ジカウイルスの歴史 WHO: The History of Zika Virus

ジカウイルスの歴史
WHO: The History of Zika Virus
(仮訳)鹿児島大学名誉教授
岡本嘉六
1947 年: 科学者がウガンダの Zika 森のアカゲザルから新たなウイルスを
特定し、ジカウイルスと命名。
ジカウイルス(I):分離と血清学的特徴
Zika Virus (I). Isolations and serological specificity
Trans R Soc Trop Med Hyg (1952)
要旨
1.1. (1) これまで記録されていないと考えられるウイルスの分離について説明する。最初の
分離は、ジカ森の林冠でケージで飼育された発熱したアカゲザルの血清から 1947 年 4 月に行わ
れた。2 番目の分離は、1948 年 1 月に同じ森で捕獲された多数のヒトスジシマカ(A. africanus)
からであった。このウイルスは、分離された場所から、ジカウイルスと呼ばれている。
2.2. (2)
交差中和試験は、ジカウイルスが黄熱、ハワイのデング熱、Theiler マウス脳脊髄
炎ウイルスの FA 株や GD VII 株と関連していないことを示している。ジカウイルスとマウスに
神経親和性のあるその他のいくつかのウイルスの抗血清との中和試験は、それらの全てがジカ
ウイルスと同じでない証拠を示した。
1948 年: このウイルスは、ジカ森で捕獲したヒトスジシマカ(Aedes
africanus)からその後に分離された。
ジカウイルス(II):病原性と性情
Zika virus (II). Pathogenicity and physical properties
Trans R Soc Trop Med Hyg (1952)
要旨
1. (1)
2 株のジカウィルスのマウスへの適応を説明する。ジカはウガンダのエンテベ国際
空港近くの 4 森の名前であり、それらの 2 株のウイルスがそこで分離された。その内の 1 株は、
黄熱病の歩哨動物として飼育されていた発熱したアカゲザルから分離され、他の 1 株はヒトス
ジシマカから分離された。
2.2. (2)
マウスにおける感染の徴候を説明する。ジカウィルスのマウス脳内接種によって
検査した全ての年齢のマウスが感染したが、腹腔内接種では 2 週齢以上のマウスはほとんど感
染しなかった。2 週齢以下のマウスは腹腔内接種でも感受性が高かった。
3.3. (3)
ジカウィルスはマウスにおいて神経親和性が非常に高かったが、ウイルスは感染
したマウスの脳以外の組織から回復されなかった。
4.4. (4)
コットンラット、モルモットおよびウサギは、マウス脳内接種で継代したウイル
-1-
ス株を脳内接種しても臨床症状を示さなかった。
5.5. (5)
サルは、マウス脳内接種株を皮下接種した後不顕性感染を示した。脳内接種後 5
頭のサルの内 1 頭は軽度の発熱を呈し、その他は感染の兆候がなかった。接種後 4 最初の週に
ウイルス血症が検査した全てのサルで認められ、抗体は接種後 14 日までに証明された。
6.6. (6)
検査したヒト血清 99 検体の内、6 検体(6.1%)は 100 LD50 以上のウイルスを中和
した。検査した 15 頭の野生のサルの内 1 頭の血清でも抗体が見つかった。
7.7. (7)
ジカウィルスのサイズは、直径 30~45 mμ の範囲と推定される。このウイルスは、
50%グリセリン中で 6 ヶ月間、乾燥後は 30 ヶ月生残することができる。エーテルに感受性であ
り、58℃、30 分間の加熱で死滅する。
8.8. (8)
感染したマウスの脳に、神経の変性、細胞浸潤、軟化部分が見られる。広範な病
変があった若いマウスの脳に、Cowdry タイプ A 封入体が見つかっている。
1952 年:
れた。
ジカウイルスの最初の症例が、ウガンダとタンザニアで検出さ
東アフリカのヒトの血清における最近分離されたウイルスに対する中和抗体
Neutralizing antibodies against certain recently isolated viruses in the sera of human
beings residing in East Africa
J Immunol. 1952
要旨
ウガンダで最近分離された 8 株のウイルスを用いたマウス防護テストが、ウガンダとタンザ
ニアの 297 人の住民の血清について行われた。138 検体の血清はいずれのウイルス株も中和で
きなかった;91 検体は 8 株の内の 1 株だけを中和した;68 検体の血清は 1 株以上を中和した。
血清の 1%だけが Mengo ウイルスを中和し、採材した地域においてこのウイルスが医学的に
それほど重要でないと考えられた。その他の全てのウイルスに対する中和抗体は、様々な地域
およびそれぞれが遭遇した地域から離れた場所に存在していた。対象地域におけるこれらのウ
イルス株によるヒト感染の有病率のおおよその順序は次のとおりである;Bwamba 熱、Ntaya
ウイルス、ジカウイルス、南ウガンダウイルス、西ナイルウイルス、Bunyamwera ウイルス、
Semliki 森林ウイルス。これらの 297 人の中で最初の 4 つのウイルスに対する液性抗体の頻度
は、かなり頻繁にヒトが罹患していることを示した。
1 株以上のウイルスを中和した血清に関するデータの解析は、Bwamba 熱ウイルス感染がそ
の他のウイルス感染とは無関係に発生しているが、Ntaya ウイルス、ジカウイルス、南ウガン
ダウイルス、西ナイルウイルスの感染は、このグループの 1 種以上の感染と関連している可能
性がある。Bunyamwera ウイルスと Semliki 森林ウイルスについても同様の関連性が存在する
可能性があるが、これらのウイルスに対して防護した血清の数は断言するには少なすぎる。
1964 年:
ジカウイルスがヒトに病気を引き起こすことの確認に取り組ん
-2-
でいたウガンダの研究者がこのウイルスに感染した。症状は軽いと報告されて
いる。
