羊蹄山麓地域 - ニセコ サイクル.com

羊蹄山麓地域
自転車走行環境向上ガイドライン(案)
平成 26 年 3 月
自転車走行環境向上プロジェクト検討部会
《目次》
CHAPTER 1 ガイドラインの概要
1
1-1. ガイドライン策定の趣旨
1
1-2. ガイドラインの位置づけ
1
1-3. ガイドラインの適用範囲と使い方
2
(1) ガイドラインの適用範囲
2
(2) ガイドラインの使い方
2
CHAPTER 2 羊蹄山麓地域における自転車走行環境の現状と課題
3
2-1. 自転車走行環境の現状と課題
3
(1) 自転車走行環境の現状
3
(2) 自転車走行環境の課題
5
2-2. 国際大会等のサイクルイベント誘致の現状と課題
9
(1) これまでの取組みの現状
9
(2) 国際大会等の誘致の課題
10
2-3. 国内・国外の PR 戦略と受入体制の現状と課題
11
(1) これまでの取組みの現状
11
(2) PR 戦略と受入体制の課題
12
2-4. 課題解決の必要性
CHAPTER 3 自転車走行環境向上のための基本方針
3-1. 羊蹄山麓自転車走行環境向上のための基本方針
13
14
14
(1) 目指すべき姿
14
(2) 基本方針
15
3-2. 自転車走行環境の向上メニュー
CHAPTER 4 自転車ネットワークづくりの考え方
4-1. 自転車ネットワークの考え方
16
17
17
(1) 羊蹄山麓における自転車ネットワーク設定の考え方
17
(2) 自転車ネットワークの対象利用者
17
(3) 自転車ネットワーク形成のルートの種類
18
4-2. 自転車ネットワークづくりの戦略
22
(1) 短期的な向上メニュー
22
(2) 中・長期的な向上メニュー
25
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
CHAPTER 5 自転車走行空間づくりの考え方
5-1. 自転車走行空間の考え方
26
26
(1) 走行空間の基本的な考え方
26
(2) サイン設置の基本的な考え方
28
5-2. 自転車走行空間づくりの戦略
32
(1) 自転車走行空間
32
(2) サイン設置
39
CHAPTER 6 自転車走行環境向上の持続的な仕組みづくりの考え方
6-1. 維持管理の考え方と戦略
41
41
(1) 維持管理の基本的な考え方
41
(2) 維持管理の戦略
42
6-2. 拠点施設づくりの考え方と戦略
44
(1) 拠点施設の基本的な考え方
44
(2) 拠点施設づくりの戦略
45
6-3. 情報発信の考え方と戦略
49
(1) 情報発信の基本的な考え方
49
(2) 情報発信の戦略
50
6-4. 地域の取組み展開の考え方と戦略
54
(1) 国際大会等のサイクルイベント開催
54
(2) 国内外へ向けた PR 戦略
58
(3) 受入体制づくり
60
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
Chapter
1 ガイドラインの概要
1-1. ガイドライン策定の趣旨
平成 24 年 12 月に開催された「ニセコ・倶知安地域の将来と地域課題を考える会」において
提言された、自転車走行環境向上プロジェクトを受け、多様なニーズへの満足度を上げ、地域の
自転車に対する取組の知名度を国内外にアピールするために、同地域における自転車走行環境の
向上を図る。
自転車走行環境の向上には、国、道、市町村、地域団体等様々な主体が参画するため、地域で
統一した考え方等について「羊蹄山麓地域自転車走行環境向上ガイドライン」を策定した。
本ガイドラインでは、自転車走行環境向上を図るため、自転車ネットワークづくり、自転車走
行空間づくり、及び持続的な仕組みづくりの考え方について取りまとめている。
1-2. ガイドラインの位置づけ
本ガイドラインは、「羊蹄山麓地域の自転車走行環境の向上」の実現にあたり、具体的な整備
や取組みに関わる基本的な考え方や状況の応じた整備基準等を定め、関係する各主体により、安
全・快適な自転車走行環境の向上に向けた方針を示すものである。
なお、本ガイドラインは、以下の構成により整備・取組みの方向性等を整理している。
Chapter2:羊蹄山麓地域における自転車走行環境の現状と課題
課題解決の必要性
Chapter3:自転車走行環境向上のための基本方針
課題解決の戦略
Chapter4:自転車ネットワークづくり
【羊蹄山麓における自転車ネットワーク】
Chapter5:自転車走行空間づくり
【自転車走行空間、サイン設置】
Chapter6:自転車走行環境向上の持続的な仕組みづくり
【維持管理、拠点施設づくり、情報発信、地域の取組み(国際大会
等のサイクルイベント、PR 戦略、受入体制)
】
1
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
1-3. ガイドラインの適用範囲と使い方
(1) ガイドラインの適用範囲
本ガイドラインの適用範囲は、羊蹄山麓全体として広域的な自転車ネットワークを形成する
国道や道道、町道の全てにおいて適用を基本とする。ただし、地域内の自転車ネットワーク。
走行空間づくりや自転車に関する取組みの持続的な仕組みづくりについては、地域の実情や独
自の取組を勘案した上で適用する。
(2) ガイドラインの使い方
本ガイドラインは、自転車ネットワーク・走行空間づくりならびに国際大会などのサイクル
イベントの誘致、サイクリストへの戦略的 PR、サイクリストの受入体制を計画・整備・管理す
るにあたり、技術的な基準や留意事項を確認するものである。
2
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
Chapter
2 羊蹄山麓地域における自転車走行環境の現状と課題
2-1. 自転車走行環境の現状と課題
(1) 自転車走行環境の現状
後志管内は、北海道内でも有数の観光地を抱え、観光入込客数が年間2,000万人を超え
る地域であり、観光産業は地域経済活性化の基軸となっている。特に、羊蹄山麓地域は、田園
風景や自然景観のなか、スポーツサイクルを楽しむ場所として人気のある地域であり、国内外
から多くの人が訪れており、特に国道や道道を中心に、地域のシンボルである羊蹄山を一周す
るコースの人気は高い。
また、近年、観光客を対象としたレンタサイクルの事業展開が活発化しているほか、地形や
自然景観など地域資源を活用したマウンテンバイクやロードバイクなど“羊蹄山麓地域らしい”
サイクルイベントが活発化・多様化している。
図 2-1 印象に残っているサイクリングルート
(台)
1600
1400
1424
外国人客
1200
11%
1000
932
800
600
400
564
道外客
40%
道内客
49%
200
0
H21
H22
H23
図 2-2 ニセコ町レンタルバイク利用実績
図 2-3 ニセコ町レンタルバイク利用形態
3
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
以上のように、羊蹄山麓地域は、近隣の洞爺湖までのサイクリングなど、ロードバイクによ
る中・長距離のサイクリングを楽しむスポーツサイクルから、地域内の観光地・観光施設を自
転車で巡る観光客まで、幅広い利用者が自転車を楽しんでいる地域である。また、サイクリス
トによる評価は、総合的な満足度は高く、特に沿道景観や観光地に対する評価は高い。ただし、
サイクリストにとって必要な気象や移動など情報提供に関する満足度が低いほか、走りやすさ
の重要度は高いが満足度は低い傾向にある。
全体
0%
20%
凡例
観光地の情報【73】
情報
気象情報【72】
不満
走 行 環境
道路の走りやすさ【77】
42.5%
6.9%
休憩施設の配置等【74】 2.7%
やや満足
44.4%
21.1%
18.2%
29.9%
32.4%
16.2%
13.7%
22.5%
35.2%
100%
満足
15.3%
43.7%
16.9%
9.1%
80%
34.2%
20.8%
4.2%
60%
どちらとも
言えない
やや不満
9.6%
移動情報【71】 1.4%
標識のわかりやすさ【71】
40%
12.5%
11.3%
35.2%
8.5%
33.8%
9.1%
36.5%
12.2%
2.6%
沿道景観【76】 1.3% 10.5%
観光地
交流
40.8%
44.7%
4.2%
観光地【72】
おもてなし【70】
22.2%
48.6%
25.0%
52.9%
10.0%
総合評価【58】
総合評価【58】
36.2%
27.1%
56.9%
6.9%
図 2-4 ニセコ羊蹄エリアの評価
5.00
沿道景観
観光地
4.00
満足度レベル
休憩施設の配置等
観光地の情報
道路の走りやすさ
移動情報
3.00
標識の
わかりやすさ
気象情報
2.00
1.00
0.00
0.50
1.00
重要度(期待度)レベル
図 2-5 ニセコ羊蹄エリアの評価(満足度×重要度)
4
10.0%
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) 自転車走行環境の課題
ロードバイク等のスポーツサイクリストからレンタサイクルによる観光客まで、羊蹄山麓地
域の自転車走行環境は、多種多様な利用がなされている一方で、幅広い利用者が安心に、かつ
楽しく、羊蹄山麓など地域資源を満喫しながら利用できる自動車走行環境として、以下の課題
解決が必要となっている。
① 自転車走行空間ネットワーク化による整備の必要性
羊蹄山麓地域の地域資源を活用したサイクルイベントが多様化し、地域資源である点と点
を結ぶ国道や道道を利用したイベントニーズが高まっているほか、羊蹄山麓の周遊ルートに
対するサイクリングニーズは高いが、自転車利用において線的・面的な部分においてネット
