企業価値最大化の意味 辻 幸民 2009 年 9 月 23 日 (第 1 版) 1 はじめに 本稿では,資本構成における企業価値最大化の意味について説明する。企業の意思決定では,企 業価値を最大化するように定式化がなされる。いろいろな種類の意思決定があろうが,ここで問題 にしたいのは,資本構成の意思決定に関して,企業価値最大化を目標にすることの意味である。ど のような理由から,企業価値を最大化しようとして,資本構成を決めるのであろうか。 エージェンシーコスト仮説よりも時代的に前の理論モデル,具体的には MM 命題や修正 MM 命 題,倒産コストモデルでは,企業価値最大化を目標とすることの意味は,株主の富の最大化である。 企業は,株主の富の最大化を達成するため,企業価値を最大化するような資本構成を選択する。と ころが,企業価値は株式価値に負債価値を加えたものであるから,企業価値が常に株主の富を表象 しているとは限らない。企業価値の対象となる投資家は,株主に加え債権者が存在する。債権者は 株主と同じ主体である必要はない。従って企業価値と株主の富は,必ずしも同じものではない。し かし,エージェンシーコスト仮説よりも前の理論モデルでは,若干特殊な財務行動を (暗黙に) 仮定 していて,この仮定が,企業価値と株主の富との間に同値あるいは 1 対 1 の関係をもたらす。この 仮定によって,企業が企業価値を最大化するのは,株主の富を最大化するためであることを保証す るのである。 しかし,エージェンシーコスト仮説では事情はかなり異なる。例えば,株主対債権者のエージェ ンシーコストでは,債権者に損をさせ,その分株主に儲けさせるような行動,すなわち,債権者か ら株主への富移転が問題になる。このとき,企業価値は必ずしも株主の富を表象してない。仮に企 業価値が減ることになっても,負債価値から富移転した分で株式価値を増大させることができるな ら,それは株主の富を増やすことになる。このように企業価値と株主の富とは必ずしも 1 対 1 の関 係にはない。この場合,株主の富を反映するのは株式価値である。しかし資本構成を決めようとし て,どれぐらいの負債の大きさが最適かという問題を解こうとすると,株式価値の最大化では役に 立たない。株式価値が最大になるのは,大概の場合,負債が存在しないときだからである。理論的 にも,実際問題としても,資本構成を決定するための目標としては,企業価値の最大化に依存せざ るを得ない。 それでは,そのようなときに企業価値を最大化する理論的根拠は何か。その理由は株主の富とは 1 何の関係もない。それは,そうしないと企業そのものが存在できないからである。もし企業価値を 最大化しないような資本構成の企業が存在するなら,投資家は,その企業を買収することで裁定の 利益を得ることができる。この裁定の結果,企業の資本構成は,企業価値最大化を達成するものに ならざるを得ない。資本市場均衡では,このような裁定の機会は排除されるので,企業価値を最大 化するような資本構成がすべての企業で選択されることになる。 2 企業価値と株主の富 定常状態を仮定した MM 命題や修正 MM 命題,および 1 期間モデルの倒産コストモデルなどが 該当するが,これらは元々,資本構成 (負債の量) が変化しても,企業収益の確率分布が不変である ことを仮定する。収益の確率分布が不変であるということは,その収益を産み出す源,企業の保有 している資産が資本構成にかかわらず一定不変であることを意味する。従って,これらの理論モデ ルにおいては,企業の保有資産を不変に維持しながら,資本構成 (負債の量) のみを変化させること を考えているといってもよい。これは,資本構成が変化することによる純粋な効果を抽出しようと する意図による。この意図を実現するため,資本構成の変化に伴って特殊な財務行動が仮定される 必要がある。そしてそのとき,結果として,資本構成の変化に対して,企業価値と株主の富とが同 値になる,あるいは両者の間に 1 対 1 の関係が成立することになる。 それでは,資本構成の変化に伴う特殊な財務行動とは何か。負債を発行すると,企業は負債価値 の分だけ現金を入手する。この現金が企業に流入すると,負債の発行前後で,企業の保有する資産 は異なるものになってしまう。