第3章 省エネ基準の解説と計算の手引

第3章
省エネ基準の解説と計算の手引
3.1
外壁、窓等を通しての熱の損失の防止のための措置
3.1.1
概要
外壁、窓等の断熱及び日射遮蔽性能の評価方法については、住戸全体でチェックする方
法と、各部位で評価する方法の二通りがある。住戸全体で評価する方法には、年間暖冷房
負荷による評価【Aタイプ】と熱損失係数及び夏期日射取得係数による評価【Bタイプ】
の二通りがある。各部位で評価【Cタイプ】する場合は、躯体と開口部についての評価が
必要であり、躯体については断熱性能評価、開口部については断熱性と日射遮蔽性能の評
価が必要である。
どの方法を採用したとしても、届出の必要はないが、設計・施工段階で、気密、防露、
換気、通風等への配慮は従来通り求められる。
A、B タイプの方法では、詳細な計算が必要となるため、その実施においては、ある程度
計算に慣れた設計者等の協力が必要となるが、C タイプは、断熱材やサッシ、ガラスの仕
様を選択するだけで性能が明らかになる方法である。難易度は、A から順に下がっていく
と考えて良い。
表 3.1.1-1 外壁、窓等の断熱、日射遮蔽性能の評価方法組合せ例
【評価方法の細目】
【評価方法の種別】
評価対象
上下いずれかを採用
左右いずれかを採用
□ 住戸全体で評価
(性能基準)
住戸の
外皮全体
→【評価方法の細目】にも
チェックを入れる
【Cタイプ】
□ 各部位で評価
(仕様基準)
→【評価方法の細目】にも
チェックを入れる
評価方法の種別でチェックした方法について
躯体
開
口
部
【Aタイプ】
□床面積あたりの
年間暖冷房負荷
□熱貫流率(U 値)
断熱性
□熱貫流率(U 値)
日射
遮蔽性
□夏期日射
侵入率(η 値)
【Bタイプ】
□熱損失係数(Q 値)
及び 夏期日射
取得係数(μ 値)
□断熱材の
熱抵抗値(R 値)
□建具等の仕様基準
□建具等の仕様基準
注)小規模な住宅にあっては、熱損失係数(Q 値)の基準値を緩和することができる。
共同住宅は床面積 60 ㎡以下、戸建て住宅等は床面積 100 ㎡以下の住宅が対象となる。
Qss=(1+0.005(As-S))Qs
Qss:緩和後の Q 基準値
Qs:緩和前の Q 基準値
As:60(共同住宅)100(戸建住宅等) S:当該住宅の床面積
89
3.1.1.1 A タイプ(年間暖冷房負荷)による評価方法
地域の気象データ
住宅全体で評価する。暖房、冷房温度
とするために必要となる熱量(暖冷房負
a(屋根)
荷)を求めるもので、計算書の添付が必
要である。計算のためのプログラムや気
e(換気)
象データが必要となる。
d(開口部)
「年間暖冷房負荷の基準」は、地域の 1
年間の気象データを用いて計算した、暖
房と冷房に必要な熱量を基準値としてお
b(外壁)
り、以下のような特徴がある。
c(床)
熱損失に関わる事項
日射取得に関わる事項
・
1 年間の暖冷房負荷の合計に対して基準が設けられている。
・
最も計画・設計の自由度が高い。
・
年間暖冷房負荷の計算には、特別評価方法認定を受けた計算プログラムが必要。
3.1.1.2 B タイプ(熱損失係数と夏期日射取得係数)による評価方法
住宅全体で評価する。各部位の断熱性
a(屋根)
建物内外温度差
Δt=1℃
能に基づく貫流熱損失と換気による熱損
失の合計と、外壁・屋根・開口部の日射
取得量の合計を求めるもので、各部位の
e(換気)
面積、気積算出と表計算程度の計算を必
d(開口部)
要とする。計算書の添付が必要である。
「熱損失係数(Q 値)と夏期日射取得係
数(μ(ミュー)値)の基準」は、室内外
b(外壁)
の温度差が 1℃の場合の住宅全体の熱損
c(床)
失量の合計(床面積当たり)と、建物に
よる遮蔽がない場合に取得される日射熱
熱損失に関わる事項
日射取得に関わる事項
量に対する実際に建物内部で取得される
日射熱量の比に対して基準が設けられている。
熱損失係数、夏期日射取得係数は、冬期における熱ロス、夏期における日射取得熱の量
で評価するため、値が小さいほど性能が高い。
この評価方法には、以下のような特徴がある。
90
・
外壁、床、屋根・天井、開口部と換気による熱損失と、外壁、屋根、開口部の日
射取得に関わる熱量の合計に対して、基準値が設けられている。
・ 共同住宅は、床面積 60 ㎡以下の場合に熱損失係数基準値の緩和がある。
・
C タイプに比べると、計画・設計の自由度が高い。
・
熱損失係数と夏期日射取得係数の算出には、表計算程度の計算が必要。
【共同住宅における評価対象住戸】
共同住宅の場合は、室内温熱環境に対する屋外気象条件の影響の度合いは、住戸の位置
によって異なる。よって、住戸全体で評価する「熱損失係数、夏期日射取得係数」及び「年間
暖冷房負荷」による省エネルギー性能の評価を行う場合は、どの住戸で評価を行うか注意が
必要である。
評価を行う住戸の考え方は、以下に示すとおりである。
各住戸を評価する。【原則】
↓
....
各住戸の断熱仕様が全て同じ場合は、最も床面積当たりの熱損失の大きい住戸で代
表して評価してもよい。但し、代表住戸にて評価されない部位がある場合は、代表
住戸に含まれない部位を含む住戸のうち、最も床面積当たりの熱損失が大きい住戸
での評価も併せて行なわなければならない。
参考:床面積当たりの熱損失の大小は、床面積に対する外気に面する部位の表面積の
割合によって目安をたてることができる。
(各住戸が同じ形状、同じ断熱仕様の
場合は、最上階妻側住戸であることが多い。その場合、一般的には床が評価さ
れないため、少なくとも他に最下階妻側住戸も評価する必要がある。
)
注)年間暖冷房負荷、夏期日射取得係数は、日射の影響が結果に反映されるため、代
表住戸を予め定めることは一般的に容易ではない。従って、数値が大きくなりそ
うな住戸を数戸選定し、それらの年間暖冷房負荷あるいは夏期日射取得係数を計
算して、最大のものを決定し、評価を行うこと。
最上階妻側住戸
評価される部位
・屋根
・外壁
・開口部
①
①
②
③
ピロティ
91
評価されない部位
・外気に接する床
・床
別住戸にて評価する。
④住戸の方が、①住戸より熱損失が大きい。
①
④
ピロティ
3.1.1.3 C タイプ(各部位の断熱性能等)による評価方法
各部位での評価である。躯体の各部位
a(屋根)
ごと及び開口部について、断熱材・開口
部の仕様若しくは性能値で評価する。仕
様の確認若しく簡単な四則計算で評価可
e(換気)
能である。
d(開口部)
「設計及び施工の指針」は、設計時に計
画する断熱性能等を部位別に基準を定め
ている他、施工法を具体的に示したもの
b(外壁)
である。この評価方法には、以下のよう
c(床)
な特徴がある。
熱損失に関わる事項
日射取得に関わる事項
・
外壁、床、屋根・天井、開口部それぞれに対して、断熱・気密・日射遮蔽の基準
が設けられている。
・
躯体は、「熱貫流率の基準」、もしくは「断熱材の熱抵抗の基準」のいずれかによる。
・ 開口部は、「熱貫流率・夏期日射侵入率の基準」、もしくは「建具等の仕様の基準」
のいずれかによる。
・
断熱材や開口部の仕様を選択する場合は、特に計算等の必要はない。
92
各部位で評価
躯体の各部位ごと及び開口部について、
断熱材・開口部の仕様若しくは性能値で評価する。
3
項
目
必
須
躯体各部位の
断熱性能
選
択
□ 断熱材の種別及び厚さ
□ 断熱材の熱抵抗値
□ 熱貫流率
開口部の
断熱性能
選
択
□ 建具の種別及びガラスの種別
□ 開口部の熱貫流率
開口部の
日射遮蔽性能
選
択
□ ガラスの種別及び
付属部材(ブラインド等)
、庇・軒等の有無
□ 開口部の日射侵入率
図 3.1.1.3-1 C タイプ(各部位での断熱性能等)の特徴
(1)
躯体各部位の断熱性能
基準値は、地域別、部位別及び構造・断熱工法別に定められている。
断熱材の施工法の主たる施工法について届出をする。
「断熱材の種別及び厚さ」、
「熱貫流
率(U 値)」若しくは「断熱材の熱抵抗(R 値)
」の基準のいずれかから選択できる。複数の
基準を選んで記載することも可能である。
また、鉄筋コンクリート造等及び鉄骨造については、
「断熱材の種別及び厚さ」、
「熱貫流
率」若しくは「断熱材の熱抵抗」の基準に加えて、構造熱橋部の断熱補強に関する規定に
基づく措置が必要であることに注意されたい。
断熱材の種別及び厚さ
断熱材は商品名や一般名称ではなく、P.139、表 3.1.3-2 に記載の名称とし、さらに
断熱材区分(A-1~F)も併記することが望ましい。
熱貫流率
熱貫流率は、部位を構成する各材料熱抵抗と部位表面空気の熱抵抗の合計であらわ
す。複数の断面構成、金属部材などの熱橋がある場合は断面比率、熱橋の程度に応
じた計算が必要となる。
当該部位の熱貫流率が基準値以下であることが求められる。
断熱材の熱抵抗値
断熱材のみの熱抵抗値を届け出る。
断熱材の熱抵抗=
断熱材の厚さ[m]
断熱材の熱伝導率[W/(m・K)] (単位がmであることに注意)
当該部位の断熱材の熱抵抗が基準値以上であることが求められる。
93
(2)
開口部の断熱性能
開口部の断熱性能の基準は地域区分別に定められており、構造、断熱工法による分類は
ない。
対象となるのは主たる窓である。
「建具の種別とガラスの種別の組合せ」若しくは「熱貫
流率(U 値)」の基準から選択できる。両方の基準を記載することも可能である。
建具の種別とガラスの種別の組合せ
開口部の熱貫流率基準を満たす具体的な開口部仕様を建具の種類とガラスの性能
(熱貫流率)で示した基準である。建具の種別は、材質(プラスチック製、木製、
金属製、複合材料製、金属製熱遮断構造等)のほか、一重構造か二重(三重)構造
かについても明示する。ガラスの種類は、複層ガラス、単板ガラスの種別のほか、
複層ガラスの場合は、空気層の厚さ及び普通ガラスか低放射ガラスの別についても
明示する。
熱貫流率
窓、玄関ドア及び勝手口ドアなど熱的境界にある開口部の熱貫流率を定めている。
当該開口部の熱貫流率が基準値以下であることが求められる。
建具とガラスの組合せによって決まり、
「住宅の省エネルギー基準の解説(財団法
人建築環境・省エネルギー機構)」に代表例が記載されている。
(3)
開口部の日射遮蔽性能
開口部の日射遮蔽性能の基準は地域区分別に定められており、構造、断熱工法による分
類はない。
対象となるのは主たる窓である。
「ガラスの種別及び付属部材(ブラインド等)、ひさし・
軒等の組合せ」若しくは「開口部の日射侵入率(η(イータ))」の基準から選択できる。
両方の基準を記載することも可能である。
ガラスの種別及び付属部材(ブラインド等)、ひさし・軒等の組合せ
地域別に窓の設置される方位(真北±30 度、それ以外)に応じて具体的なガラス
の日射侵入率と付属部材(ブラインド等)、及びひさし・軒等の組合せ仕様を示した
基準である。
ガラスの日射遮蔽性能については、ガラスの材質において日射遮蔽措置がなされ
ている場合は、ガラスの日射侵入率を届け出る。付属部材については、窓の日射遮
蔽措置としてレースカーテン等の付属部材が設置される場合は、付属部材の名称を
届け出る。ひさし・軒等に関しては、窓の日射遮蔽として有効な「ひさし・軒」等
がある場合はその有無を届け出、断面図等の添付書類にて寸法等を示す。
開口部の日射侵入率
地域別に窓の設置される方位(真北±30 度、それ以外)に応じて窓の夏期日射侵
入率の基準を定めている。当該窓の値が基準値以下であることが求められる。
94
3.1.1.4 評価方法の詳細
これらの評価方法の詳細は財団法人建築環境・省エネルギー機構が発行している「住宅
の省エネルギー基準の解説」を参照すること。
各評価の基準値を以下に示す。
(1)
年間暖冷房負荷の基準値
表 3.1.1.4-1 年間暖冷房負荷基準値[MJ/(㎡・年)]
地域区分
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
基準値
390
390
460
460
350
290
〈暖房度日 4500 度・日を超える地域の基準値補正〉
表 3.1.1.4-2 に示す暖房度日 4500 度・日を超える地域は、当該地域の暖房度日の値
を以下の式に代入して年間暖冷房負荷の基準値を補正することができる。
L=0.09×D-15
L:年間暖冷房負荷基準値[MJ/(㎡・年)]
D:暖房度日(D18-18)[度・日]
表 3.1.1.4-2 D18-18 の暖房度日が 4500 度・日を超える市町村
都道府県名
北海道
市町村名
旭川市、釧路市、帯広市、北見市、夕張市、網走市、稚内市、紋別市、
士別市、名寄市、根室市、深川市、富良野市、ニセコ町、真狩村、留
寿都村、喜茂別村、京極町、倶知安町、沼田町、幌加内町、鷹栖町、
東神楽町、当麻町、比布町、愛別町、上川町、東川町、美瑛町、上富
良野町、中富良野町、南富良野町、占冠村、和寒町、剣淵町、下川町、
美深町、音威子府村、中川町、小平町、苫前町、羽幌町、遠別町、天
塩町、幌延町、猿払村、浜頓別町、中頓別町、枝幸町、豊富町、大空
町、美幌町、 津別町、斜里町、清里町、小清水町、訓子府町、置戸
町、佐呂間町、遠軽町、上湧別町、湧別町、滝上町、興部町、西興部
村、雄武町、伊達市(旧大滝村に限る。)、むかわ町(旧穂別町に限
る。)、日高町(旧日高町に限る。)、平取町、新ひだか町(旧静内
町に限る。)、音更町、士幌町、上士幌町、鹿追町、新得町、芽室町、
中札内村、更別村、幕別村、大樹町、広尾町、池田町、豊頃町、本別
町、足寄町、陸別町、浦幌町、釧路町、厚岸町、浜中町、標茶町、弟
子屈町、鶴居村、白糠町、別海町、中標津町、標津町、羅臼町、
95
(2)
熱損失係数と夏期日射取得係数の基準値
表 3.1.1.4-3 熱損失係数の判断基準値
地域の区分
単位
W/(㎡・K)
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
1.6
1.9
2.4
2.7
3.7
1.634
2.064
2.322
3.182
kcal/(㎡・h・℃) 1.376
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
表 3.1.1.4-4 夏期日射取得係数の基準値(単位:無次元)
地域の区分
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
0.08
Ⅳ
Ⅴ
0.07
Ⅵ
0.06
床面積の小さな住宅では、断熱性を高めても、熱損失係数が床面積の大きな住宅ほど
には小さくならない性質があるために設けられたものである。戸建住宅で 100 ㎡以下、
共同住宅で 60 ㎡以下の住宅においては、熱損失係数の基準値は次式によって補正してよ
い。
QSS=(1+0.005(AS-S))QS
ここで、
QSS=修正後の熱損失係数の基準値[W/(㎡・K)]
QS=修正前の熱損失係数の基準値[W/(㎡・K)]
AS=本修正において基準となる床面積(戸建で 100 ㎡、共同で 60 ㎡)[㎡]
S=当該住宅の床面積の合計[㎡](ただし、S≦AS)
96
(3)
熱貫流率の基準値
表 3.1.1.4-5 構造・断熱工法、部位別の熱貫流率基準値
*(
)は、適用地域
鉄筋コンクリート造等以外
備考
鉄筋コンクリート造等
木造、枠組壁工法
内断熱工法
外断熱工法
熱橋を除いた部分の熱貫流率
で評価
屋根
鉄骨造
断熱工法は問わない
柱等の木材の
熱橋を勘案した
平均熱貫流率で
評価
金属熱橋を勘
案した実質熱
貫流率で評価
0.32(Ⅰ)
0.27(Ⅰ)
0.41(Ⅱ)
0.35(Ⅱ)
0.37(Ⅲ~Ⅵ) 0.43(Ⅲ~Ⅵ)
0.17(Ⅰ)
0.24(Ⅱ~Ⅵ)
0.49(Ⅰ)
0.39(Ⅰ)
0.58(Ⅱ)
0.49(Ⅱ)
0.75(Ⅲ~Ⅴ) 0.86(Ⅲ~Ⅴ)
1.76(Ⅵ)
1.59(Ⅵ)
0.35(Ⅰ)
0.53(Ⅱ~Ⅵ)
外気に
接する
部分
0.38(Ⅰ)
0.27(Ⅰ)
0.46(Ⅱ)
0.35(Ⅱ)
0.37(Ⅲ~Ⅴ) 0.54(Ⅲ~Ⅴ)
0.24(Ⅰ、Ⅱ)
0.34(Ⅲ~Ⅴ)
その他
の部分
0.38(Ⅰ)
0.46(Ⅱ)
0.53(Ⅲ~Ⅴ)
0.34(Ⅰ、Ⅱ)
0.48(Ⅲ~Ⅴ)
天井
壁
屋根と天
井は同じ
基準
床
土 間 床
等 の 外
周部
外気に
接する
部分
0.47(Ⅰ)
0.51(Ⅱ)
0.58(Ⅲ~Ⅴ)
0.37(Ⅰ、Ⅱ)
0.53(Ⅲ~Ⅴ)
その他
の部分
0.67(Ⅰ)
0.73(Ⅱ)
0.83(Ⅲ~Ⅴ)
0.53(Ⅰ、Ⅱ)
0.76(Ⅲ~Ⅴ)
97
Ⅵ 地 域
は、基準
値を定め
て い な
い。
(4)
断熱材の熱抵抗の基準値に適合する断熱材必要厚さ
表 3.1.1.4-6 地域別断熱材の必要厚さ
(Ⅰ地域)
住宅の種類
断熱材の
施工法
断熱材
の熱抵
抗の値
部位
屋根または天井
壁
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根または天井
壁
内断熱工法 床
鉄筋コンク
リート造等
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根また 屋根
は天井
天井
壁
外断熱工法 床
木造
充填断熱工法
枠組壁工法 充填断熱工法
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根また 屋根
は天井
天井
壁
床
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根または天井
壁
床
木造、
外張断熱工法
枠組壁工法
床
または
または
内張断熱工法
鉄骨造
土間床等
の外周部
鉄骨造
外気に接する部分
その他の部分
外気に接する部分
その他の部分
断熱層を
外装材の
貫通する
熱抵抗
金属部分
なし
外張断熱工法
0.56以上
壁
および
有り
内張断熱工法 (一般部)
0.15以上 なし
以外
0.56未満 有り
なし
0.15未満
有り
98
断熱材の厚さ
(単位:ミリメートル)
3.6
2.3
3.2
2.2
1.7
0.5
3.0
1.8
2.2
A-1
190
120
170
115
90
30
160
95
115
A-2
180
115
160
110
85
25
150
90
110
B
165
105
145
100
80
25
135
85
100
C
145
95
130
90
70
20
120
75
90
D
125
80
110
75
60
20
105
65
75
E
105
65
90
65
50
15
85
55
65
F
80
55
75
50
40
15
70
40
50
1.7
0.5
6.6
5.7
3.3
5.2
3.3
3.5
1.2
6.6
5.7
3.6
4.2
3.1
3.5
1.2
5.7
2.9
3.8
90
30
345
300
175
275
175
185
65
345
300
190
220
165
185
65
300
155
200
85
25
330
285
165
260
165
175
60
330
285
180
210
155
175
60
285
145
190
80
25
300
260
150
235
150
160
55
300
260
165
190
140
160
55
260
135
175
70
20
265
230
135
210
135
140
50
265
230
145
170
125
140
50
230
120
155
60
20
225
195
115
180
115
120
45
225
195
125
145
110
120
45
195
100
130
50
15
185
160
95
150
95
100
35
185
160
105
120
90
100
35
160
85
110
40
15
150
130
75
115
75
80
30
150
130
80
95
70
80
30
130
65
85
3.5
1.2
185
65
175
60
160
55
140
50
120
45
100
35
80
30
2.12
3.57
2.43
3.57
3.00
3.57
115
190
130
190
160
190
110
180
125
180
150
180
100
165
110
165
135
165
85
145
100
145
120
145
75
125
85
125
105
125
60
100
70
100
85
100
50
80
55
80
70
80
(Ⅱ地域)
住宅の種類
断熱材の
施工法
断熱材
の熱抵
抗の値
部位
屋根または天井
壁
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根または天井
壁
内断熱工法 床
鉄筋コンク
リート造等
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根また 屋根
は天井
天井
壁
外断熱工法 床
木造
充填断熱工法
枠組壁工法 充填断熱工法
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根また 屋根
は天井
天井
壁
床
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根または天井
壁
床
木造、
外張断熱工法
枠組壁工法
床
または
または
内張断熱工法
鉄骨造
土間床等
の外周部
鉄骨造
外気に接する部分
その他の部分
外気に接する部分
その他の部分
断熱層を
外装材の
貫通する
熱抵抗
金属部分
なし
外張断熱工法
0.56以上
壁
および
有り
内張断熱工法 (一般部)
0.15以上 なし
以外
0.56未満 有り
なし
0.15未満
有り
99
断熱材の厚さ
(単位:ミリメートル)
2.7
1.8
2.6
1.8
1.4
0.4
2.2
1.5
1.8
A-1
145
95
140
95
75
25
115
80
95
A-2
135
90
130
90
70
20
110
75
90
B
125
85
120
85
65
20
100
70
85
C
110
75
105
75
60
20
90
60
75
D
95
65
90
65
50
15
75
55
65
E
80
55
75
55
40
15
65
45
55
F
60
40
60
40
35
10
50
35
40
1.4
0.4
4.6
4.0
2.2
5.2
3.3
3.5
1.2
4.6
4.0
2.3
4.2
3.1
3.5
1.2
4.0
1.7
3.8
75
25
240
210
115
275
175
185
65
240
210
120
220
165
185
65
210
90
200
70
20
230
200
110
260
165
175
60
230
200
115
210
155
175
60
200
85
190
65
20
210
180
100
235
150
160
55
210
180
105
190
140
160
55
180
80
175
60
20
185
160
90
210
135
140
50
185
160
95
170
125
140
50
160
70
155
50
15
160
140
75
180
115
120
45
160
140
80
145
110
120
45
140
60
130
40
15
130
115
65
150
95
100
35
130
115
65
120
90
100
35
115
50
110
35
10
105
90
50
115
75
80
30
105
90
55
95
70
80
30
90
40
85
3.5
1.2
185
65
175
60
160
55
140
50
120
45
100
35
80
30
1.08
2.22
1.47
2.22
1.72
2.22
60
120
80
120
90
120
55
115
75
115
90
115
50
100
70
100
80
100
45
90
60
90
70
90
40
80
50
80
60
80
35
65
45
65
50
65
25
50
35
50
40
50
(Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ地域)
住宅の種類
断熱材の
施工法
断熱材
の熱抵
抗の値
部位
屋根または天井
壁
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根または天井
壁
内断熱工法 床
鉄筋コンク
リート造等
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根また 屋根
は天井
天井
壁
外断熱工法 床
木造
充填断熱工法
枠組壁工法 充填断熱工法
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根また 屋根
は天井
天井
壁
床
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根または天井
壁
床
木造、
外張断熱工法
枠組壁工法
床
または
または
内張断熱工法
鉄骨造
土間床等
の外周部
鉄骨造
外気に接する部分
その他の部分
外気に接する部分
その他の部分
断熱層を
外装材の
貫通する
熱抵抗
金属部分
なし
外張断熱工法
0.56以上
壁
および
有り
内張断熱工法 (一般部)
0.15以上 なし
以外
0.56未満 有り