ワークや連続性が欠けている箇所が存在している。
 面的な整備による羊蹄山を一周する自転車走行空間のネットワーク形成
 地域間ネットワーク形成や自転車走行空間としてのさらなる魅力(価値)の向上・充実化
写真 2-1 道を利用したサイクルイベント
写真 2-2 ネットワーク上の課題(連続性の未確保)
5
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
図 2-6 サイクルイベント等の利用ルート
6
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② 安全・快適な自転車走行空間整備の必要性
サイクリストの声として、ネットワーク形成に重要な役割を果たす国道5号などでは、路
肩の狭さや、交通量の多さと大型車とのすれ違い時の危険性、北海道特有の道路排水施設に
よる走行障害などが挙げられているほか、自転車の車種により走行位置が大きく異なり、通
常の自転車規則とは違った地域独自の使われ方が存在している。
 路肩拡幅による快適な自転車走行空間の形成(舗装面の凹凸や雨水桝蓋等の改善も含む)
 車種別の安全に通行することができる自転車走行空間の形成
 自転車走行空間の線的なネットワーク形成
 積雪寒冷地特有の施設整備への対応や自転車関連施設の冬期対応
図 2-7 危険箇所(地域住民等自転車利用者)
写真 2-3 国道における大型車通行
7
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
③ 自転車走行を支援する情報提供の必要性
サイクリスト、特に、羊蹄山麓地域を初めて訪れたサイクリストやレンタサイクルを利用
する観光客が自由度の高い自転車走行を行うためには、適切・的確な情報提供が必要である
が、サイクリストを対象としたアンケート調査では、情報提供に関しての評価は全体的に低
く、特に周辺の案内情報や経路情報に関する情報提供に関する重要性の声が多い。
一方で、支笏洞爺国立公園に属する羊蹄山麓地域は、地域が一体となった景観づくりの取
組みを進めており、羊蹄山麓の美しい景観に配慮した自転車走行を支援する標識類の設置が
求められている。
 自転車走行ネットワーク形成を支援する情報提供
 地域同士の連携や協働、ネットワークを意図した情報提供
 自転車利用者ニーズに応えるための情報提供
 地域のシンボルである“羊蹄山”を中心とした自然景観に配慮した情報提供
20%
0%
全
周辺案内標識【76】
5.3%
規制情報【73】
5.5%
経路情報【76】
5.3% 10.5%
15.8%
やや不要
80%
61.8%
30.1%
34.2%
64.5%
19.7%
24.0%
駐輪場情報【73】 4.1% 8.2%
不要
17.1%
30.1%
交通情報【75】 2.7%
5.3%
60%
40%
29.3%
28.8%
38.7%
27.4%
どちらとも言えない
やや重要
図 2-8 情報提供の重要性
8
31.5%
重要
100%
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2-2. 国際大会等のサイクルイベント誘致の現状と課題
(1) これまでの取組みの現状
羊蹄山麓地域は、国内有数のロードバイクレースである「ツール・ド・北海道国際大会」が
道南で開催される際にはコースとして組み込まれる。また、ニセコ町内のペンション街に特設
されたコースで小学生からエキスパートまでクラス毎の周回レース「クリテリウムニセコ」、
200km の長距離コースや羊蹄山一周 60km コースなど参加者のレベルに合わせて参加できる
「ネイチャーライドニセコ」、年々参加者が拡大しているロードレース「ニセコ HANAZONO
ヒルクライム」など、地域の自然環境・景観を活かした多様なサイクルイベントが開催されて
おり、設定コースならびに参加層が幅広い。
また、スイム・バイク・ランニングの 3 種目を連続して行うトライアスロン競技の中で最も
過酷となる「アイアンマンレース」の国内開催では、全国各地の候補地のなかから、洞爺湖・
羊蹄山麓が注目され、2013 年 8 月の開催が決定している。特に、トライアスロン競技は、マ
ラソン愛好家のネクストチャレンジとしての参加者が急増、現在、国内の競技人口は約 32 万
人と言われており、大会開催=地域交流の活性化による経済効果や地域一体感の醸成、地域イ
メージの向上などが期待されている。
写真 2-4 ニセコ HANAZONO ヒルクライム
9
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) 国際大会等の誘致の課題
国際大会等のサイクルイベントの開催は、新たな観光振興ツールである“スポーツツーリズ
ム”として、羊蹄山麓地域の自然環境・景観等の地域資源を最大限に活用し、地域特性や実情
に合致した振興策である。一方で、大会開催の誘致に向けては、開催基準や地域内での連携強
化など、効果的な開催に向けた課題が残る。
① 国際大会等の多様なサイクルイベントに対応した走行環境づくり
羊蹄山麓地域で開催されるサイクルイベントは、誰もが参加し楽しめるエンジョイ・イベ
ントから、本格的な国際大会まで様々であり、コース設定や参加者層も異なる。また、サイ
クルイベントを通じて羊蹄山麓地域の自転車走行環境をアピールすることは、更なるサイク
リストを呼び込むこととなり、イベント開催がしやすく、参加者が楽しめる走行環境づくり
が必要である。
 多様なコース設定を可能とする自転車ネットワークの形成
 サイクルイベントの障害となる空間的問題箇所の解消
 サイクルイベントを通じて国内外へアピールする羊蹄山麓地域特有の走行環境づくり
② 国際大会の持続的な開催に向けた体制づくり
国際大会等のサイクルイベント開催に向けては、ボランティアを含め、幅広い地域の協力
なしで成功することは不可能であり、地域内での連携強化ならびにボランティア確保が重要
となる。また、持続的なサイクルイベントの開催に向けては、関係する主体等による体制づ
くりが必要不可欠であり、大会等で構築された体制を維持し、発展することが、今後のイベ
ント開催につながっていく。
 サイクルイベントに関係する既存団体・機関等を活用した体制づくり
 イベント開催に向けた地域内の連携強化
 羊蹄山麓地域の地域資源を有効活用したボランティア確保
10
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2-3. 国内・国外の PR 戦略と受入体制の現状と課題
(1) これまでの取組みの現状
羊蹄山麓地域では、冬期は海外からのスキー客が多く、年間を通じた地域への来訪を目的に、
スキー客への夏期観光の PR などを展開しているほか、国外からのサイクリストを呼び込むた
め、海外のサイクル団体との連携(海外団体の地域内サイクルイベントへの参加)や観光イベ
ントでの PR などの取組みを進めている。
一方、サイクリストを受け入れる地域内の体制としては、観光客が気軽に地域内のサイクリ
ングを楽しむことができるよう、民間ならびに自治体においてレンタサイクル事業が活発化し
ているが、道の駅などサイクリストが情報を得ようと立寄る各拠点では、駐輪場が設置されて
いないなど、地域全体として、“サイクリスト・ウエルカム”の体制づくりは充実していると
は言えない。
写真 2-5 ニセコ町レンタサイクル「グリーンバイク」
11
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) PR 戦略と受入体制の課題
① 多様化するターゲットに対応した戦略的 PR の必要性
羊蹄山麓地域をサイクリング目的で訪れる観光客等は、レンタサイクルを利用する観光客
のほか、スポーツとしてサイクリングを楽しむ中・上級者、日帰りサイクリストから数日以
上滞在の中・長期滞在サイクリストまで、羊蹄山麓地域を訪れるサイクリストの属性・目的・
形態等は様々である。また、サイクルツーリズムの発展に向けては、羊蹄山麓地域を訪れた
観光客等から派生する潜在的来訪者をどのように取り込んでいくかが重要となる。
 ターゲットに合わせた PR の展開
 サイクルイベントを通じた参加者等への地域 PR の必要性
 冬期スキー観光客とリンクさせた PR の必要性
写真 2-6 冬期スキー観光客への PR
② 地域が一体となった“サイクリスト・ウエルカム”な受入体制づくり
羊蹄山麓地域の“地域らしさ”をサイクリストが楽しく味わい、スポーツツーリズムとし
て発展していくためには、地域が一体となり、“羊蹄山麓地域は、地域全体としてサイクリ
スト・ウエルカムです”という体制づくりを進めていく必要がある。また、周辺地域と連携
することで、自転車走行環境の更なる付加価値が生まれてくる。
 地域内での情報共有の強化によるサイクリング地域づくり
 羊蹄山麓地域ならびに周辺地域と一体となり展開していく仕組みづくり
 サイクリストにとって利用しやすいサイクル受入施設の運営
12
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2-4. 課題解決の必要性
羊蹄山麓地域は、観光客の観光施設を巡るレンタサイクル利用から羊蹄山一周など中・長距離
なサイクリング、国際大会などのエキスパートによるサイクルイベントなど、様々な自転車利用
を通じ、サイクルツーリズムとしての地域価値を確立しつつある。特に、羊蹄山麓地域は、冬期
は海外からのスキー客が多く来訪するなど、冬期観光は充実している一方で、夏期の観光資源は
少なく、サイクルツーリズムによる地域価値向上により、年間を通じた観光振興が期待できる。
また、これまでは地域内から発生したサイクルイベントの開催にとどまっていたが、アイアン
マンレース国際大会の開催など、地域外から派生するサイクルイベントが展開されており、地域
