大会実行委員長からのごあいさつ

大会実行委員長からのごあいさつ
大会実行委員長 田端 昌平
謹啓、会員の皆様におかれましては、ご健勝でご研究に励まれておられることと存じます。
本年度の全国大会は、国際ビジネス研究学会創立20周年記念大会として、10月26日(土)、27日
(日)の両日、近畿大学(東大阪キャンパス)にて「地域イノベーションとグローバル化」と
いう統一論題で開催されます。
近畿大学は中小企業の集積地に立地していますが、こうした地域は不振が叫ばれて久しいものがあ
ります。しかしながら、地域の中には、自らイノベーションを起こし、グローバル化を遂げている綺
羅星のように優れた企業が存在します。こうした企業は、ニッチをターゲットとすることが多く、ニ
ッチの中でオンリーワン化します。また、こうした企業は、ニッチがグローバルなマーケットである
ことが多く、マーケットに奉仕する帰結として、グローバル化を遂げ、グローバルニッチにおける地
位を確立します。
また、グローバル化は、地域の企業が意図しない場合にも起こりえます。地域の企業が優れた独自
技術をもつことが世界の多国籍企業の知るところとなり、多国籍企業の側から連携を求めて働き掛け
てくる場合がそうです。こうした連携は、あくまでも対等な連携であり、地域の企業に新たな学習の
機会をもたらしてくれます。
いずれにせよ言えることは、どのような形であれイノベーションを起こし、グローバルに活躍する
企業は強いということです。私たちは、こうした企業の育成こそが地域再生のカギになると考えてい
ます。
その際、念頭に置かなければならないのは、地域の土壌が果たす役割です。企業は、地域の埋め込
みの中で育ちます。重要な取引先という点でも、機器や部品、原材料の調達先という点でも、技術や
人的資源の調達先という点でも、人や知見の交流という点でも、あるいは単に近隣や土地柄という点
でも地域が重要な役割を果たしており、地域の中で活動する主体同士が相互に刺激を与えあっていま
す。
そこでここでは、地域という土壌が果たす役割に十分に配慮しながら、地域の企業のイノベーショ
ンやグローバル化の成功例をベンチマークし、地域活性化の一助としたいと思います。
まず今大会の初日には、大東和武司先生と浅川和宏先生のお二人の理論家に地域イノベーションと
グローバル化についての論考をいただいた後、2つの企業と1つの研究機関にご登壇をいただきます。
絶対にゆるまないネジのオンリーワン企業ハードロック工業、自律性を有する子会社で独自なイノベ
ーションが行われ、グループ企業同士がグローバルに連携する新田ゼラチン、クロマグロの完全養殖
に世界で初めて成功し、事業化においても大きな成果を挙げている近畿大学水産研究所です。また、
2日目には、「伝統とイノベーション: Local to Global」と銘打ったフォーラムを行います。京和傘
日吉屋とタマノイ酢をお迎えし、100年を超える伝統をもつ企業が伝統の中で培ったコア技術をもと
にイノベーションを起こし、世界に打って出ようとする姿をパネルディスカッション形式でご紹介し
ます。また、同日には、国際ビジネス研究創刊20周年を記念したフォーラム「国際ビジネス研究の方
法論を問う―国際ビジネス研究学会20周年にあたって」や、国際交流セッション、フェロー記念講演、
特別講演、自由論題報告を予定しております。
真心込めて準備いたしておりますので、多くの会員の皆様のご参加をお待ちしております。
敬白
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講演&フォーラムのご案内
(紙面の都合上、プログラムを前後して掲載しております)
10/26 統一論題 10:00-11:00
(11 月ホール)
研究報告Ⅰ:地域企業からみたイノベーションと国際展開
大東和 武司先生(広島市立大学国際学部教授)
地域企業とは、一般には、ある国の限られた範囲の地域に拠点をおいて
経営活動を行っている企業を指している。ある地域で長い時間のなかで
形成されてきた地場産業を構成している地場企業を指す場合が多いが、
新たにその地域に立地した企業も含まれる。このたびは、地域企業が
持続可能でありつづけていることにイノベーションがどのように作用して
いるのか、またグローバリゼーションの進展のなかで、国際展開はどのように
かかわっているのかについて、議論をする予定である。
(講師略歴)
愛媛大学法文学部、近畿大学大学院商学研究科で学んだ後、日本文理大学講師、久留米大学助教授・教授
を経て、2000 年より広島市立大学国際学部教授。
著書:
『国際マネジメント』
(泉文堂、1999 年)、大東和武司・金泰旭・内田純一(編著)『グローバル
環境における地域企業の経営』
(文眞堂、2008 年)
