平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号 ( 1 ) 白山ののいち医師会報 2014年春号 7 発行日 2014年5月1日 発 行 白山ののいち医師会 〒924-0865 白山市倉光7-122 No. TEL 076-275-0795 FAX 076-276-8205 お・も・て・な・し 副会長 武藤 一彦 長い間格別な場所として ドバイスをして、レベルアップを図ろうとしたがだ 通っていた旅館の味が変わっ めだったらしい。旅館の利用客が減れば死活問題で た。運ばれた料理に花がない ある。やむなく板長交代となった。京都から招いた のだ。味わっても優しさを感 中堅の板長は、北陸の食材を上手にアレンジして客 じない。これはいつもの料理 の舌を満足させてくれるという。その味わいを実感 ではないと直感した。女将の するまでに、大した時間はかからなかった。こんな 話では、板長が伊豆の旅館に 時、わが夫婦は素早い意見の一致を見る。期待した 引き抜かれたのだそうだ。企業ばかりではなく旅館 以上の食材の生かし方、器の使い方に、夫婦ともに の競争も熾烈なのだ。関西から来た新しい板長は、 舌を巻いた。この正月は、予約も取れない程であっ やはり少しばかり経験不足だったのだろう。それか た。噂を聞いた以前の常連客が戻ってきたのだ。女 らはその旅館を訪れても「お・も・て・な・し」の 将だけではなく、仲居の表情も明るかった。食事を 半分が味わえるだけになった。仲居や女将の対応に 運ぶ彼女達の笑顔や語りかけも客の心を和ませてく 不足はない。昼でも深夜でも、何度でも温泉につか れる。お客が満足する味を運ぶ役目が嬉しいのだ。 る楽しみもそのままである。しかし、次第に足が遠 「花より団子」と言うが、やはり花も団子も合わせて のいた。美味しい料理や器を堪能する心躍る時間が 「お・も・て・な・し」と言える。 宙に浮いてしまった旅館の寂しさは格別である。 最近は、外来を受診する親と子どもの様子が変 小児科医院を開業して 25 年が経過した。風邪引き わってきた。 「今朝から鼻水が出てひどそうです。 」 で通っていた子ども達も既に二十歳を過ぎている。 と言って心配顔のお母さんがニコニコ顔の赤ちゃん 時にはその子ども達が自分の子どもを連れてやって を連れて受診する。内心は「こんな軽い症状で病院 来てくれる。望外の喜びである。しかし、顔を見なく へ来たら、他の風邪を貰って帰るだけだよ。 」という なった子ども達の中には、親が不快な思いをして来 感じだ。核家族や少子化が、親の育児知識の情報伝 なくなった場合もあるはずである。閉院時間すれす 達を阻害している。だからと言って、学校で子育て れに受診し、院長や職員からすこし嫌みを言われた の仕方を教えてくれるわけでもない。休日の小児科 り、院長が発した何気ない言葉に傷つけられたりし 当番医でも患者の層は、一般外来と変わらない。来 たら… 最近受診した患者さんは、 「先生は優しいの 院する子どもの殆どが軽症患者である。パートの母 に職員とぶつかってしまったので医院を変えたい。 」 親の帰宅時間が午後 6 時ではそれも当然だ。親子が、 と言われて訪れた。衝突の中身は聞き逃したが、優 とくに母子は追い詰められている。ワーク・ライフ・ しい先生を蹴ってでも医院を変えたいという親の気 バランスの推進や子育て教育の普及など抜本的な改 持ちにややショックを受けた。 「医者を選ぶのは患者 革が急務である。 の権利である。 」これは当然であり、最近ではセカン 外来を受診する母子、すべてに花と団子の「お・ ドオピニオンも常識になっている。さらに「職員を も・て・な・し」をしてあげたい。心配事に応え、最 選ぶのも患者の権利である。 」と言える。 後はさわやかなデザートで締める…「子育て、大変 数週間前、旅館の女将から電話があった。 「板長が だね。よく頑張ってるよ。 」 変わりました。 」経験不足の板長に女将もいろいろア (2) 第7号 白山ののいち医師会報 白山ののいち医師会役員退任に当たって 平成26年5月1日 島田 敏實 短い期間でしたが、医師会の方々や事務方とお近づき頂き誠にありがとうござい ました。 医師会では、おもに行政(国)との関わりが大きなテーマであったように思います。 病院においても今までは院内の諸問題に大きく関わっておりましたが、高齢者対策 という 2025 年問題をはじめとする在宅医療の国策に関係するようになりましてからは、介護の問題な どがテーマになってきております。