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Title
Author(s)
A Study on a Travel Plan Recovery System トラベルプラン
・リカバリ・システムに関する研究
Pablo, Martinez Lerin
Citation
Issue Date
URL
2013-03-23
http://repo.lib.nitech.ac.jp/handle/123456789/21338
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Type
Textversion
Thesis or Dissertation
ETD
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パブロ マルティネズ レリン
PA8LO MART l NEZ LER I N
博士(工学)
博第871号
平成25年3月23日
学位規則第4条第1項該当 課程博士
AStudy on a Travel Plan Recovery System
(トラベルプラン・リカバリ・システムに関する研究)
高橋 直久
犬塚 信博
片山 喜章
論文内容の要旨
新しい旅行計画を作成するとき、他の旅行者の経験は非常に有用である。我々は、GPS
データやトラベルプランから旅行者の経験をある程度知ることができる。
GPSデータを閲覧すると、旅行者が滞在した場所や旅行ルートが分かる。このようなGPS
データは、安価で高性能なGPSロガーが普及し、容易に得られる・ようになってきた。し
かし、位置座標の時系列データであるため、新しい旅行計画作成時の探索や再利用には適
さない。
旅行前に作成するトラベルプランは、多くの場合、簡単すぎる記述や、旅行中のルート
変更などのため、実際の旅行を十分に表していない。そして、文書化せずに、頭の中で計
画を立てるだけで済ましてしまう場合もある。
上記問題に対して、本論文では、トラベルプラン・リカバリ・システム(TPRS)を提案す
る。TPRSは、旅行者の記憶、地図データ、および、旅行の写真やGPSデータなどの旅行記
録から、以下の特徴をもつトラベルプランを小さな労力で短時間に再生する。
(1)旅行前に作成する通常のトラベルプランよりも極めて詳細で実際の旅行を反映し
ている。
(2)図式とテキストで記述され、GPSデータに比べて抽象度が高く、理解が容易で、
データ量が少ない。
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3)テキスト検索により一部を抽出して新たなトラベルプランに再利用することが容易
である。卜
提案システムは、想起、認識、言語化、可視化および圧縮の機能からなる。想起機能は、
不完全な旅行記録を補完するために、旅行者が旅行ルートを思い出して入力する作業を助
ける。認識機能は、旅行記録の中から、関連のあるデータ系列(チャンクと呼ぶ)を識別
し、分類する。言語化機能は、各チャンクにシンボリックな名前を付加して、テキスト表
現を与える。可視化機能は、すべてのチャンクを組み合わせて、全体の概要と局所的な詳
細を表すビューを容易に探索できるように、インタラクティブに利用可能なトラベルプラ
ンを構築する。圧縮機能は、トラベルプランのデータ量を圧縮し、保管や転送を容易にす
る。
本論文では、上記機能を実現するために開発した以下の技術について述べる。
(1)Webマップシステムにおいてトラベルルートを描画するために、マウス位置に応
じて道なり経路を示唆する方式(想起機能の実現)。
(2)GPSデータから走行ペースに基づき滞在区域を推論する方式と地図データに基づ
いてトラベルルートの特性を抽出する方式(認識機能の実現)。
(3)動的ラベル付き図式とテキストを用いたトラベルマップの実現方式(言語化と可
視化機能の実現)。
(4)道路ネットワークとルーティングアルゴリズムを用いたトラベルルートの符号化
方式(圧縮機能の実現)。
上記技術について、それぞれ実験システムを開発して、評価した。(1)では、提案方
式のプロトタイプを開発し、広く使われているMapMyRunのルート描画方式と、21・名の被験
者により、ユーザビリティについて比較評価実験を行った。この結果、提案方式の方が、
ルート描画に要するユーザの操作回数が少ないことが分かった。また、(4)では、実際の
旅行で得られた75のトラベルルートに対して、提案方式と汎用符号化方式を比較評価した。
