学部品は、ガラスに比べて軽量で安価に製造できる特長
があります。しかし、成形加工の際に発生する内部ひずみが大きく屈折率分布に乱れが
生じやすくなります。不均質な屈折率分布は光学特性を悪化させるため、屈折率分布を
可視化することが望まれています。本研究では、部品を透過する光の波面と部品形状の
測定結果から、屈折率分布を可視化する装置を開発します。
[これまでに得られた成果]
図1は、開発中の光波面計測装置の光学系です。光波面とは、電磁波である光の位相
が揃った面であり、光の進行方向を表す光線と直交します。屈折率の乱れは光の位相を
変化させます。さらに、表面形状でも光の位相は乱されます。そこで、測定対象の表面
形状を測定し、その結果と光波面の測定結果から屈折率分布を推定しました。図2は樹
脂平板をレーザー加工して局部的に屈折率を変化させた試料を作製し、屈折率分布を推
定した結果です。図2に示すように、レーザーで加熱した部分は膨張したため屈折率が
低下し、
加熱した周辺部は膨張部分に押されたため屈折率が増加したことが分かります。
今後この装置をLED用樹脂レンズに適応し、
その成形条件の最適化の支援を行います。
測定対象
Y
Ⅹ
リレーレンズ
屈折率
Z
ファイバ出力型
半導体レーザー
波長 444nm
シャックハルトマン波面センサ
XY面分解能 0.15mm
図1 光波面計測装置の光学系
1mm
図2 推定した屈折率分布
[期待される効果・技術移転の計画]
開発中の光波面計測装置は、大面積の光波面を波面計測センサで検出できる面積で分
割計測して、後で全てをつなげてひとつの光波面とするため、空間分解能を低下させる
ことなく計測できます。そのため、本装置は大型樹脂光学部品の成形加工における不具
合解析に利用できます。
研究協力機関
静岡大学
お問い合わせ先
- 31 / 41 -
工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
光科
電話 053-428-4157
平成25~26年度
(共同研究)
研究成果事例
レーザーによる焼結ダイヤモンドの切削
[背景・目的]
スマートフォンやタブレットなどの情報端末のタッチパネル基板には主にガラスが
使用されています。最近、このような箇所にガラス層と樹脂層とを積層した新しいタイ
プの素材が開発されています。しかし、これらの素材を従来の工具で製品形状に成形す
るには加工工程数が多く、歩留まりもよくないため、専用工具の開発を求められていま
す。専用の工具を作製するには、微小面積に多数の刃を成形する必要があります。従来
の方法では、微細刃形を作り込むことができないため、微細加工が可能なピコ秒レーザ
ーに着目しました。
本研究の目的は、焼結ダイヤモンドを微細な刃にレーザーで成形する最適な条件を割
り出すことです。そして、ガラスと樹脂の積層材を切削する専用工具の開発に繋げてい
きます。
[これまでに得られた成果]
・切削用チップに成形するには、すくい面と逃げ面が必要です(図1)
。今回、ピコ秒レ
ーザーで、すくい面の条件出しを行い、目標値である表面粗さ(Ra)0.4 以下の照射
条件を見出しました(図2)
。
・1枚刃の最初の試作を行う段階まで進んでいます。今後、試作を繰返し、逃げ面の条
件の最適化を行った後、複数枚刃の成形を行っていきます。
0.6
表面粗さRa(μm)
レーザー
すくい面
100mm/s
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
逃げ面
0
図1 焼結ダイヤモンドのチップ
10
20
走査ピッチ
(
)
30
40
図2 走査ピッチと表面粗さ
[期待される効果・技術移転の計画]
ガラス層と樹脂層の積層材を切削する専用の工具を作製する技術は、スマートフォン
などのタッチパネル業界はもちろん、太陽光パネルや自動車業界で利用可能です。また、
建築材として使用される金属と樹脂の積層材などの切削工具への応用が期待できます。
共同研究機関
(株)内山刃物
お問い合わせ先
- 32 / 41 -
工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
光科
電話 053-428-4157
平成25~26年度
(共同研究)
研究成果事例
