ゆめ通信 No.62 - 日本養豚事業協同組合

〒105-0003 東 京 都 港 区 西 新 橋 1-22-12 J C ビ ル 4F
第11回通常総会開催
で、1名の理事が入れ替わり(静岡・大場英之氏新
任)13名が再選されたが、
創立以来の稲吉弘之理事長、
志澤勝・栗木鋭三副理事長体制から、志澤副理事長
はJPPA会長の大任を鑑み顧問理事となり、稲吉理事
長は再選、副理事長は再選された栗木氏と新たに選
任された松村昌雄氏が就任、常任理事の新たなポス
トを設け菅谷守氏が就任し、第12期がスタートした。
一方、再任された稲吉理事長は新年度の事業の取
り組みについて「“ゆめシリーズ”の出荷量回復を重
点活動項目の最重要課題として取り上げ、前年発足
した飼料品質研究会とリキッドフィーディング研究
会の活動を充実させ、利用度減少の要因を分析し、
新たな経済性の追求を目指す」ことを強調し、意気
込みを見せた。
第12期の重点活動は①“ゆめシリーズ出荷数量回
復活動と飼料品質研究会の充実、②国際競争力の強
化と生き残り戦略模索、③高能力種豚TOPIGSのPS
生産開始による普及推進、④リキッドフィーディン
グ研究会の充実とベースミックスへの取り組み、⑤
ベンチマーキングへの取り組みと推進、⑥会員増強
と組織強化(支部・青年部・女性部)をあげた。
総会終了後、鈴木宣弘氏と大竹聡氏の記念講演を
行った。講演内容は本号に掲載されているので一読
願いたい。
(齊藤)
2月24日、第一ホテル東京シーフォート(東京・
品川)に於いて、第11回通常総会を開催した。冒頭、
稲吉理事長は「前年度宮崎県で発生した口蹄疫の清
浄化が決定し、全国肉豚も2年目を迎え、養豚業界
は順調な滑り出しをするかに見えたが、3月に発生
した東日本大震災は日本経済に大きな打撃を与え、
福島原発事故も加わり現状復興もまだ先が見えない
状況にある中、豚枝肉規格問題やTPP参加協議に加
わると言う政府方針から、豚事協を取り巻く養豚環
境は極めて厳しい状況となった。逆風の中での第11
期の事業運営について、組合員は前期末に比べて7
名増の422人までに達する一方、東日本大震災の影響
等により、主力事業である指定配合飼料“ゆめシリ
ーズ”の出荷量が前年対比81%と、扱い10年目にし
て初めて大きく減少する事態となった。組合発足の
原点である『中小経営の競争力の強化』を目的とす
る相互扶助の精神を再認識し、反省すべきは反省し、
改めて日本で一番生産性の上がる飼料の供給を目指
さなければならない年となった」と総括した。
荒川隆氏(農林水産省生産局畜産部長)および佐
藤純二氏(独立行政法人農畜産業振興機構・理事長)
の来賓挨拶の後、阿部秀顕氏(山形県・㈱山形ピッ
グファーム・代表取締役)を議長に選出し議案審議
に入り、まず事務局より第11期の事業報告を行った。
決算については売上高16億7,567万円と前年度を約
10%上回ったものの、事業利益は2,969万円と前年比
78%に留まった。事業の中心である共同購入事業の
うち主力である委託配合飼料の利用高が、東北並び
に関東の供給工場が東日本大震災で大きな被害を受
けて減少したほか、他地域でも後継者不足や資金繰
りの理由で減少し、前年比81%に留まったことが大
きく影響した。一方事業利益は相応に確保され、前
年に引き続き20百万を組合員に対し利用分量配当す
ることで承認を得た。
こうした背景を踏まえて、新年度の役員改選は数
年来の懸案であった世代交代に向けた布石を打つ中
1
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E-mail <第11回通常総会・記念講演①>
「TPPはわが国に何をもたらすか」
東京大学大学院農学生命科学研究科
教授 農学博士 鈴木 宣弘
TPPは関税を撤廃するということで畜産業界にと
は農業だけではありません。国民健康保険(米国に
って大変なことです。政府のTPPへの参加表明を阻
はない)もそうだし、郵政、共済、遺伝子組み換え
止できなかったことは、反対の立場を表明してきた
食品の表示制度など、数えたら枚挙に暇がありませ
私にとってもとても残念ですし、皆さんに大変申し
ん。これらのさまざまな分野を対象にしてISD条項に
訳なく思っています。47都道府県のうち反対を表明
基づき日本政府がアメリカ企業に提訴されたら、所
した県議会が44、市町村議会でも反対は8割以上に
長が米国人なのだから、全て日本が敗訴して『アメ
上ります。日本の国土の90%は反対を表明している
リカの言うがまま』になり、健康維持や所得の少な
のに、TPP事前協議への参加を表明するとはもはや
い層を助けるための大切なシステムまで破壊されて
日本は民主主義国家ではありません。TPPはあくま
しまうことになります。
でもアメリカのためにある貿易協定で、アメリカは
アメリカは日本がTPPの内容を考える上で韓米
既に『アメリカの自動車が日本で売れないのは関税・
FTAを参照せよと言っていますが、つまりは韓米
非関税障壁(車検制度など)のせいだから、それを
FTAの内容をさらに強化するものになるということ
撤廃し、さらにアメリカ車のシェアを一定水準にな
です。韓米FTAでは①投資・サービスの原則自由化
るよう目標を決めて販売拡大させろ』などと無茶苦
(例外だけを規定)