外から見た羊蹄山麓地域のサイクルツーリズムとしての価値も向上しているものと思われる。
一方で、サイクルツーリズムで重要な役割を担う自転車走行環境では、前述のとおり、自転車
ネットワーク化の整備や多様なサイクルイベントに対応した走行環境づくりなど地域課題が残っ
ている。そのため、サイクルツーリズムの向上による地域発展にむけては、短期、中長期的な視
点にたち、地域の多様な主体の連携・協働により課題解決を図り、羊蹄山麓地域を訪れるサイク
リストの誰もが安全・快適に自転車走行を楽しめる環境・体制づくりが必要である。
○地域課題
■自転車走行環境の課題
 自転車走行空間ネットワーク化による整備の必要性
 安全・快適な自転車走行空間整備の必要性
 自転車走行を支援する情報提供の必要性
■国際大会等のサイクルイベント誘致の課題
 国際大会等の多様なサイクルイベントに対応した走行環境づくり
 国際大会の持続的な開催に向けた体制づくり
■国内外への PR 戦略と受入体制の課題
 多様化するターゲットに対応した戦略的 PR の必要性
 地域が一体となった“サイクリスト・ウエルカム”な受入体制づくり
課題解決
国内外からサイクリストが訪れるサイクルツーリズムの地域価値向上
(年間を通じた来訪者増による)
総合的な地域経済効果
(地域内連携強化による)
地域一体感の醸成
(冬期以外のアクティビティ)
(ボランティア等を通じた)
コミュニティ活動活発化
(自転車利用拡大による)
夏期の知名度アップ
地域イメージの向上
13
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
Chapter
3 自転車走行環境向上のための基本方針
3-1. 羊蹄山麓自転車走行環境向上のための基本方針
(1) 目指すべき姿
羊蹄山麓地域は、パウダースノーが味わえるスキーリゾートとして国内外で人気のある観光
地である一方、夏期はラフティングなど地域の自然環境を活かしたアクティビティが盛んであ
り、年間を通じてスポーツが楽しめる地域である。特に、近年、地域のシンボルである“羊蹄
山”と地域の基幹産業が織りなす田園風景が混じり合う羊蹄山麓地域特有のローカルスケープ
(地域景観・風景)を楽しみながら、国道・道道等を周回するサイクルツーリズムが活発化し
ているほか、アイアンマンレースの国際大会開催など、サイクルイベントも多様化・活発化し
ている。
サイクルツーリズムによる地域価値向上に向け、羊蹄山麓地域の自転車走行環境の目指すべ
き姿を以下のとおり設定する。
羊蹄山麓地域の自転車走行環境に
『魅力を感じ』『楽しく』
『出会い』
『関わる』
魅力を
感じ
楽しく
(安全・快適)
羊蹄山麓地域
自転車走行環境向上
関わる
出会い
14
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) 基本方針
羊蹄山麓地域における自転車利用・サイクルツーリズムの地域課題を解決し、目指すべき姿
を実現するための基本方針を以下のとおり設定する。
『魅力を感じ』
方針① 自転車走行空間のさらなる魅力(価値)づくり
戦略:羊蹄山を中心とした自転車ネットワークの形成
(自転車ネットワークづくり⇒Chapter4)
『楽しく』
方針② 羊蹄山麓を安全・快適に“走る”走行空間づくり
戦略:多様なサイクリストニーズに応えた空間づくり
(自転車走行空間づくり⇒Chapter5)
戦略:冬期対策を踏まえた協働型の維持管理
(維持管理の考え方と戦略⇒Chapter6-1)
方針③ 羊蹄山麓地域を“見る“”“遊ぶ”ための仕掛けづくり
戦略:サイクリストが利用しやすい拠点施設づくり
(拠点づくりの考え方と戦略⇒Chapter6-2)
戦略:サイクリストの自由度を向上させる情報発信
(情報発信の考え方と戦略⇒Chapter6-3)
『出会い』
方針④ 国際大会等の多様なサイクルイベントが可能な環境
・体制づくり
戦略:持続的な体制による国際大会等のサイクルイベント
の開催
(持続的な開催に向けた仕組みづくりと戦略⇒Chapter6-4(1)
)
『関わる』
方針⑤ 羊蹄山麓地域は“ウエルカム”だと思わせる仕組みづくり
戦略:地域一体となった“ウエルカム“の体制づくり
(国内外へ向けた PR 戦略を受入体制づくり⇒Chapter6-4(2)
)
15
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
3-2. 自転車走行環境の向上メニュー
16
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
Chapter
4 自転車ネットワークづくりの考え方
4-1. 自転車ネットワークの考え方
(1) 羊蹄山麓における自転車ネットワーク設定の考え方
自転車ネットワークの設定の考え方について以下に示す。
 地域のシンボルである「羊蹄山」一周を自転車ネットワークの基本ルートとする。
 ネットワークを形成するルートとして、初心者にもわかりやすく容易なコース設定とする。
 家族向け・初心者向けにも配慮したルート設定が重要であり、傾斜の緩い部分やルート内
の特定部分を「初心者向け部分」として設定するなど、誰もが利用しやすいルート設定を
行う。
 ネットワークを形成する各ルートは、正面に羊蹄山が見える箇所を積極的に取り入れる。
 自転車利用の安全性に配慮し、沿道景観等を楽しむことができるように、山麓・河川沿い
(尻別川河川等)の道路も積極的に活用する。
 羊蹄山を一周しながら、地域内の観光名所に立寄ることが可能となるよう、エリアとして
考えたルート設定を行う(地域として立寄って欲しい地点をルート上に設定)。
 本格的サイクリストも、羊蹄山一周ルート上に配置されている道の駅などの拠点から、洞
爺湖や岩内、蘭越など周辺地域へ足を延ばすことができるようにする。
 市街地内は、通勤・通学自転車での利用も想定し、ネットワークのルート設定を行う。
(2) 自転車ネットワークの対象利用者
羊蹄山麓地域では、自転車ネットワークの利用者として、以下に示すとおり、自転車の利用
レベルに応じて、ハイ・ミドル・ライト・ローユーザーの 4 階層の利用者を想定し、各レベル
に応じたルート設定を行う。
表 4-1 自転車ネットワークの対象利用者(案)
利用者層
定義
ハイユーザー
自分のロードバイクなどで走ることを目的に、頻繁に長距離
走行やサイクルイベントに参加する自転車利用者層
ミドルユーザー
自分のロードバイクなどで、主に観光・レジャーを目的に、
短中距離走行を楽しむ自転車利用者層
ライトユーザー
シティーサイクルのみ所有し、近距離移動に使用している自
転車利用者層(レンタサイクル利用者を含む)
ローユーザー
移動にあまり自転車を利用していない層(レンタサイクル利
用者を含む)
17
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(3) 自転車ネットワーク形成のルートの種類
羊蹄山麓地域における自転車ネットワークは、地域のシンボルである羊蹄山一周をモデルコ
ースとし、前述の対象利用者層のレベルを考慮し、以下に示す4つの異なるルートで形成する。
表 4-2 自転車ネットワークを形成するルート(案)
分類
幹線系
定義
メインルート
羊蹄山一周とモデルコースとしたルート
メインルート
(連携ルート)
羊蹄山麓周辺地域の観光エリア等へ移動できる連携ルート
サブルート
メインルートと接続し、地域内の観光資源や地域資源を周遊
するためのルート
アシストルート
主に初心者向けとして、緩やかな勾配のある区間など、上記
ルートをショートカットするルート
補助系
写真 4-1 メインルートからの羊蹄山
18
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
図 4-1 羊蹄山麓地域自転車ネットワーク(案) 地形図
19
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
図 4-2 羊蹄山麓地域自転車ネットワーク(案)全体図
20
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
図 4-3 羊蹄山麓一周ルート・整備優先区間(案)
21
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
4-2. 自転車ネットワークづくりの戦略
(1) 短期的な向上メニュー
① 羊蹄山一周コースとリンクするルートの確立
初心者や家族向けのルートとして、勾配の厳しいルートなどでは、羊蹄山一周コースとリ
ンクしたショートカット的なルートを確立し、多様な利用者に配慮したコース設定を進める。
ショートカットルート
図 4-4 急勾配区間のショートカット
《メニュー》
急勾配区間:ライト・ローユーザーにとって厳しい勾配のある区間については、ショートカッ
トが可能なルート設定
オプション:農道や河川敷などの自転車走行が可能な区間の活用を検討
22
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② ネットワークルートの明示化
羊蹄山麓地域における自転車ネットワークでは、ネットワークとしての連続性の確保の観
点から、また初心者でも容易にルートがわかるように、視覚的な表示(ブルーレーンなど)
によるルートの明示化を進める。
図 4-5 市街地でのブルーラインによる明示化イメージ
図 4-6 郊外部でのブルーラインによる明示化イメージ
《メニュー》
市
街
地:自転車歩行者道や車道の左端部でのブルーラインによる外側線による明示化
郊
外
部:ブルーラインによる外側線による明示化
オ プ シ ョ ン:自転車の通行可能な路肩の活用区間での明示化
23
