両筑平野用水二期事業の事前評価 《水道用水関係》 平成16年12月 独立行政法人 水資源機構 − 目 次 1 筑後川水系における水資源開発 − ・・・・・・・・・・・・・ 1 ○ 筑後川水系図 ・・・・・・・・・・・・・ 2 2 両筑平野用水事業 ・・・・・・・・・・・・・ 3 2.1 両筑平野用水事業の概要 ・・・・・・・・・・・・・ 3 ○ 両筑平野用水事業に係る取水模式図 ・・・・・・・・・・・・・ 4 2.2 地区及び施設の現状 ・・・・・・・・・・・・・ 6 ・・・・・・・・・・・・・ 7 3.1 事業の必要性 ・・・・・・・・・・・・・ 7 3.2 事業計画の概要 ・・・・・・・・・・・・・ 7 4 事業採択前における社会経済状況等 ・・・・・・・・・・・・・ 8 4.1 水道事業者等の水需要動向等 ・・・・・・・・・・・・・ 8 4.2 水源水質の状況 ・・・・・・・・・・・・・ 10 4.3 水道事業者等の要望 ・・・・・・・・・・・・・ 11 4.4 関連事業との整合 ・・・・・・・・・・・・・ 11 4.5 技術開発の動向・新技術の活用等 ・・・・・・・・・・・・・ 11 4.6 環境との調和への配慮 ・・・・・・・・・・・・・ 13 3 両筑平野用水二期事業の概要 5 コスト縮減方策・代替案等の可能性の検討 ・・・・・・・・・・・・・ 14 5.1 寺内導水路の改築工法 ・・・・・・・・・・・・・ 14 5.2 女男石頭首工の改築工法 ・・・・・・・・・・・・・ 14 6 事業投資効果分析 ・・・・・・・・・・・・・ 15 6.1 総費用 ・・・・・・・・・・・・・ 15 6.2 総便益 ・・・・・・・・・・・・・ 15 6.3 費用便益比 ・・・・・・・・・・・・・ 15 7 事業計画の適切性 ・・・・・・・・・・・・・ 16 1 筑後川水系における水資源開発 筑後川は、福岡、佐賀、大分及び熊本の4県にまたがる流域面積2,860㎞ 2 、本川流 路延長143kmの九州最大の河川であり 、フルプラン地域人口は約550万人となっている 。 また 、 筑 後 川流 域 の 年 間 平均 降 水 量 は約 2,200mmで 、そ の約40% が梅雨 期に集 中 している。 昭和39年に利根川、淀川についで全国で第3番目に水資源開発水系に指定され、昭 和41年に「筑後川水系における水資源開発基本計画」が策定された。 現在の水資源開発基本計画は、目標年次が平成12年度で、表−1のとおり供給の目 標を約17.7m 3 /sと定めている。なお、次期水資源開発基本計画については、策定作 業中である。 現在までに 、「両筑平野用水」をはじめとした水資源機構事業により、表−2のと おり水道用水で約7.2m 3/s、工業用水で0.173m 3/s、農業用水で3.13m 3/sの合わせ て約10.5m 3/sが開発されている。 表−1 筑後川水系における各事業別、各用途別供給目標量一覧表 3 (単位:m /s) 都 事 業 市 用 水 名 農業用水 水道用水 工業用水 小 水 − − − 筑 後 川 下 流 用 水 − − − 筑後川下流土地改良 − − − 福 岡 導 計 摘 − 0.62 − 0.62 福岡、佐賀 福岡、佐賀(両事業あいま って開発。) 大 山 ダ ム 1.31 − 1.31 − 1.31 福岡 竜 門 ダ ム − 1.16 1.16 4.59 5.75 福岡、熊本 猪 佐 城 牟 田 賀 原 ダ 導 川 ダ ム 水 約3.5 0.65 − ム 耳納山麓土地改良 小 石 原 川 ダ ム 0.48 − 合 の 大分 0.65 − 0.65 佐賀(城原川ダムとあいま っ て 開 発 。 平 成 13年 度 を 目途に暫定通水を実施。) 約1.2 − 約1.2 佐賀(佐賀導水とあいまっ て開発 。) 0.48 0.91 1.39 約0.7 − 約0.7 計 そ 要 計 福岡 福岡等 約15.1 他 約2.6 計 約17.7 (筑後川水系における水資源開発基本計画(H11.1.29閣議決定)説明資料より) ※水道用水及び工業用水の水量は年間最大取水量を表す。 ※農業用水の水量は夏期かんがい期間の平均取水量を表す。 - 1 - 表−2 水資源機構事業の現況(新規開発水量とその配分) 3 (単位:m /s) 水 源 施 設 江川ダム 水 道 用 水 福岡市 1.075 甘木市 0.083 江川ダム 福岡企 1.669 寺内ダム 県南企 0.777 (総合利用) 佐賀企 1.065 鳥栖市 0.139 筑後大堰 福岡企 0.076 県南企 0.157 佐賀企 0.117 0.603(未取水) 県南企 0.707(未取水) 計 農 業 用 水 計 − 1.331 農水 2.510 − 2.51 − − − − 0.62 0.62 − 1.31 0.173 3.13 上水 3.650 0.350 福岡企 小石原川ダム(調査中) 0.173 両筑平野用水 − 筑後川下流用水 大山ダム(建設中) 工 業 用 水 甘木市 約0.7(未取水) 約7.2 約 0.7 約10.5 ※水道用水及び工業用水の水量は年間最大取水量を表す。 ※農業用水の水量は夏期かんがい期間の平均取水量を表す。 ※福岡企:福岡地区水道企業団 県南企:福岡県南広域水道企業団 ○ 筑後川水系図 - 2 - 佐賀企:佐賀東部水道企業団 2 両筑平野用水事業 2.1 両筑平野用水事業の概要 (1) 事業の概要 両筑平野用水事業は、江川ダム及び寺内ダムを総合的に利用することにより、筑 後川中流域右岸に広がる福岡県甘木市外1市3町(約5,900ha)に農業用水を供給す るとともに、福岡市の水道用水、甘木市の水道用水及び工業用水、また、福岡都市 圏、福岡県南地域、佐賀東部地域及び鳥栖市の水道用水を供給している。 (2) 事業の経緯 両筑平野用水事業は、農業用水及び都市用水の供給を目的とした事業で、昭和39 ∼49年度までの10年間の工期と約114億円の事業費をもって完成した。 当初、農林省が直轄事業として実施していたが、昭和41年に策定された水資源開 発基本計画に両筑平野用水事業として掲上され 、水資源開発公団事業として着手( 事 業承継)した。 事業着手後、昭和47年の事業実施方針の指示(変更)を受け、両筑平野用水事業 は、計画変更を行い新たに建設されることになった寺内ダムとの総合運用を行うこ ととなり、昭和49年度に事業完了した。 めおといし なお、本事業は、江川ダム及び女男石頭首工の主要施設の完成に伴い昭和47年か ら暫定通水を開始し、昭和50年度に管理業務に移行し、寺内ダム完成後の昭和53年 から両ダム総合運用による通水を行っている。 表-3 事業の経緯 昭和41年2月1日 水資源開発基本計画の決定 昭和42年1月30日 事業実施方針の指示 昭和42年3月28日 事業実施計画の認可 昭和47年3月24日 事業実施方針の指示(変更 )〈寺内ダムとの総合利用による福岡地区 水道企業団 、福岡県南広域水道企業団 、 佐賀東部水道企業団及び鳥栖市の追加 〉 昭和50年3月17日 事業実施計画の認可(変更) 昭和50年3月31日 建設事業完了 昭和50年4月1日 管理業務開始 昭和51年3月22日 施設管理方針の指示 昭和51年3月31日 施設管理規程の認可 昭和60年3月15日 施設管理方針の指示( 変更 ) 〈 福岡市上水と甘木市工水の取水量変更 〉 昭和60年3月30日 施設管理規程の認可(変更) 平成元年2月20日 施設管理方針の指示(変更 )〈小水力発電の追加〉 平成2年5月31日 施設管理規程の認可(変更) - 3 - (3) 水利用計画 水利用については、小石原川江川地点にダムを設置し、地区内利用水源の最大活 用と小石原川・佐田川両河川の総合利用を計画の根幹としている。 農業用水は女男石頭首工(小石原川水系)及び寺内地点(佐田川水系)で、都市 用水は女男石頭首工地点( 小石原川水系 )で 、新規都市用水( 福岡地区水道企業団 、 福岡県南広域水道企業団、佐賀東部水道企業団並びに鳥栖市)は筑後大堰地点でそ れぞれ取水している。 なお、都市用水は、昭和60年、福岡市の水道用水から甘木市の工業用水へ 0.075m 3/sの転用を図っている。 