なし
0.15未満
有り
100
断熱材の厚さ
(単位:ミリメートル)
2.5
1.1
2.1
1.5
0.8
0.2
2.0
0.9
1.5
A-1
130
60
110
80
45
15
105
50
80
A-2
125
55
105
75
40
10
100
45
75
B
115
50
95
70
40
10
90
45
70
C
100
45
85
60
35
10
80
40
60
D
85
40
75
55
30
10
70
35
55
E
70
35
60
45
25
10
60
30
45
F
55
25
50
35
20
5
45
20
35
0.8
0.2
4.6
4.0
2.2
3.3
2.2
1.7
0.5
4.6
4.0
2.3
3.1
2.0
1.7
0.5
4.0
1.7
2.5
45
15
240
210
115
175
115
90
30
240
210
120
165
105
90
30
210
90
130
40
10
230
200
110
165
110
85
25
230
200
115
155
100
85
25
200
85
125
40
10
210
180
100
150
100
80
25
210
180
105
140
90
80
25
180
80
115
35
10
185
160
90
135
90
70
20
185
160
95
125
80
70
20
160
70
100
30
10
160
140
75
115
75
60
20
160
140
80
110
70
60
20
140
60
85
25
10
130
115
65
95
65
50
15
130
115
65
90
60
50
15
115
50
70
20
5
105
90
50
75
50
40
15
105
90
55
70
45
40
15
90
40
55
1.7
0.5
90
30
85
25
80
25
70
20
60
20
50
15
40
15
1.08
2.22
1.47
2.22
1.72
2.22
60
120
80
120
90
120
55
115
75
115
90
115
50
100
70
100
80
100
45
90
60
90
70
90
40
80
50
80
60
80
35
65
45
65
50
65
25
50
35
50
40
50
(Ⅵ地域)
住宅の種類
断熱材の
施工法
断熱材の厚さ
(単位:ミリメートル)
断熱材
の熱抵
抗の値
部位
屋根または天井
壁
2.5
0.3
A-1
130
20
A-2
125
15
B
115
15
C
100
15
D
85
15
E
70
10
F
55
10
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根または天井
壁
2.0
0.3
105
20
100
15
90
15
80
15
70
15
60
10
45
10
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根また 屋根
は天井
天井
壁
4.6
4.0
2.2
240
210
115
230
200
110
210
180
100
185
160
90
160
140
75
130
115
65
105
90
50
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根また 屋根
は天井
天井
壁
4.6
4.0
2.3
240
210
120
230
200
115
210
180
105
185
160
95
160
140
80
130
115
65
105
90
55
外気に接する部分
その他の部分
土間床等 外気に接する部分
の外周部 その他の部分
屋根または天井
壁
4.0
1.7
210
90
200
85
180
80
160
70
140
60
115
50
90
40
1.08
2.22
1.47
2.22
1.72
2.22
60
120
80
120
90
120
55
115
75
115
90
115
50
100
70
100
80
100
45
90
60
90
70
90
40
80
50
80
60
80
35
65
45
65
50
65
25
50
35
50
40
50
内断熱工法 床
鉄筋コンク
リート造等
外断熱工法 床
木造
充填断熱工法
枠組壁工法 充填断熱工法
床
床
木造、
外張断熱工法
枠組壁工法
床
または
または
内張断熱工法
鉄骨造
土間床等
の外周部
鉄骨造
外気に接する部分
その他の部分
外気に接する部分
その他の部分
断熱層を
外装材の
貫通する
熱抵抗
金属部分
なし
外張断熱工法
0.56以上
壁
および
有り
内張断熱工法 (一般部)
0.15以上 なし
以外
0.56未満 有り
なし
0.15未満
有り
101
(5)
鉄骨造の外張断熱、内張断熱以外の壁の基準
表 3.1.1.4-7 鉄骨造、外張断熱工法及び内張断熱工法以外とする場合の壁の断熱基準
地域
外装材の熱抵抗
一般部の
断熱材の熱抵抗の基準値
[(㎡・K)/W]
断熱層を
[(㎡・K)/W]
貫通する
断熱材を施工する箇所の区分
金属部材
鉄骨柱、鉄骨
の有無
梁部分
一般部
一般部にお
いて断熱層
を貫通する
金属部材
Ⅰ
0.56 以上
無し
1.91
2.12
有り
1.91
3.57
無し
1.91
2.43
有り
1.91
3.57
無し
1.91
3.00
有り
1.91
3.57
無し
0.63
1.08
有り
0.63
2.22
0.15 以上 0.56 未
無し
0.85
1.47
満
有り
0.85
2.22
0.15 未満
無し
1.27
1.72
有り
1.27
2.22
無し
0.08
1.08
有り
0.08
2.22
0.15 以上 0.56 未
無し
0.31
1.47
満
有り
0.31
2.22
0.15 未満
無し
0.63
1.72
有り
0.63
2.22
0.15 以上 0.56 未
0.72
満
0.15 未満
Ⅱ
Ⅲ
・
Ⅳ
・
Ⅴ
・
Ⅵ
0.56 以上
0.56 以上
第一号様式には、一般部(○で囲んだ箇所)を記入。
添付書類には、3か所とも記入し、提出すること。
102
1.08
1.43
0.33
0.50
0.72
0.33
0.50
0.72
3.1.2
外壁、窓等の断熱、日射遮蔽性能の評価計算
3.1.2.1 RC 造における断熱、日射遮蔽性能の評価
(1)
評価方法例に用いるモデル
ここでは評価方法例に用いるRC造共同住宅のサンプルモデルを示す。モデルは前項で
示した原則に従い、最上階妻側住戸とし、建設地はⅣ地域とする。サンプルモデルの平面
図及び断面図等を図 3.1.2.1-1 に示す。
6500
2830
1420
2250
2470
開口 3
2180
廊下
4490
開口 4
洋間 1
3340
玄関
キッ チン
ト
イ
レ
風呂
2840
780
押入
2300
12000
洋間 2
洗面 所
910
3640
4430
押入
開口 1
開口 2
3770
2730
2800
1850
650
2600
650
南
ベランダ側
1455
495
100
2180
1500
図 3.1.2.1-1 RC造共同住宅計算モデル平面図、断面図
103
北
廊下側
表3.1.2.1-1 RC造共同住宅計算モデル躯体仕様
躯体仕様 屋根スラブ 150mm
延べ面積 70.0m2
階高
2,800mm
開口比率 20.0%
開口面積 14.0m2
床スラブ
200mm
外壁
135mm
戸境壁
150mm
間仕切壁
150mm
当該モデルの断熱仕様は表 3.1.2.1-2 に示す通りである。なお、断熱仕様は、
「設計及び
施工の指針」の「断熱材の熱抵抗の基準」の省エネルギー地域区分・Ⅳ地域に適合する仕様
を想定している。
表 3.1.2.1-2 当該モデルの断熱仕様(断熱構造とする部分)
断熱材の
施工方法
断熱材の種類
断熱材の厚さ
[㎜]
熱抵抗値
[(m2・K)/W]※2
屋根
外断熱
85
3.036
外壁
内断熱
Eランク※1
(λ=0.028 W/mK)
Dランク※1
(λ=0.034 W/mK)
35
1.029
※1 熱伝導率による断熱材のランク分けをP.140、表 3.1.3-2 に示す。
※2
この計算例では、「設計及び施工の指針」3(2)「断熱材の熱抵抗の基準」表下
欄 12(※3)を適用することとし、表 3.1.2.1-3 の補正後の熱抵抗基準より性能
の上回る仕様とした。
表 3.1.2.1-3 補正後の熱抵抗基準
熱抵抗の基準値[(m2・K)/W] 乗じる値
補正後の熱抵抗基準[(m2・K)/W]
屋根
2.0
1.5
3.00
外壁
1.1
0.9
0.99
※3
「設計及び施工の指針」3(2)「断熱材の熱抵抗の基準」表下欄 12 では、表
3.1.2.1-4①、②のいずれかに該当する場合、鉄筋コンクリート造の内断熱工法
の外壁について、熱抵抗値基準に 0.9 を乗じた値以上とすることができるとし
ている。
104
表 3.1.2.1-4 鉄筋コンクリート造の内断熱工法の外壁についての熱抵抗基準値
①
開口部(玄関ドア除く)
:
Ⅲ地域:2.33W/mK 以下
Ⅳ、Ⅴ地域:3.49W/mK 以下
②
屋根又は天井の熱抵抗:
熱抵抗基準値に 1.5 を乗じる
かつ
開口部(玄関ドア除く)
:
Ⅲ地域:2.91W/mK 以下
Ⅳ、Ⅴ地域:4.07W/mK 以下
当該モデルの構造熱橋部の断熱補強仕様を、図 3.1.2.1-2~4 に示す。
屋外
屋根断熱材
屋根
屋外
外壁
断熱補強(Eランク断熱材
λ=0.028W/mK、厚さ20㎜、範囲450㎜)
外壁断熱材
室内
図 3.1.2.1-2 構造熱橋部(屋根-外壁)
屋外
外壁
室内
屋外
断熱補強(Eランク断熱材
λ=0.028W/mK、厚さ20㎜、
範囲450㎜)
外壁
床
外壁断熱材
外壁断熱材
屋外
外壁
断熱補強
(Eランク断熱材
λ=0.028W/mK、
厚さ20㎜、
範囲450㎜)
室内
室内
図 3.1.2.1-3 構造熱橋部(外壁-床)
戸境壁
室内
図 3.1.2.1-4 構造熱橋部(外壁-戸境壁)
当該モデルの開口部仕様は、省エネルギー地域区分・Ⅳ地域における「設計及び施工の
指針」の「断熱材の熱抵抗の基準」表下欄 12 に適合する仕様を想定している。表 3.1.2.1-5
参照
105
表 3.1.2.1-5 当該モデルの開口部仕様
仕様
窓
ドア
※
熱貫流率[W/(㎡・K)
]
アルミサッシ+普通複層ガラス(空気層 12)
4.07
スチールドア(フラッシュ構造)
4.65
窓の熱貫流率(U 値)基準はⅣ地域の場合 4.65 W/m2K であるが、「設計及び
施工の指針」3(2)「断熱材の熱抵抗の基準」表下欄 12 を適用することとした
ため、この計算例では 4.07 W/m2K 以下となる窓仕様とした。
※ 窓仕様別熱貫流率は、P.141、表 3.1.3-5 に基づき設定した。
(2)
評価方法別評価例
(ア) 評価方法例 b-2-断熱材の熱抵抗値及び建具等の仕様による評価
断熱材の熱抵抗値及び建具等の仕様による評価は、断熱材の熱抵抗値と構造熱橋部の断
熱補強仕様及び建具の仕様が、
「設計及び施工の指針」の基準に適合するか否かにより行な
う。
1)
断熱材の熱抵抗
断熱材の熱抵抗が「設計及び施工の指針」3(2)に定める基準値以上であることを
確認する。
断熱材の熱抵抗は、下の式により求めることができる。
R=d/λ
R:熱抵抗[(㎡・K)/W]
d:材料厚さ[m]
λ:材料の熱伝導率[W/(m・K)]
表 3.1.2.1-6 断熱材熱抵抗値基準適否の確認
部位
当該モデルの断熱材
断熱材の
掛け
※表 3.1.2.1-2 参照
熱抵抗の
率
基準値
厚さ
熱伝導率
熱抵抗
[m] [W/(m・K)] [(㎡・K)/W] [(㎡・K)/W]
補正後の
適否
熱抵抗
[(㎡・K)/W]
屋根
0.085
0.028
3.036
2.0
1.5
3.00
適合
外壁
0.035
0.034
1.029
1.1
0.9
0.99
適合
当該モデルでは、「設計及び施工の指針」3(2)「断熱材の熱抵抗の基準」表下欄 12 を
適用し、外壁は熱抵抗基準値の 0.9 倍とするが、屋根は熱抵抗基準値の 1.5 倍とし、ま
た窓の熱貫流率を 4.07 W/m2K 以下とすることとしている。屋根、外壁とも補正後の熱抵
抗値より実際の断熱材熱抵抗値が大きく、基準に適合している。
106
参考:外気、床下ピット、地盤面に接する床がある場合は、各床に用いている断熱材
の熱抵抗値を求め、
「設計及び施工の指針」3(2)に定める基準値以上であることを
確認する。
土間床の場合は、地盤面に垂直に施工される断熱材の熱抵抗値で評価する。垂
直に施工される断熱材が基礎壁等の両面に施工される場合は合計した熱抵抗値と
してよい。なお、地盤面に水平に施工される断熱材は評価の対象外であるので注
意すること。
注意:断熱材の熱抵抗値による評価を行なう場合は、構造熱橋部の断熱補強仕様が「設
計及び施工の指針」3(3)に適合することも確認しなければならない。
当該モデルの断熱補強仕様は表 3.1.2.1-7 のとおりであり、断熱補強の範囲及
び断熱補強材の熱抵抗値共に適合している。
表 3.1.2.1-7 断熱補強仕様基準適否の確認
構造熱橋の
位置
当該モデルの断熱補強
断熱補強基準
適否
※図 3.1.2.1-2~4 参照
補強の
断熱補強材
補強の
熱抵抗
範囲
範囲
[(㎡・K)/W]
熱伝導率
厚さ
熱抵抗
[㎜] [W/(m・K)] [㎜] [(㎡・K)/W] [㎜]
屋根-外壁
450
0.028
20
0.71
外壁-床
450
0.028
20
0.71
外壁-戸境壁
450
0.028
20
0.71
適合
450 以上
0.6 以上
適合
適合
注:厚さは、m単位に換算したのち計算に用いること。
2)
建具等の仕様
建具等の仕様が、「設計及び施工の指針」4(2)イおよび 4(2)ロに定める建具等の
仕様の基準に適合することを確認する。ただし、当該モデルは、
「設計及び施工の指
針」3(2)「断熱材の熱抵抗の基準」表下欄 12 を適用しているため、窓の熱貫流率が
4.07 W/m2K 以下となる仕様となっている。従って、窓の断熱性に関する評価は熱貫
流率で行なうことになるため、(イ)評価方法例 b-1 を参照されたい。
表 3.1.2.1-8 建具の仕様適否基準確認(断熱性)
当該モデルの仕様
建具等の仕様の基準
窓
アルミサッシ+
普通複層ガラス(空気層 12)
ドア スチールドア
次のいずれかに該当するもの
(フラッシュ構造)
・ 扉がフラッシュ構造
・ 扉が木製
・ 扉が金属製熱遮断構造パネル
※いずれの場合も、ガラスがある場合
ガラス中央部の U=4.00W/m2K 以下
107
適否
熱貫流率
で評価
適合
表 3.1.2.1-9 建具の仕様適否基準確認(日射遮蔽性)
窓が面する
当該モデルの仕様
建具等の仕様の基準
適否
方位
真北±30 度 ・ 普通複層ガラス入り 次のいずれかに該当するもの
否
( 空 気 層 12) の 建 具 ・ ガラスの日射侵入率が 0.60 以下
(一重構造)
・ 付属部材を設けるもの
・ ガラスの日射侵入率
0.79
・ 付属部材なし
上記以外
・ 普通複層ガラス入り 次のいずれかに該当するもの
否
( 空 気 層 12) の 建 具 ・ ガラスの日射侵入率が 0.49 以下
(一重構造)
・ ガラスの日射侵入率が 0.66 未満の
・ ガラスの日射侵入率
ものに付属部材又は庇、軒等をつけ
0.79
る
・ 付属部材なし
・ 内付けブラインド又はこれと同等以
・ バルコニー上部に軒
上の遮蔽性能を有する付属部材をつ
の出(d=1500)あり。
ける
・ 付属部材及び庇、軒等をつける
当該モデルの窓は各方位とも、日射遮蔽性に関する建具等の仕様の基準に適合しない。
いずれの方位においても、付属部材(レースカーテン等)を設置することにより基準に
適合する。なお、ガラスの日射侵入率は、メーカーカタログ等の性能値を用いるか、P.142、
表 3.1.3-6 窓の日射侵入率によって求める。
(イ) 評価方法例 b-1-熱貫流率及び夏期日射侵入率による評価
熱貫流率及び夏期日射侵入率による評価は、躯体各部位の熱貫流率と構造熱橋部の断熱
補強仕様及び開口部の熱貫流率と夏期日射侵入率が、
「設計及び施工の指針」の基準に適合
するか否かにより行なう。
1)
躯体、開口部の熱貫流率
躯体、開口部の熱貫流率(U 値)が、
「設計及び施工の指針」3(1)および 4(1)イに
定められた基準値以下であることを確認する。躯体の熱貫流率は計算により求める
ことができ、開口部の熱貫流率はメーカーカタログ等の性能値を用いるか、P.141、
表 3.1.3-5 窓仕様別熱貫流率によって求める。
①躯体の熱貫流率
躯体の熱貫流率の算出方法は、構造により異なる。鉄筋コンクリート造等は熱
橋を含まない熱貫流率が基準であり、それ以外の構造(木造等)は熱橋を含む熱
貫流率(=実質熱貫流率)が基準となっている。鉄筋コンクリート造等は熱橋を
含まないため、構造熱橋部の断熱補強仕様が「設計及び施工の指針」3(3)に基づ
いて適否を確認する必要がある。
熱貫流率の算出方法は以下の通りであるが、熱橋を含む実質熱貫流率の算出方
法については、「住宅の省エネルギー基準の解説」を参照されたい。
108
【熱貫流率の算出方法】
熱貫流率は、室内外の温度差を 1℃とした場合に、単位面積 1m2 当たり、1 時間
当たりに壁体等を通る(貫流する)熱量のことで、単位は W/(m2・K)である。建築
の壁体の主要な部分は、面材や空気層を重ね合わせて造られており、これらの面
材や空気層をすべて面状に拡がった層と考え、さらに、両側の表面に接する空気
も 2 つの空気層と考え、それら一つ一つの層における熱抵抗から熱貫流率を求め
る。
熱貫流率の算出手順としては、
・各層の熱伝導抵抗を求める。
第 i 層の材料の厚さを di、熱伝導率をλi とすると、熱伝導抵抗 Ri は、
Ri=di/λi
・各層の熱抵抗を総和し、その逆数から熱貫流率を求める。
各材料の熱抵抗及び表面空気の熱抵抗(表面熱伝達抵抗)を総和し、その
逆数をとって熱貫流率とする。式で書くと、
1
U=
Ri + R a +
d1
λ1
+
d2
λ2
+
d3
λ3
+・・・+ Ro
U :熱貫流率[W/(m2・K)]
Ri:室内側表面熱伝達抵抗[(m2・K)/W] →表 3.1.3-3 参照
Ro:外気側表面熱伝達抵抗[(m2・K)/W] →表 3.1.3-3 参照
Ra:空気層の熱抵抗[(m2・K)/W]
→表 3.1.3.4 参照
di:第 i 層の材料厚さ[m]
λi:第 i 層の材料の熱伝導率[W/(m2・K)]→表 3.1.3-2 参照
壁体表面
(外側)
<室外空気>
壁体表面
(内側)
<室内空気>
<壁体>
表面空気 材
の熱伝達 料
A
抵抗 Ro
材料Aの
厚さ da
材
料
B
材料Bの
厚さ db
材
料
C
表面空気
の熱伝達
抵抗 Ri
材料Cの
厚さ dc
材料Aの 材料Bの 材料Cの
熱伝導λa 熱伝導λb 熱伝導λc
壁体の熱貫流 U
図 3.1.2.1-5 熱貫流率
109
以上の算出方法により、当該モデルの躯体各部位の熱貫流率を求めた算出表を
表 3.1.2.1-10、表 3.1.2.1-11 に示す。
表 3.1.2.1-10 壁の熱貫流率算出
名称
部位仕様モデル
W
厚さ
材料
λ値
R値
[㎜] [W/(m・K)][(㎡・K)/W][W/(㎡・K)
]
外側熱伝達抵抗 Ro
0.040
GRC 板
Ri
Ro
U値
9
1.600
0.006
135
1.600
0.084
断熱材
35
0.034
1.029
せっこうボード
12
0.220
0.055
コンクリート
内側熱伝達抵抗 Ri
0.110
合計
1.324
0.755
注:厚さは、m単位に換算したのち計算に用いること。
表 3.1.2.1-11 屋根の熱貫流率算出
名称
部位仕様モデル
C
厚さ
材料
λ値
R値
[㎜] [W/(m・K)
][(㎡・K)/W][W/(㎡・K)
]
外側熱伝達抵抗 Ro
Ro
0.040
コンクリート
50
1.600
0.031
断熱材
85
0.028
3.036
防水層
10
0.110
0.091
150
1.600
0.094
コンクリート
内側熱伝達抵抗 Ri
Ri
U値
0.090
合計
3.382
0.296
注:厚さは、m単位に換算したのち計算に用いること。
②開口部の熱貫流率
メーカーカタログ等の性能値又は、表 3.1.3-5 窓仕様別熱貫流率によって求め
る。
ⅰ)窓:アルミサッシ+普通複層ガラス(空気層12)
熱貫流率 4.07
W/(m2・K) ※表 3.1.3-5 参照
ⅱ)ドア:スチールドア(フラッシュ構造)
熱貫流率 4.65
W/(m2・K) ※メーカーカタログ等による
110
③熱貫流率基準適否
表 3.1.2.1-12 熱貫流率基準適否の確認
部位
当該モデルの熱貫流率
熱貫流率の基準値
適否
[W/(㎡・K)]
[W/(㎡・K)]
屋根
0.296
0.43
適合
外壁
0.755
0.75
否
窓
4.07
4.65
適合
ドア
4.65
4.65
適合
当該モデルでは、外壁のみ基準に適合しない。これは、当該モデルの断熱仕様を
検討する際、
「設計及び施工の指針」3(2)「断熱材の熱抵抗の基準値」表下欄 12 を
適用し、外壁の断熱は熱抵抗基準値に 0.9 を乗じて断熱厚さを決定したためである。
このような場合は、全部位について評価方法例 b-2 の断熱材の熱抵抗値にて評
価する、若しくは、建物全体で評価する評価方法例 a-1、a-2 にて評価する。
参考:床の熱貫流率の評価
住戸の床が「外気に接する場合」、「床下ピットに接する場合」、及び「地盤面に接
する場合」は、それらに接する床の熱貫流率が、「設計及び施工の指針」の基準に
適合するか評価する。
「床(外気に接する部分)」、「床(その他の部分)=床下ピットに接する部分」
の熱貫流率の算出方法は前述「①躯体の熱貫流率」のとおりであるが、表面熱伝達
抵抗(Ri、Ro)が部位毎に異なるので注意されたい。
土間床等の外周の熱貫流率は、内外の温度差1度の場合において1メートル当
たり貫流する熱量である。当該土間床等を熱の貫流する方向に構成している材料
の種類及び厚さ等を勘案して算出する。
室内
床(外気に接する部分)
室内
土間床の中央部
土間床の外周部
(その他の部分)
1m
床(その他の部分)
1m
土間床の外周部
(外気に接する部分)
床下ピット
図 3.1.2.1-6 床の種類
【土間床等の熱貫流率の計算式】
熱損失係数の計算における地盤面に接する床である土間床の熱貫流率は、「土間
床等の外周の熱貫流率 UL」と「土間床等の中央部の熱貫流率 UF」に分けて、下記に
示す計算式によって求めることが出来る。
モデル A
UL=1.88+0.5λsoil-0.005D-1.02T10.15-0.001W-0.014T2
UF=0.021+0.054λsoil
111
UL=1.77+0.5λsoil-0.77T10.15-0.003W-0.042T2
モデル B
UF=0.022+0.054λsoil
それぞれの変数の意味と適用範囲は以下の通りである
λsoil:土の熱伝導率[W/(m・K)]
0.58~1.74W/(m・K)
D
:基礎の深さ[cm]
10~40cm
T1
:基礎外側の断熱材の厚さ[cm]
W
:土間外周の断熱長さ(外周内面からの距離)[cm] 0~90cm
T2
:土間外周の断熱材の厚さ[cm]
T1
2.5~15cm
0~6cm
T1
W
W
T2
T2
D
モデル A
外断熱
モデル B
内断熱
ただし、T1 ならびにT2 の厚みは、断熱材の熱伝導率は 0.0326W/(m・K)とした
場合であり、これ以外の場合は T1、T2 を熱抵抗換算する。換算は、実際に使用す
る断熱材の厚さを dr、熱伝導率をλr として下記の式で求めることができる。
T1 または T2=dr /λr×0.0326
2)
構造熱橋部の断熱補強仕様
構造熱橋部の断熱補強仕様は、(ア)
1)において基準適合を確認済みである。
※表 3.1.2.1-8 参照
3)
窓の夏期日射侵入率
窓の夏期日射侵入率η値が、
「設計及び施工の指針」4(1)ロに定められた基準値以
下であることを確認する。
窓の夏期日射侵入率は、ガラスと付属部品の組合せで定まる日射侵入率(表
3.1.3-6 参照)と庇、軒の出等の形状で定まる補正係数 fc(下式)によって求める。
z
計算式:fC=[f2(y1+ y2)- f1y1]/y2
y1
L1:y1/z
室外
L2:(y1+y2)/z
f1、f2:表 3.1.3-7 参照
112
室内
y2
窓
表 3.1.2.1-13 当該モデル各窓の日射侵入率補正係数 fc
方位
窓記号
南
WD-1
WD-2
WD-3
WD-4
北
日除けの形状
y1
y2
z
[m] [m] [m]
0.65
1.85
1.50
0.65
1.85
1.50
0.65
1.455
0.65
1.455
2.18
L1
L2
f1
f2
0.43
0.43
1.67
1.67
0.10
0.10
0.29
0.29
0.30
0.97
0.13
0.38
fC
0.36
0.36
1.00
0.49
表 3.1.2.1-14 窓の日射侵入率基準適否の確認
窓が面す 窓記号 ガラス仕様 窓面積
当該モデルの夏期日射侵入率
夏期日射 適
