追悼 アンジェイ・ワイダ 監督特集 2016 年 10 月 9 日、映画監督アンジェイ・ワイダの訃報が伝えられま した。ポーランドの巨匠として知られるワイダ監督は、90 年の生涯 を通して40 本もの映画を撮りました。常に政治と歴史に向き合い続 けた芸術家であり、その死は大きな衝撃を持って迎えられました。 Powered by Instytut Polski w Tokio Mermaid Films た父を「カティンの森事件」 (1940 年)で亡くし、10 代半ばにしてレジ した彼は、自らのレジスタンス体験をもとに、1954年、長編映画『世代』 と呼ばれ国際的な評価を獲得、 “ポーランド派”として世界中にその名 ©STUDIO FILMOWE „KADR” ポーランドの最新映画を紹介する本特集。 地下水道 灰とダイヤモンド 監督:アンジェイ・ワイダ 1954 年|87 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 監督:アンジェイ・ワイダ 1956 年|97 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 監督:アンジェイ・ワイダ 1958 年|103 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 ◤ナチスの占領に対する国内軍とワル シャワ市民の抵抗運動=ワルシャワ蜂 起の敗北を、ドキュメンタリー風に捉 えた本作。脚本家のイエジ・ステファ ン・スタヴィンスキをはじめ、キャス ト、スタッフに実際の蜂起に参加した 人々を多数起用。地下水道で繰り広げ られる死闘が、リアルに捉えられてい る。カンヌ国際映画祭審査員特別賞受 賞。 ◤第二次大戦が終結した 1945 年 5 月 8 KANAŁ ◤1942 年、ナチス支配下のワルシャ ワ。貧民窟に育った少年は、人民軍 の少女との出会いを機に反ナチ闘争 に自らのアイデンティティを見出す が…。ワイダの長編第一作であり、 「抵抗三部作」の始まりを告げ、戦 後ポーランドの転換点を示すことに もなった記念すべき作品。『灰とダ イヤモンド』のツィブルスキや、監 督ポランスキーも出演。 11/29 ©STUDIO FILMOWE 17:00・12/12 14:30 11/29 ©KADR Film Studio POPIÓŁ I DIAMENT 19:00・12/9 12/11 11/26 ©Studio Filmowe Zebra 14:15・12/5 12/15 次々に発表されるなど、今、ポーランド映画は勢いに満ちています。 数々の注目作の中から、2016年にポーランドで話題になった 2 作品 や、これまで日本での上映がかなわなかった貴重な作品を紹介。 アンジェイ・ワイダ映画マイスター学校の卒業製作『ヨアンナ』 Powered by CULTURE.PL , Mermaid Films 企画:CULTURE.PL 日から翌朝までの 1 日、労働者党書記 の暗殺を命じられたゲリラ兵の青年マ チェクがたどる悲劇的な運命を描いた 青春劇。反共主義者の暗殺者を主人公 にしたことで当時のポーランド国内で は冷遇されたが、 ヴェネチア国際映画 祭批評家連盟賞受賞を機に、ポーラン ド映画史上最も重要な作品と言われる までになった。 14:40 16:50 質の高い映画が年間 50 本以上製作され、若い監督たちによる良作が ポーリッシュ・ シネマ・ナウ! 世代 企画:ポーランド広報文化センター を監督。本作は 『地下水道』 『灰とダイヤモンド』 とあわせて 「抵抗3部作」 ©STUDIO FILMOWE „KADR” POKOLENIE 1926年、ポーランドで生を受けたアンジェイ・ワイダは、陸軍将校だっ スタンス活動に従事します。第二次世界大戦後ウッチ映画大学に入学 ©FILMOTEKA NARODOWA, STUDIO FILMOWE „OKO”, STUDIO FILMOWE „TOR”, STUDIO FILMOWE „KADR”, STUDIO FILMOWE „PERSPEKTYWA”, STUDIO FILMOWE „ZEBRA” など、昨年の映画祭で人気を博した作品も上映します。若手ポー ランド人俳優たちの名演技にもご注目ください。 