表-4 最大取水量 項 目 事 業 3 体 最大取水量(m /s) 備 考 福岡市 1.075 甘木市 0.083 福岡地区水道企業団 1.669 ※ 新規都市用水 福岡県南広域水道企業団 0.777 ※ 新規都市用水 佐賀東部水道企業団 1.065 ※ 新規都市用水 鳥栖市 0.139 ※ 新規都市用水 工業用水 甘木市 0.173 農業用水 両筑土地改良区 8.054 水道用水 ※ (2.51) ※ 寺内ダムと相まって開発 ( ○ 両筑平野用水事業に係る取水模式図 - 4 - )内は平均値 (4) 管理施設の概要 ① 水源施設 江川ダム 型 式:重力式コンクリートダム 堤 高:79.2m 総 貯 水 容 量:25,300千m 3 有効貯水容量:24,000千m 3 常 時 満 水 位:標高225.0m 最 低 水 位:標高176.0m 寺内導水路 延 長:4.32㎞ 三奈木導水路 延 長:0.597㎞ 型 式:可動堰 ② 取水施設 女男石頭首工 頭首工本体 堰 頂 長:45.0m ゲ ー ト:土砂吐(ローラーゲート)10.0m×2.4m 洪水吐(転倒ゲート) 30.0m×1.9m 3 最 大 取 水 量:右岸7.376m /s、左岸0.295m 3/s 取付水路 右 岸 延 長:405.4m 左 岸 延 長:100.0m 型 式:可動堰 甘木橋頭首工 堰 頂 長:64.0m ゲ ー ト:洪水吐(転倒ゲート)30.0m×1.25m×2門 調節ゲート(転倒ゲート)2.0m×1.25m×1門 最 大 取 水 量:右岸0.475m 3/s、左岸0.722m 3/s ③ 水 路 幹支線水路 延 長:約26.09㎞ - 5 - 2.2 地区及び施設の現状 両筑平野用水施設は、昭和50年度の供用開始から約30年を経過し、寺内導水路に おいてクラックが発生するなど、施設の老朽化により用水の安定供給の確保や第三 者被害等に対する危惧が生じている。また、幹支線水路においては、漏水事故の多 発、施設の機能低下等が見られる。 主な施設の老朽化の状況は表−5のとおりである。 表−5 施設の老朽化及び機能低下等の状況 施 設 名 状 況 江 川 ダ ム 放 流 施 設 ・利水放流バルブは副バルブが設置されていないことから、保守・点 検及び故障時の補修を実施する際、全ての放流を停止しなければな らなく、補修及びメンテナンスが容易にできない状況。 共 寺 内 導 水 路 ・ 湧水 箇所数が年々増加の傾向。 ・地山は湧水が多く、また、水を含むと膨張性を持つ地質が点在して おり、当時の施工技術では十分な強度を有するコンクリート打設が できなかった。このため、老朽化と相まってトンネル内面にクラッ 用 クやインバートの浮き上がり破損が確認されいる。 三 奈 木 導 水 路 ・ 管水路区間で、継ぎ目の止水ゴムの劣化による漏水が発生。 女 男 石 頭 首 工 ・ゲート油圧ジャッキの機能低下等により施設の老朽化が進行。 ・ 洪水吐 ゲートは、転倒式ゲートとなっており全閉、全開操作のみで 施 あり、長大スパンで1門しかないことから、洪水時に全開操作を行 った場合、上流水位が低下し安定取水に支障をきたしてしている。 さらに、全開操作頻度が少ないため、左岸側に土砂堆積が進み、取 水に支障をきたしている。 設 水 管 理 施 設 ・女男石頭首工の施設の監視・制御並びに各種データの観測、表示、 記録を行う設備は 、近年老朽化が進み 、交換部品の生産も中止され 、 調達に時間を要するなど利水管理に支障をきたしている。 甘 木 橋 頭 首 工 ・ ゲートの油圧ジャッキの機能低下や油圧配管の補修等が発生してお 農 業 幹 り、施設の老朽化が進行。 支 線 水 専 が発生。 用 施 水 設 路 ・ トンネル区間、開水路区間は、クラック、漏水、遊離石灰の固結等 ・ 管水路区間は、継ぎ目の止水ゴムの劣化による漏水が多数発生。 管 理 施 設 ・用水系統が供給主導型となっており、安定取水、公平な水配分など きめ細やかな配水管理が必要。分水操作は現地手動操作を行い、分 水槽の上下流の水位を観測しながら開度調整を行う。流量配分や用 水到達時間の予測などは、操作員の経験と勘に頼っている。 - 6 - 3 両筑平野用水二期事業の概要 3.1 事業の必要性 施設の劣化及び機能低下等の状況は2.2で述べたとおりであるが、特に、寺内導水 路については、破損等が多く、寺内導水路の機能が停止した場合は、江川ダム・寺内 ダムの総合運用による両筑平野用水の水運用の根幹に関わる問題となる。 