る方位 (部位
[㎡] 日射侵入 補正係数 日射侵入 面積加重 侵入率の 否
名)
基準値
率
fC
率
平均した
η0
η
日射侵入率
(補正前)
※表
(補正後)
η
※表
3.1.2.1-13
3.1.3-6
参照
参照
開口 3 普通複層
0.79
1.00
0.79
2.04
真北 (WD-3) (空気層 12)
0.59
0.55
否
±30 度 開口 4 普通複層
2.04
0.79
0.49
0.39
(WD-4) (空気層 12)
開口 1 普通複層
上記以外
0.79
0.36
0.28
5.00
適
(WD-1) (空気層 12)
0.28
0.45
合
開口 2 普通複層
3.33
0.79
0.36
0.28
(WD-2) (空気層 12)
当該モデルでは、真北±30 度の窓が基準に適合しない。その理由は、開口-3 の窓
に庇がないためである。なお、付属部材を設置することにより日射侵入率を低減す
ることが可能であり、例えばレースカーテンを設置した場合は、開口-3 の日射侵入
率は 0.53(表 3.1.3-6 参照)となって基準に適合する。
また、熱負荷の影響が少なく、窓合計面積が延べ面積の4%未満の小面積の窓(天
窓は除く)やドアは、日射遮蔽の対策をしなくてもよいとのただし書きがある。これ
は、水廻りその他で内付け型の付属部材での日射遮蔽が難しく、また、冷房負荷へ
の影響が少ない部位を考慮したものである。
注:面積が延べ面積の4%の窓全てが、日射遮蔽対策を省略することができる対
象となるわけではない。また、日射侵入率によって評価する場合に限られる。
[日射遮蔽対策をしなくてもよい窓の例]
当該モデル(延べ面積 70 ㎡)の場合
70×0.04=2.8 ㎡
開口3(WD-3)、開口 4(WD-4)はいずれも窓面積 2.04 ㎡であるため、いずれかの
窓を日射遮蔽対策をしなくてもよい窓とすることができる。
113
(ウ) 評価方法例 a-2-熱損失係数及び夏期日射取得係数による評価
熱損失係数及び夏期日射取得係数による評価は、それぞれの値が「住宅に係る建築主の
判断基準」1-3(2)に示された基準値に適合するか否かにより行なう。
1)
熱損失係数及び夏期日射取得係数算出の手順
熱損失係数(Q 値)と夏期日射取得係数(μ値)は、図 3.1.2.1-7 に示す流れに
そって求める。熱損失係数及び夏期日射取得係数の計算は、まず図面等により熱的
境界の確認を行ない、その熱的境界部位の貫流熱損失、日射侵入率、及び熱的境界
部位に囲まれた空間の換気熱損失を求めることにより行なう。
1 設計図書の準備
↓
2 熱的境界の設定
平面図
立面図
矩計図
伏図
展開図
建具表
↓
3 熱的境界を部位種類に分類
↓
4 ①部位の方位別面積の算出
②土間床等の周長の算出
③床面積の合計の算出
④気積の算出
↓
5 ①各部位の実質熱貫流率の算出
熱物性表
②土間床等の熱貫流率の算出
③日射侵入率の計算と補正
↓
6 ①Q値を計算
②μ値を計算
図 3.1.2.1-7 熱損失係数及び夏期日射取得係数の計算フロー
2) 熱的境界の確認(※評価方法例 a-1-年間暖冷房負荷の場合も同様)
熱的境界とは、図 3.1.2.1-8 に示すように、熱的すなわち温度的に見て外気と室
内を区分する境界面のことをいう。熱的境界となる部位は、ほとんどの場合「断熱構
造化すべき部位」と一致する。
熱損失係数、夏期日射取得係数の計算に際しての原則及び注意事項を以下に示す。
①土間床等に熱的境界がある場合(木造等における基礎断熱工法など)は、床下
及び床下地盤面を熱的境界の内側と考える。
②屋根に熱的境界がある場合(木造等における屋根断熱など)は、小屋裏空間を
熱的境界の内側と考える。
③共同住宅の 1 住戸を対象とする場合は、外気に接する部位を熱的境界とする。
戸境壁・戸境床等における熱の流出入は考えなくてよい。
114
④風除室・サンルーム等の付属的空間は、熱的境界の外気側としてよい。
(ただし、
その空間を熱的に室内側として計画する場合を除く。)なお、これらの空間は、
熱損失の防止に多少ではあるが効果があるため、それらを非密閉空気層とみな
して、熱的境界部位の熱貫流率を求めてもよい。
⑤夏期日射取得係数の計算において対象となる部位も熱的境界であり、熱損失係
数の場合と同じである。ただし、夏期日射取得係数の計算においては、同じ部
位でも方位別に分けて算出しなければならない。また、床面(外気に接する床
も含む)は下向きの水平面であるため、外界方向から日射を受けることはない
ため、計算の対象外である。
共用廊下
(開放)
屋根又は天井
壁
バルコニー
壁
住戸
住宅の共用部、住宅を除く用途
共用廊下
(非開放)
壁
壁
住戸
バルコニー
住宅の共
用部、住
宅を除く
用途
ピロティ
外気に接する床…A
屋根又は天井
壁
住戸
壁
住宅の共用部、住宅を除く用途
壁
住戸
バルコニー
壁
床(外気に接する部分)
その他の床…B
ピット
土間床等の外周部(その他の部分)…D
土間床等の中央部
土間床等の外周部(外気に接する部分)…C
図 3.1.2.1-8 躯体の断熱性能等に関する基準における「部位」
3) 部位の分類(※評価方法例 a-1-年間暖冷房負荷の場合も同様)
熱損失係数、夏期日射取得係数の計算過程で行なう熱貫流率等算出に際しては、
熱的境界を部位別、断面構成別に分類しなければならない。
以下に部位分類に際しての原則及び注意事項を示す。
①同じ部位であっても、断面構成が異なれば別のものとして分類する。
②構造部材のある部分は、別の断面構成部位として分類する。
構造部材は、木造軸組構法の中間階床に位置する胴差、枠組み壁工法の中間階
床に位置する側根太などその他の断熱部位と比べて熱損失の大きい箇所などが
当てはまる。図 3.1.2.1-9(a)参照
③鉄筋コンクリート造等の住宅における外壁、屋根、床、間仕切壁がそれぞれ取
り合う部分等に生じる熱橋(構造熱橋、という)も別の部位として分類する。
図 3.1.2.1-9(b)参照
115
④鉄筋コンクリート造等の共同住宅においては、最上階住戸、中間階住戸、最下
階住戸のそれぞれの当該床スラブ下端から天井・屋根スラブ下端(最上階住戸は
上端)の範囲にある熱橋が、当該住戸の部位として分類される。図 3.1.2.1-10
参照
構造部材1
構造部材1
天井断熱
構造部材
構造部材2
床断熱
構造部材3
基礎断熱の場合
この範囲に存在する平面方向の構造部材
屋根断熱の場合
この範囲に存在
する平面方向の
構造部材
構造部材1
構造部材2
構造部材2
構造部材3
内断熱の場合
(a) 木造、2″
×4″
、S造の場合
外断熱の場合
(b) RC造、組積造の場合
図 3.1.2.1-9 戸建住宅における構造部材(熱橋)の位置
構造部材
各階のこの範囲に
存在する平面方向
の構造部材
各階のこの範囲に
存在する平面方向
の構造部材
各階のこの範囲に
存在する平面方向
の構造部材
最上階
最上階
構造部材
構造部材
中間階
中間階
構造部材
構造部材
構造部材
最下階
最下階
(a) 内断熱工法による場合
構造部材
各階のこの範囲に
存在する平面方向
の構造部材
各階のこの範囲に
存在する平面方向
の構造部材
各階のこの範囲に
存在する平面方向
の構造部材
(b) 外断熱工法による場合
図 3.1.2.1-10 共同住宅における構造部材(熱橋)の位置
116
4) 部位面積(構造熱橋部を除く)、気積の算出(※評価方法例 a-1-年間暖冷房負荷の
場合も同様)
①面積、気積の算出方法の原則
ⅰ)面積算出方法の原則
イ
階段室、吹抜け(仮想の床上に 2.1m 以上の天井高さが確保される部分)
については、上部にも床があるものと見なし、当該床と上部階の両方の床
面積をその合計値 S に算入することもできる。図 3.1.2.1-11 参照
吹抜
2.1m
仮想床の範囲
出窓
図 3.1.2.1-11 床面積の扱い方
ロ
風除室、サンルームなどを非密閉空気層として扱う場合は、それらの床面
積を S に算入してはいけない。
ハ
出窓、天窓等の壁芯からの突出が 50 ㎝以下の場合については、その四周
側壁の部分を面積計算から除外することができる。なお、50 ㎝を超える
場合はその全てを、それぞれ張り出した床・天井・壁と見なして面積計算
を行わなくてはならない。
ニ
外壁の面積は、垂直外表面の面積から、開口部面積を差し引いて計算する
ことを原則とする(全外表面積を正確に算出するため)。
ホ
換気のある小屋裏、張出し床下などが熱的境界(断熱層)の外気側にある
場合は、それらが存在しないものとして寸法をとる。
ヘ
屋根・天井、外壁、開口部(窓・扉)、及び構造熱橋は方位別に面積を算出す
る。部位種別に関係なく、傾斜面はその向きが異なれば、ひとつの方位と
みなす。(夏期日射取得係数計算のためである。また、計算において傾斜
面は屋根面と同じように水平投影されて処理される。)
ⅱ)気積算出方法の原則
イ
気積算出には以下のように、建物単位で行なう方法(a)と室単位気積を積
117
算する方法(b)があり、いずれかを用いる。
(a) 壁芯基準から求めた床面積と最下階床面から最上階天井面までの高さ(一
定でない場合は面積加重平均)を乗じ、換気の無い階間部分の容積を減じ
る方法。
(b) 各室の気積(床面積と天井高(面積加重平均)を乗じたもの)に、階段室・
吹き抜けの階間部分容積を加える方法。
ロ
熱的境界内の容積を換気熱損失計算に用いる気積とするが、その内側にあ
っても、有効な換気が期待できない階間のふところ部分及び屋根断熱され
た小屋裏部分の気積は算入する必要はない。ただし、小屋裏収納等のため
室内と接続する開口が設けられている場合は、小屋裏も換気するとみなさ
れ、この限りではない。図 3.1.2.1-12 参照
ハ
風除室、サンルーム等を密閉度の低い空気層として扱った場合は、室内の
気積に算入する必要はない。また、突出が 50 ㎝以下の出窓等によって構
成される部分も気積に算入する必要はない。図 3.1.2.1-12 参照
階間ふところ部の気積は
算入しなくてよい。
出窓(50cm 以下の突出)
は算入しなくてよい
図 3.1.2.1-12 気積算入の範囲
ⅲ)寸法に関する原則
イ
寸法値の取扱いと表示方法
長さ寸法は、切捨てにより 0.01m(10 ㎜)単位で拾う。
面積は、四捨五入により 0.01 ㎡単位に、気積は、四捨五入により 0.01
㎥単位に丸めて表示することができる。
ロ
水平方向の寸法
【外壁・床・屋根・天井】
原則として、壁芯(壁の中心線)間の寸法によるが、モジュール芯間の寸
法を用いることもできる。
【開口部】
原則として、建築構造側の取り付け部分の内法寸法によるが、建具の呼称
寸法をもって代えることもできる。なお、出窓等においてもこれに準じる。
118
【庇】
庇の長さは、壁芯又は壁表面から先端までの平均値による。
ハ
垂直寸法の寸法
【外壁】
各階の外壁高さは、天井面(野縁下)と下階天井面(最下階にあっては床
面)間寸法による。ただし、屋根断熱されたスラブなどにおいては、その
下面を上端とする(図 3.1.2.1-13 参照)
。また、独立した部位としての構
造部材(胴差等)の幅(せい)が上記高さに含まれる場合は、それらを差
し引いた数値を外壁高さとすることができる。
【開口部】
水平方向と同様である。
壁面積算定の際の階高
熱計算で
使用する高さ
天井
図 3.1.2.1-13 コンクリート構造の場合の外壁高さ
②当該モデルの面積(構造熱橋部を除く)、気積
前項4)①の算出方法(面積、気積、寸法)の原則に則って算出した当該モ
デルの面積及び気積を、表 3.1.2.1-15 に示す。
119
表 3.1.2.1-15 床・屋根面積、気積
部位、室名
天井高
[m]
床・屋根面積
寸法[m]
縦
LD
2.45
2.45
2.45
2.45
2.45
2.45
2.45
2.45
2.45
2.50
K
和室
洋間1
洋間2
洗面・便所・風呂
ホール
玄関
面積[㎡]
横
3.64
0.79
2.84
2.3
3.64
5.27
3.34
2.84
2.14
1.2
気積
[㎥]
天井
3.77
2.83
1.2
2.83
2.73
2.83
2.25
2.47
1.42
1.42
合計
床
13.72
2.24
3.41
6.51
9.94
14.91
7.52
7.01
3.04
1.70
13.72
2.24
3.41
6.51
9.94
14.91
7.52
7.01
3.04
1.70
33.61
5.49
8.35
15.95
24.35
36.53
18.42
17.17
7.45
4.25
70.00
70.00
171.57
外壁、ドアの面積は、方位別、仕様別に求める。
(当該モデルは、外壁の仕様
が 1 種類であるため、方位別に算出した。)
また、窓の面積は窓の位置によって日射侵入率が異なることがあるため、個
別に求める。
表 3.1.2.1-16 外壁、窓・ドアの面積
室名
方位
窓・ドア
種別
寸法[m]
幅
面積 方位
高さ [㎡]
LD
南 窓(部位名:WD-1) 2.70
1.85
K
和室
洋間1
南 窓(部位名:WD-2) 1.80
1.85
外壁
寸法[m]
幅
洋間2
玄関
北 窓(部位名:WD-4) 1.40 1.455
北 ドア(部位名:DR) 0.85 1.90
5.00 南
西
西
3.33 南
西
2.04 北
東
2.04 北
1.62 北
小計
南
8.33 南
8.57
北
5.70 北
11.20
東
0.00 東
5.67
西
0.00 西
31.20
合計
14.03 合計
56.64
北 窓(部位名:WD-3) 1.40 1.455
*1:開口部の面積を除く外壁のみの面積。
120
3.77
4.43
2.3
2.73
5.27
2.83
2.18
2.25
1.42
高さ
2.6
2.6
2.6
2.6
2.6
2.6
2.6
2.6
2.6
面積*1
[㎡]
4.80
11.52
5.98
3.77
13.70
5.32
5.67
3.81
2.07
5) 各部位(構造熱橋部を除く)の熱貫流率
①躯体各部位の熱貫流率
躯体各部位(壁、屋根)の熱貫流率は、(イ) 1)①において計算済みである。
※壁:熱貫流率 0.755W/(㎡・K)(表 3.1.2.1-10 参照)、
※屋根:熱貫流率 0.296W/(㎡・K)(表 3.1.2.1-11 参照)
参考:外気、床下ピット、地盤面に接する床がある場合は、各床の熱貫流率を求める。
床の熱貫流率については、(イ) 1)③の「参考:床の熱貫流率の評価」を参照され
たい。
②開口部の熱貫流率
窓、ドアの熱貫流率は、(イ) 1)②において確認済みである。
※窓:熱貫流率 4.07W/(㎡・K)、ドア:熱貫流率 4.65W/(㎡・K)
6)
構造熱橋部の熱損失係数、夏期日射取得係数への算入方法
当該モデルは、屋根が外断熱、外壁が内断熱であるため、屋根と外壁、外壁と床、
外壁と戸境壁、外壁と間仕切壁の取合い部が構造熱橋となる。これら構造熱橋から
の熱損失、日射取得は、当該モデル住戸の熱損失係数、夏期日射取得係数に算入し
なければならない。
構造熱橋部の熱損失係数、夏期日射取得係数への算入には、図 3.1.2.1-14 の網掛
け部分で示すように、外壁、床、屋根等が無断熱と仮定した熱貫流率を用いる。
(夏期日射取得係数の場合は、熱貫流率から求める日射侵入率(後述)を用いる。)
住戸全体での構造熱橋部熱損失(日射取得)は、熱貫流率(日射侵入率)に構造
熱橋部の面積を乗じることにより求める。
なお、構造熱橋部の面積は、断熱工法、断熱補強仕様によって定められた低減係
(表 3.1.3-8 参照)を乗じて補正することができる。当該モデルは、低減係
数(aH)
数(aH)が 0.5 となる。
121
①構造熱橋部の面積
構造熱橋部の面積は、図 3.1.2.1-14 の部位の幅Wに部位長さを乗じて求める。
当該モデルの構造熱橋部面積は、表 3.1.2.1-17 に示すとおりである。
屋外
屋外
屋外
当該住戸
当該住戸の熱損失
として扱う
当該住戸の熱損失
として扱う
W
外壁
W
屋根
外壁
当該住戸
屋外
当該住戸の熱損失
として扱う
(隣住戸と折半する)
床
下階住戸
屋外
当該住戸の熱損失
として扱う
外壁
W
隣住戸
外壁
当該住戸
当該住戸
戸境壁
W
当該住戸
間仕切壁
注:戸境壁は、W/2 が当該住戸の面積算入部となる。
図 3.1.2.1-14 構造熱橋部の面積算出のための説明図
表 3.1.2.1-17 構造熱橋部の面積
取合部名
屋根-外壁
(部位名:w-1)
低減係数 aH
※表 3.1.3-8
参照
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
方位
南
西
北
東
床-外壁
南
(部位名:w-2)
西
北
東
戸境壁-外壁
0.50
南
(部位名:w-3)
北
間仕切壁-外壁
0.50
南
(部位名:w-4)
西
注:w-3 の部位幅は、W/2 である。
122
熱橋部
寸法[m]
部位長さ 部位幅(W)
6.50
0.15
12.00
0.15
6.50
0.15
2.18
0.15
6.50
0.2
12.00
0.2
6.50
0.2
2.18
0.2
2.6
0.075
2.6
0.075
2.6
0.15
2.6
0.15
面積
[㎡]
0.49
0.90
0.49
0.16
0.65
1.20
0.65
0.22
0.10
0.10
0.20
0.20
②構造熱橋部の熱貫流率
構造熱橋部の熱貫流率は、図 3.1.2.1-15 のDを材料厚さとして熱貫流率を算出
する。
当該モデルの構造熱橋部の熱貫流率は、表 3.1.2.1-18 に示すとおりである。
屋外
屋外
屋外
当該住戸の熱損失
として扱う
当該住戸
当該住戸の熱損失
として扱う
D
屋根
Ro
床
D
外壁
D
外壁
当該住戸
屋外
当該住戸の熱損失
として扱う
(隣住戸と折半する)
D
下階住戸
屋外
当該住戸の熱損失
として扱う
D
外壁
外壁
Ro
D
Ri
当該住戸
隣住戸
当該住戸
戸境壁
当該住戸
間仕切壁
図 3.1.2.1-15 構造熱橋部の熱貫流率算出のための説明図
123
Ri
表 3.1.2.1-18 構造熱橋部の熱貫流率
名称
部位仕様モデル
w-1
材料
厚さ
λ値
U値
[㎜] [W/(m・K)][(㎡・K)/W][W/(㎡・K)
]
外側熱伝達抵抗 Ro
コンクリート
R値
0.04
135
1.600
0.084
屋根
450
外壁
内側熱伝達抵抗 Ri
0.11
合計
0.234
4.274
注:厚さは、m単位に換算したのち計算に用いること。
名称
部位仕様モデル
w-2
材料
厚さ
λ値
U値
[㎜] [W/(m・K)][(㎡・K)/W][W/(㎡・K)
]
外側熱伝達抵抗 Ro
コンクリート
R値
0.04
135
1.600
0.084
外壁
床
450
内側熱伝達抵抗 Ri
0.11
合計
0.234
4.274
注:厚さは、m単位に換算したのち計算に用いること。
名称
部位仕様モデル
w-3
厚さ
λ値
コンクリート
戸境壁
U値
[㎜] [W/(m・K)][(㎡・K)/W][W/(㎡・K)
]
外側熱伝達抵抗 Ro
外壁
R値
0.04
135
1.600
0.084
450
w-4
材料
間仕切壁
内側熱伝達抵抗 Ri
0.11
合計
注:厚さは、m単位に換算したのち計算に用いること。
124
0.234
4.274
7)
日射侵入率
日射取得係数の算出には、不透明外皮である躯体の屋根(天井)、壁、ドアと日射
を透過する窓の日射侵入率を用いる。
①不透明外皮の日射侵入率
不透明外皮である躯体等の日射侵入率は、熱貫流率に係数を乗じることによ
り求める。(下式参照)
当該モデルの不透明外皮の日射侵入率を表 3.1.2.1-19 に示す。
η≒0.034×U
η:日射侵入率、U:熱貫流率[W/(㎡・K)]
表 3.1.2.1-19 不透明外皮の日射侵入率
熱的境界の
部位名
部位種類
熱貫流率
日射侵入率
[W/(㎡・K)
]
η=0.034U
屋根
C
0.296
0.010
外壁
W
0.755
0.026
構造熱橋部
w-1、2、3、4
4.274
0.145
ドア
DR
4.650
0.158
②窓の日射侵入率
窓の日除け等による補正後の日射侵入率は、(イ) 3)において計算済みである。
(表 3.1.2.1-14 参照)
※開口-1(WD-1):η=0.28
※開口-2(WD-2):η=0.28
※開口-3(WD-3):η=0.79
※開口-4(WD-4):η=0.39
8)
熱損失係数
熱損失係数は、貫流熱損失と換気熱損失を合計し、それを延べ床面積で除して求
める。
貫流熱損失には、(ウ)の 4)、5)、6)で求めた面積、熱貫流率を用い、換気熱損
失には、(ウ)の 4)で求めた気積を用いる。
①貫流熱損失
部位別に、熱貫流率と面積、温度差係数(表 3.1.3-10 参照)を掛け、それら
(部位別の貫流熱損失)を合計することにより求める。
当該モデルの貫流熱損失は、表 3.1.2.1-20 に示すとおりである。
125
表 3.1.2.1-20 貫流熱損失
部位
屋根
南外壁
北外壁
東外壁
西外壁
床
熱的境界の 熱貫流率
面積
部位種類
U
A
[W/(㎡・K)
] [㎡]
C
天井
W
外壁
w-1(屋根-外壁) 構造熱橋部
w-2(外壁-床) 構造熱橋部
w-3(戸境壁)
構造熱橋部
w-4(間仕切壁) 構造熱橋部
WD-1
窓
WD-2
窓
W
外壁
w-1(屋根-外壁) 構造熱橋部
w-2(外壁-床) 構造熱橋部
w-3(戸境壁)
構造熱橋部
WD-3
窓
WD-4
窓
DR
玄関ドア
W
外壁
w-1(屋根-外壁) 構造熱橋部
w-2(外壁-床) 構造熱橋部
W
外壁
w-1(屋根-外壁) 構造熱橋部
w-2(外壁-床) 構造熱橋部
w-4(間仕切壁) 構造熱橋部
なし
0.296
0.755
4.274
4.274
4.274
4.274
4.070
4.070
0.755
4.274
4.274
4.274
4.070
4.070
4.650
0.755
4.274
4.274
0.755
4.274
4.274
4.274
0.000
温度差係数 貫流熱損失
H
UAH
※表
[W/K]
3.1.3-10
参照
70.00
1.0
20.700
8.57
1.0
6.473
0.49
1.0
2.094
0.65
1.0
2.778
0.10
1.0
0.427
0.20
1.0
0.855
5.00
1.0
20.350
3.33
1.0
13.553
11.20
1.0
8.459
0.49
1.0
2.094
0.65
1.0
2.778
0.10
1.0
0.427
2.04
1.0
8.303
2.04
1.0
8.303
1.62
1.0
7.533
5.67
1.0
4.283
0.16
1.0
0.684
0.22
1.0
0.940
31.20
1.0
23.566
0.90
1.0
3.847
1.20
1.0
5.128
0.20
1.0
0.855
0.7
0.000
貫流熱損失合計ΣUAH
144.430
②換気熱損失
換気熱損失は、気積に換気回数と空気の容積比熱[W/(㎥・K)]を掛けて求める。
換気回数は、0.5 回/h 以上とする。なお、熱回収装置を使用する場合は「住
宅の省エネルギー基準の解説」P.69 3.3.2(4)(d)換気用熱回収装置による年間
暖冷房負荷の削減効果に関する評価法を参照されたい。
当該モデルの気積は 171.57 ㎥(表 3.1.2.1-15 参照)であり、空気の容積比
熱は 0.35W/㎥ K であるので、換気熱損失は、表 3.1.2.1-21 に示す値となる。
表 3.1.2.1-21 換気熱損失
室名
全室
気積
B
[m3]
171.57
換気回数
n
[回/h]
0.5
126
容積比熱
[W/(m3・K)]
0.35
換気熱損失
0.35nB
[W/K]
30.02
③熱損失係数
上記①貫流熱損失と②換気熱損失を合計し、延べ面積で除して熱損失係数を
求める。
当該モデルの熱損失係数は、表 3.1.2.1-22 に示す通りとなり、Ⅳ地域の熱損
失係数基準値 2.7W/(㎡・K)以下であるため、基準に適合する。
表 3.1.2.1-22 熱損失係数算出
イ)熱損失係数算定用延べ面積[㎡]
ロ)貫流熱損失(土間以外)[W/K]
ハ)換気熱損失[W/K]
ニ)全熱損失[W/K]
70.00
144.43
30.02
174.45
ホ)熱損失係数[W/(㎡・K)]
9)
2.49
備考
表 3.1.2.1-15 参照
表 3.1.2.1-20 参照
表 3.1.2.1-21 参照
ロ)、ハ)合計
ニ)÷イ)
夏期日射取得係数
夏期日射取得係数は、不透明外皮(屋根、外壁、ドア)と窓の日射取得係数を合
計し、それを延べ床面積で除して求める。
不透明外皮の日射取得係数には、(ウ)の 7)①で求めた各不透明外皮の日射侵入
率を用い、窓の日射取得係数には、(ウ)の 7)②で求めた窓の日射侵入率を用いる。
①不透明外皮の日射取得係数
部位別に、日射侵入率と面積、及び方位係数(表 3.1.3-11 参照)を掛け、そ
れら(部位別の日射取得係数)を合計することにより求める。
当該モデルの不透明外皮の日射取得係数は、表 3.1.2.1-23 に示すとおりであ
る。
②窓の日射取得係数
日除け等による補正を行なった窓別の日射侵入率に面積と方位係数(表
3.1.3-11 参照)を掛け、それら(窓別の日射取得係数)を合計することにより
求める。