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
③ ネットワークに関する情報提供
利用者が容易に位置を把握できるほか、羊蹄山麓地域の基本ルートであることを示す情報
として、ネットワーク上を走行していることを示す情報(ルート名称、拠点までの到達距離
等)をルートに明示化する。
ルート名称
拠点までの距離
マップ上の位置番号
図 4-7 ブルーライン上の情報イメージ(市街地の場合)
《メニュー》
市
街
地:ネットワークのルート上に表示
郊
外
部:景観に配慮し、路面表示を基本としてルート上に表示
オ プ シ ョ ン:地点により路面表示での情報を補足する必要がある場合、情報板の設置を検討(景
観に配慮した情報板の設置)
24
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) 中・長期的な向上メニュー
① 周辺地域と一体となったネットワークルートの確立
羊蹄山麓地域から洞爺湖や蘭越、岩内町までと周辺地域へ足を延ばすサイクリストの利用
向上を目的に、周辺地域を結ぶネットワークルートの整備を検討する。
図 4-8 周辺地域を結ぶルート
《メニュー》
地域内ルート:周辺地域までのルート情報の表示
オプション:周辺地域と一体となったルート表示の検討
25
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
Chapter
5 自転車走行空間づくりの考え方
5-1. 自転車走行空間の考え方
(1) 走行空間の基本的な考え方
本ガイドラインでは、自転車ネットワーク上における自転車の通行位置として『車道の左端
部』を基本として設定し、自転車走行空間の整備やサイン設置を進める。
1) 市街地での走行空間
① 単路
市街地において自転車歩行者道が整備されている場合には、歩行者や日常的な自転車利用
との混在に留意しつつ、自転車の通行位置として設定し、自転車走行空間の整備やサインの
設置を進める。自転車歩行者道が整備されていない場合には、車道の左端部の自転車通行を
基本として、ブルーラインの外側線の設置などを進める。
② 交差点
自転車ネットワーク上にある交差点部の走行位置ついては、自転車走行の安全性を向上す
ることを目的に、ネットワークルートの明示化と合わせ、破線誘導表示(自転車ナビライン)
を設ける。
図 5-1 市街地での単路・交差点の走行空間イメージ
26
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2) 郊外部での走行空間
① 単路
羊蹄山麓地域の郊外部では、自転車ネットワーク上に歩道が整備されている区間が少なく、
このような区間では、車道の左端部や自転車通行が可能な路肩での自転車通行を基本として
整備を進める。ただし、路線や区間・地点によっては、路肩が狭い箇所も存在することから、
自動車交通への注意喚起を合わせて行う必要がある。
② 交差点
特に、国道・道道における信号機の設置されていない交差点部での横断は危険であり、自
転車走行の適切な誘導(破線誘導表示等)ならびに自動車交通への注意喚起(「前方に自転
車横断あり」等の標識)による対策を行う必要がある。
図 5-2 郊外部での単路・交差点の走行空間イメージ
3) 自転車に優しい走行空間
自転車ネットワーク上には、自動車交通の安全性・利便性の向上を目的とした道路施設が
整備されているが、地点・区間によっては、自転車走行の安全性・快適性の障害となってい
る。特に、羊蹄山麓地域では、横目のグル―ビング舗装や除雪対応による排水施設の低位置
など、積雪寒冷地としての道路対策が、自転車走行の障害となっている場合もあり、サイク
ルツーリズムを展開する地域として、自転車走行に優しい道路施設の整備を積極的に進めて
いく必要がある。
27
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) サイン設置の基本的な考え方
1) サイン設置の基本的な考え方
自転車ネットワークにおけるサイン設置の基本的な考え方を以下に示している。
 自転車ネットワークの快適性、安全性を向上させるために、「案内誘導サイン」と「注意
喚起サイン」を設置する。
 レンタサイクル利用の観光客など、初めて訪れた人でも利用しやすいよう、わかりやすい
案内誘導のサインを設置する(わかりやすいルートの表示や一定間隔でのサイン設置)。
 景観に配慮し、かつ効果的な案内誘導・注意喚起を行うため、立体的な路側敷式サインな
ど、サイクリストへ視覚的に訴えるサインの設置を進める。
 自転車利用者に対して提示するサインのほか、国道 5 号などは地域間交流の基幹道路であ
り、大型交通も多いことから、自動車ドライバーに対して自転車の存在を注意喚起する「自
転車注意」
「自転車多発地帯」などのサインを設置する。
 自転車利用者が現在地等を把握できるサインを設置するとともに、サイクリングマップと
のリンクを図る。
 サイン設置にあたっては、視覚的に工夫されたシンプルなデザインや配置にするとともに、
羊蹄山麓の景観に留意し、沿線各自治体の景観条例等を参考に、着色や色彩等の検討を行
うものとする。
28
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2) サインの種類・役割と配置
本ガイドラインでは、サイン機能の種類として、自転車走行環境の利便性を向上させるた
め、サイクリストが目的地に円滑に周遊するための「案内誘導サイン」と、サイクリストの
安全性を向上させるために、ルート上の危険箇所等を利用者が事前に認識するための「注意
喚起サイン」の 2 種類を設定する。
① 案内誘導サイン
羊蹄山麓地域での「案内誘導サイン」の種類・役割や配置イメージは、下表に示すとおり
である。
種類
役割
配置イメージ
サインイメージ
• 自転車利用者の行動起点と
ルート案内
分岐点案内
(立寄地点案内)
ルート情報や地
図、沿線の主要
施設等を明示
ネットワーク上
における主要施
設等への分岐箇
所を「分岐点」
と設定し、施設
等への誘導情報
を明示
進行方向
案内
迷いやすい交差
点等において、
ネットワークの
ルートの進行方
向を明示
ルート誘導
モデルコースと
なる羊蹄山一周
コースをライン
(路面表示)で
明示
距離案内
ルートの目的地
名と目的地まで
の距離を明示
通行位置
誘導
自転車利用者に
ルートの連続性
や通行位置を明
示
なる道の駅等の拠点施設に
必要な場合に配置
• 固定情報は更新に問題があ
るため、基本的にはネットに
よる情報提供で対応
色:濃緑色(DIC380)
• 幹線道路との交差部におけ
る分岐点に配置
• サインの設置場所は、路側側
を基本
【
(展開例)迂回路を示す場合】
• 上記と同じ
• 羊蹄山一周コースの走行位
置に路面表示として明示
• 各ルートにおいて、1.0km
おきに現在位置を示す「距離
標」を路面標示
• ルート上にラインとして路
面表示
29
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② 注意喚起サイン
羊蹄山麓地域での「注意喚起サイン」の種類・役割や配置イメージは、下表に示すとおり
である。
種類
自動車注意
歩行者注意
自転車注意
役割
自転車に対し、交
差道路を走行す
る自動車への注
意喚起
配置イメージ
• 自動車交通量の多い道路を横
断する箇所において設置
• 特に、倶知安町-ニセコ町間の
山間部など、見通しの悪い交差
点において設置
自転車に対し、自
転車歩行者道や
交差道路を通行
する歩行者への
注意喚起
• 市街地内など、歩行者交通量の
ドライバーに対
し、自転車走行が
多いことを注意
喚起
• 自転車ネットワークルートの
多い道路で設置
• ニセコ町内の道の駅周辺など、
季節的に歩行者の多い区間へ
の設置も必要
交差道路で設置
• 特に、信号機が設置されていな
い交差点では設置が必要
横断自転車
注意
ドライバーに対
し、前方での自転
車の横断に注意
喚起
• 上記と同じ
下り坂注意
自転車に対し、急
な下り坂等、危険
な箇所を走行す
る際に注意喚起
• 下り坂が始まる手前に設置
30
サインイメージ
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
3) 景観への配慮事項
サイクリストの安全性・利便性の向上に向けては、案内誘導・注意喚起など目的に合った
サイン類の適所での設置が重要となる。一方で、羊蹄山麓地域は支笏洞爺国立公園内に位置
しており、地域内の各自治体では景観条例の策定など、羊蹄山麓の美しい景観に配慮した地
域づくりが進められている。そのため、自転車走行に必要な案内誘導・注意喚起と景観との
両立を図っていく必要があり、以下に配慮したサイン設置を進める。
 ネットワーク全体において最小数で最大限の効力を発揮するサイン設置を進める。
 郊外部では、羊蹄山や田園・自然景観の地域価値を低下させないため、標識類の設置は極
力避け、路面式または路側式のサイン設置を基本とする。
 市街地内においても、羊蹄山麓地域としての地域性に配慮したサイン設置を進める。
 ネットワークの明示化やサイン設置などの色彩・デザインは、羊蹄山麓としての地域景観
に配慮し適切なものを選択する。
31
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
5-2. 自転車走行空間づくりの戦略
(1) 自転車走行空間
1) 短期的な向上メニュー
① ルート誘導・通行位置誘導ラインの設置
メインルートとなる羊蹄山一周コース等の各ルート上を走行することを誘導する路面表示
(誘導ライン)を設置する。また、ルート誘導ラインは、自転車走行の通行位置を明示する
