I S S N 0914−3157 2013 . 4月号 2013年4月5日発行 ︵毎月1回5日発行︶ 通巻 号 昭和 年7月 日第三種郵便物認可 413 ほんのしるべ 61 15 世界の本屋さん vol.16 ベトナム・ホーチミン サイゴン書店 ノセ事務所 能勢 仁 六 四 四 万 人 ︶、 南 に ホ ー チ ミ ン︵ 経 済 の リカ製が多いが、その他フランス、日本 商品で、他の書店でも売っていた。アメ いている関係である。時計は書店の扱い 積みされていた。上の階で英語教室を開 中心、七一二万人︶がある。ホーチミン ベ ト ナ ム は 北 に ハ ノ イ︵ 政 治 の 中 心、 市は東洋有数の商業都市で、仏領時代に 製︵セイコー、シチズン︶もあった。 二階売場が面白い。二階は学参書売場 は﹁東洋のパリ﹂と称された。ホーチミ 他、ガラス製品、掛け軸、刺繍、シルク はおもちゃ、ぬいぐるみであった。この で、 小 中 高 参 考 書、 問 題 集、 大 学 入 試、 ン市は旧サイゴン市である。 五 層 の ビ ル の 一、二 階 を 書 店 売 場 に 商品、雑貨があった。ホーチミンにスー 教科書が陳列されていた。隣に児童書が 使 っ て い る。 三 階 は 書 店 事 務 所 と 倉 庫、 パ ー は あ る が、 デ パ ー ト は な い。 お も サイゴン書店はレロイ大通りに面して 四、五 階 は 文 化 教 室 に な っ て い る。 間 口 ちゃ、ぬいぐるみは書店の大切な人気商 あったが、お体裁程度?であった。狙い 五間×奥行十六間=八十坪の店舗で、二 品だったのである。 いる。老舗書店で市民に人気のある書店 階も同様である。一階売場は辞書、文学 である。 書、文具、時計売場になっている。店頭 にはオックスフォードの部厚い辞書が山 (表紙題字・陳舜臣) 4月 春 鵞 鳥。 ︱ た く さ ん い つ し ょ に ゐ る の で、 世界の本屋さん 会 科 科 月 学 コ ン ピ ュ ー 学 学 医 タ 書 1 瀧津 孝 2 著書を語る ○ ﹃乙女のための名将言行録﹄ ﹁書標﹂歳時記 書標・書評 ﹃ザ・万字固め﹄ほか 然 特集 ゲームばっかりしてないで たまには本でも紹介しなさい。 今月のおすすめ 社 自 人 文 科 学 文 学 ・ 文 芸 術 文 庫 ・ 新 書 芸 用 書 地 図 ・ 旅 行 書 実 童 書 語 学 ・ 辞 典 児 往復書簡をはじめませんか コミックフロアより 読者から インフォメーション 4 4 16 本屋うらばなし ﹁春夏秋冬﹂ ※表示価格はすべて税込価格です。 −1− 自分を見失はないために啼いてゐます。 蜥 蜴。 ︱ ど の 石 の 上 に の ぼ つ て み て も、 まだ私の腹は冷たい。 三好達治著 ﹃測量船 三好達治詩集﹄ ︵思潮社︶より 24 23 21 19 17 14 6 25 23 22 20 18 16 31 30 28 26 492 著書を語る ○ ︱︱ ﹃乙女のための名将言行録﹄ 瀧津 孝 にデフォルメされた戦国武将たちが勢ぞろいし、正統派の 異様な甲冑を身に着けた織田信長⋮⋮イケメンやマッチョ ち が 残 し た 逸 話 に は、 私 た ち が 現 代 社 会 を 生 き る う え で、 しさ〟にあるのではないでしょうか。それに、有名武将た か な か 見 出 せ な い〝 潔 さ 〟〝 一 筋 さ 〟〝 律 儀 さ 〟〝 真 の 男 ら さないのか。その答は、現代の若い男たちに彼女たちがな の宴﹂です。戦国武将の何が、乙女の心を熱くとらえ、離 歴史マニアが見たら激怒しそうな世界観が展開するゲーム 示唆にあふれ、教訓となる内容もたくさん含まれています。 胸をはだけ、革ジャンを着た真田幸村、銀髪の石田三成、 やコミックの数々。しかしこれらの存在こそ、歴女や戦国 ゲームやコミックで初めて知った武将たちのことを﹁実際 乙女と呼ばれる若い女性たちを急増させる原動力となった は ど ん な 人 な の?﹂﹁ も っ と 知 り た い ﹂ と 思 っ て い る 彼 女 らに、実像を伝える書籍は極めて少なく、そんなニーズに 折 角 戦 国 時 代 に 興 味 を 持 ち、 好 き に な っ た 女 性 た ち が、 ことは、一般に案外知られていません。 も っ と こ の 時 代 や 武 将 た ち の こ と を 知 り、 永 続 的 な 戦 国 連載で応えたかったのです。 紙﹃G AM E ゆ ー ゆ ー︵ 現 ジ ャ パ ニ メ イ ト ︶﹄ の 編 集 長 を やドラマの主要な〝ネタ本〟にもなっている名著です。し 一七八人︵初版︶の列伝を記録し、戦国を題材とする映画 れた逸話集﹃名将言行録﹄を選びました。戦国時代の名将 記事の原典には、江戸末期から明治初期にかけて編纂さ フ ァ ン、 ひ い て は 日 本 の 歴 史 や 文 化 の 理 解 者 に な っ て ほ し 十五年間務め、ゲームが引き金となって戦国武将を好きに かし、これを現代語訳している出版物は、一部の武将に限 い⋮⋮。全国紙の記者を経て、無料の月刊総合ゲーム情報 なっていく女性たちを間近で見てきたことが、日本史の激 この本のベースは、二〇〇九年三月から昨年六月にかけ ライトな時代小説感覚で楽しんでもらえるようドラマ 版を読み解きながら、子供でも読めるようにわかりやすく、 かのどちらか。そこで、旧字のまま全てを収める岩波文庫 定するか、全武将を収録していても内容を大幅に割愛する 動期︵戦国・幕末・太平洋戦争等︶に一家言を持つ私にこ て﹃GAME ゆーゆー﹄で連載し、戦国乙女たちに人気の の本を書かせたと言えるでしょう。 伊達政宗、片倉小十郎、真田幸村の逸話を紹介した﹁武人 −2− 492 できあがった﹃乙女のための名将言行録﹄は、伊達政宗 昨春私の方からこの企画を一旦御破算にしてもらいまし 営 業 方 針 な ど で 出 版 社 と の 間 で 様 々 な 意 見 の ズ レ が 生 じ、 るのか、購入してくださっている方は少なくないようです。 る に も か か わ ら ず、﹃ 名 将 言 行 録 ﹄ が〝 引 き 〟 に な っ て い 性読者からの反響です。男性には手に取りづらい表紙であ えを得ることができました。思いもよらなかったのは、男 を 斬 新 に ア レ ン ジ し た 人 気 漫 画 家・ 霜 月 か い り 先 生 の カ た。とはいえ、別の出版社で出してもらうアテがあった訳 しかも﹁女性だけでなく、広範囲の読者層の期待に応えら 三年前、ある出版社からこの連載を単行本にしないかと ティックに抄訳し直しました。 ではありません。 れる内容﹂﹁〝乙女のための〟というタイトルと装丁を変え い女性層の目を引き、内容の満足度についても確かな手応 ﹁ お 蔵 入 り か ⋮⋮﹂ と 諦 め か け た 昨 年 夏 に ご 縁 を 得 た の るだけで、男性向けにも通用する﹂といった評価の声をも バーイラストのお陰もあって、今年一月末の発売以来、若 が、角川グループのアスキー・メディアワークスさんでし らい、コメントをネット上にもアップしていただけている いう声が掛かります。私は喜んで応じ、新たな逸話やコラ た。人気武将たちをもっとたくさん収録しようという方向 −3− ムなどを書き下ろしたのですが、装丁や本文のレイアウト、 性が新たに固まり、戦国時代をテーマに女性から支持され ことに正直感激しました。 ず子供からお年寄りまでの幅広い層に楽しんでいただける タイトルは確かに﹁乙女のための﹂ですが、性別を問わ ているホームページやブログ、関連書籍、新聞記事から人 内容と自負しています。 気武将のランキングを分析し、計三十一人をピックアップ。 ﹃名将言行録﹄に収録されている膨大な数の逸話から何を 武将たちの逸話を大幅に加筆修正しました。 選ぶかには、かなり悩みました。例えば、石田三成が寺の小 僧だった時、立ち寄った羽柴︵豊臣︶秀吉に抜群の気配りで 熱さや量の異なる三杯の茶を出し、家臣に召し抱えられたな どという、歴史ファンにはお馴染みのエピソードだけでなく、 戦国版〝賢者の贈り物〟とも言える赤貧時代の明智光秀と妻 の感動秘話、選抜武士の一騎打ちで勝敗を決めた武田信玄に まつわる川中島合戦異聞、粗末な魚の中落ちを客人に出した 黒田官兵衛のもてなし、陣中の伊達政宗が余興に出した洒 落っ気満点の景品⋮⋮といった、世間にあまり流布していな いマニアックな逸話も多数入れ込んでいます。 『乙女のための名将言行録』 アスキー・メディアワークス・ 1,470 円 ﹃ザ・万字固め﹄ ミシマ社・一五七五円 タイトルを見て頂ければ分かるように、本 万城目学著 代について少しでもかじったことのある人な 外の人選である。歴史に興味があって戦国時 のだが、とにかくまさかの展開、そして予想 になり始めて、その鳴き声につい耳を傾け くと確かにちょっとずつカラスのことが気 生 態 が 面 白 お か し く 描 か れ て い て、 気 が つ めていくと、今まで知らなかったカラスの ていたりする。まず、今まで思い違いをし らニヤリとしてしまう部分が随所に散りばめ て い た と わ か っ た こ と は、 カ ラ ス に と っ て 何倍も体の大きい人間は非常に恐ろしい存 られていて、自分なら誰を選ぶか⋮⋮などと 在だということ。あと、頭のよい鳥である ついつい考えてしまうだろう。 と に か く 著 者 の 知 的 好 奇 心、 ユ ー モ ア が ことには違いないが、お茶目でお馬鹿な行 書は﹃鴨川ホルモー﹄や、 ﹃プリンセス・ト たっぷり詰まった一冊である。万城目ファン 代の旅行の話、小学生の苦い?思い出に瓢 普段の作家生活をつづったものや大学生時 う 経 験 が あ る た め、 ど ち ら か と 言 え ば カ ラ 乗っていたら頭をグワッとつかまれたとい いたことがない。私自身も、以前自転車に だ ろ う か? 少 な く と も、 私 の 周 り で は 聞 クかつきっと誰もが気になっている質問にま ラスって食えるんですか?﹂という、 マニアッ 識別できるんですか?﹂という質問や、 ﹁カ な人には是非﹁第四章 カラスのQ&A﹂だ けでも読んで欲しい。 ﹁カラスは人間の顔を しまう人もいるかもしれない。しかし、そん 少々厚めの書籍なので、それだけで敬遠して ﹁教科書﹂というだけあって、四〇〇頁と 動もよくとるということ。 ヨトミ﹄を著した著者のエッセイ集である。 ︵直︶ でなくとも手にとって損のない一冊である。 雷鳥社・一六八〇円 箪 の 話、 東 電 の 株 主 総 会 リ ポ ー ト な ど、 バ で答えてくれている。この本を読み終えた人 カラスのことが大好き ! という人はいる 松原 始著 ﹃カラスの教科書﹄ 普段あまりエッセイは読まないのだが、店頭 で見た書籍の帯に﹁この面白さ、 何者? エッ セイを超えた超エッセイ本 ! ﹂と書いてあっ たので、それに誘われて何となく買ってみた。 一読した感想は⋮⋮ ラ エ テ ィ に 富 ん だ エ ッ セ イ と な っ て い る。 スが嫌いだった。しかし、この本の著者は 帯に偽りなしであった。面白い。内容は、 所々に入っている挿絵も中々いい味を出し んて言葉が聞けそうである。 からならば、 ﹁カラス? 結構好きかも﹂な だ。 恐 ら く、 大 抵 の 人 は﹁ う っ そ ー﹂ と 顔 文藝春秋・一五七五円 士﹂ 。この写真は、スペイン内戦の際、共和 ロ バ ー ト・ キ ャ パ に よ る﹁ 崩 れ 落 ち る 兵 沢木耕太郎著 ︵Y︶ 言い切ってしまう程カラスのことが大好き ﹁あれほど面白くてカワイイ鳥はいない﹂と 中でも特にオススメしたいのが﹁藤堂高虎と をしかめるだろう。しかし、著者は言う。 ﹁大 様々な内容が詰まったエッセイだが、その あそんでみる﹂である。原稿の為に調べた高 丈 夫、 し ば ら く 見 て い れ ば 好 き に は な ら ず ﹃キャパの十字架﹄ ていて、本書の魅力を高めている。 虎についての蘊蓄で話が進んでいくのかと とも、ちょっと興味が湧いて来ます﹂。 じゃあマァ読んでみよう、とページを進 思 っ た の だ が、 そ こ か ら 話 は 意 外 な 展 開 に⋮⋮。というような十四ページの短い話な −4− 捉えたフォト・ジャーナリズム史上最も有 国軍の兵士が反乱軍の銃弾に倒れる瞬間を とす。二十七歳であった。 た。 そ の 中 で 彼 女 は 戦 車 に 轢 か れ て 命 を 落 そ れ ら の 見 立 て、 そ し て 多 く の 情 報 社 会 いう。あまりにも決定的瞬間過ぎる。しかし、 くこの写真について違和感を抱いていたと 第 二 次 世 界 大 戦 で﹁ 波 の 中 の 兵 士 ﹂ を 撮 っ 意 味 し た。 