、②エンジニア、建築士、獣医師
茶な要求をしてきています。合意のあとはアメリカ
の資格・免許の相互承認の検討、③郵政・共済を含
に無理難題を押し付けられて、日本が苦労するのが
む金融保険の競争条件の内外無差別化、④公共事業
オチです。
の入札金額の大幅引き下げ、⑤特区における国民健
『平成の開国』だと騒ぐ人や、農業について『鎖国』
康保険適用外治療の許可、⑥米国産牛肉の月齢制限
だという人がいるが、日本の自給率はカロリーベー
の緩和⑦毒素条項(ISD =投資家・国家訴訟)など
スで40%と世界で最も低い自給率であり、逆に言う
が規定されていて、これが強化される形でTPPが議
と60%は既に解放されているということです。製造
論される形になります。
業の関税は世界でもっとも低く、日本は農業も含め
農業関連の関税が撤廃されることになれば、サト
て世界で最も開かれた国なのです。農業においては
ウキビで生活している沖縄などでは、生活できずに
直接の競争相手国になるオーストラリアでは、畑の
島から脱出する人々が続出し、尖閣諸島のような島々
1区画が100町歩、農家一戸の適正規模は1万町歩だ
が沢山でてくることになります。このように、TPP
と言われています。土地条件は農業にとって決定的
は農業だけがクローズアップされていますが、農業
な影響を与えるのに、そもそもまともに競争できな
だけにとどまらず日本という国の存続に大きな影響
い相手と競争させようとしているのがTPPです。
を与えてしまう問題なのです。
(矢嶋)
無理難題をアメリカに押し付けられて後々困るの
2
<第11回通常総会・記念講演②>
「アメリカ養豚情勢と疾病の最新知見」
Swine Extension & Consulting
獣医師 獣医学博士 大竹 聡
今回は米国の養豚事情を通じて、日本とは国情が
き肥育ステージが基本になります。
(オランダやデン
大きく違うが彼らの豚肉のコストダウンに対する意
マークのように)繁殖経営が主流なら(離乳頭数=
識と方法を、技術的な観点から皆さんと共通認識を
出荷頭数だから)繁殖に関する数値は最重要になり
持ち、ヒントを得て経営改善の一助となるような話
ますが、日本では一貫生産が主流なので、出荷頭数
をしたいと思います。TPPの問題を踏まえて、どう
や出荷枝肉重量が大切な指標です。分娩率や母豚1
しようもないというのではなく、日本もまだまだ技
頭当りの離乳頭数の数値は途中経過でしかありませ
術的に改善できる方法があるはずだからです。10年
ん。FCを下げるには疾病対策が肝要です。『PRRSや
以上アメリカと日本とを行ったり来たりしています
サーコなど病気とは上手に付き合えばいいのだ』と
が、アメリカの生産者は農場経営に対する考え方・
いう人がいますが、
『病気とはつきあわない』のが病
生産コストへの対応は厳しくもあり能動的で、かな
気との付き合い方です。病気を入れてしまって『ワ
り競争力があると思います。アメリカで生産される
クチンだ、抗生物質だ』と騒いでもイタチの追いか
豚肉の20%は輸出であり、輸出が止まると豚肉相場
けっこで、薬品代のコストを上げてしまうだけです。
は著しく低下します。ということは品質も価格も輸
できるだけ病気を追い出して、バイオセキュリティ
出に耐えられる豚肉を生産しなければならないとい
をしっかり強化して新しい病気を入れないことです。
うことであり、この部分ではアメリカの生産者の技
アメリカではPRRS撲滅のための運動をしていると
術力と改善することへの馬力を感じます。日本の生
ころは17地域あります。アメリカの養豚家は戦略的に
産者は『厳しい』と言っていますが、アメリカの生
豚肉の輸出を考えていますが、そればかりではなく
産者はもっと厳しいでしょう。生産コストは日本に
コスト削減に注力しています。その一つがPRRSの撲
比較して圧倒的に低いですが、
(売価が安く)利益も
滅だし、DDGSの利用です。アメリカの飼養母豚数は
それに応じて低いからです。この利益の少ないとこ
減少していますが肉豚の生産頭数は増加しています。
ろで各養豚場がせめぎあって生きているので鍛えら
生産効率改善の最大の要因は種豚の改良です。いい
れています。今は1頭10ドルの黒字ですが2年前ま
母豚を使わなければ成績改善は頭打ちになります。次
では30ドル/頭の赤字でした。そんな中でも『どう
に疾病のコントロールも生産効率改善の大きな要因
せ損なら出荷豚を減らし、ついでに飼育成績を改善
です。アメリカの飼育形態は今ほとんどがマルチサイ
してPRRSをなくそう』と、次に備えて前向きの対策
ト(繁殖と肥育の分業)で、新築の豚舎はウィントゥ
を打っていました。疾病改善対策にチャンスを見つ
フィニッシュばかりで離乳舎は見られませんが、これ
けて実行しています。こういうところは日本も是非
も肉豚から見た生産性改善を考えた結果です。
見習うべきだと思います。
アメリカの養豚も飼料高騰・PRRSやインフルエ
これからは生産コストに対する考え方を先鋭化し
ンザなどの疾病・動物福祉(アニマルウェルフェア)
なければなりません。我々はまだ生産コストを突き
への対応など種々の課題を抱えています。それでも
詰めていません。日本にはまだ高く売れる市場があ
前向きにコストダウンに取組んでいます。アメリカ
りますから、今生産コストを下げれば、利益の向上