ジカウイルス:ナイジェリア東部における黄疸の流行中に 3 名のヒト感染の報告
Zika virus : A report on three cases of human infection during an epidemic of jaundice in
Nigeria
Trans R Soc Trop Med Hyg (1954)
要旨
ナイジェリア東部における黄疸の流行中に、ジカウイルス感染が 3 名の患者で起きたことが
判明し、1 名からウイルスが分離され、2 名は血清抗体が上昇した。これらの患者の内 2 名は、
肝臓の損傷の証拠があった。血清学的研究は、黄疸と血清中のウイルス中和抗体産生と間の関
係を示した。
1960 年代~1980 年代: 血液検査によってヒト症例が確認された。死亡や
入院は報告されていないが、このウイルスへのヒトの暴露が常時広範に起きて
いることが示された。
この病気は、20 世紀前半に、ウガンダから西アフリカとアジアへ波及した。
Genetic Characterization of Zika Virus Strains: Geographic Expansion of the Asian Lineage
PLOS Medicine, 2012
要旨
ジカウイルスは、アフリカとアジアで見つかった蚊が媒介する flavivirus である。このウイ
ルスによるヒト感染は、デング熱およびこれらの地域で見られるその他の多くの熱帯感染症と
類似する熱性疾患を引き起こす。以前は、アフリカとアジアで採取されたジカウイルス株の間
の遺伝的関係についてほとんど判っていなかった。それに加えて、ヤップ島、ミクロネシアに
おけるヒトの最近の流行を起こした株およびカンボジアのヒト症例の地理的起源も不明であ
る。我々の研究は、2 つの地理的に異なる系統(アフリカおよびアジア)があることを示唆した。
このウイルスは、東南アジアで少なくとも過去 50 年間に亘って循環しており、その後ヤップ島
に侵入して 2007 年にヒトの流行を引起し、2010 年にはカンボジアで小児ジカウイルス症の原
因となったこの研究は、新たな地域へのジカウイルス侵入の危険性およびヒトにおけるさらな
る流行の可能性を強調する。
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20 世紀におけるジカウイルス出現の分子的発生機序
Molecular Evolution of Zika Virus during Its Emergence in the 20th Century
PLOS Medicine, 2014
要旨
ジカウイルスは、1947 年にウガンダで初めて分離された蚊媒介性フラビウイルスである。昆
-3-
虫学的およびウイルス学的な発生動向調査は、アフリカとアジアの様々な国におけるジカウイ
ルスの動物での発生を報告してきたが、ミクロネシアで流行が報告された 2007 年まではヒト症
例の報告数は少なかった。西アフリカでは、WHO のアルボウイルスと出血熱の連携センターで
あるダカールのパスツール研究所が 1968 年以来ジカウイルスの周期的な循環を報告してきた。
いくつかの報告にもかかわらず、西アフリカのウイルス分離株間の遺伝的関係はほとんど判っ
ていない。ウイルスの広がりとその分子疫学を評価するために、セネガルとコートジボワール
の 6 地域で 1968~2002 年に集めた 37 株のジカウイルスを我々は調べた。さらに、別の 6 ヶ国
からの分離株を含めた。西アフリカのこれらの 2 ヶ国が 20 世紀の間にジカウイルスの少なくと
も 2 回の独立した侵入を経験し、それらのウイルスの系統が媒介蚊の種類に制限されないこと
を我々の成績が示唆した。さらに、ジカウイルスは自然界でおそらく再集合し、エンベロープ
蛋白質の N154 グリコシル化部位の喪失がヒトスジシマカを媒介蚊として適応する可能性をも
たらした証拠を我々は提示した。
1969~1983 年: ジカウイルスがインド、インドネシア、マレーシア、パ
キスタンを含む赤道アジアの媒介蚊で検出された。
ジカウイルス:インドネシア中央ジャワにおける発熱の原因
Zika virus, a cause of fever in Central Java, Indonesia
Trans R Soc Trop Med Hyg (1981)
要旨
1977 年と 1978 年に、インドネシア Klaten の Tegalyoso 病院において最近急性発熱を呈し
た特定の入院患者が血清学的に調べられ、アルファウイルスとフラビウイルスの感染の証拠を
検討した。入院時に簡単な病歴と徴候や症状のチェックリストが作成された。フラビウイルス
期因である証拠のあった 30 名の患者からから採取した急性期と回復期の血清が、東南アジアで
発生したいくつかのフラビウイルスに対する中和抗体を検査された。7 名の患者ペア血清は、急
性期から回復期に抗体価が 4 倍に上昇した。この一連の患者で観察された最も一般的な臨床症
状には、発熱、倦怠感、胃痛、めまい、食欲不振が含まれていた。以前の研究で 3 名中 2 名が
頭痛と発疹があった事実にもかかわらず、それらの 7 名の患者のいずれも、頭痛や発疹を示さ
なかった。発症は、マレーシアにおける媒介蚊と想定されるネッタイシマカが最も多い雨季の
終わりに集中する傾向があった。
(つづく 2016/7/19)
2007 年: ミクロネシアのヤップ島のヒト集団における最初の大規模なジ
カウイルス流行。これ以前に、全世界で流行はなく、ヒトのジカウイルス病は
14 例のみが報告されていた。ヤップ島住民の推定 73%がジカウイルスに感染し
た。ヤップ島の流行は、島の人口における免疫の欠如も示唆している。
アフリカとアジアの集団における感染への定期的暴露は、太平洋諸島やアメ
リカで見られる大流行を防いだ可能性がある。ジカウイルス病、デング熱およ
-4-
びチクングニア感染症と関連する(軽症の)病気との症状の臨床的類似性のた
め、過少報告がこれまでのジカウイルス流行を見落としていた可能性もある。