彼 が そ れ か ら 解 放 さ れ る の は、 は彼にとって大きな十字架を背負うことを 士 ﹂ に よ っ て 高 い 評 価 を 得 る。 し か し そ れ ゲルダを失ったキャパは﹁崩れ落ちる兵 抽象し、言語や記号、数字へと変換すること の残滓が、そこにはあるのだ。 が未だに囚われているプラトンのイデア論 本一勇は言う。二千年以上に亘る西洋思想 論は、 ﹁物質﹂を捨象し軽視していると、藤 だからと言って﹁やらせ﹂というには迫力 によって、伝播・影響の大きな力を得てきた。 名なものの一つとされている。著者は長ら がありすぎる。著者はこの写真の真贋を確 た時だろう、と著者は語っている。 調査をする。その結果、 ﹁まったく想定外の 真家。撮られた写真が語るものは何なのか。 め戦場へ行ったキャパやゲルダたち戦争写 戦争を記録する為、より激しい戦闘を求 どれほど﹁非物質的﹂に思えても電子はやは は、自らを支える物質的な場を必要とする。 だが、どのように変遷・ ﹁進化﹂しても、 ﹁情報﹂ ﹁情報﹂は、具体的な﹁物質﹂の在り様を かめるために、文字通り世界中を飛び回り 一人のユダヤ系ハンガリー人の青年、エ り物理現象であり、電気という物理的エネル 新たな謎﹂が浮かび上がってくるのである。 切 り 取 ら れ た 一 瞬 か ら、 私 た ち は 真 実 を 読 を 独 立 し た 世 界 の よ う に 偽 装 し て﹁ 情 報 ﹂ ﹁情報/物質﹂に分断線を引き﹁情報空間﹂ ギーなしにコンピューターは駆動できない。 ンドレ・フリードマンが、ファシズムの台 ︵あ︶ み取っているのだろうか。 ﹃情報のマテリアリズム﹄ 頭してきたヨーロッパでカメラマンとして 地位と名声を得る過程で何が起こったの か。 そ れ を 語 る と き 避 け て 通 れ な い の が、 物質性からの解放を実現する、まさに人類史 インターネットは、人類の長年の夢だった 知るべきだ。今やその支配は、環境・政治・ 視的権力が生じている。まず、そのことを 視化することによって、新たな支配的・監 に不可欠である﹁物質﹂=メディアを不可 ある。彼女はキャパと知り合い、恋人とし 的革命である。マーク・ポスターは、ディジ NTT出版・二七三〇円 て、マネージャーとして付き合っていくう 社会そして身体に、広範かつ確実に及んで 藤本一勇著 ちに、カメラマンとして戦場に赴くように タル複製技術に私的所有権に立脚する資本主 ﹁情報のマテリアリズム﹂は、﹁情報/物 いるのだから。 相 棒 の ゲ ル ダ・ タ ロ ー と い う 女 性 の 存 在 で なる。ロバート・キャパというのは当初二 義の転覆の可能性を見出し、ローレンス・レッ 質﹂の分断線を、そして両項に偽装された 人のチーム名のようなものであった。 る既得権益層からの規制に対して憤る。 シグは、この﹁革命﹂を先送りにしようとす 戦場で写真を撮るうち、彼女はカメラマ ン と し て の 独 立 を 望 む よ う に な り、 よ り 危 配からの脱却を目指す。 ず れ・ 逸 脱・ 偶 発 性 の 契 機 を と ら え て 、 支 一 意 的 な 関 係 を 切 り 崩 し、 そ こ に 孕 ま れ る 自然や文化の有限性を﹁脱出﹂した、資本 一方見田宗介によれば、﹁情報化社会﹂は、 主義の完成形態である。 険 な 戦 場 へ 向 か っ て い く。 彼 女 も 東 欧 系 の ユ ダ ヤ 人 で あ り、 フ ァ シ ズ ム へ の 抵 抗 勢 力 ︵フ︶ としての共和国軍にシンパシーを感じてい −5− はゲームばかりしているのに。それは﹁ウ と答えたことは今まで一度もない。本当 趣味は何か?と問われて﹁ゲームです﹂ そろそろさらけ出そうと思う。 ム雑誌﹂。︵と書くと変に勘ぐる方もいる く﹁電車で読んでも恥ずかしくないゲー チャーの匂いを漂わせている。ある人曰 ゲ ー ム 雑 誌 で あ る け れ ど、 サ ブ カ ル 今 は 無 き﹃ コ ン テ ニ ュ ー﹄︵ 太 田 出 版 ︶。 はゲーム﹂の何十倍もいい。それではゲー 味 は 料 理 ﹂ の 響 き は と て も 良 い。﹁ 趣 味 だ な と す ご く 納 得 し た 覚 え が あ る。﹁ 趣 するという点では両者は近しい存在なの り合っており、なるほど﹁モテ﹂を志向 を購読していた先輩社員もいる。私には の忙しいさなかも忘れずかの﹃ファミ通﹄ 員を知っている。はたまた新規オープン ゲームキューブ︶を購入してきた先輩社 でその日発売のゲーム機︵確か任天堂の 人はいる。休憩時間に近所の家電量販店 もちろん職場にもゲームを趣味とする 誌であることは明記しておく。︶ かもしれないが、どちらもすばらしい雑 ケ﹂の悪さからだ。それも、特に女性か らの。 以前勤務していた店舗では、男性向け ム雑誌はどこにあるのかというと雑誌 そんなことができなかった。うらやまし 料理雑誌と男性ファッション誌の棚が隣 コーナーとは離れたコミックのコーナー 情けなくも思う。しかし、きっと私と同 くすら思う。そして自意識過剰な自分を その名の通りゲームのことを紹介した雑 そ の 昔 は﹃ フ ァ ミ コ ン 通 信 ﹄ を 名 乗 り、 雑誌は﹃ファミ通﹄ ︵エンターブレイン︶。 悟られたくなかったのだ。買えなかった ゲーマーが再びコントローラーを握る日 由でゲームを止めてしまったかつての ムの複雑化、我が身の老化など様々な理 就職、恋愛、結婚、出産、はたまたゲー な る 日 が く る こ と を 願 っ て、 ま た 進 学、 と﹁趣味はゲームです﹂と言えるように 本稿ではそんな潜在的ゲーマーが堂々 マーはたくさんいるはずである。 じようにゲーム趣味を隠す、潜在的ゲー にあった。ほとんどのジュンク堂書店で そ の ゲ ー ム 雑 誌 の 一 つ が 欲 し く て も、 は同じように配置されていると思う。 私は自店舗でなかなか買えなかった。同 誌であり、その代表格でもある。買えな 僚にゲーマー︵=ゲームをする人︶だと い私は別の雑誌を購読していた。それは、 −6− ゲームには、手を出したものの己が射幸 わ け で も な い。 特 に 最 近 の ソ ー シ ャ ル なだけで、得意なわけでも、特段詳しい まれる存在である私自身、ゲームは好き もなく、逆に本当のゲーム好きからは蔑 ム﹂を隠したからとてウケがいいわけで ム本﹂を紹介したいと思う。ただし、﹁ゲー ることを願って、そうなるような﹁ゲー ない人々に少しでもゲームの魅力が伝わ がくることを願って、そしてゲームをし 二四一五円︶と洒落込むか。 モ ン ﹄︵ 新 潮 社・ ア ン・ ア リ ス ン 著・ について書かれた日本文化論﹃菊とポケ ンテンツ産業のグローバル市場での需要 新 一 著・ 八 二 〇 円 ︶、 は た ま た 日 本 の コ の あ る﹃ 雪 片 曲 線 論 ﹄︵ 中 公 文 庫・ 中 沢 い て の ニ ュ ー ア カ デ ミ ッ ク︵ ! ︶ な 評 シューティングゲーム﹁ゼビウス﹂につ インベーダーゲームの次にヒットした 好をつけたいところであろう。あるいは 問いに向き合ってしまったよ﹂なんて格 んて軽口も叩ける︵ちなみにちくま文庫 ンズブールへのオマージュなんだよ﹂な う な 装 丁。 そ し て タ イ ト ル。﹁ こ れ、 ゲ い。まるでカバーを外した岩波文庫のよ だ。 である。そう、あの芥川賞作家の長嶋有 著者、ブルボン小林、またの名を長嶋有 も恥ずかしくない﹂と評したのも本作の 先の﹃コンテニュー﹄を﹁電車で読んで プ リ ュ﹄︵ 太 田 出 版・ 一 四 七 〇 円 ︶ だ。 版 は 岩 波 文 庫 っ ぽ い 装 丁 で は な い︵?︶ この本はまず見た目からしてすばらし 心の大きさに恐れ戦き、少し触った程度 がこちらは作家の中原昌也がゲンズブー ルとバーキン風なカバー絵を描いてい 中身はどうかというと、これが実にす る︶。 ばらしい。作家・長嶋有の立場からゲー ムのストーリー性を論じ、文学論を展開 ︵ 講 談 社 学 術 文 庫・ 一 二 六 〇 円 ︶ や ホ イ ついて書かれている本が存在する。それ ていて、間口も広く、しっかりゲームに しかしそんなに力まずとも、洗練され るとか、ゲームをしている人を見るとこ て先が見たいという感覚は観光に似てい く、ときにするどく描く。 位置で、独自のゲーム体験を面白おかし までエッセイスト・ブルボン小林の立ち するなんていう大仰なことはせず、あく ジンガの﹃ホモ・ルーデンス﹄ ︵中公文庫・ 数少ないゲーム本の中でも右に出るもの ろまで含めてゲームなんだとか、テレビ −7− である。狭く偏った意見になってしまう であろうことをあらかじめお詫びしてお く。 潜在的ゲーマーに向けて 一口に﹁ゲーム本﹂といっても色々あ る。私と同じように人の目を気にするな 九二〇円︶やチクセントミハイの﹃フロー のない絶対的な一冊。ゲームエッセイの らば、ロジェ・カイヨワの﹃遊びと人間﹄ 体験 喜 び の 現 象 学 ﹄︵ 世 界 思 想 社・ 二五四八円︶あたりを読んで﹁ゲーム好 金 字 塔、﹃ ジ ュ・ ゲ ー ム・ モ ア・ ノ ン・ 例えば、シューティングゲームにおい きが高じて、遊びとは何か、いやそもそ はブックカバーをせずとも堂々と読める も人間とは何なのか ! という根源的な 『遊びと人間』 ムが本当に好きなんだなということがた 産声のようだとか。読めば、作者はゲー のタイトルが﹁ポン﹂なのはそれ自体が ゲームの歴史で一番最初とされるゲーム るだろうが、いくら侮蔑の意味を込める ゲーム﹂のことだ。糞尿の糞を語源とす クソゲーとは﹁クソみたいにつまらない い考察がある。言わずもがなのことだが、 のなかに﹁クソゲー﹂についての興味深 ﹃ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ﹄ 晶とはこの本のことだ。 した血にまみれている。血と汗と涙の結 申し上げると、本作はまさに著者らの流 にある言葉を引用する無礼を承知の上で たい。 る一冊。とにもかくにも読んでいただき のゲームへの思いをも奮い立たせてくれ 広さはさすがのお仕事。薄れかけた自分 と、マニアでない人にも読ませる間口の んて章タイトルのセンスはもちろんのこ 者ならではの﹁俺が本当のゲーム脳﹂な ラクレ・七五六円︶という著作もある著 てくれる。﹃ぐっとくる題名﹄︵中公新書 本進一、多根清史の三名である。彼らの 存在をご存知であろうか。阿部広樹、箭 ソゲーに立ち向かうクソゲーハンターの 出自はどうあれ、そんな言われ様のク 開していく︵汚い話でごめんなさい︶。 が糞だからではないかと鮮やかに論を展 のサイズで手で掴んで最も屈辱的なもの 者は、これはファミコンのカートリッジ はないのではないか、という疑問から著 としても他の業界ではクソをつけること が知っているゲームだけがゲームではな 心配もない。売れているゲームやみんな しさ。これにより、この本にハマり過ぎ の辛さを文章の隅々から伝えてくれる優 けの本であろう。また、クソゲーハンター ムだけでも時間のない我々にはうってつ ぎることも事実。自分がプレイするゲー 出くわさなくてよかったという思いがよ してくれているのだが、こんなゲームに ススメできるゲームであることは保証﹂ なすことで元を取ることも含めれば﹁オ ることだ。クソゲーと言いながらも、け ことと、何よりそのゲームをした気にな この本の良さは読んでたくさん笑える ていいもんだなぁとあらためて気づかせ ちなみに著者には﹃ゲームホニャララ﹄ 著作が﹃超クソゲー1 2 + ﹄︵太田出版・ 一〇〇〇円︶﹃超クソゲー3﹄︵一二〇〇 いという、知らなくてもいいゲームの世 気に入らないのは自分で血を流していな 誰の言葉であったか﹁サブカル野郎が は彼らに足を向けて寝ることはできま 冊、いや二冊だ。手を汚さない︵?︶我々 界の奥深さを興味深く教えてくれる一 −8− くさん伝わってくると同時に、ゲームっ うゲームエッセイもある。無論、こちら ︵ エ ン タ ー ブ レ イ ン・ 一 二 六 〇 円 ︶ と い 円 ︶。 た だ の ク ソ ゲ ー で な く﹁ 超 ﹂ ク ソ いからで、その点オタクは痛々しいまで の歴史について学び、あらためて自分と ファミコン生誕三十年の今年、ゲーム い。 は本当に耳が痛かった。一介のオタク評 る﹂とかなんとかいうのを読んだときに に自分をさらけだし血まみれになってい てクソゲーハンターの道に堕ちるような も文句なしに面白い。 ゲー。 『ジュ・ゲーム・モア・ ノン・プリュ』 くま新書・七七七円︶を記し、またゲー を 目 指 し﹃ 教 養 と し て の ゲ ー ム 史 ﹄︵ ち ﹃ゲーム語り﹄を可能にする知識の体系﹂ ﹁ハードや体験の壁を超えたフラットな 興。 