電気回路学I及び演習 (第 8 回)(2016-06-07) Ex.1–A–1 【演習問題解答】 〔演習 1〕以下の問題 1∼8 は,第三種電気主任技術者試験 (電験 3 種) か 以下の解答例は,分圧・分流を含む直並列の考え ら採ったものである.なお,解答形式を選択式から記述式に改めている. 方を中心とした解き方で解いたものである.他に もいろいろな解き方がある. □問題 1.演習図 1 のような直流回路において,80 [Ω] の抵抗を流れる 電流 I [A] を求めなさい. 100 A 4 Ω (平成 13 年度 A 問題) (解答例) 電源からの電流 100 [A] は,並列接続された 3 つの抵抗 4 [Ω], 20 [Ω], 80 [Ω] に分かれて流れる (解答図 1).並列部の電流は抵抗の逆 I [A] 4Ω E [V] 比(コンダクタンスの比) に分割されるので,80 [Ω] の抵抗を流れる電流 = = 1 80 1 20 1 4 [S] [S] + 100 A 4 Ω × 100 [A] 1 [S] + 80 [S] 1 × 100 [A] = 4 [A] 20 + 4 + 1 ··· 80 Ω 演習図 1 I [A] は, I 20 Ω I [A] (答) E [V] 4Ω 20 Ω 80 Ω チェックポイント 解答図 1 □ 抵抗からコンダクタンスを計算できる. □ 3 並列以上の分流の計算ができる. □ 答えに正しい単位をつけられる. □問題 2.演習図 2 のような直流回路において,抵抗 R [Ω] の値を求め なさい. 4A (平成 9 年度 A 問題) (解答例) 電源からの電流の向きを解答図 2 のようにとる.直並列回路 (3 [Ω], 2 [Ω], R [Ω]) の合成抵抗より,この電流は次のように表される. 100 [V] 100 = [A] 2R 2R 3 + 2+R [Ω] 3 + 2+R 3Ω 2Ω 100 V 演習図 2 この電流が並列接続された 2 つの抵抗 2 [Ω], R [Ω] に分かれて流れ,こ 4A のときの抵抗 R の電流が 4 [A] であるから,次の関係が成り立つ. 4 [A] = = 100 2 [Ω] × [A] 2R 2 [Ω] + R [Ω] 3 + 2+R 200 200 [A] = [A] 3(2 + R) + 2R 5R + 6 これを R について解いて, ( ) 1 200 44 R= −6 = = 8.8 [Ω] 5 4 5 (答) チェックポイント □ 直並列接続された抵抗の合成抵抗を計算できる. □ 抵抗を用いた 2 分流の計算ができる. □ 答えに正しい単位をつけられる. 3Ω 2Ω 100 V 解答図 2 ··· R [Ω] R [Ω] 電気回路学I及び演習 (第 8 回)(2016-06-07) Ex.1–A–2 2Ω I □問題 3.演習図 3 のような直流回路において,スイッチ S を閉じてい S るとき,2 [Ω] の抵抗を流れる電流は,スイッチ S を開いた場合の電流の 3 倍であった.R [Ω] の値を求めなさい. 10 Ω E (平成 8 年度 A 問題) R 演習図 3 (解答例) 2 [Ω] の抵抗を流れる電流 I について,スイッチ S が閉じてい るときの電流を Ion ,スイッチ S が開いているときの電流を Ioff とおく. Ion これらの電流について,問題の条件より以下の関係が成り立つ. 2Ω S Ion = 3Ioff (3·0) 10 Ω E i) スイッチ S が閉じているとき (解答図 3a) 直並列回路 (2 [Ω], 10 [Ω], R [Ω]) の合成抵抗より,電流 Ion は次のよ 解答図 3a うに表される. Ion = E 2+ 10R 10+R (3·1) [Ω] R Ioff 2Ω S ii) スイッチ S が開いているとき (解答図 3b) 直列回路 (2 [Ω], 10 [Ω]) の合成抵抗より,電流 Ioff は次のように表さ 10 Ω E R れる. Ioff = E E = 2 + 10 [Ω] 12 [Ω] (3·2) 解答図 3b iii) Ion と Ioff の関係 式 (3·0) に式 (3·1) および式 (3·2) を代入すると, E 2+ 10R 10+R [Ω] =3× [検算のススメ] 問題を解いたら検算することを 習慣づけよう. 問題 3 の検算の一例: 得られた結果は起電力 E に 依存しないので,E に計算が簡単になるような値 を入れて検算することを考えよう.式 (3·2) から, E = 12 [V] とすれば良さそうである. このとき, Ioff = 1 [A] E 12 [Ω] これを R について解いて, 10R =2 10 + R −→ R= 20 = 2.5 [Ω] 8 ··· (答) 一方,式 (3·1) に R = 2.5 [Ω] および E = 12 [V] を代入すると, チェックポイント Ion = □ 直並列接続された抵抗の合成抵抗を計算できる. 