補助記憶装置における 特徴及びフォーマット処理 神崎朔夜 Copyright © 2013- 神崎朔夜 All Rights Reserved. はじめに 今回ピックアップする内容は補助記憶装置 -HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、SDカード(Secure Digital Card、もしくは単にSD Card)など -主記憶装置はDRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM (Static Random Access Memory)を指すので全くの別物 -あくまで主記憶装置はCPU(Central Processing Unit)が直接 書き込む場所 正直、管理者 神崎朔夜の備忘録に近い -補助記憶装置とそのフォーマットでトラブルがあったので・・・ 補助記憶装置 まずはパソコンにおける補助記憶装置の概要 HDD(Hard Disk Drive) -パソコンではほぼ標準装備の内部・外部ストレージ SSD(Solid State Drive) -最近になってパソコンのOSをインストールしている例が 増えた内部ストレージ SDカード(Secure Digital Card、もしくは単にSD Card) -カメラやゲーム機、携帯電話などの小型端末用ストレージ HDDの構造 図1 HDD内部構造 特徴 – HDD(メリット) 記憶容量が大きい -TB(テラバイト)クラスの容量を持つものが主流 価格が安価 外付けHDDとしてUSB接続で簡単に接続できる 破損時の復旧が可能な場合が多い ノートパソコン向け2.5inch型とデスクトップパソコン向け3.5inch型 がそれぞれ存在する -8inchと5inchも大型汎用コンピュータ向けに存在したが、 現在は生産されていない 特徴 – HDD(デメリット1) とにかく衝撃に弱い(ヘッドクラッシュ) -物理回転するプラッタ(記憶域)と、磁気ヘッド(読み取り部)があり、 外部の衝撃が加わるとプラッタを傷付けデータが破損する -プラッタと磁気ヘッド間は非常に狭く埃にも弱い 経年劣化で破損しやすい -スピンドルモータ(プラッタを回転させるモータ)やシークモータ(磁気 ヘッドを移動させるモータ)のベアリングが劣化するとがたつく うるさい(密閉型HDDでない場合) -カリカリカリカリ・・・ 特徴 – HDD(デメリット2) アクセス速度が決して速いとは言えない -接続方式に依存する -内蔵HDDと外付けHDDでも接続方式次第になる バックアップに時間がかかる -大容量+転送速度の遅さ=長時間のバックアップ時間 容量が大きくてもOSが対応していないと認識しない -通称「壁」(後述するディスクファイルシステムによるもの) -今までは2TB、今後は128PB(ペタバイト)で発生 -と言ってもPB単位が個人向けになるのは何年先のことか・・・ SSDの構造 図2 SSD内部構造 特徴 – SSD(メリット) アクセス速度が非常に速い -記録データは全てNAND型フラッシュメモリ内=半導体内 -最近ではOS(Operating System)をSSDに入れ、パソコン起動の 高速化を図っている 2.5inchサイズで非常に薄く軽量 -ノートパソコンの薄型軽量化に貢献、外付けSSDも登場 衝撃に強い -物理的に動いているものが一切ないため、基板や半導体が 破損しない限りデータは壊れない 特徴 – SSD(デメリット1) 非常に高価 -その割に容量は少ない -一般的に販売されているものは40GB~240GB程度 -一応TB単位のものもあるが価格が100万円前後(2014年3月現在) 容量が大きい方がアクセス速度が速い -逆に容量が小さいとアクセス速度は期待できない 長期間使用するとアクセス速度が落ちていく -ある時期を境目に突然アクセス速度は落ちる 特徴 – SSD(デメリット2) アクセス回数(読み書き)の限界がある -10万回~100万回 -Minecraftのように読み書きを頻繁に行うプロセスがあると 簡単に限界まで到達する -OSも頻繁に読み書きを行うが、何故かメーカーはSSDに OSをインストールしたがる(←察せ) アクセス回数限界に達するとデータが取り出せなくなる -データのサルベージ(救出)はほぼ不可能 -復旧できたとしても壊れたファイルが多数存在してしまう SDカードの構造 図3 SDカード内部構造 特徴 – SDカード(メリット) 小型端末で大容量の記憶域を使える -家電製品が多いが、大半は携帯電話かデジタルカメラ 価格が安価 衝撃に強い -SSDと似た原理+軽量であるため衝撃エネルギーが小さい 多くのメーカーが開発に携わっている -信頼できるメーカーを選べる 特徴 – SDカード(デメリット1) 容量がHDDほどは大きくない -SSDよりは大きいものが開発されてきた パソコンとの接続に専用のカードリーダが別途必要 -初期状態で接続端子があるものも一応ある アクセス速度が遅い -例え高価で高速アクセスを謳っているものでも、パソコンへの アクセス速度はカードリーダの性能依存になる 