レーザー式三次元測定機の測定精度評価
-被測定物の材質が測定精度に及ぼす影響-
[背景・目的]
近年産業界では3Dプリンタの普及により三次元データの有効利用が進んでいます。
非接触で物の形状を測定するレーザー式三次元測定機は短時間で大量のデータ取得が可
能であり、三次元データの作成も容易なことから、利用が増えています。一方で、レー
ザー式三次元測定機は光学的手法を用いることから、被測定物の材質によって反射特性
が異なるため測定精度に影響するといわれています。測定の信頼性を向上させるために
は、材質により測定精度が異なる原因を調査する必要があります。本研究では、JIS 規
格に沿った実験系を組んで材質ごとのレーザー光計測を試みました。
[これまでに得られた成果]
半導体レーザー(波長 690nm)、CCD カメラ、回転テーブルを用いて、測定機の構造に合
わせた実験系を組みました(図1)
。被測定物は金属(アルミ、銅、チタン)、アルミの表
面処理品(白つやあり塗装、白つやなし塗装、黒つやあり塗装、梨地処理)、木材としま
した。測定の結果、材質と姿勢角度ごとにレーザー光のスポット形状が異なることが確
認できました(図2)
。全体的な傾向として、金属のスポット形状は歪んだものとなり、
塗装面のスポット形状は円に近くなりました。一方で姿勢角度を大きく振っていくにつ
れて、どの材質も楕円形のスポット形状になりました。実際の測定機は、被測定物から
返ってきた反射光の端と端から中心を算出し計測点としています。今回の実験における
材質と姿勢ごとのレーザー光のスポット形状の違いにより測定精度が異なることが推測
できました。
レーザー光の (例1)アルミ
スポット形状
(例2)白つやあり塗装
輝
度
の
大
き
さ
図1 レーザー光測定実験系、照射部を
図2 スポット形状、測定画像の光強度
画像測定
から算出
[期待される効果・技術移転の計画]
今回の測定結果を参考として計測点算出法の改善が可能であると考えられます。他の
材質(セラミックス、樹脂等)や表面粗さの違いによるレーザー光のスポット形状が得ら
れれば、様々な材質に対応した計測点算出法を導き出せることができ、より測定精度の
高いレーザー式三次元測定機の開発が期待できます。
共同研究機関
パルステック工業(株)
お問い合わせ先
- 33 / 41 -
工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
光科
電話 053-428-4157
平成25~27年度
(産学官連携研究開発助成事業)
研究成果事例
電波識別装置の評価環境構築と識別実験
[背景・目的]
パソコンやスマートフォン等の爆発的な普及に伴い、無線データ通信における混信や
妨害等のトラブルが増加しています。これに対処するため、共同研究企業と共に、小型
軽量で誰でも簡単に使えることを目指した電波識別装置の試作機(写真)を開発しまし
た。本装置を実用化するには、現行の試作機の識別性能を定量的に評価すると共に、さ
らなる性能改善を図る必要があり、そのための評価環境構築と識別実験を行いました。
[これまでに得られた成果]
識別性能を評価するための基準として、新たに「正解率」
「正答率」
「識別率」という
3つの特性値を制定しました。また、各種無線規格で定義された様々な信号に対する評
価を再現性よく実施できるよう、信号発生器を使った評価環境の構築を行いました。そ
の上で、電波識別装置試作機の識別性能を評価し、それによって明らかになった識別処
理上の課題に対して、識別アルゴリズムの修正を行いました。
表は、修正の前後について、上記の3つの特性値を用いて識別性能を評価した結果で
す。識別性能の改善具合を定量的に把握できるとともに、識別処理上の癖を見つけ出す
ことができるようになりました。
表 識別性能評価結果
試験信号
WLAN
旧版アルゴリズム
正解率
正答率
識別率
新版アルゴリズム
正解率
正答率
pilot
75.0%
99.0%
90.7%
97.0%
802.11b
24.1%
56.5%
88.3%
87.0%
802.11g
98.9%
54.6%
100.0%
97.4%
100.0%
26.0%
100.0%
100.0%
Bluetooth
59.5%
識別率
95.9%
写真 電波識別装置
[期待される効果・技術移転の計画]