の事例を参考にヒントを貰いながら、日本の養豚も
になり投資につなげられます。生産コストで一番多
コストダウンに邁進しなければならないと思います。
い割合を占めるのは飼料代です。飼料代を考えると
(矢嶋)
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E-mail 第1回青年部・ベンチマーキングセミナー開催
去る3月16日、東京八重洲のAP東京八重洲通りに
税逃れの豚肉が安く売られているからである。法治国
おいて、第1回青年部・ベンチマーキングセミナー
家としての威信をかけて、本制度を的確に運用するよ
を開催し、組合員の農場における経営者、後継者、
う関係部署に強く働きかけることが肝要である。
現場担当者など48名が参加した。
口蹄疫等の斃獣処理の新しい処理方法について:
現在ヨーロッパでは鶏インフルエンザや口蹄疫など
冒頭のあいさつで青年部・阿部秀顕部長は「国際
は必ず発生するものだという認識の下で、発生した
競争力が問われる昨今ですが、TPP問題での私たち
ときにはどのように処理するかを検討した結果、処
の競争相手であるアメリカ、デンマーク、オランダ
理はVetconという業者が、獣医は全体的な指揮をす
等々はベンチマーキング等を利用して成績を上げて
る、実際の作業は業者と生産者が自分の農場の中で
います。日本国内でのベンチマーキングに参加して
やるということになった。24時間で100kgの豚を1万
いる方々はまだ少ないというのが現状ですので、こ
頭処理できるという装置が既に開発されている。今
の機会に豚事協のベンチマーキングにより多くの方
我々が一番困ることは、もし口蹄疫等が発生したら
にご参加いただき、自分の経営の立ち位置がどこに
自分の敷地内に埋却しなければいけないということ。
あるのかしっかり確認して戴きたい。
」と述べた。
是非日本でもこのようなことを進めて欲しいという
ことを行政にも訴えている。
稲吉理事長による講演「ベンチマーキングに対す
TOPIGSの成績について:全体で350頭輸入したう
る豚事協の考え方と最近の話題」では、日本におけ
ちの50頭を入れた1つの農場の交配頭数は初産が49
るベンチマーキングの歴史、差額関税制度、口蹄疫
頭、2産目48頭、3産目48頭、4産目46頭、5産目
等による斃獣の新しい処理方法、そしてTOPIGSの
45頭、6産目40頭という成績で、種豚の残存率が高
成績についての説明があった。
い。種付け分娩率も非常に高く、初産および2産は
ベンチマーキングについて:豚事協が発足した10
100%、6産で95%という結果だったが、それは非常
年前に是非ベンチマーキングをやろうということに
に発情が分かり易いからである。従って発情再帰日
なりPig Champのウインドウズ版を作って日本でベ
数も非常に良く、平均で5.44日、総産子数の平均は
ンチマーキングをやろうとしたが実現しなかった。
14.96頭、哺乳開始頭数の平均は13.62頭、離乳頭数の
その後、ハイポーのソフトを利用してやろうとした
平均は11.97頭であった。12頭離乳できる豚であると
が、あまり数が増えずにそのままになっている。全
私達は理解している。面白いのはTOPIGSが推奨す
豚時代にやっていた経営セミナーを林さん(群馬・
る大ヨーク・TEMPOを交配すると産子数が多くな
㈱林牧場)や岡部さん(群馬・㈱オーケーコーポレ
るとTOPIGS社より言われたが、実際に試してみた
ーション)が引き継いで、現在では40社くらいが参
らハイポーと比較し2.5頭くらい産子数が多かった。
加してベンチマーキングをやっている。その他にも
いくつかのグループがあるが、若干内容(定義)が
異なっている。是非日本の養豚業界のために統一し
た物差しを構築して戴きたい。
差額関税制度について:現在約80万トンの豚肉が輸
入されており、本制度が正常に機能すれば年間税収が
1,600億円(80万トン×200円/ kg)見込まれるにもか
かわらず、先般の財務省の説明によれば180億円しか
上がっていない。国産豚と畜数が65,000頭/日前後と
少ないのにも拘らず豚価が400円前後と安いのは、関
左:呉克昌氏、右:山根逸郎氏
4
続いて、山根逸郎氏(
(独)動物衛生研究所 ウイ
グを始めることになり、JASVの正会員が関わってデ
ルス・疫学研究領域 主任研究官)による講演「養豚
ータを集めアドバイスをする窓口となることを提案し
業界におけるベンチマーキングシステム“Pig INFO”
た。集計結果からは自分の立ち位置や何を改善すれば
の開発と応用」が行われた。
良いかということはわかるが、それをどう改善したら
ベンチマーキングとは「成績向上のため、現場から
いいのかということまでは分からないため、その部分
情報を得て、企業の各種成績を継続的に測定・比較す
についてJASVからアドバイスすることになる。
ること」である。現在、養豚業界内で言われているベ
農場を見ていない段階で細かいアドバイスはリスク
ンチマーキングには農場内生産データ管理型の「Pig
があるため出来ないが、専門獣医師が関わることによ
CHAMP社・PigCHAMP」
、
「全農・PICS」
「日清丸紅・
り、基本的なアドバイスと参加者との相互連携で改善