2008 年:
セネガルで野外活動を行っていた米国の科学者がジカウイルス
に感染した。コロラド州の自宅に帰ってから、彼は妻を感染させ、通常は蚊に
よって伝播されるこの病気が性感染した最初の報告となった。
米国コロラド州における媒介蚊によらないジカウイルス感染
Probable Non–Vector-borne Transmission of Zika Virus, Colorado, USA
Emerging Infectious Diseases, 2011
要旨
臨床的および血清学的な証拠は、2 名のアメリカ人科学者が 2008 年にセネガルにおける活動
の間にジカウイルスに感染したことを示している。科学者の 1 名は、帰国後彼の妻にこのアル
ボウイルスを伝播した。感染経路として直接接触が関与しており、性感染の可能性が最も高い。
2012 年:
系統を特定。
研究者がこのウイルスの異なる 2 系統、アフリカおよびアジア
2013~14 年: 太平洋諸島の 4 つのグループで流行が発生;フランス領ポ
リネシア, イースター島、クック諸島、ニューカレドニア。
フランス領ポリネシアにおいて何千人もの感染の疑いが調査され、その結果、
ジカウイルス、先天異常、神経疾患、自己免疫合併症の間の関連する可能性が
明らかにされた。
デング熱、チクングニア熱およびジカウイルス感染症の同時流行
Concurrent outbreaks of dengue, chikungunya and Zika virus infections
Eurosurveillance, 2014
要旨
2012 年 1 月以来、太平洋地域は 28 件の新たな流行とデング、チクングニアおよびジカウイ
ルスの循環を経験している。これらの蚊が媒介する病気の流行は、より頻繁かつ多様になって
いると思われ、数年間続く流行の波の初期段階でしかない可能性が高い。島の保健システムに
おける既存の重度の負荷を軽減し、世界のその他の地域へのさらなる広がりを抑えるために、
発生動向調査と対応措置の強化が必要とされている。
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太平洋諸島におけるアルボウイルスの流行
Emerging arboviruses in the Pacific
Lancet, 2014
要旨
-5-
デングウイルスは、デング熱の病原体であり、通常は発熱、筋肉痛、関節痛、発疹を特徴と
し、深刻な生命にかかわる臨床症状を時々引起す。このウイルスは、蚊が媒介するウイルス(ア
ルボウイルス)の世界的な公衆衛生への最大の脅威とみなされている。ただし、発熱や急性多
発関節痛を引き起こすチクングニアウイルスを含め、蚊が媒介する追加のウイルスがこれまで
デング熱だけが流行していた地域、とくに熱帯の海洋地域に過去 10 年間で拡大している。
2014 年 3 月 20 日: フランス領ポリネシアにおけるジカウイルスの流行
中に、2 名の母親とその新生児が出産から 4 日以内にジカウイルスに感染してい
ることが判った。新生児の感染は、胎盤感染または分娩中に起きたと思われる。
フランス領ポリネシアにおいて 2013 年 12 月と 2014 年 2 月にジカウイルスの周産期感染の証
拠
Evidence of perinatal transmission of Zika virus, French Polynesia, December 2013 and
February 2014
Eurosurveillance, 2014
要旨
ジカウイルス流行は、2013 年 10 月に南太平洋フランス領ポリネシアで始まった。出産後 4
日以内に採取した血清について実施したジカウイルスの RT-PCR によって感染が確認された 2
名の母親とその新生児の臨床的特徴と検査所見について説明する。新生児の感染は、胎盤感染
または分娩中に起きた可能性がおそらく最も高い。影響に関するデータは限られているので、
ジカウイルスに感染した妊娠中の女性とその新生児に留意しなければならない。
2014 年 3 月 31 日: フランス領ポリネシアにおける流行中に、1,505 名の
無症候性の献血者が PCR によってジカウイルス陽性と報告された。これらの調
査結果は、輸血を通してジカウイルスが伝播し得ることを当局に警告している。
ジカウイルスと安全な輸血:質問と答え
Zika virus and safe blood supply: Questions and answers
WHO, 19 February 2016
ジカウイルスは献血を通して伝播し得るか?
ジカウイルスは、血液の安全性にリスクをもたらす能性がある。ジカウイルスおよび伝播す
る方法についての知識は現在限られている。ほとんどの症例は、感染した蚊、ネッタイシマカ
に刺されて感染している。伝播のその他の手段について詳細が分かるまでは、安全な血液の供
給を確保する対策が必要である。
● ジカウイルスは流行地域の献血者で検出された
● 輸血によるフラビウイルス(デング熱、西ナイルウイルス)関連の伝播が記録されてお
り、ジカウイルスの伝播も可能である。
-6-
● 輸血によるジカウイルス伝播の可能性がある 2 症例がブラジルの Campinas から最近
報告されている。
ジカ感染が発生している国々における献血の安全性を確保するためにどのような注意が必要
か?
理想的には、ジカウイルス流行地域における血液の供給は、発生していない地域における献
血を増やすことによって維持すべきである。発生していない地域においては、ジカウイルス流
行地域を訪問した者は、そこを離れてから 28 日間献血を延期する配慮が必要である。
ジカウイルス流行地域における献血はどうか?
血液と血液成分の需要を満たすために、発生地域で採血を継続する必要がある。流行が国内
で多数を感染させている時や、ジカウイルスが循環していない地域から血液を得ることができ
ない時は、それはできない。
ジカウイルス伝播が活発な地域における輸血を通したリスクを減らすためにどのような措置を
検討すべきか?