今回の成果により、今後の性能改善に向けた基盤を構築することができました。これ
を元に、さらに識別性能の改善を図ると共に、ハードウェアの小型軽量化を進め、電波
識別装置の実用化を目指します。
また、この電波識別技術は、電波識別装置以外にも様々な製品やアプリケーションに
応用できる可能性があることから、今後の展開が期待されます。
共同研究機関
アールエフネットワーク(株)
静岡大学大学院工学研究科
お問い合わせ先
※(公財)静岡県産業振興財団 産学官連携研究開発助成事業
- 34 / 41 -
工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
電子科
電話 053-428-4158
平成25年度
(ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援事業)
研究成果事例
絶縁被膜処理ステンレス製品のノイズ遮蔽性能評価
[背景・目的]
中野ハガネ(株)は、金属でありながら表面は絶縁体という特殊ステンレス(KCF)を製
品化しています。KCF は金属と絶縁体の両方の性質を持つため、使い方によっては今ま
でにない特長を持った製品が得られる可能性があります。
ここでは、電子部品への応用の可能性を探るため、KCF のノイズ遮蔽性能に着目し評
価を行いました。
[研究成果]
KCF を用いて 16 ピン DIP 型 IC ソケットを試作し、図1の方法でピン間に誘起するノ
イズ量(クロストーク・ノイズ)を測定しました。評価対象として、母材の金属を GND
端子に接続したタイプA、他の端子から分離したタイプB、および比較用として樹脂製
従来ソケットの3種類を用いました。
・ タイプAは従来タイプに比べてクロストーク・ノイズ量が小さくなることを確認
し、KCF が良好なノイズ遮蔽性能を持つことがわかりました。
(図2参照)
・ タイプBのように母材を適切に接地しないと、
逆にノイズが増えることが判明し、
実用上の注意点が明らかになりました。
クロストーク (dB)
0
タイプB
-20
従来タイプ
-40
タイプA
-60
-80
0
40
80
120
160
200
周波数 (MHz)
タイプA:
タイプ:B
従来タイプ:
図2 評価結果
図1 評価方法と評価対象
[研究成果の普及・技術移転の計画]
今回、KCF 製 IC ソケットによる良好なクロストーク・ノイズ遮蔽性能が確認できまし
た。今後、市場ニーズを取り入れながら、製品化を進めていきます。
共同研究機関
中野ハガネ(株)
お問い合わせ先
工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
電子科
電話 053-428-4158
※中小企業庁 ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金
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平成25年度
(共同研究)
研究成果事例
被測定物と伸縮同調可能マイクロメータの開発
[背景・目的]
金属製品、特に熱膨張率が大きいアルミニウム合金の加工寸法を測定すると、雰囲気
温度の影響を受けるため、温度調整された部屋と加工現場においては、熱伸縮により
1/100 ミリメートル程度の寸法差が生じます。そのため加工現場では、熱膨張による寸
法誤差を調整しながら、寸法測定しています。また、正確な寸法を測定するために温度
調整された部屋に移動させて、寸法測定することは、工程の遅延、生産性を悪くします。
熱膨張の影響を受けないで、その場で寸法測定できる測定器や検査治具があると、現場
サイドにとって、労力の低減、生産性の向上につながると考えられます。
本研究では、被測定物としてアルミニウム合金とした場合、どの温度でも、同じ寸法
測定結果になるような測定・検査治具の開発を目的として、アルミニウム鋳造合金をフ
レームに適用したマイクロメータ型測定器具を製作・性能を評価しました。
[研究成果]
・ 被測定物と同等の熱特性を有し、機械的性質、耐食性及び加工性を考慮したアルミ
ニウム鋳造合金のフレームを用いたマイクロメータ型の試作品を作成しました(図
1)
。