か の ク ソ ゲ ー ハ ン タ ー 多 根 清 史 は ゲームとの関わりを見つめ直すのも一 ﹃ 教 養 と し て の ゲ ー ム 史 ﹄ が﹁ ゲ ー ム で書かれているのでご安心︵?︶下さい。 リーズと打って変わって落ち着いた筆致 ら。ちなみに二作とも﹃超クソゲー﹄シ ハードに思い入れのあるあの方なのだか 触 れ ら れ て い る し、 何 よ り 著 者 は 傍 流 てきそうだが、大丈夫。文中にきっちり たいどこに?というセガ派の声が聞こえ ゲームの定義を、変わらない部分は﹁ボ 九〇三円︶は、ゲームの歴史を語る上で ゲ ー ム 史 ﹄︵ 星 界 社 新 書・ さ や わ か 著・ う に 説 く 第 七 章 が 印 象 的 な﹃ 僕 た ち の 人とのつながりにまで拡がった。このよ に、ゲームの楽しみはゲームの外、人と 品群が現れてきたことからわかるよう 間同士のコミュニケーションを満たす作 大 ゲ ー ム 機 ﹄︵ ソ 人でも名前くらいは聞いたことのあるで ラゴンクエスト﹂など、ゲームをしない オ﹂、国民的ロールプレイングゲーム﹁ド 日本を代表する知的資産﹁スーパーマリ とそうではない。九〇年代後半、今や世 自分の殻に閉じこもっていったかという 細分化された。その後各々のゲーマーは ゲームは細分化され、ゲーマーの好みも について語り合っていた。が、いつしか 昔は皆が同じゲームをし、同じゲーム には今回あげた本を読み自分のゲーム愛 言葉に著者のゲーム愛も感じられる。 を守るゲームは生き残る﹂という力強い 来まで射程に入れた﹁ゲームであること 立ち位置にも好感が持てる。最終章、未 な啓蒙的な語り口ではない、フラットな えず、正しいか正しくないかというよう タ ン を 押 す と 反 応 す る こ と ﹂、 変 化 す る あろう名作を例に、いかにゲームが進化 界の﹁Po kemon ﹂である﹁ポケッ の浅さを反省しつつ、外へ飛び出す勇気 部分は﹁物語をどのように扱うか﹂の二 してきたかを描く。後者は著者が絞りに トモンスター﹂がゲームのストーリーよ を持っていただけたらと切に願う。 語り﹂つまり、誰かとゲームについて話 絞った十大ゲーム機、すなわちインベー りも交換するという行為の新しさから 点であると結論付けるところから書き始 ダーゲーム、ファミコン、ゲームボーイ、 ヒットにつながったことや、アーケード 元ゲーマーに向けて すことを目的に書かれたことからもわか スーファミ、プレステ、プレステ2、X ゲームがギャラリーに見られることを想 ゲームを止めたきっかけは色々あるだ め鮮やかに着地する傑作だ。大上段に構 box 、ニンテンドーDS、Wii、プ 定し進化していったこと、そしてプレイ ろうが、もし、なんとなく大人だからゲー る よ う に、 ゲ ー マ ー は た だ た だ 内 に こ レステ3、それらがいかに生まれ消えて ヤーに世界観を、そして謎を共有させる もっているばかりでもない。 ム機という切り口からゲームの歴史を眺 め た﹃ 日 本 を 変 え た フトバンク新書・七九八円︶を記してい る。 前者は、七〇年代終わり一大ブームを い っ た の か、﹁ ゲ ー ム 機 戦 争 と い う 壮 大 ことでゲーム以外の場での語りを促し人 巻 き 起 こ し た﹁ イ ン ベ ー ダ ー ゲ ー ム ﹂、 なゲーム﹂が堪能できる一冊だ。メガド 以上、自戒を込めて。潜在的ゲーマー ライブは?サターン、ドリキャスはいっ −9− 10 国製のゲーム︶へのコンプレックス、今 さに疲れて寝てしまうことや、洋ゲー︵外 は、ゲーム本編が始まるまでの設定の長 者が自らのゲーム体験を描いた本作で い男子の描写では右に出るもののない著 き著・八一九円︶をお勧めする。冴えな ン ガ ﹄︵ エ ン タ ー ブ レ イ ン・ 福 満 し げ ゆ 満しげゆきのほのぼのゲームエッセイマ なかったかわいそうなあなた方には﹃福 あ る︵ 暴 論 ︶。 そ ん な 支 え を 見 つ け ら れ ているなら私も大丈夫と考えているので 五作出ている。最新ゲームをプレイする 出版・一二六〇∼一三四四円︶は、現在 ﹃ ゲ ー ム セ ン タ ーC X ﹄ シ リ ー ズ︵ 太 田 んな有野課長の勇姿が詰まった書籍 イベートでゲームするほどの人物だ。そ 時間生放送でのゲーム挑戦の後に、プラ だの仕事では⋮⋮と侮るなかれ。二十四 のゲームに取り組んでいる。それってた CX﹂では有野課長として作業着姿で昔 ゲームバラエティ番組﹁ゲームセンター の が お 笑 い コ ン ビ よ ゐ こ の 有 野 晋 哉。 大人ゲーマーとして忘れてはならない た﹂という締めの言葉が悲しく響く。 た。﹁結局彼女は辻仁成と結婚してしまっ クール﹂の思い出が個人的にはツボだっ 名︵?︶な﹁中山美穂のときめきハイス に﹁恋の行方はあなた次第﹂のCMで有 ムがきっと見つかるはずである。ちなみ ソードなど盛りだくさん。思い出のゲー あ る あ る ネ タ や、 な ぜ か 心 温 ま る エ ピ ゲーム自体を知らなくても何だかわかる い。知っていればもちろんのこと、その き二ページと割り切ったデザインも潔 売年ごとに作品を並べて各タイトル見開 絵もノスタルジックで素晴らしいし、発 有できる。ファミコンをかたどった表紙 一五〇〇以上もの様々な﹁思い出﹂が共 ない。﹁ドクターマリオ﹂︵医者に扮した のゲームの複雑さについていけないこ だけがゲーマーではないと、もう若くは 長 の 井 上、 ス チ ャ ダ ラ パ ー のB O S E、 電 気 グ ル ー ヴ の ピ エ ー ル 瀧、 伊 集 院 光、 シニア層では加山雄三、鈴木史朗、淡路 恵子あたりを心の拠り所とし、彼らがし 深田洋介編・一三六五円︶を置いて他に なら﹃ファミコンの思い出﹄︵ナナロク社・ ただひたすらに昔のゲームを懐かしむ O﹄︵太田出版・押切蓮介著・各六九三円︶ ﹃ピコピコ少年﹄﹃ピコピコ少年TURB るあの頃の空気を思い出したいのならば ゲーム作品だけでなくゲームにまつわ ミコン﹂というサイトに投稿された 放ったまさかの一言など、﹁思い出のファ シ ー カ ー﹂ の 監 修 者 エ ス パ ー キ ヨ タ が が身に付くのが売りのゲーム﹁マインド にハマったおばあちゃんの話や、超能力 マリオが細菌を退治するパズルゲーム︶ と、でもやってみたら面白かったことな ないゲーマーたちに勇気を与えてくれる ムをしてはいけないのではないかと考え ど、大人ゲーマーの侘び寂びを飾らず描 る の な ら ば、 声 を 大 に し て 否 定 し た い。 く。自分では買いにくいソフトを奥さん 作品であろう。 でしか味わえないであろう。勇気づけら れること請け合い。 − 10 − ゲームをする大人たちの多くは、次長課 に買いに行ってもらう自由 ! など本作 『福満しげゆきのほのぼの ゲームエッセイマンガ』 著 者 の﹃ ハ イ ス コ ア ガ ー ル ﹄︵ ス ク ウ ェ ピコ少年﹄に恋愛要素を加えたような同 の よ う に 思 い 出 さ れ る で あ ろ う。﹃ ピ コ ターを隠されたときの怒りが昨日のこと アダプターの熱さや、母親にACアダプ あの音や、ゲームをやり過ぎた後のAC ファミコンのカセットに息を吹きかける 年 た ち に は、 ゲ ー ム セ ン タ ー の 臭 い や、 描いた自伝的マンガ。あの頃を知る元少 がお勧めだ。ゲーム漬けの子どもの頃を てしまいキレやすくなったり暴力的に ムばかりしていると﹁ゲーム脳﹂になっ 書・森昭雄著・六九三円︶である。ゲー う、﹃ゲーム脳の恐怖﹄︵NHK生活人新 は、個人的には疑問符を投げかける。そ その意見を押し進めたであろうかの本に る。 こ れ 自 体 否 定 す る 意 見 で は な い が、 的な人が多いと思われることがままあ ゲームが好きな人は内向的で、非社交 ゲームをしない人へ なったり不道徳なこと以外に思い浮かぶ こ と だ が、 法 に 触 れ た り 人 様 の 迷 惑 に の〇〇に何か入るか考えてみる。残念な するくらいならゲームをしなさい !﹂ られているということだ。では逆に ﹁〇〇 ゲームが他のコンテンツに比べて下にみ は、 マ ン ガ の 地 位 向 上 ! で も な く て、 の言葉だが、それはさておき注目すべき るには必ず抵抗を伴うという文脈の中で い ! ﹄ですからね。﹂これは技術が広ま 名作マンガや宮崎駿の感動アニメ観なさ マンガやアニメと比べて違いは何か。そ ものがないのではないか。 れ は ゲ ー ム が 人 に 求 め る 能 動 性 だ。﹁ わ なったりすると説いて、一時マスコミに しかし今なお﹁ゲーム脳﹂の存在を信 ざわざする﹂というハードルの高さがそ も取り上げられるなど話題になったもの じている人がいる。あなた方がそうでな こには存在する。それが最近とみに市民 アエニックス・一∼三巻各六一〇円︶も い こ と を 祈 る ば か り で あ る。 ゲ ー ム の、 権を得てきたマンガ・アニメとゲームの 併せて読んでいただきたい。数々のマン そしてゲーマーの置かれた状況は未だ厳 こ と ほ ど さ よ う に ゲ ー ム の、 そ し て しい。それを表す一文をSF作家・新城 差を決定づけたのであろう。 ゲーマーの置かれた状況は非常に厳しい カ ズ マ の﹃ わ れ ら 銀 河 を グ グ る べ き や ﹄ して下さいとは言えない。ただ、こんな だ。 色 々 な 考 え が あ る だ ろ う が、﹁ ゲ ー ︵ハヤカワ新書ju ice ・一〇五〇円︶ 側面もあるということを知っていただき ガ賞を受賞したまぎれもない傑作だ。 の中に見つけた。﹁ちょっと前までは﹃マ た い。 一 つ は、 ゲ ー ム と﹁ 考 え る こ と ﹂ のである。それでは存在が近いとされる 元ゲーマーにはまず、別に最新のゲー ンガばっかり読んでないで、ちゃんとし は意外と近いところにあるということだ。 ム 脳 ﹂ に 関 し て は﹁ 科 学 的 根 拠 は な い ﹂ ムにこだわることはないのだと知ってい た 本 を 読 み な さ い ! ﹄ だ っ た の が、 最 というのが大概の見方だ。 ただきたい。そして、少しでもあの頃の 近はもう﹃ゲームばっかりやってないで、 だから、しない方にわざわざゲームを 熱い思いを思い出していただけたらと切 に願う。 『ファミコンの思い出』 − 11 − 企画を生み出す方法を書いた﹃自分だけ 的かつ具体的なトレーニングにより発想・ るはずもない簡単なコツではなく、実際 孫 を 前 に し て 泣 い た 祖 母 を 見 て 感 じ た、 も、著者自身の子どもが生まれた際、曾 出てくるのかと不思議に思うが、意外に ゲーム。そんな発想がいったいどこから 族が織りなす世代交代ロールプレイング 代表作の通称﹁俺屍﹂は寿命三年の一 上明人著・一四七〇円︶、﹃ゲーミフィケー が ビ ジ ネ ス を 変 え る ﹄︵N H K 出 版・ 井 書籍は﹃ゲーミフィケーション︿ゲーム﹀ ﹁ゲーミフィケーション﹂についての ある。 最近流行の﹁ゲーミフィケーション﹂で 知っていただきたいことのもう一つは は間違いない。 にしか思いつかないアイデアを見つける 自分も﹁曾孫を見て祖母のように泣いて ション﹄︵大和出版・神馬豪、石田宏実、 てゲームボーイなど新しい遊びを生み出 方法﹄ ︵日本経済新聞出版社・一五七五円︶ みたい﹂という個人的な欲求からだった 木下裕司著・一五七五円︶、﹃ゲームの力 した横井軍平の﹃横井軍平ゲーム館RE や、恋愛小説をゲームにするとどうなる というから驚きだ。そのような着想の仕 が 会 社 を 変 え る ﹄︵ 日 本 実 業 出 版 社・ 岡 ゲームにも小説などと同じように作家 かを﹁かまいたちの夜﹂の麻野一哉・ ﹁巨 方からゲームが出来上がるまでいかなる 性というものがある。ゲームクリエイター 人のドシン﹂の飯田和敏と語り合った﹃恋 段階を踏んで行くかが、各節ごとにポイ 村健右著・一五七五円︶などがあり、こ 二一〇〇円︶などあげると切りがないが、 愛小説ふいんき語り﹄ ︵ ポ プ ラ 社・ ント確認があるほどの丁寧さで書かれて ﹁ ゲ ー ミ フ ィ ケ ー シ ョ ン ﹂ と は、 ゲ ー れからも数は増えてくる分野であろう。 TURNS﹄ ︵ フ ィ ル ム ア ー ト 社・ 一六八〇円︶などがある。その他、 ﹁シー いる。と同時に、本書自体を作っていく ムにおいてユーザーのモチベーションを はその人独自の発想と方法論でゲームを マン﹂の斎藤由多加が日々のちょっとし 美人編集者との軽妙なやりとりが随所に コントロールするために使用されている 命館大学教授でもある米光一成には、あ 中でも﹁俺の屍を越えてゆけ﹂の桝田省 た気づきから一歩も二歩も踏み込んだ考 挿入され、なるほどこの本そのものが桝 数々のメカニズムを、他の分野に応用す 作る。