今後、行政・保健・福祉・介護などの各分野と密接な連携による 医療体制の構築が求められているように思います。 国の事業委託をこの観点から取り組みましたつるぎ病院の平成 24 年度活動の成果が、このたび国か ら全国市町村に遍く配布さると聞きます「在宅医療・介護連携のための市町村ハンドブック」の中に 大きく採用されました。白山市全体がこの分野での活動を開始いたしましたが、全国のモデルとなる ことを期待いたします。 今後とも白山ののいち医師会の充実と発展をお祈り申し上げます。 白山ののいち医師会役員退任にあたって 山本 博 3 年間と短い期間でしたが医師会ならではの貴重な経験をさせていただきありが とうございました。 なかでも印象に残るのは県医の在宅医療推進委員として参加したことです。これ からどうやって在宅医療を進めるか。県内各郡市の委員が集まり現状から報告し 合い、その後各地に推進協議会ができ現在に至っています。またつるぎ病院が在宅療養支援病院に指 定され 1 年間の成果の報告会に愛知県大府市にある長寿医療センターまでつるぎ病院の方々とバスで 行ったことも良い思い出です。現在在宅医療推進のため各種の会が行われていますが、出席メンバー を見るといつも同じ顔ぶれであり、いかに他の医師会メンバーを取り込むかが問題だと思います。 「顔 の見える関係」 、 「情報の共有」とことあるごとに言われますが今のままでは不十分と言わざるを得ま せん。目に見えるメリットがないと誰も動きません。幸いに当医師会には中核病院である公立松任石 川中央病院との間に「まっとう連携君」があります。これを基盤に医師会メンバー、コメディカルの 人たちとの情報共有を図れないでしょうか。関係者の皆様よろしくお願いいたします。 平成25年度白山ののいち医師会総会 平成 20 年 12 月 1 日に施行された「一般社団法人および一般社団法人に関する法律」に基づき白山の のいち医師会は平成 25 年 5 月一般社団法人(非営利型)白山ののいち医師会へ移行しました。 平成 25 年 5 月 16 日、移行後初めての総会がグランドホテル松任で行われました。 会員総数 217 名のうち出席会員および委任状提出者の 141 名により総会は成立、議長および議事録 署名委員が選出され、議事が行われました。 一般社団法人への移行認可に伴う新役員(理事、監事、裁定委員)が決定、平成 24 年度事業報告、 収支決算報告、平成 25 年度事業計画案、収支予算書案が承認され、総会は終了しました。 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 白山ののいち医師会役員就任にあたって 第7号 ( 3 ) 杉本 尚樹 平成 25 年度より白山ののいち医師会に加わらせて頂きました公立つるぎ病院の杉 本です。平成 24 年度は当院が受託しました在宅医療拠点事業に白山ののいち医師会 の皆様にはご協力を頂き本当にありがとうございました。おかげさまをもちまして 国立長寿医療研究センターから発行される予定の「在宅医療・介護連携のための市 町村ハンドブック」に当院の取り組みが紹介され、一定の評価を得たと考えています。平成 25 年は石 川県の第 6 次医療計画に従って在宅医療を白山市全体に広げるためのお手伝いをさせて頂きました。 かってない高齢化社会の到来に向けて整備が急がれている地域包括ケアシステムは、医療、介護、 行政が三位一体となって地域を支えるシステムですが、見る方向を変えると診療所と病院のより強い つながりが必要なシステムでもあります。地域の病院の勤務医として、白山ののいち医師会の皆様と ともに微力ながら医師会の仕事に参加させて頂ければと考えています。 白山ののいち医師会役員就任にあたって 寺島 成明 このたび、白山ののいち医師会の理事をさせていただくことになりました。縁あっ て松任で開業いたしまして約 10 年たちましたが、学校医のほかは医師会活動を含め てあまり参加することがなかったように思います。しかしながら、昨年 5 月より理 事会での報告を拝聴するたびに、医師会においていかに多岐にわたる事務・業務が 決定され実行されているかを知り頭の下がる思いを致しております。本会に参加させていただく機会 を得ることができ、微力なりともお役にたてれば幸甚に存じます。 