Page 1 Page 2 Page 3 砂利採取の実態とその問題点 戦前の骨材生産

日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要
VoL24(1989)PP.9−22
砂利採取の実態とその問題点
五條英
Present
Condition
of
Gravel
Mining
Eiji
(Received
The
years
ous
demand
the
for
annual
kinds;river
River
bed
bottom
The
at
blessed
mining
1,
of
and
the
hill
West
earth
the
in
is
the
gravels
31,
1989)
increased
w三th
over700million
bottom
Central
predominate
in
economic
tons,which
gravels
Japan
the
and
classi五ed
crushed
accounts
the
is
into
recent
vari・
stone,
for65%of
Central
growth。In
and
that
of
Northeast
the
whole
Japan,while
Japan.
removed
situation
districts.It
alluvial
Kyushu,for
aggregate
land,hi11,sea
Problems
GOJO
October
remarkably
its
by
gravel
mining(including
stone
crushing)since1976is
about1・1×103m3/km2・year.
Prospecting
some
of
production
land
gravel,in
volume
estimated
production
has
bed,alluvial
gravel
country.Alluvial
sea
aggregate
and
司
land
and
example,seems
in
future,river
will
also
hill
gravels.As
to
have
be
bed
restricted
for
gravel
will
from
various
sea
bottom
be
more
di佑cult
conditions
grave1,the
to丘nd
adjacent
to
obtain
good
sea
except
sites
to
for
North
possibilities.
㎡に達したという。1907(明治40)年に,砂利運搬専用
はじめに
の鉄道会社(J
R南武線の前身)が設立されてからは次
建設用骨材とは,コンクリートに混入する砂利1)のほ
第に鉄道輸送に変わり,東横・小田急・玉川・京王・青
か・広義には道床・路面用の砂利・砕石や埋立用の土砂
梅等の諸線は,戦前まで砂利の採掘と運搬を営んでい
等も含めた呼称である。
た2)。
骨材は,古来土木・建設事業に不可欠のものであっ
第二次大戦後,戦災の復輿,国土の開発とこれにつづ
た。例えば・東京・横浜に近く,砂利に恵まれた多摩川
く高度経済成長時代を通じて,骨材はその需要を飛躍的
下流部での砂利採取は,少なくとも江戸時代後期にさか
に増大し,重要な建設資材として認識されるようになっ
のぼるといわれる。明治・大正時代に至ると砂利採取船
たが・一方では河川砂利の澗渇,濫掘による河床低下が
によってさかんに採掘され,大部分は東海道六郷橋のや
顕在化し,骨材資源の確保が重要な課題となった。
や上流側左岸の古川・原・古市場等の河岸(蛇行部の攻
1968年の砂利採取法の制定,1971年の採石法の改正等
撃斜面にあたる)で,東京湾に出るより大型の船に積み
の立法措置により,砂利採取や採石については,それま
かえて搬出された。砂利の生産量は,1897(明治30)年
での実質的な届出制から許認可制に変わるとともに,河
頃に42,000㎡,1919・20(大正8・9)年頃には300,000
川砂利依存から陸砂利・山砂利・海砂利等の他の(天然)
日本大学文理学部地理学科
〒156東京都世田谷区桜上水3−25−40
Department of Geography,College of Human三ties
and Science,Nihon Un至versity,25−40,Sakurajousui
3−Chome,Setagaya−ku,Tokyo,156Japan,
9
(9)
五條英
司
砂利や砕石等へと,骨材資源の多様化が図られることに
なった。
Table1
河川砂利が現在の河川敷に存在する砂利であるのに対
Change
of
annual
supPly
of
aggregate
単位:百万トン,カッコ内妬
して,陸砂利は現河川の周辺の低地に賦存する砂利,山
砂利は低い丘陵地または段丘を構成している未固結の砂
年度
利,海砂利は大部分が水深20〜50mの海底に堆積してい
1965
285(80.5)
67
287(67.7)
125(29.5)
168(32,6)
る砂利である。
砂
そ
石
砕
利
の
他
計
354
423
12(2,8)
これらの砂利のうち・径5㎜未満(5㎜飾を通るもの
69
331(64.1)
が重量の85%以上)のものを砂・径5㎜〜40㎜のものを
71
374(59.1)
237(37,4)
17(3.3)
516
22(3,5)
633
73
433(54.2)
341(42,7)
25(3.1)
799
74
366(50.5)
336(46.3)
23(3.2)
725
いたものを玉砕と称している。また,砕石は採石場で採
75
353(52、8)
297(44.4)
取した岩石を破砕・選別して骨材とするもので,発音の
76
344(52.0)
298(45。0)
20(3.0)
662
同じ採石と区別するため,「山砕」とも呼ばれる。
77
385(52.4)
328(44.6)
22(3.0)
735
78
420(51.4)
374(45.8)
23(2.8)
817
79
430(50.7)
395(46.6)
23(2.7)
848
80
405(48.6)
404(48,4)
25(3.0)
834
81
382(47.8)
395(49.4),
22(2.8)
799
82
363(48.2)
373(49.5)1
17(2.3)
753
筆者は,これまでに主として陸砂利・山砂利の採取に
83
327(44.6)
390(53.2)
16(2.2)
733
ついて調査してきたが3)4),本稿では河川砂利・海砂利も
84
322(43.0)
410(54.8)
16(2.1)
748
加え,主として各種砂利資源の採取の実態およびその影
85
311(42.8)
398(54,7)
狭義の砂利・径40㎜以上の円礫を玉石・玉石を細かく砕
骨材は,このところ年間7〜8億トンの割合で生産さ
れているが,これにより何らかの自然の地形あるいは土
地形質の改変,ひいては環境の改変がもたらされる筈で
ある。
響と問題点を考察する。
2・
669
19(2.8)
727
18(2.5)
「その他」は,鉱津その他。
骨材の生産とその推移
骨
鉱
130工
120 業
生
110産
100指
数
90
材
供
給
/
/
ノ
量
超聾一一一一一ノ
彰!
物・
百万
トン
900
800
/
700
〆
600
!
400
.!
/
率
鄭
ペヤ
唖・
80
!
屡)_.霜陶.雪秤一榊.一一一…『爾、、
静
咳
呼
!
500
一一
㌻聾/
¥、
〜︑
ノメ
!!
!