ものとして、市街地、郊外部など適切な箇所への設置を行い、ルートの連続性を明示する。
図 5-3 市街地でのルート誘導イメージ
《メニュー》
市
街
地:自転車歩行者道が整備されている場合には、自転車歩行者道での明確化、自転車
歩行者道が整備されていない場合には、ブルーラインによる外側線による明示化
郊
外
部:ブルーラインによる外側線による明示化
32
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② 交差点部での誘導線(自転車ナビライン)の設置
自転車ネットワーク上にある交差点部では、自転車走行の安全性を向上することを目的に、
ルート誘導・通行位置誘導ラインと合わせ、破線誘導表示(自転車ナビライン)を設ける。
図 5-4 交差点部での誘導イメージ(主要交差点)
《メニュー》
信号設置交差点:破線型の自転車ナビラインを設置
信号なし交差点:破線型の自転車ナビラインを設置するとともに、自動車交通への注意喚起の
サイン設置
33
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
③ 安全で快適な走行を支援する位置情報の提供
距離標を設置することで、目的地までの走行距離が把握できるなど、サイクリストの体力
やレベルに応じた走行が可能となり、特に、ニセコ羊蹄エリアを初めて訪れたサイクリスト
には有効となる。
そのため、自転車ネットワーク上に、サイクリストの位置が把握可能な距離標を設置する。
図 5-5 羊蹄山麓周辺自転車ネットワーク距離標計画図
《メニュー》
ネットワーク :自転車ネットワーク上の主要地点での距離標の設置
周辺道路:ネットワークとリンクする周辺道路での段階的な設置
34
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
④ 回遊性を向上する方向案内情報の提供
サイクリストの目線や行動パターンに応じた情報を提供することで、サイクリストの移動
弊害が解消され、回遊性が向上する(迷うことなくサイクリングを楽しみことが可能)。
そのため、各交差点において、主要目的地となる地点の方向案内情報を提供する。ただし、
固定式は、サイクリストの目線や景観への配慮から適正ではなく、路面表示型の方向案内標
識が有効である。
図 5-6 羊蹄山麓周辺自転車ネットワーク交差点路面標示計画図
《メニュー》
主要交差点:各方面の目的地を示す方向案内標識の設置
周辺道路:同上の形式と合わせ、周辺道路での方向案内標識の設置の拡大
35
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
⑤ 安全で快適な自転車走行に適した路面状態の確保と段差解消
車道端部の路面については、自転車の安全性を向上させるため、平坦性の確保、通行の妨
げになる段差や溝の解消に努め、舗装でのすり付けにより滑りにくい構造とする。
また、倶知安市街地の国道 5 号の自転車歩行者道のような場合、交差部における自転車横
断帯へのすり付け部は滑らかな構造とする。
ただし、自転車の速度が上がり過ぎて歩行者や車椅子利用者を危険にさらさないよう、沿
道利用の状況を勘案して実施することが望ましい。
写真 5-1 路肩部の溝
※ 構造基準については「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準」による。
図 5-7 自転車横断帯のすり付け部分
《メニュー》
路 肩 部 :路肩部の溝により段差が発生している区間は維持管理作業を徹底
交 差 点 :ユニバーサルデザインを考慮し、順次、段差を解消
36
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
⑥ 自転車走行に優しい道路排水施設の設置
ネットワーク上の国道・道道では、冬期の除排雪作業を考慮し、道路排水施設が本州のも
のよりも 2 ㎝ほど低位置に設置され、舗装路面との段差が生じている。また、排水機能を確
保するため、自転車の走行方向と同じ縦目での雨水桝が設置されている。これらは、自転車
走行の障害となりえることから、特に、路側帯での走行を想定している郊外部においては、
冬期での除排雪作業に考慮し、脱着型の蓋等で段差を解消し、かつ横目で自転車走行の安全
性を向上させる対策を進める。
グレーチング蓋のイメージ
出典:安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(国土交通省)
図 5-8 グレーチング蓋の格子間隔を狭め滑り止め加工している例
《メニュー》
郊 外 部:自転車ネットワークのルートとして設定されている区間の雨水桝へは、脱着型の
蓋等を設置
オプション:市街地内においても、雨水桝の段差が自転車走行の障害となりえる区間では、脱
着型の蓋等を設置
37
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2) 中・長期的な向上メニュー
① 交通状況を踏まえた自転車走行空間の整備形態
中・長期的には、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(国土交通省)」等を
参考に、交通状況や地域の実情を踏まえた安全・快適な自転車走行が可能な空間を確保し、
スムーズな連続性の確保を進める。整備優先区間の交通状況(自動車の速度と交通量)なら
びに歩道有無等は、巻末の参考資料に示すとおり。
出典:安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(国土交通省)
図 5-9 交通状況を踏まえた整備形態の選定の考え方と分離に関する目安
《メニュー》
市 街 地 :既設の自転車歩行者道や道路空間の活用を基本とし、より安全で快適な自転車走行
空間づくりの推進
郊 外 部 :幅員の狭い区間と広い区間が連続している区間では、広い区間に合わせた幅員の確
保により自転車走行にとってスムーズな連続性の確保
オプション:橋梁部など拡幅整備が困難な区間では、更新時期と合わせた整備を展開
38
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) サイン設置
1) 短期的な向上メニュー
① 路面表示型サインの設置
自転車ネットワークを示すルート誘導・通行位置誘導ラインにおいて、羊蹄山や田園・自
然景観に配慮し、コース名や目的地までの距離等の案内誘導や注意喚起を路面表示型サイン
として明示する。
写真 5-2 路面表示型サインの例
《メニュー》
市街地(自転車):ネットワークのルート上に表示
郊外部(自転車):外側線内の路肩部で表示
自動車走行部:自転車走行に対する注意喚起のサインを表示
オプション①:視覚的な効果を向上させるため、立体的なサイン設置を検討
オプション②:国際大会開催ルートなど、サイクルイベント利用ルートの明示
39
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2) 中・長期的な向上メニュー
① 標識型サインの設置
ルート情報などを明示した案内板や各案内誘導・注意喚起サインについて、標識型サイン
が有効となる地点・区間については、周辺環境とのバランスや羊蹄山らしい景観への配慮を
しながら、自転車ネットワークとして統一的な標識の検討を進める。
写真 5-3 標識型サインの例
《メニュー》
拠点施設:ルート案内の情報提供を行うサインの設置
郊 外 部 :路面表示型を基本として、補完する目的で最小限での設置
オプション①:ルート全体として統一感のあるサインの色彩・デザインの検討
オプション②:更新頻度の多い情報は、電子媒体等の他媒体による提供を検討
40
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
Chapter
6 自転車走行環境向上の持続的な仕組みづくりの考え方
6-1. 維持管理の考え方と戦略
(1) 維持管理の基本的な考え方
① 維持管理の体制
羊蹄山麓地域における自転車利用の促進を図る上では、安全かつ快適な走行空間を維持す
ることが重要である。自転車ネットワークの維持管理については、道路管理者の通常点検を
基本とするが、通常点検による現状把握には限界があるため、自転車利用者や地域住民から
の意見や情報を収集できるような仕組みづくりを進め、維持管理を効率的に行い、必要とす
る自転車利用ネットワークの機能を継続的に維持する。
② 維持管理の水準
自転車ネットワークの維持管理の水準については、実際に自転車ルートを走行する利用者
の評価等を踏まえ、利用者の満足度を向上させるため、経済性・効率性に留意しつつ、適宜
水準を見直していく。
③ 冬期対策を踏まえた維持管理
積雪寒冷地である羊蹄山麓地域では、冬期間のサイクル利用はほとんどなく、ルート等の
走行空間に関しては、除排雪作業への対応、自転車スタンド等の各施設・設備は雪による劣
化等を防ぐ対策を取る必要がある。そのため、冬期間の積雪等への対応を踏まえた維持管理
を進めていく必要がある。
41
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) 維持管理の戦略
1) 短期的な向上メニュー
① サイクルイベントを通じた維持管理
羊蹄山麓地域では、様々なサイクルイベントが開催されており、これらのイベントやイベ
ント開催に向けた組織を活用した維持管理を展開する。
《メニュー》
イベント:羊蹄山麓地域で開催されるイベントへ維持管理に係るメニューを追加
イベント組織:イベント組織により、準備等で周遊する際に維持管理状況を確認
オプション:統一した維持管理チェックリストの作成
② サイクリストによる維持管理の評価
羊蹄山麓地域のサイクルニーズは、レンタサイクル利用の観光客からスポーツサイクルの