MN FIS」などがあるが、これらは“どの母豚に種付
のための良い方向にもっていきたい。そのために、デ
けをしたらいいのか”“産歴の分布はどうなっている
ータの正確性の確認と対応、ツリー分析による優先改
か”などの母豚の管理のためのソフトである。本来の
善項目へのアドバイス、その項目の要因や改善方法に
意味のベンチマーキングとは、同じ定義で複数の農場
関する一般的な助言をし、確実な改善に向けての先導
から取ってきたデータを農場ごとに比較して、優れて
役、水先案内役を努める。
いる点や改善点をみていくという農場間データ比較型
ベンチマーキングに参加することにより、①Pig
のもので、今日紹介するPig INFOはこのタイプであ
INFOで自農場の立ち位置をはっきりと確認し、改善
り、農家への生産性改善のアドバイスや疫学調査が可
項目を明確にして、優先順位を付けて対応できる、②
能である。
JASV獣医師によるアドバイスで、より確実な進路決
Pig INFOの特徴としては、入力データが非常に単
定ができる、③専門獣医師との相互反応で影響しあい、
純である、エクセルを母体として作成されているため
効果を高め合うことができる、④その取り組みから今
ソフトのインストールなどが不要である、感受性分析
後の食の安全の確保に向けて、新たな展開が期待でき
が可能であるなどが挙げられる。参加者から出てきた
る、と説明した。
データを集計するだけではなく、この部分をこれだけ
改善すればこれだけの増出荷になり、これだけの増収
その後、活発な質疑応答が行われ、参加者のベンチ
益が見込まれるというシミュレーションができるとい
マーキングに対する熱心さが窺われた。第一回目(2012
うのが大きなメリットである(Pig INFOについての
年4月∼6月)のデータの提出期限は7月末で、集計
詳細は“ゆめ通信61号”参照)。
結果が出るのは8月である。より多くの組合員がベン
チマーキングに参加し、会員相互切磋琢磨し、生産性
最後に、呉克昌氏(㈲バリューファーム・コンサル
向上を目指してもらいたい。そして集計を重ねるごと
ティング 代表取締役・獣医師)による講演「JASVの
に、参加者の今後の目標が明確になり、成績が改善さ
ベンチマーキングの取り組みと活用方法について」が
れ、より足腰の強い経営基盤を確立してほしい。
行われた。
(東野)
JASVとしては2004年からベンチマーキングへの取
り組みを開始し、現在ではJASVの正会員のクライア
ント101農場のデータを収集・分析している。JASV
ベンチマーキングをより深く解析し、生産者の成績・
経営向上に役立てることを目的に、2010年11月に㈲バ
リューファームコンサルティングおよび㈲サミットベ
テリナリーサービス両社のクライアント約50農場のデ
ータの疫学解析を動衛研の山根先生に依頼した。その
後、山根先生がPig INFOを開発され、現在もより良
いシステム構築を目指して発展を続けている。
今回豚事協でもPig INFOを使ってベンチマーキン
セミナーの様子
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E-mail らの
事務局か
お知らせ
ゆめTOPIGS −F
中鎖脂肪酸「ゆめTOPIGS-F」の販売を開始しました。
が2cc程度です。引き続き元気のない子豚には2∼3
中鎖脂肪酸は人間の(娩出時にぐったりして産まれた)
日(1日1回)飲ませてみてください。それで回復し
赤ちゃんに飲ませたり、お年寄りの点滴剤の中に混入
ないようでしたらその子豚には効果がありませんので
したりして体力回復に利用されています。
飲ませるのは中止してください。
(ご利用の手引2012・23頁掲載)
『ゆめTOPIGS −F』は生れ落ちた子豚の活力維持
回復のために使用します。子豚は生まれてから12時間
䉉䉄䋭䌆㩿ਛ㎮⢽⢌㉄䋩䉕㘶䉁䈞䈩䈇䉎䈫䈖䉐
以内に初乳を十分飲まないと、その後の発育が悪くな
↢ᓟ䋱䋲ᤨ㑆એౝ
䈮䈪䈐䉎䈣䈔ᣧ䈒䇯
ᣧ䈔䉏䈳ᣧ䈇䈾䈬
ലᨐ䈏䈅䉎䇯
ります。“1kg以下の子豚”や“元気のない子豚”に
強制給与して乳首に吸い付く力を強くさせてやれば、
子豚は初乳を十分飲むことができ元気に育ちます。初
産の子豚には全頭飲ませることをお勧めします。また
初産の母豚は乳頭を吸われるほど乳をだしてきます。
使用方法は分娩後できるだけ12時間以内に1回、
“1
kg以下の子豚”や“元気のない子豚”に付属の挿入器
を使って1∼2cc強制給与してください。1ショット
精液希釈剤「リター MAX PB」
国産の精液希釈剤「リター MAX PB」の販売を開始
販売価格は1箱10袋(1袋1ℓ用)入りで6,000円
しました。
/箱(税・送料別)
となります。
(ご利用の手引
メーカーによると、希釈後7日目までの精子生存率は
2012・14頁掲載)
90%以上、精子活力+3以上を保持でき、特に直進性
が高いとしています。豚事協会員による試験では、5日
目までの精子生存率は90%以上で、精子活力+3以上
を保持でき、特に直進性が高いことは確認しました。
発注方法
①別紙発注書に必要事項をご記入の上、豚事協宛てファックスして下さい。
②請求書をファックスいたしますので、指定の銀行口座へ送金して下さい。
③入金確認後、商品を発送いたします。
6
若さで勝負!