、江夏健一・大東和武司・藤澤武史(編著)
『サービ
ス産業の国際展開』
(中央経済社、2008 年)など多数。平成 8 年度、貿易奨励会奨励賞受賞。
10/26 統一論題 11:05-12:05
(11 月ホール)
研究報告Ⅱ:多国籍企業における“ローカル・フォー・
グローバル”型イノベーションの現状と課題
浅川 和宏先生(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)
本報告ではまず、多国籍企業におけるイノベーションの中で特に近年
着目されてきた”ローカル・フォー・グローバル”型イノベーションを
めぐるこれまでの研究の流れを概観し、それを通じて今日における多国籍
企業グローバル・イノベーション研究の現状と課題を検討したい。その上で、
報告者自身による実証研究結果も交えながら、多国籍企業におけるグローバ
ル・イノベーション研究の今後の展望について、理論的、実証的観点より私見を
述べさせていただきたい。
(講師略歴)
早稲田大学政治経済学部卒。日本興業銀行勤務を経て、ハーバード大学より MBA、INSEAD 経営大学
院より Ph.D.取得。慶應義塾大学大学院講師、助教授を経て 2004 年教授。2013 年より三菱チェアシッ
プ基金教授。MIT客員研究員、経済産業研究所ファカルティフェローを歴任。米学術誌 Global Strategy
Journal の Associate Editor を務める。
Academy of Management Perspectives, Journal of International
Business Studies, Journal of International Management の editorial board member。
2013 年より Academy of International Business の Japan Chapter Chair。マギル大学、JKUリンツ
大学、ウィーン経済大学、アールト大学、延世大学などに出講。専門はグローバル経営論。
著書に『グローバルR&Dマネジメント』
(慶應義塾大学出版会、2011 年)など。
2012 年度 国際ビジネス研究学会および多国籍企業学会より学会賞(単行本の部)を受賞。
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10/26 統一論題 13:05-14:05 (11 月ホール)
講演Ⅰ:オンリーワン商品開発の秘訣
若林 克彦様(ハードロック工業株式会社 代表取締役社長)
全ての商品は未完成品であると考え、
「ねじのゆるみ止め」という永遠の
テーマに取り組んできた。
「アイデアは人を幸せにする」を信念に開発を
重ねてきたハードロックナットは、オンリーワン商品、さらにはロング
セラー商品になっている。
日本古来の建築構造に使用されている楔(くさび)の原理を応用した
「ハードロックナット」は、
「安全は威力!」をキャッチフレーズに世界でも類を見ない緩まないナット
として新幹線や東京スカイツリーを始め、国内外の数々の安全が重視される業界で採用され、数々の経験
や検証を重ね培った技術ノウハウで開発以来無事故の実績を誇っている。昨今、国内産業は韓国や中国に
価格競争で負け、中でも特に中小企業は厳しい立場にたたされている。この争いの世界「レッドオーシャン」
から、競争のない世界「ブルーオーシャン」へ移行していく方法を、自身の経験を通して解説する。
(講師略歴)
1956 年、大阪工業大学工学部を卒業後、三協製作所、冨士産業社(現 冨士
精密)を経て、1974 年からハードロック工業代表。日本の建築構造の楔(く
さび)の原理を応用した、絶対に緩まない「ハードロックナット」を開発。
1998 年、日刊工業新聞社主催優秀経営者表彰式で「研究開発者賞」受賞。
2009 年、内閣総理大臣表彰「第 3 回ものづくり日本大賞」特別賞受賞、
同年、秋の叙勲で旭日双光章受章。
10/26 統一論題 14:10-15:10 (11 月ホール)
講演Ⅱ:g-DNA 経営について ~Gelatin, Global, Growth~
曽我 憲道様(新田ゼラチン株式会社 代表取締役社長)
創業95年を迎えた当社は、ゼラチンを主体としたコラーゲン関連製品の製造販売をグローバルに展開
している老舗企業です。創業当初から変わらない「発明・改善・改良」の精神で、市場の変化に対して、
常に新しい用途に適応した原料・製品を開発し、新しい市場を開拓してきました。例えば、BSE 発生に
よる風評被害や写真のデジタル化により主要用途であった写真用ゼラチンの需要が大きく減少するなど、
これまでに多くの壁を乗り越えてきました。更なる成長を目指し、2011 年 12 月に東証二部に上場、