エキスパートまで様々であり、また近年のアウトドア人気を反映し、多様化が拡大している。
そのため、維持管理に関するニーズも多様化していることから、サイクリストを対象とした
満足度調査を定期的に行い、ネットワークの維持管理に反映していく必要がある。
《メニュー》
満足度調査:利用者を対象とした満足度調査を定期的に実施
オプション:WEB 等電子媒体を活用した満足度調査の実施
③ 冬期対策として脱着式・取外し式のサイクル支援施設の設置
冬期間、サイクル関連の施設・設備は、一部、未利用となることから、特に外部に設置さ
れる自転車スタンド等のサポート施設や冬期の除排雪の障害となる設備等は、脱着式または
取外し式によるものとし、冬期間での劣化等を防ぐ維持管理を進める。
《メニュー》
脱 着 式 :ルート上に設置された雨水桝等
取外し式:道の駅等の拠点施設に配置される自転車スタンドや空気入れ等
オプション:
42
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2) 中・長期的な向上メニュー
① 地域協働型維持管理体制づくりの構築
サイクルツーリズムを展開していくためには、地域一体となり“サイクリスト・ウエルカ
ム”の雰囲気づくりが重要となり、そのため地域住民等の意識変化も必要である。そのため、
地域住民がイベントを通じて、または日常生活の中から、自転車走行環境の維持管理に関わ
れる地域協働型の維持管理体制を構築する。
《メニュー》
イベント:ネットワークのルートを利用した維持管理に係るイベントの開催
通勤・通学:通勤・通学時の自転車利用で“発見”した維持管理上の問題を報告し、迅速な対応
が可能な体制づくり
43
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
6-2. 拠点施設づくりの考え方と戦略
(1) 拠点施設の基本的な考え方
1) 拠点施設に必要な機能
拠点施設に必要な自転車利用者をサポートする基本的な機能は以下のとおりであり、各機能
に応じた具体的な導入施設・サービスについては、利用者の自転車利用レベルを踏まえ、各施
設において個別に検討した上で、整備・充実を図る。
乗換機能:他の交通手段から自転車に乗り換えるために必要な施設・サービス(例:駐車
場やレンタサイクル等の施設・サービス)
情報発信機能:周遊観光に関連する情報入手が可能となる施設・サービス(観光案内所、
周遊観光マップ・サインの施設・サービス)
休憩・おもてなし機能:周遊観光前後及び立ち寄り時の休憩スポットとして必要な施設・
サービス(駐輪場、トイレ、飲食コーナーの施設・サービス)
サポートサービス機能:自転車による周遊観光利用者の利便性をより高めるための支援機
能(自転車搬送、荷物預かりの施設・サービス)
休憩
おもてなし機能
乗換機能
拠点施設
サポートサービス
機能
情報発信機能
2) 拠点施設の基本的な考え方
自転車ネットワークにおける拠点施設整備の基本的な考え方を以下に示している。
 自転車ネットワーク上には、サイクリストが気軽に立ち寄り休憩ができ、地域の人々と交
流が図れる拠点施設として、
「サイクルステーション(仮称:羊蹄山麓サイクルオアシス)」
を設置する。
 拠点施設として必要な機能について、自転車ネットワーク沿線の道の駅など既存施設の活
用やガソリンスタンド・コンビニなどの民間施設等との連携により、段階的な整備・充実
を図る。
 拠点施設に必要な機能については、その施設の利用者の自転車利用レベルや拠点施設と位
置づける施設の種別等を考慮しながら、整備・充実を図る。
44
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) 拠点施設づくりの戦略
1) 短期的な向上メニュー
① 拠点施設での自転車スタンド等のサポートツールの設置
道の駅などのサイクリストの拠点は「サイクルステーション(仮称・羊蹄山麓サイクルオ
アシス)」として整備し、自転車利用者が気軽に利用できる単管型の自転車スタンドを設置
するほか、利用者の利便性を図るため、空気入れや手荷物預かり等のサービスの導入を図る。
写真 6-1 単管型自転車スタンドの設置例
《メニュー》
拠点施設:利用者が必要とするスタンドのほか、空気入れ等のサポートツールを設置
民間施設:ガソリンスタンドやコンビニなど、沿線施設の協力もと、マップの配置やトイレの
利用など
オプション①:冬期の未利用期間を想定し、容易に取り外し可能なスタンド等の設置
オプション②:
「自転車スタンドあり」等、サポート内容が利用者にわかるサインの設置
45
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② 地域協働型休憩施設の設置
道の駅やコンビニ等、サイクリストの利用頻度が高く、ニセコ羊蹄地域のサイクルツーリ
ズムへのサポートが可能な施設管理者との協働により、これら施設を「(仮)サイクルステ
ーション」として設定する。
図 6-1 (仮)サイクルステーションの候補地
写真 6-2 サイクルステーションのイメージ
《メニュー》
道の駅等:地域施設の「
(仮)サイクルステーション」としての活用
オプション:
「(仮)サイクルステーション」として立寄り可能な機能の追加
46
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2) 中・長期的な向上メニュー
① サイクルステーションの機能向上
「サイクルステーション(仮称・羊蹄山麓サイクルオアシス)」は、利用度の高い施設と
するため、サイクリストのニーズを反映し、必要な設備等を追加するなど、施設内容の充実
を図る。
写真 6-3 コインシャワーの例
《メニュー》
道の駅等:ロッカーやシャワーなど自転車利用者が求める設備の追加
オプション:ネットワーク沿線にある飲食店やお土産店等の「サイクルステーション」としての
活用
47
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② バス事業者等と連携したサービス
自転車による周遊観光利用者や One-way サイクリストなど多様な自転車利用者の利便性
をより高めるため、羊蹄山地域内ならびに周辺地域へのバスネットワークを活かし、バス事
業者との連携のもと、自転車積載ラックを取り付けたバスの運行や目的地までの手荷物配達
等の導入を推進する。
写真 6-4 自転車ラックバス例
写真 6-5 バスの荷物置場への自転車積載例
《メニュー》
路線バス:ネットワーク上を運行している路線バスへの自転車の積載や目的地(サイクルステ
ーション)までの手荷物の配送サービス
宅
配:地元宅配業者による手荷物の配送サービス
オプション:都市間バスや宅配等を利用し、周辺地域まで手荷物を配送するサービス
48
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
6-3. 情報発信の考え方と戦略
(1) 情報発信の基本的な考え方
自転車走行環境向上における情報発信の基本的な考え方を以下に示している。
 サイクリングマップは、自転車ネットワーク全体を対象とした“広域”マップ、ならびに
複数地域を周遊するテーマ性を持ったルートを紹介する“テーマ別”マップなど、多様化
するサイクリストのニーズに合わせて作成する。
 提供する情報は、これまでの利用者アンケート等による意向を踏まえて、共通的に掲載す
る「基本情報」や各マップで掲載する「個別情報」を盛り込み、各マップの利用者が使い
やすいものを目指しつつ、利用者の声を反映しながら、段階的に改善を図っていく。
 自転車利用者が現在地をマップで容易に確認できるように、自転車ネットワークに設置さ
れるサインなどとの整合性を考慮する
 情報サイト「ニセコサイクル.com」と連動したサイクリングマップの情報提供を行うな
ど、地域全体として一体感のある情報提供を進める。
 自転車受入可能な宿の情報など、自転車利用者の利便性を向上させる情報提供を展開する。
49
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) 情報発信の戦略
1) 短期的な向上メニュー
① 地域統一型サイクルマップの作成
走りやすい道路や急勾配を避けたショートカット・ルート、大型車交通量が多い区間、走
行空間の狭い区間など通行上の要注意箇所の位置を周知するためのマップを地域統一型とし
て作成するほか、休憩施設などのサポート施設、観光施設などの地域交流情報など、自転車
利用者の知りたい・知らせたい情報を提供する。
図 6-2 ニセコ羊蹄エリア自転車おすすめルートマップ
《メニュー》
配置・配布:道の駅やコンビニなどサイクリストが立寄る箇所でのマップの配置
オプション①:パンフレットやおみやげなどとのイメージカラーの統一
オプション②:駐輪可能な施設情報やサイクリスト宿泊可能な施設等の紹介
50
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② サイクルマップとリンクした位置情報
初めて羊蹄山麓地域を訪れた利用者でも容易に現在位置が確認できるよう、上記のサイク
ルマップとリンクした路面表示をネットワークのルート上に表示する。
マップとリンクし
た位置情報の明示
図 6-3 ルートマップとリンクした位置情報のルート上での明示
《メニュー》
路面表示:ルート上のラインにマップとリンクした番号を明示
オプション:QR コードや GPS 機能等を活用した位置情報ならびに周辺施設情報の提供
51
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2) 中・長期的な向上メニュー
① サイクリング情報の電子化