津田功雄先生が受勲されました 津田功雄先生には、白山ののいち医師会に於ける長年のご活躍 はもとより、石川県医師会に於いて保険担当理事として、石川県 医師会員に対して、保険診療の適正な在り方について指導をされ、 ご功績が顕著であると認められ、昨年秋の叙勲において、旭日双 光章の栄に浴されました。 津田先生の長年の医師会活動には、考えを秘めながらも決して 無理せず、偏らない普遍的な立場に立たれてのご姿勢は学ぶとこ ろが大きい。 先生の慶賀に祝意を申し上げ、今後とも豊富なご体験と実績か ら変わらぬご指導をお願い致します。 (4) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 一 月 一 話 ひ と つ き い ち わ 「北陸街道の歴史について」 平成25年2月21日㈭ 津山クリニック 津山 博 大学院にて研究を終えたのち、私は国立療養所敦賀病 木ノ芽峠 院の外科に配属されました。非常に忙しい病院であった ため夜 10 時より前に帰った記憶はありません。しかし 駆け出しの外科医にとっては沢山の患者さんに対して手 術を行いその回復を目の当たりにしますとアドレナリン とともに時間の概念が無くなっていきました。 その後大学の同門会に出席するために金沢へ帰ろうと すると時間がかかる事がわかりました。患者さんたちも 関西弁が混じっています。文化圏としては北陸ではない様子です。 夜中の医局で敦賀から北陸へは先人たちはどのようなルートをたどっていたのか?と考えたこと をまとめました。 平安初期からは木ノ芽峠が使用されていた様子です。 嶺が木の芽山地であり、木の芽山地の峠を越えて行く北 陸道の内、最も険しい敦賀新保宿から今庄二つ屋宿の間 を「木の芽古道」と呼ぶそうです。また紫式部も父・藤 原為時と武生まで同伴したそうです。その後、織田信長 の宿老・柴田勝家が北ノ庄(福井市)から安土への最短の軍用道路として栃の木峠を整 備し、以降、木ノ芽越えに代わりこちらが主要道となりました。 北陸トンネルの完成 福井県の嶺北(越前国)と嶺南(若狭国)を分ける分水 鉄道の歴史は当初、スイッチバックと 12 箇所にもおよぶトンネルを駆使した路線で したが、運用に難渋しました。 そのため 1962 年に北陸トンネルを完成させました。全長 13.8km の堂々としたトンネルです。 1972 年の急行 きたぐにの火災事故は忘れられないものです。現在では高速道路も開通しています。 今後とも、医師会の皆様には更なるご指導ご鞭撻をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 「週を考えてみて」 平成25年4月11日㈭ 長尾 信 最近は休日と薬剤処方の関係から曜日や週を気にする事が良くあるので、これについて少し調べて 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号 ( 5 ) 見てみました。 生まれは古代バビロニア 週とは、7 日を 1 周期とする時間の単位である。 7 日のそれぞれは曜日と呼ばれ、日本語ではそれぞれ七曜の名を冠して日曜日、月曜 日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日と呼ばれる。 キリスト教圏では、創造主が世界を 6 日間で創り上げ 7 日目に休暇をとったから、と する聖書を引用して説明されることが多い。ただし、バビロン捕囚によって週の習慣が ユダヤ人に伝わったともいわれる。天球上を移動する太陽、月、火星、水星、木星、金星、 土星の 7 つの天体、いわゆる七曜が由来であるとも、太陰暦の 1 か月を 4 等分したこと に由来するともいわれる。 週・曜日の概念は古代バビロニアで生まれ、紀元前 1 世紀頃のギリシア・エジプトで 完成したと考えられている。一方、古代バビロニアから様々な経路を経てユダヤ教徒が 使ったものがそのままキリスト教徒に伝えられたとも言われている。 7 日を 1 週とする単位の由来は極めて古く、古代バビロニアに遡ると考えられている。古代バビロ ニアでは、毎月 7、14、21、28 日を休日にした。ただし、1 か月は 28 日ではないので、厳密に 7 日周 期の週が成立したとはいい難いようである。 ユダヤ人は 7 日毎に神の休日、安息日を守ってきた。このような週の習慣は 1 世紀以降キリスト教 の「主の日」によって受け継がれたとの事である。 