● 発熱や結膜炎を伴う発疹、筋肉痛、頭痛あるいは倦怠感の組み合わせなどのジカウイル
ス病と一致する最近の病歴がある献血者は一時的に排除する。
● 最近感染した可能性を示す検査結果がある献血者は一時的に排除する。
● ジカウイルス病と一致する臨床歴があるか、最近のジカウイルス感染歴がある献血者
は、症状が完全になくなってから 28 日以上遅らせる。
● 同様に、最近 3 ヶ月間にジカウイルス感染が確認または疑われた男性のセックスパート
ナーは、最後の性的接触後少なくとも 28 日間遅らせる。
● 既に献血した者は、その後献血後 14 日以内にジカウイルス感染の症状が現れるか、ジ
カウイルス感染と診断された場合、輸血業務を行っている機関に報告する。
● 適切な貯蔵寿命がある血液成分(たとえば赤血球)は、7~14 日間留保し、献血者がジ
カウイルス感染の急性期症状を示していないことを確認後に供給に回す。貯蔵寿命が短
い血小板は、3 日間の留保期間を考慮することができる。
● 流行国への多くの訪問者がいる国は、血液供給状況の遅延の影響を査定し、献血制限の
便益に対するリスクを検討する必要がある。
献血者はジカウイルスの検査をどのように受けるか?
可能であれば、献血者は適切な検査法でジカウイルスの存在を調べることができる。血漿お
よび血小板のために病原体低減技術(PART)を用いることができる。
一部の場合、発生地域から帰国する献血者におけるウイルスの存在を選択的に検査する方法
が、遅延の代わりとして考慮することも可能である。
ヤブカ属の蚊は存在するが、ジカウイルスが見つかっていない国は準備しなければならなか?
ジカウイルスを運ぶ蚊が存在するが未だウイルス自体は見つかっていない国は、感染が発生
した場合に安全で十分な血液を供給できる計画の準備を検討することを WHO は勧告する。
(つづく
2016/7/20)
-7-
2015 年 3 月 29 日: ブラジルは北東部の州において皮膚の発疹を特徴と
する症例を WHO に通知した。2015 年 2 月から 4 月 29 日に、約 7000 名の軽
症例が報告され、死亡者はいなかった。様々な診断名からの 425 名の血液サン
プルの内、13%はデング熱陽性であった。チクングンヤ、麻疹、風疹、パルボ ウ
イルス B19 およびエンテロウイルスは陰性であった。ジカウイルスはこの段階
で疑われず、ジカウイルスについての検査は行われなかった。
2015 年 5 月 7 日: ブラジルの標準研究所は、ジカウイルスが国内で循環
していることを確認した。これは、アメリカ大陸においてジカ熱が国内発生し
た最初の報告である。
WHO/PAHO は、ブラジルにおいてジカウイルス感染の可能性について疫
学的警告を発表した。両組織は、国がこのウイルスの感染を減らすために、ジ
カウイルスの検出、臨床管理、地域社会の参加の戦略を確立して維持すること
を勧告した。
疫学的警告:ジカウイルス感染
Epidemiological Alert: Zika Virus Infection
WHO/PAHO, 7 May 2015
汎アメリカ保健機構 (PAHO)と世界保健機関 (WHO)は、加盟国に対して、ジカウイルス検
出、臨床管理、ならびに、とくに媒介蚊が存在する地域で、この病気を伝播する蚊を減らす効
果的な広報戦略のための能力を確立して維持することを勧告する。
状況の要約
ジカウイルスは 1947 年にジカ森 (ウガンダ) で黄熱伝播の野外研究中にアカゲザルから最
初に分離された。ヒトで最初に分離されたのは 1952 年(ウガンダ、タンザニア)であった。1968
年にナイジェリアにおいてヒトのサンプルでウイルスが検出された。
2007 年にヤップ島(ミクロネシア)で初めての大規模なジカ熱流行が発生し、185 名の疑い
症例が報告され、その内 49 名が検査で確認され、59 名は可能性が高いとされた。この流行は、
13 週間(4 月~7 月)続いた。可能性がある媒介蚊はヒトスジシマカ(Aedes hensilii)とされ
たが、蚊からウイルスは分離されていない。
その後 2013 年 10 月末に、フランス領ポリネシアで発生が始まった。約 10,000 症例が登録
され、その内約 70 名は神経系合併症(ギランバレー症候群、髄膜脳炎)や自己免疫疾患(血小
板減少性紫斑病、白血球減少症)を含む重症例であった。これらの合併症とその他のフラビウ
イルス属、とくにデング熱ウイルスの一次感染や二次感染との関連性を調べるための調査が行
われた。伝播に関わった媒介蚊は、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)とポリネシアヤブカ(Aedes
polynesiensis)であった。2014 年には、クック諸島、ニューカレドニアでも症例が記録された。
これまでに、いずれの発生地においてもジカウイルス感染に起因する死亡は報告されていな
い。
-8-
過去 7 年間に、旅行者の症例が散発的に報告されている(タイ、カンボジア、インドネシア、
ニューカレドニア)。
2014 年 2 月にチリの公衆衛生当局は、イースター島(チリ)における地域内ジカウイルス感
染の 1 症例を確認した。それは太平洋諸島における伝播の別の病原巣の存在と関連していた;
フランス領ポリネシア、ニューカレドニアおよびクック諸島。ウイルスの存在は同年 6 月まで
報告され、その後は検出されなくなった。現在、ブラジルの公衆衛生当局は、国の北東部にお
けるジカウイルス伝播の可能性を調査している。
世界の様々な地域におけるジカ熱の最近の発生は、媒介蚊(ヤブカ属)が存在する地域全体
においてこのアルボウイルスが広がる可能性を示している。
勧告
アメリカ大陸における媒介蚊の広範な分布は、この地域および全世界におけるヒトの激しい
移動と相まって、アメリカ大陸でジカウイルスが広がるリスクをもたらしている。PAHO/WHO
は、デング熱およびチクングニア熱と同じ媒介蚊に関して以前に出した勧告を再度強調し、こ
れらの病気を伝播するヤブカ属が存在する加盟国に対して、症例を発見して確認し、症例を管
理し、媒介蚊の密度を減らすための効果的な広報戦略を実施するよう要請する。