近年、自転車利用者の間では、位置情報やルート検索、沿道施設情報を入手する方法とし
て、タッチスクリーンを備えたスマートフォンやメディアタブレットの活用が目立ち始めて
いる。 特に、スマートフォンやメディアタブレットは、GPS を搭載しているため、ルート
上での位置情報が正確なうえ、ネットにつながることで、ルートのレベルや沿道施設等の詳
細な情報を入手することが可能である。 自転車利用者の知りたい・知らせたい情報や写真な
どのデータを電子化し、自転車利用者が使いやすい媒体での情報提供を構築する。
図 6-4 サイクリスト用スマートフォン・アプリケーション例
図 6-5 サイクリング情報電子化のイメージ例
《メニュー》
電子情報:スマートフォンやメディアタブレットを経由した情報提供
オプション:既存アプリケーションとの連動による周辺施設や天気等の情報提供
52
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② 情報共有型システムの構築
多様化するサイクリストへの情報提供内容の充実ならびに道路管理者の異なるコース全体
における統一的な維持管理等への活用を踏まえ、リアルタイム情報発信及び共有に向けた取
組を進める。
具体的には、地域情報等の双方型情報共有(利用者⇔管理者、利用者⇔利用者の 2-way コ
ミュニケーション)として、スマートフォン等の携帯端末を用いて、サイクリストや外国人
観光客に向けた外国語対応の道路及び地域情報(道路管理者からの道路情報、地元居住者や
サイト利利用者からのおすすめ地域情報)を提供するほか、道路管理者への情報提供(道路
の異常や冬期路面状況等)等について、写真データ・位置情報等も交えた双方向型情報発信・
共有を目的としたサイトの構築及び運営を行う。
図 6-6 羊蹄周辺情報共有システム(試行版)
《メニュー》
電子提供:スマートフォンやメディアタブレットを経由した情報提供
オプション:SNS システム等を活用した利用者⇔利用者の情報共有の構築
53
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
6-4. 地域の取組み展開の考え方と戦略
(1) 国際大会等のサイクルイベント開催
1) 国際大会等のサイクルイベント開催の基本的な考え方
羊蹄山麓地域における国際大会等のサイクルイベント開催の基本的な考え方を以下に示す。
 国際大会などサイクルイベントの開催では、ルートを選定する際、当該地域のシンボルで
ある“羊蹄山”の景観・見晴らしを考慮したルート設定を積極的に提案する。
 また、平地ルートの羊蹄山一周に加えて、羊蹄山を背にしたルートやアンヌプリから日本
海側に向かう起伏に富んだ山岳ルートも提案する。
 羊蹄山麓地域のみではなく、洞爺湖などの周辺地域やサイクルイベントに関わる全ての人
が繋がり、一体となり実現できる仕組みづくりを展開する。
 国際大会などの大規模なサイクルイベントでは、大学等を含む関連機関・団体との連携に
よるボランティアの確保を進めるほか、ボランティア活動への付加価値など、人々が集ま
りやすい・ボランティアに魅力を感じる工夫を検討する。
 国際大会などの大規模なサイクルイベントでは、参加者だけでなくスタッフ、ボランティ
アもまた地域にとってのゲストであり、滞在にともなう観光需要につながることを地域の
自治体・事業者・住民が理解し、ベネフィットが得られるようサポートすることが、当初
は必要である。
2) 持続的な開催に向けた仕組みづくりの戦略
① 短期的な向上メニュー
A. 既存組織の活用
アイアンマンレースなどの国際大会では、運営の際、警察・病院・行政・民間などが連携
を取りながら大会開催を進めていくが、持続的な開催に向けて、これら既存組織をつなげ、
統括できる組織づくりを進める。
短期
中・長期
多くの団体が活動する仕組みづくり
組織づくりの確立と参画機会の拡大
《統括できる組織》
《国際大会に関連する団体・機関等》
統括できる
組織づくり
事務局
行政
警察
病院
地元企業
その他
参
画
連携
事務局
行政
警察
病院
地元企業
その他
地域住民
大学等
利用者
図 6-7 既存組織の活用による統括組織づくりのイメージ
《メニュー》
既存組織:国際大会運営の段階で設立された組織の継続的な活用
オプション:サイクリストや地域住民等が参画できる機会の拡大
54
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
B. ボランティア活動への付加価値
国際大会等のサイクルイベントの成功の“鍵”は、どの程度のボランティアの確保が可能
かどうかによるものが大きい。実際、多くのイベントでは、ボランティア確保が困難であり、
逆に成功しているイベントでは、様々なアイディアにより、多くのボランティアを集めてい
る。
羊蹄山麓地域においては、地域内の人口から考えた場合、ボランティア活動を地域内で完
結することは難しく、特に、国際大会などの大規模なイベント開催では、地域外から人を集
めることが求められる。
そこで、他地域でのボランティア集めの成功事例を参考に、ボランティア活動に付加価値
をつけるインセンティブを地域が一体となり検討する。例えば、国際大会開催時で、5000
人以上のボランティアを集めるハワイ州のアイアンマンレースでは、ボランティアをしてみ
たいと思わせる T シャツなどを配布しているほか、お土産の配布などを行っているイベント
もあり、これらインセンティブは有効なボランティア集めのツールとなっている。
写真 6-6 ハワイのアイアンマンレースのボランティア
《メニュー》
付加価値:羊蹄山麓地域のサイクルイベントでしかもらえないボランティアグッズの配布
オプション:地域内での宿泊メリットなど、ボランティア活動のメリットの検討
55
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② 中・長期的な向上メニュー
ボランティア確保の問題解消を目的に、地域住民や大学、利用者等との連携を強化し、組
織づくりへの参加の拡大を図る。
A. インターンシップ等の活用
大学・専門学校のスポーツ学科や観光学科などに在籍する学生を対象としたインターンシ
ップ制度等を活用し、学生ならびに地域の両方にメリットのあるボランティア活動の仕組み
づくりに努める。また、インターンシップの受け入れに必要な、専門的知識と経験をもった
人材・組織を育成・構築し、こうした人材・組織の継続のための経済的基盤を整える。
《メニュー》
インターンシップ:サイクルイベントや観光に関連した大学学部等との連携
オプション:地域全体としてインターンシップを支える「地域インターンシップ制度」の導入
B. 一般のサイクリストの活用
羊蹄山麓へサイクリストとして訪れる人をボランティアとして活用するなど、“遊びつい
でにボランティア”が可能な仕組みづくりを構築するほか、だれでも、当日、その場でボラ
ンティアになれるよう、「サイクルボランティア・マニュアル」ならびに受入体制を整備す
る。
《メニュー》
遊びの仕掛け:当日でもボランティア活動に参加できる仕掛けづくり
オプション:サイクルイベントのためのボランティア確保に向けたマニュアルづくり
C. スポーツツーリズムの戦略対象
参加者、スタッフ、ボランティアを含めた幅広い需要にこたえるスポーツツーリズムを目
指して、組織・人材・サービス・商品・行政の各分野でとりくみを進める。また、MICE 戦
略と一体となった国際スポーツツーリズムの推進はかる。特に、アワードパーティやスポン
サーブースの会場となるコンベンションセンターなどの施設の整備や PR のためのウェブサ
イトやパンフレットの作成(多言語対応)、メディア招致などに戦略的に取り組む。
《メニュー》
ハード戦略:国際大会の拠点として活用できる施設の整備(既存施設の有効活用)
ソフト戦略:組織・人材・サービスなど関係する各分野の連携強化によるプランづくり
オプション:国際大会 PR の情報発信(多言語対応)やメディア招致、見学ツアー等の開催
56
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
【サイクルイベントの経済効果等の事例】
○トライ経済波及効果は 3 億 7000 万円/おきぎん経済研究所が試算
おきぎん経済研究所(北原秋一社長)は、第 21 回全日本トライアスロン宮古島大会の経済効果を
試算し、14 日発表した。直接、間接合わせた短期の経済波及効果は3億 7000 万円になると推計
している。中期的効果として、宮古島のイメージアップなどを示した。
今大会の参加者は 1500 人で、内訳は県外 84・5%、県内 12%(うち宮古5%)、海外3・5%。
同研究所は、14 日の選手登録受け付けから、17 日の競技日、18 日の表彰式・閉会式まで、短
期的な経済効果を県産業連関表などを用いて推計した。
それによると、実行委員会による設営・広告・宣伝・弁当等の事業費と選手らの宿泊・遊興・お
土産費用などを合計した直接効果が約2億 2000 万円。直接関連する産業が原材料調達などを通じ
て他産業に及ぼす一次波及額、直接・一次波及で生まれる雇用者所得が消費活動を通じて各産業に
影響を及ぼす二次波及額がそれぞれ約 7000 万円と推定。直接、一次、二次を合わせた生産波及効
果は3億 7000 万円に上るとした。
売り上げから原材料費などを差し引いた付加価値波及額は、約2億円としている。
中期的経済効果としては「新聞やマスコミなどによるきれいな青い海、明るいスポーツアイラン
ドのイメージアップ」
、「八重山、本島を含めた離島観光ネット形成」―などを挙げている。
同所では「地元を中心に県外、世界と一体になるトライアスロン大会は、地元に根付いたグロー
バルな視点を持つ大切な事業。県民全体で大いに応援しよう」と話している。
○宮古島の地域おこし!!
