器官病態・治療学 膠原病内科学 Rheumatology 研究内容 治療法も充分に確立されていないリウマチ性疾患や膠原病の病因・病態の解明、診断・治療 法の開発を研究している。臨床現場には病態解明に役立つような貴重な症例が数多く存在する。 それらの症例を臨床的に充分に検討することが研究のアイデアを得るためには重要である。得 られたアイデアをもとに研究計画を立案する。我々のグループは 2 つのアプローチにより研究 を行なっている。症例を対象とする研究と病態モデル動物を用いる研究である。 具体的な研究内容は以下の通りである。 1 :Bombina variegata peptide8/prokineticin2の研究 関節リウマチをはじめとした慢性炎症性疾患の病態には様々な炎症性サイトカインやケモカ インが関与している。近年、Bombina variegata peptide8/prokineticin2(Bv8/Prok2)と呼ば れる新しいケモカインが発見された。我々は、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルマウス の関節炎部でBv8/Prok2とその受容体であるPKR1、PKR2の発現が上昇していることを見出した。 これは Prokineticin が関節炎の病態形成に強く関与している可能性があることを示唆している。 Bv8/Prok2は、新たな関節制御のターゲットになりうる可能性がある。 2 :Myeloid-derived suppressor cell の研究 Myeloid-derived suppressor cells(MDSCs)は骨髄由来の免疫調節細胞であり、T リンパ 球の増殖や分化などに関与する。マウスにおいて MDSCs は heterogeneous な集団であり、そ の中でも好中球様の CD11b(+)Ly6(+)細胞と単球様の CD11b(+)Ly6C(+)細胞 が注目されている。しかし、関節炎モデルマウスであるコラーゲン誘導性関節炎(collagen induced arthritis,CIA)マウスにおける MDSCs の役割は明確ではない。そこで我々は CIA マウスにおける MDSCs の役割を検討し、新たな関節炎の治療方法の可能性を追及している。 3 :慢性疼痛の研究 関節リウマチにおいては滑膜の炎症に伴い関節痛が生じる。滑膜炎による痛みは炎症による 疼痛、つまりは侵害受容性疼痛が主な病態であると考えられてきた。しかし、炎症がコントロー ルされていても疼痛が持続し、治療が難渋する症例も経験する。近年、神経の損傷により生じ る神経障害性疼痛や器質的異常がなくても中枢で疼痛閾値が低下している中枢機能障害性疼痛 が注目されている。最近、関節リウマチでは約10~30% に神経障害性疼痛を認められ ADL 低 下の原因になるという報告がある。我々は、このような観点から関節リウマチ患者で生じる慢 性疼痛の機序に寄与する因子に関する研究を行っている。 研究課題 ① 関節リウマチに対する新しい治療法の開発 ② 関節リウマチにおける痛みの研究 ③ 関節リウマチにおける免疫異常の研究 ④ 関節炎モデルマウスにおける Bv8/Prok2の研究 ⑤ 関節炎モデルマウスにおける骨髄由来細胞の役割 教育目標 ① サイエンスに裏付けされた診療ができる医師になる。 ② 最新の知識を学び、研究手段を習得し自立した研究者となる。 到達目標 ① 細胞を解析することができる。(細胞培養、フローサイトメトリー、各種アッセイ法など) ② 生化学的、分子生物学的解析ができる。(Real time PCR 法、ELISA 法、各種電気泳動など) ③ 病理組織学的解析(免疫組織染色法など)ができる。 ④ マウスを用いた実験を行うことができる。 ⑤ 臨床データ、研究データを統計学的方法などで解析できる。 ⑥ 得られた結果を論文にまとめることができる。 教 授 黒坂大太郎 講 師 吉田 健
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