発生動向調査、症例管理および予防と制御の措置に関連する鍵となる勧告事項を以下に示す。
(省略)
2015 年 7 月 17 日: ブラジルは感染歴に関連する神経学的障害を報告し、
主に北東部の Bahia 州からであった。これらの報告の中で 49 症例はギランバ
レー症候群(Guillain–Barré syndrome)と確認された。これらの中で 2 例を除
いて全てがジカウイルス、チクングニアウイルスあるいはデングウイルスの感
染歴があった。
2015 年 10 月: カーボベルデは、ジカ感染の国内最初の発生を確認した。
コロンビアは、13 自治体で 156 症例のジカ感染を検査によって確認した。
(Zika
virus infection – Brazil and Colombia)
2015 年 10 月 30 日: ブラジルは、新生児の間で小頭症(Microcephaly)
症例数の異常な増加を報告した。
2015 年 11 月: 11 月に、スリナム、エルサルバドル、グアテマラ、メキ
シコ、パラグアイおよびベネズエラは、検査で確認された地域発生ジカ感染を
報告した。
スリナム(Suriname, 11 December 2015)
2015 年 11 月 2 日に国の IHR 窓口は 2 名の地域内発生ジカ症例を PAHO/WHO に報告した。
-9-
エルサルバドル(El Salvador, 27 December 2015)
2015 年 11 月 24 日に国の IHR 窓口は 3 名の地域内発生ジカ症例を PAHO/WHO に報告した。
グアテマラ(Guatemala, 27 December 2015)
PAHO/WHO は 1 名の地域内発生ジカ症例の報告を受けた。患者は Zacapa 州住民で 11 月
11 日に発症した。
メキシコ(Mexico, 3 December 2015)
2015 年 11 月 26 日に国の保健当局は 3 名のジカ症例を PAHO/WHO に報告し、その内 2 営
は地域内発生症例だった(Nuevo León 州と Chiapas 州の住民)。
パラグアイ(Paraguay, 3 December 2015)
2015 年 11 月 27 日に国の IHR 窓口は 6 名の地域内発生ジカ症例を PAHO/WHO に報告した。
ブラジルとの国境を接する北東部の Pedro Caballero 市の住民である。年齢は 14~45 歳で半数
が女性である。
ベネズエラ(Venezuela, 3 December 2015)
2015 年 11 月 27 日に国の IHR 窓口は 7 名のジカウイルス感染疑い症例の届け出を受けた。
地域内発生ジカ症例を PAHO/WHO に報告した。4 例が RT-PCR 検査でジカウイルス陽性と
なった。患者は全員女性で年齢は 40~55 歳であり、ブラジルとの国境地帯に住んでいる。
2015 年 11 月 6 日: ジカウイルスは WHO の「週刊疫学記録(Weekly
Epidemiological Record)」で強調されている。
「世界の様々な地域におけるジカ感染の最近の発生は、このウイルスがアメ
リカ大陸でさらに広がり、媒介蚊が存在するどこへでも拡大する可能性を強調
している」
17 June 2016, vol. 91, 24 (pp. 305–316)
19 February 2016, vol. 91, 7 (pp. 73–88)
6 November 2015, vol. 90, 45 (pp. 609–616)
2015 年 11 月 11 日: ブラジルは、小頭症の疑い症例が増加し続けている
ので、国の公衆衛生上の緊急事態を宣言する。
2015 年 11 月 17 日: WHO/PAHO は、先天性小頭症およびその他の中枢
神経系奇形の増加を報告する国に求める疫学的警告を出した。ブラジルは、超
音波検査によって胎児の小頭症が確認された 2 名の妊娠中の女性から採取した
羊水サンプルでジカウイルス検出を報告した。
2015 年 11 月 28 日:
ブラジルは、小頭症およびその他の先天異常の赤ち
ゃんの血液と組織のサンプルで、ジカウイルス遺伝子を検出した。その赤ちゃ
- 10 -
んは誕生から 5 分以内に死亡した。ブラジルは、ジカ感染に関連する成人 2 名
と 1 名の新生児、合計 3 名の死亡を報告した。
2015 年 11 月 30 日: WHO/PAHO は、疫学的情報と臨床データを検討し、
症例対照研究に関する情報を提供し、研究所と設備基盤を査定するために、ブ
ラジルに使節を送った。
2015 年 12 月 1 日: WHO/PAHO はアメリカ大陸におけるジカウイルス
感染の神経学的症候群および先天性奇形との関連についての警告を発表した。
この警告には、ウイルス検出のための手引きが含まれている。
2015 年 12 月: パナマ、ホンジュラス、フランス領ギアナ、マルティニー
ク島およびプエルトリコは、検査で確認された地域発生ジカ感染を報告した。
パナマ(Panama, 5 December 2015)
:2015 年 12 月 2 日に国の IHR 窓口は 3 名の初めて検
査で確認されたジカ症例を PAHO/WHO に報告した。患者は 29~58 歳の女性である。
ホンジュラス(Honduras, 21 December 2015)
:2015 年 12 月 16 日に国の IHR 窓口は 2 名
の検査で確認された地域内発生ジカ症例を報告した。両名とも南部の地域に住む男性である。
フランス領ギアナ(French Guiana, 8 January 2016):2015 年 12 月 21 日に WHO は 2 名
の初めて検査で確認されたジカ症例を 2 ヶ所のフランス海外部から受け取った。その後、さら
に 2 名が追加され、4 名の疑い症例が検査中である。
プエルトリコ(Puerto Rico, 8 January 2016):2015 年 12 月 31 日に米国 IHR 窓口は初め
て検査で確認されたジカ症例を PAHO/WHO に報告した。患者は発症前 3 ヶ月間島外への旅行