一一一一一
豊/
舞−
継
70
7
60
6土
505事
酵塑
業
4費
30 3
兆
2 円
40
300
1
196566
67
68
69
70
71
72
Figゆ1
(10)
73
Change
74
of
75
76
annual
77
supPly
一10一
公
78
of
79
80
81
aggregate
82
83
84
85
砂利採取の実態とその問題点
砂利・海砂利の生産が急増した。1973年度には,河川砂
戦前の骨材生産に関する全国的な資料はないが,第
二次大戦後,1950年度に4,000万㌧,1954年度に7,600
利の生産量は山砂利・陸砂利のそれを下まわり,1981年
万㌧,1965年度には35,400万㌧であったという5)。
度以降は陸・山・海・河川砂利の順となり,河川砂利の
シェアーは最近では20%を割っている。
1967年度以降については通産省推計の資料6)があり,
1965年度の値を加えてこれを表示すると,表1および図
3,
1のようになる。これによれば,骨材の生産量は1965年
砂利生産の地域性
砂利・砕石を含めて,骨材生産は2兆円産業といわれ
度から1973年度までの間に倍増したあと,第1次オイル
るまでに成長しているが,小規模な企業がきわめて多
ショック(1973年10月)の影響でやや減少したが,1976
年度からふたたび増勢を示し,1979年度には84,800万㌧
く,砂利約7,300ヵ所,砕石約1,900カ所の採取場が全国
に達した。図1に示すように,ここまでは公共事業費7)
各地に散在している11)・12)。
TabIe2
および鉱工業生産指数8)の推移とほぼ対応した生産量と
Change
of
また,骨材は付加価値の小
annual
supPly
of
grave1
単位:百万トン,カッコ内%
なっている。1980年度以降は,公共事業費撞制を反映し
年度
てか,鉱工業生産指数の増加にもかかわらず,骨材の生
産は1986年度までのところ停滞しているが,年間7億㌧
、5(ゑ3)18(2.8)
1965
以上の水準を保っている。
次に骨材の種類別にみると,1950年度には骨材生産の
計
285
262(91.9)
67
187(65.2)
28(9.8)1
43(15,0)29(10,1)
287
69
159(48、0)
56(16.9)
し
54(16・3)162(18・7)…
331
84(22,5)
86(23・0)171(19・0)i
374
113(26.1)170(16,2)1
433
84(23.0)57(15.6)
366
106(30.0)1 80(22.7)60(17.0)
353
133(35.6)
71
95%(3,800万㌧),1954年度には同じく89。5%(6,800
山砂利曄砂利1海砂利「
河∫目砂禾囁
73
110(25.4)
140(32.3)
万㌧),1965年度でも80、5%(28,500万㌧)が砂利であっ
74
107(29,2)
118(32,2)
たといわれるが9),砂利採取法の施行(1968年)前後か
75
107(30.3)
ら砂利の割合は年々減少し,1980年代に入って50%を割
76
105(30。5)
96(27.9)
り,代わって1983年度以降は砕石が骨材の過半を占める
77
115(29.9)
94(24.4)
78
115(27.4)
102(24.3)
90(21.4)
420
79
103(24.0) 114(26・5)1 123(28,6)90(20.9)
430
ようになった(表1,図2)。しかし,砕石の生産量の
うちコンクリート用は約30%にすぎず10),砂利がコンク
344
83(24・1)160(17・4)
385
94(24・4)182(21・3)
113(26.9)
1
127(3L4)i89(22・0)
405
80
89(22.0)
100(24・7)
リート用の骨材として最適のものであることに変わりは
81
80(20,9)
102(26.7)118(30.9)82(21,5)
382
ないQ
82
79(21.8)
97(26.7)
106(29,2)
81(22.3)
363
83
69(21.1)
91(27,8)
94(28.7)
73(22.3)1
327
84
64(19.9)
92(28.6)
97(30.1)
69(21。4)
322
85
57(18,3)
87(28.0)
96(30.9)
71(22,8)i
311
砂利生産に限ってこの間の推移をみると,表2・図3
に示すように,河川砂利の割合は1965年度の26,200万㌧
(約92%)から年々減少をつづけ,代わりに山砂利・陸
%
100
その他
90
80
石
砕
70
60
50
40
30
1砂1
利::
20
10
0
1965
67
Fig.2
69
Change
71
of
ratio
73
of
74
gravel
75
76
and
cruehed
一11一
77
78
stone
79
80
81
82
83
84
85
production
(11)
五條英司
さい製品であり,輸送手段としてはダンプトラックによ
Table3
Amount of river bed gravel mining by
ri▽er system(over100,000m3,1986五scal
るものが95%以上と圧倒的に多く,大消費地である東京
year)
へ千葉・茨城・栃木各県の,阪神へ瀬戸内諸県の(海)
単位:1,000㎡
砂利が供給されているのを除けば,大部分(72%)が50
採取副水系名
水系名
km以内で需給されている。さらに,資源の賦存状況に地
採取量
水系名
域差があることも加わって,骨材生産にはいちじるしい
天塩川
石狩川
309
地域性がみられる。以下,砂利生産について,地域的特
鵡
川
191
徴を概観してみる。
沙流川
歴舟川
149
十勝川
北上川
383
阿賀野川
429
信濃川
阿武隈川
525
姫
川
274
渡
雄物川
最上川
203
黒部川
早月川
228
384
393
常願寺川
452
神通川
298
筑後川
球磨川
大野川
大淀川
庄
川
228
手取川
192
3−1河川砂利生産の地域性
河川砂利は,砂と砂利の割合がコンクリート用として
の細骨材と粗骨材の比率に近い(同一河川でも上流と下
流とで粒度組成や円形度の相異はあるが)上,品質がよ
く,古くから利用されてきたが,1968年以降は砂利採取
那珂川
利根川
相模川
富士川
法にもとづくきびしい規制のもとで採取されている。
この中で,1986年度に10万㎡以上が採取された41水系
の採取量は表3・図4のとおりで13),採取量の多い河川
は本州中央部に集中している。これらの大水系は2以上
785
122
3,110
331
2,164
安倍川
大井川
天竜川
矢作川
木曽川
淀
川
215
685 新宮川
2,046
玉79
1,075
111
江川「116
周布川
145
吉井川
638 吉野川
2,585
仁淀川
1,753
125
採取量
ハ1
川
内
173
368
137
128
226
119
167
190
1旺
137
の府県にまたがるものが多いので,河川砂利採取量は都
道府県別に集計されてはいないが,表4に示すように,
関東・北陸・中部の3地方で全国の河川砂利生産の約65%
を占めている。このことは,本州中央部の標高2,000〜
匙000mの山地が河川砂利の主な供給源であることを示
百万トン
260
240
220
200
180
% 笏/・も
160
140
120
/
100
//、
/レ!
!ク
80
1!
/〆
/、/
鴨、
一\、
、¥
\
\一プク1
¥ \.竺砂租一/
!−
¥、
㌔一一\、ぐ
、、
ノ〆グ
40
!ノ
!/・
//
/
1965
、ρ一
〆フク
ノ。4!