以上のことから、施設の改築により機能低下した施設の機能回復を図るとともに、 効率的な水管理を考慮した施設の改善やシステムの導入等を行い、用水の安定供給と 施設の安全性の確保を図るものである。 3.2 事業計画の概要 本事業は、老朽化施設の改築と併せ、水管理システムを導入することにより、用水 の安定供給と施設の安全性の確保、施設管理の合理化・省力化を図ることを目的 としている。 ① 共用施設 江川ダム利水放流施設、寺内・三奈木導水路、女男石頭首工の改築等 1式 ② 農業専用施設 甘木橋頭首工及び幹支線水路の改築、水管理システムの導入等 1式 ③ 事業費 施 設 名 全 体 事 業 費 共 用 施 設 専 用 施 設(農水) 総 事 業 費 約210億円 約 43億円 約167億円 ④ 予定工期 平成17∼25年度(9年間) 表−6 改築計画の主な内容 項 目 江川ダム利水 共 放 流 施 設 用 寺 内 導 水 路 事 業 量 1式 L=約4.0㎞ 施 設 事 業 概 要 利水放流バルブに副バルブ設 置 地山グラウトによる地下水圧の抑制、裏込グラウトによ るトンネルのライニング補強、インバートの補強等 三奈木導水路 L=約0.2㎞ 管更正工法による漏水対策 女男石頭首工 1式 洪水吐ゲートの2分割化、魚道の改築等 水 管 理 施 設 1式 女男石頭首工改築に併せた水管理用制御処理装置の設置等 農専 甘 木 橋 頭 首 工 1式 ゲート開閉装置の更新等 用 幹 支 線 水 路 L=約21.5㎞ 管更正工法による漏水対策等 施 水 管 理 施 設 業設 1式 遠方監視・制御システム、調圧水槽の設置、分水調整容 量の確保、オープンスタンドの改築 - 7 - 4 事業採択前における社会経済状況等 4.1 水道事業者の水需要動向等 (1) 水道事業等の概要 両筑平野用水施設から水道用水を取水する事業者は、水道事業として福岡市、甘 木市 、鳥栖市、水道用水供給事業として福岡地区水道企業団、福岡県南広域水道 企業 団、佐賀 東部 水道企業 団で ある。各水道事業等の概要は次のとおりである。 表-7 水道事業の概要 事業者名 福 岡 市 甘 木 市 鳥 栖 市 事 業 名 第19次拡張事業 第1次拡張事業 第2次拡張事業 認可年月 平成13年3月 平成3年3月 平成8年3月 給水開始 大正12年3月 昭和51年4月 昭和42年7月 目標年次 平成22年度 平成10年度 平成22年度 給水人口 1,353,000人 19,000人 58,000人 計画人口 1,430,000人 20,000人 73,000人 計画給水 水 源 3 3 621,000m /日 7,000m /日 江川ダム、他8ダム 江川ダム 3 40,500m /日 (平成14年度「水道統計」より) 表-8 水道用水供給事業の概要 事業者名 福岡地区水道企業団 福岡県南広域水道企業団 佐賀東部水道企業団 事 業 名 第4次拡張事業(変更) 第2次拡張事業 創設事業(変更) 認可年月 平成13年3月 平成元年12月 昭和60年8月 給水開始 昭和58年11月 昭和51年6月 昭和60年2月 目標年次 平成22年度 平成21年度 平成7年度 給水人口 2,142,000人 642,000人 290,000人 計画人口 2,372,590人 728,190人 332,250人 ※ 福岡市、春日那珂川 給水対象 久留米市、大川市、 佐賀市、 水道企業団 、大野城市 、 筑後市、柳川市、 東与賀町、川副町、 筑紫野 市、太宰府市、 大牟田市、八女市、 諸富町、千代田町 宇美町、志免町、 城島町、大木町、 基山町、神埼町、 須恵町、粕屋町、 三潴町、大和町、 三田川町 、東脊振村 、 篠栗町、新宮町、 高田町、広川町、 中原町、北茂安町、 古賀市、前原市、 立花町、 三根町、上峰町 志摩町、二丈町、 三井水道企業団 宗像市、福間町、 (1市11町1村) (6市7町1企業団) 津屋崎町、 久山町 (7市12町1企業団) 給水能力 水 源 3 3 3 268,100m /日 150,400m /日 95,300m /日 江川・寺内ダム、 江川・寺内ダム、 江川・寺内ダム 合所ダ ム、筑後大堰、 合所ダム、筑後大堰 筑後大堰 鳴淵ダム (平成14年度「水道統計」より) 注1)給水人口及び計画人口については、各給水対象市町の目標年次における計画給水人口の計として いる。