そのような考えることのプロでも 察を開陳する、タイトルも暗示的な﹃ハ 田のゲームデザインによって生み出され る こ と を 言 う。 端 的 に 言 っ て し ま え ば、 治の﹃ゲームデザイン脳﹄ ︵技術評論社・ ンバーガーを待つ 分間の値段﹄ ︵幻冬舎 たものだと読んで実感できる作りとなっ 人を動かす仕組としてゲームのノウハウ あるゲームクリエイターは、多くはビジ 文庫・五二〇円︶ 、﹁枯れた技術の水平思考﹂ て い る。 ゲ ー ム を 離 れ て も、﹁ 考 え る ﹂ ネス書に分類されるような発想本を出し ︵=最新の技術ばかりを追い求めるのでは ということに対し有用な一冊であること − 12 − 一六五九円︶は出色のおもしろさだ。 なく、既存の技術を全く別の用途に応用 『ゲームデザイン脳』 ている。 ﹁ぷよぷよ﹂の産みの親であり立 すること︶を座右の銘とし、それを用い 3 ル ゲ ー ム の 会 社 の 儲 か り ぶ り を 見 れ ば、 あるのは大前提として、最近のソーシャ ゲームが単純に人を熱中させるもので もあるようだ。多くのゲーム事例とその りが取りざたされることへの牽制の意味 はゲームをビジネスにつなげる手法ばか ン﹂という言葉を使っていないが、それ 説く本書は、あえて﹁ゲーミフィケーショ れたっていいと思う。なんて、ふざけ過 ところだけを読むのではなく通読してく ただけなので、律儀に自分のあてはまる とったがあくまでそのような体裁をとっ 三パターンの人に向けるという形を 最後に れたらとこっそり願う。 そこに何かあることに気づく。これだけ 活用方法が丁寧に描かれ、そこから明る ゲームが現実世界にプラスに作用すると テレビCMを打っている業界は他にない い未来を照射する。 を用いることだ。 であろう。ソーシャルゲームはいかに人 きれなかったのだから、載せるべきあの まだまだ書きたい作品があったが載せ ありがとうございます。 ぎました。拙文を読んでいただき本当に を魅きつけ、実体のないゲーム内の商品 にまでお金をつぎ込ませられるのかが肝 要 だ。 そ こ で 用 い ら れ て い る 手 法 こ そ あたりのソーシャルゲームの錬金術につ うかと思う。それは偏に私の力不足によ 本が載っていない ! なんてことがあろ 具のようでしかないゲーミフィケーショ そこばかり取り上げればお金儲けの道 あればご一読を。 二三一〇円︶が非常に詳しい。ご興味が トバンククリエイティブ・深田浩嗣著・ シ ャ ル ゲ ー ム は な ぜ ハ マ る の か ﹄︵ ソ フ そのハマらせる仕組みについては﹃ソー だけたらと切に願う。そしてもしよろし なく、共存していく気持ちを持っていた ム﹂に対しただ拒否反応を抱くだけでは い浸透しているものなのだ。だから﹁ゲー は使われているかもしれない。それぐら たサービスにも、ゲーミフィケーション いるアプリにも、あるいは飲食店で受け 実際、ゲームをしないあなた方の使って そのように書くと大げさに聞こえるが で。あらためまして。 残念である。と最後までふざけたところ かったことは、同じく信者である私自身 一二六〇円︶という怪作に触れられな んゲーム天国﹄︵晋遊舎・佐藤にんと著・ め、任天堂信者を主人公にした﹃にんし 書かないように﹂と注意を受けているた 頼される際に﹁政治的・宗教的なことは るところである。ただし、この原稿を依 ンだが、ゲームは社会を変えると力強く ﹁私の趣味はゲームです ! ﹂ ︵新静岡店 堀内︶ − 13 − ﹁ ゲ ー ミ フ ィ ケ ー シ ョ ン ﹂ で あ る。 こ の いての話は﹃ソーシャルゲームだけがな ぜ 儲 か る の か ﹄︵ P H P ビ ジ ネ ス 新 書・ 宣言する書籍がある。その名も﹃幸せな け れ ば、 そ れ と こ れ と を 混 同 し て ゲ ー 中山淳雄著・八六一円︶に詳しい。また 未来は﹁ゲーム﹂が創る﹄ ︵早川書房・ジェ マーに対しても優しい気持ちになってく さあ、さらけだそう。 イン・マクゴニガル著・二九四〇円︶だ。 『幸せな未来は 「ゲーム」が創る』 社 会 科 学 中国共産党と資本主義 あとがき﹂でも触れられているが、文中 し、 分 析 し な が ら 探 求 し て い る。﹁ 訳 者 ともと電子書籍だったのを紙の本用に再 ルの大きな問題まで、範囲は幅広い。も 八四〇円 編集。値段も手頃だ。 大阪府警暴力団担当刑事 実業之日本社 には日本との比較が散見される。それだ け 日 本 が 新 興 国 の 反 面 教 師 と し て 映 り、 日本人にとっては反省すべき材料として 提示されているように思われる。 ノーベル経済学賞を受賞した人物。中国 なお現役の経済学者で、一九九一年には 数が多く、本書はこういったアンダーグ 発している。なかでも大阪は以前から件 れ、各地でそれに関わる様々な事件が頻 近年全国で暴力団排除条例が施行さ 森 功著 副題は﹁祝井十吾﹂の事件簿。 情報の方は主に王寧氏が提供し、なぜ中 ラウンドの世界を長年取材してきた著者 二三一〇円 国経済は共産主義から資本主義へシステ の意欲作。タレントの島田紳助氏が黒い 早川書房 ム転換したのか、その謎に迫った本格論 交際を理由に突如引退した出来事は 本。﹁ 一 杯 三 〇 〇 円 の コ ー ヒ ー で ス タ バ 済の知識が身に付く、とてもためになる スとシェールオイルの採取量が、米国を 下の頁岩層に埋蔵されているシェールガ このところ掘削技術の進歩により、地 − 14 − ロナルド・コース、王 寧著 著者のひとり、コースは百歳を越えて 文。日本と中国は尖閣問題等で政治的に 二〇一一年八月、まだ記憶に新しい。暴 一五〇〇円 が り が 詳 細 に 描 か れ て い て、 非 常 に 力団と芸能界・ボクシング界の裏のつな はぎくしゃくした関係だが、経済面では 歳までには〝最低〟知っておきたい ショッキングな内容。 講談社 外資系金融機関のインド出身の投資家 の儲けは?﹂といった身近なところから、 シェール革命で日本が再浮上する に よ る 新 興 国 経 済 の 経 済 予 測 本 で あ る。 ﹁日本の債務超過の額は?﹂というスケー 百問出題されていて、解けば解くほど経 経済分野のセミナー講師。クイズ形式で 著者は大手証券会社出身の投資・金融・ 洞口勝人著 経済学ドリル お互いに貿易の最重要相手国だ。かなり 重厚な内容だが、専門家からビジネスマ 二九四〇円 ンまで、読んでおいて損はない一冊。 日経BP社 ブレイクアウトネーションズ 昨今の世界経済が行き詰まる中、そこを 藤田 勉著 突破する国を政治や経済のデータを収集 ルチル・シャルマ著 35 社会科学 を目指す日本のエネルギー政策とも関連 内容。国別の情勢分析も的確で、脱原発 がグローバル経済に与える影響を論じた 中心に各国で増加している。この新資源 して著者は、階級間の分離がこれ以上進 いることを明らかにしたためである。そ けており、文化的に異なる二つの国民が カが人種ではなく階級によって分裂しか がっている。 中央公論新社 ノマドと社畜 三一五〇円 最近ネットやメディアで﹁ノマド﹂が 谷本真由美著 話題に上ることが増えてきた。オフィス に縛られず本人の裁量に応じて自由に働 な働き方のように思える。しかし、イメー く﹁ ノ マ ド︵ 遊 牧 民 ︶﹂ は、 一 見 魅 力 的 別名ネコビルや書庫、研究室の書棚を丹 ビル一棟まるごとが書棚になっている 労 死 や う つ と い っ た 問 題 が 起 き て い る。 という言葉があり、いまだに日本では過 奴隷のようなサラリーマンを指す﹁社畜﹂ 要 す る 大 変 厳 し い 世 界 で あ る。 か た や、 ジとは違って、ノマドは高度なスキルを 念に写真家が撮影しながら、その書棚に 本 書 で は こ の 二 つ の 言 葉 か ら、﹁ こ れ か 三三六〇円 た﹁建国の美徳﹂が失われ、社会の土台 むと、アメリカをアメリカたらしめてき 一五七五円 が崩れると指摘している。 草思社 立花隆の書棚 ある本を著者自らが紹介していくという 立花 隆著 企画から生み出された本である。その写 ら、収集目的や書籍の知識の背景を次々 て お り、 置 か れ て い る 本 を 披 露 し な が 九二四円 らの働き方﹂について考えていく。 変化の中で生まれた新しい階級に関する と 紹 介 し て い く。 本 の ジ ャ ン ル は 多 岐 朝日出版社 真も全てではないが、書名や本の状態も もので、発売と同時に全米で大反響を呼 に わ た り、 書 名 索 引 が 巻 末 に つ い て い 各章がビルのワンフロアずつとなっ 鮮明にわかるものもある。 んだ。しかし、大反響というのは必ずし る ほ ど で あ る。 書 棚 は 著 者 が 言 う よ う − 15 − が深く、注目の一冊だ。 毎日新聞社 階級﹁断絶﹂社会アメリカ チャールズ・マレー著 本書は、一九六三年十一月二十一日以 も賛同者が多いという意味ではなく、賛 降にアメリカ社会で起きた変化と、その 否両論の議論を呼んだのがこの本の特徴 をかけて集積してきた姿が浮かび上 に﹁ メ イ キ ン グ・ オ ブ ﹂ で あ り、 一 生 それほどの議論を呼んだのは、アメリ である。 社会科学 コンピュータ カーニハン先生の﹁情報﹂教室 ディジタル作法 著 Brian W.Kernighan 久野 靖訳 C言語のバイブル﹃プログラミング言 いる世界のことを、よりよくわかってお Land of Lisp 著 Conrad Barski,M.D. 川合史朗訳 他の言語使いから﹁わけがわからない 。しかして Lisp その正体は宇宙人だったのだ ! 本書の よ﹂と敬遠されがちな 表紙に描かれているマスコットキャラの 語 C ﹄ の 著 者 と し て 有 名 な カ ー ニ ハ ン。 き た い と 考 え る 一 般 読 者 ﹂、 つ ま り 現 代 の国﹂も必読。 オライリー ゲームの作り方 ジ ・ ャパン 三九九○円 き 強 力 さ を 併 せ 持 つ Lisp 。 さ あ、 エ イ リアンと契約しよう。巻末コミック﹁ Lisp 彼が教鞭を執った情報科目の授業が書籍 ジョージ・ダイソン著 吉田三知世訳 コンピュータが生まれるまでの道程を チューリングの大聖堂 ﹁すべてその目で見てきた﹂かのような に生きるひとすべてといえる。情報社会 エ イ リ ア ン が、 そ の 証 拠。 古 典 的 Lisp でありながら、数学的な美しさと比類な 描写に圧倒される。ノイマンらを擁した の落とし穴に嵌らぬよう、カーニハン先 化された。対象は﹁自分たちが暮らして プリンストン高等研究所の名誉教授フ 二三一○円 生にお作法を学ぼう。 空飛ぶ オーム社 リーマンの息子、いわば門前の小僧だっ た著者の経歴によるものも大きいだろ う。天才たちの情熱と、水爆や暗号解読 は 最 近 注 目 の ゲ ー ム 開 発 環 境。 Unity 趣味でゲームづくりをするのに最適な手 で覚える遊びのアルゴリズム Unity 加藤政樹著 著 Naomi Ceder 新丈 径監訳 コンピュータ書らしからぬタイトルと の現役開発者によるサンプルゲームが一 Python 即時開発指南書 ピュータは生まれた。その複雑な網目を ファンキーな表紙が目を引く。これは本 章につき一つ、計十個がコードと共に紹 といった時代の要請が絡み合って、コン 三六七五円 書で扱うスクリプト言語 Python の名が、 英TVコメディ﹁空飛ぶモンティ・パイ 介されている。レトロなドットイーター 早川書房 つまびらかにする一冊。 ソ ン ﹂ に 由 来 す る か ら。 原 著 初 版 は ソフトバンク・クリエイティブ 三七八○円 軽さが人気だ。本書ではバンダイナムコ 一九九九年発行のロングセラーで、今回 からリズムゲームまで、 Unity の可能性 がてんこ盛りの一冊。 二九四○円 日 本 語 訳 さ れ た の は Python3 対応の第 二版。見た目はちょっと飛んでるけれど、 内容もまた富んでる。 翔泳社 − 16 − コンピュータ ﹁つながり﹂の進化生物学 フェルマー予想が三五〇年かかったこ 一 五 〇 年 を 超 え て も い ま だ 解 決 し な い。 ABC予想についてはとりあえず本書 とを思えば仕方ないのだが。 岡ノ谷一夫著 現代社会で生きる以上、他者とつなが りを持たずに済ますことは不可能であ を開いてもらいたい。本文はあくまでa 自 然 科 学 る。コミュニケーションスキルの良し悪 しいという願望と実際の予想との違いも 明確に述べている。長くかかったフェル bc 予想という表記だし、こうあって欲 マー予想が容易に証明できるというa b しがその人の評価に直結することも珍し 本書はそんな﹁コミュニケーションと c 予想への帰着についても一部の証明に 集落が育てる設計図 心﹂について探求する、四日間の講義を くない。 