ノ
∫7
、/
67
69
71
Fig。3
(12)
\
\
グ 海砂利
一一〆乙一−一一一一一一一、、、
60
20
\
73
Change
of
74
annual
75
76
supPly
一12一
77
of
78
grave1
79
80
81
82
83
84
85
砂利採取の実態とその問題点
ある。
している。
全国的に河川砂利のシェアーが低下している中で,河
西日本では,一変して砂利生産の大部分を海砂利が占
川砂利に恵まれた地域の例として,長野県の南信地域と
めている。これは,河川砂利の供給量がもともと少なく,
新潟県の中越地域をあげることができる。天竜川中・上
骨材需要の増加に対処するためその供給源を海砂利に求
流域にあたる南信地域では,1986年度の骨材生産量のう
めるようになったためである。とくに,山口県を除く瀬
ち66。5%(139万㎡)が,また中越地域のうち長岡・小
戸内海沿岸の諸県と,北九州・南九州で多くの海砂利
(砂)が採取されている。
千谷・十日町・津南を含む信濃川流域では,1986年度の
以下,次章から各種砂利採取の実態を・若干の具体例
骨材生産量の53・6%(150万㎡)が,河川砂利で占めら
についてみていくことにする。
れている14)。
3−2
陸砂利・山砂利・海砂利生産の地域性
4.
河川砂利の採取
陸砂利は,最近の時代に河川の作用で堆積した砂利で
4−1 天竜川
天竜川水系の河川砂利採取量は,年間200万㎡をこえ・
あり,河川砂利に匹敵する品質をもつが,礫の風化がや
や進んでいる場合があり,シルト分が混っていることが
全国河川中第4位にあたる(1986年度,図4)。
多いので,製品化には水洗・選別を行う必要がある。
山砂利は,更新世ないし鮮新世末に主に河口部または
天竜川中・上流域の長野県南信地域では,主として天
浅海底に堆積した砂で,陸砂利より地質的に古いために
竜川本川の直轄工事施工区間(大臣管理区間)について
風化が進んでいることが予想され,シルトや貝殻を含み,
は建設省中部地方建設局天竜川上流工事事務所による砂
粘土層を挾むこともあるので,十分な水洗を行い,また
利採取規制計画が1965年度以来5年ごとに実施され,
コンクリート用には粒度補正(他の砂利との混合)をす
1988年度からは第5次規制計画に着手している。計画の
範囲は,伊那盆地北端の辰野町昭和橋から長野・静岡県
る必要がある。
境までの本川(約109㎞)と,支川の横川川(合流点か
海砂利は,賦存量はかなり多いと考えられるが,塩分
ら0.2㎞)・三峰川(同8㎞)・大田切川(同2㎞)・小渋
や貝殻その他の有機物を取り除く必要がある・また海浜
砂も分類上海砂利に含められるが,海岸保全のため採取
Table4
Amomt
of
river
bed
district(1986五scal
規制が強化されている。
gravel
単位:1,000㎡
陸砂利・山砂利・海砂利の採取量は,砂利採取法の施
地方別1
行以来,通産省生活産業局により毎年度都道府県別に集
計されている15)。1986年度におけるこれらの採取量は表
北
道
近
畿
5・図5のとおりで,中部以東と近畿以西とで明らかな
東
北
1,887(7.3)
中
国
関
東
6,067(23。5)
四
国
北
陸
5,268(20,4)
九
川
中
部
5,363(20。8)
違いがみられる。すなわち,中部以東では陸砂利と山砂
利が主体であり,関東以北や東海の諸県では,千葉県を
筆頭として山砂利がかなり採取されている。また,京都
by
カッコ内%
採取量1陣方別 採取量
2,803(10.8)
海
mining
year)
計
1,607(6.2)
643(2.5)
918
(
3.6)
1,266(4.9)
25,823
一・二級水系の採取量の合計。
地方区分は,河口の所在による(富士川は関東)。
府は,近畿地方にあって唯一の砂利(山砂利)生産地で
千雌
4000
3000
2000
1000
川大大球筑渡仁吉周吉江新淀早手庄神常黒姫信阿木矢天大安富相利那最雄阿北歴十沙鵡石天
内淀野磨後淀野布井の宮
月取通願部濃賀曽作竜井倍士模根珂上物武上舟勝流狩塩
川川川川川川ノ[[川川川川川川111川川川寺川川川野川川川川川川力i川川川川隈川川川川川川ノIl
川
Fig.4
Amo皿t
of
river
bed
gravel
川
mining
by
river
一13一
川
system(over100,000㎡,1986五scal
year)
(13)
五條英司
Table5
Amount
of
gravel
mining
except
river
bed
gravel
by
prefecture(1986五scal
year)
単位:1,000㎡
都道府県
北
海
道
2,624
青
森
1,072
岩
手
秋
96
田
1,431
山
形
福
島
茨
城
栃
木
千
葉
神
奈
陸砂利、 海砂利
山砂利
14,002
933
933
812
1,166
0
76
27
221
2,253
愛
三
16,928
山砂利
1,251
17
1,066
1,161
9
0
1,700
京
都
1,906
0
20
2,988
岡
広
香
愛
高
福
長
大
宮
鹿 児
沖
山
島
川
媛
知
岡
崎
分
崎
島
縄
15
全
計
1,714
999
3,561
0
446
1,454
潟
3,900
4,470
山
0
1,634
石
川
1,313
1,064
長
野
岐
阜
静
岡
204 L102
418 2,375
4,689
921
83
0
0
0
0
0
32
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
466
0
0
84
0
0
0
2,730
1,810
4,113
3,561
19,755
2,366
8,403
1,634
2,4611
1,306
国
88
0
11
5
0
671
90
0
21
775
0
0
0
20
120
0
328
0
0
0
2,793
5,610
陸砂利
知
重
1,537
川
新
226
計ll都道府県
1,595
2,946
19,755
その他
45,830
791
125
48,105
海砂利
計
その他
52
115
0
175
,
0
0
01
0
5,393
3,947
1,496
2,341
1,994
5,408
3,958
5,340
15
5,361
3,780
01
0
0
0
0
3,780
1,961
3,505
4,146
2,630
1,270
3,295
4,146
2,282
2271
0
2,880
1,190
36,821
1,002
1
2,156
懲
131,946
1,000千㎡未満の都府県については省略。
千ma
20000
19000
へ
へ
一
器
く
園山砂利
・6…
l
□海砂利
l
会
︿︿︿︿ ︿︿︿
(いずれも500千m・以上のものを表示)
器
P
器
父
︿︿︿︿ ︿︿︿︿
器
目陸砂利
1
〈
︿︿
︿︿
器
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈
器
A
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈
0
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈
〈 〈
〈 〈
〈
■申鹿宜 ヲいムb.「姜俳ネ豆一一懸呑循 r rた臣荊自」自L乗
沖鹿宮大熊長佐福高愛香徳山広岡島鳥和奈兵大京滋三愛静岐長山福石富新神東千埼群栃茨福山秋宮岩青北
縄児崎分本崎賀岡知媛川島口島山根取歌良庫阪都賀重知岡阜野梨井川山潟奈京葉玉馬木城島形田城手森海
⊥.