青年部通信 43
未利用資源の活用と
創意工夫を考える
高知県 (農)四国デュロックファーム
代表理事 佐竹 宣昭
皆さんこんにちは。四国デュロックファームの佐
竹です。弊社農場は昭和47年に8名程の生産者出資
によりデュロックの生産農場として立ち上げられ、
5年後に父が引き継ぎ今に至ります。現在は母豚600
頭のLWD肉豚生産の一貫経営をしています。
私は27歳まで建設業界で土木監督をしていました
が、建設業界も下火になり、結婚もして子供も産まれ、
“帰るなら今かな”と思い家業を継ぐことにしました。
いつかは父の後を継ぐつもりでいましたが、昔から
いやいや仕事を手伝っている感覚しかなく、いざ本
当に継ぐとなった時はあと何十年もやっていけるの
かという不安でいっぱいでしたが、今はとても楽し
く仕事をしています。
私の農場での担当はというと、昼は糞尿処理に没
頭、夜は打ち合わせ?懇親会??という名の飲み会
に没頭しています。娘には「また飲み会!?」
、息子
には「お父さんばっかりずるい!」
、妻には「うちは
母子家庭です。
」と不満をこぼされながらも、日夜問
わず仕事を楽しんでおります。
私の農場では食品副産物等を乾物換算で飼料全体
の3∼4割給与していたのですが、乾物(乾燥飼料)
やパン粉などの原料が飼料価格の高騰、豚価の低迷
等により引き合いになり、飼料価格につられ高騰し
たことをきっかけに、今季よりリキッドフィーディ
ングシステムを取り入れ、現在堆肥化または捨てら
れている未利用資源を利用し、飼料コストを削減し
ていこうと計画しています。弊社農場は県外からの
副産物等の飼料原料の運送には6円/㎏前後もかか
り、排出業者からの値上げ交渉があった場合にはと
ても不利な状況にあり、このまま続けても原料の高
騰や飼料コストの低減は厳しくなる一方だからです。
それ以外にも自分なりに工夫していることがあり
ます。以前建設業をしていた時、「現場にはお金がた
くさん落ちている。創意工夫しろ!」とよく言われ
ました。視察させていただいた農場で、残渣飼料等
を炊き餌にして給仕しており、加熱することにより
吸収率(要求率)を良くするような工夫をしていま
した。今の配合飼料でマッシュ飼料をクランブル飼
料などに加熱加工する場合2円/㎏前後の加工費用
が発生すると思うのですが、丸粒粉砕したトウモロ
コシを炊きリキッドで給餌することにより、その加
工費用のコスト削減、要求率向上になるのでは!?
など弊社にできる創意工夫を考え、未利用資源の有
効利用や飼料コストの削減に力を入れています。
リキッドフィーディングシステムの導入を検討す
る上で、多くの方々に農場を視察させて頂き、メリ
ット・デメリットなどについて良いアドバイスをたく
さんいただきました。この場を借りてお礼申し上げ
ます。本当に良いノウハウありがとうございました。
最後に、こうして文章を書いている中4月1日より
始まった豚事協ベンチマーキングの詳細が届きまし
た。統一した指標のもとで経営分析し、今農場がおか
れている位置をしっかり把握し、今できる工夫を考え
てこの豚価低迷・飼料高騰・TPP問題などの次々に出
てくる壁を乗り越えていきたいと思っています。そし
て写真に出ている
娘・息子が十数年
後にあとを継ぎた
いと言ってくれた
時(今は全く継ぐ
気 無 し!)