そこで,企業の資産を不変に維持するため,負債発行で得た現金す べてを即,株主に配当金として支払うことを仮定する。資本構成の変化に伴う特殊な財務行動と は,この株主への配当金支払のことである。これを仮定すれば確かに,資本構成 (負債の量) が変化 しても,企業の保有する資産は一定不変に維持され,企業収益の確率分布が不変であるという仮定 と整合性を保てる。 要するに,負債発行による調達資金を即座に社外に流出させればよいので,そのための手段とし ては,株主への配当金支払という財務行動のみならず,自社株の買い入れ消却という財務行動で あっても構わない。ただ自社株買いのケースは,多少形式的な議論が必要になるので後述する。こ こでは当面,株主への配当金支払のケースを念頭に置く。 定常状態モデルであれ, 1 期間モデルであれ,本質的には同じことなのであるが,若干設定を変 える必要があり,これに伴って表現も多少異なることになるので,別々に説明した方がよいであ ろう。 定常状態の議論では,今までは企業 U と企業 L として 2 つの企業を想定してきた。しかし 2 つ の企業といっても,保有する資産は同じで,同じ収益が予想され,異なる点は唯一負債が存在する か否かという点のみであった。そこで,企業 U と企業 L とが実は 1 つの企業で,前者が負債のな い場合,後者が負債を持った場合と考えることができよう。負債の有無にかかわらず,企業の保有 する資産が同じままなら,負債の有無による純粋な効果が比較できよう。負債のない場合の企業価 値が VU である。これは株式価値でもある。ここで企業が負債を発行したとする。その負債価値は 2 B,株式価値は S L ,これらの和が企業価値 VL (= S L + B) である。 負債価値 B の負債が発行されると,B の現金が企業に流入するので,企業の保有する資産を不変 に維持するため,この流入現金全額を社外に流出させる。そこで現金 B を株主に配当金として支払 う。他方,負債発行がなされると,株式価値の方は VU から S L に変化する。なお,株価は権利落 ち価格であるから,この株式価値 S L の中に,配当金 B は含まれていない。ということは,企業価 値 VL は S L と B の合計であるから,これは株主の富を表していることになる。株主の保有してい る株式の時価が S L で表され,今受け取った配当金が B である。 負債価値 B は債権者へのキャッシュフローを価値評価したものである。負債に資金提供する債 権者は,必ずしも株主である必要はない。まったく別の主体であると思ってよい。負債のある企業 L に関連した主体は,株主と債権者という別々の投資家ということになり,両者を価値評価した和 が企業価値なのであるが,以上のような財務行動,つまり負債発行代金を株主への配当金として支 払ってしまう結果,企業価値は株主の富を表象するものになるのである。 次に 1 期間モデルについて見てみよう。 1 期間であるから,期首と期末しかなく,企業は期首に 設立され,期末に解散される。期首では次のような 2 段階が仮定される。まず企業は設立に際して 株式のみを発行し,負債の存在しない企業として設立される。その企業価値は VU である。企業は 株式発行で VU 円の現金を入手し,この現金で資産を購入して活動を開始する。この段階では負債 が存在しないので,企業価値 VU は株式価値でもある。さて次に,設立の直後,企業は負債を発行 するものとする。負債価値が B であれば,企業は B 円の現金を新たに入手し,この現金は即座に 株主に配当金として支払われる。負債発行がなされると,株式価値は VU から S L に変化し,この とき企業価値は VL (= S L + B) である。負債に資金提供する債権者は,株主とはまったく別の主体 である。とはいえ,企業価値は,株主の保有する株式の時価として株式価値 S L と,今受け取った 配当金 B との和でもあるから,それは株主の富を表象するものと考えられる。 1 期間モデルの期首において,なぜ一度に株式と負債のミックスを発行して設立するものとしな いのか。