歴がない。
(つづく 2016/7/21)
2016 年 1 月 5 日: ブラジルにおける 2 名の妊娠女性のジカウイルスの子
宮内感染の最初の診断を研究者が報告した。胎児は超音波によって、重篤な脳
の異常を含む小頭症と診断された。両方の女性の血液サンプルの検査は陰性で
あるが、ジカウイルスが羊水で検出された。
Zika: the origin and spread of a mosquito-borne virus
2016 年 1 月 12 日: ブラジルの保健当局と共同で米国疾病制御予防セン
ターは、PCR および 2 名の新生児の脳組織サンプルの免疫組織化学によってジ
カウイルス RNA の存在が示されたブラジルにおける 4 名の小頭症症例(2 名は
誕生後 24 時間以内に死亡、他の 2 名は死産)の検査所見を発表した。さらに、
2 名の妊娠 12 週の死胎児の胎盤は、PCR 検査によって陽性となった。ブラジル
における臨床的、疫学的調査では、4 名の女性全員が、妊娠中に発熱と発疹を示
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していたことが確認された。これらの調査結果は、ジカ感染と小頭症との間の
関連性について最強の証拠と考えられる。
Zika virus likely tied to Brazil’s surge in babies born with small heads,
CDC says
2016 年 1 月 15 日: ハワイ保健省(米国)は、妊娠早期の段階でブラジ
ルに住んでいた女性からハワイで生まれた小頭症の赤ちゃんを報告した。
2016 年 1 月 19 日: エルサルバドルは、ギランバレー症候群の異常な増
加を報告した。2015 年 12 月 1 日から 2016 年 1 月 6 日までに、2 名の死亡を含
むこの症候群の 46 症例が報告された。
HEALTH ADVISORY: Sexual Transmission of Zika Virus
2016 年 1 月 21 日: ブラジルは、49 名の死亡を含む 3,893 名の小頭症疑
い例を報告した。6 例において、新生児や死産のサンプルでジカウイルスが検出
された。
2016 年 1 月 22 日: ブラジルは、2015 年 1 月から 11 月の間に 1,708 例
のギランバレー症候群が病院で記録されていると報告した。症例を報告したほ
とんどの州は、デング熱、チクングニア熱、ジカ熱の同時発生を経験している。
2016 年 1 月 27 日: フランス領ポリネシアは、ジカ熱流行についての遡
及的データを報告し、デング熱の流行と並行していたと報告した。流行中に 42
例のギランバレー症候群が診断され、前年の 20 倍の増加となった。42 例の全
てがジカとデングの両方に陽性であった。デングウイルスとジカウイルスの連
続感染がギランバレー症候群を引起す素因となっている可能性をこの調査は指
摘した。
2016 年 1 月:
モルディブは、国内で働いていたフィンランド人が帰国後
に PCR によってジカ感染陽性と判定されたと報告した。
ガイアナ、エクアドル、バルバドス、, ボリビア国、ハイチ、セントマーチ
ン島、ドミニカ共和国、St.Croix (米国バージン諸島)、ニカラグア、キュラソー、
ジャマイカは、検査で確認された地域発生のジカ感染を報告した。
モルディブ(Maldives, 8 February 2016)
:2016 年 1 月 7 日に国の IHR 窓口は、2015 年 6
月に発症した 1 名のジカ症例を WHO に報告した。患者は 37 歳のフィンランド人男性で、モル
ディブで数ヶ月過した後、2015 年 6 月 16 日に帰国した。6 月 18 日に、軽度の発熱、発疹、眼
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痛、関節痛を発症したが、数日後に軽快した。フィンランド当局は 12 月 29 日にモルディブに
通知してきた。
ガイアナ(Guyana, 20 January 2016)
:2016 年 1 月 14 日に国の IHR 窓口は初めての 1 名
の検査で確認された地域内発生ジカ症例を報告した。患者は 27 歳女性で 1 月 1 日に発症。
エクアドル(Ecuador, 20 January 2016)
:2016 年 1 月 15 日に国の IHR 窓口は 2 名の検査
で確認された地域内発生ジカ症例を報告した。1 月 16 日現在全部で 6 名となった。
バルバドス(Barbados, 20 January 2016):2016 年 1 月 15 日に国の IHR 窓口は 3 名の検
査で確認された地域内発生ジカ症例を報告した。
ボリビア(Bolivia, 20 January 2016):2016 年 1 月 16 日に国の IHR 窓口は初めての検査
で確認された地域内発生ジカ症例を報告した。患者は 32 歳の妊娠女性で 1 月 8 日に発症。
ハイチ(Haiti, 21 January 2016)
:2016 年 1 月 18 日に国の IHR 窓口は 5 名の検査で確認
されたジカ症例を報告した。一方、1 月 4~12 日の間にドイツはハイチから 12 月末に帰国した
2 名がジカ感染していたことを報告。
セントマーチン島(Saint Martin, 21 January 2016)
:2016 年 1 月 18 日にフランスの IHR
窓口は 2 名の検査で確認された地域発生ジカ症例を報告した。セントマーチンとグアドループ
各 1 名である。
ドミニカ(Dominica, 27 January 2016)
:2016 年 1 月 23 日に国の IHR 窓口は 10 名の検査
で確認されたジカ症例を報告した。8 名は地域発生、2 名はエルサルバドルからの輸入例。
米国バージン諸島(29 January 2016)
:2016 年 1 月 25 日に米国の IHR 窓口は St.Croix で
初めての検査で確認されたジカ症例を報告した。患者は女性で 1 月 1 日に発症し、直前 3 週間
