地域を支え活性化する コミュニティ・ビジネスの課題と新たな方向性 (平成 13 年度 ● 総合研究開発機構特定助成研究A類) 本研究における社会的認知・支援の対象となるコミュニティ・ビジネスの定義 これまでの先行研究では、CBについて比較的広く解釈されてきた。一方、地域における課題を解決 する手段としてCBへの期待が高まるにつれて、もはや抽象的な定義では評価に耐えられないため、本 研究では、CBについて「社会的認知・支援の対象となる活動としての定義」を行うこととした。具体 的には、「①事業性、②地域性、③変革性、④市民性、⑤地域貢献性の構成要素からなる社会的・経済 的活動」として定義づけることとした。 構成要素 ● 容 事業性(CO) 独自事業収入が主要な収入源として継続的に確立されている。 地域性(IN) 一定の地域を対象に事業活動を行っている。 変革性(RE) 事業内容・目的として、地域社会の課題解決を掲げて活動している。 市民性(BY) 地域住民など市民セクターが事業を展開するうえで資本・運営上の主導権を確保している。 地域貢献性(FOR) 地域における課題解決に貢献していることが明確である。 コミュニティ・ビジネスが必要とされる主な背景 背 景 雇用状況の悪化 地域コミュニティの弱体化 高齢者・障害者・専業主 婦等の就業機会不足 まちの機能の低下 行政機能の限界 ● 内 内 容 非自発的・構造的離職者の量的増加、高齢者・若年労働者(競争力が低い)の高失業率 生活スタイルの多様化・広域化が進み、住民意識の「地域性」「共同性」が低下 高齢者:肉体的な負担が少なく「生きがい」「社会参加」を実現できる就業機会の必要性 障害者:企業等での「福祉的就労」でなく専門スキルを活かせる就業機会の必要性 主婦等:家事や育児と両立できる就業機会の必要性 中心市街地、「オールドニュータウン」等の人口減少、商業機能衰退、利便性の低下 住民ニーズの多様化・複雑化に、画一性を特徴とする行政サービスだけで対応できない コミュニティ・ビジネスに期待される主な機能 背 景 課題共有化機能 雇用・就業機会 創出機能 地域サービス補完機能 内 容 地域への「関心」を失っている住民・企業と行政が連携して地域の課題を解決するうえで きっかけとなる「課題共有化機能」が期待できる CBは実在する地域ニーズに対応する事業であり、いずれの地域でも可能で雇用・就業機 会創出が期待できる。また、高齢者・障害者・専業主婦等も比較的就業が容易 既存セクターにより提供されていない地域サービスを住民主導により提供が期待できる 行政代替機能 公益性があるが行政が提供しにくいリサイクル事業、付加的保育サービスなどが期待できる 市場補完機能 採算性等の面で企業が提供しにくい商品・サービス等の提供が期待できる コミュニティ再生機能 事業を通じて、既存コミュニティが果たしてきた機能の代替が期待できる ● コミュニティ・ビジネスの現状分析 (1)コミュニティ・ビジネス実態アンケート調査の概要 ・ 実施概要 ● アンケート実施期間 ● アンケート送付・回収方法:郵送またはFAXによる送付・回収 ● 配布・回収状況 :2001 年 11 月1日〜同 11 月 30 日 :配布数:1,500 部 回収数:317 部(回収率:21.1%) ● 調査機関及び調査協力機関:(財)神戸都市問題研究所、㈲コラボねっと ・ 実態アンケート調査の主な項目と単純集計による結果内容 項 ① 目 団体の概要 主な結果内容 ・任意団体、NPOが多い。活動エリアは、市区町村が多い ・年間事業規模は、1000 万円以下が約 50%、設立は新しい ・スタッフ数は 10 人未満で約 50%で比較的小規模である ② 団体の事業区分 ・障害者・高齢者福祉、まちづくり等の分野が多い ③ 事業を始めた ・地域の課題解決と社会参加がほぼ同数 きっかけ・目的 ④ スタッフの属性 ・女性の比率が高い、主婦が多く、40〜49 歳が最も多い ⑤ 収支状況 ・全体収支は収支均衡団体が半数以上で赤字団体が約3割 ・人件費の圧縮や補助金・助成金の受領等を行っており特殊要因がなければ、半数以上が赤 字団体となる ⑥ 利益への考え方 ・事業を継続するため利益が必要とする回答が最も多い ⑦ 第三者評価 ・外部評価が約3割、内部評価が約 3 割、評価せずが約3割 ⑧ 情報公開 ・媒体は印刷物、内容は事業報告が最も多い ⑨ CBの認知度等 ・概念を知っている割合は約 50%、知らない割合は約 20% ・自らの事業がCBに該当するが約 50%、しないが約 20% ⑩ 課題・問題点 ・スタッフの能力不足、資金繰り、スタッフの不足・高齢化が上位 ⑪ 期待する支援 ・行政へは資金支援、一般企業へは資金支援、地域(住民)へは会員としての参画が最も 多い ⑫ ・ 今後の方向性 ・遊休資源の活用、既存事業の周辺事業拡大などが上位 一般の市民活動団体、NPO法人等との主な比較内容 ① 活動エリアは限定的、年間事業規模は比較的規模が大きい ② 1団体あたりのスタッフは多い。