まとめたものだ。講義ではまず、動物の アフリカ・インドネシアの住まい ネシアの部族の家屋には、現在の日本建 まう人も多かろうが、このa bc 予想が この本で紹介されるアフリカ・インド 築にはとうに見られない、民族の思想や 留まるとしている。 通する本質を探り出す。そして議論は人 評判になったのは京大の望月新一教授が 数式が並ぶだけで拒否反応が起きてし 様々な事例・観察から、人間と動物に共 それは外敵から家族を護るための隠 間の心・言葉のなりたちへと深まり、コ けた黒川・小山コンビの狙いはともかく、 − 17 − 習性がはっきりと表現されている。 し部屋であったり、祖先の霊が住む屋根 て取り上げず、その起源となった楕円曲 五〇〇ページを超える論文の詳細はあえ ﹁宇宙際タイヒミュラー理論﹂という 証 明 を 完 成 し た と 発 表 し た か ら で あ る。 ミュニケーションの未来を考察する。 興味深く楽しめるはず。 朝日出版社 ある程度数学が分かる人間には手軽な好 線論の解説にとどめている。持論の﹁絶 一五七五円 生 物 学 やS F・ 音 楽 を 好 き な 人 な ら、 であったり、あるいは男の空間、女の空 間というように性別で区別された構造 だったりする。特にインドネシアの住居 は地下界・地上界・天上界を表現した三 層から成っていて、集落が宇宙であるら 数 学 予 想 は 数 学 の 醍 醐 味 だ。 ク レ イ 著だろう。 対数学﹂を六章のタイトルに無理やり付 数学研究所によって懸賞の懸けられた ABC予想入門 ための空間ではなく、こうした民族のア 七 つ の 未 解 決 問 題 は、 そ の ひ と つ ポ ア 黒川信重・小山信也著 イデンティティを確保維持する装置でも ンカレ予想が例のキノコのおじさんこ 住まいとは、集落とは、単に生活する しい。 あるとしたら、我々日本人は果たして何 PHPサイエンス・ワールド新書 九四五円 を伝えていったらいいのだろう、という が、 最 大 の 難 問 リ ー マ ン 予 想 な ど は とペレルマンによって解き明かされた 一八九〇円 ことを考えさせられた。 リクシル 自然科学 医 学 書 教えて ! ICU集中治療に強くなる 会人基礎力﹂を意識的に育成していくこ ために必要である基礎的な力とされる﹁社 中で多様な人々とともに仕事をしていく 職の一因にもなっている。職場や社会の で あ り、 臨 床 経 験 を 積 み 重 ね る 医 師 に 何より患者を中心に据えた医療の実践書 文を読んでいただいてもわかるとおり︶ ちたユーモア等記述は広範に亘るが、︵序 障害者の芸術表現 残念ながら日本は非常に後進的である感 も つ 人 た ち と の 共 生 感 覚、 公 共 政 策 も、 アートに対する社会的感覚も、障害を 川井田祥子著 一二六〇〇円 とっての良き教科書となっている。 に沿って求められる基礎力を培う。将来 医学書院 とが必要になってきた。﹁前に踏み出す力﹂ ﹁考え抜く力﹂ ﹁チームで働く力﹂の三つ の看護職を支える人材を育成する、新た の能力と、それに基づく十二の能力要素 雑誌﹁レジデントノート﹂の連載から な取り組みである。 早川 桂・清水敬樹著 大 幅 に 追 記 し パ ワ ー ア ッ プ さ せ た 書 籍。 二三一〇円 が否めない。こういった書が、多くの人 日本看護協会出版会 重症患者の回復を担うICUは﹁病院の 中の病院﹂といわれ、非常に重要な位置 の目を開くことのきっかけになれば。そ づけになっている。現在、集中治療医が 身体診察のアートとサイエンス サパイラ が、名だたる先生方の手により遂に邦訳 水曜社 二六二五円 りまく現状と、今後の展望が描かれる。 いたい。障害者が生みだす芸術作品をと して、実際にその芸術に触れてみてもら 主治医となっている病院は僅かで、多く 一九八九年に原著初版が刊行されて以 須藤 博・藤田芳郎・ 徳田安春・岩田健太郎監訳 は各診療科医が主治医になっており、集 中 治 療 医 の 育 成 が 求 め ら れ る。 本 書 は、 カンファレンス形式で解説する。ICU 来、他に類を見ない幅広い記述と臨床医 研修医とチーフレジデントが症例ごとに 診療に必要な知識と技術を身につけるの のステップアップに有用な書として知ら れていたが、同時に〝難解な英語〟とし に最適な一冊。研修医に是非 ! 数 あ る 身 体 診 察 の 書 籍 と 一 線 を 画 す が、 て も 有 名 で あ っ たDr .サ パ イ ラ の 名 著 看護職としての社会人基礎力の育て方 決してエキセントリックな内容というわ 三九九〇円 箕浦とき子・高橋 恵編 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 取 れ な い、 けではない。歴史書からの引用、毒に満 羊土社 一般常識がないなどの学生や新人が増え された。著者の考え方が色濃く反映され、 ている。新人看護職も例外ではなく、離 − 18 − 医学書 散種 人 文 科 学 原書の出版から四十年、ようやく日本 ジャック・デリダ著 語訳が出版された。待ち望んでいた読者 ト三十代女性Aさんの夢である。 Aさんの夢に吸血鬼が登場するのだ 今、話したい﹁学校﹂のこと 歳のニュース﹂の 当て、その象徴性について研究しはじめ 話は簡潔だが、物事や問題の本質にせま る多くの話材が取り上げられる。一話一 連載をもとにした本書は、学校にまつわ 毎日新聞の週刊﹁ 藤原和博著 る。本書は吸血鬼についての研究ではな が、著者は大胆にもその吸血鬼に焦点を い。吸血鬼のイメージについての研究で るべく考えるためのヒントに満ちている。 力﹂を養って、学校や社会生活に役立て 著 者 が 望 む の は、 本 書 を 参 考 に し て、 ある。吸血鬼のイメージの変遷を心理学 生徒や親や先生であれ読者が﹁複眼思考 の観点から考察した一冊。 二九四〇円 てほしいということだ。価値が多様化し、 創元社 本質が見えづらい社会におくる﹁よのな も 多 い だ ろ う。﹁ 散 種 ﹂ を 含 む 四 篇 の 論 苦縁 本書は宗教・文化専門紙﹁中外日報﹂に キャプテン・クック 一二六〇円 文=思考が収められた本書は、デリダ的 か科﹂藤原先生の思考法。 東日本大震災 寄り添う宗教者たち 北村敏泰著 脱構築の基礎となる概念が総結集してい る。中でも﹁書物外﹂の書き出しは思弁 約一年に亘って連載されたものに加筆 ポプラ社 ︽︵それゆえに︶これは一冊の書物では 世紀の大航海者 東 日 本 大 震 災 の 発 生 か ら 二 年 が 経 つ。 な か っ た、 と い う こ と に な る だ ろ う。︾ し、被災地での様々な宗教者の活動をま フランク・マクリン著 的で実にデリダらしい。 この一文が種になり、やがて一冊のテク とめたものである。被災地の凄惨な現実 遂げ、世界地図の発展に大きな功績をも 大航海時代に三度の太平洋航海を成し ストへと育ってゆく、まさに〝散種〟で と、それに立ち向かい、被災された方々 たらしたキャプテン・クックは、イギリ の心の痛みに寄り添い続ける宗教者。 スの貧しい農民の子どもとして生まれた。 六〇九〇円 ある。 六章で岡部医師が語っていた﹁宗教は やがて海軍の測量士として頭角を現わし、 法政大学出版局 被災体験︵中略︶を圧倒的に持っている ついには史上初めて壊血病による死者を 吸血鬼イメージの深層心理学 の だ か ら、︵ 中 略 ︶ 近 代 科 学 の 知 識 の 集 四七二五円 積は宗教にはかなわない﹂という言葉に、 東洋書林 本書は心理療法の中で語られた﹁ひと 井上嘉孝著 一九九五円 一人も出さずに世界周航を成功させる。 徳間書店 宗教の持つ力を改めて感じさせられた。 つの夢﹂とは著者が担当したクライエン − 19 − 15 つ の 夢 ﹂ に つ い て 分 析 し た も の。﹁ ひ と 人文科学 文学・文芸 アサイラム・ピース アンナ・カヴァン著 ある作品に触れるとき、その作家本人 敵な装丁は、ハヤカワポケットミステリ に触れるものがあるはず。冷たく輝く素 じたりすることがあるなら、きっと琴線 りを感じたり、何か少しでも違和感を感 に、 些 か も﹁ 虚 ﹂ は 無 い。 で は、 ﹁虚実 いるので、緑川南京=森達也という人物 状況、緑川南京の行動に足し引きされて があるとしたら、緑川南京にふりかかる 緑川南京は、森達也その人である。 ﹁虚﹂ 皮 膜 ﹂ を 自 在 に 横 断 す る 小 説 と し て は、 失敗か? ぼくは決してそうは思わない。 そもそも人は、自分のことしか書けない。 ものの姿は、輝く瞳の奥にある闇を想像 登場する〝淡い色の髪をした少女〟その のはつい最近のことだったが、物語にも ここに書かれたほどに素敵だったりドラ 自 身 の あ の 頃 の 思 い 出 が よ ぎ る は ず だ。 描いたこの作品を読めば、きっとあなた 様々なシチュエーションでの﹁卒業﹂を 学校はもちろんのこと人生における 世界を創造している訳でもない。本書を も、様々な層が重なりあって密度の濃い プロットが読者を驚かせてくれる訳で が、つまるところ著者自身である。 それが時代小説であろうがSFであろう ためである。多くの小説作品の主人公は、 小説の﹁虚﹂は、自分の﹁実﹂を伝える してもなお美しく見えた。 マチックだったりするものはないかもし 読 む 快 の 源 は、 や は り 森 達 也 の﹁ 煩 悶 ﹂ 二三一〇円 のリニューアルを手がける水戸部功氏。 国書刊行会 卒業するわたしたち 一九四〇年に初めて刊行された本書は れないけれど、みんなそれなりに切ない である。恐らくは森達也自身そのことを 加藤千恵著 八つのピースからなる短編集で、どれも 春の季節の花のようにいろどり楽しく 思いのひとつやふたつはあるだろうから。 自覚しているから、すべての章で、緑川 にどうしようもなく惹かれることがあ カヴァンの実人生と少なからずリンクし 南 京 = 森 達 也 は、﹁ 悶 え る ﹂ の だ。 ぼ く る。アンナ・カヴァンの古い写真を見た ている。終生不安定な精神状態に侵され、 集められた作品集、旅立つ季節をむかえ 紀伊國屋書店 一七八五円 これこそ、﹁全体小説﹂と言うべき? の 対 象 は、 世 界 全 体 へ と 拡 が っ て い く。 うなく生じる森の﹁悶え﹂である。﹁悶え﹂ なあり様にぶつかっていく過程でいやお たちに訴えて来るのは、世界のさまざま 詩情豊かな表現がある訳でも、巧みな ヘロインが手放せなかった彼女は、その た人に贈りたい。 一四七〇円 森 達也著 森達也が、小説を書く。主人公を、緑 虚実亭日乗 小学館 悪夢のような日々を幻想的な心象風景と 絡めて描き、美しい物語へと昇華させた。 囚われの身であることや見えない敵、強 迫観念など全編通して静かな狂気が渦巻 や調度品などのクラシックな彩りが乙女 川南京と名づけた。だが、どう考えても く中、仔細に描写される登場人物の衣装 心をくすぐる。時々世の中との間に隔た − 20 − 文学 ・ 文芸 文庫・新書 ジオなのだ。 岩波新書 ルピナス探偵団の憂愁 津原泰水著 七九八円 と抽象的に話してくれ﹂といわれること くれ﹂と要求されることは多いが、 ﹁もっ げて﹂という要求は、 既に形容矛盾なのだ。 はまず無い。だが、 ﹁具体的に、数字を挙 社 の 社 員 に な る た め に 来 日 し て 以 来 の、 彼が一九七四年イギリスから音楽出版 VJ としておなじみの存在なのである。 て、 ピ ー タ ー・ バ ラ カ ン と い え ばDJ 、 八〇年代洋楽と共に過ごした世代にとっ 書 で 出 る ! と 聞 い て 驚 い た。 青 春 を ピーター・バラカンさんの本が岩波新 れる。愛する人の死は悲しい。堪え切れ を去って行く摩耶の生前の言動に心奪わ みどころである。そしてやはり、この世 相と、探偵団によるあたたかい解決が読 して、突き詰めるほどに切ない事件の真 時間を遡って描かれる。三編ともに共通 から、卒業式前夜に起こる殺人事件まで 大人になった探偵団が出会う最初の事件 ズ第二弾の本作は、高校を卒業して少し ﹃ルピナス探偵団の当惑﹄に続くシリー 死︱︱物語の始まりは衝撃的である。 思 い 込 み か ら 自 由 に な る こ と に よ っ て、 名探偵も、他の登場人物たちが囚われた を促す。思えば、森博嗣作品に登場する けてゆこうとする抽象的思考は、 ﹁発想﹂ もの﹂ ﹁問題を解決しそうなもの﹂を見つ を限定して決めてかからず、 ﹁使えそうな 考が不可欠と言える。最初からものごと 紛争を理解するためには、その抽象的思 のも、 抽象的な思考である。