盗難、紛失が非常に多い -小型化がもたらしたセキュリティ上のリスク 特徴 – SDカード(デメリット2) 種類が多すぎる -SDカード -mini SDカード -micro SDカード -SDHCカード -mini SDHCカード -micro SDHCカード -SDXCカード -micro SDXCカード SDHCカード系列、SDXCカード系列は一切の下位互換性がない 図4 カード毎の対応図 特徴 – SDカード(デメリット3) 転送速度の区分分けが統一されていない -SDカード、SDHCカードはClassで表現 -(遅い) Class2→Class4→Class6→Class10 (速い) -SDHCカードはUHS(Ultra High Speed)で表現 -(遅い) UHSⅠ→UHSⅡ→UHSⅢ (速い) -しかし結局はアクセス速度=カードリーダの性能依存 使用する端末によっては互換性があっても認識できない -特にSDカード、SDHCカードのClass10 特徴 – SDカード(補足1) 名称の区分分け(容量) -SD=8MB~2GB SDHC=4GB~32GB SDXC=64GB~2TB 名称の区分分け(大きさ) -SD=32.0mm×24.0mm -mini SD=21.5×20.0mm -micro SD=11.0mm×15.0mm -小さい方→大きい方にのみ変換可 mini SDは残念な子 -Windows Me的な何か 図5 名称の区分け(大きさ) 特徴 – SDカード(補足2) 試しにSDカードを比較してみる(2014年3月現在) 理論容量 8MB→256GB(262144MB) 図6 2001年 平均転送速度 2MB/s→10MB/s 確認できた最小のSDカード RP-SD008 登場時の価格3,300円 図7 2014年 確認できた最大のSDカード LSD256CTBJP600 現在の価格49,800円 フォーマットとディスクファイルシステム ここからは補助記憶装置内部の初期化の方法 補助記憶装置は何も調整をしないとデータの記録ができない -記録=0と1の2進数の値 フォーマット -記録をするための初期状態を調整 ディスクファイルシステム -フォーマット時に宣言する補助記憶装置の形式 フォーマットの前に・・・ SSDやSDカードはそれぞれNAND型フラッシュメモリとメモリ チップという半導体でできている -つまり記録するための1つ1つの最小の箱型はできている しかしHDDはプラッタという物理的な円盤に磁気記録を行う -どこからどこまでが1つの最小の箱なのかわからない -そこで・・・ HDD、SSD、SDカード全て共通でOS認識最小単位の「クラスタ」 を宣言する HDDを例にしてみる 図8 HDDの区分け セクタ -記憶装置そのものの読み 書きできる最小単位 クラスタ -OSが読み書きするファイル システムとしての単位 トラック -プラッタ上の円周で、分割 するとセクタとクラスタになる セクタをもう少し詳しく セクタはHDD、SSD、SDカードの容量次第で大小が決まる -HDDならばトラック上に、SSDやSDカードならば半導体内に、 0か1を書き込める最小の箱が最初から決まっている -最小の箱が多い=記録密度が高い=容量が大きい 後述するディスクファイルシステムによってサイズが変わる -フォーマット=記録するための初期状態を調整 =色々な分け方が可能 この分割の限界は先述した「壁」 -いくら分けたくても最小の箱は分割できない クラスタをもう少し詳しく クラスタはOSが読み書きの利便性を向上させるためものなので 任意に決めることができる -クラスタは、小さすぎると1つのファイルを多くのクラスタに 分けなければならない -クラスタは、大きすぎると小さいファイルの時に無駄が出る 図9 クラスタの分割例 最小単位が決まったところで クラスタを最小単位として記録するための初期状態を調整 -フォーマット 種類は4つ -ローレベルフォーマット -物理フォーマット -論理フォーマット -アプリケーションフォーマット ローレベルフォーマット 別名「0レベルフォーマット」 パソコンや補助記憶装置を購入した際には既に実施済み -全てのセクタを0で埋める処理(ゼロフィル) -ユーザが実施することは一般的には不可能 工場出荷前は でたらめな磁気が 記録されている 図10 ローレベルフォーマット 全てのセクタを 0で上書きして埋める 物理フォーマット ローレベルフォーマットと似て非なるもの 実施するソフトウェアや環境によって処理内容が変わる -全てのセクタを0で埋める(ゼロフィル)または何らかのでたらめな データで上書きする(消去、初期化) or データのある記憶装置 全てのセクタを0で上書きして埋めるか 図11 物理フォーマット でたらめなデータを上書きする 論理フォーマット 別名「クイックフォーマット」 インデックス(ファイルの存在や位置)のみを削除し、データが消えた ことにする(この段階ではデータは消えていない) -新しいデータが来たら過去のデータの上に上書き処理をする データのある記憶装置 図12 