トライアスロンが生む経済効果
最近、健康ブームで、トライアスロンやウォーキングなどがブームになっています。国内での最
初のトライアスロンは 1981 年、鳥取県の皆生温泉で開かれました。1985 年には、宮古島やびわ
湖、天草なので開催されるなど、トライアスロンがブームとなりました。その後もブームが続き、
公園やプールを利用する小規模なものから公道を利用する大規模なものまで含めて全国で開かれる
大会数は今では年間約 190 大会に達しています。そのなかでも宮古島のトライアスロン大会のよう
な大規模な大会は、観光として大きな経済効果を出しています。
宮古島のトライアスロン大会は、
「トライアスロンで島おこしをしようと」と、1985 年から毎年
4 月に開催される大会です。当日は、全島挙げて住民がボランティアとして参加して、大会を支え
ています。開催以来、世界各国からの招待選手も多く、ワールドワイドな「ストロングマンレース」
として、世界的にも認知されています。また、出場できる人数は 1500 人と制限されているため、
毎年抽選を行なっています。
大会前後の数日間は、宮古島のほとんどの宿泊施設(ホテルや民宿)がトライアスロンの参加者のた
め満室状態になっています。また、参加しない方も、沿道で泡盛を飲みながら一日中応援していま
す。地元 TV 局も一日実況放送をしています。このため、直接効果と間接効果を含めると大きな経
済効果が生まれています。
宮古島での成功要因:
①立ち上げのタイミングと場所
②地元の熱意ある有志が中核となり地域全体を巻き込んでいる
③適度な公的支援
これらがうまく組み合わせて、宮古島トライアスロン大会が盛り上がっている
57
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(2) 国内外へ向けた PR 戦略
1) PR 戦略の基本的な考え方
羊蹄山麓地域における自転車走行環境の向上ならびに更なるサイクリスト・イベントの誘
致に向けた国内外への PR 戦略の基本的な考え方を以下に示している。
 自転車利用に関係する関係者が個々で活動するのではなく、全体としてのビジョンのもと、
地域が一体となり、ターゲットに合わせた PR 活動を展開していく。
 国際大会等のサイクルイベントを通じ、イベントから派生するチャンネルを活用し、羊蹄
山麓地域の魅力ある自転車走行環境を PR していく。
 羊蹄山麓地域の強みである“ニセコ”の国内外での知名度を活かした、PR 活動を展開し
ていく。
58
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
2) PR 戦略と受入体制づくりの戦略
① 短期的な向上メニュー
A. スキー観光客への PR 活動
冬のニセコ地域は、国外でもスキーリゾートとして人気があり、オセアニアやアジア以外
でもヨーロッパや北米などからも外国人観光客が訪れている。これら冬期のスキー観光客を
対象とした PR 活動を行い、夏は自転車利用で訪れていただくなど、年間を通じた来訪促進
の PR 活動を展開する。
《メニュー》
冬期 PR 活動:冬期にスキーで羊蹄山麓地域を訪れる国内外からの観光客を対象に、夏期のサイク
ル環境の魅力やイベント情報等の情報発信
オプション:国内外でのスキーイベントでの夏期の羊蹄山麓地域の紹介
B. 国際大会等のサイクルイベントでの PR 活動
羊蹄山麓地域では、2013 年 8 月にアイアンマンレース国際大会が開催されるほか、地域
主催のサイクルイベントの開催も活発化している。これらのサイクルイベントでは、サイク
ル雑誌関係者や報道関係者、旅行代理店関係者等が関係することから、イベントで発掘でき
たチャンネルを有効活用し、羊蹄山麓地域のサイクル環境を PR していく。
《メニュー》
イベント:地域で開催されるサイクルイベントの関係者を通じ、サイクルツーリズムとしての
魅力を発信
オプション:
② 中・長期的な向上メニュー
A. PR 活動のための全体ビジョンづくり
羊蹄山麓地域のサイクル関係者が個々で PR 活動することは限界があるほか、地域が一体
となって PR 活動を行うことで、効率・効果的な魅力の発信を行うことが可能である。その
ため、関係者が同じ意識・ビジョンのもとで活動を行えるよう、関係者間の連携強化を図り、
PR 活動のためのビジョンづくりを進める。
《メニュー》
ビジョン:PR 活動を行うにあたっての、誰が、どのように、どのようなカタチでなど、戦略的
な PR 活動を行えるビジョンづくりを展開
オプション:
59
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
(3) 受入体制づくり
1) 受入体制づくりの基本的な考え方
羊蹄山麓地域における更なるサイクリストの来訪ならびにサイクルツーリズムとしての展
開に向けた、地域の受入体制の基本的な考え方を以下に示している。
 地域内でサイクルツーリズムに関する情報共有の強化を図るとともに、地域全体として
“羊蹄山麓地域は、サイクリスト・ウエルカムです”という体制づくりを進める。
 自転車走行空間のサインやパンフレットのほか、地域のお土産などはイメージカラーで統
一を行い、
“サイクリスト・ウエルカム”といった雰囲気を地域全体で演出する。
 サイクリストにとって利用しやすいサイクル受入施設の運営を進める。
 周辺地域と一体となり、受入体制の充実を図るための仕組みづくりを進める。
2) 受入体制づくりの戦略
① 短期的な向上メニュー
A. レンタサイクルの共同運営
レンタサイクルの利用促進に向けては、レンタサイクルの利用者の利便性を向上する必要
があり、個々のレンタサイクル事業ではなく、共同で運営を行い、どこでも乗り捨てられる
仕組みづくりを進める。
既存のレンタサイクル事業者とiセンターとの行政
区域を超えた組織連携によるレンタサイクル事業
の面的展開
次のiセンターで
ひと休み、合間
に情報収集!
どこでも返却
できるから
安心!
図 6-8 レンタサイクルの共同運営イメージ
《メニュー》
共同運営:レンタサイクルの共同運営の可能性や運営方法等について検討
オプション:
60
羊蹄山麓自転車走行環境向上
ガイドライン(案)
② 中・長期的な向上メニュー
A. サイクルツーリズムにおけるイメージカラーの統一
“サイクリスト・ウエルカム”といった雰囲気を地域全体で演出するため、サイクリング
マップやパンフレット、サイン、地域産品(お土産)などをサイクルツーリズムのイメージ
カラーで統一を図る。
《メニュー》
イメージカラー:イメージカラーで統一する施設や商品等の選定とイメージカラーの選定
オプション:
B. 周辺地域との広域連携による受入体制の充実
長距離な移動を行うサイクリストのなかには、羊蹄山麓地域から洞爺湖や積丹半島まで足
を延ばすサイクリストも存在する。羊蹄山麓地域内での受入体制の充実は必要不可欠である
が、周辺地域を含む広域的な地域での受入体制の充実化により、さらなるサイクリストの来
訪が期待できる。
《メニュー》
広域連携:周辺地域と連携を図り立寄り施設の充実や広域情報の発信などを展開
オプション:広域マップの作成
61