・ 市販品(鉄製)に比べて試作品(アルミニウム合金製)は、20℃を基準として、5℃
から 40℃における変差が小さい(図2)
。つまり、測定温度の変化により熱膨張変形
する被測定物の長さが、いつでもほぼ同じ測定値となって測定できました。
・ 被測定物と同じ材質とすることで、雰囲気温度によらず、いつも同じ測定値になる
ような測定・検査治具ができました。
図2 寸法測定結果
図1 試作品外観
(100-125mm 測定用 アルミニウム合
(20℃の基準試験棒(長さ 120mm)の測定値を 0 とし
金製マイクロメータ型測定器具)
て、雰囲気温度を変えて測定した時の変差を示す)
[研究成果の普及・技術移転の計画]
現場で雰囲気温度に対して補正することなく簡単に測定できる測定器具の有効性が
確認され、熟練・経験の少ない作業者にとって便利なものになると思われます。
共同研究機関
(株)浅沼技研
お問い合わせ先
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工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
機械科
電話 053-428-4155
平成23~25年度
(県単独研究)
研究成果事例
紫外線を用いた鉄材部品表面の親水・撥水領域の
パターニングに関する研究
[背景・目的]
熱酸化して鉄基板上に疎水性有機薄膜を形成することで、超撥水性表面が得られるこ
とを見出した。さらに、紫外線等による部分的な除去が可能であるため、目的に応じて
親水・疎水性領域をパターニングする技術へ展開できると考えた(図1)。研究シーズの
実用化を目指し、実製品の不具合対策として応用するための研究開発を行った。
[研究成果]
・ ピコ秒レーザ加工により鉄基板に微細な凹凸構造を有する酸化膜を形成することが
可能であり、疎水性有機薄膜を付与することで超撥水性化できた。さらに、加工条
件を制御することで、親水・撥水性領域を直接パターニングできることを確認した。
・ ピコ秒レーザ加工は対象となる材質の拡張性が広く、鉄以外の金属(ステンレス、
アルミ、真鍮等)部品の表面処理への応用も可能であることを確認した。
・ 表面処理条件を最適化することで、ニッケル鍍金真鍮基板の表面に耐久性を有する
超撥水性(水中浸漬 100hr 以上)を付与できることを確認した。その際には、蓮の葉
の表面構造に似た微細な凹凸構造が形成されることを確認した(図2)。
・ 実製品において、ニッケル鍍金真鍮部品の一部を超撥水化することで不具合を防止
できることを確認した。処理面積が小さくても充分な効果があり、パターニングす
ることで生産性を考慮した新製品開発ができる可能性があることを確認した。
・ ピコ秒レーザだけでなく、ファイバーレーザの利用も可能であることを確認した。
親水性領域(水滴)
超撥水性領域
図1 熱酸化を利用し撥水性領域を
図2 ピコ秒レーザを利用し撥水領域を形成したニッケ
パターニングした鉄基板(水滴下時)
ル鍍金真鍮基板表面の微細な凹凸構造(電子顕微鏡写真)
[研究成果の普及・技術移転の計画]
企業ニーズに対応し、実製品(単価;1.5~20 万円/個、生産量;200 個程度/月)の不
具合対策への応用を検討した。基礎研究から実用研究を実践することにより、一連の成
果を得ることができた。実製品に応用して不具合対策の効果を確認した。製品レベルの
品質・性能を確保すべく、実用化のための開発を続けて商品化を目指す。企業主体に進
めるが、当所もサポートする予定。
お問い合わせ先
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工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
機械科
電話 053-428-4155
平成23~25年度
(県新成長戦略研究)
研究成果事例
次世代自動車の素材加工技術
及びその評価技術に関する研究開発
[背景・目的]
電気自動車をはじめとする次世代自動車の進展により、従来部品の大幅な削減や変更
が想定され、部品製造企業への対応が喫緊の行政課題となっています。
そこで、次世代自動車の現状を認識するため、地域企業とともに電気自動車を分解し
て、部品等の機能構造を把握するとともに、軽量難加工材の加工技術及び評価技術を研