Japan Premiere ©Hubert Komerski ジャパンプレミア ©2011 ( WFDIF) Documentary and Feature Film Studio, TOR Film production, PERSPEKTYWA Film production, OKO Film Production, LIGHTCRAFT ©Oleg Mutu RSC 17:00 14:30 ©STUDIO FILMOWE „PERSPEKTYWA” を知らしめました。その後も、第二次世界大戦下のポーランドを舞台 にした作品や、社会主義政権への懐疑を示した作品など、歴史的視点 を取り入れた映画を次々に発表。その反骨精神あふれる作品群は、 ポー 最後の家族 ランド国内はもちろん、世界各国に多大な影響を与えてきました。 サムソン NIEWINNI CZARODZIEJE てきたポーランド映画祭でもその作品が多くの観客を魅了しました。 祖国の芸術文化の発展にも大いに貢献し、2002 年に映画監督ヴォイ チェフ・マルチェフスキと共同でポーランドに映画学校「アンジェイ・ ©Maciej Komorowski ワイダ映画マイスター学校」を創設。自ら教鞭を取るなど、後進の 育成に励んできました。その成果は、 『ヨアンナ』のアネタ・コパチや、 『最後の家族』のヤン・P・マトゥシンスキといった新鋭監督たちの 誕生をもたらし、 『イーダ』のパヴェウ・パヴリコフスキ監督も教師として同校に勤めています。 今年で 5 年目を迎えるポーランド映画祭では、ワイダ監督の代表作 10 作品を上映。また、監督の影響を受けて育った若手監督たちの 最新作も紹介します。その生涯を、 芸術に、 政治に、 そして祖国ポーランドの発展に捧げてきたアンジェイ ・ ワイダ監督。その死を悼みながら、 彼が残した素晴らしい作品群をぜひご堪能ください。 [ 主な監督作品 ] ★ 夜の終りに また、ワイダ監督は大の親日家としても知られ、これまで開催し filmography 戦いのあとの風景 SAMSON ★ KRAJOBRAZ PO BITWIE CZŁOWIEK Z MARMURU 監督:アンジェイ・ワイダ 1960 年|87 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 監督:アンジェイ・ワイダ 1961 年|118 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 監督:アンジェイ・ワイダ 1970 年|107 分|カラー|デジタル・リマスター版 監督:アンジェイ・ワイダ 1977 年|160 分|カラー|デジタル・リマスター版 ◤ワルシャワの街で出会った若い医師 ◤1939 年∼43 年頃のワルシャワ、ユダ ◤1945 年初頭のドイツ。ナチスの強制 ◤スターリン体制が強化された 50 年代 と娘が繰り広げる恋愛ゲーム。 「雪解 け」後のワルシャワの街を記録映画風 に映しながら、男女の心理的駆け引き を描いた本作は、ワイダにとって異色 作とも言える。脚本は作家のアンジェ イェフスキと監督のスコリモフスキが 共同執筆。ポーランドジャズの立役者 でもあるコメダが音楽を担当、劇中に も出演を果たしている。 11/26 アンジェイ・ワイダ ヤ人ゲットーを脱出した青年ヤクプの 数奇な運命。ヤクプは、ナチスによる ユダヤ人迫害やゲットー蜂起まで常に 歴史の波に翻弄され続けるが、いかな る迫害にも屈しない精神的強さを持 つ。その強さが、旧約聖書の英雄サム ソンに重ね合わせられる。本国では知 らぬ人がいないと言われる名作だが、 日本では昨年に初上映された。 16:20*追悼特別プログラム 12/2 19:00 12/8 ©Ziegler Film „KADR” 14:40・12/14 収容所から解放された囚人たちは、米 軍の手で難民収容所に移送される。皮 肉屋の青年作家は、収容所でユダヤ系 の娘と出会うが、束の間の愛はやがて 皮肉な運命にさらされる。原作は、 ポー ランド人作家タデウシュ・ボロフスキ の短編小説。婚約者と共にアウシュ ヴィッツ収容所を生き抜いた作家は、 1951 年に自ら命を絶った。 