レノボ・ジャパンから登場したエントリーワークステーション「ThinkStation E31」は、従来のタワーボディーに加えて、新 たにコンパクトなボディーのSFF(Small Form Factor)を選択できるようになりました。ThinkStation E31 SFFは、 Quadro 600も搭載できますので、2D CADはもちろん、エントリークラスの3D CADにも十分対応できます。さらに、スト レージとしてHDDよりも高速なSSDを搭載したモデルも用意されており、より快適な環境を実現できます。そこで、 AutoCADやAutoCAD Civil 3Dの達人である芳賀百合氏に、SSD搭載ThinkStation E31 SFFの使用感や実力につい てお訊きしました。 置く場所に悩まないThinkStation E31 SFF 芳賀氏は、土木設計事務所でCADオペレーターをつとめるほか、CADインス トラクターも兼任しており、AutoCADやAutoCAD Civil 3Dの使いこなしに関 しては、国内有数のエキスパートである。また、国際的なAutodeskのユー ザーコミュニティであるAUGIのメンバーでもあり、Autodeskが運営する BIM/CIM関連のWebサイトで、AutoCAD Civil 3D入門の連載も行ってい る。 芳賀氏は、これまでThinkStation E30をCAD業務に利用していたが、今回、 最新のThinkStation E31 SFFにリプレイスすることになった。 AutoCADの達人 芳賀百合氏 芳賀氏は、まずそのボディーの小ささに驚 いたという。「ThinkStation E31 SFFの箱を 開けて驚いたのが、本体がとても小さいということです。これまで使っていた ThinkStation E30は、性能や安定性には満足していましたが、ボディーが大きいので 置く場所の確保が必要でした。しかし、ThinkStation E31 SFFなら、置く場所に悩む必 要がありません」(芳賀氏)。ThinkStation E31 SFFのボディーの容積はわずか11リッ トルで、従来のタワーボディー(容積25リットル)の半分以下しかない。縦置き時の横幅 はタワーボディーが175mmだったのに対し、ThinkStation E31 SFFでは99.7mmへと 大きくスリム化されており、ちょっとしたスペースに気軽に置けることが利点だ。 容積わずか11リッターの ThinkStation E31 SFF 排気方向を変えられる排気ダクトが秀逸 芳賀氏は、ThinkStation E31 SFFに採用されている排気ダクトにも大い に感心したという。「背面に取り付けられている排気ダクトは、排気方向 を上や横に切り替えることができます。例えば、オフィスなどで、対面で 座って仕事をすることがありますが、そうした場合にも相手に排気穴から の熱い風が吹き付けることはありません。日本のオフィス事情にあった 嬉しい機能ですね。私はCADスクールの講師もやっていますが、夏の 教室では生徒のPCの背面からの排気で、暑くて大変なんです。排気方 向を変えられるThinkStation E31 SFFなら、そういうことはないですね」 (芳賀氏)。排気方向を変える機構は仕組みとしては単純だが、他社の製 背面に取り付けられている排気ダクトは、 品では見かけない。さらに、USBポートが間隔をあけて配置されている 排気方向を上または横に切り替えることが可能だ ことや、ゴム足の形状や取り付け方法にもこだわっていることなど、使い 勝手を高めるさまざまな工夫が随所に見られることも、レノボ製品ならで はの魅力だ。 さらに、ThinkStation E31 SFFは、動作音が非常に静かなことも高く評価できる。電源投入時にファンが高回転数で回 ることもなく、通電中かどうかわからないほどだ。 SSDモデルはHDDモデルの最大数十倍のアクセス速度を実現 ThinkStation E31 SFFは、コンパクトなボディながら、グラフィックスカードとしてQuadro 600を搭載できることも特徴 だ。Quadro 600は、NVIDIAのワークステーション向けグラフィックスカードの中ではエントリークラスに位置する製品だ が、2D CADはもちろん、エントリーからミドルクラスの3D CADを利用するにも十分な性能を実現している。さらに、スト レージとして、HDDだけでなく、アクセス速度が高速で耐衝撃性も高い、SSDの搭載が可能である。そこで、SSDモデ ルとHDDモデルを用意し、いくつかのベンチマークテストを行ってもらった。検証に利用したマシンの構成は以下に示し た通りで、ストレージ以外のスペックは同じだ。 ThinkStation E31 SFF SSDモデルの構成 ThinkStation E31 SFF HDDモデルの構成 プロセッサー インテル® Xeon®プロセッサー E3-1240(3.40GHz) インテル® Xeon®プロセッサー E3-1240(3.40GHz) メモリー 4GB 4GB ストレージ 128GB SSD 500GB HDD グラフィックス NVIDIA Quadro 600 NVIDIA Quadro 600 OS Windows 7 Professional 64ビット Windows 7 Professional 64ビット まず、ストレージの基本性能を計測する「CrystalDiskMark 3.0.1」の結果から見ていこう。SSDモデルでは、シーケン シャルリードは463MB/s超、シーケンシャルライトは320MB/s超と、非常に高速な値が出ている。今回の評価機に搭載 されていたSSDは、Samsung SSD 830であったが、Samsung SSD 830は、現時点でトップクラスの性能と信頼性を 誇るSSDとして評判の高い製品だ。