究開発し、県内企業の次世代自動車関連の製品開発を支援することとしました。
[研究成果]
1 分解部品の展示および分解部品を活用した研修会
・ 分解した部品を展示する「ふじのくに次世代自動車ライブラリー(図1)
」を平成 24
年3月 15 日に浜松工業技術支援センターに開設するとともに、電気自動車の機能・
構造を理解する研修会を6回開催し、延べ 200 名の参加がありました。
・ 部品の素材、重量等について、情報提供することで、企業の製品開発に役立ってお
り、素材加工に関する共同実験や共同研究も行い、中小企業を支援しました。
2 加工技術および評価技術の確立
・ 高速度カメラと切削動力計をリンクさせ、切りくずのでき方や刃物にかかる力を計
測し、複雑な切削加工現象を可視化、数値化する技術を確立することで、加工効率
を向上させることができました(図2)
。
・ 板金のプレス加工など、塑性加工シミュレーションに必要な材料特性を評価する技
術を確立し、シミュレーションの精度を向上させることができました。プレス用金
型の工期やコスト削減につながります。
図1 ふじのくに次世代自動車ライブラリー
図2 切削加工現象の可視化と数値化
(部品展示)
(効率向上)
[研究成果の普及・技術移転の計画]
分解部品を展示するとともに、構成部品の素材、重量等について情報提供することで
企業の製品開発に役立ちます。また、試作品開発費助成や確立した評価技術を活用して
共同研究等を行うことにより、企業から提案のあった部品改良の取り組みを支援します。
共同研究機関
県内企業、静岡大学
浜松技術専門校、新産業集積課
商工振興課、エネルギー政策課
お問い合わせ先
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工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
材料科
電話 053-428-4156
平成25~26年度
(県単独研究)
研究成果事例
チタン合金の陽極酸化処理における
色調の安定化に関する研究
[背景・目的]
チタン合金は表面を自然酸化膜に守られているため一般的には無塗装で使用されま
すが、意匠性や部品の選別のために着色が必要な場合、陽極酸化処理により着色させて
います。しかし、チタン合金の自然酸化膜は非常に強いため、陽極酸化処理の障害とな
り、発色が安定しないことがあります。
本研究では、チタン合金の陽極酸化処理について、より安定的な発色が得られる処理
方法の技術開発に取り組みます。
[研究成果]
・ 陽極酸化処理において、発色に対する影響の大きさを相対的に評価することができ
ました。
・ 酸処理が発色に及ぼす影響が非常に大きいことが分かりました(図1)
。
・ 色調から経験的に推測していた陽極酸化皮膜の厚さを、分析機器を用いて客観的に
評価できることを確認しました(図2)
。
1000
長め
高温
未処理
10V
30V
50V
70V
90V
800
高濃度
基準
基準
多め
低濃度
中濃度
低温
なし
X線強度(cps)
発色への影響
なし
600
400
200
なし
0
2.2
脱脂 酸洗 陽極酸化 熱処理
図1 各工程が皮膜の発色に及ぼす影響
2.3
2.4
2.5
2.6
波長(nm)
2.7
2.8
図2 処理条件の違いによる皮膜中
酸素量の比較
[研究成果の普及・技術移転の計画]
陽極酸化処理はチタン合金の着色技術として広く利用されていますが、難易度の高い
処理は加工できる業者が限られています。本研究ではチタン合金を上手く陽極酸化処理
できるよう様々な情報を提供し、
県内企業の競争力の向上につなげたいと考えています。
また、チタン合金の活用の幅が広がることで、新たな需要が掘り起こされることも期
待できます。
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工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
材料科
電話 053-428-4156
平成25~26年度
(県単独研究)
研究成果事例
材料解析のための前処理プロセスのデータベース化
-迅速かつ正確な試験・分析を目指して-
[背景・目的]