、父か
ら継いだこの経営
をしっかり渡せる
よう経営を安定さ
せていきたいと思
います。
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E-mail バイオマス発電見学とTOPIGS研修ツアーに参加して
技術部長 矢嶋 隆次
3月14日から25日までドイツとオランダに行き、
貯金して備えているのかもしれませんが、皆がそう
ドイツではバイオマス発電プラントを見学し、オラ
とも思えないですし、他所の国のことながら心配に
ンダではTOPIGS本社で“豚と飼料の新マニュアル
なります。
の栄養”に関しての研修を受けてきました。
ドイツの買電単価は17円/ kwで、電力会社に販売
日本でドイツやオランダの天気を調べてみると『3
すると自動的に環境税から電力会社に支払われ、電
月までは雪も残りそう』とのことだったので、トシ
力会社は売電者に支払うこととなっています。銀行
も考えラクダの股引とシャツを大量に準備し、豚舎
はバイオガスプラントに設備投資する業者には投資
の入出は必ずシャワーイン・シャワーアウトが義務
資金を優先的に融資しているとのことです。政府が
付けられているので風邪薬を大量に用意して、旅行
保証する投資先のようなものですから銀行も安心し
カバンをパンパンに膨らませて出かけました。でも、
て融資できるのでしょう。現在ドイツのバイオマス
行って見ると、ラクダの股引はドイツの初日だけ、
発電は7,000 ヶ所を超しており、大型化しているとの
シャツはとうとう着ずじまい。日本の方が余程寒い
こと。設置戸数の増加はここ4∼5年の電気料金の
と、重たい荷物を持ってきたことに臍を噛みました。
高騰に伴い顕著になってきています。
最初(15日午前)に訪問した農家はトウモロコシ
●バイオマス発電見学
の(茎や葉を含めた)全粉砕サイレージとトウモロ
ドイツでは『昔はトウモロコシは気候が寒すぎて
コシ(種実)のサイレージ、それに豚の糞尿(1割程度)
作付けされていなかった』とのことですが、品質改
を混合して生産資材としています。発酵槽(写真①)
良により最近はトウモロコシ畑が格段に多くなり、
を2基所有しており(投資額は約1億円)、投入する
これが(人間の食べるものを使うことに抵抗はある
有機質の量は350kw / hの発電で1日12トン(1日
が)バイオガスの生産材料として使われるようにな
12回投入)。投入量の大半は上記トウモロコシ全粉砕
ってきています。またドイツでは売電すると投資額
サイレージで、トウモロコシ(種実)のサイレージ
に対して年利7%に相当する金額で20年間買電して
もらえるとのこと。これがバイオマス発電やソーラ
ー発電普及の要因となっています。設備投資をして
も10年くらいで償却は終わり、残りの10年は年金の
足しになるから投資する人が多いとのことでした。
しかし稼げる間はいいのですが、耐用年数が終了し
て設備をたたむときの設備の廃棄費用は誰が負担す
るのかは聞きそびれました。バイオマス発電もソー
ラー発電も結構大きな設備が必要ですので、廃棄費
用だけでも膨大な金額になるのではないのでしょう
か。ドイツ人は几帳面で働き者と聞いていますので
写真① 発酵槽(手前が一次、後ろが二次発酵槽)
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写真② ソーラー発電(倉庫の屋根が全てソーラーパネル)
写真③ 液肥散布トラクター
は300kg /日程度。それに豚の糞尿が2トン程度混
が目立ちました。また驚いたのは、自然やバイオマ
入されます。醗酵残渣(現地では“消化液”と称し
スを使ったエネルギーで経営改善を指向している農
ていました)は堆肥として畑に散布(畜舎の周囲は
家は大きな投資が伴うのにもかかわらず、経営者が
畑ばかりで散布地に苦労はしない模様)
。豚の糞尿の
若かったことです。特に代表的な若い生産者を選ん
みでバイオマス発電をしているところはありません。
で訪問先に設定したわけでもなさそうでしたが、一
豚の糞尿のみではエネルギーが少なく、メタン菌が
様に経営者が若かったのには驚きました。ある養豚
十分な醗酵をしないためです。穀物サイレージの代
場では一線を離れた経営者(父親)が出てきて話を
わりに食品残渣を使用している農場もあるとのこと
してくれましたが、
『今時のことは俺には皆目わから
でした。売電のほかに、発電したときに出る熱エネ
ない』とのことでした。
ルギーの15%くらいを利用して(冬季は)発酵槽の
16日も養豚とバイオマス発電を経営しているとこ
液温を38度に維持することに使っています。残りの
ろを訪問。ここはトウモロコシの種実をサイレージ
85%の熱エネルギーは地域の農家14戸に温水として
にした後粉砕、ジャガイモや小麦の澱粉のサイレー
供給して収入を得ています。この農家では、ソーラ
ジと合わせてベースミックスを混合。液餌で飼育し
ー発電も利用していました(写真②)。ドイツは日照
ていました。肉豚の販売価格は1頭15,000円程度との
時間が日本より20%ほど少ないとのことですが、ソ
ことで、15,000円/頭を切ると厳しいとのことです。
ーラー発電はかなり普及しているように見えました。
バイオマス発電では、余熱を温湯にして35万羽のブ
ドイツでは太陽・水・空気の自然エネルギーによる
ロイラー生産農場に供給し収入を得ていました。た
電気の供給量は原発を含む全電力の3%を超えてい
だ、写真のような液肥散布トラクター(写真③)が
るとのことです。
あちこちで見られましたが、平坦な畑ばかりのオラ
15日はこのほかに牛の糞尿のみでメタンガスを得
ンダやドイツでは稼動可能でしょうが、山間地に畑
る(牛糞にはエネルギーも窒素も少ないから無理だ
の多い日本では無理ではないかと思えました。