また、天動説での太陽系モデルでは、七曜は、地球から見た角速度が速いものほど地球に近く、月・ 水星・金星・太陽・火星・木星・土星の順に並んでいると考えた。しかし、曜日の順序は、この順番 またはその逆というわけではなく 2 つおき(3 つめごと)に遡っている。 元来、七曜は、1 曜が 1 日ではなく 1 時間毎に地上を守護すると考えられた。これがプラネタリー アワーである。プラネタリーアワーの順序は、地球から最も遠い土星に始まり、内側へと進む。きっ かり 24 時間後、即ち翌日の第一時間目の守護星は、3 つ前(あるいは 4 つ後)の太陽となる。以下、 順に土星、太陽、月、火星、水星、木星、金星、そしてまた土星が各日の第一時間目の 守護星になる。第一時間目の守護星は、同時にその日一日の守護星ともされ、その日は とである。 まだまだ面白い内容はあるが、書ききれないため文章としては一部割愛させていただ く。なお、 日本においては、入唐留学僧らによって持ち帰った密教教典によって平安 時代初頭に伝えられた。しかし現在のような曜日を基準として生活が営まれるように グレゴリオ暦の導入 守護星の名を以て呼ばれるようになった。こうして、現在の曜日の順が決まったとのこ なったのは、明治時代初頭のグレゴリオ暦導入以降である。 「日本のワインブームは甘口から?」 平成25年5月16日㈭ 坂東 琢麿 日本におけるワイン消費の起源はポルトガル船が種子島に漂着した頃の戦国時代さかのぼること ができ、それは南蛮文化の一つとして伝来したようです。数千年の歴史を刻むヨーロッパと比べると (6) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 日本のワインの歴史はかなり浅いと考えられます。しかし、山梨県の甲州種のブドウは 滋養強壮 仏教とともに中国から伝来し、奈良時代には山梨県で栽培されていたとの記載があるこ とから、太古においてアルコールの原料として欧州人はブドウを、そして日本人は米を 選択したことになります。現在でも欧州ではブドウの 80 %は醸造用、一方日本では醸 造用が 20 %で 80 %が生食用です。日本のブドウは美味しいからでしょう。 近頃はポリフェノールの薬効なども叫ばれ、タンニンの効いた辛口赤ワインがブーム ですが、実際本格的にその消費が始まったのは明治時代初期の文明開化の時期でした。 明治政府の欧化政策の一環として国内生産され始めたワインも、その意に反して日本の 食生活には馴染まずまったくと言ってよいほど普及しなかったため、苦肉の策として砂糖を添加した 甘口ワインが滋養強壮の飲み物として登場しようやく国内消費が拡大したようです。つまり日本のワ インブームは甘口ワインから始まったと言えるでしょう。 一方、世界に目を向けると甘口ワインはワイン界で最高位に位置付けられるものも少なくありませ ん。最も有名なものとしてはフランスのボルドー・ソーテルヌ地区が主な産地であるセミヨンやソー ヴィニョン・ブランを原料とする貴腐ワイン、ドイツのモーゼル地区やライン地区が産地であるリー スリングを原料とするトロッケンベーレン・アウスレーゼ、そしてハンガリーのフルミントを原料と するトカイワインが挙げられ、これらは世界三大貴腐ワインと称されています。 「貴腐」とは文字通 り腐ったブドウを意味します。腐ったといっても腐敗菌ではなく貴腐菌 Botrytis cinerea(ボトリティ ス・シネレア) という真菌が果実の表皮に繁殖しその透過性を亢進させるため水分が失われて糖度が 増し、さらに酸味が旨味に変化することにより芳醇な甘口ワインの原料となります。この貴腐菌は 極めて特殊な環境、すなわち早朝は靄がかかり日中は日照時間が十分長く日内気温差が で貴腐菌の繁殖があり、初めて貴腐ぶどうを目の当たりしたオーナーは「奇跡が起きた」 と感動に浸ったそうです。 貴腐ワインはまさに自然の恵みの集大成といっても過言ではありませんが、貴腐ブド ウを丁寧に管理し、搾り、さらに醸造する各作り手の神業も世界最高レベルを維持する 重要な要素であることは疑う余地がありません。作り手の心情を思いつつまずは一献甘 奇跡の貴腐ワイン 大きい地域でのみブドウの果実に繁殖します。1993 年に長野県の桔梗が丘のワイナリー 口を、ぜひ食後にご賞味ください。 「季節外れの星座」 平成25年7月18日㈭ 山本 信孝 オリオン座 先日金沢大学医学部の今春入学した一年生に、三大死因について一線病院で診療にあ たっている医師として講義する機会がありました。