2012 年 12 月には東証一部に銘柄指定されました。
原料調達から市場開拓まで、当社独自のスタイルでグローバル化を推進し事業拡大を図っています。
グローバル事業を進めるには人材育成が重要との認識で、グループ
全社員に対して理念経営の浸透・実践を行っています。これが、
g-DNA 経営であり、その一端をご紹介します。
(講師略歴)
1971 年京都工芸繊維大学繊維学部卒業。1973 年入社、アメリカ
駐在後、1991 年、海外営業部長、1996 年取締役、2006 年代表
取締役社長に就任。
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10/26 統一論題 15:20-16:20 (11 月ホール)
講演Ⅲ:困難にどう立ち向かうか ~挑んだ世界初クロマグロ完全養殖~
熊井 英水先生(近畿大学理事・水産研究所顧問・名誉教授)
(近畿大学水産研究所紹介)
近畿大学水産研究所は、
「海を耕す」という理念の
もと、1948 年に設立。爾来、輝かしい成果を挙げる。
1954 年からは網いけす式養殖法の研究に着手し、
産業化を実現。1965 年には、世界で初めてヒラメの
人工ふ化、種苗生産に成功。これを皮切りに、18 種の
魚種の人工ふ化、種苗生産に成功した。
2002 年、クロマグロの完全養殖に世界で初めて成功。
2003 年、
「クロマグロ等の魚類養殖産業支援型研究拠点」が 21 世紀 COE プログラムに採択。
2008 年、
「クロマグロ等の養殖科学の国際教育研究拠点」がグローバル COE プログラムに採択。
水産研究所の特筆すべき点は、近畿大学建学精神の一つである実学教育を掲げ、単に学術研究の拠点
であるにとどまらず、事業化のための拠点にもなっていることである。2003 年に稚魚および成魚を販売
することを目的とする株式会社、アーマリン近大を設立。日本各地の養殖業者に優れた稚魚を出荷したり、
百貨店や飲食店に成魚や加工品を販売したりすることをとおして、ビジネスとしても成功を収めている。
また、もう一つ特筆すべき特徴は、その活動が世界的な波及性を持っていることである。東南アジア
における魚類養殖産業の発展に向けた数々の共同研究・教育を実施し、魚介類の養殖産業全体を掌握で
きる即戦力型研究者を育成して、国内外の大学、研究機関、企業などに多くの優れた人材を輩出している。
(講師略歴)
1958 年、広島大学畜産学部を卒業後、近畿大学白浜臨海研究所(現・水産研究所)
副手。同教授、同所長を経て、現在同顧問を務める。農学博士。約半世紀にわた
り、一貫して魚類の養殖にたずさわり、数々の海産魚の完全養殖に成功したほか、
交雑魚の研究でも成果を挙げた。クロマグロの完全養殖は特に有名。1998 年日本
水産学会技術賞、2002 年和歌山県文化特別賞、2003 年日本水産学会功績賞、2004
年日本水産増殖学会賞、2006 年大日本水産会功績者表彰、2008 年日本農学賞、
2008 年読売農学賞など受賞。
10/27 自由論題 10:30-12:00 (E 会場:39-302)
国際交流フォーラム:韓国国際ビジネス学会からの招聘研究者報告
ゲストスピーカー:
Yong-Duk Kim (Soongsil University) ,
Jeong-Oh Ham (KOTRA);
"The Determinants of Performances of Korean Investment Companies in China"
Joon-Seok Oh (Sookmyung Women's University);
"A Study on the Outbound FDI and CSR of Korean Manufacturing Firms"
司会:井口 知栄先生(慶應義塾大学)
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10/27 自由論題 13:00-13:40 (C 会場:39-403)
フェロー記念講演:日本型生産システムの国際移転と競争優位の構築問題
-6大陸のハイブリッド工場と現地市場環境-
安保 哲夫先生(東京大学名誉教授)
この講演では、日本多国籍企業研究グループが 20 数年間世界主要地域で行ってきた日本型生産シス
テムの国際移転研究の成果を要約しつつ、その移転の結果と現地市場での競争優位構築との関係に焦点
を当ててみたい。
日本企業による世界各地の現地工場における日本的生産技法の移転状況では、地域、産業、企業に
よって一定の差異を示しつつ、全体としてそれなりの実績が上がっている。だが、それが市場シェアや
利益などの業績にどの程度結びついているかは、一概にはいえない。その点は、1990 年代以後、日本