12 [V] 2+ 10×2.5 10+2.5 [Ω] = 12 [A] = 3 [A] 25 2 + 12.5 となる.この結果は問題の条件を満たしており, R = 2.5 [Ω] という答えで合っていることが確認で きた. □ 答えに正しい単位をつけられる. □問題 4.演習図 4 の回路において,端子対 a–b から見た抵抗 Rab を求 めなさい. (平成 8 年度 A 問題) R a 1 3R (解答例) 演習図 4 を描き直すと解答図 4a のようになり,この回路はホ イートストンブリッジである. 1 1 3R R 3 b 問題の回路についてホイートストンブリッジの平衡条件を調べると, R 演習図 4 1 1 R×R=R× R 3 3 a となり,平衡している (解答図 4a に示す電流が 0 である) ことが分かる. 電流 0 の枝(抵抗 31 R) は取り去っても,回路の電流の分布は変化しな いので,取り去った回路 (解答図 4b) で端子間の抵抗 Rab を計算すると, Rab = ( 31 R + 13 R)(R + R) 1 ( 3 R + 13 R) + (R + R) = 4 2 3R 8 3R = 1 R 2 ··· (答) チェックポイント □ ホイートストンブリッジの平衡条件を計算できる. b 1 3R 1 3R 0 1 3R 解答図 4a R R a b 1 3R R 1 3R R 解答図 4b 同一の回路に対する回路図の描き方は一通りでは ない.例えば, 〔演習 2〕問題 14 の回路は,問題 4 の回路と全く同じものである.回路図の見た目の 印象で左右されないよう,問題の回路図を良く観 察することが重要である. 電気回路学I及び演習 (第 8 回)(2016-06-07) Ex.1–A–3 3Ω 5Ω I □問題 5.演習図 5 のような直流回路において,3 [Ω] の抵抗を流れる電 流 I [A] を求めなさい. (平成 9 年度 A 問題) 4V 2A (解答例) 回路を描き換えると解答図 5a のようになる. 演習図 5 さらに電流源 2 [A] と抵抗 5 [Ω] を電圧源に等価変換すると,解答図 5b のようになる.解答図 5b で考えると,求める電流 I は, 10 − 4 [V] = 0.75 [A] I= 3 + 5 [Ω] ··· 3Ω I (答) 5Ω 4V チェックポイント □ 電圧源と電流源の等価変換が行える. 2A 解答図 5a □ 答えに正しい単位をつけられる. 3Ω (別解) 解答図 5c に示す向きに抵抗 5 [Ω] の電流をとると,この電流は KCL から 2 − I [A] である. 5Ω I 4V 10 V 次に破線で示す向きのループを考え,抵抗の電流と電圧の向きに注意 して KVL を用いると,次式が成り立つ. 解答図 5b 4 + 3I − 5(2 − I) = 0 3Ω 5Ω I 2–I これを解いて, 6 I = = 0.75 [A] 8 ··· (答) 4V 2A チェックポイント 解答図 5c □ KCL, KVL, オームの法則を正しく適用できる. □ 答えに正しい単位をつけられる. 1Ω □問題 6.演習図 6 の直流回路において,2 つの電流源 J1 [A] および J2 [A] の値を求めなさい. 6A 4A (平成 11 年度 A 問題) J1 1Ω 2Ω (解答例) 問題の条件から,電流が与えられている 1 [Ω] と 2 [Ω] の抵抗の 電圧は,それぞれ 6 [V] と 8 [V] である (解答図 6). 演習図 6 このとき,残りの 1 [Ω] に加わる電圧は,KVL から 8 − 6 = 2 [V] であ るから,この 1 [Ω] の抵抗には 2 [A] の電流が流れる (解答図 6). a 解答図 6 の節点 a および節点 b に KCL を適用すると,次の関係を得る. J1 節点 a : J1 + (−6) + 2 = 0 節点 b : J2 + (−4) + (−2) = 0 2 A1 Ω J1 = 4 [A] , J2 = 6 [A] ··· (答) チェックポイント □ KCL, KVL, オームの法則を正しく適用できる. □ 答えに正しい単位をつけられる. b 6A 4A 2V 6V 1Ω 2Ω 8V 解答図 6 これを解いて, J2 J2 電気回路学I及び演習 (第 8 回)(2016-06-07) Ex.1–A–4 1Ω □問題 7.演習図 7 の L および C を含む直流回路において,L を流れる 電流 I [A] および C にかかる電圧 V [V] を求めなさい. L=3H I (平成 11 年度 A 問題) 6V C=5F (解答例) 直流回路においては,コイルは短絡,カパシタは開放であるか V 2Ω V 2Ω 演習図 7 ら,問題の回路を描き直すと,解答図 7 に示すようになる. 