当該モデルの窓の日射取得係数は、表 3.1.2.1-24 に示すとおりである。
127
表 3.1.2.1-23 不透明外皮の日射取得係数
部位
屋根
熱的境界の
部位種類
C
天井
熱貫流率 日射侵入率 面積 方位係数 日射取
U=1/ΣR η=0.034U
A
ν
得係数
[W/(㎡・K)] ※表
[㎡]
※表
ηAν
3.1.2.1-20
3.1.3-11
参照
参照
0.296
0.010 70.00
1.00 0.70
南外壁 W
外壁
w-1(屋根-外壁) 構造熱橋部
w-2(外壁-床) 構造熱橋部
w-3(戸境壁)
構造熱橋部
w-4(間仕切壁) 構造熱橋部
0.755
4.274
4.274
4.274
4.274
0.026
0.145
0.145
0.145
0.145
8.57
0.49
0.65
0.10
0.20
0.39
0.39
0.39
0.39
0.39
0.09
0.04
0.04
0.01
0.01
北外壁 W
外壁
w-1(屋根-外壁) 構造熱橋部
w-2(外壁-床) 構造熱橋部
w-3(戸境壁)
構造熱橋部
DR
玄関ドア
0.755
4.274
4.274
4.274
4.650
0.026
0.145
0.145
0.145
0.158
11.20
0.49
0.65
0.10
1.62
0.24
0.24
0.24
0.24
0.24
0.07
0.02
0.02
0.00
0.06
東外壁 W
外壁
w-1(屋根-外壁) 構造熱橋部
w-2(外壁-床) 構造熱橋部
0.755
4.274
4.274
0.026
0.145
0.145
5.67
0.16
0.22
0.45
0.45
0.45
0.07
0.01
0.01
西外壁 W
外壁
w-1(屋根-外壁) 構造熱橋部
w-2(外壁-床) 構造熱橋部
w-4(間仕切壁) 構造熱橋部
0.755
4.274
4.274
4.274
0.026
0.145
0.145
0.145
31.20
0.90
1.20
0.20
0.45
0.45
0.45
0.45
0.37
0.06
0.08
0.01
日射取得係数合計
1.66
表 3.1.2.1-24 窓の日射取得係数
方位 窓記
号
南
仕様名
日射侵入率 補正係数 日射侵入率 面積 方位係数 日射取
η0
fC
η
A
ν
得係数
(補正前)
(補正後)
※表
ηAν
※表
※表
[㎡] 3.1.3-11
3.1.3-6
3.1.3-7
参照
参照
参照
WD-1 普通複層(as12) 0.79
0.36
0.28
5.00
0.39
0.546
WD-2 普通複層(as12) 0.79
0.36
0.28
3.33
0.39
0.364
北
WD-3 普通複層(as12)
WD-4 普通複層(as12)
東
なし
西
なし
0.79
0.79
1.00
0.49
0.79
0.39
2.04
2.04
0.24
0.24
0.387
0.191
窓の日射取得係数合計 1.488
128
③夏期日射取得係数
上記①不透明外皮と②窓の日射取得係数を合計し、延べ面積で除して夏期日
射取得係数を求める。
当該モデルの夏期日射取得係数は、表 3.1.2.1-25 に示す通りとなり、Ⅳ地域
の夏期日射取得係数基準値 0.07 以下であるため、基準に適合する。
表 3.1.2.1-25 夏期日射取得係数
備考
イ)夏期日射取得係数算定用延べ面積[㎡]
70.00 表 3.1.2.1-16 参照
ロ)不透明外皮の日射取得係数
1.660 表 3.1.2.1-23 参照
ハ)窓の日射取得係数
1.488 表 3.1.2.1-24 参照
ニ)日射取得係数合計
3.148
ロ)、ハ)合計
ホ)夏期日射取得係数(床面積当たり)
0.045
ニ)÷イ)
(エ) 評価方法例 a-1-年間暖冷房負荷による評価
1)
年間暖冷房負荷とは
年間暖冷房負荷とは、暖房負荷の年間積算値と冷房負荷の年間積算値を合計した
ものである。年間暖冷房負荷の算出方法には、時々刻々の熱収支を計算して積算す
る方法(動的熱負荷計算)とデグリーデーを基に計算する簡略法(拡張デグリーデ
ー法等)がある。告示で定められた計算条件を満たせばいずれの計算方法を用いて
もよい。
2)
使用できる計算プログラムについて
年間暖冷房負荷に基づく省エネルギー性能の評価は、住宅の品質確保の促進等に
関する法律に基づく住宅性能表示制度において、大臣による特別の評価を必要とす
る手法とされている。同制度において、省エネルギー性能の評価に使用してよい年
間暖冷房負荷の計算方法(プログラム)は、国土交通大臣の特別評価方法認定を受
けることが位置付けられている。なお、特別評価方法認定を受けたプログラムには
「SMASH」(財団法人建築環境・省エネルギー機構
129
開発、販売)などがある。
3)
計算条件について
評価に用いる年間暖冷房負荷は、一定の条件で計算することが義務づけられてい
る。計算条件については表 3.1.2.1-26 に示す。
表 3.1.2.1-26 年間暖冷房負荷計算条件
項目
計算条件
暖冷房対象空間
断熱構造(断熱、日射遮蔽、結露防止及び気密のための措置を講じた構
造)とする部分に囲まれた全ての空間。階間や基礎断熱とする場合の床
下空間なども断熱構造とする部分に囲まれた空間であるため、暖冷房対
象空間と見なされる。
暖房条件
暖房期間:日平均外気温が 15℃以下となるすべての期間
暖房温湿度:室温 18℃以上に設定する(湿度はなりゆきとする)
冷房条件
冷房期間:暖房期間以外の全期間
冷房温湿度:室温 27℃以下、相対湿度 60%以下に設定する
外気温(日平均 5 年間以上の気象データの平均を使用する。
外気温含む)
内部発熱(室内 顕熱:家電製品、人体その他室内に存する物体から発生する熱として、
で発生する熱)
床面積当たり 16.7 kJ/m2h を設定する。
潜熱:厨房機器、人体その他室内に存する物体から発生する水蒸気が保
有する熱として、床面積当たり 4.2 kJ/m2h を設定する。
換気熱損失
換気回数 0.5 回/h 以上とする。
(熱回収装置を使用する場合は「住宅の
省エネルギー基準の解説」p.69
3.3.2(4)(d)換気用熱回収装置による
年間暖冷房負荷の削減効果に関する評価法を参照のこと。
)
130
4)
SMASHによる年間暖冷房負荷計算(参考)
①入力内容の概要
SMASHでは「ある期間、ある建物をその気象のもと、ある室内条件に保
つ」ために必要となる暖冷房の熱量を求めるため、建設地(気象データ選択)
や建物についての情報入力が必要である。図 3.1.2.1-16 SMASHのプログ
ラム構成を示す。
室データ
建物データ
照明
地域情報
内部発熱
在室者
気象データ
発熱機器
暖冷房期間
・SMASH fo r Windows 気象データ
・拡張アメダス気象データ
自然換気
換気量
排熱換気
屋外との換気
暖房期
温度・湿度
冷房期
室
Q値 期間熱負荷算定用
延べ床面積
室の容積、及び
内部発熱、換気
量、温度、湿度、
暖冷房機器能力
のデータ
暖冷房
機器能力
室相互の組合せデータ
隣棟
「室」と「室」、「室」と「外表面」の組合せと、
その間にある「部位」の面積、「機械換気」等の
データ
外表面
窓の日射取得に
影響のある隣棟
方位角、傾斜角、及び
隣棟に関するデータ
外表面
外表面
室
部位データ
外表面
外表面
壁・天井・屋根・
床
室
室
室
室
熱容量を考慮する部位
土間床等
地盤に接する部位
部位
室
窓
「部位」の
熱的性能に
関するデータ
外表面
部位
室
機械換気
日射透過を考慮する
部位
ドア
機械換気
熱容量を考慮しない部位
室間の機械換気
外部日除け
小屋裏、床下を「*ATT」、「*FLS」と
した場合は、機械換気の設定はできません。
窓の日射取得に影響のある日除け
熱損失係数 計算
日射取得係 数計算
暖冷房負荷 計算
計算結果
入力データ確認表
・方位別・部位別面積、及び貫流熱損失
最寒日・最暑日データによる最大暖冷房負荷
→計算:1
・室別気積、及び換気熱損失
・熱損失係数(参考値)
毎時気象データによる期間暖冷房負荷
→計算:2
・方位別・部位別日射侵入率
及び日射取得係数(参考値)
毎時気象データによる期間暖冷房負荷
(最大供給熱量設定)
→計算:3
注)計算:1は、拡張アメダス気象データを用いた計算が
出来ません。
注)省エネルギー性能は計算:2による値で評価します。
図 3.1.2.1-16 SMASH for Windows Ver.2 のプログラム構成
131
②計算結果
SMASH の計算実行後、計算結果は図 3.1.2.1-17 の帳票で確認できる。
図 3.1.2.1-17 SMASHの出力帳票
当該モデルの年間暖冷房負荷は、表 3.1.2.1-27 の通りとなり、Ⅳ地域の年間
暖冷房負荷基準値 460 [MJ/(m2・K)] 以下であるため、基準に適合する。
表 3.1.2.1-27 当該モデルの年間暖冷房負荷
住戸当たり
床面積当たり
暖房負荷
15,023.73[MJ/K]
214.62[MJ/(m2・K)]
冷房負荷
6,814.47[MJ/K]
97.35[MJ/(m2・K)]
21,838.20[MJ/K]
311.97[MJ/(m2・K)]
年間暖冷房負荷
132
3.1.2.2 鉄骨造における断熱、日射遮蔽性能の評価
鉄骨造の断熱工法は、各部位の構造により多くの断熱工法が考えら、屋根スラブに断熱
する場合は鉄筋コンクリート造における断熱工法が、天井や床に断熱する場合は木造にお
ける断熱工法が適用される。鉄骨造で他構造と断熱性能評価において特徴的な部位は外壁
である。
屋根・天井、及び床・基礎の評価においては、鉄筋コンクリート造、木造における方法
が適用できるため、ここでは外壁の断熱性能について解説する。なお、表 3.1.2.2-2 に鉄
骨造各部位の主な断熱工法について特徴、注意事項等を示したので参考とされたい。
外壁には、鉄骨柱、鉄骨梁が壁体部にあるため、それら以外の壁一般部と柱、梁部は断
熱設計を行う際には各々断熱性状が異なることを意識して、断熱設計を行う。外壁の断熱
工法には、「外張断熱」、「内張断熱」、及び「外張断熱、及び内張断熱以外」の 3 工法があ
り、また、設計の指針となる基準も「熱損失係数基準」、
「熱貫流率基準」、「断熱材の熱抵
抗値基準」の 3 種類から選択できるが、断熱工法、指針とする基準によって考え方が異な
るため、ここで整理しておく必要がある。
(1)
基本的な考え方
外壁の断熱基準(U 値、R 値)は、柱、梁部を含まない「壁一般部」について定めている。
告示には、熱貫流率基準の条文において「熱橋となる部分(壁に設けられる横架材を除く。)
による低減を勘案した熱貫流率」となっており、横架材に相当する部分の「柱、梁部」を
除いて基準を定めている。なお、梁部には接する床を含む範囲を「梁部」とする。
図 3.1.2.2-1 は、一般部と柱、梁部の関係をあらわしたものであり、表 3.1.2.2-1 は、
壁の断熱工法別各部の扱いについてまとめたものである。
外張断熱(柱外側で断熱)
内張断熱(柱内側で断熱)
外張断熱・内張断熱以外
(柱間で断熱)
梁部
一般部
一般部
一般部
梁部
梁部
梁部
【熱橋】
一般部
一般部
一般部
断熱補強必要
断熱補強必要
出隅部 一般部 柱部 一般部
出隅部 一般部 柱部 一般部
U値基準は同じ。
出隅部 一般部 柱部 一般部
【熱橋】
【熱橋】
断熱層
断熱補強
図 3.1.2.2-1 断熱工法別断熱層の位置、及び一般部と柱・梁部
133
表 3.1.2.2-1 壁の断熱工法別各部の扱い
断熱工法
部位
一般部
設計・施工指針における各部の扱い
R 値基準の場合
基準A
U 値基準の場合
基準a(熱橋を考慮)
Q 値計算における
各部の扱い
実質熱貫流率を算出
外張断熱
基準なし→一般部と同 基準なし→一般部と同
実質熱貫流率を算出
じ断熱仕様とする。
じ断熱仕様とする。
柱、梁部
一般部
基準A
基準a(熱橋を考慮)
実質熱貫流率を算出
内張断熱
基準なし→一般部と同 基準なし→一般部と同
実質熱貫流率を算出
じ断熱仕様とする。
じ断熱仕様とする。
柱、梁部
熱橋部以外
基準B
一般部
外張断熱、及び
内張断熱以外
基準a(熱橋を考慮)
熱橋部
柱、梁部
実質熱貫流率を算出
基準C
基準D
実質熱貫流率を算出
基準なし。→基準Dに
基づく断熱仕様とす
る。
実質熱貫流率を算出
・基準のA,B,C,Dは、基準値を区別するための記号である。
・基準Aは基準値同じ。外張断熱と内張断熱は、R値基準は同じ。
・基準B,C,Dは、外装材により異なる。
・基準aは基準値同じ。断熱工法の別に関わらず共通。
134
【省エネ措置届出に際しての注意事項】
●断熱材の熱抵抗値による評価の場合(断熱材の種類と厚さによる場合と同じ)
届出書には、一般部の断熱材の熱抵抗値、若しくは断熱材の種類と厚さを記載す
る。(基準 A、B)
断熱仕様を示す書面を添付する。
上記一般部(基準 A)に加え、外張断熱、及び内張断熱以外の場合は、熱橋部及
び柱、梁部の断熱補強材の熱抵抗値、若しくは断熱補強材の種類と厚さを記載す
る。(基準 C、D)
●熱貫流率による評価の場合
届出書には、一般部の熱貫流率を記載する。(基準 a)
注:一般部の熱貫流率の計算に際しては、熱橋を考慮すること。
一般部の熱橋を考慮した熱貫流率計算書を添付する。
断熱仕様を示す書面を添付する。
一般部、熱橋部、及び外張断熱、及び内張断熱以外の場合は、熱橋部及び柱、梁
部の断熱補強材の熱抵抗値、若しくは断熱補強材の種類と厚さを記載する。
(基準
C、D)
●熱損失係数による評価の場合
届出書には、住宅の熱損失係数を記載する。
一般部の熱橋を考慮した熱貫流率計算書、及び熱損失係数計算書を添付する。
断熱仕様を示す書面を添付する。
一般部、熱橋部、及び外張断熱、及び内張断熱以外の場合は、熱橋部及び柱、梁
部の断熱補強材の熱抵抗値、若しくは断熱補強材の種類と厚さを記載する。
(基準
C、D)
(2)
断熱工法別解説
(ア)外張断熱、及び内張断熱
外張断熱は柱・梁の外側で一様に断熱する工法であり、内張断熱は柱・梁の内側で一様
に断熱する工法である。
外張断熱、内張断熱は、R 値基準、U 値基準とも基準は共通しており、熱損失係数におけ
る各部の扱い方(算出方法)も同じである。その前提となっているのは、柱、梁部もその
他の壁一般部と同じ断熱仕様で一様に断熱することにある。もし、内張断熱では生じる可
能性があるので注意が必要であるが、柱、梁部の断熱をその他の壁一般部と異なる仕様と
した場合は、R 値、U 値基準の適用ができず、各々の U 値を求めた上で熱損失係数による評
135
価を行なうことになる。
よって、繰り返しになるが、外張断熱、内張断熱では R 値、U 値基準ともに柱、梁部の
基準を定めていないことから、柱、梁部の断熱は壁一般部と同じとしなければならない。
(イ)
外張断熱、及び内張断熱以外(柱間に断熱)
外張断熱、内張断熱のいずれでもなく、柱・梁の間に断熱する場合は、R 値基準におい
て、壁一般部と柱、梁部の別で基準が定められており、さらに、壁一般部において、金属
熱橋の有無により基準が別途定められている。壁一般部内に金属熱橋が存在する場合の断
熱補強は、図 3.1.2.2-2 のように熱橋となる部材を覆いつくすように、あるいは壁断熱材
を連続するように設置する。それに用いる断熱補強材は、熱抵抗値基準を満たしていれば
断熱材でなくとも木材等の材料を用いてもよい。
ALC
100mm厚
外装材
断熱補強
ALC
100mm厚
外装材
断熱 補 強
図 3.1.2.2-2 壁一般部における断熱補強
U 値基準は、壁一般部の基準であるため外張断熱・内張断熱と同じであるが、
柱、梁部は U 値基準はなく、R 値基準で定められた断熱を施すことが求められ
る。それに満たない場合は、熱損失係数による評価を行うことになる。
136
断熱補
AL
表 3.1.2.2-2 鉄骨造各部位の主な断熱工法(参考)
部位構造
部位
屋根 陸屋根
外断熱
コンクリートスラブ
(デッキプレート下地)、
内断熱
ALC
折板屋根
小屋組み
天井
外壁 外装材
ALC t=100相当
R≧0.56
外装材
特徴、注意事項等
鉄筋コンクリート造等の場合と同様
断熱層を貫通する梁等に断熱補強が必要。
寒冷地では天井吊ボルトなどを断熱型のタ
イプとする。
吹付断熱
折半裏面に断熱。梁部には断熱補強が必
要。
外張断熱
木造の場合と同様
たるき間断熱
たるきが熱橋になるため、断熱補強が必
要。
たるき内張断熱
小屋組材が断熱層を貫通する場合があるの
で、貫通部は断熱補強を要する。
敷込・吹込断熱
木造の場合と同様。野縁が金属の場合は、
断熱材を貫通しないようにすること。
張上断熱
木造の場合と同様
外張断熱
外装材の取り付け工法上、外張断熱は難し
い。
内張断熱
柱、梁等も外壁と同じ断熱厚とする。
外張・内張断熱以外:柱・梁間断熱
(断熱材貫通部材:無)
柱、梁に断熱補強が必要。
外張・内張断熱以外:柱・梁間断熱
(断熱材貫通部材:有)
スタッドなど断熱材を貫通する金属部材を
断熱補強する。
ALC t=75相当、押出成型セ
外張断熱
メント板 t=60相当など
0.15≦R<0.56
外装材の取り付け工法上、外張断熱は難し
い。
内張断熱
柱、梁等も外壁と同じ断熱厚とする。
柱間断熱(断熱材貫通部材:無)
柱、梁に断熱補強が必要。
柱間断熱(断熱材貫通部材:有)
スタッドなど断熱材を貫通する金属部材を
断熱補強する。柱、梁等も断熱補強が必
要。
外張断熱
一般的ではない。外装材下地(鋼材)が外
張断熱材の層内にあるため、断熱補強が難
しい。
内張断熱
柱、梁等も外壁部分と同じ断熱厚とする。
外張・内張断熱以外:柱・梁間断熱
(断熱材貫通部材:無)
実際には断熱材を貫通させずに外装下地鋼
材を設置しにくい。
外張・内張断熱以外:柱・梁間断熱
(断熱材貫通部材:有)
スタッドなど断熱材を貫通する金属部材を
断熱補強する。柱、梁等も断熱補強が必
要。
外張断熱
柱、梁等も外壁と同じ断熱厚とする。ま
た、柱、梁に断熱補強が必要。
内張断熱
柱、梁等も外壁と同じ断熱厚とする。
外張・内張断熱以外:柱・梁間断熱
(断熱材貫通部材:無)
実際には断熱材を貫通させずに外装下地鋼
材を設置しにくい。
外張・内張断熱以外:柱・梁間断熱
(断熱材貫通部材:有)
スタッドなど断熱材を貫通する金属部材を
断熱補強する。柱、梁等も断熱補強が必
要。
土間床
基礎断熱:外側、内側
木造の場合と同様
床組み
根太間、大引間充填断熱
木造の場合と同じ。根太等が鋼材の場合
は、断熱補強を施すことが望ましい。
ALC t=50相当
外装材
R<0.15
床
断熱工法
サイディング通気工法
137
3.1.3
外壁、窓等の断熱、日射遮蔽性能の評価計算に用いるデータ、係数等
表 3.1.3-1 各種材料の熱伝導率
備考
熱伝導率
材料名
[W/(m・K)]
密度
規格等
[kg/㎥]
セメント
セメント・モルタル
1.5
コンクリート
コンクリート
1.6
レンガ
軽量骨材コンクリート1種
0.81
軽量骨材コンクリート2種
0.58
1,600
軽量気泡コンクリートパネル(ALC パネル)
0.17
500~700
普通れんが
0.62
1,700 以下
耐火れんが
0.99
1,700~2,000
銅
370
8,300
アルミニウム合金
200
2,700
鋼材
53
7,830
鉛
35
11,400
金属類
ステンレス鋼
1,900
JIS A 5416
15
7,400
ガラス
フロートガラス
1.0
2,500
ISO/TC163
プラスチック
アクリルガラス
0.20
1,050
N293E
ゴム
PVC(塩化ビニル)
0.17
1,390
ポリウレタン
0.30
シリコン
0.35
1,200
ブチルゴム
0.24
1,200
木質系
天然木材1種
0.12
桧、杉、えぞ松等
木質繊維系
天然木材2種
0.15
松、ラワン等
天然木材3種
0.19
ナラ、サクラ、ブナ等
合板
0.16
420~660
木毛セメント板
0.10
400~600
JIS A 5404
木片セメント板
0.17
1,000 以下
JIS A 5404
ハードボード
0.17
950 以下
JIS A 5905
せっこう
壁
床材
パーティクルボード
0.15
400~700
JIS A 5908
せっこうボード
0.22
700~800
JIS A 6901
せっこうプラスター
0.60
漆喰
0.70
1,300
土壁
0.69
1,280
繊維質上塗材
0.12
500
畳床
0.11
タイル
プラスチック(P)タイル
138
JIS A 6904
JIS A 6909
JIS A 5901
1.3
2,400
JIS A 5209
0.19
1,500
JIS A 5705
表 3.1.3-2 断熱材の熱伝導率
断熱材区分
A-1
λ=0.052~0.051
A-2
λ=0.050~0.046
B
λ=0.045~0.041
C
λ=0.040~0.035
D
λ=0.034~0.029
E
λ=0.028~0.023
F
λ=0.022 以下
断熱材の種類
吹込み用グラスウール(施工密度 13K、18K)
タタミボード(15 ㎜)
A 級インシュレーションボード(9 ㎜)
シージングボード(9 ㎜)
住宅用グラスウール断熱材 10K 相当
吹込み用ロックウール断熱材 25K
住宅用グラスウール断熱材 16K 相当
住宅用グラスウール断熱材 20K 相当
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板 4 号
A種ポリエチリンフォーム保温板 1 種 1 号
A種ポリエチリンフォーム保温板 1 種 2 号
住宅用グラスウール断熱材 24K 相当
住宅用グラスウール断熱材 32K 相当
高性能グラスウール断熱材 16K 相当
高性能グラスウール断熱材 24K 相当
高性能グラスウール断熱材 32K 相当
吹込用グラスウール断熱材 30K、35K 相当
住宅用ロックウール断熱材(マット)
ロックウール断熱材(フェルト)
ロックウール断熱材(ボード)
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板 1 号
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板 2 号
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板 3 号
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板 1 種
建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームA種 3
A種ポリエチリンフォーム保温板 2 種
A種フェノールフォーム保温板 2 種 1 号
A種フェノールフォーム保温板 3 種 1 号
A種フェノールフォーム保温板 3 種 2 号
吹込用セルローズファイバー25K
吹込用セルローズファイバー45K、55K
吹込用ロックウール断熱材 65K 相当
高性能グラスウール断熱材 40K 相当
高性能グラスウール断熱材 48K 相当
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板特号
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板 2 種
A種硬質ウレタンフォーム保温板 1 種
建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームA種 1
建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームA種 2
A種ポリエチリンフォーム保温板 3 種
A種フェノールフォーム保温板 2 種 2 号
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板 3 種
A種硬質ウレタンフォーム保温板 2 種 1 号
A種硬質ウレタンフォーム保温板 2 種 2 号
A種硬質ウレタンフォーム保温板 2 種 3 号
A種硬質ウレタンフォーム保温板 2 種 4 号
A種フェノールフォーム保温板 2 種 3 号
A種フェノールフォーム保温板 1 種 1 号
A種フェノールフォーム保温板 1 種 2 号
139
熱伝導率[W/(m・K)]
0.052
0.052
0.051
0.051
0.050
0.047
0.045
0.042
0.043
0.042
0.042
0.038
0.036
0.038
0.036
0.035
0.040
0.038
0.038
0.036
0.036
0.037
0.040
0.040
0.040
0.038
0.036
0.035
0.035
0.040
0.040
0.039
0.034
0.033
0.034
0.034
0.029
0.032
0.032
0.034
0.034
0.028
0.023
0.024
0.027
0.028
0.028
0.022
0.022
表 3.1.3-3 表面熱伝達抵抗(慣用値)
部位
内側熱伝達抵抗
外側熱伝達抵抗[(㎡・K)/W]
[(㎡・K)/W]
外気の場合
外気以外の場合
屋根
0.09
0.04
0.09(通気層*)
天井
0.09
―
外壁
0.11
0.04
0.11(通気層*)
床
0.15
0.04
0.15 (床下)
0.09(小屋裏)