14:30 12/1 16:50・12/13 14:30 ★ ★ (1980) 『ザ・コンダクター』 (1994) 『ナスターシャ』 コルチャック先生 仕返し (1956) 『地下水道』 (1970) 『戦いのあとの風景』 (1981) 『鉄の男』 『聖週間』 (1995) 監督:アンジェイ・ワイダ 監督:アンジェイ・ワイダ 監督:アンジェイ・ワイダ (1958) 『灰とダイヤモンド』 (1970) 『白樺の林』 (1982) 『ダントン』 (1999) 『パン・タデウシュ物語』 1990 年|118 分|モノクロ|デジタル・リマスター版 2002 年|100 分|カラー|デジタル 2009 年|87 分|カラー|デジタル 『ロトナ』(1959) (1973) 『婚礼』 (1983) 『ドイツの恋』 (2002) 『仕返し』 (1960) 『夜の終りに』 (1974) 『約束の土地』 (1986) 『愛の記録』 (2007) 『カティンの森』 (1961) 『サムソン』 (1976) 『THE DEAD CLASS /死の教室』 (1987) 『悪霊』 (2009) 『菖蒲』 (1962)*オムニバス 『二十歳の恋』 (1977) 『大理石の男』 (1988) 『パリ・ストーリー』 (2013) 『ワレサ 連帯の男』 (1965) 『灰』 (1978) 『麻酔なし』 ◤小児科医で児童文学者としても知ら れる、ユダヤ系ポーランド人ヤヌシュ・ コルチャックの生涯を描いた作品。第 二次大戦が勃発し、コルチャックが運 営するユダヤ人児童のための孤児院 が、ワルシャワ・ゲットー内に移設さ れる。子どもたちを守ろうと奮闘する 彼だが、ナチスの手はすぐそこにまで 迫っていた…。史実をもとに、 ホロコー ストの悲惨さを訴えた名作。 ◤アレクサンデル・フレドロの戯曲に 基づく喜劇作品。18 世紀末頃のポーラ ンドを舞台に、一つの城に住む二家族 の顛末を描く。家同士の対立に振り回 される若い恋人たちといういかにも古 典喜劇らしい内容だが、ポーランド人 への皮肉的な視線も交えられている。 ロマン・ポランスキーの他、ヤヌシュ・ ガヨス、ダニエル・オルブリフスキらポー ランドを代表する俳優たちが出演。 ◤余命わずかな妻と医師の夫。かつて ワルシャワ蜂起で息子を亡くした夫婦 の微妙な距離感と、偶然出会った美し い青年に惹かれる妻の心の動きが、繊 細なタッチによって捉えられていく。 一方で、妻を演じたクリスティナ・ヤ ンダの、長年連れ添った夫を本作撮影 中に亡くすという個人的体験が挟みこ まれ、映画を思わぬ方向へと導く。 (1979) 『ヴィルコの娘たち』 (1990) 『コルチャック先生』 (1992) 『鷲の指輪』 2017 年初夏に岩波ホールにて公開予定 19:00・12/7 14:40・12/9 監督:トマシュ・ヴァシレフスキ 2016 年|104 分|カラー|デジタル ◤1990 年、民主化され自由な風が吹き始めたが、 いまだ前時代の雰囲気が残るポーランド。そこに 生きる境遇の異なる 4 人の女性たちは、一見幸せ そうに見えながらも、新しい時代の流れと共に自 身の生き方を問い直す。2014 年ポーランド映画祭 で人気を博した『真夜中のふたり』の監督による 最新作は、時代に奔放される女性の欲望と恐怖を 見事に描きだす。ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。 16:50 11/30 19:00・12/3 17:00・12/7 KORCZAK 12/5 菖蒲 ZEMSTA 14:40 TATARAK 11/28 19:00・12/4 12/10 17:15 16:50 11/28 17:00・12/6 ◤第二次大戦後にポーランド領となったマズーリ 地方。国内軍兵タデゥシュは、遺品を手渡すため ドイツ兵の妻ルージャを訪ねるが、彼女はドイツ 人として周囲の住人から敬遠され、ソ連兵の残虐 な仕打ちに一人耐えていた。戦争で傷ついた男女 の交流を通して戦後ポーランドの過酷な現実とア イデンティティの複雑さを浮き彫りにした問題作、 待望の日本初上映。 『イーダ』のアガタ・クレシャ をはじめ役者たちの熱演も要注目。 17:15 12/1 17:35 ◤本プログラムは、当初アンジェイ・ワ イダ監督の 90 歳を祝う特別企画の予定 でしたが、突然の訃報により急遽プロ グラムを変更して行ないます。今年9月、 ワイダ監督の自宅にて撮影された、今 回のポーランド映画祭へのビデオメッ セージを上映、スコリモフスキ監督の コメントなども交えてご紹介します。 前半 後半 『夜の終りに』上映 ワイダ監督 2016年 9月のビデオ メッセージの上映+クロストーク *クロストークの登壇者は公式サイトにて紹介予定 企画:ポーランド広報センター 11/26 19:00・12/3 14:40 14:30 ©2014 AKSON STUDIO FILM MIASTO SP. Z.O.O. ©Wajda Studio 16:20(19:00 終了予定) ★印のついた作品の上映前に、アンジェイ・ワイダ監督による特別コメント動画(2 分程度)を上映いたします。 