島
Fig.5
(14)
Amount
山
of
gravel
mining
except
川
river
一
bed
14一
gravel
by
prefecture(1986Hscal
道
year)
砂利採取の実態とその問題点
川(同2㎞)である。本川の南部では,天竜峡(県境の
砂利採取実績は表7のように,南信地域全体で104万㎡
北約39㎞)の下流側に,1935年以降建設された中部電力
余(うち,釜無川分約3万m3。ほかに陸砂利48万㎡)と
の泰阜ダム(県境の北26・5㎞)と平岡ダム(県境の北
なっている16)o
同協議会では,毎年3月に翌年度の骨材需要量を調査
11。2㎞)があり,河道はこれらのダム湖となっている。
この地方では,1961年6月の長野県南部の集中豪雨に
し,これにもとづいて各許可機関が許可量と採取地を決
より,流域に山崩れ・土石流が発生し,沿岸の低地は洪
定している。採取許可申請は業者の組合(南信地区砂利
資源開発協同組合)が行い,許可期間は半年としている
Table6
Amount
of
水に見舞われた。とくに天竜峡
river
bed
上流側の飯田市川路地区では,
annual
gravel
mitted
mining Per−
by the Up−
泰阜ダムの影響で河床が上昇し
(ただし,ポンプ船によるダム湖堆砂の採取については
四半期)。
per Tenryu River
O伍ceンMinistry of
Construction
単位:1,000㎡
ていたことが被害を大きくした
この災害の影響もあって,砂
効貯水量の80%が埋没している。堆積物は砂利と砂が半
年
利採取許可量は第1次・第2次
々という)や支川の小渋・美和ダム湖の堆砂の採取に既
存の道路が使えること,急流支川が搬出する礫の採取が
第
度
南信地域全体としては,泰阜・平岡両ダム湖(ともに有
といわれる。
許可量
1965
546
規制計画では多かったが,その
66
680
後は漸減している(表6)。ま
砂防上の効果を兼ねること等から,前述のように河川砂
67
714
た,第3次規制計画(1978年よ
利に比較的恵まれた地域であるといえよう。
68i
次
730
69
924
70
1,021
71
1,146
第
72
次
74
第
75
649
次
延
76、
423
77
538
78
237
79
297
80
81
次
82
第
83
84
322
851
300
86
265
伸
第
四
次
峡の上流約6km)より上流側は
の管理区間であるが,秋葉ダム湖の堆砂の採取のほかは,
採取禁止区間となった・第5次
海岸保全等との関連から,原則として砂利採取禁止区域
規制計画では,平岡ダムから天
となっている。
竜橋まで(延長約27.4km)のダ
4−2
ム湖堆砂だけが規制計画による
大井川・安倍川の下流部は,いずれも駿河湾に臨む扇
採取対象となり,許可予定量は
Table7
大井川の下流部では,1960年頃から急増した砂利採取
このほか,支川の小渋ダム湖
により,河床の低下が顕著にあらわれるようになった。
・美和ダム湖の堆砂については
松本繁樹氏によれば,1958〜1963年の砂利採取量は,許
241
天竜川ダム統合管理事務所が,
可量(表8)の少なくとも2倍と推定され,1963年度の
154
県管理の各支川については飯田
平均河床高を1955年度のそれと比較すると,河口から23
193
・伊那・諏訪の各県建設事務所
㎞までの平野部のすべての地点で低下(最大73・6㎝・最
が,採取許可を行っている。
小1.6c皿,平均33.5c皿)が認められた17)。
278
12,G44
南信地区骨材対策協議会(国
・県の関係機関および関係業界
1986年度中の許可機関別の河川
砂利採取法の施行以来,採取はきびしく規制され,
1974年度からは河口から24kmまでの直轄工事施工区間に
Table8
Amount of river bed gravel mining permit−
ted by valious agencies(Upper Tenryu Ba−
sin,1986fiscal year)
単位:1,000㎡
名
許可量
建設省天竜川上流工事務所
212
機
関
天竜川ダム統合管理事務所
長野県飯田建設事務所
〃
伊那建設事務所
〃
諏訪建設事務所
計
大井川・安倍川
状地を形成している。
各年度35万m3となっている。
の代表で構成)の資料によれば,
1965〜86計
なお,天竜川の平岡ダムより下流側は浜松工事事務所
り)から,時又の天竜橋(天竜
863
758
775
73
〃
諏訪地区では一部を釜無川の砂利に依存しているが,
209
備
考
小渋ダム湖
146 美和ダム湖
179
187
111 釜無川分29を含む
1,044
年
Amount of annualτiver bed gravel mining
permitted by the Shizuoka River OfEce,
Ministry of Constmction
単位:1,000㎡
度
許可量li年度 匿可量
1958
127
1970
655
59
204
72
499
60
584
74
145
61
694
76
351
62
765
78
399
63
805
80
0
82
0
1963年度までの実採取量は,許可量の少なくとも2倍と推定
される。1970年度以降は,
一15一
「河川便覧」による。
(15)
五條英
ついては,特定採取制度による砂利採取のみが行われて
司
採取量はこの2倍近いものと推定された18)。
いる。特定採取制度とは,河川管理上の対策工事費を砂
安倍川では,1968年以降,年間の採取許可量は,直轄
利採取業者側が負担することを条件として,採取を許可
工事施行区間に限ればわずか1万㎡以下となっており・
するものである。業者の組合(大井川陸選プラント協同
ここ数年は,年間8,000㎡の手掘りによる採取が細々と
組合)と建設省地方建設局長との契約にもとづき,建設
行われているにすぎない。
省(静岡河川工事事務所)が受託して行う低水護岸工事
とあわせて,業者が砂利を採取する。現行の計画(1985
5.