もし株式と負債のミックスを発行したなら,企業価値は始めから VL となって,設立時に 企業は株式から S L 円を,負債から B 円を調達して,あわせて VL 円の現金を入手する。そしてこ の現金でもって資産を購入することになる。資本構成の差異で企業価値が異なるなら,設立時に資 本構成が異なると,企業の得る現金の大きさが異なり,保有することになる資産も異なってしま う。これは,資本構成にかかわらず期末収益の確率分布が一定であるという仮定と矛盾してしま う。そこで負債に関係なく,期首で VU 円の資産を保有し,負債発行で得る現金すべてを株主への 配当金として社外に流出させてしまうということを仮定する必要がある。 以上のことから,資本構成にかかわらず企業収益の確率分布が不変であるという仮定に整合性を 保たせるため,負債発行で得た現金を社外に流出させるという,特殊な財務行動を仮定すること が,企業価値と株主の富を同値にするということがわかろう。エージェンシーコスト仮説よりも前 の理論モデルでは,このような仮定が設けられているため,企業価値の最大化という目標は,株主 の富を最大化することと同じなのである。 <自社株買いの場合> 3 本文では,多数存在する株主全体で見た株主の富を企業価値と同値であるとした。現金を株主に支払う方法 が配当金だけであるなら,議論としてはこれで必要十分なのであるが,その方法には他に自社株買いがある。 自社株買いを実施すると,発行済株式数が変化し,そのため 1 株当りの株価も変化する。自社株の買い入れ消 却によって,企業が現金を株主に還元することを明示的に検討するには,株主の富を,1 株を保有する株主で 見たときの富として定義する必要がある。 今負債のないときの企業価値 VU は,発行済株式数が nU で,(1 株当りの) 株価が PU から構成されている とする。すなわち,VU = nU PU である。次に負債が発行され,その負債価値が B である。負債が存在すると きの企業価値 VL は,株式価値 S L と負債価値 B の和である。株式価値 S L は,発行済株式数が nL ,株価が PL で,S L = nL PL である。 負債が発行されると,企業は現金 B を入手するが,この現金すべてを即,自社株買いに使うものとする。発 行済株式数は,負債の発行前は nU であるが,自社株買いで変化する結果,負債の発行後は nL になる。つま り発行済株式数の nU と nL は,自社株買いによって一定の関係にある。それでは自社株買いで何株を購入す ることができるであろうか。企業が負債発行および調達現金での自社株買いをアナウンスするや否や,株価は PU から PL へと変化するので,現金 B で購入することのできる株式数は B/PL である。現金 B だけ自社株買 いが実行されると,発行済株式数は nU から B/PL だけ減少するので,nL = nU − B/PL という関係が成立する。 これを使って企業価値 VL を次のように書き換えてみよう。 V L = S L + B = n L P L + B = nU P L 上記の式で,nU は負債の大きさにかかわらず一定で,資本構成の変化に対して定数である。従って企業価 値 VL は,1 株当り株価 PL と 1 対 1 の関係にある。自社株買いに応じて株式を売却した株主には売却代金と しての現金が支払われ,株式を保有し続けた株主のところには現金は一切行かない。自社株買いが実行される 場合,株主の富は,株式の時価である株価だけで表され,受け取る配当金は存在しない。従って 1 株を保有す る株主の富は,株価 PL そのものである。 負債発行で調達した資金すべてが即,自社株買いで社外に流出するなら,企業価値は株主の富を表す株価と 1 対 1 の関係にある。このとき,企業価値を最大化するような資本構成は,株主の富 (株価) を最大化している ことになる。 3 企業価値最大化の理由 ところで上記の議論は,資本構成の変化というだけであって,どれだけの負債の量を発行すべき かという点には触れていない。ここではまず,企業の意思決定として資本構成を決定するとは,具 体的にどのようなことであるのか,ごく簡単な一般的なモデルとして提示しておこう。そしてその 後に,企業価値を最大化する意味について検討する。 