電機産業などの競争優位が後退し、進出地域が中国、インドなど新興国に広がると、明確になってきた。
今日、この問題にどう対応出来るかが日本企業の大きな課題となっている。
10/27 自由論題 13:40-14:20 (C 会場:39-403)
特別講演: 持続的経済発展時代の終焉と企業パラダイムの転換
― 国際ビジネス研究の原点を顧みて ―
髙井 眞先生(関西学院大学名誉教授)
市場経済社会において、常に新しい産業分野を切り拓いて、持続的な経済発展を
始動、誘導してきたのは、絶えざる知識の開発と技術革新であった。とはいえ、
その社会的な成果を経済的に意味のある価値、有効な、つまり生活に役立つモノ・
サービスに転換する事業(ビジネス)を遂行する、企業(ミクロ)の主体的・戦略
的な行動と、それを支える市場(マクロ)の仕組みが効果・効率的に噛み合わなけ
れば、そしてまた、国域を越えて各地の需給を触発し、国際分業を可能にしたビジネス(貿易)の働きが
なければ、開発・蓄積された知識と技術は社会的な存在意義を失い、今までのような、連続した持続的な
経済発展の時代は到来しなかったであろう。
ところが今、73 年の石油危機前後から、先進諸国の経済・企業の牽引力と国際市場のダイナミックな成
長力の衰えが目立つようになった。グローバル化経済が浸透する中で、この地殻的変動とも云うべき、い
わば想定外の市場構造の変動に直面して、内外の企業家は、むしろ起業家として自社の新生面を開くこと
を求められ、事業体としての企業を主導するパラダイムそれ自体の革新が迫られている。この点に関説し
て、国際ビジネス研究の原点に立ち返り、21世紀型企業経営のあるべき姿を模索してみたい。
10/27 14:00-15:30 (D 会場:39-301)
編集フォーラム: 国際ビジネス研究の方法論を問う
-国際ビジネス研究学会20周年にあたって;JAIBS 編集委員会-
パネリスト:磯辺剛彦 (慶應義塾大学)
新宅純二郎(東京大学)
司 会
榊原清則 (法政大学)
立本博文 (筑波大学大学院)
:銭 佑錫 (中京大学)
※ 特に、院生・若手研究者の皆さんのご参加をお待ちしております。
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10/27 自由論題 14:30-15:30 (E 会場:39-302)
伝統とイノベーション・フォーラム: 伝統は革新の連続
西堀 耕太郎様(株式会社日吉屋 代表取締役 兼 T.C.I.研究所代表)
(企業紹介)
江戸後期創業、現在は京都で唯一の京和傘製造元「日吉屋」
。
和傘は茶の湯をはじめ伝統芸能に彩を添える華として使われており、英国女王
エリザベス2世が来日の際に開催された歓迎のお茶会にも、日吉屋の本式野点傘が
使われている。
時代の変遷と共に和傘業界は衰退し風前の灯という状況の中、各地に伝わる伝統
行事や祭礼に使われる和傘や、伝統芸能の小道具の、製作・修理等、培われてきた
独自の技術を活かし日本文化の保護継承の一助に努めると共に、
「伝統とは革新の連続である」という信念
の元、伝統的和傘の継承のみならず、和傘の技術、構造を活かした新商品を積極的に開拓中。
(講師略歴)
和歌山県新宮市出身。カナダ留学後新宮市役所で通訳をするも、結婚後妻の実家「日吉屋」で京和傘の
魅力に目覚め、脱・公務員。職人の道へ。2004 年五代目就任。2012 年 T.C.I 研究所設立。現在 38 歳。
10/27 自由論題 14:00-15:30 (E 会場:39-302)
伝統とイノベーション・フォーラム: 食酢製造企業 タマノイ酢の海外進出事例
谷尻 真治様(タマノイ酢株式会社 執行役員 兼 海外事業部部長)
海外事業部設立当時の 2008 年から、海外で人気の寿司を始めとする日本
食市場に向けた酢の販売、中国や東南アジアの美容や健康に関心の高い富裕
層に向けた酢飲料の販路拡大を継続しています。現地の人たちに喜んでもら
える企画と良いネットワーク作りの重要性を痛感する日々が続いています。
(企業紹介)
1907 年創立。酢を粉末化した「すしのこ」や、
黒酢をドリンク化した「はちみつ黒酢ダイエット」
など、業界のパイオニア的存在として、挑戦を
続けています。海外展開は 2008 年から。現在、上海、香港、シンガポール、
ニューヨークに拠点を構え、世界へ向けてタマノイ酢の商品を広めています。
(講師略歴)
1985 年、岡山大学農学部農芸化学科卒業。同年、タマノイ酢株式会社入社。
開発室に配属になり、「はちみつ黒酢ダイエット」の開発に携わる。その後、
研究所、企画、営業等を経て、2008 年海外事業部部長就任。
現在、執行役員兼海外事業部部長として、海外事業に注力している。
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