〜1989年度)では,1985・1986年度は各30万㎡,1987〜
1989年度は各25万㎡を採取許可量としている。
陸砂利の採取
陸砂利は,河成の沖積平野を掘削して,表土の下に存
在する砂礫層から採取するものであり,採取にあたって
一方,静岡河川工事事務所の調査による1952年以降の
は砂利採取法にもとづく許可申請に先立って,地権者と
平均河床高の変動状況図を・河口から5・10・15㎞の3
の契約の締結,農地委員会への農地一時転用手続き等が
地点について示すと図6のとおりである。1960年前後に
必要である。
急激に低下した河床高は,やや回復しつつあるようにみ
える。
陸砂利の採取は,表土の剥ぎとり・集積,その下の砂
礫層の採取,別の場所で採取した土砂による掘削跡の埋
安倍川下流部においても,松本繁樹氏は,1954〜1964
め戻し,表土の被覆・整地,原状復元という順序で行わ
年の間に,河口から17㎞までの全地点で認められた平均
れる。採取業者と地権者との契約には,休耕補償料のほ
河床高の低下(最大197㎝,平均90㎝)の主因が,やは
り砂利採取にあることを論じた。1960〜1964年度の砂利
阿
採取許可量は約460万㎡(年平均90万㎡)であるが,実
0
2男
5.Okm地点
0
1.0
幾ゆ
0
0.0
もδ◎
0950
。
一1.0
52545556575859626364656667686970717273747576777879818285
m2.0
。側く}
96
五泉市ρ郵?.一。
10.Okm地点
0
o
1。0
熱σ、
蒲
0
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醗
原
52545556575859626364656667686970717273747576777879818285
1952545556575859626364656667686970717273747576777879818285
$摯幡
道
m2,0
q何
村松町
15.Okm地点
塾
齢爵
鉄
一1.0
磐越領縁
1.0
巳陸砂利
序採取地
◎亀 5
0.0
面巡
一1.0
0
5254555657585962636465666768697 72
1952545556575859626364656667686970717273747576777879818285
Fig,6
Change
ing
lower
(16)
the
of
averaged
averaged
stream
of
Oi
river
height
bed
1
34㎞蕊閉丘陵
2
height(assum−
in1967as
O.Om,
Fig.7
Location
1969)in
River)
一16一
of
alluvial
land
the
Agano
River
gravel
Plain
mining(since
砂利採取の実態とその問題点
か,業者が最後に行う耕地の区画整理・代かきまで含ま
が開通したところである。
ここで,A社が34人に及ぶ地主と契約して,1987年度
れるのがふつうである。
これまでに栃木県の鬼怒川沿岸低地,埼玉県の荒川扇
から5力年の予定で(採取許可申請は毎年提出する)陸
状地,三重県の員弁川低地等における採取について報告
砂利採取を開始した。休耕補償料は,10アールあたり18
したが19),ここでは新潟県の阿賀野川低地,秋田県の雄
万円という。表土(厚さ0.3〜1.Om)下の砂礫を深さ5
物川上流低地および長野県松本盆地における陸砂利採取
mまで採取し,埋戻し・表土被覆・整地のあと,80×20
mに区画整理し,5月上旬の田植前と秋の稲刈後の2度
の事例をとりあげる。
5−1
代かきをする契約になっている。換地は,地主側にまか
阿賀野川低地
阿賀野川は,五泉市の東方で新潟平野に出て,支川の
されている。
早出川を左岸に合流するまでのところに,扇状地・自然
埋戻し用土砂の採取地は,西側の丘陵(中新統砂層)
堤防・氾濫平野等を形成している。自然堤防上に集落が
にある。砂利プラントは,ここより約2㎞下流にあり,
発達するほかは,大部分が水田地帯となっている。
製品は65%以上が玉石で,他は砂利と砂が半々であると
新潟県では,砂利生産量1,075万㎡20)のうち陸砂利が
いつ0
最も多く447万㎡21〉(41.5%)を占めているが,この地
5−3
域は陸砂利の主産地の1つとなっている。図7は・1969
長野県のうち,松本盆地を中心とする中信地域は,陸
年頃から現在までの,この地域の陸砂利採取地を示すも
ので,支川の早出川沿岸では扇状地に,本川の周辺では
松本盆地烏川扇状地
砂利生産の比率が最も高いところである。
盆地中央部の西縁から流出する鳥川扇状地の扇頂やや
主として氾濫平野に分布している。現在,年間約30万㎡
下方の左岸に,大規模な陸砂利採取地がある。現場は・
の陸砂利を採取している。
平均傾斜1/20〜1/25の扇状地でかなりの起伏があり,低
この地域では,地権者との契約事務を業者の組合(阿
所は水田になっているが,高所から上流(西)側にかけ
賀野川砂利採取販売協同組合)が代行しており,10アー
ては桑畑になっている。1950年代に水田区画整理が行わ
ルあたり休耕補償料は40〜50万円といわれる。新潟県で
れたが,1963年以降の圃場整備はここまでは及んでいな
は,1987年度より減反休耕田での陸砂利の採取も認めら
い0
れるようになった。契約期間は1年で,4月〜3月がふ
1986年度から,ここの陸砂利をK社が採取している。
つうであるが,9月〜8月(稲刈り直後に着工)のケー
対象面積は,初年度に約6万㎡,1987年度は約19万㎡で
スもある。
あった。契約期聞は1年または半年(10〜4月)ごとで・
採取は,表土(厚さ約1m)の下約8mまで許可され
休耕補償料は10アールあたり,1年の場合60〜65万円・
ているが,旧河道等地下水面が浅いところではそこまで
採取できない。埋め戻し用の土砂は,北東方の丘陵地
半年の場合40〜45万円といわれる。長野県でも・減反休
耕田からの陸砂利採取が認められている。表土厚は平均
(鮮新・更新統)の山林所有者から業者が購入する形で
1m強で,地表面の高いところ(砂礫堆)をより多く掘
採取するものが多い・笹神村の村有地(30hq)の土砂を
削して平坦化し,表土を被覆した上,区画整理を行う。
業者が共同購入したところでは,村が跡地を運動公園と
埋戻しは行わず,扇状地原地形の起伏が解消されるとこ
して造成している。
ろが,通常の陸砂利採取と異なっている。
阿賀野川本川の右岸,安田町新保地区の採取現場では,
ここから北東方の水田地帯の中に,丁社の小規模(数
製品は砂3,砂利3,玉石4の割合といわれる。また水
十アール)な陸砂利採取地がある。水田地帯の中に荒地
洗工程で沈澱したシルト分は,壁土として利用されてい
として残されていたところで,深さ10mまで掘削された