*外装材の建物側に設ける湿気排出のための、外気に開放された中空層
表 3.1.3-4 空気層の熱抵抗
空気層の種類*1
(1)工場生産で気密なもの
(2)
(1)以外のもの
空気層の厚さ
空気層の熱抵抗*2
[㎝]
[(㎡・K)/W]
2 以下
0.09×da
2 以上
0.18
1 以下
0.09×da
1 以上
0.09
*3
*1)床裏若しくは外気に通じる小屋裏又は天井裏は、空気層と見なさない。
*2)空気層内表面の放射率が 0.9 程度の場合の熱抵抗である。
*3)空気層に面する高温側と低音側の放射率を変えた場合は、以下の通り。
片側の放射率を 0.9 として他方を 0.3 としたとき、R=0.30。
片側の放射率を 0.9 として他方を 0.1 としたとき、R=0.42。
140
表 3.1.3-5 窓仕様別熱貫流率
建具の構成
建具の仕様
ガラスの仕様
計算に用いる
熱貫流率
W/(㎡・K)
[kcal/(㎡・h・℃)]
低放射複層(A12)
三層複層(A12×2)
複層(A12)
複層(A6)
2.33
2.33
2.91
3.49
[2.0]
[2.0]
[2.5]
[3.0]
低放射複層(A12)
低放射複層(A6)
複層(A10〜A12)
複層(A6)
2.33
3.49
3.49
4.07
[2.0]
[3.0]
[3.5]
[3.5]
低放射複層(A12)
低放射複層(A6)
複層(A10〜A12)
複層(A6)
2.91
3.49
3.49
4.07
[2.5]
[3.0]
[3.0]
[3.5]
低放射複層(A6)
複層(A6)
単板2枚
(A12以上)
単板2枚
(A12未満)
単板
4.07
4.65
4.07
4.65
6.51
[3.5]
[4.0]
[3.5]
[4.0]
[5.6]
単板+複層(A12)
単板+単板
2.33 [2.0]
2.91 [2.5]
単板+単板
3.49 [3.0]
低放射複層(A12)
三層複層(A12×2)
複層(A12)
2.33 [2.0]
2.33 [2.0]
2.91 [2.5]
低放射複層(A12)
複層(A12)
2.33 [2.0]
2.91 [2.5]
複層(A6)
4.65 [4.0]
金属製 扉:断熱材充塡フラッシュ構造 複層(A6)
4.07 [3.5]
金属製 扉:ハニカムフラッシュ構造
4.65 [4.0]
(一重)
木製又はプラスチック製
窓 (一重)
金属・プラスチック
(木)
複合構
・
造製
引
戸
・
框 (一重)
金属製熱遮断構造
ド
ア
(一重)
金属製
金属製+プラスチック
(木)製
窓 (二重)
・
引 (二重)
金属製+金属製
戸 (枠中間部熱遮断構造)
木製断熱積層構造
金属製高断熱構造
扉:断熱フラッシュ構造辺
ド
縁部等熱遮断構造
ア
枠:熱遮断構造
木製扉:木製、枠:金属製
複層(A6)
141
製品の熱貫流率の範囲(※)
W/(㎡・K)/[kcal/(㎡・h・℃)]
2.33
3.49
4.65
6.51
[2.0] [3.0] [4.0]
[5.6]
表 3.1.3-6 窓の日射侵入率η
(ガラスと日射遮蔽用付属部品の組合せで定まる日射侵入率η)
ガラスの日射侵入率(例)
空気
ガラスの仕様(例)
日射遮蔽物等の種類
層厚
[㎜]
外付け
紙障子
カーテン
ブラインド
ブラインド
複層ガラス
0.71
0.50
0.44
0.38
0.16
12
0.79
0.52
0.44
0.37
0.17
6
0.79
0.52
0.44
0.37
0.17
12
0.63
0.48
0.43
0.39
0.15
6
0.62
0.47
0.42
0.37
0.15
遮熱低放射複層ガラ
12
0.42
0.32
0.29
0.26
0.11
ス
6
0.43
0.33
0.30
0.26
0.11
熱反 3 種使
12
0.38
0.29
0.27
0.24
0.10
用の構成
6
0.39
0.31
0.28
0.25
0.10
熱反 2 種使
12
0.29
0.21
0.20
0.18
0.07
用の構成
6
0.28
0.23
0.21
0.19
0.08
12
0.57
0.40
0.35
0.31
0.13
6
0.57
0.41
0.36
0.31
0.13
-
0.88
0.56
0.46
0.38
0.19
熱反 2 種
-
0.48
0.38
0.34
0.31
0.12
熱反 3 種
-
0.35
0.31
0.28
0.25
0.10
-
0.68
0.47
0.41
0.35
0.15
普通複層ガラス
低放射複層ガラス
低放射複
熱線反
射ガラ
遮熱複層
内付け
12
普通三層複層ガラス
層ガラス
レース
なし
ス
ガラス
熱線吸収複層ガラス
単板ガラス
普通単板ガラス
熱線反射ガラス
熱線吸収ガラス
142
表 3.1.3-7 オーバーハング型日除けの補正係数(f1 及びf2)を求めるための数表
Ⅰ地域
Ⅱ地域
Ⅲ地域
L1
又は
L2
南
南西
・
南東
西
・
東
北西
・
北東
北
南
南西
・
南東
西
・
東
北西
・
北東
北
南
南西
・
南東
西
・
東
北西
・
北東
北
0.0
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.00
0.08
0.09
0.11
0.13
0.14
0.00
0.07
0.09
0.11
0.14
0.16
0.00
0.10
0.13
0.17
0.20
0.24
0.00
0.13
0.17
0.20
0.24
0.27
0.00
0.18
0.22
0.26
0.29
0.33
0.00
0.10
0.12
0.14
0.16
0.18
0.00
0.09
0.12
0.14
0.16
0.19
0.00
0.11
0.15
0.18
0.21
0.25
0.00
0.09
0.12
0.14
0.16
0.19
0.00
0.19
0.23
0.27
0.31
0.34
0.00
0.10
0.12
0.14
0.16
0.18
0.00
0.10
0.12
0.14
0.17
0.20
0.00
0.12
0.15
0.19
0.22
0.26
0.00
0.15
0.18
0.22
0.25
0.29
0.00
0.19
0.23
0.27
0.30
0.34
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
2.5
0.17
0.19
0.21
0.24
0.27
0.30
0.37
0.21
0.26
0.32
0.37
0.41
0.45
0.54
0.30
0.36
0.42
0.46
0.51
0.54
0.61
0.33
0.39
0.43
0.48
0.51
0.55
0.61
0.39
0.44
0.49
0.53
0.56
0.59
0.65
0.21
0.23
0.26
0.28
0.31
0.34
0.41
0.24
0.29
0.34
0.38
0.42
0.46
0.54
0.31
0.37
0.42
0.46
0.50
0.54
0.61
0.24
0.29
0.34
0.38
0.42
0.46
0.54
0.40
0.46
0.50
0.54
0.58
0.61
0.67
0.22
0.25
0.29
0.33
0.36
0.39
0.46
0.25
0.30
0.35
0.39
0.44
0.47
0.55
0.32
0.38
0.43
0.47
0.51
0.55
0.62
0.35
0.40
0.45
0.49
0.52
0.56
0.62
0.40
0.45
0.50
0.54
0.57
0.60
0.66
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
6.0
8.0
0.44
0.50
0.56
0.60
0.64
0.70
0.77
0.60
0.65
0.69
0.72
0.74
0.78
0.83
0.66
0.70
0.74
0.76
0.78
0.82
0.86
0.66
0.70
0.73
0.76
0.78
0.81
0.85
0.69
0.73
0.76
0.78
0.80
0.83
0.87
0.47
0.53
0.58
0.62
0.65
0.71
0.78
0.60
0.65
0.68
0.71
0.74
0.78
0.83
0.66
0.70
0.73
0.76
0.78
0.81
0.85
0.60
0.65
0.68
0.71
0.74
0.78
0.83
0.71
0.74
0.77
0.79
0.81
0.84
0.88
0.51
0.55
0.59
0.63
0.66
0.71
0.78
0.61
0.66
0.69
0.72
0.75
0.79
0.84
0.67
0.71
0.74
0.76
0.78
0.82
0.86
0.67
0.71
0.74
0.76
0.78
0.81
0.86
0.71
0.74
0.77
0.79
0.81
0.84
0.87
10.0
20.0
∞
0.81
0.91
1.00
0.86
0.93
1.00
0.89
0.94
1.00
0.86
0.94
1.00
0.89
0.94
1.00
0.82
0.91
1.00
0.86
0.93
1.00
0.88
0.94
1.00
0.86
0.93
1.00
0.90
0.95
1.00
0.82
0.91
1.00
0.87
0.93
1.00
0.89
0.94
1.00
0.88
0.94
1.00
0.90
0.95
1.00
L1
又は
L2
南
南西
・
南東
西
・
東
北西
・
北東
北
南
南西
・
南東
西
・
東
北西
・
北東
北
南
南西
・
南東
西
・
東
北西
・
北東
北
0.0
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.00
0.09
0.11
0.13
0.14
0.16
0.00
0.09
0.11
0.13
0.15
0.18
0.00
0.11
0.15
0.18
0.21
0.25
0.00
0.14
0.17
0.21
0.24
0.27
0.00
0.18
0.22
0.26
0.29
0.33
0.00
0.08
0.09
0.11
0.13
0.14
0.00
0.09
0.12
0.15
0.17
0.20
0.00
0.13
0.17
0.21
0.24
0.28
0.00
0.14
0.18
0.22
0.25
0.29
0.00
0.17
0.21
0.25
0.28
0.31
0.00
0.09
0.11
0.13
0.14
0.16
0.00
0.09
0.11
0.14
0.17
0.19
0.00
0.11
0.15
0.18
0.22
0.25
0.00
0.13
0.16
0.20
0.23
0.26
0.00
0.17
0.21
0.24
0.28
0.31
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
2.5
0.19
0.22
0.25
0.28
0.32
0.35
0.41
0.23
0.28
0.33
0.37
0.42
0.45
0.53
0.31
0.37
0.42
0.47
0.51
0.54
0.61
0.33
0.39
0.43
0.48
0.51
0.54
0.61
0.39
0.44
0.49
0.52
0.56
0.59
0.65
0.18
0.22
0.26
0.31
0.35
0.38
0.45
0.26
0.31
0.36
0.41
0.45
0.48
0.56
0.35
0.40
0.45
0.50
0.54
0.57
0.63
0.35
0.40
0.45
0.49
0.53
0.56
0.62
0.37
0.42
0.47
0.51
0.54
0.57
0.63
0.20
0.25
0.29
0.34
0.37
0.41
0.48
0.25
0.30
0.35
0.40
0.44
0.47
0.55
0.32
0.38
0.43
0.47
0.51
0.55
0.61
0.32
0.38
0.42
0.47
0.50
0.53
0.60
0.37
0.42
0.46
0.50
0.53
0.56
0.62
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
6.0
8.0
0.47
0.51
0.55
0.59
0.62
0.68
0.75
0.59
0.64
0.68
0.71
0.74
0.78
0.83
0.66
0.70
0.73
0.76
0.78
0.81
0.86
0.66
0.70
0.73
0.75
0.77
0.81
0.85
0.69
0.73
0.75
0.78
0.79
0.82
0.86
0.51
0.56
0.59
0.63
0.65
0.70
0.76
0.62
0.66
0.70
0.73
0.75
0.79
0.84
0.68
0.72
0.75
0.78
0.80
0.83
0.87
0.67
0.71
0.74
0.76
0.78
0.81
0.86
0.68
0.71
0.74
0.76
0.78
0.81
0.85
0.53
0.58
0.61
0.65
0.67
0.72
0.77
0.60
0.65
0.69
0.72
0.74
0.78
0.83
0.66
0.70
0.74
0.76
0.78
0.82
0.86
0.65
0.69
0.72
0.75
0.77
0.80
0.85
0.66
0.70
0.73
0.75
0.77
0.80
0.84
10.0
20.0
∞
0.80
0.90
1.00
0.86
0.93
1.00
0.88
0.94
1.00
0.88
0.94
1.00
0.89
0.94
1.00
0.81
0.90
1.00
0.87
0.93
1.00
0.89
0.94
1.00
0.88
0.94
1.00
0.88
0.94
1.00
0.81
0.90
1.00
0.86
0.93
1.00
0.89
0.94
1.00
0.87
0.93
1.00
0.87
0.93
1.00
Ⅳ地域
Ⅴ地域
143
Ⅵ地域
表 3.1.3-8 構造熱橋形状、断熱工法、断熱補強仕様に応じた低減係数 aH と熱橋部の最低
表面温度を求めるための係数 b
(a)主に内断熱工法の場合( 一般断熱部分
断熱補強部分)
低減係数 aH
構造形式
1.0
0.75
0.5
(
)
鉄筋コンクリート造
壁式構造等
外
壁
と
間
T仕
型切
及壁
び ・ 鉄筋コンクリート造
+外
型 壁 ラーメン構造1
熱と
橋床
部の
取
合
部
等 鉄筋コンクリート造
ラーメン構造2
鉄筋コンクリート造
壁式構造等
パ
ラ
ペ
ッ
ト
部
等
鉄筋コンクリート造
ラーメン構造1
鉄筋コンクリート造
ラーメン構造2
【適用条件】
・ 各部位の断熱性能:平成4年設計施工指針に掲げるものと同等以上の断熱性能が確保されていること
・ 躯体鉄筋コンクリート厚さ:外壁 120~200mm 屋根、床スラブ 150~250mm
・ 熱橋部の断熱補強の仕様:上表に掲げる熱橋部分の片面若しくは両面の断熱補強仕様については下表とする
a)
補強の範囲
断熱工法
地域区分・断熱補強の範囲
Ⅰ
Ⅱ、Ⅲ
Ⅳ、Ⅴ
内断熱工法
900
600
450
b)
断熱厚さ
断熱材の種類別厚さ(mm)
A-1
A-2
B
C
D
E
F
35
30
30
25
25
20
15
断熱材の種類は表 3.1.2-2 参照のこと
・
室内側及び外気側の表面熱伝達抵抗は表 3.1.3-3 による
144
(b)外断熱工法の場合( 一般断熱部分
断熱補強部分)
低減係数 aH
構造形式
1.0
0.75
0.5
鉄筋コンクリート造
壁式構造等
外
壁
と
間
T仕
型切
及壁
び ・ 鉄筋コンクリート造
+外
型 壁 ラーメン構造1
熱と
橋床
部の
取
合
部
等 鉄筋コンクリート造
ラーメン構造2
鉄筋コンクリート造
壁式構造等
パ
ラ
ペ
ッ
ト
部
等
鉄筋コンクリート造
ラーメン構造1
鉄筋コンクリート造
ラーメン構造2
【適用条件】
・ 各部位の断熱性能:平成4年設計施工指針に掲げるものと同等以上の断熱性能が確保されていること
・ 躯体鉄筋コンクリート厚さ:外壁 120~200mm 屋根、床スラブ 150~250mm
・ 熱橋部の断熱補強の仕様:上表に掲げる熱橋部分の片面若しくは両面の断熱補強仕様については下表とする
a)
補強の範囲
断熱工法
地域区分・断熱補強の範囲
Ⅱ、Ⅲ
300
Ⅰ
450
b)
外断熱工法
断熱厚さ
・
断熱材の種類別厚さ(mm)
A-1
A-2
B
C
D
35
30
30
25
25
断熱材の種類は表 3.1.2-2 参照のこと
室内側及び外気側の表面熱伝達抵抗は表 3.1.3-3 による
145
Ⅳ、Ⅴ
200
E
20
F
15
表 3.1.3-9 不透明外皮の日射侵入率η(イータ)
部位
日射侵入率
屋根
η=aU/αO
天井
=0.8U/23
外壁
≒0.034U
横架材(胴差)
a
:壁体の日射吸収率=0.8
αO:外気側熱伝達率=23[W/(m2・K)]
ドア
一般床
外気に接する床
不要
土間床等
表 3.1.3-10
温度差係数 H
外気
外気に通じる小屋裏
外気に通じる床裏
又は天井裏
1.0
1.0
0.7
表 3.1.3-11 方位係数ν(ニュー)
方位
地域区分
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
東・西
0.47
0.46
0.45
0.45
0.44
0.43
南
0.47
0.44
0.41
0.39
0.36
0.34
南東・南西
0.50
0.48
0.46
0.45
0.43
0.42
北
0.27
0.27
0.25
0.24
0.23
0.20
北東・北西
0.36
0.36
0.35
0.34
0.34
0.32
146
3.2
共用部設備機器の省エネルギー措置
3.2.1
届出の概要
共用部設備機器の省エネルギー措置について、届出の対象となる工事内容について表
3.2.1-1 に、届け出る内容を表 3.2.1-2 に示す。
表 3.2.1-1 届出対象(表 1.2.1-1 より一部抜粋)
第一種特定建築物
第二種特定建築物
(2,000 ㎡以上)
(300 以上 2,000 ㎡未満)
必要
必要
増築・改築時
場合による
場合による
修繕・模様替時
場合による
不要
共用設備改修時
場合による
不要
必要
不要
新築時
定期報告(3年毎)
*「場合による」の場合については、表 1.2.3.1-1、表 1.2.3.1-2、表 1.2.3.1-3 を参照
のこと。
表 3.2.1-2 届け出る省エネ措置
措置の内容
対象となる設備機器
共用部の設備機器に対するエネルギーの
・
空気調和設備
効率的利用
・
機械換気設備
・
照明設備
・
給湯設備
・
昇降機
147
3.2.2
評価方法の概要
共用部の設備機器における省エネ措置届出に際して参照する基準は、省エネルギー性能
の評価方法と共に、
「住宅の省エネルギー基準」の「住宅に係る建築主の判断基準」に記さ
れている。対象設備ごとに、エネルギーの効率的利用を図るための項目が掲げられており、
届出対象となる工事の場合には、これらの項目に配慮して計画されているかどうかを評価
する。設備ごとに評価対象となる内容について表 3.2.2-1 にまとめた。
表 3.2.2-1 設備ごとに評価対象となる内容
対象となる内容
評価対象となる設備
(共用部分のみ。住戸ごとに設置するものは除く。)
空気調和設備
規模に応じて様々
機械換気設備
定格出力が 5.5kW 以上のもの
照明設備
居住環境上必要な照明設備
給湯設備
規模に応じて様々
昇降機
階数に応じて以下の通り。
(1)3 階以上:全ての建物
(2)4~15 階以上:2 台以上設置の場合
(3)16 階以上:3 台以上設置の場合
【コラム:評価対象の改正】
設備ごとの評価対象となる内容については、平成 21 年の改正により以下のようにな
った。
機械換気設備
照明設備
昇降機(エレベーター)
改正前
全ての設備が対象
全ての設備が対象
4以上15階以下:1台
16階以上:2台
148
改正後
定格出力5.5kW以上に限定
居住環境上必要なものに限定
(救命用、避難用は対象外に)
4以上15階以下:2台以上
16階以上:3台以上
設備ごとに定められている評価方法を図 3.2.2-1 及び表 3.2.2-2 に示す。
設備機器に対するエネルギーの効率的利用
ポイントで評価
(仕様基準)
留意事項で評価
エネルギー消費係数で評価
(性能基準)
*床面積5,000㎡以下の場合のみ
空気調和設備
届出(4項目)
機械換気設備
選択
届出
届出
照明設備
給湯設備
届出
届出(3項目)
昇降機
選択
届出
届出
図 3.2.2-1 設備のエネルギー効率的利用の評価項目選択フロー図
表 3.2.2-2 設備ごとの評価方法(フロー図の内容を表の形式で表現)
留意事項
評価方法
ポイント法
(仕様基準)
*床面積 5,000 ㎡以下
エネルギー消費係数
(CEC)
(性能基準)
-
空気調和設備
○(4 項目)
-
機械換気設備
-
○
照明設備
-
-
○
給湯設備
○(3 項目)
-
-
-
○
昇降機
または
または
○
○
図 3.2.2-1 および表 3.2.2-2 に示したように評価方法には 3 種類あり、設備ごとに「住
宅の省エネルギー基準」で定められた方法・手順により評価する。3 種類の評価方法につ
いてまとめたものを表 3.2.2-3 に示す。
149
表3.2.2-3 評価方法の概要
評価方法
留意事項
による評価
概要
エネルギーの効率的利用について評価するにあ
たり、現在は数値基準を定める段階にない設備に
関しては、「住宅の省エネルギー基準」によって
定性的に定められているエネルギー措置に関する
事項について、配慮して計画したかどうかを示
す。
「住宅の省エネルギー基準」によって定められ
たエネルギー措置に関する項目ごとに点数が定め
られており、計画内容に該当する項目を選択し、
それら項目ごとの点数を合計した総合点数で評価
する。
ポイント法
ポイント法は、中小規模住宅における省エネル
による評価
(仕様基準) ギー措置を簡易に判定することを目的に設けられ
(床面積5,000㎡ ている評価法。
以下)
エネルギーの効率的利用の尺度として用いる係
エネルギーの効率的利用の尺度として用いる係数
数CECを算出して評価する。
CECを算出して評価する。
年間消費エネルギー量(MJ/年)
年間消費エネルギー量[MJ/年]
年間仮想消費エネルギー量(MJ/年)
年間仮想消費エネルギー量[MJ/年]
エネルギー消費
係数(CEC)
つまり、省エネに配慮しなかった場合(分母)に
つまり、省エネに配慮しなかった場合(分母)
による評価
比べて、配慮して計画した場合(分子)にどれだけ
(性能基準) に比べて、配慮して計画した場合(分子)にどれ
年間消費エネルギー量を減らすことができるかを係
だけ年間消費エネルギーを減らすことができるか
数で示す評価法。
を係数で示す評価法。
*CEC:Coefficient of
*CEC:Coefficient
of Energy
EnergyConsumption
Consumption
150
基準数値
作業内容
措置に対応する計
画内容の概要を作
成
-
100点以上
(補正点として80点
あるので、実質20
点)
*点数が高いほど省
エネルギーが図られ
ていると判断でき
る。
*点数は項目によっ
て異なるが、0、10、
20、40の4種類。
1.0以下
*値が小さいほど、
省エネルギーが図ら
れていると判断でき
る。
計画内容に該当す
る点数を拾って合
計
設備仕様や「住宅
の省エネルギー基
準」によって定め
られている数値を
もとに計算
3.2.3
設備ごとの評価方法
3.2.3.1 空気調和設備
空気調和設備にかかるエネルギーの効率的利用を図るための項目として「住宅の省エネ
ルギー基準」に掲げられているのは以下の 4 項目である。
(1)
室等の空気調和負荷の特性等に配慮して空気調和設備のシステムの計画
を策定すること。
(2)
風道、配管等におけるエネルギーの損失の少ない熱搬送設備計画を策定
すること。
(3)
適切な空気調和設備の制御方法を採用すること。
(4)
エネルギーの利用効率の高い熱源システムを採用すること。
●留意事項による評価
共同住宅の共用部分における空気調和設備に係るエネルギーの効率的利用の基準では、
現在は数値基準を定める段階にないことから、届出では定性的な上記4項目を示すに留め
られており、これが直接省エネルギー性能評価の内容になる。
●対象となるシステム
戸建住宅に設けるもの並びに重ね建住宅、連続住宅及び共同住宅において住戸ごとに設
けるものを除く。
対象となる空気調和設備として採用されるシステムは、規模に応じ様々であるが、ここ
では参考例として、住棟セントラルによるものを取り上げ解説する。
住棟セントラルによる空調設備は、主に給湯設備と兼用で設置されるセントラル暖房・
給湯設備となる。住棟セントラルシステムの概要を図 3.2.3.1-1 に示す。
151
各住宅(居室)
バイブシャフト
給湯
14階
暖房
給湯
暖房
給湯
3階
暖房
給湯
2階
暖房
水道水
暖房パネル
サーモ
スタッド
バルブ
給湯熱交換
10℃
60℃
暖房配管
80℃
シャワー
80℃
お湯42℃
40℃
60℃
追焚き
ユニット(保温型)
80℃
石油
(台所・洗面所)
ロード
ヒーティング
熱量メーター