どれだけの負債の量を発行すべきかという問題は, VL を最大化するような負債の量ということ になる。具体的には,企業は負債発行時に期末の支払額を約束する。この約束額を L で表す。この L はあくまでも約束で,期末になって実際には支払われないかもしれない。 L の支払約束が履行さ れなければ貸倒れで,倒産コストモデルではそのときに倒産コストが発生する。また定常状態モデ ルであれば,前で使った H という記号がここの L に相当する。これらのことを考慮して,負債の 期末キャッシュフローの期待値とそのリスクを反映させた要求利回りでもって,期首の負債価値 B が決まる。負債価値 B は L の関数であろう。普通は,期末の支払約束額 L が大きくなれば,負債 4 価値 B も大きいであろうが,必ずしもそうではないかもしれない。ともかく負債価値 B は L の関 数として, B(L) のように記そう。 また株主の方は,負債が発行されると,企業が負債に約束した支払額 L を見て,株主の期末 キャッシュフローの期待値と,そのリスクを反映させた要求利回りを考慮し,株式価値 S L が決定 される。これもやはり L の関数で,S L (L) のように記そう。企業から負債発行 (L の値) のアナウン スがあるや否や,株式価値は VU から S L (L) へと変化する。どれぐらいの負債の量が発行されるべ きかという問題は, max VL ≡ S L (L) + B(L) L を満足させるような L の値を解くことである。この問題の解 (L∗ ) に対応する負債価値 B(L∗ ) と株 式価値 S L (L∗ ) が,企業価値を最大化させる資本構成,つまり最適資本構成である。そして前で見 たように,負債発行で調達した現金すべてを即,社外に流出させるという特殊な財務行動 (株主へ の配当金,あるいは自社株買い) という仮定でもって,企業価値の最大化は,株主の富を最大化し *1 ていることにもなる。 ところで,資本構成にかかわらず,企業収益の確率分布は不変であるという仮定が外された場合 はどうなるであろうか。資本構成が変化すると,これに伴って企業収益の確率分布も変化するよう な場合である。このとき,企業の保有する資産を不変に維持しなければならない必要性はない。と いうことは,資本構成の変化に伴う特殊な財務行動を仮定する必要性もなくなる。であるなら,企 業価値は株主の富を必ずしも表象しなくなる。企業価値は特定の主体の利益を表す尺度ではなく なってしまうのである。 しかし実際問題として,資本構成 (負債の量) の決定という観点からすると,これは上記のように 企業価値を最大化するよう決定せざるを得ないであろう。もしも,株主の富が株式価値のみで表現 されると考えて,株主の富の最大化を実現すべく,株式価値最大化を目標としたなら,恐らく最適 資本構成は L∗ = 0 となってしまうであろう。現在のほとんどすべての理論仮説では, S (L) は L の *2 従って,最適資本構成が内点解 (L∗ がゼロと無限大以外の解) として得ら 減少関数だからである。 れるには,実用上,企業価値最大化を目標として問題を設定するしかない。ただし,前節で見たよ うな特殊な財務行動を仮定しないなら,企業価値は何を表した尺度なのか不明確である。そこで問 題は,企業価値最大化を目標とする理由は何かという点が問われる必要があろう。 その理由として本書が掲げるのが,企業価値最大化を達成してないと,次に述べるような裁定が *1 MM 命題や修正 MM 命題では,表面的には企業価値が議論の中心であった。これらにおいてもやはり,企業価値は 株主の富とは同値である。MM 命題では VU = VL という関係でもって,資本構成は企業価値に無関連であることを 主張するが,上記のモデルでは,企業価値 VL は L に関係なく一定で,企業価値最大化の解 L∗ が存在しないという ことである。このことは,資本構成が株主の富にも無関連な問題であることを意味する。また修正 MM 命題では, VL = VU + τB という関係でもって,負債が増えるほど企業価値が大きくなることを導く。上記のモデルでは, L 無 限大というのが問題の解になる。