る。
断面をみると,表土はほとんどなく,約5m下にうすい
5−2雄物川上流低地
シルト層がみられるほかはことごとく礫層で,人頭大の
秋田県の横手盆地では,北部の仙北・大曲および南部
玉石も混っている。ここでは通常の埋戻し方式であり・
埋戻し用土砂は,南東方の筑摩山地山麓部にある社有地
の雄勝・湯沢地域が,陸砂利の生産地となっている。
横手盆地南端からさらに南に入った役内川(雄物川上
で採取するということであった。
流)左岸の谷底平野に,面積137,000㎡の陸砂利採取地
がある。これまでは未整理で農道もなく,農業機械も入
らない水田であったが,最近になって国道13号バイパス
一17一
6。
山砂利の採取
山砂利の採取は,直接的な地形改変を伴うことから,
(17)
五條英
防災および環境保全のための採取跡地の処理と,さらに
司
計画」が,これをうけて1983年,砂利採取業者の組合
大規模な跡地の場合はその跡地利用が問題となる。
(近畿砂利協同組合)も参加した山砂利対策連絡協議会
これらの問題については,わが国最大の山砂利産地で
により保全整備計画および修復整備計画がまとめられ
ある千葉県君津地域および京都府城陽地域について,す
た。跡地利用計画については,ひきつづき検討すること
でに論じたところである22)。ここでは,城陽地域におけ
としている。
る跡地処理・利用についての追跡にとどめる。
この修復整備計画(事業期間は15年を目途とする)の
城陽地域は,京都府宇治市の南方に拡がる標高200m
実施主体となる第三セクターを1988年度中に発足させる
以下の丘陵地帯で・京阪地域への砂利供給源として,
べく,最近,京都府および城陽市においてその出資金の
1968年以降だけでも2,000万㎡以上の山砂利が採取され,
予算措置が講じられた(ほかに近畿砂利協同組合も出資
10年後には山砂利は取りつくされるものとみられる。現
する)。第三セクターの事業は,採取跡地の埋戻し・整
在13の業者によって採取されていることもあって,垂直
地,防災施設の整備,道路整備,緑化等である。当面の
に近い急崖,沈澱池・埋戻し池,残存する保安林・砂防
課題としては,
指定地などが複雑に交錯した特異な地形を呈している。
a)跡地利用計画を確立すること(これは,保安林約
このため,今後10年聞は継続される砂利採取からその終
85hαの解除申請のためにも必要である)
了後までを通じた,適切な防災・環境保全・跡地利用等
b)当面は,業者の関心が,あと数年ないし10年は継
の対策が急務となっている。
続される砂利採取の方にあること
1982年に,京都府山砂利対策会議(京都府・城陽市の
c)大部分(民有地418hαのうち349hα)が業者の所有
関係者で構成)においてr山砂利採取に係わる全体整備
地となっていることから,施設の設置・土地の一部提供
げ
⇔
O小呂島
大島
、
地ノ島
心
目
々
鉢相ノ島
目
、
玄界島
9
・烏帽子島
志賀島
能古島
ら博多湾
姫島
o
Fig.8
(18)
0
Location
of
sea
bottom
sand
dredging
一18一
in
5
the
sea
near
10
Hakata
15km
砂利採取の実態とその問題点
等に際して業者間の調整が必要であること
各6社が加盟する博多協同組合は,博多港の東浜新埠頭
d)城陽市の地下水源となっていることから,地下水
への影響を防止すること
に近代的な砂利プラント(面積39,600㎡)を有している。
以下,博多組合の海砂採取について述べることにする。
e)一般市民に対して情報を公開し,理解を得る必要
があること
福岡県では,海岸保全の立場から,海砂の採取地を西
部で水深35m以上・距岸4㎞以上,中部で水深40m以上
等があげられている。
・距岸5km以上,北部で水深45m以上・距岸6㎞以上と
7,
規制するとともに,1980年度以降毎年度の海砂採取枠を
海砂利の採取
海砂の採取については,その先進地といわれる瀬戸内
海沿岸の香川県と,北九州の福岡・長崎両県について調
550万㎡(うち,博多協同組合分は約240万㎡)としてい
る。1986年度の採取実績は,県全体で約330万㎡,うち
博多協同組合分は200万㎡弱であった。
査した。
7−1
博多協同組合の採取場は,博多湾外の大島・小呂島・
香川県
鳥帽子島を結んだ範囲内の玄界灘にある,水深約40mの
瀬戸内海沿岸諸県のうち,香川県は岡山県と一二を争
う海砂生産県である。香川県の海砂採取は1960年頃から
5地区(いずれも1㎞平方位)で,博多港から30〜45㎞
の距離にある(図8)。
始まり,1965年頃から本格化した。1978〜1979年の年間
700万㎡前後をピークに,やや減少しているが23),1986
年度の生産量は534万㎡となっている。
海砂採取にあたっては,漁業協同組合と契約を締結し
(共同漁業権の設定されていないところでも必要),砂
利採取許可を県へ申請する。また,一般海域等管理規則
海砂の採取地は,西部の塩飽諸島から中部の直島諸島
による許可を県港湾課へ,共同漁業権が設定されている
の近海にかけて散在する18地区で,水深は20〜30mであ
ところ(小呂島地区のみ)では県条例による岩礁破砕等
る・海砂の採取にあたっては,採取業者の協同組合と関
の許可を県漁政課へ,それぞれ申請することになってい
係漁業協同組合との間で漁業補償を含めた契約を締結
る。漁業補償料は,砂1㎡あたり200円前後である。採
し,6カ月ごと(4〜9月と10〜3月)に県へ採取許可
取許可期間は6カ月で,1〜6月と7〜12月の2回に分
を申請するほか,国有財産法にもとづく生産物採取許可
けられている。
申請書を提出する。また,航行安全法による作業届を作
業開始1カ月前に海上保安部へ提出することになってい
るQ
採取船は,かつては自航船のみであったが,現在はク
レーンと選別機を備えた大型のプッシャーバージ25)6隻
(うち4隻は総トン数1,200〜1,900トン,乗員6〜8人,
採取船は県内に約60隻あり(うち,業者の保有するも
のは10隻以下,他は船舶業者からのチャーター),積ト
組合員所有とチャーター)が主力となっている。採取地
がやや遠く,船速が遅いため・日の出の2・5〜3時聞前
ン数は最小250〜300トン,最大800トン程度である24)。
に出港し,2・5〜3時間で海砂を採取し,11時頃には帰
サンドポンプにより採取した海砂は船内で飾分けられ,
港する。砂の陸揚げには,4時闇位を要する(毎時400
貝殻等が除かれる。砂の粒径は,最大約3㎜,平均1㎜
〜500㎡)。
弱である。除塩は,接岸した船内に岸壁にあるタンクか
プラントには選別機(能力600トン/時)3基があり,
ら撒水して行われる。使用水量は,砂の重量の1/3程度
接岸したバージからクレーンでホッパーに搬入され,10
という。製品は50%が県内,50%が県外(主として大阪
方面)へ出荷されている。
