6 月定例会の報告 > 話 題 提 供

新医協薬学領域部会
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6 月定例会の報告
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6 月 29 日(水)午後 6 時 30 分より、新医協事務局にて、初参加の方も交えて、6 名から以下のよ
うに幅広い分野からの話題提供があり、活気ある定例会が開かれました。
話
〇 戦争と薬学の関わり
題 提 供
(田中秀明)
〇 実習「漢方」伝統医学的思考、アプローチのしかたについて(橋本紀代子)
〇 英国・オートスラリアの薬剤師から学ぶもの
(寺岡章雄)
〇 デービット・ヒーリー著「ファルマゲドン」読後報告
(宮地典子)
〇「日本医薬品情報学会」参加報告
(立岡雅子)
〇 サプリメントに頼らない生活-機能を表示しなくても売れる水素水(藤竿伊知郎)
〇 2016 年全国研究集会薬学領域部会分科会の企画について
話題提供された内容について、要旨を以下に報告します。
〇戦争と薬学の関わり-陸軍について (田中秀明報告)
戦争と医学の関わりについては、731 部隊をはじめとして多くの報告を目にするが、薬学の関わり
に関する情報は意識しないと集められない。今回、陸軍に関する情報を田中氏が報告した。
済生会牛込病院に隣接した陸軍軍医学校薬学教室にて、薬剤将校の教育や、衛生材料、消毒材等に
関する研究や生産が行われており、特許を得た研究業績が多数あった。赤痢予防剤、凍傷予防剤の研
究など、軍にとって重要な研究が行われていたことが理解される。
陸軍薬剤将校は陸軍中央衛生材料をはじめとして、衛生隊、病院、防疫給水部、司令部等に配属さ
れ、薬品、衛生材料の手配、供給等に携わっていた。
軍学産共同の研究として、東大、京大の合成化学、薬用植物学等の研究室教員が嘱託として従事し、
防虫剤をはじめとする合成化学研究、イオン交換樹脂による脱塩素法などの研究が行われた。
塩野義、武田、田辺等の名だたる製薬会社や、東大薬学部教授、農大などが、マラリア治療剤、結
核治療剤、ペニシリン、スルフォン剤等の研究委員会に参加していた。
東大の朝比奈教授、石館守男教授、京大の刈米達夫教授などの主だった教授の名前もあがり、帝国
大学薬学部が率先して陸軍にかかわっていた歴史を学ぶ機会となった。
〇実習「漢方」伝統医学的思考、アプローチのしかたについて(橋本紀代子報告)
薬学実習生への「漢方」に関する教育教材を使って、伝統医学のそもそもにはじまる報告を受けた。
現在の日本における漢方は、中国伝統医学が日本で定着・発展した医学体系といえる。伝統医学は、
ヒポクラテス医学をはじめ、エジプト、インド、中国、チベット、韓国、ベトナムなど世界各地で今な
お現役で実践されている医学である。伝統医学に共通する基本的性格として、①体液病理説 ②自然治
癒力が基礎になること ③多味薬剤(Polypharmacy)、生薬を用いること があげられる。華岡青洲が
全身麻酔で乳がん摘出手術を成功させたのは世界初の偉業であり、麻酔薬には生薬を用い、ヨーロッパ
の伝統医学であるヒポクラテス医学の外科の技術を用いて手術を行った。
近代医学(西洋医学)は、①細胞病理説に基づき、②細菌学の考え方で ③有機合成薬品を用いた治
療を行う医学で、近代医学の確立は 1870 年頃と言える。アスピリンが市販されたのは 1899 年である。
江戸時代には近代医学はなかった。
現在、病院で行われている医学は西洋医学だと思っている人たちが多いが、伝統医学の考え方に近い
ものもある。
免疫力を強めるためにどうするか、どういう体質の人にどんな薬が合うか、食べものについての指導
なども、伝統医学の考え方で発展させていけるのではないだろうか。
2016.4.23NHK で放映された「らいは不治にあらず~ハンセン病隔離に抗った医師の記録」の小笠原
登医師の「ハンセン病は感染症ではあるが、感染力は弱く、感染するか否かは体質が大いに関係する」
というような考え方が大切なのではないだろうか?