なお、佐賀東部水道企業団については聞き取りによる。 注2)給水対象の市町村については平成14年度時点であり、現在の給水対象市町村と異なる。 - 8 - (2) 水需要と供給の動向等 ① 福岡市 福 岡 市 は 、 大 正 12年 3月 か ら 給 水 を 開 始 し て い る 。 創 設 時 の 計 画 給 水 人 口 は 12,000人、給水能力15,000m3/日である。 福岡市は、急激な人口増加に伴う水需要の増加に対処するため、拡張事業を重 ねてきている。 現在では、目標年度を平成22年度とする第19次拡張事業を実施しており、給水 人口1,353,000人、施設能力780,900m 3/日(福岡地区水道企業団分含む)である。 水需要はかつてのような大幅な増加はないものの、人口は微増傾向で推移して おり、これに伴い生活用の水量も微増傾向で推移している。 ② 甘木市 甘 木 市 は 、 昭 和 51年 4月 か ら 給 水 を 開 始 し て い る 。 創 設 時 の 計 画 給 水 人 口 は 20,000人、一日最大給水量7,000m3である。 近年、渇水期の地下水位低下に伴い、上水道の安全性、利便性が認識され、住 民の上水道普及に対する期待が高まっている。 ③ 鳥栖市 鳥 栖 市 は 、 昭 和 42年 7月 か ら 給 水 を 開 始 し て い る 。 創 設 時 の 計 画 給 水 人 口 は 43,000人、一日最大給水量15,000m3である。 現在、 目標年度 を平成22年 度、計画 給水人口 73,000人、計画一日最大給水量 40,500m3とした第2次拡張事業を実施中である。 ④ 福岡地区水道企業団 福岡地区水道企業団は、福岡地区の4市18町(現在7市11町1企業団)で設立さ れ 、昭和58年11月から水道用水の供給を開始している 。創設時の計画給水量は163, 100m3/日である。 福岡地区の水需要は 、福岡都市圏における近年の人口集中 、生活・文化の向上 、 産業文化の発展等に伴って年々増加を続けてきた。しかし、これに対する水資源 は、筑後川等からの導水に頼らざるを得ない状況にある。そのため、新たなる水 源として大山ダムに52,100m3/日を依存する計画になっている。 現在は、目標年度を平成22年度、計画一日最大給水量268,100m 3とした第4次拡 張事業を実施中である。 ⑤ 福岡県南広域水道企業団 福岡県南広域水道企業団は、筑後川流域の2市9町(現3市8町)を久留米広域 市町村圏として設立され、昭和51年6月から水道用水の供給を開始している。創設 時の計画給水量は76,740m3/日である。 平成元年には、八女市、広川町及び立花町を給水対象に加え(6市7町1企業 団)、目標年次平成21年度、一日最大供給水量150,400m 3 の第二期拡張事業を実施 中である。 また 、新たなる水源として大山ダムに61,100m3/日を依存する計画になっており 、 さらに小石原川ダム計画に参画する構想がある。 ⑥ 佐賀東部水道企業団 佐賀東部水道企業団は、佐賀県の東部地域に位置する1市10町2村(現1市11 町1村)で設立され、昭和60年2月から水道用水の供給を開始している。創設時の 計画給水量は86,480m3/日である。 なお、現在の計画一日最大給水量は、95,300m 3となっている。 - 9 - 4.2 水源水質の状況 (1) 江川ダム(環境基準 湖沼AⅡ類型) 貯水池の水質は、CODが環境基準に比べ若干高めで推移している。 江川ダム貯水池では、これまでアオコの発生は見られていなかったが、平成15年 度にアオコの発生が見られており、本年もアオコの発生が見られている。 アオコに対しては、下流流出防止にための取水深の変更や取水塔周りに濁水防止 膜の取付を行い、アオコの流出の低減策を実施したほか死滅したアオコ回収を実施し た。これらにより、利水への影響を最小限に留めるよう努めている。 今後も引き続き水質状況を監視していく。 