対立を緩和し、 がどう考えて行動しているのかを捉える した抽象的なものだからだ。また、他人 数字とは、具体的なものを徹底的に捨象 日本の音楽・放送業界での奮闘が描かれ 〝 世 の 中 は、 具 体 的 な 方 法 に 関 す る 情 多くの難事件を解決していった。 ルピナス探偵団に属する美少女の る。今、若い人が我々の世代ほどラジオ ないほどに苦しい。でもきっと、それだ 報で溢れ返っている。こんなに沢山の情 ラジオのこちら側で から音楽を教えてもらうことはあるのだ けではない。それは第一話のキリエの最 報が存在できる理由は、結局それらの方 七三五円 − 21 − ピーター・バラカン著 ろうか。バラカンさんは言う。 八一九円 新潮新書 森の言葉は、いちいち正しい。 い人が多すぎるからだ。〟 いのである。なにしろ、全然考えていな にに対しても、もうちょっと考えてほし 法では上手くいかないからである。〟〝な 後の台詞から、読者にも伝わるだろう。 えられている。 ﹁もっと具体的に説明して 森 ﹁具体的﹂ 博嗣著 世 の 中 で は、 が﹁抽象的﹂よりもずっと良いものと考 人間はいろいろな問題について どう考えていけば良いのか 創元推理文庫 ﹁ 確 か に 様 々 な も の が デ ー タ 化 さ れ、 ネットから検索することができるように なったけれど、そもそもどんなものがあ るのかを知らなければ探し出すこともで その役割を果たすメディア、それがラ うな存在。﹂︵二〇四ページ︶ いのか、その手がかりになる名画座のよ きない。何を観ればいいのか、聴けばよ 文庫・新書 芸 術 に 学 ん だ、 D&DEPARTMENT 人が集まる ﹁伝える店﹂のつくり方 こども部屋のアリス ルイス・キャロル作 清川あさみ絵 私達はこれからどういう考えで﹁モノ﹂ いる。 と向き合い、何を大切に後世に残してい さ み さ ん の 新 し い 題 材 は﹁ 不 思 議 の 国 世 界 を 作 り 出 す ア ー テ ィ ス ト、 清 川 あ 手 法 で、 キ ラ キ ラ と 華 や か か つ 繊 細 な 写真に直接刺繍を施すという独特の 金原瑞人訳 一九九五円 かなくてはならないのか、改めて考えさ せられる一冊である。 美術出版社 まなざしのエクササイズ アリスの幻想的な雰囲気はそのまま のアリス﹂。 に、ビーズやスパンコールが散りばめら ポートレート写真を撮るための 批評と実践 ロズウェル・アンジェ著 れた鮮やかな世界が広がっている。 毎月、毎週、毎日のように新製品が発 ナガオカケンメイ著 売され、たくさんの﹁モノ﹂があふれる 大坂直史訳 界に、一度迷い込んでみてはいかがだろ 清川あさみさんが作りだす不思議な世 この時代、私達はどのように﹁モノ﹂と る事ができる写真。風景、人物、動物な 世界の一瞬を切り取り、記録、保存す 壊れたら買うほうが安いとすぐに買い うか。 向き合っているのだろう。 ど、その対象となるモチーフは実に様々 一七八五円 替え、新しいものが発売されたら古いも 三三六〇円 リトルモア である。 シャッターを押せば写真は簡単に撮る について詳しく述べている。 作品を例にとりながら、その解釈や技法 本書は、ポートレートについて歴代の の は 捨 て る。﹁ 良 い モ ノ ﹂ を 長 く、 大 切 に使うということが少なくなってきてい るのではないだろうか。 そんな消費のあり方に疑問を投げか ことができるが、写真を﹁素敵に﹂撮る け、息の長いデザイン、つまり、ロング ことはとても難しい。 フィルムアート社 が満載の一冊となっている。 敵に﹂ポートレートを撮るためのヒント 内容は少し専門的かもしれないが、﹁素 ライフデザインが﹁正しい﹂という考え 。 D&DEPARTMENT の下、ナガオカケンメイさんが作り出し た売り場、 本 書 は、 D&DEPARTMENT が成立 に 到 る ま で、 そ し て 現 在 ま で の 展 開、 さらにはこれからの展望まで書かれて − 22 − 芸術 昭和の洋食 平成のカフェ飯 阿古真理著 タニタ食堂のレシピ本が流行った事に も理由がある。それを紐解くのがこちら 現地の人の日々の暮らしの中から、背 二度の旅で訪れることになる。 後の大きな独立国家のイズムを見つけ出 しているところが、非常に面白い。 二三一〇円 ウルトラライトハイカー 本の雑誌社 ハ イ キ ン グ ス タ イ ル の ひ と つ と し て、 実 用 書 地図・旅行書 の一冊。 ﹁食﹂を中心に、女性の生き方や 視点で、食事の変遷について言及してい 文化について書いてきた著者ならではの る。レシピ本だけでなく、当時はやった アウトドア大国アメリカで生まれた﹁ウ 重機の世界 巷では鉄オタ・バスマニア・工場萌え テレビ番組などメディアでの描写を例に ルトラライトハイキング﹂。 高石賢一著 などなど、その魅力に心を奪われてそれ 挙げ、 社会背景と絡めて紹介している。﹁家 に よ っ て 培 わ れ て き た そ の ス タ イ ル は、 ロングトレイルを歩くスルーハイカー を中心に、いやそれを糧に生きる人々が 庭料理の かと思いきや、身近な作品、題材と、テ 装備の軽量化を図ることでより長い距離 年﹂という副題のため固い本 存在する。皆様はご存知だろうか、その マニアックな分野の一つに﹁重機﹂とい ンポの良い文調で楽しく読ませてくれる。 ハ イ キ ン グ の 魅 力 で あ る〝 歩 く こ と 〟 う世界が存在するのを。 今までの食卓これからの食卓に思いを を快適にし、自然とのかかわりを重視し と時間の歩行を可能にする。 重 機、 い わ ゆ る モ ン ス タ ー マ シ ー ン 一七八五円 のハイカーが日本の山を歩いてそれぞれ ているのか? 実際の装備について十組 たその手法をどう取り入れ、どう実践し 馳せて、今日の一皿をおいしく食べたい。 謎の独立国家ソマリランド 筑摩書房 に惹かれた彼らの魅力ポイントは、様々 だ。見た目の重量感など、最早当たり前。 一つの能力に特化した機能面がツボな 者。人の手では有り得ない、そのパワー を 極 め る ソ マ リ ア の 一 角 に、﹁ ソ マ リ ラ し む の な ら、 ウ ル ト ラ ラ イ ト を 応 用 し 季 節 と な っ て き た。 シ ン プ ル に 山 を 楽 暖 か く な り、 自 然 に 親 し む に は 良 い のこだわりや工夫を紹介する。 合 の ク レ ー ン、 そ し て そ の フ ォ ル ム に ンド﹂という、国連非公認ながら、平和 一九九一年の中央政権の崩壊以降混迷 高野秀行著 失 神 す る 者。 そ ん な 未 知 な る 重 機 に、 一五七五円 たハイキングに出かけてみてはいかが 山と渓谷社 だろうか。 そんな未知なる国に吸い寄せられるよ ソマリランドのみならずソマリア全土を うに向かった著者は、探究心の赴くまま 的に民主主義を維持している国がある。 すよう。 一九九五円 ようこそ ! 重機の世界へ ! 東京書籍 − 23 − 80 ぜひあなたの心の扉もこじ開けられま 巨 大 な タ イ ヤ や、 計 り 知 れ な い 伸 び 具 に ひ た す ら 圧 倒 さ れ る 者。 ど こ ま で も 実用書/地図・旅行書 語学・辞典 あって、日本人には馴染みの薄いアメリ カ文化について、本編と同じぐらいの文 章量で書かれている。各章の物語とコラ 英語で歌おう ! スタンダード・ジャズ 染みのあるジャズのスタンダードナン かっこいいと思いませんか? 本書は馴 ジ ャ ズ を 英 語 ら し い 発 音 で 歌 え た ら、 里井久輝著 わせて理解できるように取り組んでみ ムはテーマを共有しているので、両方合 よう。 バ ー で、 楽 し く 英 語 の 発 音 を 学 習 し て 目的だが、歌を題材とし、発音だけでは 英語らしい発音をマスターすることが いく。 一六八〇円 DHC これならわかる ! 英語ができるワークブック なく上手に歌うためのコツも書かれてい るので、歌いながら英語の音を体で覚え う。一編の本文は二ページほどで長くは とだという。日本語では﹁誰が・何を・ は日英の語順の違いについて意識するこ が入っているので、自分で口に出して読 されている。朗読には一行ごとにポーズ 著者は、英語を学ぶうえで大切なこと 清水建二著 ないし、対訳形式なのでこれから学習を どうした﹂と並んでいるのに対して、英 んでCDの発音と照らし合わせてみるこ 自分が知っている言葉をどういった場面 変わってくる。彼らのやり取りを通して、 で、当然、用いられる単語やフレーズも スト図解している。練習問題も付いてお けたりするように、単語の並べ方をイラ 五文型を中心とする英文法を話せたり書 この本では受験英語として習ってきた ズに関するコラムがあり、ジャズについ にもおすすめである。 がされているので、今まで苦手だった人 発音記号には簡潔で分かりやすい解説 CDには歌に続き、歌詞の朗読も収録 始める方でもすんなり読める作りになっ 語では﹁誰が・どうした・何を﹂となっ とができる。 られるのである。 ている。 ている。これらの語順を意識して学ぶこ で使うのが適切かを学ぶのが、この本の り、これらをこなしていくことで、イチ 一五七五円 アルク 二一〇〇円 また、十二曲の解説の各章末にはジャ 主眼といえるだろう。 ての豆知識を得ることができるだろう。 また、各章の末尾にあるコラムにも注 目 で あ る。﹁ 英 会 話 の 学 習 に 欠 か せ な い ベレ出版 しっかりと身に付くだろう。 からでもつまずくことなく使える英語が それぞれの境遇に応じた会話がされるの ビジネスマンの父、大学生の長男など、 とで、英語力がつくそうである。 出されるので、連作短編とも言えるだろ る。ところどころで前の章の話題が持ち の個々の物語を追う会話劇になってい この本は、ある家族を軸にして、一日 ジェームス・M・バーダマン著 ストーリーで学ぶ 時間まるごと英会話 24 のが英語圏の文化への理解﹂と仰るだけ − 24 − 語学・辞典 児 童 書 かいぶつになっちゃった 一四七〇円 がこの絵本の世界観を見事に表現してい た保は、夏の終わりに友人達と地元に伝 ﹁ 天 狗 ニ ア ウ ﹂ と い う 一 文。 興 味 を 持 っ ます。 ブロンズ新社 願っていた木三太という天狗。その行方 ま だ 若 か っ た 祖 父 が 出 会 い、 再 会 を わる天狗伝説について調べ始めます。 を調べていくうちに、生前は疎遠だった め牛のママ・ムー ユィヤ・ヴィースランデル、 や山の神秘的な力、それらが思いがけず 祖父の心にも近づいてゆくこととなりま 日常と隣合わせに存在していることに気 トーマス・ヴィースランデル文 好 奇 心 旺 盛 で 失 敗 な ん か 気 に し な い、 がつき、ドキドキしました。人物一人一 す。祖父が木三太から聞いた天狗の生活 め牛のママ・ムー。 ﹁やってみたいの ! ﹂ 人がもう少し際立ってみえてくるとなお スヴェン・ノードクヴィスト絵 待望の復刊です。その内の一冊﹃かいぶ の一言から繰り広げられるお話はどれも 山崎陽子訳 つになっちゃった﹄は、森の奥の洋館に 愉快でのびのび楽しく、目をキラキラと 木村泰子さんの絵本五作品が、同時に あらわれたかいぶつを動物たちが追いは 一八九〇円 − 25 − 木村泰子作・絵 らいに行くというお話です。結末もさる 一九九五円 巣 を 見 れ ば、 ク モ の 種 類 が わ か る ! 新海 明著 谷川明男写真 クモの巣図鑑 理論社 良かったと思います。 一六八〇円 輝かせながら遊ぶ姿がとってもいいです。 福音館書店 ことながら絵の描写も独特で、一度読む と忘れられない強い印象を受けます。そ 一二六〇円 の個性的な世界観をぜひ味わってみて下 さい。 ポプラ社 ということは⋮⋮、クモの種類の数だけ クモの巣が違うということは⋮⋮と、次 マルマくん かえるになる 片山令子文 モは仕事人で、芸術家を思わせるクモの 第にワクワクして読みすすめました。ク 巣 の 美 し さ で す。 観 察 会 の 案 内 も あ り、 偕成社 ます。 関心をもった人はすぐに歩み始められ まだ尾っぽが残っているため、上手に 広瀬ひかり銅版画 天狗ノオト 亡くなった祖父の日記に記されていた 田中彩子著 泳げないマルマくんたち。がませんせい で な い、〝 温 も り 〟 も 感 じ ら れ る 銅 版 画 教えていきます。色鮮やかで美しいだけ は一つ一つやさしくていねいに泳ぎ方を 児童書 鈴木健司様 私の生まれた町の、四季を歌う郷土歌はこ さなころ、 学研の﹁学習漫画﹂に夢中になっ そして戦時期には国民服と、非常に色々な ジャケット、インテリア、日本酒のラベル、 芸 術 家 斎 藤 佳 三 と い う 人。 