がんについて石川県中の先生、心疾 患については金沢循環器病院、脳血管障害については小生が担当しました。ここでハタ と困ったのは実は脳血管障害は昨年 6 月の統計で肺炎に抜かれ第 4 位になり三大死因の なかから外れてしまっています。もっとも脳血管障害の患者さんそのものは増加して肺 炎で亡くなる方が増えただけです。30 年前と現在では脳血管障害の治療に関して何が 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号 ( 7 ) 進歩したかを考えると仕事が楽になったというのが最も大きいように思います。卒業したての頃はほ とんど病院に住んでいる状態で、帰宅しても深夜過ぎ。8 月頃にふと空をみるとオリオン座が見えて いたのを覚えています。オリオン座は代表的な冬の星座で、今日 7 月 18 日にオリオン座の一部が見え てくるのは午前 3 時頃です。8 月にもなると午前 3 時には全体が東の空に見えてきます。最近の食材 は季節感があまりなくなり旬がはっきりしなくなっていますが、星座は数千年かければ位置がずれま すが、その季節性は人間が生きているスパンでは位置はほとんどずれません。夏のオリオン座は季節 外れで妙に違和感を感じました。ちなみにオリオン座のベテルギウスという α 星は赤色超巨星とよ ばれ大きさは太陽系でいえば木星の軌道付近にいたりますが、これはもしかすると人類が経験できる 歴史のなかで超新星爆発を起すかもしれないと言われています。ウルトラマンの故郷である M78 星 雲はオリオン座にある M78 だと最近まで信じていましたが実は全くの別物のようです。 などのカタログで M1 は牡牛座にあるカニ星雲です。超新星として有名で 1054 年に爆発 が観測されていますが実際は 7200 光年離れていて現在も時速 500 万キロで拡大していま す。 最近当直で晴れた夜にはコーヒーを飲みながら病院の屋上で空を眺めています。ちな みに今日は月齢 9.8 日ですので夜半は晴れていれば星空が見え夏の大三角形が見えると 夏の大三角形 ちなみに M とは 18 世紀にフランスの天文学者のシャルル・メシエが作成した星団星雲 思います。やはり星座は旬の時期の方が見応えがあります。 「アニサキスの話」 平成25年9月19日㈭ 松葉 明 私の居住する美川には、漁港がある事もあり、獲れた魚を漁師や住民が自分で調理し 海中で孵化したアニサキスの幼虫は、まず第 1 中間宿主であるオキアミなどに寄生し、 更にこれを捕食した第 2 中間宿主であるサケ、マス、タラ、サバ、ニシン、イワシ、サ バ、イカなどに寄生し、最終的に、終宿主であるクジラやイルカの体内で成虫になりま す。この幼虫の第 2 中間宿主である魚類などの生食により、人に発症しま す。回虫目に属し、数種類ありますが、いずれも全長は 2 ~ 4cm 程度で、 魚類の内臓及び筋肉に寄生しています。胃アニサキス症の場合、一般に摂 取後数時間から 8 時間以内に激しい胃痛が起こります。腸アニサキスの場 合、少し遅れて数日以内に発症し、腹痛、嘔吐、時に腸閉塞や腸重積をも たらします。胃アニサキスは、魚の生食から腹部症状の発症時間より、多 くは推定診断され、胃内視鏡で胃壁に侵入した虫体を摘出する事により、速やかに症状 が改善します。一方、腸アニサキス症は、確定診断が困難な事も多く、かつては、開腹 手術される事も有りましたが、腹部エコーや CT で限局性の腸管壁肥厚などから診断さ れる機会も多くなってきており、多くは保存的治療で改善します。又、最近では、小腸 内視鏡で、小腸アニサキスを摘出した報告も見られています。腸管外アニサキス症とし しばしば癌との鑑別も要す 魚類などの生食で発症 て、刺身で生食する機会も多く、胃内視鏡をやっていますと時々アニサキスに遭遇します。 (8) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 て、アニサキスが胃腸壁を穿通し、実質臓器に侵入すると肉芽腫を形成すると、しばしば癌との鑑別 を要します。膵頭部癌と診断され、膵頭十二指腸切除術が行なわれた際アニサキス症の例もあります。 参考までに、ワサビやショウガ、酢でしめてもアニサキスは死滅しません。アニサキス症の予防は、 ①加熱、②冷凍(- 20 ℃ 24 時間以上)③粉砕 ④養殖魚(アニサキスは殆どいない)となりますが、 いずれも美食家にとっては無理な注文でしょう。