に渡航歴はない。
コスタリカ(Costa Rica, 8 February 2016)
:2016 年 1 月 27 日に米国の IHR 窓口はコスタ
リカからの帰国者 1 名のジカ症例を報告した。患者は 12 月 19~26 日の滞在中に蚊に刺された
と話しており、12 月 30 日に発症した。
キュラソー(Curacao, 8 February 2016)
:2016 年 1 月 28 日にオランダの IHR 窓口はキュ
ラソーで初めての地域内発生ジカ症例を報告した。患者は 41 歳女性で 1 月 17 日に発症。キュ
ラソーでは今年になってスリナムからの帰国者 1 名が既に確認されている。
ジャマイカ(Jamaica, 8 February 2016)
:2016 年 1 月 30 日に国の IHR 窓口は 1 名のジカ
症例を報告した。患者は 4 歳の女児で 1 月 17 日に発症。
ニカラグア(Nicaragua, 8 February 2016)
:2016 年 1 月 27 日に国の IHR 窓口は国内で初
めての 2 名の地域内発生ジカ症例を報告した
2016 年 2 月 1 日: WHO は、小頭症およびその他の神経疾患のクラスタ
ーと関連する最近のジカ感染が、国際的に懸念されるの公衆衛生上の非常事態
を構成することを宣言する。
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2016 年 2 月 2 日: 米国は、テキサス州におけるジカ感染の性的伝播を報
告した。
ベネズエラは、2016 年 1 月の第 2 週以降ギランバレー症候群の症例の増加
を報告した。1 月末までに、ジカ症例と時間と場所が関連する 252 例のギラン
バレー症候群が報告された。
2016 年 2 月 4 日: ブラジルの保健当局は、ジカウイルスに感染した献血
者からの血液の輸血による 1 名の感染症例を確認した。
2016 年 2 月 7 日: スリナムは、2015 年からギランバレー症候群が増加し
ていると報告し、ギランバレー症候群の 10 例がジカウイルス陽性であった。
2016 年 2 月 10 日: 2015 年 2 月にブラジルで妊娠した女性において、ジ
カウイルス感染に伴う重篤な胎児脳障害について症例報告があった。どの他の
臓器にウイルスまたは病理学的変化が見つかっておらず、このウイルスは神経
親和性が強く,神経系を優先的に攻撃することを強く示唆している。
小頭症と関連するジカウイルス
Zika Virus Associated with Microcephaly
N Engl J Med 2016
南アメリカ、中央アメリカおよびカリブ海地域で、2015 年にジカウイルス (ZIKV) 感染の
広範な流行が報告された。この感染症に関連する主要な関心事は、ZIKV に感染した母親から生
まれた胎児の小頭症の発生率の明らかな増加である。ブラジルに住んでいた時期に妊娠第 1 期
末あった妊娠中の母親が発疹を伴う発熱に見舞われた症例について説明する。妊娠 29 週で行っ
た超音波検査は、胎児の脳および胎盤に石灰化を伴う小頭症を明らかにした。母親が妊娠中絶
を求めた後、胎児の剖検が行われた。小脳髄症(異常に小さい脳)は、ほぼ完全な脳回欠損、
水頭症および皮質と皮質下白質の多発性石灰化を伴って観察され、皮質形成異常と軽度の局所
炎症と関連していた。ZIKV は RT-PCR によって胎児の脳組織に見つかり、電子顕微鏡による
所見と一致した。ZIKV の完全な遺伝子が胎児の脳から回収された。
ホンジュラスは、2016 年に少なくとも 37 例のギランバレー症候群を報告し
た。この報告によって、Zika ウイルスの循環に関連するギランバレー症候群を
検出した国は 8 ヶ国となった;フランス領ポリネシア、ブラジル、エルサルバ
ドル、フランス領マルティニーク島、コロンビア、スリナム、ベネズエラ、ホ
ンジュラス。
2016 年 2 月 26 日: 米国は、2 例のジカウイルスの性的伝播症例を報告し
た。
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2016 年 2 月: 2 月に、ボネール島、アルバ島、トリニダード・トバゴ、
シント・マールテン島、セントヴィンセント・グレナディーン諸島、アルゼン
チンおよびフランスがジカ感染症例を報告した。
ボネール島、アルバ島(22 February 2016)
:オランダ領ボネール島(1 月 15 日)とアルバ
島(1 月 16 日)における初めての地域内発生ジカ症例を報告。
トリニダード・トバゴ共和国(29 February 2016):2016 年 2 月 18 日に国内で初めてのジ
カ症例を報告した。患者は61歳女性で2月 10 日に発症した。ニュージーランドへの旅行歴は
あったが、ジカウイルスは伝播していないので、この症例は地域内発生の可能性が高い。
シント・マールテン島(4 March 2016):オランダ領の島で 2 名の疫学的に無関係のジカ症
例を 2 月 25 日に報告。この島の北部はフランス領で、1 月に既に発生報告があった。
セントヴィンセント・グレナディーン諸島(1 March 2016):34 歳の女性が 2 月 16 日に発
症し、国内最初の症例となった。発症前 30 日以内の旅行歴はない。
アルゼンチン、フランス(7 March 2016)
:アルゼンチンは 2 月 29 日に国内最初のジカ症例
を報告。患者は 2 月 16 日に発症し、輸入症例(発生があるコロンビアから帰国)との接触があ
った。フランスは性感染の可能性があるジカ症例を報告。ブラジルでジカ症と一致する症状を 2
月 5 日に示した後 2 月 10 日にフランスに戻り、性交渉を持った者が 2 月 24 日に発症した。
2016 年 3 月 3 日: ランセットに発表された症例は、急性脊髄炎(脊髄の
炎症)を発症し、背部痛,麻痺および膀胱機能障害を引き起こした仏領グアド
ループにおけるジカ陽性の 15 歳少女について記載している。この関連性は、ジ
カウイルスが中枢神経系に選択的に影響することを示唆している。