9・8・7㎜の飾で自動選別される・除塩は,約5,000
㎡の砂を円錐状に堆積した上に,60〜80トン/時の工業
この海域での海砂採取の今後の見通しとなると,海砂
用水をノズルで延30時間撒布する。地下に排水パイプが
そのものは塩飽・直島諸島周辺の海底に賦存すると考え
あり,排水升から排水される。撒水開始後6時間で排水
られるが,漁業権・航路安全等の関係から,現在の採取
が始まり,排水完了後40時間放置して砂を乾燥させる。
区域を拡大することはあっても,新規の採取地を設定す
塩分の規制値は,含有率0・02%(1986年建設省)とさ
ることは困難とみられている。
れており・試験の結果,そのために砂1㎡あたり0・5ト
7−2福岡県
ンの水が必要とされている。この組合ではさらに,出荷
福岡県でも海砂採取の歴史は古く,1960年頃から始ま
った。現在,県内の海砂採取業者の大部分は,博多また
の際,毎日2時間おきにサンプル5009を抜きとり,塩
分含有量を試験して,万全を期している。なお,アルカ
は北九州の協同組合に属している。採取業者・販売業者
リ骨材反応対策についても,1986年末から年2回試験機
一19一
(19)
五條英
司
去)は船上で行い,除塩も船上で真水をかけて行ってい
関に委託して,試験を行っている。
るものが多い。
製品の販路は福岡都市圏で,1977年末から共販体制が
とられている・用途は,生コンクリート用50%弱,二次製
長崎県の場合,本格的な除塩は長崎港に立地する大手
品用20%左官(モルタル)用20%等となっている・ま
の生コンクリート会社が行っている。R社では,岩壁の
ホッパーに陸揚した砂をコンベアーで骨材サイロ(425
た,選別された貝殻は,水田の暗渠用に利用されている。
㎡のものが3基隣接する)に搬入し,砂1㎡あたり0・5
7−3長崎県
長崎県での海砂採取はやや新しく,1974年頃から本格
トンの水をノズルから3。5時間撒水し,24時間放置して,
的に開始された。現在,壱岐・五島を含めて沿岸一円で
鑑分含有率を0・02〜0・04としている。用水には上水道を
海砂採取が行われ,採取地は35ヵ所(1986年度)を数え
使用している。
る(図9)。水深は45〜80mと深く,長崎周辺では60m
N社は,コンクリート壁で3方を囲んだ除塩ヤード3
である。長崎県砂利採取販売業協同組合に属する24の業
基(各6QO㎡)を備えている。砂は,接岸した船から一
者のうち,2/3が海砂採取に従事している。1986年度の
たん陸揚げ・野積みされ,ダンプトラックで除塩ヤード
海区別の採取量は・表926)のとおりである・このうち・
ヘ搬入される。ヤードの天井からノズルで毎時1トンの
とくに壱岐周辺の海砂は珪質で,良質といわれる。
割で撒水し,24時間以上放置する。砂600㎡に対し,88
〜99トンの水を使用している。排水は,ヤードの底盤か
漁協との契約期間は6カ月がふつうであるが,有明海
ではノリ養殖との関係で3カ月のこともある。漁業補償
らネトロンパイプ・排水升を通じて海へ放出される。同
料は砂1㎡あたり100〜200円という。県の採取許可期間
社では,裏山に専用の水源井戸を3本保有している・
も,この契約期間に応じて6カ月または3カ月となって
8.
いる。
骨材生産に伴う地形改変と砂利採取の問題点
8−1骨材生産による地形改変の規模と特徴
五島・壱岐・平戸等,採取地が遠い場合は,福岡県と
同様,大型のプッシャーバージ(最大積載2,000㎡)が
骨材のうち,海砂利を除いて,河川砂利・陸砂利・山砂
使用されるが,往復に8〜9時間もかかるため,夜間に
利ならびに砕石の生産は,いずれも陸地の地形改変を伴
往復し,日中に採取することになる。選別(貝殻等の除
うものである。このうち,陸砂利の採取にあたっては,採
取地そのものの地表面は原状どお
りに回復されるが,別の場所で同
o
舗・
量の埋戻し用土砂が採取される。
表1・表2から,最近10年間
o
謁・
《》
が
慶
(1976〜1985年)の海砂利以外の
年平均骨材生産量を求めると約
9
a
68,700万トンとなる。これを体積
,,塾
に換算すると,約4。3×108㎡とな
浅
り(1.6トン/㎡とする),全国の
轟
面積(3.75×105雌)でこれを除
すると,約1.1x103㎡/k孟ッとな
、
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bottom
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sea
一20一
of
dregding
sea
単位;1,000㎡
区
海
長崎半島周辺
その他(平戸,五島等)
Nagasaki
採取量
2,430
西彼杵半島西側
有明海(島原半島沿岸)
near
bottom
(Nagasaki
壱岐
e
Prefecture
(20)
Amount
Prefectme,1986五scalyear)
。橘湾
e
in
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sand
海
o
304050km
Fig.9
Table
明
湾も.
e
麟,m,,
\
計
553
532
506
133
4,154
砂利採取の実態とその問題点
る。このほかに,砕石生産以外の石材および工業原料用
年末の堆砂量は8.25億㎡(13,2億トン)で,1985年末に
としての採石が,採石量全体の約29%(砕石生産量の約
はこれが19億㎡(30億トン)に達すると推定された。こ
4割)を占めており27),これも地形改変に関与してい
のうち,中部地方のダムで37%を占め,堆砂量の70%
る・したがって・上記の数字1,1×103㎡/k㎡・yは・田村
は発電ダムのものである。これらのダムの年聞堆砂量は
俊和氏等が推定した1960年以降20年間の住宅用地・工業
4,550万㎡(7,300万トン)という膨大なものであるが,
用地・農用地・ゴルフ場等の造成に伴う全国平均のr広
現実にダム堆砂を採取している112ダムの年聞採取量は
域土量移動速度」(1〜2)x103/k丘y28)にほぼ匹敵するも
300万㎡(480万トン)程度と極端に少ない31)。これに
のといえる。
は,前述の天竜川のようなケースとちがい,交通不便な
また,骨材生産量のうち,1980年度以降は43〜48%が
山聞部にあるダムが多いことのほか,沈木処理の技術,
砂利(海砂利も含む)であり,残りの96%以上すなわち
水洗による廃水・廃土の処理,採取した砂利の輸送等,
骨材生産の50%前後(1983年度からは50%以上)が砕石
解決すべき問題が少なくない。
となっている(表1)。一方,骨材需要のほぼ2/3はコン
クリート用と推定されている29)ので,砕石生産量の約30
%と砂利生産量のほとんどすべてがコンクリート用であ
河川砂利の入手は,とくに恵まれた地域を除けば,今
後も次第に困難になっていくものと思われる。