80℃
熱源プラント
サービスタンク
ロードヒーティング
熱交換ユニット
貯蔵タンク
図 3.2.3.1-1 住棟セントラルシステム概要図
住棟セントラルの暖房設備では、石油若しくはガスによるボイラーで温めた 60~80℃程
度の温水を循環させ、各住戸に設置された温水暖房機に分岐して供給する。給湯設備では、
各住戸に設置された熱交換器を介して市水を加熱する。
住棟セントラルシステムにおける省エネルギー対策は、温水を循環させる給湯設備と同
様であるため、3.2.3.4 に示す内容と同一となる。
【コラム:各住戸の冷房や換気について】
各住戸の冷房や換気は、通常住戸毎に設けられる家庭用エアコンや換気扇等によって
いる。これらの住戸別システムは評価の対象とはならないが、住宅全体の省エネルギー
を実現するためには、使用方法及びエネルギー効率を考慮するよう努めることが必要と
なる。
152
3.2.3.2 機械換気設備
空気調和設備以外の機械換気設備にかかるエネルギーの効率的利用を図るための項目と
して「住宅の省エネルギー基準」に掲げられているのは以下の 3 項目である。
(1)
風道等におけるエネルギーの損失の少ない計画を策定すること。
(2)
適切な機械換気設備の制御方式を採用すること。
(3)
必要な換気量に応じた適切な能力で、かつ、エネルギーの利用効率の高
い機器を採用すること。
上記内容についてポイント法またはエネルギー消費係数を指標として判断・評価する。
<届出用資料>
ポイント法:ポイント集計表(P.160、表 3.2.3.2-3)
エネルギー消費係数:CEC/V(換気エネルギー消費係数)計算表(P.158、表
3.2.3.2-2)
●対象となる設備:定格出力 5.5kW 以上のもので三相電源により駆動される機器。
基本的には冷房や暖房を伴わない機械換気設備のみであるが、以下のような換気設備
の役割を持つ空調設備等がある場合には注意が必要である。
・給気を冷却あるいは加熱する厨房
→厨房用の給気と排気の送風機電力のみを分子に含める。
・本来換気で行なうべき場所を冷房する場合等(電気室やボイラー室等)
→換気で行なう場合に必要な換気風量に換算し、これを設計換気風量(以
下「換算換気風量」という)として扱い、分母に含める。
○対象とならない設備
・常時は運転されない換気設備(非常用発電機室の換気設備)
・タバコの煙を排気するための換気設備(会議室等)
・単相電源により駆動される換気設備
【コラム:単相電源による換気設備】
単相電源により駆動される換気設備は、圧力損失の低減や総合効率の高い設備を採用
することによって実質的な省エネルギーが可能であり、当該設備の設計換気風量の合計
値と設計風量における入力(消費電力)の合計値が、1時間当たり 1[㎥]の空気を搬送
するための入力を 0.3[W/(㎥/h)]以下となるように設計がなされることを推奨してい
る。
153
●エネルギー消費係数による評価
【CEC/V:換気エネルギー消費係数の定義と考え方】
計画されている機械換気設備が一年間に消費するエネルギー
CEC/V=
年間換気消費エネルギー量[MJ/年]
年間仮想換気消費エネルギー量[MJ/年]
=1.0以下とすること
建物内の各所で要求される換気量をもとに定めた一年間の標準的な換気用エネルギー消費量
CEC/V の定義式としては、 計画されている機械換気設備が1年間に消費するエネルギー
量と、同期間における仮想換気消費エネルギー量との比が用いられている。この考え方で
は、建物内の各所で要求される換気量をもとに、標準的な換気用エネルギー消費量を定め、
これと計画内容のエネルギー消費量を比較することによって省エネルギーに配慮した換気
設備、又は、換気システムとなっているかどうかを判断するようになっている。この値が
小さいほどエネルギーが効率的に利用されることを示しているが、判断基準では、1.0 以
下とすることが求められている。
【CEC/V=1.0 以下にするための工夫】
CEC/V の分母は固定された設定値を使って算出するようになっているため、分子の値(計
画内容での一年間の消費エネルギー量)を小さくすることで CEC/V の値も小さくできる。
年間消費エネルギー量(分子)を小さくするための工夫
・ダクト径を大きくする
・ダクト長さを短くする
・ダクトの曲がりを少なくする
→全圧損失が小さくなり、設備の電動機容量
(軸動力)が小さくなるため
・効率のよい送風機の選定
・室温やCO濃度による運転制御
→「住宅の省エネルギー基準」によって定めら
れた補正係数(効果率)がかけられるため
消費エネルギー量を計算する際に必要な機械換気設備の年間運転時間(T)は、建築物の
CEC/V におけるホテル等と同様の値(5,500 時間)に設定するが、実際の計算においては、
この年間運転時間は定義式の分母、分子共に同じ値が使われるため CEC/V の計算結果に影
響はない。
154
【算出時の考え方】
本計算法における CEC/V 計算のフローを図 3.2.3.2-1 に示す。
また下に、年間仮想換気消費エネルギー量及び年間換気消費エネルギー量の算出時の考
え方を示すが、具体的な計算手順については、
「建築物の省エネルギー基準と計算の手引き」
の CEC/V を参照されたい。また、算出した消費エネルギー([kW・h]等)の熱量[MJ]への
換算については、別表第3(P.159)の数値を用いることとする。
補正値 K
年間換気
消費エネルギー量
換気設備動力
換気設備の役割を持つ空調設備等がある場合
空調機の冷房能力の動力換算値と
関連機器の動力の合計
パッケージユニットと
関連機器の動力の合計
冷房能力
年間
運転時間
T
CEC/V
換算換気風量
地域別計算式
年間仮想換気
消費エネルギー量
設計換気風量
図 3.2.3.2-1 CEC/V の計算のフロー
155
前述したように、CEC/V は次式であらわされる。
CEC/V=
年間換気消費エネルギー量[MJ/年]
年間仮想換気消費エネルギー量[MJ/年]
分子:年間換気消費エネルギー量の算出
分子となる年間換気消費エネルギー量は、全ての機械換気設備について、設計者が設定
した換気量に基づいて算出した換気ファンなどの電動機容量[kW]に年間の運転時間を掛
けて求めるようになっている。
年間換気消費エネルギー量=∑(k×F×T)[kW・h]
記号
記号が表す内容
単位
k
運転制御等を行う場合の補正係数
―
F
機械換気設備の電動機容量
kW
T
年間運転時間
h
数値算出方法
「住宅の省エネルギー基準」により定
められた値より選択(表 3.2.3.2-1)
計画内容より
5,500[h](「住宅の省エネルギー基
準」により定められた値)
運転制御の内容
①駐車場において CO 濃度等により換気風量を制御する。
②機械室等において室温により機械換気設備の発停を行う。
表 3.2.3.2-1 補正値 k
省エネルギー手法
運転制御の採用
補正値
インバーター方式による風量制御
0.2
ポールチェンジ方式による風量制御
0.4
台数制御による風量制御
0.7
オン・オフ制御
0.3
高効率電動機の採用(JIS C4212 に準拠した低圧三相かご形誘導電動機)
0.95
特に何も行なわない場合:k=1.0
同時に2種類以上の省エネルギー手法を採用する場合:それぞれの補正値を掛けたものを
補正値とする。
上記以外の省エネルギー手法を採用する場合:補正値 k の根拠を示すことにより、同様な
補正を行うことができる。
156
【コラム:年間換気消費エネルギー量】
年間換気消費エネルギー量を正確に計算するためには、本来、各換気設備用電動機の
入力(消費電力)を求めなければならないが、このためには負荷率に応じた電動機効率
を知る必要があり、一定の労力が必要となる。このため本計算においては、計画された
全ての換気設備について、設計者が設定した換気量に基づいて算出した換気ファンなど
の電動機容量[kW]をそのまま使うことにした。
分母:年間仮想換気消費エネルギー量の算出
分母となる年間仮想換気消費エネルギー量は、計画された全ての機械換気設備について、
換気量は設計換気量をそのまま使い、全圧損失、送風機効率、伝達装置効率、余裕率をほ
ぼ標準的な値に設定して求めた送風機軸動力容量に、年間運転時間を掛けることによって
算出する。
年間仮想換気消費エネルギー量=Σ(送風機軸動力容量×T×3.676×10-4)[kW・h]
ただし、送風機軸動力容量=Q×3.676×10-4
年間仮想換気消費エネルギー量=合計設計換気量×T×3.676×10-4[kW・h]
記号
記号が表す内容
Q
設計換気量
T
年間運転時間
単位
㎥/h
h
157
数値算出方法
計画内容より
分子と同様(5,500[h])
【CEC/V計算表】
表 3.2.3.2-2 に CEC/V 計算表を示す。必要な数値を入力し、CEC/V(換気消費エネルギー
量)を算出する。
表 3.2.3.2-2 CEC/V 計算表
①対象となる機械換気設備系統について設計換気量及び電動機容量を表に記載する。
②電動機容量より年間換気消費エネルギー量を算出する。
③設計換気量と年間換気エネルギー量の合計を算出する。
分子
分母
系統名
種別
設計換気量
自由に記して良い
給気
排気
換算
Q
制御方法別
の補正値
k
3
電動機容量
年間運転時間
F
T
[ - ]
[m /h]
[kW]
[ h ]
-
×5500
×5500
×5500
×5500
×5500
×5500
×5500
×5500
×5500
×5500
×5500
×5500
-
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
計
(B)
-
年間換気消費
エネルギー量
k×F×T
[kWh/年]
=
=
=
=
=
=
=
=
=
=
=
=
(A)
④設計換気量の合計値(B)より、年間仮想換気消費エネルギー量を算出する。
系統名
合計設計換気量 換気量当たりの軸動力容量 年間運転時間
年間仮想換気消費
エネルギー量
Q
α
Q×α×T
3
[kWh/m ]
[h/年]
× 3.676 × 10-4
×5500
種別
[m /h]
全系統合計
T
3
全種別合計 (B)
[kWh/年]
=
(C)
⑤年間換気消費エネルギー量(A)に一次エネルギー換算値(別表第3)を乗じて、年間換気消費一次エネルギー量を算出する。
⑥年間仮想換気消費エネルギー量(C)に一次エネルギー換算値を乗じて、年間仮想換気消費一次エネルギー量を算出する。
項目
換気消費一次エネルギー量
仮想換気消費一次エネルギー量
種別
(分子) =
(分母) =
年間換気消費
エネルギー量
一次エネルギー換算値
[kWh/年]
[MJ/kWh]
(A)
(C)
×9760
×9760
年間換気消費
一次エネルギー量
[MJ/年]
=
=
(D)
(E)
⑦ ⑤⑥で算出した値より、CEC/Vを算出する。
項目
CEC/V =
年間換気消費
一次エネルギー量
年間仮想換気消費
一次エネルギー量
(D)
/
(単位なし)
=
(E)
*5,500:年間運転時間(定められている値)
注:換気設備の役割を持つ空調設備等がある場合は以下の数値も含める。
換気風量(分母):冷房能力
→
換算換気風量
(地域別計算式を用いて換算)
換気設備動力(分子):①空調機の冷房能力の電力換算値と関連機器の動力の合計
②パッケージユニットと関連機器の動力の合計
158
別表第3
1 次エネルギー換算値(「建築物に係る省エネルギー基準」)
重
油
1リットルにつき 41,000 キロジュール
灯
油
1リットルにつき 37,000 キロジュール
液化石油ガス
1キログラムにつき 50,000 キロジュール
他人から供給さ
れた熱(蒸気,
1キロジュールにつき 1.36 キロジュール
温水,冷水)
1キロワット時につき 9,760 キロジュール(夜間買電(電気事業法(昭
和 39 年法律第 170 号)第2条第1項第2号に規定する一般電気事業者
より 22 時から翌日 8 時までの間に電気の供給を受けることをいう。)
電
気
を行う場合においては,昼間買電(同号に規定する一般電気事業者より
8 時から 22 時までの間に電気の供給を受けることをいう。)の消費電
力量については1キロワット時につき 9,970 キロジュールと,夜間買電
の消費電力量については1キロワット時につき 9,280 キロジュールと
することができる。)
159
●ポイント法による評価
床面積が 5,000 ㎡以上の住宅について採用可能な方法。
表 3.2.3.2-3 に、
「住宅の省エネルギー基準」によって定められている措置状況とそれに
応じた得点を示す。ポイント法では、下表の項目に係る措置状況に応じた各点数の合計に、
補正点 80 を加えた点数が 100 以上となることが求められている。詳細は「建築物の省エネ
ルギー基準と解説
仕様基準(ポイント法)」を参照されたい。
制御方式の採用に係わる点数(0~40)
高効率電動機の採用の有無による点数(0~40)
+ 駐車場に対する給気機及び排気機のみの導入に係わる点数(0~10)
合計点数+80=総合点数
必要得点数
20 点以上
【対象となる換気設備】
:「エネルギー消費係数」と同じ
表 3.2.3.2-3 ポイント集計表
項目
(1)制御方法
措置状況
配点 得点 措置の概要
濃度制御を駐車場のすべてに対して採用
又は在室検知制御、温度感知制御、照明
連動制御もしくはタイムスケジュール制
40
御を駐車場以外の機械換気設備を設ける
室の数の2/3以上に対して採用
濃度制御を駐車場の合計面積の1/2以
上に対して採用又は在室検知制御、温度
感知制御、照明連動制御もしくはタイム
20
スケジュール制御を駐車場以外の機械換
気設備を設ける室の数の1/3以上に対
して採用
上記に掲げるもの以外
(2)高効率低圧
電動機の2/3以上
三相かご形誘導
電動機を採用
電動機の1/3以上2/3未満
電動機の1/3未満
0
40
20
0
(3)給気機及び 駐車場の合計面積の1/2以下に対して
排気機による換 採用又は機械換気設備を設ける室のすべ
気
てに対して不採用
10
上記に掲げるもの以外
0
ポイント (点数の合計)
用途: 補正点
備考
「濃度制御」とは、一酸化炭素
又は二酸化炭素の濃度による制
御の方法をいう。
「駐車場」とは、駐車のための
施設の用途に供する室をいう。
「高効率低圧三相かご形誘導電
動機」とは、日本工業規格C
4212 (高効率低圧三相か
ご形誘導電動機)に規定する高
効率低圧三相かご形誘導電動機
をいう。
(A)
(B) 80
ポイント (A)+(B)
計画内容に該当する項目があれば選択し、得点の合計(A)が 20 点以上、
(A)+(B)
が 100 点以上になればよい。
160
3.2.3.3 照明設備
照明設備にかかるエネルギーの効率的利用を図るための項目として「住宅の省エネルギ
ー基準」に掲げられているのは以下の 4 項目である。
(1)
照明効率の高い照明器具を採用すること。
(2)
適切な照明設備の制御方法を採用すること。
(3)
保守管理に配慮した設置方法とすること。
(4)
照明設備の配置、照度の設定、室等の形状及び内装仕上げの選定等を適
切に行うこと。
上記内容についてエネルギー消費係数を指標として判断・評価する。
<届出用資料>
エネルギー消費係数:CEC/L(照明エネルギー消費係数)計算表(P.169、表 3.2.3.3-5
または P.170~171、表 3.2.3.3-6)
●対象となる設備: 居住環境上必要な照明を確保するために屋内に設けられたもの
目的
対象となる設備及び設置箇所
全般照明
「明視性」確保
建築物内部の天井、壁部分に設置
「明視性」及び「快適性」確保
壁灯等
ポーチ、外壁など建築物のごく近傍
○対象とならない設備
・建築物とは切り離されて別途設置される外構等の照明設備システム
・避難用、救命用その他特殊な目的のための照明設備
●エネルギー消費係数による評価
【CEC/L:照明エネルギー消費係数の定義と考え方】
計画されている照明設備の年間消費エネルギー量
CEC/L=
年間照明消費エネルギー量[MJ/年]
年間仮想照明消費エネルギー量[MJ/年]
=1.0以下とすること
一定レベルの照明環境を確保するために現在の社会情勢や技術水準から
みて最低限必要と想定される標準的な照明設備の年間消費エネルギー量
161
CEC/L の定義は、計画されている照明設備が1年間に消費するエネルギー量と、同期間
において仮想の標準的照明設備が消費するエネルギー量との比である。
CEC/L の意味は、一定レベルの照明環境を確保するために現在の社会情勢や技術水準か
らみて最低限必要と想定される標準的な照明消費エネルギー量と、計画されている照明消
費エネルギーとの比較により、その計画内容の妥当性を評価することである。すなわち、
照明に消費されるエネルギーの絶対量を単独かつ直接的に抑制するのではなく、照明設備
のエネルギー消費効率の把握を通じて、照明のためのエネルギー濫用を防止する考えに立
脚している。
CEC/L の値が小さいほど照明設備に係わるエネルギーがより効率的に利用されることを
示しているが、判断基準では、この値を、照明設備システムが設けられる共同住宅の共用
部分に対して 1.0 以下とすることが求められる。
【「照明区画」によるゾーニング】
「照明区画」について
照明設備の評価では、評価に先立って対象空間をあらかじめ「照明区画」として定義さ
れる単位空間にゾーニングする必要がある。評価対象の最小単位空間である「照明区画」
を基礎とし、建築物全体で総合して最終的に判断する。
「照明区画」とは、「住宅の省エネルギー基準」によると、「照明器具の種類、照明設備
の制御の方法及び配置、照度の設定、室等の形状並びに内装仕上げが同一の部分」とある。
空間の物理的な仕切りや設備される照明システムの内容に従って区別された区画であり、
同種の照明設備システムが設置され、同質の照明環境が形成されており、他と容易に区別
できる空間的なまとまりを意味する。したがって、必ずしも物理的に区画される空間とは
対応しない。例えば、照明設備的に単純で一様であれば、巨大な空間あるいは複数の空間
が1つの「照明区画」とされる場合もあるし、逆に1つの空間に異なる種類の照明器具が
採用される場合や照明方式や照明制御が部分的に採用される場合には、同一の空間を異な
る複数の「照明区画」として分割したり、重複して拾ったりする必要がある。
ゾーニングによる評価の手順
① 評価対象の最小単位空間となる「照明区画」を設定
② それぞれの「照明区画」の評価
③ 「照明区画」を総合して「建築物全体」に対する評価を導出
162
【算出時の考え方】
下に、年間仮想照明消費エネルギー量及び年間照明消費エネルギー量の算出時の考え方
を示すが、具体的な計算手順については、
「建築物の省エネルギー基準と計算の手引き」の
CEC/L を参照されたい。また、算出した消費エネルギー([kW・h]等)の熱量[MJ]への換
算については、別表第3(P.159)の数値を用いることとする。
前述したように、CEC/L は次式で表される。
CEC/L=
年間照明消費エネルギー量[MJ/年]
年間仮想照明消費エネルギー量[MJ/年]
分子:年間照明消費エネルギー量の算出
分子となる年間照明消費エネルギー量は以下によって算出される。
年間照明消費エネルギー量=∑ET[(kW・h)/年](∑:全ての照明区画について積算)
ただし、ET=WT ×A×T×F/1,000[(kW・h)/年]
WT=W×N/A
ET=W×N×T×F/1,000[(kW・h)/年]
記号
記号が表す内容
ET
各照明区画の照明消費電力量
WT
各照明区画の照明消費電力
W
単位
数値算出方法
(kW・h)/年
-
W/㎡
照明器具1台当たりの入力電力
W
(安定器損失を含む)
N
照明器具台数
台
A
各照明区画の床面積
㎡
=W×N/A(実際には計算不要)
照明器具のカタログまたは参考値
(参考資料参照 P.172)より選択
計画内容より集計
設計図記入寸法等より算出
(一般的には芯寸法を用いて計算)
「住宅の省エネルギー基準」によ
T
各照明区画の年間照明点灯時間
h/年
り定められた値より選択
(表 3.2.3.3-1)
F
照明設備の制御等による補正係
数
「住宅の省エネルギー基準」によ
-
り定められた値より選択
(表 3.2.3.3-2)
163
以下、ET の算出に必要な変数について解説する。
①照明区画の照明消費電力 WT
各照明区画に実際に設備される照明設備の設備容量である。WT は、照明器具1台当たり
の入力電力 W(安定器損失を含む)と照明器具台数 N の積をその照明区画の床面積 A で除
して求められる。
「各照明区画の計画照明消費電力 WT×各照明区画の床面積 A」=「照明器
具1台当たりの入力電力 W(安定器損失を含む)×照明器具台数 N」であるため、実際には
WT を計算する必要はない。しかし、WT を後述する標準照明消費電力 WS に照らして検討する
ことは、照明計画上は有意義なプロセスであるので、この観点からは WT の算出が推奨され
る。
②照明器具1台当たりの入力電力 W
使用する照明器具のメーカーのカタログや技術資料から求める、設計者が主体的に設定
する変数である。しかしながら、照明計画の初期段階では、照明器具の形式や種類は決め
られるが、具体的なメーカーや器具は決まっていないことも多い。このように使用する照
明器具の入力電力 W が未知の場合には、参考値(参考資料参照P.172)を目安として計算
することを推奨する。この参考値は、
(社)日本照明器具工業会が、照明器具の消費電力に
ついて、多くの会員メーカーの製品をおおよそ代表する値をまとめたガイドを参考に作成
したものである。消費電力が既知の照明器具及びこの表に掲げてない特殊な照明器具につ
いては、それらの製品のメーカーに問い合わせて、入力電力データを入手する必要がある。
③照明区画の床面積 A
照明設備の設計図等において、照明区画を設定した後、記入寸法等から計算して求める。
一般的には、芯寸法を用いた面積計算をする。計算結果は、㎡単位で表示しておく。
④照明区画の年間照明点灯時間 T
評価対象の建築物の固有の事情により照明設備システムの実際の運用による点灯時間は
さまざまである。そこで、CEC/L においては、照明設備効率の客観的な評価を行うため、
共通の前提として、点灯時間があらかじめ用意されている(表 3.2.3.3-1)。設計者は、設
計内容に従い独自の年間点灯時間を定めることも許されるが、原則的に、表 3.2.3.3-1 の
数値を選択する。
一覧表では評価対象の照明区画について、想定される標準的な利用状況に応じて、基準
の年間点灯時間 T[h/年]が与えられる。いずれの対象空間(照明区画)の場合にも、照
明設備システムの「年間稼働日数」と「1日の使用時間」の組合せにより定められた「年
間照明点灯時間」を使用することが求められる。
164
表 3.2.3.3-1 年間照明点灯時間 T の設定値
1日の使用時間
年間稼動日数
24h
12h
6h
4h
2h
365 日
8,760
4,380
2,190
1,460
730
不定期
24×日数
12×日数
6×日数
4×日数
2×日数
*評価対象の空間(区画)毎に、年間稼動日と照明設備システムの l 日の使用時間を勘案し
て、一番近似する欄の数値を選択する。
*不定期に使用される照明設備システムにおいては、その使用の実情に応じて、最下欄の数
値を使用する。
*計画や設計に伴い、別途正確な年間点灯時間の推定がなされている場合は、その数値を用
いてもよい。
⑤照明設備の制御等による補正係数 F
各種の照明制御システムの効率的運用により実質的な照明消費エネルギーの低減を図る
場合に、その低減の効果に応じて消費量を補正するものである。現時点で共同住宅の共用
部分に設ける照明設備の制御技術として確立していると考えられる6種の制御の方法につ
いて,その係数を規定している(表 3.2.3.3-2)。
対象となる照明設備の制御は、自動制御システムで、簡易な手動式の機器による制御は
対象外となる。
表 3.2.3.3-2 照明設備の制御による補正係数 F
制御の方法
タイムスケジュール制御
人感センサーによる検知制御(ON・OFF制御)
人感センサーによる検知制御(調光制御)
適正照度制御(初期照度補正)
明るさ感知による自動点滅制御
昼光利用照明制御
その他
係数
0.70
0.80
0.85
0.90
1.00
想定された省エネルギーのための制御の方法が採用されない場合:F=1.0
複数の制御方法を採用する場合:それぞれの係数を掛けたものを補正値とする。
F=F1×F2×・・・×Fn(無次元)
F1、F2、・・・Fn:単独の制御等による補正係数
上記以外の制御方法を採用する場合:特別の調査または研究の結果に基づいて算出する場
合、当該算出による係数により補正を行なうことが
できる。
165
分母:年間仮想照明消費エネルギー量の算出
分母となる年間仮想照明消費エネルギー量は以下によって算出される。
年間仮想照明消費エネルギー量=∑ES[(kW・h)/年](∑:全ての照明区画について積算)
ただし、ES=WS×A×T×Q/1,000[(kW・h)/年]
記号
記号が表す内容
単位
ES
各照明区画の仮想照明消費電力量 (kW・h)/年
WS
各照明区画の標準照明消費電力
A
各照明区画の床面積
T
Q
W/㎡
数値算出方法
-
「住宅の省エネルギー基準」に定め
られた値より選択(表 3.2.3.3-3)
㎡
分子と同様