と思うが)バイオマス発電所を建設している1,000頭
その後はモーラ本社(ソーラーパネルやバイオマ
規模の搾乳農家、風力発電(8基所有)に注力して
ス発電設備を販売する会社)を訪問、発電設備の倉
いるジャガイモ生産農家を訪問。訪問先は当然のこ
庫などを見学。ソーラーパネルは、今まではシャー
とながら、道中、バイオマス発電の発酵槽があちこ
プの独壇場でしたが韓国や中国製品の追い上げが激
ちに見られ、
(屋根が広い)畜舎にはソーラーパネル
しいことを認識させられました。
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E-mail その後もバイオマス発電関連で多くの農家を見学
⑤ 2シフトより一貫生産のほうが利益を上げられる
しましたが、日本で実施するにはまず①発電された
が、オランダでは子豚販売による2シフトとなっ
電気の買取価格の保障をどうするか(ドイツでは3%
ている。しかし子豚の販売先を固定させることが
の環境税の中から支払われている)
、②メタンガス
多い。
⑥ 育種価の高い豚(良い遺伝子を持っている)の子
の生産に必要なエネルギーを何で供給するか(ドイ
豚は内臓が大きい。
ツはほとんどがトウモロコシや飼料用小麦などの穀
⑦ 飼料は豚の口に入るまでさまざまの過程を経てい
物)
、③メタンガスの発酵残渣(液肥)をどう処分す
る。特に原料の保管状態の確認、粉砕粒度(直接
るかなど、課題は多く残されています。
FCに影響する)、サプリメントの混合精度は重要。
⑧ 若雌の育成には(今までも同じだったが)特別に
●TOPIGS研修
注意している。
TOPIGS本社では“豚や飼料の新マニュアルの栄
養”を主眼に置いた講習が大半でした。初日に2時
⑨若雌の初回交配はウイート(小麦)
・バーレイ(大
間ほどオランダの畜産事情に関して説明があった後
麦)主体の飼料では240日齢135kg、コーン(トウ
は、遺伝子改良の講義があり、講義終了後はウイッ
モロコシ)
・ソイビーン(大豆粕)主体の地域では
トロックス農場を訪問しました。TOPIGS独特の離
210日齢140kgと異なった基準が初めて示された。
乳後に痩せた母豚を見せられて『これじゃ日本では
⑩ 母豚は離乳後85日齢までにボディコンディション
発情は来ない』と驚かされ、離乳後60日くらいには
を回復させていかないと生時子豚の均一性が維持
雌独特の『ふっくらした体型』に戻っているのを見
できない。
せられて、
『こんな種豚があるんだ』と驚かされまし
他には筋肉繊維は2層あり、第2層目の筋肉繊維
た。2日目からあとは栄養学者の講義でした。今回
が大きいと肥育期の子豚の増体が大きいとのことで
の参加者は私以外は飼料会社の研究所で栄養に携わ
したが、このようなことは初めて聞いたので意味が
っている方ばかりでしたので、流石に栄養に関する
飲み込めませんでした。
質問が多く、多分講師が準備した講義内容の半分程
今回はプロビミとデンカビットという国際的に活躍
度は(時間切れで)残ってしまったのではないかと
する飼料会社の訪問も組んでくれていましたが、日本
思われます。
の飼料会社とはかなり異なり、いかにコストの安い飼
講義内容で印象に残ったことは(栄養の部分を除
料を生産農家に届けるかが使命のようで、餌付け用や
いて)
、下記のようなことでした。
人工乳前期用なども脱脂粉乳はおそらくゼロ、ホエー
① 世界的な競争に負けないようコストダウンには最
と濃縮大豆たんぱく、血しょうたんぱく(欧州では安
善の努力を払っており、毎年出荷豚1頭あたり185
い)程度で配合されていて、
(食べてみたところ)甘
円のコスト削減を実現している。
味もほとんどない代物でしたが、子豚は(満足するほ
どではないものの)そこそこ育っていました。
② 産子数の増加により子豚の生時体重が小さくなっ
ているが、TOPIGSは1,000g/頭以上で活力があ
プロビミではレスキューデッキ(保温装置を備え
れば育つ能力があるので問題ない。
たコロホームのような考え方の保育装置)やレスキ
ューカップ(液体飼料の自動給餌器)なるものの開
③ 動物愛護の観点から子豚の死亡の減少は育種改良
発に力を入れており(保育用のミルクは前述のよう
の重要なテーマとなっている。
④PS販売価格は25kgの体重で150ユーロ(16,000円)
なもの)、生存産子数の増加から人工保育の要求は広
まっているとのことでした。
と廉価でした。
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図① 分娩柵を使わない分娩舎の設計図
写真④ フィードステーション
デンカビット社も同様で、ベビーウイン(3kg弱
ランダのそれに対する研究はかなり先を行っている
の子豚用ミルク)
、ラクトウイン(子豚用ミルク・ヨ
ように思います。
ーグルト飼料)
、プレミアム(液体・ペレット併用飼
しかし豚舎の設備に関する価格がオランダと日本
料)などを開発しており、
どこの世界の飼料会社も(利
では極端に違います。例えばオランダでは結構普及
益を取りやすい)子豚飼料の開発に力を入れるのは
している、豚が個別に採食できるフィードステーシ
変わりないことを感じました。
ョン(写真④)も、コンピューターシステム込みで
しかし同時に、我が組合の“ゆめミルク5・6・7”
一基20万円とのことでしたが、日本では60万円くら
も(高価な脱脂粉乳の使用を抑えた)同様の考え方
いになってしまうでしょう。この農場では3年前に
の配合を指向しないと世界的なコストダウン競争に
母豚250頭の子取り生産から1,000頭の子取り生産に
追いついていけないだろうと感じました。オランダ
拡大したと言っていました。大変な設備投資金額に
の養豚家は餌付けや人工乳前期用飼料給与時点の発
