プロジェクト管理支援システム構築の実際

プロジェクト管理支援システム構築の実際
(株)コムニック創研
佐藤
義男
7月に、経済産業省が中心となり「プロジェクトマネジメント研究会」を発足し、政府
の情報システム調達における契約後の進捗管理にEVMS(Earned Value Management
System)などの具体的手法を検討する、旨が報道された。これを機に、PM ツールによる
戦略システム構築のアプローチに関心が高まるものと思われる。
これまで筆者は、効果的・効率的なプロジェクトマネジメントを支援する PM コンサル
ティングの一環として PM セミナー、標準整備支援、さらにはプロジェクト管理支援シス
テム構築支援を提供してきた。この間、よく「どの PM ツールを選べばよいか?」という
質問を受けた。
さらに昨年は、A社「保険業務支援システム開発プロジェクト」の PMO(プロジェクト
マネジメントオフイス)チームに参加し、プロジェクト管理支援システム導入支援と管理
支援を行った。また、「バイリンガル・プロジェクト管理」という貴重な経験をした。
今回、これらの経験を踏まえ、プロジェクト管理支援システム構築に際しての PM ツー
ル評価から活用推進までの実際を紹介する。
1.PMO によるプロジェクト管理支援
A社プロジェクトは大規模・複雑であり、複数の構成・関係メンバーによる推進体制(顧
客、プロジェクト・チーム、パッケージ・ベンダー、コンサルタント、協力会社など)
であるため、特にプロジェクトマネジメントが重要であった。プロジェクト成功のため
には、推進パートナーとしてのコンサルタント会社による計画策定からパッケージ・カ
スタマイズ、自社開発、ユーザ教育までのプロジェクト管理が鍵となる。このために、
PMO を組織化し、開発と管理の統合環境によるプロジェクト推進を実現すべく次の支援
を行った。
(1)PMO 推進
・プロジェクト管理支援システム導入支援。
・マスタ・スケジュール策定。
・プロジェクト・チームへの PM の専門知識、アドバイスの提供。
・運営事務管理(プロジェクト報告、仕様変更管理、問題管理、進捗監視)の支援。
(2)標準整備
・システム構築・管理手法に基づく「プロジェクト管理運用ガイド」の作成。
・標準 WBS テンプレート制定。
1
(3)標準活用推進
・「プロジェクト管理運用ガイド」の活用推進(チーム・リーダへのアドバイス)。
・プロジェクト管理教育の実施。
・PM ツール活用セミナーの実施(実習)。
2.プロジェクト管理支援システム構築のための考慮点
今回の PM ツールを適用したプロジェクト管理支援システム構築ではスケジュール管理
と進捗報告に重点をおき、以下の項目を考慮した。
2.1最適なスケジュール計画・管理
(1)WBS テンプレートを基にスケジュール作成・編集
(2)予定/実績と遅れの把握
2.2標準レポート使用によるプロジェクトの検証
下記レポートにより進捗状況の把握を行う。
(1)進捗報告書(Microsoft WORD)
(2)各グループ/チーム別作業工程表(PM ツール)
2.3入力作業の負荷軽減
定義データと実績進捗データの入力には、下記対応により負荷軽減が可能であること。
(1)標準テンプレートの適用
(2)進捗率は 50-50%法
(3)実績入力画面による入力の単純化(実績開始日、進捗率、実績完了日)
2.4プロジェクト管理情報の一元管理
複数グループ/チーム、パッケージ・ベンダー(社外)との情報共有のためにDB連携
による統合管理を実現する。このために、以下の候補の中から方式を検討した。
(1)Notes 統合方式
Microsoft Project とグループウエア Notes を活用し、 Project Gateway で同期処理
を行う。
(2)エンタープライズ型 PM ソフトによる統合方式
Microsoft Project(または Artemis Schedule Publisher)と Artemis PM リポジト
リによる統合管理。
3.PM ツール選定のポイント
2