負債を増やすことで企業価値を無限に増大できるなら, そのとき株主の富も無限に 増大することになる。 *2 例えば,修正 MM 命題において,負債への支払約束額 (前の章の H) が増えるほど,株主へのキャッシュフローは 減ってしまう。H = 0 のときに株主へのキャッシュフローは最大である。節税効果の意味を間違えないで頂きたい。 負債にネガティブな影響を及ぼすその他の要因 (倒産コストとかエージェンシーコストとか) を考慮したなら,株主 へのキャッシュフローはさらに減るであろう。 5 発生するため,最適資本構成以外の資本構成の企業は存在できないという点である。裁定の無い, 無裁定の状況が均衡であるなら,資本市場均衡では,企業はすべて企業価値を最大化する最適資本 構成を選択していなければならない。この点を以下で示そう。 記号は前と同じものを踏襲して,企業価値を最大化する L の値が L∗ である。今,企業のそれは L̂(, L∗ ) であるとする。この定義により,企業価値には次の関係が成立する。 S L (L̂) + B(L̂) ≡ VL (L̂) < VL (L∗ ) ≡ S L (L∗ ) + B(L∗ ) 企業の負債の L が L∗ でない限り,次のような裁定の利益が存在することになる。 今,企業の支配権を確保すべく株式の α 割合を購入する。企業の支配権を確立するような α の値 は一概には不明であるが,とりあえず α は 0.5 以上としておこう。株式を購入して企業を買収した 後,現在の経営者を解雇し,新経営者に負債価値が B(L∗ ) になるよう財務政策 (L の値を L̂ から L∗ へ) を変更させる。もし B(L∗ ) > B(L̂) であれば,事情は単純である。企業は新たに借入などをして 負債を増やし,この調達資金全額を即,株主に配当金として支払えばよい。このとき,株式価値は S L (L∗ ) になっていて,裁定者は α 割合の株式持分すべてを市場で売却する。この裁定者の利益は αS L (L∗ ) − αS L (L̂) + α[B(L∗ ) − B(L̂)] = α[VL (L∗ ) − VL (L̂)] > 0 のとおりで,上式左辺の第 1 項は売却代金,第 2 項は購入費用,第 3 項は株主に支払われた配当金 である。この利益は企業価値の定義から正である。この裁定の結果,裁定者は株式を購入後即,売 却しているので将来においては得るものも負うものも何もないが,現在において裁定者は正の確実 な利得を得ることができる。このような状況が存在する限り,企業は常に企業買収の対象となり, これは均衡とは言えない。 次に負債価値が B(L∗ ) < B(L̂) のときはどのように考えればよいか。新しい負債価値は元のそれ より小さいので,負債の一部が返済されることになる。ではどうやってこの返済資金を作り出す か。自明な議論を保持するための最も簡単な方法は,この場合,裁定者が企業の株式すべてを買収 することである。つまり α = 1 である。このとき裁定者は,はじめ S L (L̂) 円で株式すべてを購入 し,さらに B(L̂) − B(L∗ ) 円を自分のポケットから企業の負債を返済し,その後 S L (L∗ ) 円で株式す べてを売却する。従って裁定の利益は次のとおりに書ける。 S L (L∗ ) − S L (L̂) − [B(L̂) − B(L∗ )] = VL (L∗ ) − VL (L̂) > 0 企業価値の定義より,やはり裁定の利益は正である。前と同様に,この裁定者は将来において得る もの負うもの何もないが,しかし現在において正の確実な利得を得ることができる。このような状 況が存在する限り,やはり均衡とは言い難い。 以上のような裁定の機会が存在しないためには,企業は常に企業価値を最大化すべく負債の量 (具体的には L の値) を決定していなければならない。もっと言うと,無裁定の均衡では,資本構成 に関して企業価値を最大化してない企業は,企業買収の対象となって存在できないのである。企業 価値最大化の意味とは,企業買収を使った裁定の機会を排除することと言ってもよい。 6
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