江川ダム (p H ) 1 4 .0 1 4 .0 1 2 .0 1 2 .0 1 0 .0 1 0 .0 8 .0 8 .0 6 .0 6 .0 4 .0 4 .0 2 .0 2 .0 0 .0 0 .0 H10 項 目 PH COD(㎎/l) SS (㎎/l) DO (㎎/l) H11 H12 基準値 6.5∼9.5 3㎎/l以下 5㎎/l以下 7.5㎎/l以上 H13 H10 8.6 4.8 6.0 10.9 H14 H11 8.3 3.8 2.0 10.8 ( ㎎ / l) P H COD SS DO H15 H12 8.1 2.3 1.0未満 10.5 H13 8.3 3.1 2.0 10.2 H14 8.3 3.8 4.0 10.0 H15 8.4 3.7 1.0未満 10.2 ※ SSは福岡県環境部「公害関係測定結果」より、SS以外の項目は水資源機構「水質年報」より(年平均値) (2) 寺内ダム(環境基準 湖沼AⅡ類型) 貯水池の水質は、CODが環境基準に比べ若干高めで推移している。 寺内ダム貯水池では、発生状況の差はあるものの例年アオコの発生が見られてお り、本年もアオコの発生が見られている。 アオコに対しては、近年、曝気循環装置の稼働及びこれと連動した表面取水設備 による取水の運用を実施しており、利水に影響を及ぼすまでには至っていない。 今後も引き続き水質状況を監視していく。 寺内ダム(表層) (pH ) 14 14 12 12 10 10 8 8 6 6 4 4 2 2 0 ( ㎎ / l) PH COD SS DO 0 H 10 項 目 pH COD (㎎/l) SS (㎎/l) DO (㎎/l) H 11 基準値 6.5∼9.5 3㎎/l以下 5㎎/l以下 7.5㎎/l以上 H 12 H 13 H10 8.7 4.1 4.5 10.7 H11 9.1 4.0 4.3 12.2 H 14 H12 8.5 4.2 4.3 10.3 H 15 H13 8.1 3.2 3.1 10.6 H14 8.6 4.2 4.8 11.9 H15 8.1 2.5 2.9 11.4 ※水資源機構「水質年報」より(年平均値) - 10 - 4.3 水道事業者等の要望 平成13年7月23日、水道用水、工業用水及び農業用水の関係利水7団体で構成され る「両筑平野用水二期事業推進協議会」が組織され、事業の早期着工に向けての調整 ・協議等が実施されているほか、水資源機構に対し同協議会から事業の早期着工に対 する要望がなされている。 ・平成15年5月30日 : 福岡市ほか4団体が厚生労働省等へ早期事業化を要望 ・平成16年7月28日 : 福岡市ほか3団体が厚生労働省等へ17年度着工を要望 ・平成16年11月26日 : 両筑平野用水二期事業推進協議会として厚生労働省等へ 17年度着工を要望 4.4 関連事業との整合 福岡市、福岡地区水道企業団及び福岡県南広域水道企業団においては、江川ダム及 び寺内ダムの他に 、さらに合所・大山ダムを水源とした拡張事業を推進するとともに 、 福岡県南広域水道企業団においては小石原川ダム構想も念頭においている。 そのため、両筑平野用水二期事業を着実に実施することは、全利水者に対する水道 用水の安定的な供給に不可欠となっている。 4.5 技術開発の動向・新技術の活用等 両筑平野用水二期事業の計画策定にあたっては、学識経験者や実務経験者等によ る広範な見地から指導・助言を得て、近年の社会情勢に的確に対応した事業計画と することを目的として、平成8年度に「両筑平野用水検討会」を設置し、平成10年ま で事業の基本的な事項について検討を行った。 さらに寺内導水路については、平成12年度に「両筑平野用水寺内導水路設計VE検 討会」を立ち上げ、改築工法の具体的な検討を行った。なお、寺内導水路設計VE検 討のフローを次のとおりである。 〈寺内導水路設計VEでの検討フロー〉 ・ 設計条件、設計諸元並びに制約条件等について、情報を収集分析 ・ 導水路の改築を主眼に 、「導水路 」、「覆工 」、「インバート 」、「グラウト 」、 「湧水処理 」、「施工」の構成要素に絞り込み ・ トンネル変状の原因、改築工法の考え方の整理 ・ 改築方法の基本アイデアの検討・評価 ・ 基本アイデアを基に、6つの具体案を作成し 、「機能の達成度 」、「施工性 」、 経済性 」、「環境への影響 」、「メンテナンス 」、「安全性」の6項目について、 総合的に評価 - 11 - 寺内導水路の改築工法の選定にあたっては、原案とVE検討会において作成した 6つの具体案を比較評価し、経済性に加えて、施設の安全性等を考慮し改築工法を 選定した。 ※「設計VE」とは・・・Value Engineering。良いものを安くつくることを目的として、機能分析や コ ス ト 分析 を行ったうえで代替案(技術的な工夫)を検討していく組織的 活動。 【原案】 (特徴 )・構造は円形であり、既設よりも内外圧に対する構造耐力がアップ。 ・既設の覆工を取壊すことなく施工できる。 ・トンネル区間全線の補強である。 改 築 工 法 湧 水 処 理 裏込グラウト 築 範 囲 L=676m(グラウト未施工区間) 天端水抜孔(φ50、L=3.0m) 覆 改 L=3,984m(トンネル全線) 工 内挿鋼管φ1650 L=3,984m(トンネル全線) イ ン バ ー ト 取壊し復旧(普通コンクリート) L=3,984m(トンネル全線) アンダードレーンの設置 L=3,984m(トンネル全線) 【選定工法】 (特徴 )・変状の原因から構造上の補強は考慮する必要はないと判断し、変状の進 行抑制を目的に、変状箇所を集中的に補修できる方法。 改 築 工 法 湧 水 処 理 地山グラウト 覆 改 築 範 囲 L=760m(施工時湧水箇所) 裏込グラウト L=3,984m(トンネル全線) 天端水抜孔(φ50、L=3.0m) L=3,984m(トンネル全線) 工 樹脂注入補修 目地部264+一般部66箇所 ポリマーモルタル塗装(t=30mm) イ ン バ ー ト 取壊し復旧(鉄骨繊維コンクリート) アンダードレーンの設置 。 - 12 - 目地部264+一般部66箇所 L=3,984m(トンネル全線) L=3,984m(トンネル全線) 4.6 環境との調和への配慮 本事業の実施にあたっては、保全対象となる生物、水辺環境、伝統的な景観や建造 物、生活環境との調和について文献調査及び現地調査を行い、環境との調和に配慮し た事業を行うことを基本としている。 (1) 既設魚道の改修による魚道の遡上条件の改善 既設の魚道は、階段式全面越流型で勾配が急であり、気泡や乱流が発生して魚 類の遡上が難しい状況となっている。 このことから、隔壁部分の構造等を改善することにより、休憩場所の確保、不 安定な流況の改善、遡上経路の確保等を行い、アユ等の浮遊魚や底生魚を対象に 遡上を容易にさせることを目的として、アイスハーバー型魚道を想定している。 なお、施工にあたっては、事業着工後学識経験者等の意見を聞くなど、引き続 き詳細な検討をしていくこととしている。 (2) 自然・景観の保全及び歴史的建造物・遺跡等への配慮 女男石頭首工周辺は、甘木市の「歴史的景観条例」による歴史的景観形成地区 に指定されている。 施工にあたっては、植物・動物が生息する地域への配慮、緑豊かな田園風景に 配慮した修景を行う。また、防音、防振等、周辺住環境に配慮した工法とする。 - 13 - 5 コスト縮減方策・代替案等の可能性の検討 5.1 寺内導水路の改築工法 寺内導水路の改築工法の選定にあたっては、設計VE検討会等により、現地条件を 踏まえた合理的かつ実践的な工法及び施工上の安全性、工事コスト縮減の両面から検 討を行った。 選定した工法は、両筑平野用水検討会の寺内導水路改築工法原案(グラウト未施工 部分にポリマーグラウト注入し内挿鋼管を施工する「鋼管内巻工法 」)と比較して約 34%のコスト縮減が図られる。 代替案との比較 概算工事費(千円) 選定工法 1,043,000 代替案(鋼管内巻工法) 1,571,000 ☆ 約34%のコスト縮減 5.2 女男石頭首工の改築工法 女男石頭首工の改築工法の選定にあたっては 、安定取水の確保 、土砂排砂 、経済性 、 周辺環境との調和を念頭に次の3案について比較検討した。 ・案1: 転倒ゲート2分割による現位置での部分改築 ・案2: 転 倒 ゲ ー ト を 2 分 割 し た の ち 左 岸 も ロ ー ラ ー ゲ ー ト に す る 現 位 置 で の 部分改築 ・案3: 全面ローラーゲートによる直上流への全面改築 上記の3案を比較した結果、女男石頭首工は地表構造物であり施設規模も大きいこ と、周辺環境に配慮する必要があること、経済的に他の案に較べて経済的であること を踏まえ、施設に求められる土砂の除去機能については、ゲート施設の操作(動作順 位等)による方法など弾力的な運用を行うことにより対応することとし、案1を選定 した。 改築案の比較 概算工事費(千円) 案1( 選定工法 ) 255,000 案2 554,000 案3 817,000 - 14 - 6 事業の投資効果分析 事業の投資効果分析は 、「水道事業の費用対効果分析マニュアル(案 )〈改訂版 〉(平 成14年3月(社)日本水道協会」に基づき実施した。 事業の投資効果は 、総便益を総費用で除して算出した 。なお 、計測期間は50年である 。 6.1 総費用 両筑平野用水二期事業の共用施設分の事業費は4,297,850千円であり、うち水道用 水分は2,436,881千円(=4,297,850×0.567)である。 これに計測期間中の各施設の耐用年数に応じた更新費用、社会的割引率を考慮して 現在価値化した費用の総和を総費用とした 。 ( 総費用 3,457,908千円 ) 6.2 総便益 本事業は、老朽化した施設の改築により、機能低下した施設の機能回復を図るとと もに、施設の安全性向上を図るものである。 総便益については、本事業の実施により災害時(地震を想定)の施設損壊が減少し 通水が確保されることから、これによる断減水被害減少分、復旧工事費減少分を算定 した。また、本事業により老朽化した施設の機能回復を図ることから、事業を実施し なかった場合に将来増加する維持管理費と、事業を実施した場合の維持管理費の差分 を効果として算定した。なお、災害(地震)は計測期間に1回(50年に1回)起こる ものと想定した。 (1) 災害時の断減水被害減少効果(利水者便益) 災害時の断減水被害減少効果は、事業を実施した場合と事業を実施しなかった場 合の断減水被害額(生活用水、業務用水、工場用水)の差額を算定した。 ( 便益は3,095,659千円 ) (2) 災害時の復旧費用減少効果(供給者便益) 災害時の復旧費用減少効果は、事業を実施しなかった場合に想定される被害に対 する応急復旧費用のみを算定した。 (便益は44,103千円) (3) 維持管理費節減効果(供給者便益) 維持管理費節減効果は、事業を実施しなかった場合に将来増加する維持管理費 と事業を実施した場合の維持管理費の差を効果として算定した。 ( 便益は778,972千円 ) 6.3 費用便益比 上記の総費用及び総便益に基づく費用便益分析において、1.13の結果を得た。 表-9 費用便益比総括表 区 分 総費用 計(C) 総便益 災害時の断減水被害減少効果 災害時の復旧費用減少効果 維持管理費節減効果 計(B) 費用便益比 (B/C) - 15 - ( 単位:千円 ) 金 額 3,457,908 3,457,908 3,095,659 44,103 778,972 3,918,734 1.13 7 事業計画の適切性 本事業については、 ・ 当該事業の実施により施設の機能回復が図られ、用水の安定供給と施設の安全性 が確保される ・ 当該事業の利水関係7団体から事業の早期着工に向けて要望がなされている ・ 寺内導水路は、VE(Value Engineering)の手法を用いて、 技術面、コスト面 の両面から最適な改築工法を選定している ・ 女 男 石 頭 首 工 の 改 築 工 法 は 、 コ ス ト 面 と 周 辺 環 境の 両 面 から 最 適な 工 法 を選 定 している ・ 女男石頭首工の改築と合わせて魚道の改善を図るなど、生態系への配慮を十分に 行う計画としている ・ 事業実施による効果として、断減水被害減少効果、維持管理費節減効果等を総合 的に測定した結果、事業の投資効率として1.13の結果が得られ、用水の安定供給に 大きな効果が期待できる 以上のことから、本事業計画は適切であると判断される。 - 16 -
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