市販 PM ツールには、開発機能付き統合管理型(100 万円以上)、高級型(数十万円)、簡
今回は、以下の PM ツール
易型(数万円から)などがあり、使い分けが必要となる。
選定のポイントに基づき、評価を行った。
(1)使う目的が明確である
(2)要求する PM 機能の提供( DB 対応、ユーザインタフェース、階層的ロールアップ、
資源レベルの選定、レポート作成等)
(3)十分な柔軟性(カスタマイズ、成長パス)
(4)ベンダーのサポート力(参考顧客、安定性、試行導入、教育・コンサル、カスタ
マイズなど)
(5)製品導入実績
Notes 統合方式」が選ばれた。選定理由は次のとおりである。
(1)PMO での管理プロセス遂行のうち、問題管理や変更管理は Notes を使用したフ
ォーム(問題・連絡票、変更管理票)を採用している。
(3)SureTrak を利用していたが、Microsoft Project がもっとも普及してお
り、ベンダーも馴染みがある。
実際の構築では、Project Gateway の同期処理に苦労した。Microsoft Project ファイルか
ら Microsoft Project ファイルへの同期(実績情報の反映)は、Project Gateway 提供マ
クロの信頼性が低いため、実績情報を手作業で Copy & Past する方式となり、同期作業
に時間を要した。
3
4.運用例
(1)進捗管理
・チーム・メンバーは担当作業の進捗実績を入力する(金曜日中、Notes DB 使用)。
・PMO は、Notes DB の進捗実績をプロジェクトファイル(MPP)に反映する(月
曜日 12 時以降)。
・チーム・リーダは作業工程表を作成し、進捗会議を開催する。
・進捗報告書 Group/Team Status Report を作成する(月曜日 12 時まで、Notes DB
使用)。
・グループ・リーダはチーム毎の進捗状況を把握し、Group/Team Status Report を
作成する(月曜日 17 時まで、Notes DB 使用)。
・PMO は実績データを確認して、グループ別の管理レポートを作成する(PM ツー
ル、Notes を使用)。
−Project Status Report(Microsoft WORD)
−イナズマ・バーチャート(Microsoft Project)
−問題ログ(Microsoft EXCEL)
・プロジェクト・マネージャは進捗会議( Project Manager Meeting)にて進捗評価
を行う。なお、進捗会議はバイリンガルで行われ、進行は PMO が担当する。
(2)レビュー報告
プロジェクト・マネージャはプロジェクト・スポンサーに報告する(隔週)。
図 1 に PM ツール使用による進捗管理運用方式を、図2に進捗管理フローを示す。
進捗実績NotesデータベースとMS Projectファイルとの同期
→ 実績データの反映(
Project Gateway)
毎週月曜PM
「
予実グラフ」とグループ別「イナズマ バーチャート」
の作成
*1:
T/L、G/L
が行う作業
進捗状況の把握、レポート作成(
MS Project)
*1
スケジュール見直し、WBS変更(
MS Project)
*1
PMOが行う
作業
毎週木曜期限
*2:
T/M、T/L
が行う作業
MS Projectファイルと進捗実績Notesデータベースとの同期
毎週金曜AM
→ WBS変更データの反映(
Project Gateway)
進捗実績Notesデータベースに実績データの入力(
Notes)
*2
いつでも入力可能だが、
前週実績は月曜12:00まで
図 1.PM ツール使用による進捗管理運用方式
4
PMO
PM
Project Manager
Meeting
レポート作成
・
Project Status Report
・
作業工程表(サマリ)
・
問題ログ
・
変更要求ログ
・進捗状況把握(チーム毎)
・異常タスクの抽出
・計画との差異分析
進捗評価
計画修正
是正措置
YES
問題あり?