解答図 7 から, 1Ω 6 [V] = 2 [A] · · · (答) 1 + 2 [Ω] 2 [Ω] × 6 [V] = 4 [V] · · · V = 1 + 2 [Ω] I I= 6V (答) 解答図 7 チェックポイント □ 直流回路において,コイルとカパシタを正しく扱える. □ 答えに正しい単位をつけられる. □問題 8.問題 7 において,L および C にそれぞれ蓄えられるエネルギー WL [J] および WC [J] を求めなさい. (平成 11 年度 A 問題) (解答例) 問題 8 の結果から, 1 1 2 LI = × 3 [H] × (2 [A])2 = 6 [J] · · · (答) 2 2 1 1 2 WC = CV = × 5 [F] × (4 [V])2 = 40 [J] · · · (答) 2 2 WL = チェックポイント □ コイルとカパシタの蓄積エネルギーを計算できる. □ 答えに正しい単位をつけられる. R1 R2 □問題 9.演習図 8 の回路において,端子に現れる電圧 V を求めなさい. (解答例) 問題の回路の 3 組の直流電圧源と抵抗を等価な電流源に変換す R3 E1 E2 V E3 ると,解答図 8a のようになる. さらに回路図を整理した解答図 8b で考えると,求める電圧 V は, ( ) E1 E2 E3 1 + + V = 1 1 1 R1 R2 R3 R + R + R 1 = 2 演習図 8 V 3 R2 R3 E1 + R3 R1 E2 + R1 R2 E3 R1 R2 + R2 R3 + R3 R1 ··· (答) チェックポイント □ 電圧源と電流源の等価変換が行える. E1 R1 E2 R2 E3 R3 R1 R2 R3 解答図 8a □ 並列接続された抵抗 (3 並列以上) の合成抵抗を計算できる. V E1 E2 E3 R1 R2 R3 R1 R2 R3 解答図 8b 電気回路学I及び演習 (第 8 回)(2016-06-07) Ex.1–A–5 (別解) 解答図 8c に示す向きに電流をとり,節点 a に KCL を適用すると, 別解: この解き方は,節点電位法に基づく.節点電 位法は「電気回路学 II 及び演習」で扱う. 次式を得る. E2 − V E2 − V E1 − V + + =0 R1 R2 R2 R1 R2 これを解いて, V = R2 R3 E1 + R3 R1 E2 + R1 R2 E3 R1 R2 + R2 R3 + R3 R1 ··· a R3 (答) E1 チェックポイント E2 V E3 解答図 8c □ KCL, KVL, オームの法則を正しく適用できる. iL □問題 10.演習図 9 の回路について,J(t) = Jm sin ωt とする.電圧 v(t) の定常解を計算しなさい. J(t) iR L v(t) R (解答例) KCL より,次の式が成り立つ. J(t) = iL + iR 演習図 9 (10·1) 各素子の枝の特性式から, v(t) = L diL (t) , v(t) = RiR (t) dt (10·2) が成り立つ.式 (10·1) および式 (10·2) から iL , iR を消去すると,回路の 方程式は次のようになる. 1 J(t) = L ∫ v(t)dt + v(t) R 回路の方程式: 両辺を時間 t に関して 1 回微分し て,次のような微分方程式にしても良い. (10·3) ここで,求める定常解を v(t) = Vm sin(ωt + θ) dJ(t) 1 1 dv(t) = v(t) + dt L R dt (10·4) とおく.与えられた電流 J(t) と今おいた電圧 v(t) を式 (10·3) に代入す ると, Jm sin ωt = 1 L ∫ Vm sin(ωt + θ)dt + 1 Vm sin(ωt + θ) R 定常解の計算では,不定積分の積分定数は考えな くて良い. Vm Vm = − cos(ωt + θ) + sin(ωt + θ) R √ωL ] [ ( )2 ( )2 Vm − Vm Vm = + − sin (ωt + θ) + tan−1 VωL m R ωL R √( ) )2 ] ( [ 2 1 1 −1 R = Vm + sin ωt + θ − tan R ωL ωL 最左辺と最右辺の比較から, Jm −1 Vm = √( ) ( 1 )2 , θ = tan 1 2 + ωL R ( R ωL である.最終的に電圧 v(t) の定常解は, ( ( )) R Jm −1 v(t) = √( ) sin ωt + tan ( 1 )2 ωL 1 2 + ωL R ) ··· (答) チェックポイント □ 回路の方程式を導ける. □ 正弦波で励振される簡単な回路の定常解を計算できる.
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