b)陸砂利
り,道床用や鉄道路面用にはもっばら砕石が利用されて
陸砂利の採取には,掘削跡の埋戻し・後処理が適切で
いるものと考えられる。いずれにしても,各種用地の造
あれば,田床の礫層が改善され,公費の補助も地権者の
成による地形改変が原則として土量の移動すなわち掘削
受益者負担もなしに,圃場整備事業と同じ土地改良が達
と埋土による改変であるのに対して,骨材の生産による
成されるという一石二鳥の効果がある。しかし,採取業
地形改変にあっては,原地形を構成する地層・岩石が一
者にとっては,このことが陸砂利の生産費を高めること
方的に掘削され・その生産物がコンクリート工作物その
になっている。
他の構造物に形を変えるところが,大きな特徴であると
陸砂利の賦存する平野はかなり広く,賦存量もかなり
多いと推定される。河川砂利の採取規制が強化されると
いえる。
8−2各種砂利採取の問題点と展望
ともに,大河川周辺の農地では,河川砂利と匹敵する品
前節までに,各種砂利採取の現況を不十分ながら考察
質をもつ陸砂利の採取が意図されている。しかし・採取
してきたが,最後にこれらに関する問題点を含めて述べ
適地となると,市街化の影響が及ばず,需要地からあま
てみることにする。
り遠くない水田地帯で,しかも位置的・自然的条件から
a)河川砂利
圃場整備事業の対象とならないところという制約があ
建設用骨材としての品質にすぐれ,古くからその主役
となってきた河川砂利は,骨材需要が年間7〜8億トン
る。圃場整備事業が最近10年以内に施工されたところで
は,農地の一時転用が許可されないからである。
に伸びた現在,そのシェアーがいちじるしく低下してい
陸砂利の採取適地があったとしても,複数の地権者
る。砂利採取法施行以来の規制措置により,1960年前後
(耕地所有が細分されている場合はとくにその数が多
に多くの河川で問題となった河床低下は,一応くいとめ
く,その所在がわからないことさえある)の同意をとり
られたように思われる。
つけ,契約にいたるのは容易なことではない。陸砂利の
建設省は,1974年4月,r河川砂利基本対策要綱」を
改訂し,特定採取制度の採用,ダム堆砂の開発促進等に
よって,年間約1億トン(約6,250万㎡)の河川砂利の
採取地を将来にわたって確保しつづけていくことにも,
困難が伴うと思われる。
また,陸砂利の採取は,集落に近接する平野で行われ
確保を図ることとした30)。しかし,1980年度以降,河川
ることが多いため,農地や周辺住民に対して,採取場・
砂利の採取量は1億トンを下まわり,年々減少の傾向に
砂利プラント・ダンプトラック等から生ずる騒音・振動
ある(表2,図3)。
・粉塵・交通事故等の公害に対する配慮がとくに要求さ
特定採取については,採取業者側が負担する対策工事
れる。
費の高騰,立地条件(工区の遠隔化)等もあり,この制
c)山砂利
度による採取量には限界があるように思われる。
山砂利は,粒度・強度・比重等の品質や,シルト分・
ダム湖堆砂については,建設省が1978・79年度に行っ
た調査によると,総貯水量100万㎡以上の425ダムの1977
有機物等の介在等,産地によってかなりの差異があり,
単独でコンクリート用骨材に適さない場合には,他の骨
一21一・・
(21)
五條
英
司
材と混合して利用される。また,需要地との距離・地形
設定海域が多く,海上交通が頻繁な瀬戸内海では制約が
等によっても採取適地が限定されるほか,保安林・砂防
大きいが,北九州近海等ではある程度可能であると考え
指定地等の制約もある・骨材の需要地である大都市圏内
られる。この場合,海底ボーリングによる賦存量調査,
で,台地・丘陵地の宅地化が進んでいることも・適地の
採取船の大型化,除塩設備の合理化等の投資を必要とす
る一方,海洋開発の一環として,とくに漁業開発との調
選定をむづかしくしている。
また,山砂利の採取では,採取中の災害・公害の防止
整を図っていくことも必要となろう。
だけでなく,採取終了後の防災工事や緑化等の環境保全
対策が要求される。さらに,城陽地域・君津地域のよう
に大規模な地形改変が行われる場合には,将来の土地利
本研究は,昭和62年度日本大学学術研究助成金の交付をうけ
て行ったものである。調査にあたって,統計資料を供与された
通産省生活産業局窯業建材課および資源エネルギー庁長官官房
鉱業課,現地において各種のご協力を賜った建設省天竜川上流
用計画が,きわめて重要な課題となっている。
d)海砂利
海砂利は,大部分が海底から採取されるため・陸上の
地形・環境への影響はほとんどないといえる。
工事事務所および静岡河川工事事務所,ならびに㈹日本砂利協
会をはじめとする新潟・秋田・長野・近畿(城陽)・香川・福岡
長崎の各砂利採取関係協同組合の各位に対し,厚くお礼を申し
海砂利の採取地を将来拡大してくことには,漁業権の
参
考文
上げるものである。
献・註
1)生コンクリートに混練するセメントと骨材の重量比は,
15)
1:6,4という。
2) 松尾俊郎・石渡菊平(1941)地学雑誌624
16)前述の㈹長野県砂利採石業協会資料による数字とは若干異
3)五條英司(1985)地理誌叢27−1・2
17)
4)
18)
松本繁樹(1964)地理学評論37−10
19)
前掲3)
なる。
松本繁樹(1965)地理学評論38−10
五條英司(1987)地理誌叢28−2
5) 森本伊佐夫(1984)砂利・砂を中心としたわが国骨材資源
の現状と見通し(担当官研修資料),㈹日本砂利協会p、1
20)
㈹新潟県砂利採石協会の資料による。
21)
前掲13),p.18
大蔵省主計局調査課r財政統計,昭和62年版」による・
22)
前掲4)
経済企画庁調査局r経済要覧,昭和63年版」による。
23)
香川県経済労働部商工課資料による・
24)
この海域では,船の大きさが長さ50m,幅11〜12mと制限
6)
通産省生活産業局窯業建材課推計
7)
8)
9)
前掲13),PP.17−23
骨材需給の推移
前掲5),P,1
10)山田順治(1983)セメント・コンクリートの知識,㈲経済
調査会P,142
11)前掲10),PP、167〜168
12)砂利採取場数は,1986年度に全国で6,519カ所となってい
されている。
25) 押し船によって運航する艀。
26)
長崎県砂利採取販売業協同組合の資料による。
資源エネルギー庁長官官房鉱業課(1984)採石業者の業務
の状況に関する報告書の集計表,昭和58年度 p,16
27)
る(文献13,PP.1−2)。
通産省生活産業局(1987)昭和61年度砂利採取業務状況報
28)
田村俊和他(1983),地理学評論56−4
告書集計表 PP.4−8
14) ㈱長野県砂利採石業協会および㈹新潟県砂利採石協会の資
29)
前掲6)
30)
前掲5),PP.5−6
前掲5),PP.6−7
13)
料による。
(22)
31)
一22一