近年、材料に関する試験・分析では、鉄鋼材料に限らず多くの構造材料が、その対象
となっています。このような中、迅速かつ正確な試験・分析を行うためには、それぞれ
の材料に適した前処理や解析を行うための高い技術力と幅広い知識が必要となります。
そこで、浜松工業技術支援センターの試験・分析に関するノウハウをデータベース化
し、その情報を共有することで多くの技術者の技術力・解析力の向上を目指しています。
本研究では表計算ソフトを用いて、金属組織試験のための前処理方法と化学成分分析
を行う上での注意点などが詳細に記載されたノウハウ集をデータベース化しました。
[これまでに得られた成果(中間)
]
データベースは、多くの職員が使用できる、検索機能がある、図や表のレイアウトの
自由度が高い、他のソフトへのリンクが可能などの理由から表計算ソフトを用いて作成
しました。
平成 25 年度は金属組織試験に関して試験機器の使用方法、試験・分析のノウハウ、
過去の事例におけるアプローチ方法等の技術データを収集しました。入力したデータに
は、それぞれポイントとなる工程の処理時間や処理方法を示した写真や図などを記載し
ました。これまでに鉄鋼材料・非鉄金属材料・複合材料等の金属組織試験および断面観
察のための前処理工程について 60 データと機器の使用手順書のデータ等を収集しまし
た。
過去の事例
DB
試験・分析のノウハウ
データを共有し、
センターの技術
力・解析力が向上
機器使用手順書
センター所有のノウハウ
試験項目選択画面
情報の共有
図 表計算ソフトを用いたデータベースの作成
[期待される効果・技術移転の計画]
各種試験・分析の前処理方法やデータの解釈等に必要な技術を蓄積・整理することで
不具合原因の調査・対策に掛かる時間の短縮、原因解明率の向上、技術伝承の効率化が
期待できます。
お問い合わせ先
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工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
材料科
電話 053-428-4156
平成25~26年度
(県単独研究)
研究成果事例
製織技術を生かした振動特性に優れる
ハイブリッド繊維複合素材の開発
[背景・目的]
炭素繊維(CF)やアラミド繊維(AF)は、強度や弾性率などの優れた機械的特性によ
り、プラスチックの強化材に用いられ、各種軽量化素材として最近特に注目されていま
す。本研究開発では、県西部地域が得意とする製織技術を活用することで原糸の CF や
AF の特性と織物独特の異方性によって必要な剛性と振動特性を付与した織物を開発し、
繊維強化複合材料(FRP)として地域の音響機器関連部材等への展開を図ります。
[これまでに得られた成果]
CF や AF はヤング率が非常に高く伸びにくい性質を持っているので、一般的な織機で
織物を作製することが難しい材料です。今回、古くから使われている既存の小幅織機を
改良することで CF や AF を自由な組み合わせで織物とすることができるようになりまし
た(図1)
。作製した織物を積層し FRP としたものについて、打撃加振法により振動特
性を測定したところ、AF と CF の配置や比率を変えることで、固有振動数や振動減衰特
性を制御した複合素材を作製できることがわかりました。
共振周波数(Hz)
60
50
40
4.0
5.0
1/2
(弾性率/密度)
図1 改良した織機の概観
6.0
3
(×10 m/s)
図2 共振周波数と弾性率の関係
[期待される効果・技術移転の計画]
今後、具体的な音響製品への可能性を検討していきます。
また、得られた振動特性は、音響分野に限らず振動制御を必要とする広い分野に応用
することが可能と思われます。
お問い合わせ先
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工業技術研究所 浜松工業技術支援センター
繊維高分子材料科
電話 053-428-4154
静岡県工業技術研究所
研究成果事例集
平成26年6月19日 発行(2014年)
編集・発行
静岡県工業技術研究所
企画調整部
〒421-1298
静岡県静岡市葵区牧ケ谷2078番地
電 話(054)278-3028
FAX(054)278-3066