伝統医学はある意味古い医学だからその当時の科学技術の枠を出ない。現在の科学技術をもって、伝
統医学的思考で医学に取り組めば、また新しい発展があると思われる。
明治時代に伝統医学を排除しようとしたことが、西洋医学のゆがみを強めたともいえる。
漢方薬の処方理論や副作用についても報告を受け、改めて、漢方薬の基礎的理解を深めることができ
た。
〇英国・オートスラリアの薬剤師から学ぶもの(寺岡章雄報告)
前回に引き続き、オーストラリアの薬剤師事情として、
「オーストラリアの薬局解体新書」
(m3「薬
キャリ Plus」藤田健二氏コラムより)の第 5~8 回を題材に、オーストラリアの薬局で実践されてい
る臨床介入サービス、在宅医療への参画、予防接種、規制緩和の動きなどについて討論した。
英国薬剤師事情として、
「英国の薬剤師に学ぶもの」
(藤上雅子氏講演要旨)
、
「英国の薬局薬剤師を
訪問して-激動期のわが国への示唆」
(今井博久・荒川直子両氏薬事日報連載記事より)の報告から、
英国では、現制度に安住することなく、対物業務を脱却し、臨床志向を強め、確実に専門性を高めな
がら進んでいることを学んだ。
日本の薬剤師は、形式的には医薬分業が進んだが、その実践は欧米の薬局テクニシャンの実務の域
を出ておらず、専門性のない業務が中心である。英国に学び、対人業務、臨床薬剤師業務の戦略と実
践が必要である。
〇デービット・ヒーリー著「ファルマゲドン」読後報告 (宮地典子報告)
英国の精神薬理学者デービット・ヒーリーによる書籍「ファルマゲドン」は、本の題名(pharma+armageddon)
が示すごとく、現代社会における医療、薬物治療の現状は瀕死の状態にあり、患者の手に医療を取り
戻すための終末期決戦を迎えようとしているというヒーリー氏の緊迫した意識が感じられる内容で
ある。
このような医療に至らしめた原因として、ヒーリーは、①医薬品特許制度
比較試験
②処方箋薬制度
③臨床
の 3 つをあげ、いずれも、本来、製薬企業の横暴を抑えるために制度化されたものが、逆手
に取られ、医療が薬のマーケティングの場と化してしまったと分析する。医療を本来のケアの場に取り
戻すためには、これら 3 つの制度のみなおし、改善が必要であり、医師、患者自身が行動することであ
ると呼びかける。
〇「第 19 回日本医薬品情報学会」参加報告
(立岡雅子報告)
6 月 4,5 日、昭和薬科大学山本美智子大会長のもと「はじめよう、添付文書+αの情報力」との
テーマで開催された。
山本美智子氏による講演「患者と医療者を結ぶ医薬品情報」では、オーストラリアのアカデミッ
クディテーリング活動―プライマリケア医に対する薬剤師による薬物療法の改善・医療費削減支援
の活動実践が紹介され、中立的情報基盤が組織的に支えられていることが報告された。
中山健夫氏(京大)による「健康・医療の情報を読み解く」は、健康情報学の視点から、定量
的視点としての診療ガイドライン、定性的なナラティブ情報のデータベース化、ビッグデータと
してのレセプト情報等に関する取り組みの紹介デあった。
毎日新聞社生活報道編集委員である小島正美氏は、「“メディアのメディア”は生まれるか-メ
ディア・バイアスの現状と課題」を報告し、ゆがんだニュース情報の中で、子宮頸がんワクチンの
被害者映像の報道について、悲惨さをアピールしているが、ワクチンは 100 万人の患者を救い、WHO
も奨励しているとの報告に、残念な思いを抱かせた。
〇サプリメントに頼らない生活-機能を表示しなくても売れる水素水(藤竿伊知郎報告)
初参加の藤竿氏から、外苑企画商事 HP で連載されているサプリメント情報の最新版として、水素
水の話題が紹介された。これは、水素ガスの研究が情報の基となっているが、まだ基礎研究の段階
で、有用な効果は実証されていないことが報告され、販売企業にきちんとした臨床試験を実施して
販売する社会的責任があると指摘された。
〇2016 年全国研究集会薬学領域部会分科会の企画について
今年度の全国医療研究集会薬学領域部会の企画について討議し、ポリファーマシーをはじめと
する薬をめぐる諸課題があげられ、共通項として、「医薬品情報のあり方を問う-真に患者を
支える情報」とのテーマに絞られた。次回、内容についてさらに具体的に論議することになっ
た。
次回日程:2016 年 8 月 31 日(水)PM6:30~