2015 年アカデミー賞 短編ドキュメンタリー賞ノミネート作品 ヨアンナ JOANNA ∼ワイダは語る∼ (1969) 『蠅取り紙』 『残像(原題)』 14:40・12/16 ベクシンスキーの実話を基にした物語。芸術に熱 中するベクシンスキーと、彼を辛抱強く見守る妻。 そして二人の母親たちとラジオ DJ をする変わり者 の息子。そんな彼ら家族にやがて悲運が訪れる。 監督はアンジェイ・ワイダ映画マイスター学校出 身の若干 32 歳。 『イーダ』のダヴィド・オグロド ニク他、ポーランドきっての俳優陣が揃う。2016 年グティニャ映画祭グランプリ受賞。 11/27 RÓŻA 監督:ヴォイテク・スマジョフスキ 2011 年|98 分|カラー|デジタル アンジェイ・ワイダ監督 追悼 特別プログラム Andrzej Wajda (1926∼2016) *オムニバス 12/6 ◤ 「終焉の画家」と呼ばれカルト的人気を誇る画家 ©Jacek Drygała ©AKSON STUDIO/TVP/MEDIAPLUS/ POLISH FILM INSTITUTE ©(2002)ARKA FILM. ポーランドで、英雄として国家に祭り 上げられた一人の男。1976 年、映画を 学ぶ女子大学生は、ドキュメンタリー の製作を通して英雄神話に隠された真 実を描きだそうとし、政府の欺瞞が赤 裸々に暴かれる。本作は当局との間に 大きな軋轢を生むが、国民からは熱狂 的な支持を受けた。カンヌ国際映画祭 批評家連盟賞受賞。 ルージャ/薔薇 ZJEDNOCZONE STANY MIŁOŚCI 監督:ヤン・P・マトゥシンスキ 2016 年|124 分|カラー|デジタル 大理石の男 (1954) 『世代』 (1969) 『すべて売り物』 ユナイテッド・ステイツ・ オブ・ラブ OSTATNIA RODZINA 監督:アネタ・コパチ 2013 年|45 分|カラー|デジタル ◤2010年、末期ガンに冒された女性ヨアンナ・サウィガが、残さ ボディ(原題) れた日々の思い出を息子と共有するためブログを開設。その感 受性豊かな文章に惹かれたアネタ・コパチがドキュメンタリー を製作。繊細なカメラワークとピアノの美しい旋律によって映 しとられる、ヨアンナと家族のかけがえのない日常。 ワルシャワ 44 リベリオン/ワルシャワ大攻防戦 BODY/CIAŁO MISATO 44 監督:マウゴジャタ・シュモフスカ 2015 年|90 分|カラー|デジタル ◤死者との交信ができるセラピストのアン ナと、彼女が治療する摂食障害を患う女性 オルガ。人間のボディ(肉体)との付き合 い方をテーマに、喪失と再生の普遍的な ヒューマンドラマを、ときにユーモアを交 え映しだす。監督は、ポーランドを代表す る若手女性監督シュモフスカ。キェシロフ スキ監督『トリコロール/白の愛』にも出 演したヤヌシュ・ガヨスの演技にも注目。 2015 年ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。 2017年初夏、 シネマート新宿にて公開予定。 11/27 17:00 ※併映『わたしたちの呪縛』 11/30 監督:ヤン・コマサ 2014 年|130 分|カラー|デジタル ◤第二次大戦末期の1944 年、国内軍と市民 によるワルシャワ蜂起の全貌を描いた傑作 戦争映画。劇中の大部分を占める戦闘場面 はほぼ CGI でつくりあげられたが、一方で 当時の街を再現した大掛かりなセットを組 み、当時使用されていた武器や衣装も忠実 に再現するなどリアルさも追求されてい る。本作は、ワルシャワ蜂起 70 周年にあ たる 2014年に公開され、国内興収 NO.1 の 大ヒットを記録した。 12/4 14:40・12/8 16:55 ©WARSAW FILM SCHOOL 17:00・12/2 17:00 2015 年アカデミー賞 短編ドキュメンタリー賞ノミネート作品 わたしたちの呪縛 NASZA KLĄTWA 監督:トマシュ・シリヴィンスキ 2013 年|27 分|カラー|デジタル ◤シリヴィンスキ監督が、きわめて稀な疾患を持って生まれた息 子にカメラを向け、生後約半年間の成長を追ったドキュメンタ リー作品。カメラがとらえるのは、毎晩カウチに座り遅くまで 語り合う夫婦の姿。ときに悲観し悩むふたりだが、徐々に新た な生活へと馴染んでいく様が克明に映しだされる。 ※併映『ヨアンナ』 11/30 17:00・12/2 17:00
© Copyright 2024 Paperzz