刺身を一切れずつ光に透かして食べるのも不調法で すので、調理人を信用して、良く噛んで日本海の幸を堪能する事にしましょう。 「数学について考える」 平成25年10月17日㈭ 古澤 明彦 地球が丸い(穴は開いていない)か否かを証明するにはある地点から地表(2 次元) ポアンカレ予 想 に沿ってロープを 1 周させ、できた輪が無事回収できれよい。宇宙はどうか?「宇宙(3 次元)に向かってロープを 1 周させ、輪が無事回収できれば宇宙は丸いといえるはず」 と予想したのがポアンカレ。100 年後に証明されたが、本当に宇宙が丸いかどうかは、 実は確認できない。地球が丸いことは地球の外(人工衛星)から地球を眺めればわかる が、宇宙は宇宙の外から眺められない。 このポアンカレ予想を若いロシア人が証明したという NHK 番組を見た。数学科も考え た高校時代を思い出し、証明過程をなぞってみた。この問題は位相幾何学(トポロジー) 問題としてつとに有名だが、リッチフロー方程式、熱力学、多様体、曲率、幾何化予想、特異点、双 曲幾何学、微分幾何学…難解な数学語の連続である。いらいらついでにフェルマーやオイラー、ガウ ス、素数、整数…色々数学本を読んでみた。数学が楽しいのは高校までで、それ以上は特殊な人々の 世界と実感した。物理は仮説や実験がある。実験があれば変な結果も出るが、精度が高まればやがて 「法則」となる。少々の異端は許してくれる。数学には実験がなく、例外のない鉄壁な論理の積み重ね だけ。この予想に関わった多くの天才は「鉄壁の検証」にてこずり、孤独、絶望、人格変化にまで至っ たようである。やはり数学はダントツ「特殊な学問」である。臨床で数学と言えば統計である。講演 会や雑誌で見る数字は有意差、オッズ、ハザード…毎度おなじみ過ぎる。眠気覚ましに π とか e とか SIN、COS、微積とかが出れば、プレゼンもぐっと引き締まると思うが出る幕はない。 EVIDENCE(E)は、多くは統計から生まれる。患者背景が同じでも、時期、国地域、デザイン、 エンドポイントやアウトカムが変われば、結果は微妙に違って当然。比較試験で有意差が出ると大層 喜ぶ人がいるが、臨床的にどれほど重要か疑問に思うことがある。臨床研究では従来の E に対し、否定肯定どちらの結果が出ても排除はされない。稀な症例も立派な E である。 るたびに最新の E が世に出る。学会はそれを基にガイドライン(GL)を作りこまめに 改定する。我々はコロコロ変わる E や GL に未来ずっと振り回されながら、“医学の進歩” についてゆく。物理数学のように「これにて一件落着」はない。 日本の数学者は日本の宝である。頭を使いすぎて、心身に異常をきたすことのなきよ う、毎年健診を勧め、必要あれば GL に則った正しい保健指導をしてゆきたいと思う。 数学者は日本の宝 医学は温かい。現在も世界各地で沢山の “○▼ STUDY” が行われている。メタ解析す 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号 ( 9 ) 「暁烏敏」 平成25年12月12日㈭ 河合 博 白山市に暁烏敏賞というのがあり今年で 29 回目だそうです。 毎年 5 月のホームページにのる様です。 暁烏敏は 1877 年石川県白山市北安田の明達寺に生まれ、松任高等小学校を卒業。金 歎異抄との出会い 沢の共立尋常中学に進学その後京都の大谷尋常中学をへて真宗大学に入学、歎異抄に出 会いました。 歎異抄は親鸞の語録で編者は唯円。親鸞の教えにそむく異端の発生をなげき誤りを正 そうとした書です。 1900 年浩々洞にはいりました。浩々洞は親鸞の思想を近代哲学の観点から見直して いた、清沢満之が主宰した私塾です。 1901 年浩々洞において精神界という名前のほんを刊行し、その中で歎異抄を読むと いう論文を 8 年間 55 回にわたり連載し、歎異抄をひろめました。 歎異抄は本山では世間に出さない書物とされていたので、その後 1911 年本山より異安心の疑いを かけられました。 異安心とは真宗の教えとは異なった教えを真実の教えとすることです。 それで 1915 年自坊の明達寺に戻ります。大正 4 年のことです。各地で講演をおこないそのカリスマ 性によって多くの信者を獲得しました。1951 年昭和 26 年真宗大谷派東本願寺が財政危機に陥りそれ をすくうため宗務総長となり、たった 1 年で立て直しました。 