論理フォーマット データは残っているが データがないふりをする 新しいデータで上書きされる アプリケーションフォーマット ディジタル家電の利用に必要なデータを書き込むこと -専用のフォルダ作成、処理方法や記録規格の設定など 先述までのものとは異なり、データを消すことが目的ではない -但し、論理フォーマットをされた上でこの処理を行うことが多い データのある記憶装置 図13 アプリケーションフォーマット 処理に必要なデータを記録 4つのフォーマットの種類 所要時間と処理内容 -ローレベルフォーマット≒物理フォーマット -所要時間大、処理負荷大 -論理フォーマット -所要時間少、処理負荷少 -アプリケーションフォーマット -処理内容に依存 アプリケーションフォーマットのみ、フォーマットというスタンス からは少し外れている ディスクファイルシステム 全てのフォーマットにおいて形式(ディスクファイルシステム)が 存在する -認識できるOSの違い -セクタサイズの違い -ファイルサイズ制限の違い -読み書きの権限の違い などなど・・・ 先述の通りディスクファイルシステムの制約で「壁」ができる -但し、「壁」が関係するものはセクタサイズのみ フォーマット形式を間違えると、最悪の場合データが壊れる 代表的なディスクファイルシステム(1) FAT32 -File Allocation Table 32bitの略 -Microsoftが開発 -主にSDカードのような大容量を想定していないストレージで 用いられる -Windows 98からのWindows NT系列、Mac OS X系列、PS3など 多くの端末で認識可能 -ファイルサイズに最大4GBの制限あり -ボリューム(1つ単位の記憶装置)も最大2TBの制限あり 代表的なディスクファイルシステム(2) NTFS -NT File Systemの略 -Microsoftが開発 -Windows NT系列標準のディスクファイルシステムで、Windows 搭載のパソコンはもれなくこの形式になっている -Windows XPは最大2TBのボリューム制限あり(それ以外は16EB) -Windows 2000以前のNTFSとは互換性がない -Mac OS X系列でNTFSのストレージを開くと、読み取りはできる が書き込みができない 代表的なディスクファイルシステム(3) HFS -Hierarchical File Systemの略 -Appleが開発 -こちらはMac OS X系列標準のディスクファイルシステムで、 Mac OS 8.1以前を搭載しているパソコンはもれなくこの形式に なっている -Mac OS 8.1以上でHFSのストレージを開くと、読み取りはできる が書き込みができない -最大2TBのボリューム制限、最大2GBのファイル制限、31バイト 以内のファイル名長制限と制約が大きい 代表的なディスクファイルシステム(4) HFS+ -Hierarchical File System Plusの略 -Appleが開発 -Mac OS X系列の拡張ディスクファイルシステムで、Mac OS X 8.1以上を搭載しているパソコンやiPod、iPhoneなどのiOSでは この形式が採用されている -ファイルサイズ、ボリューム共に最大8EBの制限 代表的なディスクファイルシステム(5) ext3 -Third extended file systemの略 -オープンソースコミュニティーにて開発 -Linux系列標準ディスクファイルシステムで、 Linuxカーネル 2.4.16から利用可能となった -ext系列のディスクファイルシステムと互換性が高い -最大16GB~2TBのファイルサイズ制限、最大2TBから32TBの ボリューム制限と環境に強く依存する 代表的なディスクファイルシステム(6) XFS -シリコングラフィックスが開発 -UNIX向けに開発された最古のジャーナリングファイルシステム であり、現在はLinuxの殆どが対応している形式 -ファイルサイズ、ボリューム共に最大8EBの制限だが、Linux OSにおける各々の仕様次第で少ない量に制限を受ける -ジャーナリングファイルシステムとある通り、ディスクファイル システムよりも堅牢性が高く、書き換え中に電源断が発生して もデータを保持できる 代表的なディスクファイルシステム(7) exFAT -Extended File Allocation Tableの略 -Microsoftが開発 -Windows Embedded CE 6.0で導入されたフラッシュドライブ 向けに最適化されている新しいFAT規格 -FATと名前にあるが従来のFAT規格とは互換性がない -Windows Vista SP1以降、Mac OS X 10.6.4以降であれば認識 可能で、Linuxでもパッチが作成されつつある -最大16EBのファイルサイズ制限のみがある(ボリューム制限なし) おわりに ご清覧頂きましてありがとうございました! パソコンは定期的にバックアップを!
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