各照明区画の年間照明点灯時間
h/年
分子と同様
照明設備の種類による補正係数
-
「住宅の省エネルギー基準」に定め
られた値より選択(表 3.2.3.3-4)
以下、ES の算出に必要な変数について解説する。
①照明区画の標準照明消費電力 WS
一定レベルの照明環境を実現するために必要と考えられる照明設備の容量であり、一種
の許容基準としてあらかじめ用意されている数値。
共同住宅の共用部分の対象空間をその明視性の必要度に応じて分類し、4水準のカテゴ
リー(区分)のいずれかに属するものとして、基準となる設備容量をあらかじめ規定して
いる(表 3.2.3.3-3)。
表中に、計画された照明区画に該当する対象空間名がない場合には、その機能や様態か
ら最も類似する対象空間名を選択する。
表 3.2.3.3-3 標準照明消費電力 WS の設定値
カテゴリ
対象空間の例
W/㎡
1
屋内エントランスホール・風除室
25
2
集会室、共用施設室
20
3
メールコーナー、管理室、屋内廊下、屋内 EV ホール
10
4
屋内階段、屋外階段、屋外廊下、ポーチ、屋内駐車場、機械室・倉庫等
5
②照明区画の床面積 A
CEC/L 分子の各照明区画の照明消費電力量 ET 算出における床面積 A と同様に扱う。
166
③照明区画の年間照明点灯時間 T
CEC/L 分子の各照明区画の照明消費電力量 ET 算出における年間照明点灯時間 T と同様に
扱う。
④照明設備の種類による補正係数 Q
計画される照明環境が通常の環境と比較してより高度な視機能や質的水準を達成する必
要があり、照明設備システムに特別の措置を講じる場合に、それに必要な消費エネルギー
の増加分をあらかじめ見込むための補正係数(無次元)であり、あらかじめ規定されてい
る(表 3.2.3.3-4)。例えば、まぶしさを制御するために照明器具にルーバー・透光性のカ
バーを採用するなどの場合(器具下面から光源が露出しないダウンライトや間接照明、建
築化照明等が含まれる)の補正係数 Q=1.3 は、照明消費エネルギーの増加の許容程度を意
味する。
(判断基準を満たすために、照明環境の質を考慮せず、合理性のない低照度で照明設計す
るというような安易な対応を防止するためでもある。)
表 3.2.3.3-4 照明設備の種類による補正係数 Q
種類
(1)
補正係数
まぶしさを制御するための反射板形状の工夫、ルーバー・透光性カバ
1.3
ーの採用など、特別の措置が講じられている照明設備
(2)
その他
1.0
* 同一の区画に複数の種類の照明器具が設置されている場合、異なる照明区画として扱
う。
照明設備に特別な措置が講じられない場合:Q=1.0
【コラム:補正を行なう理由】
表 3.2.3.3-4 のような補正を行う意味は、多様で高度な照明環境の必要性を認め、設
計の自由度を残しておくためのもので、その場合にやむを得ず生じるエネルギーの増加
をあらかじめ考慮に入れて評価することにある。
167
【CEC/L 計算表】
表 3.2.3.3-5、表 3.2.3.3-6 に CEC/L 計算表の例を 2 種類示す。表 3.2.3.3-5 は 1 枚に
まとめた例、表 3.2.3.3-6 は照明エネルギー消費係数と CEC/L 算出表に分割して作成した
例である。
CEC/L 計算表に入力が必要な値
分子:年間照明消費エネルギー量
記号
W
N
F
記号が表す内容
照明器具1台当たりの入力電力
(安定器損失を含む)
照明器具台数
照明設備の制御等による
補正係数
単位
W
台
―
数値算出方法
照明器具のカタログまたは参考値(参
考資料参照 P.172)より選択
計画内容より集計
「住宅の省エネルギー基準」により定
められた値より選択(表 3.2.3.3-2)
分母:年間仮想照明消費エネルギー量
記号
記号が表す内容
単位
Ws
各照明区画の標準照明消費電力
W/㎡
Q
照明設備の種類による補正係数
―
数値算出方法
「住宅の省エネルギー基準」に定めら
れた値より選択(表 3.2.3.3-3)
「住宅の省エネルギー基準」に定めら
れた値より選択(表 3.2.3.3-4)
分子・分母とも共通
記号
記号が表す内容
A
各照明区画の床面積
T
各照明区画の年間照明点灯時間
単位
㎡
h/年
数値算出方法
設計図記入寸法等より算出
(一般的には芯寸法を用いて計算)
「住宅の省エネルギー基準」により定
められた値より選択(表 3.2.3.3-1)
上記必要な数値を表に入力。計算方法については、計算表に記載されているので、その
指示に従って CEC/L(照明エネルギー消費係数)を算出する。
168
169
(室名)
(階)
h/年
T
W/m2
WS
標準照明 年間照明
消費電力 点灯時間
T
∑A
A
m2
床面積
A
N
W
W
N
照明器
入力電力
照明器具形式
台数
具番号
/1台
W
分子に関する
∑(W× ∑(W×N×T
N/A)
/1,000)
①1次エネルギー換算値(MJ/kWh)
∑(W×N)
WT
F
年間照明
消費エネルギー量
MJ/年
∑ET×①
∑ET
ET
ET×階数
Q
種類
トータル
トータル 計画照明
制御補
照明消費
年間電力量 制御内容
補
照明消
入力
消費電力
正係数
電力量
正係
費電力
W×N
kWh/年
kWh/年 kWh/年
W/m2
WT×T×
WT×T×A
F
Q
W×N
W×N/A
A
/1,000
W×N
注1) 照明消費エネルギー量及び仮想照明消費エネルギー量を一次エネルギー換算する場合に、単位が[MJ]となっているので注意すること。
注2) 本計算表は標準的な様式であり、入力項目が不足の場合は、本計算表を複数枚使用し、計算表を構成すること。
合計
区画
階
WS
分母・分子共
分母に関する
表3.2.3.3-5 CEC/L計算表(1)
年間仮想照明
消費エネルギー量
MJ/年
∑ES×①
∑ES
∑ET×①
/ES×①
ES
ES×階数
CEC/L
仮想照明 トータル
照明
消費電力 照明消費 エネルギー
量
電力量
消費係数
kWh/年
WS×T×A
ET/ES
×Q/1,000
170
表3.2.3.3-6 CEC/L計算表(2)-1
171
表3.2.3.3-6 CEC/L計算表(2)-2
【参考資料:照明器具の消費電力参考値】
どのメーカーのどの照明設備を使用するか決まっていない場合に、以下の表(参考文献
を参考に作成)に示されるランプの大きさに対応する器具としての消費電力参考値を使用
することが推奨される。なお、蛍光灯器具の表中において、磁気式安定器とは、スタータ
ー式(点灯管式)、もしくは点灯開始を容易にしたラピッドスタート式であることを意味し、
電子安定器とは、インバータ式(高周波点灯式)であることを意味している。また、Hf 蛍
光ランプにおける Hf とは High frequency の略で高周波点灯専用形のことであり、インバ
ータ式の点灯装置(安定器)との組み合わせによって高効率化が図られている。
参考文献:(社)日本照明器具工業会の「ガイド 114-2005
照明エネルギー消費係数算出のための照明
器具の消費電力の参考値」
表3.2.3.3-7 蛍光灯器具消費電力参考値
使用しているランプ
種
照明器具消費電力(W)
大 き さ
類
灯数
*は高出力点灯
**は省エネ点灯
Hf 直管蛍光ランプ
FHF
(Hf)
16
16 23W*点灯
2
1
2
1
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
24
32
32
45W*点灯
50
50
65W*点灯
54
86
172
100V
磁気式
安定器
電 子
安定器
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
40
-
50
24
36
71
48
95
58
113
73
143
58
109
87
174
種
類
直管蛍光ランプ
使用しているランプ
大 き さ
*は高出力点灯
**は省エネ点灯
FL
20S
20SS/18
40S
40SS/37
FLR
20S
40S
40S/36
110H
110H/100
環形蛍光ランプ
FCL
20/18
30/28
Hf 環形蛍光ランプ
FHC
(Hf)
FHD
(Hf)
FHW
(Hf)
32/30
40/38
30+32
32+40
30+32+40
13 18W*点灯
20 28W*点灯
27 38W*点灯
13+34 18W*点灯+48W*点灯
20+27 28W*点灯+38W*点灯
20+34 28W*点灯+48W*点灯
27+34 38W*点灯+48W*点灯
20+27+34 28W*点灯+38W*点灯
+48W*点灯
27+34+41 38W*点灯+48W*点灯
+58W*点灯
40
70
85
100
40+100
73
103
173
灯数
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
1
2
2
3
1
1
1
2
2
2
2
3
照明器具消費電力(W)
100V
磁気式
電 子
安定器
安定器
22
22
44
42
21
21
42
41
47
46
94
91
44
-
88
-
30
-
48
-
44
42
85
81
41
38
78
73
117
100
225
-
108
97
212
194
22
-
44
-
34
31
64
-
36
36
47
49
69
64
-
80
-
108
-
16
-
27
-
36
-
59
-
62
-
70
-
81
-
106
3
-
123
1
1
1
1
2
1
1
-
-
-
-
-
-
-
36
64
76
91
120
78
108
種
類
コンパクト形蛍光ランプ
使用しているランプ
大 き さ
*は高出力点灯
**は省エネ点灯
FDL
13
18
27
FPL
18
27
36
55
FWL 又
は FML
13
18
27
36
FPL
(Hf)
32
45
FHP
(Hf)
23
32
28W**点灯
32
45
FHT
(Hf)
105
16
24
32
42
57
FHH
(Hf)
62
82
灯数
1
1
1
1
1
2
1
2
1
2
1
2
1
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
1
1
1
1
2
1
2
1
2
1
2
1
2
照明器具消費電力(W)
100V
磁気式
電 子
安定器
安定器
18
15
22
18
34
26
22
-
34
24
66
-
44
38
92
70
60
55
110
105
18
-
38
-
22
-
34
24
64
-
-
36
-
72
-
35
-
70
-
48
-
96
-
26
-
49
-
32
-
63
-
36
-
70
-
48
-
95
-
94
-
19
-
27
-
35
-
70
-
45
-
90
-
66
-
144
-
69
-
136
-
90
-
175
・Hf は高周波点灯専用形の蛍光ランプを表す。
・FHW は正確には Hf 角形であるが、Hf 環形とほぼ同様の使用方法であるため、Hf 環形に含める。
174
表3.2.3.3-8 電球型蛍光ランプ器具消費電力参考値
使用しているランプ
種
大 き さ
(定格ランプ電力の最大値(W))
類
EFA
EFG
EFD
EFT
照明器具消費電力(W)
灯数
10
1
8
15
1
12
25
1
22
10
1
8
15
1
12
25
1
22
10
1
8
15
1
12
25
1
22
10
1
8
15
1
12
表3.2.3.3-9 白熱灯器具消費電力参考値
使用しているランプ
種
類
クリプトン電球
(ミニクリプトン)
白熱電球
(一般電球)
ハロゲン電球
JD110V系
赤
外
反
射
膜
付
照明器具消費電力(W)
大 き さ
灯数
40 形
1
36
60 形
1
54
100 形
1
90
40 形
1
36
60 形
1
54
100 形
1
90
50
1
50
65
1
65
85
1
85
30
1
30
40
1
40
65
1
65
75
1
75
100
1
100
175
表3.2.3.3-10
HID器具消費電力参考値
使用しているランプ
種
類
照明器具消費電力(W)
大 き さ
灯数
100V
磁気式
安定器
電 子
安定器
水銀ランプ又は
40
1
52
-
メタルハライドランプ
100
1
120
-
200
1
228
-
250
1
275
-
400
1
435
-
20
1
-
26
35
1
50
46
70
1
95
87
150
1
180
170
250
1
290
-
400
1
450
-
50
1
-
62
100
1
-
114
140
1
175
-
250
1
300
-
コンパクト形
メタルハライドランプ
高圧ナトリウムランプ
176
3.2.3.4 給湯設備
給湯設備にかかるエネルギーの効率的利用を図るための項目として「住宅の省エネルギ
ー基準」に掲げられているのは以下の3項目である。
(1)
配管経路の短縮、配管の断熱等に配慮した適切な配管設備計画を策定す
ること。
(2)
適切な給湯設備の制御方法を採用すること。
(3)
エネルギーの利用効率の高い熱源システムを採用すること。
●留意事項による評価
共同住宅の共用部分の給湯設備に係るエネルギーの効率的利用の基準では、現在では数
値基準を定める段階にないことから、届出では定性的な上記 3 項目を示すに留められてお
り、これが直接省エネルギー性能評価の内容になる。
●対象となるシステム
戸建住宅に設けるもの並びに重ね建住宅、連続住宅及び共同住宅において住戸ごとに設
けるものを除く。
対象となる給湯設備として採用されるシステムは、規模に応じ様々であるが、ここでは
参考例として、図 3.2.3.1-1 に示したような住棟セントラルによるものを取り上げ解説す
る。
表 3.2.3.4-1 に住棟セントラルによる給湯設備の特徴と採用例をまとめた。
表 3.2.3.4-1 住棟セントラルによる給湯設備の特徴と採用例
特
徴
多い採用例
熱源を暖房等にも利用するため熱交換機を用い
セントラル暖房・給湯設備
て水道水を加熱し給湯
直接ボイラーなどで加熱された温水を給水栓ま
給湯設備のみ
で供給
どちらにしても、上記3項目を十分考慮した計画・設計が望ましい。
【具体的な対策】
⑴
配管経路の短縮、配管の断熱等に配慮した適切な配管設備計画
住棟セントラル給湯設備では配管からの熱損失を極力小さく抑えることが重要であり、
考えられる対策について表 3.2.3.4-2 にまとめた。
177
表 3.2.3.4-2 配管からの熱損失を抑えるための対策
対策箇所
循環配管
1)
①配管経路の短縮
及び
一次側配管 2)
先止まり配管 3)
②配管の断熱等
十分な保温を図る
その他
直接外気に触れる露
バルブ及びフランジ
隠蔽部への収納措置
出部分の配管経路の
の保温も心がける。
最短化
保温仕様 4)3 以上
配管経路の最短化及
び管径の最小化
貯湯槽
-
-
-
○
-
<用語解説>
1)循環配管:給湯配管のうち往き管と還り管が組合された循環式の配管
2)一次側配管:給湯用熱交換器(貯湯槽を有するシステムを含む)を循環する熱媒の配管
3)先止まり配管:給湯配管のうち往き管だけの単管式の配管。住戸内の給湯栓に至る配
管が該当。
4)保温仕様:循環配管、一次側配管の保温の程度を示すもの。
「建築物の省エネルギー基
準」の給湯設備に関わる性能基準「CEC/HW」で採用されている、次の3通
りの仕様を利用することとした。
保温仕様1(空気調和・衛生工学会
建築設備の省エネルギー技術指針 P.217
断熱強化の例より引用)
配管の呼び径が40未満の配管
保温厚が30mm以上
配管の呼び径が40以上125未満の配管
保温厚が40mm以上
配管の呼び径が125以上の配管
保温厚が50mm以上
保温仕様 2(同学会規格 SHASE-S 010 給湯管一般の場合より引用)
配管の呼び径が50までの配管
保温厚が20mm以上
配管の呼び径が65以上125以下の配管
保温厚が25mm以上
配管の呼び径が150以上の配管
保温厚が30mm以上
保温仕様 3(国土交通大臣官房庁営繕部監修 機械設備工事共通仕様書より引用)
配管の呼び径が80までの配管
保温厚が20mm以上
配管の呼び径が100以上の配管
保温厚が25mm以上
178
【コラム:先止まり管の省エネ対策】
先止まり配管では、温水は概ね2~3時間で室温程度にまで低下してしまうため、給
湯栓を開いた直後では管内水を放出しなくてはならない。この際の水道水の捨水及び再
昇温の無駄を最小限に抑えるためにも、配管内の湯量を小さくする、すなわち経路を短
くして管径を小さくすることが省エネルギー対策になる。
⑵
適切な給湯設備の制御方法を採用
下表に対象となる機器及び制御を示す。
対
⑶
象
給湯負荷に応じた制御方法
熱源
台数制御
循環ポンプ
流量制御または台数制御
エネルギーの利用効率の高い熱源システムを採用
具体的な対策としては以下の 3 項目が挙げられる。
① 効率の高いボイラーや熱交換器の採用
以下に例を示す。
対
象
効
率
ガスの高効率ボイラー・空気熱源ヒートポンプ等
80~85%の機器が多い
ガスの潜熱回収型ボイラー
90%以上となる機器が多い
石油の高効率ボイラー
85~90%の機器が多い
② 太陽熱を熱源として利用
③ 排熱等を利用して給水を余熱
179
3.2.3.5 昇降機
昇降機にかかるエネルギーの効率的利用を図るための項目として「住宅の省エネルギー
基準」に掲げられているのは以下の3項目である。
(1)
適切な昇降機の制御方式を採用すること。
(2)
エネルギーの利用効率の高い駆動方式を採用すること。
(3)
必要な輸送能力に応じた適切な設置計画を採用すること。
上記内容について、ポイント法及びエネルギー消費係数を指標として判断・評価する。
<届出用資料>
ポイント法:ポイント集計表(P.193、表 3.2.3.5-4)
エネルギー消費係数:CEC/EV(エレベーターエネルギー消費係数)計算表(P.186、表
3.2.3.5-1)
●対象となる昇降機の台数
階
数
対象となる台数
3 階以下
全て対象
4~15 階以下
2 台以上
16 階以上
3 台以上
●評価対象となる昇降機(エレベーター)
評価対象は、主動線に使われるトラクションタイプのロープ式乗用エレベーターのみに
限定される。評価対象となる「主動線」たるエレベーターとは、常時大多数の居住者等に
使用されるエレベーターのことである。
駆動方式が限定されるのは、市場には油圧式、リニアモーター式、巻胴式、ボールネジ
式等の種々の駆動方式の製品が存在するが、これらはいずれもサービス階床数、速度等の
適用範囲が狭いことから供給数が限られる上、機構上の相違から適正な評価ができないた
めである。
<駆動方式に関する用語解説>
1)トラクションタイ
一般に広く乗用エレベーターに使用されている方式で、ロープ
プのロープ式
の両端の「かご室」と「つり合おもり」を、巻上機を介して“つ
るべ式”にして昇降させる方式で、特にエレベーター図面の仕
様欄に油圧式等の記載がない場合はこの方式である。標準型エ
180
レベーターの主流となっているロープ式の「機械室なしエレベ
ーター」はこの方式(トラクションタイプのロープ式)である。
2)油圧式
油圧パワーユニットからの圧力油を油圧ジャッキのシリンダ
に送り、プランジャを押し上げて「かご室」を上昇させ、シリ
ンダ内の油をパワーユニットのタンクに戻すことにより、「か
ご室」を降下させる方式をいう。
3)リニアモーター式
「つり合おもり(又はかご室)
」に組み込んだリニアモーター
により「かご室」を昇降させる方式をいう。
4)巻胴式
「かご室」を吊ったロープ端を巻上機で巻き取る方式をいう。
○対象とならないエレベーター
・地下駐車場との移動のみをサービスするようなエレベーター
・人荷用エレベーター、荷物用エレベーター
・常時使用するエレベーター群から孤立した非常用エレベーター
・商業施設専用、あるいは商業施設等との共用エレベーター
・シャトルエレベーター(超高層住宅などで乗換階を設けるような運行形式において、
乗換階のみに停止するようなもの。図 3.2.3.5-1⒜参照)
スカイ
ロビー
A
B
C
A
D シャトル
B
C
D
E
F
(b) ゾーニング方式
(a) スカイロビー方式
図 3.2.3.5-1 高層建築におけるスカイロビー方式とゾーニング方式の概念
建築平面上でエレベーターが分離配置され、それぞれが主動線である場合は、各ゾーン
(バンク)を利用する居住者数を定め、それぞれのバンク毎に総消費エネルギー量と総仮
想消費エネルギー量とを比較し判断してよい。
特に、近年増加傾向にある高層住宅においては、利用効率と利便性の改善を目指して、図
3.2.3.5-1⒝のようにエレベーターサービスをゾーンに分けて計画することが多い。このよ
181
うな場合においてはゾーン(バンク)ごとにエレベーター消費エネルギー量と仮想エレベ
ーター消費エネルギー量を計算し、それぞれを別々に加え合わせた総消費エネルギー量と
総仮想消費エネルギー量との比によって判断を行う。
●エネルギー消費係数による評価
【CEC/EV:エレベーターエネルギー消費係数の定義と考え方】
計画されているエレベーター仕様と速度制御方式を適用
した際の年間消費エネルギー量
CEC/EV=
年間エレベーター消費エネルギー量[MJ/年]
年間仮想エレベーター消費エネルギー量[MJ/年]
=1.0以下とすること
現時点で標準的と考えられる速度制御方式が採用された場合の年間消費エネルギー量
CEC/EV の定義としては、計画されているエレベーターが1年間に消費するエネルギー量
と、同期間において仮想の標準的エレベーターが消費するエネルギー量との比が用いられ
ている。
エレベーターにおいては、空調の場合等に基準としている標準的負荷を定量化すること
が非常に困難である。なぜなら、エレベーターの負荷は、人を目的の階まで搬送するのに
必要な仕事量として定義され、その算出には前提となる建物内の交通需要の的確な想定が
不可欠であるが、建物内の交通需要は、その建物固有の性格(住棟の規模や形態、住戸の
規模や間取り、想定される居住者の密度など)、立地条件(都心・郊外、交通・安全・購買・
教育環境など)、居住者の属性と要求(世帯・高齢・単身、勤務や生活のスタイルなど)に
よって千差万別であるためである。
このようなエレベーターの特殊性を考慮し、建築物におけるエレベーターの計算法と同
様に、計画されているエレベーター仕様(積載質量・定員、速度、台数等)と速度制御方
式を適用した際の消費エネルギー量(エレベーター消費エネルギー量)を求め、これと現
時点で標準的と考えられる速度制御方式が採用された場合の消費エネルギー量(仮想エレ
ベーター消費エネルギー量)との比によって省エネルギー性を判断することとした。判断
基準では、1.0 以下とすることが求められている。
182
【CEC/EV の値を小さくするための工夫】
エレベーターの計画にかかわる主な仕様項目は積載質量(定員)、定格速度、台数であり、
性能を評価する主なパラメータは以下の二つである。
パラメータ
評価する性能
五分間輸送能力
エレベーターの短時間の交通需要処理能力にかかわる量的側面
平均運転間隔
利用者の待ち時間にかかわるサービスの質的側面
エレベーターの計画を行う際には、この二つのパラメータをよく吟味し、一般的には建
物の規模が大きく、居住人口が多い場合には積載質量(定員)を大きくしたり、階数が多
い場合は定格速度を速くし台数を多くしたりするなどの配慮により、その両立を図ること
となる。特に住宅の場合は引越し、救急対応として必要な床面積(積載質量)、形状を有し
たものが必要とされる。一方、事務所や商業施設に比べて利用頻度が低いために平均待ち
時間を長めに設定することが一般的である。
このようにエレベーター計画においては、積載質量(定員)、定格速度、台数の組合せを
調整・最適化するとともに、エレベーター・階段の合理的配置や総合的な建築計画・交通計
画等も考慮して、必要な輸送能力と運転間隔を実現することが求められる。最低限の輸送
能力で交通需要を賄うことができれば、CEC/EV は小さくなり省エネルギー化が実現される。
183
【算出時の考え方】
前述したように、CEC/EV は次式で表される。
CEC/EV=
エレベーター消費エネルギー量[MJ/年]
仮想エレベーター消費エネルギー量[MJ/年]
分子:エレベーター消費エネルギー量
エレベーター消費エネルギー量=ΣET×1 次エネルギー換算値[MJ/年]
ただし、ET=(L×V×FT×T)/860[(kW・h)/年]
(表 3.2.3.5-1 参照)
記号
ET
記号が表す内容
エレベーター消費電力量
単位
(kW・h)/年
数値算出方法
―
L
積載質量
kg
仕様より
V
定格速度
m/min
仕様より
「住宅の省エネルギー基準」によ
FT
速度制御方式による係数
―
り定められた値より選択
(表 3.2.3.5-2)
T
年間運転時間
h
1,500(「住宅の省エネルギー基
準」により定められた値)
分母:仮想エレベーター消費エネルギー量
仮想エレベーター消費エネルギー量=ΣES×M×1 次エネルギー換算値[MJ/年]
ただし、ES=(L×V×FS×T)/860[(kW・h)/年]
M=A1/A2
記号
ES
M
記号が表す内容
仮想エレベーター消費電力量
単位
(kW・h)/年
輸送能力係数
―
FS
速度制御方式による係数
―
A1
標準輸送能力
―
A2
計画輸送能力