女性の比率が高く主婦が多い ③ 第三者評価・情報公開は相対的に積極的に行われている など (2)コミュニティ・ビジネス活動団体へのヒアリング調査の概要 ・ ・ ヒアリング調査対象団体(13 団体) 団 体 名 ① 特定非営利活動法人 NPO・FUSION長池 ② 株式会社 なんてん共働サービス ③ 滋賀県環境生活協同組合 ④ 株式会社 手賀沼せっけん 特定非営利活動法人 せっけんの街 ⑤ 特定非営利活動法人 てみずの会 ⑥ ワーカーズコレクティブ みち ⑦ 特定非営利活動法人 寝屋川あいの会 ⑧ 関西分譲共同住宅管理組合協議会 ⑨ 特定非営利活動法人 シンフォニー ⑩ 特定非営利活動法人 六甲山と市民のネットワーク ⑪ 株式会社 出石まちづくり公社 ⑫ 特定非営利活動法人 中部リサイクル運動市民の会 ⑬ 特定非営利活動法人 神戸ライフケア 協会 事 業 内 容 多摩地域における地域活性化事業、住宅管理に関するコンサル タント事業、地域広報誌発行など 太陽光発電事業、在宅支援事業など 廃食油リサイクル事業、牛乳パック回収事業など 廃食油リサイクル、せっけんの製造・販売など グループハウス運営、デイサービス事業など 給食サービス、店頭での弁当販売など 生活関連サービス事業など 集合住宅管理業務、設計監理、長期修繕計画立案など IT講習開催、地域情報誌発行など 六甲山に関する情報発信、保養所活用コンサルタント等 売店、喫茶店、そば茶店、資料館、貸店舗事業など グリーン推進事業、環境総合誌発行、太陽光発電普及事業など 在宅介護支援、子育て支援、生活支援事業など 主な事業の特徴、他のCBが参考とすべき点 ① 一定エリアに活動を特化、事業収入比率が高い、行政からの受託による収入安定 ② 健常者と障害者が共に働く職場環境を創造、エコマネーの活用 ③ 女性(主婦)の雇用を創出、男性退職者に雇用の場を提供 ④ 企業との連携、企業による資金提供 ⑤ 介護サービスによる収入安定、事務局スタッフの充実 ● など コミュニティ・ビジネスを取り巻く需要環境(例) 需要者側の視点から求められるコミュニティ・ビジネスのあり方を探るために、①「成熟したニュータウ ンにおけるCBに関する意識調査」 、②「子育て支援に関する意識調査」を行った。 ・ 成熟したニュータウンにおけるCBに関する意識調査で得られた主な結果 ① 少子高齢化が進む中でCBによって日常生活が支えられることを期待 ② 現段階では担い手となる住民は少ない。増やす取り組みが必要 ③ 店舗撤退への不安、CBによる写真店・書店など専門店経営の期待 ④ CBの担い手として住民の有志、他地域の NPO などに期待 ⑤ 大工、看護婦など専門家によるCBへの参加・品質向上の期待 など ・ 子育て支援に関する意識調査で得られた主な結果 ① 利用者は、近隣で、気軽に、安価で、親身になったサービスを求めている ② お稽古事など高収益事業と一時保育サービスなど低収益事業とを組み合わせることにより全体として 収益性を確保する必要がある ● コミュニティ・ビジネスの活性化に向けた課題と解決のための方策 CBに期待される機能 主な課題(例) 主な解決方策(例) 地域における 課題共有化機能 ・ 目標設定が欠如 ・ セミマクロ的な課題を把握不十分 ・ 事業による地域貢献目標値の明確化 ・ 課題意識の集積・整理・周知の取り組み 地域における 雇用・就業機会創出機能 ・ 給与が総じて低水準 ・ 特に障害者等の雇用条件が低水準 ・ 介護サービス・委託など安定収益事業の拡大 ・ IT スキルなど就業ハンディを覆す専門能力の取得 地域サービス補完機能 ・ 既存事業とのオーバーラップ ・ 既存事業の不足部分の補完(病時保育など) ・ ①近隣で②気軽に③安価に新サービスを提供 行 政 代 替 機 能 ・ 委託による自立性・独自性の喪失 ・ 委託業務における独自事業性への配慮 ・ 期限つき行政機能代替サービスコンペ事業の実施 市 場 補 完 機 能 ・ 専門性の高い事業を行ううえでの能力不 ・ 事業の低コスト化(地域の協力による固定費削減) 足 ・ スタッフの専門能力の強化、「プロ」の協力確保 コミュニティ再生機能 ・ 事業参加者が少なく地域のネットワーク ・ 住民、地元企業など会員制度の充実 を生み出せない ・ 自治会、PTA など地元団体との連携 ● コミュニティ・ビジネス活性化に向けた外部支援 ・ (例)自治体に求められるコミュニティ・ビジネス支援のための取り組み 取り組み 主な取り組み内容(例) 「自治体憲法」の制定 ・「(仮称)市民事業促進憲章」「(仮称)市民事業促進条例」の制定など自治体 の方針を地域住民に示し、計画的、合理的な取り組みを行っていく必要 「CB基金」の創設 ・CB支援策を財政面から支えるための基金の創設 ・制度的な裏づけとして、住民税の超過課税の導入も検討 業務委託の推進 ・CBを行う団体。自立性、独自性に配慮して、自由度の高い契約にするなど工 夫が求められる。 活動場所の提供 ・小中学校などの余裕教室や地域のコミュニティ施設など多くの地域住民が現に 利用している施設での活動場所提供が望ましい。 有期限の立ち上げ 資金支援 ・事業初期など限定した資金支援が自立性と両立しやすい ・公平性・透明性を担保するため、 「公開コンペ」などが必要 ※その他企業には、資金・人材支援、遊休施設の提供、地域住民には会員としての参画等が期待される ● 「地域課題解決システム」の構築 「地域課題解決システム」の構築 地域の課題の「自己課題化」 コーディネート 行 政 地域の課題 =自らの課題と する意識の醸成 地域住民 生徒・学生が地 域貢献しやすい 環境整備 地域の教育 機関 従業員が地域に 関わることを容 認 一般企業
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