浴 衣、 レ コ ー ド ものを相手にした最初期のデザイナーです ﹃南極・北極のひみつ﹄ではナンセン博士 のフラム号による北極探検や、スコットとア 本 人 ︱︱ 国 民 服 と い う モ ー ド ﹄︵ 廣 済 堂 出 ︵国民服の歴史は井上雅人さんの﹃洋服と日 た記憶があります。 ムンゼンの南極点到達競争に心躍らせました 彼の親友が東京音楽学校の同窓で一級上 版、品切れ︶を参照ください︶。 し、 ﹃人名・地名おもしろ事典﹄が柳田國男 の作曲家山田耕筰で、その自伝﹃若き日の の名前を目にした最初でした。これは中公新 書の豊田武さんの﹃苗字の歴史﹄や、ちくま 狂詩曲﹄ ︵別題﹃はるかなり青春のしらべ﹄ ︶ 苦 学 し た 少 年 時 代 か ら、斎 藤 に背 を押さ 日本文学全集文庫版の柳田の巻を買って読む れて向かったドイツ留学を経て帰国するま がとても面白くぜひ紹介したいのです。 リ ー ズ も よ く 読 み ま し た。 武 家 の 棟 梁 は だ でが書かれます。 ﹁事実は小説よりも奇なり﹂ ﹁ ひ み つ ﹂、﹁ 事 典 ﹂ の 他 に 人 物 伝 記 の シ い た い 田 中 正 雄 さ ん の、 卑 弥 呼 や 聖 徳 太 子 秋田では、長く続いた白黒二色の風景に緑が 山辺/土も薫る/万朶の花﹂というものです。 う気がします。とくに﹁伝記﹂は私の好む う現在の趣味にも影響しているなあ、とい 起されたり、学んだりしたことが、けっこ こうした﹁学習漫画﹂を通して興味を喚 頻 出 す る 山 田 の﹁ モ テ 自 慢 ﹂ に も み え る、 − 26 − など、のちの読書のきっかけにもなりました。 など古代の人物はムロタニツネ象さんの描 あらわれ、鼻の奥がツンとするような寒さが く顔で頭に刷り込まれました。 緩んで、ふと土の匂いがする日というのが本 にかかわらず、どんな人物の﹁生﹂にもそ ﹁ジャンル﹂の一つとなりました。有名無名 んな詞で始まります。 ﹁春来たれば/四方の 当にあるんですよね。そうすると ﹁春が来た﹂ 、 女 性 た ち と の 恋 愛 模 様 な ど が 綴 ら れ ま す。 を地でいく様々な挿話、北ドイツの村で遭 冒頭に触れた﹁矢島の歌﹂を作曲したの にはより大きな歴史の過程が刻印されてい れ ぞ れ の 面 白 さ が あ り、 同 時 に そ の﹁ 生 ﹂ という実感が湧いてきます。鈴木君も、もう さて、今回は私の好きな本の﹁ジャンル﹂ 土の匂いを感じられたことでしょう。 は、秋田県矢島町︵現由利本荘市︶出身の 遇 し た 白 夜 の 草 原 で の 輪 舞 の 美 し い 描 写、 す。自分自身の読書経験を振り返ると、﹁本﹂ るように思うからです。 と い え る か ど う か 微 妙 な と こ ろ で す が、 小 ということについて書いてみたいと思いま 『山田耕筰 自伝 若き日の狂詩曲』 (日本図書センター・1,890 円) 第2回 ヒトラーお抱えのポルノ小説家である主 るところかもしれません︶。 人公が史実と虚構を行き来しながら一人の 地球の歴史を観察にきたティーンエイジャー 女性を愛する、という小説です。一応ストー そして、日本の近代芸術草創期の芸術家の すましながら、世界史の出来事を体験してい の宇宙人兄妹。この二人が、市井の人になり くという﹁学習漫画﹂です。 置かれた状況が浮き彫りされています。 斎藤の親戚の映画監督の自伝﹃日本の喜 ね。私の読解力ではこれが限界。語りが複 リーを要約してはみましたが、 ﹁?﹂ですよ 雑で何度も読み返さないと理解できない場 私 に と っ て、 こ の 漫 画 の 最 大 の 魅 力 は、 歴史の表舞台に登場しないひとびとの愛憎 劇王 ︵清流出版︶なども 斎藤寅次郎自伝﹄ 抱 腹 絶 倒 も の で、 ま た 同 時 代 の 映 画 界 の 内 幕 も 興 味 深 く、 ぜ ひ 紹 介 し た い の で す が、 からぬままストーリーに身を任せて読み進 面 が た く さ ん あ る の で す。 そ れ で も よ く わ めていくうちに、頭をガツンとやられたよ 劇でした。 ﹁秦の始皇帝﹂のハーレムの女性 の途上で繰り広げられるジゴロ風イケメン うな不思議な感動に襲われるのです。 に 恋 し て し ま う 近 衛 兵。 シ ル ク ロ ー ド の 旅 鈴木君は幅広く読書されていますが、と と 草 食 系 っ ぽ い 男 子 の 恋 愛 バ ト ル。 史 実 の 紙数が尽きてしまいました。 間に挟まれるこういったエピソードに、小 刷り込まれていたせいでしょうか。十代の頃 読書の原体験として、このような愛憎劇が ◀復・鈴 木 ◀◀ 三月も半ばを過ぎて、バリケードのよう から、 ﹁恋愛小説﹂が私の好きな読書ジャン くに好きな﹁ジャンル﹂は? ▶▶往・佐藤▶ に家を囲っていた雪もようやく融け始めま ルとなっていました。はじめて読んだ﹁恋愛 学生ながら身をよじらせておりました。 した。外を歩くと、かすかに鼻先に土の匂 他 に も 大 好 き な 恋 愛 小 説 が あ り ま す。 ヴ・エリクソンの﹃黒い時計の旅﹄ ︵白水社︶ で、とくに印象に残っているのは、スティー たくさん読んできた﹁恋愛小説﹂のなか で、またどこか別の機会にでも。 たいのですが、かなり長くなってしまうの の恋﹄︵文藝春秋︶。これらについても記し ラ、 ク ﹄︵ 角 川 書 店 ︶ 。 ね じ め 正 一 の﹃ 荒 地 川書房、品切れ︶。姫野カオルコの﹃ツ、イ、 チャールズ・バクスターの﹃愛の饗宴﹄︵早 です︵この作品を﹁恋愛小説﹂というジャ − 27 − 佐藤美弥様 い を 感 じ、 ふ き の と う の 天 ぷ ら を 肴 に 一 杯 潮文庫で読みました。光文社古典新訳文庫、 小説﹂は、コレットの﹃青い麦﹄でした︵新 手紙に書かれていた本たち、気になるも やりたくなっちゃいました。 子﹁夏の一〇〇冊﹂で知り、買い求めた記憶 集英社文庫にも入っています︶ 。読書案内冊 や 童 謡 の イ メ ー ジ を 気 持 ち よ く 裏 切 る﹁ モ がうっすらとあります。 のばかりです。特に山田耕筰の自伝。校歌 テ自慢﹂! 人間くささに溢れていて実に素 習漫画﹂好きでした。特に思い入れが強いの ンルに入れて良いのかどうか賛否が分かれ 思い返してみると、私も小学生時代、 ﹁学 は、手塚治虫監修の﹃世界の歴史 全十五巻﹄ ︵中央公論新社、品切れ︶ 。この本の案内役は、 敵です。今度、読んでみますね。 『黒い時計の旅』 (白水社Uブックス・1,260 円) ﹃ ウ ォ ッ チ メ ン ﹄﹃ ダ ー ク ナ イ ト ﹄︵ と も の は、 ア メ コ ミ 映 画 の 原 作 コ ミ ッ ク がブームです。ブームの引き金になった 現在コミックフロアでは海外コミック まれた架空の都市群を舞台にした奇妙な 三九九〇円、以下続刊︶は精緻に書き込 ク シ ョ ン・ 一 巻 四 二 〇 〇 円、 二 巻 賞した﹃闇の国々﹄ ︵小学館集英社プロダ 昨年末文化庁メディア芸術祭大賞を受 ラン革命やイラン・イラク戦争など激動 巻一四七〇円、二巻一五七五円︶で、イ セ ラ ー﹃ ペ ル セ ポ リ ス ﹄ ︵ バ ジ リ コ・ 一 三十カ国語に翻訳された世界的ベスト コミック フロアより に 小 学 館 集 英 社 プ ロ ダ ク シ ョ ン ︶。 二 作 の時代を生きるイラン女性の日常を描い のプラム煮﹄︵小学館集英社プロダクショ 物語の連作。ベルギーの中学校で同級生 は背景はアシスタントが描くものですが、 ン・一八九〇円︶。 品とも当時の翻訳海外コミックでは異例 現在ではハリウッド映画とは関係のな この作品では背景が主題といっても過言 庭 料 理 で、﹃ ペ ル セ ポ リ ス ﹄ と 同 じ く 本 たマルジャン・サトラピの最新作が﹃鶏 い海外コミックスも数多く翻訳出版され ではなく作画はスクイテン一人が担当し だったという藤子不二雄のようなコンビ、 ています。例えば手塚治虫や宮崎駿、大 ています。そのためこの作品は一コマ一 ペータースとスクイテンの作品。日本で 友克洋らに影響を与えたバンドデシネ 作もイランが舞台。主人公はイランの伝 た。 絶 望 し た ア リ 氏 は 自 殺 し て し ま う。 つての音色を取り戻すことができなかっ 中を探しまわり演奏してみるものの、か アリ氏は、新しいタールを求めてイラン きた愛用のタールを破壊されてしまった ある日癇癪を起こした妻に長年演奏して 統楽器タールの演奏家ナーセル・アリ氏。 鶏のプラム煮とはイランの伝統的な家 ︵フランス語圏のコミック︶の巨匠メビ コマが絵画のような密度を持っています。 の重版が何度もかかりました。 『鶏のプラム煮』 ウスの作品は長年原書で読むしかありま せんでしたが、現在翻訳されたものが四 作品流通しています。是非日本の漫画だ けではなく世界の漫画にも目を向けてい ただきたいのですが、海外コミックは難 解な作品が多く、値段も高い。そこで今 回は、初めてでも読みやすいものを選ん で紹介させていただきます。 − 28 − ―第5回― 『闇の国々 一巻』 ストはかなりシンプルで、ストーリーで こちらは﹃闇の国々﹄とは対照的にイラ わ れ た 音 色 の 秘 密 が 描 か れ て ゆ き ま す。 七日間と、長年愛用した楽器とともに失 リ氏が死を決意してから亡くなるまでの ここまでなんと十八ページ。そこからア いことに気づかされる作品です。 とでしょう。ゾンビよりも人間が恐ろし リックの殺人に納得させられてしまうこ り に も リ ア ル な た め、 読 み 進 む う ち に が、この作品で描かれる人間関係はあま めに殺人も辞さない男になってゆきます あった主人公のリックも家族や仲間のた りもむしろ共産主義の方が似合うから不 ンですが、その完全無欠さは資本主義よ りかざします。 力を駆使してソ連人民としての正義を振 高指導者となったスーパーマンが、超能 のような、いわゆるアメコミのスーパー 浮かぶのがバットマンやスパイダーマン 海外コミックといえば一番最初に思い なっています。 アメコミ初心者でも読みやすいものに テ ー マ が 取 り 入 れ ら れ る こ と に よ っ て、 まうのか? この作品は東西冷戦という 思議です。果たして世界はどうなってし 本来アメリカの象徴であるスーパーマ 読ませる作品です。 ヒーローものだと思いますが、実はスー て生き抜いてゆく物語です。この作品は 町の保安官リックが家族や仲間達を率い ゾンビによって崩壊した世界で、小さな な っ た ヒ ッ ト 作、 い わ ゆ る ゾ ン ビ も の。 刊︶はアメリカの作品でTVドラマにも ア画・一∼三巻・各三一五〇円、以下続 ロバート・カークマン作・トニー・ムー 墜落したという設定に改変したのが本 てきたという設定なので、それをソ連に 頃に宇宙からアメリカの田舎町に墜落し 作品です。元々スーパーマンは赤ん坊の 比較的予備知識なしで読むことの出来る ン・ ブ ラ ン ケ ッ ト 画・ 一 九 九 五 円 ︶ は、 ミラー作・デイブ・ジョンソン、キリア ︵小学館集英社プロダクション・マーク・ その中で﹃スーパーマン レッドサン﹄ いです。 ら一作品でも目を通していただけると幸 できると思います。今回紹介した作品か ことで日本の漫画の良さに気づくことが た良さがあり、また海外コミックを読む 海外コミックには日本の漫画とは違っ − 29 − パーヒーローものこそ海外コミックの中 で 最 も 難 解 な ジ ャ ン ル で す。 ス ー パ ー ヒーローものはどれも長い歴史を持つも のばかり、漫画雑誌を途中から読み始め ゾンビとの戦いよりも、法も秩序も無く 作。スターリンの後継者としてソ連の最 るような難しさです。 なった世界での人間同士の争いに主眼が 『スーパーマン:レッドサン』 置 か れ て い ま す。 か つ て は 法 の 番 人 で ﹃ウォーキング・デッド﹄︵飛鳥新社・ 『ウォーキング・デッド』 ﹃脳はバカ、 腸はかしこい﹄ 面白くて実用的な ひ ど か っ た。 父 が 子 供 の 頃 は、 そ の 川 で 泳 ぎ、 魚 を 獲 り、 よ く 遊 ん だ 私 が 子 供 の 頃、 近 所 の 川 は ゴ ミ や 動 物 の 死 骸 な ど が 浮 か び、 悪 臭 が 演をお聴きして以来、その人柄に魅かれたこともあり、夫婦共々すっか 究しておられた、藤田紘一郎先生︵当時、東京医科歯科大学教授︶の講 おなかの中で大事に飼い、近年急増しているアレルギーなどの原因を追 寄生虫のサナダムシに、﹁マサミちゃん﹂などの愛称をつけて自らの ﹃ 川の学校 も の だ と 聞 か さ れ た が、 そ の 面 影 は な か っ た。 だ か ら、 川 で 友 達 と 遊 り先生のファンになってしまった。