Lancet: Acute myelitis due to Zika virus infection
2016 年 3 月 4 日: ブラジルにおける 88 名の妊婦の研究は、72 名が血液
または尿の検査でジカウイルス陽性であることを見つけた。12 名のジカ陽性女
性の超音波検査によって胎児の異常が検出された。これらの調査結果は、胎児
の異常にジカウイルス感染が関わっている証拠を追加した。
2016 年 3 月 8 日: ジカ緊急事態委員会は、ジカウイルスと神経学的障害
との因果関係の証拠が増加していると発表した。ジカウイルス流行地域への旅
行を控えることを妊娠中の女性に助言する旅行勧告を WHO が更新した。
ジカウイルス流行国への旅行者に対する情報
Information for travellers visiting Zika affected countries
WHO, 31 May 2016
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利用可能な証拠に基づいて、ジカウイルスが伝播している国、地域および領土への旅行や貿
易に関する一般的な制限を WHO は勧告しない。
しかしながら、WHO は、ジカウイルス流行が現在進行している地域へ妊娠女性は旅行しな
いよう助言する。この助言は、ジカウイルスに感染した妊婦から生まれた新生児の小頭症およ
びその他の先天性奇形のリスクの増加に基づいている。小頭症は、赤ちゃんが小さな頭で生ま
れるか、出生後に頭の成長が止まる状態である。
予防策として、いくつかの国の政府は、入手可能な証拠と地域のリスク要因の査定に基づい
て、自国民に対する公衆衛生と旅行についての勧告事項を作成している。
ジカウイルスは、主に、感染したヤブカ属の蚊に刺されることによって人々に伝播する。ジ
カウイルスは、性行為によっても伝播し得る。
Prevention of sexual transmission of Zika virus
ジカウイルス流行地へ旅行する前に
ジカウイルス流行地域への旅行者は、蚊に刺される可能性およびジカウイルスの性的感染を
減らすため、潜在的なリスクと適切な措置について最新の助言を求めるべきである。
ジカウイルス流行地で旅行中に
ジカウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、その他の性感染症および望まない妊娠を防
ぐために、男性と女性は、安全なセックス (コンドームの常時使用を含む)や禁欲を順守しな
ければならない。
以下の措置に従うことによって、旅行中に蚊に刺されるのを防ぐ;
● 可能な限り体の大部分を覆う、明るい色の服を着用する。
● 虫よけを使用する;ディート(ジエチルトルアミド)、IR 3535 または Icaridin を含
む忌避剤を、露出した皮膚や衣類に適用する。忌避剤は、ラベル表示に従って使用し
なければならない。
● ドアと窓を一般的な網戸または殺虫剤処理した網などの物理的障壁を使用するか、ま
たはドアと窓を閉じておく。
● ヤブカ属の蚊が最も活発な時間帯は蚊帳の中に寝る。
帰宅時に
ジカウイルスのさらなる伝播および不都合な妊娠と致命的な結果を防ぐために、帰宅した全
ての旅行者は、コンドームの正しい常時使用を含む安全なセックスを順守するか、または少な
くとも 8 週セックスを控えなければならない。症状(発疹、発熱、関節痛、筋肉痛、結膜炎)
が現れた男性は、より安全な性慣行を順守するか、または少なくとも 6 ヶ月間禁欲しなければ
ならない。
妊娠中の女性の性的パートナーは、安全な性慣行を順守するか、または少なくとも妊娠期間
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は禁欲しなければならない。
2016 年 3 月 9 日:
ベネズエラは、国内のジカ流行について疫学的更新を
提供した。全部で 16,942 名のジカ疑い症例が報告された。その内 801 サンプル
が検査され、352 サンプル(44%) がジカ陽性であった。
2016 年 3 月 10 日: 米国はジカウイルス感染が確認された 2 例のギラン
バレー症候群を報告した。最初の症例は、エルサルバドルを最旅行した高齢の
男性で、動脈瘤破裂による突然のくも膜下出血で死亡した。第 2 の症例は、ハ
イチの 30 代男性居住者で、治療のため米国に来た後で診断された。彼は病院で
の治療の 5 日後完全に回復した。
2016 年 3 月 22 日: WHO 専門家会議は、ジカウイルス、潜在的に関連す
る合併症、効果的な介入策および必要な研究と技術の分野についての知識のギ
ャップを特定した。Chan 事務総長は、ジカとの戦いにおける経験と次のステッ
プを強調した。
2016 年 3 月: 初めての地域発生症例がコスラエ、ミクロネシア、ドミニ
カ、キューバから報告された。
ドミニカ、キューバ(29 March 2016):最近の旅行歴のないドミニカの 28 歳女性が 3 月 1 日
に発症。最近の旅行歴のないキューバの 21 歳男性が 3 月 7 日に発症。
ジカウイルスの歴史:1947~2016 年の発生国の図示
The history of Zika virus
Map displaying infected countries from 1947-2016
岡本注:1947 年に、ウガンダの Zika 森のアカゲザルから新たなウイルス
が特定され、ジカウイルスと命名したのが始まりである。人獣共通感染症であ
るが、黄熱やエボラと同様に、森から町に流行が移動してからは、サルとは無
関係に広がっている。流行の中心が森から町へ移動するのに、かなりの時間が
経過しており、世界的流行を引起したのはこの数年のことである。その原因は
判っていないが、媒介するヤブカ属の分布と生息数が、温暖化によって影響を
受けた可能性が考えられる。
オリンピックに出発する前に、WHO 勧告をお読みください。とくに、若い
世代は、性感染について熟慮してください。
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