この結果、提案方式の圧縮率が、汎用符号化方式より高いことが分かった。
これらにより、TPRSは、トラベルプランを再生し、視覚化、保管するシステムとして
実現可能であり、有用であることが分かった。提案したTPRSは、旅の経験に基づいて詳細
なトラベルプランを再生し、オンラインコミュニティで共有する活動を助けて促進させる。
また、旅行代理店は、沢山の詳細なトラベルプランに基づいて、旅行者に、より適切かっ
魅力的な新たなトラベルプランを提供できるようになる。このように、提案システムは、
旅行者とオンラインコミュニティと旅行代理店の間で実りある協力関係を築くための重要
な道具立てとなる。
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論文審査結果の要旨
近年、インターネットと携帯電話の目覚ましい発展により、最寄りのレストランや駅の検索
などの位置情報サービスが広く利用されるようになっている。利用者は、個別にサービスを利
用するだけでなく、位置情報の付いた写真をWebマップに公開して多数の利用者と情報共有
するなど、サービスを通してオンラインコミュニティを形成し、更なる利便性向上を求めてい
る。このため、我々の活動を支え、日常生活を実り豊かにする、位置情報技術に関する、技術
革新や新サービスの創出が期待されている。
このような背景から、本論文では、トラベルプラン・リカバリ・システム(TPRS)を提案し
ている。TPRSは、旅行者の記憶、地図データ、および、旅行の写真やGPSデータなどの旅行
記録から、以下の特徴をもつトラベルプランを小さな労力で短時間に再生するシステムであ
る。(1)旅行前に作成する通常のトラベルプランよりも極めて詳細で実際の旅行を反映して
いる。(2)図式とテキストで記述され、GPSデータに比べて抽象度が高く、理解が容易で、
データ量が少ない。(3)テキスト検索により一部を抽出して新たなトラベルプランに再利用
することが容易である。
提案システムは、想起、認識、言語化、可視化および圧縮の機能からなる。想起機能は、不
完全な旅行記録を補完するために、旅行者が旅行ルートを思い出して入力する作業を助ける。
認識機能は、旅行記録の中から、関連のあるデータ系列(チャンクと呼ぶ)を識別し、分類す
る。言語化機能は、各チャンクにシンボリックな名前を付加して、テキスト表現を与える。可
視化機能は、すべてのチャンクを組み合わせて、全体の概要と局所的な詳細を表すビューを容
易に探索できるように、インタラクティブに利用可能なトラベルプランを構築する。圧縮機能
は、トラベルプランのデータ量を圧縮し、保管や転送を容易にする。
本論文では、上記機能を実現するために開発した以下の技術について述べている。
(1)Webマップシステムにおいてトラベルルートを描画するために、マウス位置に応じて道
なり経路を示唆する方式。
(2)走行ペースに基づきGPSデータから滞在区域を推論する方式。
(3)地図データに基づいてGPSデータからトラベルルートの特性を抽出する方式。
(4)クリック可能な複合ラベル付き図式とテキストを用いたトラベルマップの実現方式。
(5)道路ネットワークとルーティングアルゴリズムを用いたトラベルルートの符号化方式。
上記技術について、それぞれ実験システムを開発して、評価している。これにより、TPRS
は、トラベルプランを再生し、視覚化、保管するシステムとして実現可能であり、有用である
ことを示している。提案したTPRSは、旅の経験に基づいて詳細なトラベルブランを再生し、
オンラインコミュニティで共有する活動を助けて促進させる。また、旅行代理店は、沢山の詳
細なトラベルプランに基づいて、旅行者に、より適切かつ魅力的な新たなトラベルプランを提
供できるようになる。このように、提案システムは、旅行者、オンラインコミュニティ、旅行
代理店の間で実りある協力関係を築くための重要な道具立てとなると期待される。
なお、本論文の内容について、4編の論文が国際会議で発表され、2編の論文の学術論文誌
への掲載が決定されている。これらの成果は、平成23年3月にWebとワイヤレスGISに
関する第10回国際会議W2GIS2011で最優秀プレゼンテーション賞を受賞するなど、関連学会
でも高く評価されている。本論文は、今後益々重要となるインターネット上での位置情報サー
ビスの実現技術への寄与が大きいことから、本学課程博士の博士(工学)の論文として、十分
その価値を有するものと認める。
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