なり倒産しそうだと笑っていましたが、それでも総
育だけで見ているのではなく、トータルで発育を見
額3億円、母豚1頭にすると40万円程度です。日本
ているとのことで日本との違いを感じました。
なら100万円は下らないと思います。なぜオランダと
プロビミやデンカビットが開発しているような飼
日本では施設や設備にかかる資金がこれほど違うの
料を日本の養豚家に広めるには養豚家の意識改革か
か不思議でなりませんでした。オランダや他の国で
らはじめないと無理だろうなと思いました。
動物愛護の観点からの研究開発は進むと思いますが、
最後の23日にはワーゲニンゲンUR大学のスターク
日本では普及させるには設備費が大きな障害になる
セル豚改良センターを訪問しました。ここでは研究
と思いました。オランダでもバイオマスプラントの
農場の内部視察が主でした。左の図(図①)は分娩
発電を実験的に行っていましたが、ドイツとは異な
柵を使わない分娩舎の実験のための設計図ですが、
り普及するにはいたっていません。最大の要因は政
動物愛護の観点からの飼育方法についての飼育設備
府のクリーンエネルギーに対する対応の違いのよう
の実験が多く『目から鱗』の思いをしました。日本
です。やはり手厚い保護政策で守られているドイツ
が豚の飼育に関して動物愛護の観点からの制約を大
とは国情がかなり異なるようです。
きく受ける時代が来るかどうか分かりませんが、オ
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E-mail ≪鬼胡桃≫ ॠ‫ڠ‬
猪は雑食ですから何でも食べ
ます。どんぐりや鬼胡桃はもと
より、口に入り栄養になるもの
なら何でもです。
『蝮の沢に猪あり』と言い、猪
は蝮も大好きです。猪の肩の脂が厚いのは、蝮
に咬まれても身体に毒が回らないようにするた
めです。脂肪は蝮の毒さえ体に回させないので
すから、ワクチンや抗生物質なども脂肪の厚い
ところに注射すると、まるで効果がありません。
΋Ȝ΢Ȝ
イベリコ豚はスペイン南部に生息している
『イベリコ地方の豚』という土着品種です。も
ともと食べさせるものが無いから『どんぐり』
など手に入る穀物はなんでもを食べさせていま
● ● ●
した。サッパリ味はこの影響です。珍しいので
『差別化豚肉』になってしまいました。
鬼胡桃を食べるには、土中に1∼2ヶ月埋めて
外皮を腐らせ、掘り出したあと洗って乾かし、フ
ライパンで軽く炒って鬼皮が割れやすいようにし、
トン カ チ で 割 り、
ドライバーでこじ
開けて中の実を取
り出します。くる
み割り人形は通じ
ません。油分が多
いので昔は冬場の
非常食でした。
豚 事 協 の 年 間 行 事
● ● ●
* * *
理 事 会
第
1
回
平成24年1月20日(金)(東京)
第
2
回
平成24年4月20日(金)(東京)
第
3
回
平成24年7月20日(金)(東京)
第
4
回
平成24年10月26日(金)(東京)
支 部 会
中 部 支 部
平成24年6月予定
北 海 道 支 部
平成24年6月予定
東 北 支 部
平成24年7月予定
関 東 支 部
平成24年8月予定
中 四 国 支 部
平成24年9月予定
九 州 支 部
平成24年10月予定
沖 縄 支 部
平成24年11月予定
青 年 部
第1回幹部会
平成23年12月2日(金)(東京)
第2回幹部会
平成24年3月16日(金)(東京)
ベンチマーキングセミナー
平成24年3月16日(金)(東京)
全 国 研 修 会
平成24年6月7日(木)∼8日(金)(名古屋)
海外視察研修
平成24年7月8日(日)∼15日(日)(アメリカ)
技 術 研 修 会
平成24年9月28日(金)(東京)
女 性 部
女性部セミナー
編 集 後 記
未定
※青字は平成24年5月1日以降の行事となります。都合によっては中止となる可能性も
ありますこと、ご了承下さい。
12
●豚事協でも4月からベンチマーキ
ングを開始しました。ベンチマーキ
ングは、参加者間での自農場の立ち
位置を確認し、経営改善の指標にす
るためのものです。参加者の中での
順位を決めるものではありません。
個人の成績を公表することは一切あ
りませんし、出来る限り定義に沿っ
て正確なデータを出さなければ改善
のための指標とはなりません。
規模が大きいのでデータを取るの
に手間がかかる、データを出すのが
恥ずかしい等の声を聞くことがあり
ます。現在の経営状態に満足してい
る方は参加の必要がないかもしれま
せん。しかしながら、データを取る
ことはベンチマーキングに関係なく
経営状態を見るためには必要不可欠
なことです。そしてデータを出すの
が恥ずかしいと思っている人こそ経
営改善の近道をより容易に知ること
ができるベンチマーキングに参加す
るメリットが大きいのです。
数値で見ることにより、より具体
的にそして明確に経営状態を知るこ
とができますし、従業員の指導も容
易になるのではないでしょうか。目
標を設定し達成できれば、経営者だ
けではなくスタッフにとってもやる
気につながります。そして現在の経
営状態に満足していても、さらなる
レベルアップのためにベンチマーキ
ングに参加したいという方の参加が
大歓迎であることは間違いありませ
ん。それらの方々が参加することに
より、参加者全体の底上げに繋がり
ます。多くの方々のご参加をお待ち
申し上げます。
●口蹄疫の被災農家の会員の方から
「出荷が始まった」という報告を受
けました。「病気がないために成長
が早い」と嬉しそうに語る眼差しが
印象的でした。口蹄疫による被害は
甚大なもので精神的にも肉体的にも
大変な思いをされたことは言うまで
もありませんが、マイナスばかりで
はなく、プラスの面もあることが救
いになります。今後も嬉しい報告が
届くことを期待しています。