利用時の体感速度を左右する、ランダムリードやランダムライトの値も非常に優秀 であり、512Kランダムリードは319MB/s、512Kランダムライトは289MB/sに達している。それに対し、HDDモデルの シーケンシャルリードは100MB/s程度、シーケンシャルライトは90MB/s程度であり、SSDモデルと比べると3分の1から 4分の1程度となっている。ランダムリードやランダムライトは、さらにSSDモデルとHDDモデルの性能差が大きく、最大 数十倍にもなっている。 SSDモデルのCrystalDiskMark 3.0.1の結果。 HDDモデルのCrystalDiskMark 3.0.1の結果。 シーケンシャルリードは463MB/s超、 シーケンシャルライトは320MB/s超と、非常に高速だ。 また、ランダムリードやランダムライトもHDDに比べて遙かに速い シーケンシャルリードは100MB/s程度、 シーケンシャルライトは90MB/s程度で、 SSDの3分の1から4分の1程度となっている。 ランダムリードやランダムライトはさらに性能差が大きい ディスクの外周から内周までの転送速度とアクセス時間を計測できる「HD Tune 2.55」の結果は、SSDモデルは、場所 にかかわらず(SSDにはそもそも外周とか内周という概念がないが)、常にほぼ一定の転送速度とアクセス時間である のに対し、HDDモデルでは、最外周が最も転送速度が高速で、内周に向かうにつれて転送速度が低下し、アクセス時 間は逆に増加していることがわかる。常に安定した性能を発揮できることもSSDの利点なのだ。 SSDモデルのHD Tuneの結果。 転送速度は、場所にかかわらず一定で、 アクセス時間も常に0.1ms未満となっている HDDモデルのHD Tuneの結果。 転送速度は、プラッターの外周へのアクセス時が最も高速で、 内周に向かうにつれて速度が低下する。 また、アクセス時間も内周に向かって増加している SSD搭載でAutoCADもより快適に 今度は、最新CADソフト「AutoCAD 2013」を利用してベンチマークテストを行った。結果は、下のグラフにまとめたとお りであり、描画処理が重い「Shade&Edge」や「Sketch」ではSSDモデルとHDDモデルの差が現れているが、それ以外 のテストではそれほど大きな差はない。しかし、SSDモデルでは、アプリケーションの起動やファイルオープン速度が速 いほか、ファイルの自動保存機能を有効にしていても、保存が一瞬で終わるため、作図中に中断されることがないとい うメリットがある。また、3Dでマテリアルを選択する際にも、ファイルの読み込みが速いので、操作が快適になる。「ベン チマークの差以上に、実際の使用感には大きな差があります。ファイルの自動保存などで手が止まらないので、作図が スムーズに進み、ストレスも解消されます。操作が快適になり、精度の高い図面を仕上げることができるので、一度 SSDモデルを使い始めると、もうHDDモデルには戻れませんね」(芳賀氏)。 タワーモデルと全く同じマザーボードの採用でISV認証も安心 このように、ThinkStation E31 SFFは、コンパクトなボディーながら、高い性能と信頼性、使い勝手の良さを実現した ワークステーションであり、AutoCADをはじめとするCAD用途には最適なマシンである。さらに芳賀氏は、カタログス ペックからはわかりにくい、ThinkStation E31 SFFの隠れた利点について次のように語った。 「ThinkStation E31 SFFは、タワーボディーのThinkStation E31と全く同じマザーボードを採用していることも魅力で す。そのため、ISV認証なども共通になっていますので、安心して導入できます。これが、タワーとSFFで違うマザー ボードを採用していると、別の認証になってしまい、認証ドライバを入れ直すなど、手間がかかってしまいます。特に、大 きな会社で大量導入する場合など、システム管理者にとってはありがた いですね」。レノボ・ジャパンのThinkStationシリーズは、今年春から認 証ポリシーが変更され、主要なISV認証をすべてのモデルで取得し、ドラ イバも主要なISV認証が取得済みのものを導入するという方針になった ため、購入時の状態でドライバの更新などを行うことなく、すぐに各種の アプリケーションを利用できるのだ。 ThinkStation E31 SFF 内部の様子 SOHOから学校、官公庁などにお勧め ThinkStation E31 SFF以外のThinkStationシリーズでも、SSD搭載モデルが用意されているが、ThinkStation E31 SFFのみ、SSD容量が128GBと256GBの2モデル用意されており、特に128GB SSDモデルは、クアッドコアのXeonを 搭載しながら16万円台というリーズナブルな価格を実現しており、お買い得である。「これから導入するならやはりSSD モデルをお勧めします。起動も非常に早いので、快適です。前は電源ボタンを押してからお茶を入れに行ったりしていた のですが、SSDモデルだとそんな時間はないですね(笑)」(芳賀氏)。 ThinkStation E31 SFFは、エントリーからミドルクラスの2D CADおよびエントリークラスの3D CADを動かすのに十分なパ フォーマンスを持った製品であり、ボディーが小さいので、個人 事業者やSOHOにも向いている。また、設置スペースが足りな い都内のオフィスや、学校のCADルームや官公庁などへの大 量導入にも最適である。タワーボディーの半分以下の容積しか ないThinkStation E31 SFFは、オフィスなどの貴重なスペース を有効に活用できるワークステーションであり、タワーマシンを 使っていて、もっとコンパクトなマシンが欲しいと思ったことがあ る人には特にお勧めしたい製品だ。
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