―
184
数値算出方法
―
A1/A2
1/40(「住宅の省エネルギー基
準」により定められた値)
0.05(「住宅の省エネルギー基準」
により定められた値)
手順に沿って算出
(P.189、STEP-4)
【計算の手順】
CEC/EV の計算のフローを図 3.2.3.5-2 に示す。計算の手順は、表 3.2.3.5-1 に示した計
算表に記入をしながら進めることを前提に、以下に示す。ただし、詳細な計算手順及びそ
の解説については、「建築物の省エネルギー基準と計算の手引き」の CEC/EV を参照された
い。
住宅仕様
エレベータ仕様
積載質量 L
エレベータ交通計算
定格速度 V
制御方式
輸送能力係数
M
速度制御方式による係数
FT
(表2.3-11)
標準輸送能力
A1=0.05
FS
=1/40
計画輸送能力
A2
年間運転時間 T
エレベータ
消費電力量
ET
年間エレベータ
消費エネルギー量
仮想エレベータ
消費電力量
ES
CEC/EV
年間仮想エレベータ
消費エネルギー量
図 3.2.3.5-2 CEC/EV の計算のフロー
185
表 3.2.3.5-1 CEC/EV 計算表
バンク名称
号機名称
速度制御方式
積載質量 L
kg
定員
人
乗客数
人(A)
定格速度 V
m/min (m/S)
台数 N
台(B)
出入口形式
(出入口幅 mm)
サービス階
階~ 階
エレベーター利用人口
人(C)
一周時間
秒(s)
(D)
平均運転間隔
速度制御方式による係数 FT
秒(s)
(E) (D)/(B)
同上 FS
=1/40
(G)
(F)
5分間輸送人数 (全台当たり)
標準輸送能力 A1
人(H) 300・(A)・(B)/(D)
(I) 0.05
計画輸送能力 A2
(J) (H)/(C)
輸送能力係数 M
(K) (I)/(J)
年間運転時間 T
時間
1次エネルギー換算値
kJ/kWh
エレベーター消費電力量(※1)
kWh/(年・バンク)
エレベーター消費エネルギー量の合計(※2)
MJ/年
仮想エレベーター消費電力量(※3)
kWh/(年・バンク)
仮想エレベーター消費エネルギー量の合計(※4)
MJ/年
CEC/EV=
エレベーター消費エネルギー量の合計
仮想エレベーター消費エネルギー量の合計
※1:エレベーター消費電力量=(L×V×FT×T)/860
※2:エレベーター消費エネルギー量の合計=∑(エレベーター消費電力量)×(1次エネルギー換算値)
※3仮想エレベーター消費電力量=(L×V×FS×T)/860
※4仮想エレベーター消費エネルギー量の合計
=∑(仮想エレベーター消費電力量)×M(輸送能力係数)×(1次エネルギー換算値)
注1)エレベーター消費エネルギー量の合計と仮想エレベーター消費エネルギー量の合計の単位は、
(MJ)となっているので、転記に注意すること。
注2)本計算表は標準的な様式であり、入力項目(バンク数等)が異なる場合は仕様内容に合わせて構成のこと
STEP-1
計画されたエレベーター仕様を基に以下の内容を表 3.2.3.5-1 に転記する。
積載質量(L)、定員、定格速度(V)、速度制御方式、台数(N)、出入口形式、
サービス階(停止階)等と、1次エネルギー換算値、標準輸送能力(A1)
エレベーター消費電力量の計算に使用する係数 FT は「住宅の省エネルギー基準」に定めら
れている表 3.2.3.5-2 による。また、仮想エレベーター消費電力量の計算に使用する係数
Fs は、1/40 を使用する。
186
表 3.2.3.5-2 速度制御方式による係数 FT(注)
速度制御方式
係
数
可変電圧可変周波数制御方式(電力回生制御あり)
1/45
可変電圧可変周波数制御方式(電力回生制御なし)
1/40
静止レオナード方式
1/35
ワードレオナード方式
1/30
交流帰還制御方式
1/20
(注)一般的に可変電圧可変周波数制御方式(電力回生制御あり)は 120[m/min]以上に、同
(電力回生制御なし)は速度 105[m/min]以下に適用される。
上記以外の制御方式を採用する場合:特別の調査又は研究の結果に基づいて算出する場合、
当該算出による係数を使用することができる。
この、速度制御方式による係数 FT は、速度制御方法、交通需要に応じた起動頻度、回生
エネルギーなどを考慮して設定さている。速度制御方式の適切な選択が、係数を小さくし
エネルギー消費の低減に結びついている。ここで示されている速度制御方式の概要は以下
の通りである。
<速度制御方式の概要>
1)可変電圧可変
周波数制御方
式
インバーターによって交流巻き上げ電動機の印加電圧と周波数を
制御することにより速度制御する方式(VVVF 制御方式)。
電力回生制御とは、回生電力を建物電源側に戻す制御方法を指す。
エレベーターは、巻上機を介して「かご室」とロープで“つるべ式”
に結ばれた「つり合おもり」が、定格積載量の 1/2 とかごの自重の
和につり合うように設計されているため、満員(定格積載量)乗車で
の下降運転時、乗車なしでの上昇運転時には巻上機のモータを発電機
として機能させることができる。このとき得られる電力を回生電力と
いう。この回生電力を有効に利用している制御方法や、蓄電池に蓄電
し、この電力をエレベーター自身の運転に有効利用する方式も、「電
力回生制御あり」に含める。一方、回生電力を抵抗で消費し、有効に
利用していない方式を「電力回生制御なし」という。
2)静止レオナー
ド方式
3)ワードレオナ
ード方式
ワードレオナード方式の直流発電機を、サイリスタを使った静止形
の電力変換装置に置き換えた速度制御方式。
巻き上げ機用の電動機に直流電動機を使用し、直流発電機によって
電動機の印加電圧を制御しながら速度制御する方式。
187
巻き上げ機用の三相誘導電動機に直結された回転計発電機によっ
4)交流帰還制御
方式
て発生する速度電圧を演算回路に帰還することにより、基準速度と実
際の速度の差を比較しながら巻き上げ電動機に印加する電圧をサイ
リスタで制御し速度制御を行う方式。
STEP−2
表 3.2.3.5-3 の一周時間を求める計算式又は同表に準拠した計算方法(計算プログラム
を含む)により、エレベーターの一周時間(RTT)を求める。ここで使用する数値は、以下
の点に注意すること。
<使用する数値の注意点>
a. サ ー ビ ス 形 式
の選択方法
エレベーターの利用形態と停止階により、
〔Ⅰ〕
〔Ⅱ〕
〔Ⅲ〕
〔Ⅳ〕から
選択する。どちらかのサービス形態で1周時間の長くなる条件を選択す
る必要がある。一般的には〔Ⅲ〕〔Ⅳ〕のサービス形式の方が1周時間
が長くなるのでこちらを選択することが多い。
〔I〕〔Ⅱ〕
:
早朝の出勤時間帯などで一方向のみの輸送が大半の場
合のサービス形式
〔Ⅲ〕〔Ⅳ〕
:
その他の時間帯で昇り降り両方向のエレベーター利用
が発生する場合のサービス形式
b.定格速度(V)
エレベーターの速度単位は m/分[m/min]で表すのが一般的であるが、
交通計算では m/分[m/min]の値を 60 で除した m/秒[m/s]を使用する。
c. エ レ ベ ー タ ー
当該エレベーターの利用状況予測により決めることを原則とする。しか
乗客数(r)
し、条件が不明の場合は次のように仮定してよい。朝晩の出勤時間帯な
どでエレベーター使用状態にピークがある住宅の場合は、かごの大きさ
に関係なく一方向のみの乗り込み人数を3人から4人程度とする。ピー
クが無い場合にはかごの大きさに関係なく、昇り降り両方向に1人から
2人程度として評価する。
d. 平 面 計 画 と の
関係
建築平面上でエレベーターが分離配置され、それぞれが主動線である場
合は、それぞれのバンクを利用する居住者数を定め、それぞれのバンク
毎に総消費エネルギー量と総仮想消費エネルギー量とを比較して判断
してよい。したがって、一周時間を算出する場合はそれぞれのバンク毎
に一周時間を求める。以後のステップはバンク毎の評価を行い相互の影
響は考慮しなくて良い。
188
STEP−3
一周時間から、5 分間エレベーター輸送人数(全台数当たり)を求める。乗客数は交通
計算で使用したものを、台数は同一バンク内台数を使用する。
5分間エレベーター輸送人数 =
300 × 乗客数 × 台数
(人)
[人]
一周時間
STEP−4
5 分間エレベーター輸送人数(全台数当たり)を、そのエレベーターを利用する総人数
(エレベーター利用人口)で除して計画輸送能力 A2 を求める。
計画輸送能力A2 =
5分エレベーター輸送人数
エレベーター利用人口
エレベーター利用人口はエレベーター出発階の直上階(例:1階が出発階の場合は2階)
は階段利用として除き、その上の階からのエレベーター停止階の居住者数とする。ただし、
出発階の直上階であっても階段利用等ができない場合は、エレベーター利用人口に含めて
も良い。ここで、居住者数は、建物計画時に予測した人数を使用する。ただし不明の場合
は、2DK 型住宅では 2.5~3 人、3DK 型以上では 3.5~3 人を目安とする。
STEP−5
STEP−7で仮想エレベーター消費エネルギー量を求める際に使用する、輸送能力係数 M
を求める。
輸送能力係数M =
標準輸送能力A1
計画輸送能力A2
A1:標準輸送能力…住宅の場合は 0.05 とする。
A2:計画輸送能力…5 分間輸送可能人数をエレベーター利用人口で除した輸送能力
ただし、輸送能力係数 M は、当該住宅の階数が 6 以下又は床面積の合計が 5,000 ㎡以下
の場合には、平均運転間隔(単位:秒)を 70 で除した数値(平均運転間隔が 70 秒以上の
場合には、1)とすることができる。
M =
平均運転間隔([s]
s)
70([s]
s)
平均運転間隔=
一周時間[s]
( s)
([s]
s)
台数
注:一周時間は表 3.2.3.5-3 により求める
189
この輸送能力係数 M は、想定した標準的な輸送能力と計画しているエレベーター設備の
仕様に基づく輸送能力との比として算出され、仮想エレベーター消費エネルギー量を求め
る際に補正係数として使用される。これは輸送能力の拡大を意図した、積載質量、速度、
台数等の一部あるいは全てにおける過剰な設定が、利便性の向上などと引き換えに、エレ
ベーターのエネルギー利用の効率に悪影響を招くと考えられるため、そのサービス水準が
過剰となる場合には、この値が見かけ上小さくなるように補正を行うものである。
ただし、小規模な住棟などでは居住人口が少ないので 5 分間輸送能力が過大と評価され
るが、上下の移動手段として最低1台のエレベーターは必要とされることを考慮し、別途、
補正の適用を除外する条件が示されている。
STEP−6
STEP−1で求めたエレベーター仕様、速度制御方式による係数と年間運転時間から、エ
レベーター消費電力量 ET 及び仮想エレベーター消費電力量 Es を求める。
ET=Σ(L×V×FT×T)/860
Es=Σ(L×V×Fs×T)/860
記号
記号が表す内容
単位
数値算出方法
ET
エレベーター消費電力量
KW・h
-
Es
仮想エレベーター消費電力量
KW・h
-
L
積載質量
kg
仕様より
V
定格速度
m/min
仕様より
FT
速度制御方式による係数
―
Fs
速度制御方式による係数
―
「住宅の省エネルギー基準」により定めら
れた値より選択(表 3.2.3.5-2)
1/40(「住宅の省エネルギー基準」により
定められた値)
1,500[h]
(「住宅の省エネルギー基準」に
より定められた値。一般的な建物では
T
年間運転時間
h
2,000[h]としているが、住宅用では階間
交通が少ないなどにより運転時間 が少な
いので 1,500[h]に設定されている。)
仮想エレベーター消費電力量 Es の計算では、基本的な速度制御方式を「回生なしの可変
電圧可変周波数制御方式」に固定している(Fs=1/40)。これは現在我が国における新設
エレベーターのほとんどが、速度範囲にかかわらず可変電圧可変周波数制御方式を採用し
ている一方、回生機能はいまだ普及途上にあることによる。
190
STEP-7
STEP−6で求めたエレベーター消費電力量に別表第3(P.159)に示す1次エネルギー換
算値と、STEP−5で求めた輸送能力係数 M を乗じて、エレベーター消費エネルギー量と仮想
エレベーター消費エネルギー量を求める。
エレベーター消費エネルギー量
=Σ(ET×9,760*1)[kJ/年]
仮想エレベーター消費エネルギー量
=Σ(ES×M×9,760*1)[kJ/年]
*1:別表第3(P.159)より、1次エネルギー換算値で 9,760[kJ/(kW・h)]を使
用する。
STEP−8
STEP−7で求めたエレベーター消費エネルギー量と仮想エレベーター消費エネルギー
量から、CEC/EV を求める。
CEC/EV=
Σ(エレベーター消費エネルギー量) [MJ/年]
Σ(仮想エレベーター消費エネルギー量)[MJ/年]
同一住宅に複数の当該エレベーターバンクがある場合は、バンク毎にエレベーター消費
エネルギー量と仮想エレベーター消費エネルギー量を計算し、それぞれ別々に加えた総和
の比で判断する。
CEC/EV=
F1+F2+・・+FN[MJ/年]
E1+E2+・・+EN[MJ/年]
F1~FN:第1バンクから N バンクのエレベーター消費エネルギー量
E1~EN:第1バンクから N バンクの仮想エレベーター消費エネルギー量
191
192
300
RTT
S
ローカル運転Ⅰ平均走行距離 m
の
≧
場
合
の場合
S
2Sa
S≧2Sa
S≧2Sa
s
1.階間交通がある場合は上表は適用できない
2.Sa:加速距離(m) 表3.2.3.5-5による
tr:ローカル区間走行時間(s) 図3.2.3.5-3による
K:出入り口幅による係数 表3.2.3.5-7による
人
5分間輸送人数
(1台当り)
192
SE:急行区間走行距離(m)
RTT
s
一周時間 s
ta:加速時間(s) 表3.2.3.5-5による
td:戸開閉合計時間(s) 表3.2.3.5-6による
SL:ローカル区間走行距離(m)
0.1(Td+Tp)
Tr+Td+Tp+Tl
Tl
損失時間 Tp
s
乗客出入時間 ・
r・(K・(F-1)1/3+0.8)または3r
S E1 + S E
+ ta ⋅ f E
V
SE
+ ta ⋅ f E
V
td・F
F
SL
+ ta ⋅ f L d
V
SL
+ ta ⋅ f L u
V
SL
+ ta ⋅ f L
V
SL
+ ta ⋅ f L
V
SL
f Ld
tr・fLd
0
fLu+fLd
0
S
2S E
+ ta ⋅ f L d
V
SL
+ ta ⋅ f L u
V
tr・fLu
2
⎫⎪
⎬ −1
⎪⎭
SL
+ ta ⋅ f L d
V
tr・fLd
SL
f Ld
⎧⎪ ⎛ n − 1 ⎞
n⎨1 − ⎜
⎟
⎪⎩ ⎝ n ⎠
rd
降り方向
rd
f Ld =
fLu+fLd+fE
⎧⎪ ⎛ n − 1 ⎞ ru ⎫⎪
n⎨1 − ⎜
⎟ ⎬ −1
⎪⎩ ⎝ n ⎠ ⎪⎭
SL
f Lu
[Ⅳ]
(往復区間急行)
昇り方向
ru
300(ru + rd )
RTT
⎧⎪ ⎛ n − 1 ⎞ rd ⎫⎪
n ⎨1 − ⎜
⎟ ⎬
⎪⎩ ⎝ n ⎠ ⎪⎭
tr・fLu
SL
f Lu
⎧⎪ ⎛ n − 1 ⎞ ru ⎫⎪
n ⎨1 − ⎜
⎟ ⎬
⎪⎩ ⎝ n ⎠ ⎪⎭
tr・fL
2
降り方向
rd
建物階数,エレベーターサービス形式による
f Lu =
f Ld =
f Lu =
昇り方向
ru
エレベーター仕様による
Td
Tr
E
tr・fL
1
(全階自由)
[Ⅲ]
戸開閉時間 s
急行区間 s
区 間
s
の場合 S<2Sa
SL
fL
ローカル
SL
fL
fL+fE
F
全予想停止数
走
行
時
間
fL+fE
1
fE
急行区間内停止数
r
⎪⎧ ⎛ n − 1 ⎞ ⎫⎪
n ⎨1 − ⎜
⎟ ⎬ −1
⎪⎩ ⎝ n ⎠ ⎪⎭
fL
ローカル区間内予想停止数
r
⎪⎧ ⎛ n − 1 ⎞ ⎫⎪
n ⎨1 − ⎜
⎟ ⎬
⎪⎩ ⎝ n ⎠ ⎪⎭
n
ローカル区間内サービス階数(始発階を除く)
f
r
エレベーター乗客数 人
r
(片道区間急行)
V
r
(片道急行)
SL
エレベーター速度 m/s
エレベーターのサービス形式
SE
[Ⅱ]
SE
[Ⅰ]
SE
表3.2.3.5-3 一周時間を求めるための計算式並びにデータ(参考)
SL
SE1
SL
SE
●ポイント法による評価
床面積が 5,000 ㎡以下の住宅について採用可能な方法。
延べ面積が 5,000 ㎡を超える共同住宅の場合でも、階段室型住棟にエレベーターを設け
た「2戸1」の場合や、開放廊下型であっても間仕切により相互の動線が分断されている
場合には、そのエレベーターがサービスする部分の延べ面積が 5,000 ㎡以下の場合は、ポ
イント法が適用できる。CEC/EV の計算では、速度制御方式を 5 種類想定しているが、ポイ
ント法では、実際の建築物で実用に供されている多くの機種から判断し、可変電圧可変周
波数制御方式の電力回生制御ありとなしの2方式のみで評価することとしている。
表 3.2.3.5-4 に設置されるエレベーターの制御方法と設置台数別に示された点数を示す。
下表の項目に係る措置状況に応じた各点数の合計に、補正点 80 を加えた点数が 100 以上と
なることが求められている。詳細は「建築物の省エネルギー基準と解説
仕様基準(ポイ
ント法)」を参照されたい。
設置状況による評価点(0~40)+80=総合得点
【コラム:ポイント法による簡易化】
CEC/EV の計算では、エレベーターの過剰仕様(設計)を判定するための輸送能力係数
を算定する際に必要となるエレベーターの一周時間の計算に労力を要するが、ポイント
法ではこの部分をエレベーターの台数のみで判定し、簡易化している。
【対象となるエレベーター】:「エネルギー消費係数」と同様
表 3.2.3.5-4 ポイント集計表
措置状況
配点
可変電圧可変周波数制御方式(電力回生
制御あり)を1台以上採用
40
可変電圧可変周波数制御方式(電力回生
制御なし)を1台以上採用
20
上記に掲げるもの以外
0
得点
ポイント (点数)
(A)
補正点
(B)80
措置の概要
備考
ポイント (A)+(B)
*「上記に掲げるもの以外」
:可変電圧可変周波数制御方式以外の交流帰還制御方式等を
設置した場合
得点(A)が 20 点以上あれば合計(A)+(B)が 100 点になるので、可変電圧可変周
波数制御方式(電力回生制御なし)を 1 台以上採用していればよいということになる。
193
【参考資料:P.192、表 3.2.3.5-3 に付随する式・数値データ等】
1:出入時間(TP)の計算式
一般に上式であるが、住宅用エレベーターでは1人当たりの出入り時間は3秒とみてよい。
2:走行時間(Tr)について
イ)走行距離が、加・減速距離の合計より短い場合(S<2Sa)
ロ)走行距離が、加・減速距離の合計より長いか等しい場合(S≧2Sa)
加速時間(ta)の計算式は、次式による。
式で表せば、
となる。
Tp
:出入時間[s]
R
:乗客数[人]
t1
:降車時間[s/人]
t2
:出発階での乗客1人当たりの乗り込み時間(=0.8[s/人])
K
:出入口幅による係数(表3.2.3.5-7参照)
F
:全予想停止数
Tr
:走行時間[s]
Tr
:ローカル区間走行時間[s]
fL
:ローカル区間予想停止回数(表3.2.3.5-8参照)
t0
:最大加速度に達するまでの時間(=0.7[s])
S
:ローカル運転1平均走行距離[m]
αm :最大加速度(=1.0[m/s2])
SL
:ローカル区間走行距離[m]
V
:定格速度[m/s]
ta
:加速時間[s]
Sa
:加速距離[m] 表3.2.3.5-5による
194
表3.2.3.5-5 加速時間ta・加速距離Sa
定格速度
m/min
m/s
45
60
90
105
120
150
180
210
240
300
0.75
1.0
1.5
1.75
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
5.0
am=1.0m/s2、t0=0.7(s)の場合
加速時間ta
加速距離Sa
s
m
1.4
1.7
2.2
2.45
2.7
3.2
3.7
4.2
4.7
5.7
αm:最大加速度[m/s2]
0.53
0.83
1.65
2.14
2.70
4.00
5.55
7.35
9.40
14.25
t0:加速度の変化時間[s]
表3.2.3.5-6 戸開閉合計時間 td(単位:s)
有効出入口幅[mm]
800
850
900
950
1,000
1,100
1,200
2枚両引き戸
3.7
3.8
4.0
4.1
4.2
4.4
5.0
2枚片引き戸
4.7
5.0
5.3
5.5
5.7
6.2
6.5
表3.2.3.5-7 出入口幅による係数K
出入口幅[mm]
係数 K
800
1.00
850
1.00
900
0.95
950
0.95
1,000
0.90
1,100
0.85
1,200
0.80
図表の出典:「建築設計・施工のための昇降機計画指針」 ㈳ 日本エレベータ協会
参考資料の参考文献:「建築設計・施工のための昇降機計画指針」 ㈳ 日本エレベータ協会
「建築設備設計基準平成14年版」国土交通大臣官房官庁営繕部設備課監修
195
表3.2.3.5-8 予想停止数 fL
r
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
5
1.80
2.44
2.95
3.36
3.69
3.95
4.16
4.33
4.46
4.57
4.66
4.73
4.78
4.82
4.86
4.89
4.91
4.93
6
1.83
2.53
3.11
3.59
3.99
4.33
4.60
4.84
5.03
5.19
5.33
5.44
5.53
5.61
5.68
5.73
5.77
5.81
7
1.86
2.59
3.22
3.76
4.22
4.62
4.96
5.25
5.50
5.72
5.90
6.06
6.19
6.31
6.41
6.49
6.56
6.63
8
1.88
2.64
3.31
3.90
4.41
4.86
5.25
5.59
5.90
6.16
6.39
6.59
6.77
6.92
7.06
7.17
7.28
7.37
9
1.89
2.68
3.38
4.01
4.56
5.05
5.49
5.88
6.23
6.54
6.81
7.05
7.27
7.46
7.63
7.78
7.92
8.04
10
1.90
2.71
3.44
4.10
4.69
5.22
5.70
6.13
6.51
6.86
7.18
7.46
7.71
7.94
8.15
8.33
8.50
8.65
11
1.91
2.74
3.49
4.17
4.79
5.36
5.87
6.33
6.76
7.14
7.50
7.81
8.10
8.37
8.61
8.82
9.02
9.20
12
1.92
2.76
3.53
4.23
4.88
5.47
6.02
6.52
6.97
7.39
7.78
8.13
8.45
8.75
9.02
9.27
9.49
9.70
13
1.92
2.78
3.56
4.29
4.96
5.58
6.15
6.67
7.16
7.61
8.02
8.41
8.76
9.09
9.39
9.67
9.92 10.16
14
1.93
2.79
3.59
4.33
5.03
5.67
6.26
6.81
7.33
7.80
8.25
8.66
9.04
9.39
9.72 10.03 10.31 10.58
15
1.93
2.80
3.62
4.38
5.08
5.75
6.36
6.94
7.48
7.98
8.45
8.88
9.29
9.67 10.03 10.36 10.67 10.96
16
1.94
2.82
3.64
4.41
5.14
5.82
6.45
7.05
7.61
8.13
8.62
9.09
9.52
9.92 10.30 10.66 10.99 11.31
17
1.94
2.83
3.66
4.45
5.18
5.88
6.53
7.15
7.73
8.27
8.79
9.27
9.72 10.15 10.56 10.93 11.29 11.63
18
1.94
2.84
3.68
4.47
5.23
5.94
6.61
7.24
7.84
8.40
8.93
9.44
9.91 10.36 10.79 11.19 11.57 11.92
19
1.95
2.84
3.70
4.50
5.26
5.99
6.67
7.32
7.94
8.52
9.07
9.59 10.09 10.56 11.00 11.42 11.82 12.20
20
1.95
2.85
3.71
4.52
5.30
6.03
6.73
7.40
8.03
8.62
9.19
9.73 10.25 10.73 11.20 11.64 12.06 12.45
n
本表は予想停止数が次式の場合の値である。表にない場合は、次式により求めること。
注1.本計算式は表3.2.3.5-3でのエレベーターのサービス形式〔Ⅰ〕、〔Ⅲ〕の場合に適
用できる。
注2.サービス形式〔Ⅲ〕、〔Ⅳ〕の場合のrは、昇り方向はruを、下り方向はrdの値を使
用すること。
注3.サービス形式〔Ⅱ〕、〔Ⅳ〕の場合は、(上式-1)となるので、表3.2.3.5-3によ
り確認のこと。
196
図 3.2.3.5-3 走行距離S・走行時間tr 線図
197