NO
Project Sponsor
に報告
図 2.進捗管理フロー
(3)運用イメージ
プロジェクト管理支援システムによる運用イメージを以下に示す。
Notesサーバ
ファイルサーバ
インポート/
エキスポート処理
(Project Gateway)
Notes
成果物DB
PS
管理レポート
レビュー・承認
Notes
進捗管理
DB
分析・評価
チームスケジュール
・進捗管理
・問題管理
・変更管理
・連絡票
プロジェクト・
メトリクス
チームスケジュール
スケジュール作成/編集
進捗情報、
管理情報の表示
Notes
DB
PM
(MS-Project、
Notes Client )
全体スケジュール
管理レポート
進捗情報、
管理情報の表示
進捗実績入力
標準化推進/初期計画
/分析・評価/レポート
作成の支援
グループ/チームリーダ
(MS-Project、Notes )
PMO
(MS-Project、
Notes Client )
プロジェクトメンバー
(Notes Client )
図3.運用イメージ
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5.活用推進のポイント
プロジェクト管理支援システム適用により、管理意識の向上、管理業務の生産性向上、
標準化促進、などの効果が得られる。
そのために、PMO として特に以下の支援を行い、活用推進を図った。
(1)管理ガイドラインの周知徹底
標準管理プロセスの実用化を推進するため、説明会を開催した。
(2)統一した管理レポートの活用
イナズマ・バーチャートにより進捗状況の把握を行う(図4参照)。
・2つのイナズマ線による進捗度合(各作業の遅れと進み具合)。
・サマリ・アクティビティの終了日差異日数による計画の遅れ把握。
(3)PM ツール活用セミナー(実習)実施
チーム・リーダへ PM ツール機能概要と操作方法の説明を実施した。添付1に、今
回作成した「PM ツール使用マニュアル」の目次を示す。
(4)専任者による技術支援
チーム・リーダへスケジュール更新、実績入力及び管理レポート作成の技術支援を
実施した。
状況報告日(
先週及び今週)
イナズマ線(
実線は今週)
終了日の差異日数
予定に対する遅れ
進捗点
各タスクの期間を100%とした場合の
進捗率から算出した達成ポイント
図4.イナズマ・バーチャート
9月末に、A社プロジェクトのフェーズ1がカットオーバーを迎える。プロジェクトを
成功に導く鍵は、メソドロジー、ツール(適用標準とプロジェクト管理支援システム)、そ
してトレーニングの一体化であると信じている。
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添付1.PM ツール使用マニュアル目次
第1章
はじめに...................................................................................................................................
第2章
Microsoft Project の基礎 .........................................................................................................
2.1
特徴 ............................................................................................................................................
2.2 機能................................................................................................................................................
2.3 今回使用する機能 ...........................................................................................................................
2.4
第3章
Microsoft Project 基本操作 ...........................................................................................................
プロジェクト計画の作成 .............................................................................................................
3.1 既存プロジェクトファイルを開く..........................................................................................................
3.2
プロジェクト情報 ...........................................................................................................................
3.3
カレンダーについて.......................................................................................................................
3.4
作業項目(タスク)の定義...............................................................................................................
3.5
階層(アウトライン).......................................................................................................................
3.6
作業工程データの作成 .................................................................................................................
3.7 リソースの定義 ................................................................................................................................
3.8 リソースの割り当て............................................................................................................................
3.9
第4章
基準計画の保存 ...........................................................................................................................
プロジェクトの進捗管理 .............................................................................................................
4.1 進捗管理画面..................................................................................................................................
4.2 進捗ガントチャートバーの見方 ..........................................................................................................
4.3 イナズマ・バーチャート表示...............................................................................................................
4.4 作業工程表の印刷...........................................................................................................................
第5章
進捗実績情報の入力 ................................................................................................................
5.1 初期表示画面..................................................................................................................................
5.2 進捗実績入力対象作業の選択 ..........................................................................................................
5.3 進捗実績入力画面 ...........................................................................................................................
5.4 進捗実績入力方法 ...........................................................................................................................
第6章
FAQ 集
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