先ごろ書店で、先生の﹃脳はバカ、 酒井 昭治 ん だ 記 憶 が な い。 上 京 し て、 初 め て 見 た 川 が 隅 田 川。 し か し、 悪 臭 と ∼吉野川・川ガキ養成講座∼﹄ 堀内 恭 澱 ん だ そ の 川 面 に、 春 の ウ ラ ラ の ∼ の 面 影 は ま る で な く、 妙 な 寂 寞 感 %は 腸はかしこい﹄という面白い表題の本を見つけ、早速拝読した。 に悪い物質が入ってくると腸はそれを見極め、有害物質や病原菌などを 腸にあるという。急激な腹痛や下痢には閉口するが、それは口から体内 腸 に は 脳 に 劣 ら ず 神 経 細 胞 が 集 中 し て お り、 特 に 免 疫 細 胞 の しかなかった。 めておられる。川の学校、その目的は、子供たちを川遊びの達人である すぐに排出しようとする巧妙な仕組みと考えると、なるほどとうなずけ 作 家 で カ ヌ ー イ ス ト の 野 田 知 佑 さ ん は 現 在﹁ 川 の 学 校 ﹂ の 校 長 を 務 ﹁川ガキ﹂に育てることにある。それもトコトン遊ぶことによって、やっ る。さらに私達にやる気を出させ、心のバランスを保つ役割をするドー と一人前の川ガキが誕生するという。 パミンやセロトニンなどの脳内物質も、腸でつくられていることを知り、 今、急増しているうつ病についても触れ、脳の機能面やその特定部分に 野田さんは﹁日本人の持つ川感覚が次第に歪み、希薄になっている﹂ 作用する薬品の開発などからのみ解明しようとする傾向が強いが、もっ 益々おなかをいたわらなくては⋮⋮との感を深くしている次第である。 川の学校は、二泊三日で、日中は釣りやカヌーで遊び、獲った魚やエ と腸内細菌を含めた身体全体の問題としてとらえることの必要性を強調 と嘆く。大都会だけでなく、自然がたっぷりある田舎の人もまた川に対 ビを調理し食べ、夜はテントでぐっすり寝る。四国・吉野川は広く、上 し無関心だと今の日本人を分析する。 流から支流にかけて遊ぶのに面白い場所がいくつもある。その川遊びで しておられるのが、印象的だった。 腸といえば、食べ物を消化吸収する器官という認識しかなかったが、 は何をやってもいい。ただ決めた遊びは責任を持ってやること。子供た 本書を読み、脳に劣らぬさまざまな重要な働きをしていることを初めて ちは吉野川の自然の中で冒険をして、焚き火をして、スタッフや椎名誠 カ条﹂が載っ さんら講師の話に腹をかかえて笑う。そんな中で吸収し、判断し、大き 巻末には、先生が日常実践しておられる﹁腸を鍛える 知り、大変勉強になった。 の学校から帰り、近所の川の中をじっとのぞき込むようになったという。 ︵七十八歳・無職︶ ている。実行するのがむずかしい項目もいくつかあるが、何とかそれに ※﹃脳はバカ、腸はかしこい﹄︵三五館・藤田紘一郎著・一二六〇円︶ 近付こうと、目下努力中の毎日である。 − 30 − 70 く成長をする。その姿を見て本当にうらやましく思った。ある生徒は川 ︵五十四歳・フリー編集者︶ 川 に 親 し み、 遊 び、 そ し て 川 に 対 し て 自 信 を 持 つ 子 供 た ち。 未 来 の 川ガキが一人でも増えればと願う。 ※﹃川の学校 吉野川・川ガキ養成講座﹄ ︵三五館・野田知佑著・一四七〇円︶ 27 II N N FF O O RR M MA A TT II O ON N 旭 川 店 大宮ロフト店 ☎(0166)26 1120 京 都 店 三宮駅前店 ☎(075)252 0101 ☎(078) 252 0777 〔営業時間〕10時∼ 19時半 〔営業時間〕10時半∼ 21時 〔営業時間〕10時∼ 21時 〔営業時間〕10時∼ 21時 MARUZEN &ジュンク堂書店 札 幌 店 ☎(048)640 3111 池袋本店 京都朝日会館店 ☎(075)253 6460 ☎(03)5956 6111 三 宮 店 ☎(078) 392 1001 ☎(011)223 1911 〔営業時間〕月 ∼ 土 10時 〔営業時間〕10時∼ 20時 〔営業時間〕10時∼ 21時 〔営業時間〕10時∼ 21時 弘前中三店 ☎(0172)34 3131 〔営業時間〕午前10時∼ 午後7時 秋 田 店 ☎(018)884 1370 〔営業時間〕10時∼ 20時 ∼ 23時、日祝 10時∼ 22時 プレスセンター店 MARUZEN &ジュンク堂書店 〔営業時間〕10時∼ 20時 梅 田 店 ☎(019)601 6161 〔営業時間〕10時∼ 21時 仙台 TR 店 〔営業時間〕10時∼ 21時 仙台ロフト店 ☎(03)5456 2111 吉祥寺店 COMICS JUNKUDO 津田沼店 ☎(06)6343 8444 〔営業時間〕10時∼ 20時 上本町店 ☎(022)716 4511 MARUZEN &ジュンク堂書店 ☎(025)374 4411 〔営業時間〕10時∼ 21時 ☎(024)927 0440 天満橋店 〔営業時間〕10時∼ 19時 高 崎 店 ☎(06)6920 3730 〔営業時間〕10時∼ 21時 ☎(06)4396 4771 〔営業時間〕10時∼ 21時 ☎(06)6635 5330 〔営業時間〕10時∼ 21時 岡島甲府店 西 宮 店 ☎(0798)68 6300 〔営業時間〕10時∼ 21時 ロフト名古屋店 芦 屋 店 ☎(052)249 5592 〔営業時間〕10時∼ 21時 ☎(089) 915 0075 〔営業時間〕10時∼ 21時 福 岡 店 千日前店 ☎(055)231 0606 広島駅前店 ☎(082) 568 3000 松 山 店 難 波 店 新静岡店 〔営業時間〕10時∼ 19時 岡 山 店 ☎(086) 236 1877 ☎(06)6771 1005 〔営業時間〕10時∼ 21時 ☎(054)275 2777 〔営業時間〕10時∼ 21時 新 潟 店 〔営業時間〕10時∼ 20時 ☎(047)403 1911 ☎(022)726 5660 姫 路 店 ☎(079) 221 8280 〔営業時間〕11時∼ 22時 ☎(0422)28 5333 藤 沢 店 〔営業時間〕月∼土10時半∼ 20 時半、日祝 ☎ (0466)52 1211 10時∼ 20時半 〔営業時間〕10時∼ 21時 〔営業時間〕10時∼ 20時 明 石 店 ☎(078) 913 8201 梅田ヒルトンプラザ店 〔営業時間〕10時∼ 21時 仙台本店 〔営業時間〕10時∼ 21時 〔営業時間〕10時∼ 22時 〔営業時間〕10時∼ 21時 ☎(022)265 5656 ☎(078) 787 1250 ☎(06)6292 7383 〔営業時間〕10時∼ 21時 MARUZEN &ジュンク堂書店 渋 谷 店 舞 子 店 〔営業時間〕10時∼ 21時 ☎(03)3502 2600 〔営業時間〕10時∼ 21時 盛 岡 店 郡 山 店 大阪本店 ☎(06)4799 1090 ☎(092) 738 3322 〔営業時間〕10時∼ 21時 大 分 店 ☎(097) 536 8181 〔営業時間〕10時∼ 20時 鹿児島店 ☎(0797)31 7440 ☎(099) 216 8838 〔営業時間〕10時半∼ 20時 〔営業時間〕10時∼ 20時 〔営業時間〕10時∼ 20時 ☎(027)330 6611 名古屋店 〔営業時間〕平日11時∼ (052)589 6321 20時、土日祝 ☎ 10時∼ 20時 〔営業時間〕10時∼ 21時 神戸住吉店 那 覇 店 ☎(078)854 5551 ☎(098) 860 7175 〔営業時間〕10時∼ 21時 〔営業時間〕10時∼ 22時 営業時間は変更する場合がございます。ご了承ください。 定休日については、お手数をおかけしますが弊社 HP または直接各店までお問い合わせ下さい。 − 31 − 本にまつわるエッセイ、など本に関するもの。最近読んでおも ☆読者の皆様の投稿を募集しています。最近読まれた本の感想文、 しろかった本、感動した本、考えさせられた本を教えて下さい。 四〇〇字∼六〇〇字程度で、おすすめの本のタイトル、出版社、 掲載分には二千円の図書カードを差し上げます。なお、原稿はお い つ も﹁ 書 標 ﹂ を ご 愛 読 い た だ き ま し て ありがとうございます。本誌定期購読料は 以下の通りです。 定期購読料 年間一二〇〇円︵送料込︶ 現金書留もしくは八十円切手十五枚で お申し込み先 │ ジュンク堂書店ジュンク特急便係 東京都豊島区南池袋二 一五 五 五九五六 六一〇〇 五九五六 六一二〇 〇三 │ http://www.junkudo.co.jp/ パソコンから http://www.junkudo.co.jp/ mobile/ 携帯・MOBILE から mobile QR コード ︵茉︶ けれど、始まることのありが と少し憂鬱になることもある 係の中に身を置くことが続く 新しい環境、新しい人間関 ある。 春が来た。始まりの季節で 編集後記 │ 住所、氏名、年齢、職業を明記の上、お送り下さい。 〒 │ 〇三 FAX TEL 返しいたしませんのでご了承下さい。 │ ジュンク堂書店﹁書標﹂編集室係 東京都豊島区南池袋二 一五 五 │ │ │ たさを感じる。 − 32 − ☆尚、本誌掲載と同時に、ホームページにも掲載させていただきます。 〒 1710022 ᛩ Ⓜ 㓸 1710022 ﹁春夏秋冬﹂ 自分が学習参考書を担当させてもらう ようになって早二年がたちました。 と内容に関して聞かれることが多いで ません。 入学しているというのですから、見逃せ そして冬になるといよいよ本格的な受 す。自分が受験生だった頃は書店員さん た、首都圏は中学・高校の受験も盛んで 験シーズンに突入です。十二月ごろから に参考書を薦めてもらうという発想はな すので、中高の過去問題のピークも同時 センター試験に向けたピークが始まりま また、学習参考書は実は、季節の移り にやってきます。このピークが過ぎると かったので、最初はちょっと驚きでした。 変わりを間近に感じられるジャンルなの 再 び 卒 業・ 入 学 シ ー ズ ン が や っ て き ですが、学生さんは限られたお金で買い です。例えば、ちょうど今ごろは、新学 て⋮⋮というように、季節によって売れ して、センター試験が終わった日からは 学 生 さ ん や そ の 親 御 さ ん、教 育 関 係 の 期になったばかりなので、辞書や教科書 る商品が全く変わってきます。このよう 二次試験や私立大学の試験用の赤本など 方々以外は、あまり立ち寄られることのな の 解 説 本、 勉 強 法 な ど が よ く で ま す が、 なジャンルは他になく、担当になってみ に来てくれますし、少し大げさですが受 いジャンルではないかと思います。自分も 夏ごろになると期末テスト対策や、受験 の商品が飛ぶように売れていきます。ま 実際友人などに〝参 考 書 担 当 って何して 生には、英語の長文問題や国語の現代文 てとても面白く感じているところです。 験は人生がかかったことなので、下手な いるの?〟などとよくきかれます。そうい の商品をよく手にとってもらえるように お勧めはできません。 う時は〝ひたすら赤本を売っているよ〟と なります。 頻繁に書店に足を運んでいただいてい あしらうことが多いのですが、実際はそれ で、この場を借りて学 習 参 考 書 について 論文の参考書がよく動きます。今や私立 が始まるので、その対策用の面接や、小 秋口になると、大学の推薦やAO入試 でしょうか? る、このような書店の楽しみ方はいかが 考書フロアの棚の変化で時の流れを感じ したが、よく書店においでになる方は参 ごく簡単な一年の流れを紹介してみま ほど単純なものでもありません。折角なの 少し紹介させていただこうと思います。 大学入学者の約半数が推薦やAO入試で 653- 6500013 0021 │ │ ︵鬼︶ 日々の仕事の中で一番大変なのは、お 一〇〇一 五二一二 客様の問い合わせ対応でしょうか。意外 る方でも〝学習参考書〟というジャンルは、 TEL TEL 二〇一三年四月五日発行 ﹁書 ﹂ 第 号 ほんのしるべ 頒価五十円︵本体四十八円︶ 標 編集・発行人 工 藤 恭 孝 神戸市中央区三宮町一の六の十八 ︵〇七八︶三九二 発 行 所 ㈱ジュンク堂書店 〒 印 刷 所 ︵〇七八︶五七五 ㈱七 旺 社 〒 神戸市長田区一番町二丁目一 413 ほんのしるべ﹂ 昭和 年7月 日第三種郵便物認可 2013年4月5日 毎月1回 5日発行 通巻第 号 ﹁書標 61 15 413 頒 価 五十円︵本体 四十八円︶ http://www.junkudo.co.jp/ e-mail:info @ junkudo.co.jp 携帯からは 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