1952 年自坊の北安田明達寺にかえりました。 この様に暁烏敏は明治の近代化政策としての廃仏棄釈等の流れの中で浄土真宗の教えを西洋の近 代哲学にもあうように努力した人です。 同じ様に真宗の組織や教えも近代化しようとしました。清沢満之の弟子になりこの当時門外不出で 説いてはいけない教えとしての歎異抄をみいだし宗祖親鸞の本心はこの歎異抄にあるということを 説きました。 すなわち善人でさえ救われるのであるから悪人はなおさら救われるという教えです。なぜなら救うの は阿弥陀仏であってこちら側即ち救われる側は全くなにもしないからです。これこそ他力教の真髄です。 こうして自分自身即ち暁烏敏を救ってくれた歎異抄を世の人々に説いていきました。 暁烏敏は歎異抄によって阿弥陀仏に救われるという宗教体験をしたわけです。この宗教体験なしに は信仰はありません。全国各地に出向き自分の宗教体験をもとに講演し、会場には何百 しかし当時の真宗教団にとっては歎異抄を説かれることは本山の方針にそむくこと で、暁烏敏は異端者として本山に告訴され異安心とされました。 しかし暁烏敏はたくさんの妨害にも屈せずさらにその妨害を自分の法話や著作の題材 として、かえって聴衆は増加しました。 中年ころから失明に瀕していましたがインドや欧州に一人旅立ち膨大な古今東西の著 作を収集して帰国しました。 皆当住生 人何千人と集まったようです。 ( 10 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 次代の人のために大日本文教院という建物の建設を計画しましたが、戦争の時代に入り挫折しまし た。本は後年 5 万冊となり金沢大学に寄付されました。 暁烏敏のおしえは皆当往生(みなまさに往生すべし)ということをいってどんな人もどんな悪人も そのままで必ず救われる。 阿弥陀如来の大慈悲心に漏れるものは一人もいない。そういう教えです。 今は知りませんが前は明達寺の横に寮がありたくさんの救われたい人がおりました。また清沢満之 先生にならっている暁烏敏の姿を彫刻した像をおいた建物もあります。こうして暁烏敏は宗教家とし て名声をはせました。白山市の生んだ偉人のひとりです。 現在子どもの精神発達や大人のうつ病に関して色々講義がありますが、その講師をされている先生 方の宗教観がどのようなものか興味があります。 確かに宗教は中世においては盛んでしたが、近世や近代科学にはあわないかも知れません。しかし、 病院でも在宅医療でも人は死にます。私が往診をしていた頃は、この辺はまくら経といって、たいてい 死んでいく人の近しい人々があつまった中でお経を聞きながら極楽往生をねがって死んでいきました。 それを思い出して、宗教について話させていただきました。きいていただいてありがとうございます。 「介護保険H25年の新聞記事を読んで」 平成26年1月16日㈭ 高田 宗之 「主題」と副題および日付(北国) 8月 2日「要支援の人切り離し」市町村事業へ移行 国民会議 8月25日「介護自己負担2割に」厚労省検討 8月26日「特養要介護3から」入所基準を厳格化 給付費抑制 8月28日「変更時期早期明確化を」自治体側が要望 見直し 8月 9日「来年度にも窓口負担増」政府原案 9月26日「 5人に1人2割負担」利用者50万人に影響 11月27日「訪問・通所を市町村移行」介護保険見直し 12月20日「高所得者は2割負担」介護サービス15年度から 12月23日「自己負担増と効率化」施設入所基準も厳しく 上記のように平成25年度は介護保険見直しの記事が多い傾向でした。ポイントとしては国民会議で は給付の重点化効率化の必要性を指摘され、介護保険部会で、要支援の切り離し・高所得者2割負担・ 特養入所基準要介護3以上に限定など給付費抑制方針を示し、介護保険法改正案を平成 不公平感 26年通常国会に提出する予定です。 介護保険制度は、社会福祉事業法による措置制度と違い、利用者は原則的に自分の意 思でサービス提供受けることができるようになりました。今後、介護保険法が改正され ますと、自分の意思で介護が受けられず、不公平感の観点から課題があると思われます。 介護保険料を徴収した人すべて介護を受ける権利があるのに、一部の人を排除するの は、いささか疑問があります。国会で十分審議して頂きたいと思います。 (1 月から 7 月記事ありません) 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 11 ) 白山市医師会員と白山市立小中学校長との懇談・懇親会開催 平成25年6月7日㈮ 19:00~ グランドホテル松任 平成 25 年 6 月 7 日㈮午後 7 時からグランドホテル松任において開催された。 1 開会挨拶 真田 陽 白山市医師会会長 2 児童生徒の様子を含む学校保健に関する懇談会 (1)最近の児童生徒の学校での状況や学校保健の諸課題について 校長会 川畑 敬三校長(北陽小学校) 「学校保健安全に関する学校環境と指導について」 プール使用時の危険性や熱中症、食物アレルギー(除去食やエピペン) 、日光過敏、花粉症、 脱臼などの外科的疾患、感染症とくにインフルエンザなどの学校安全対策について話された。ま た、児童生徒への薬物乱用防止指導や学校保健委員会にて健康状態の共通理解を図り、児童が健 康で安全な学校生活を送れるよう配慮していることも話された。 (2)診察室から診た児童生徒の様子や健康管理に関する医師からの提言 医師会 岳尾 基一先生(たけお皮膚科クリニック院長) 「学校関連の皮膚疾患について」 学校感染症第三種(手足口病、伝染性紅斑) 、頭じらみ、水いぼ、 とびひ、疥癬、真菌感染症などについて、学校保健との関連(休校すべきか、プールは控えるべ きか)で解説された。 3 懇親会 山岸秀次白山市小中学校長協議会会長の開宴挨拶、中山良久白山市小学校長会会長の乾杯発声に 続いて歓談・交流会が行われた。途中、参加者全員の自己紹介も加わり、児童生徒を中心に学校と 医療が大いに交流をはかる有意義な懇親会となった。 ⑥ 疥癬 顕微鏡で見た白癬菌 白癬(トンズランス感染症) ( 12 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 野々市市学校医会 平成25年6月8日㈯ 金沢国際ホテル 平成 25 年 6 月 8 日㈯野々市市の学校医と教育関係者(教育長、学校長、養護教諭)それに保母、合 わせて 35 名が金沢国際ホテルに集まり、金大小児科の東馬智子先生の講演をお聞きしました。 座長は浅井が務め質疑応答もあり有意義な会であった。 東馬先生の講演の要旨は下記にしるします。 「子どもの食物アレルギーへの対応」 金沢大学小児科 東馬 智子 〈要旨〉 食物アレルギーは乳児期に多いが、乳児期発症のものは成長に伴い耐性獲得しやすいとされる。一 方、重症のアナフィラキシーは年長児や成人でおこりやすい。食物アレルギーの症状は個人差が大き く、血液検査のみで診断したり検査の数値で重症度を判断することはできない。治療は基本的には除 去食であるが、誤食時に備えて①原因食物と摂食時の症状②症状発現の時間経過③緊急常備薬の有無 と使用法④搬送手順と搬送先、を学校と保護者、主治医の間であらかじめ十分に確認しておくことが 必要である。重症児においては、エピペンを適切なタイミングで使用することはもちろん必要である が、エピペンは搬送する途中の一つの手段にすぎない。症状を早期にとらえ、いかに短時間で医療機 関へ搬送するかを具体的に決めておくことが最も重要である。 (学校医会代表 浅井 恭一) 第 45 回全国学校保健・学校医大会 この秋金沢で開催 日 時 平成 26 年 11 月 8 日(土)午前 10 時〜 メインテーマ 「子どもたちの明るい未来のために〜学校医の新たなる役割を考える〜」 会 場 ホテル日航金沢、石川県立音楽堂邦楽ホール 日 程 10:00 〜 分科会(1 〜 5 分科会) 14:00 〜 シンポジウム 基調講演: 「保健教育を生かした学校保健」 講 師:石川県立中央病院 副院長 いしかわ総合母子医療センター長 久保 実 その後、4 つのテーマに分かれてのシンポジウム 15:40 〜 特別講演 演題 「武士の献立」にみる加賀百万石の食文化 講師 青木クッキングスクール校長 青木 悦子 16:50 終了予定 その後懇親会 学校医の先生方は、是非ご都合をつけて多数ご参加ください。 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 13 ) 救急フェア開催 平成25年9月7日㈯ 13:30~ アピタ松任店 1階広場 今年の救急フェアは、9 月 7 日㈯午後 1 時 30 分から、アピタ松任店 1 階広場で開催されました。白 山ののいち医師会吉光康平会長の開会挨拶の後、心肺蘇生体験コーナー、AED 展示、骨密度測定、 健康相談、山本信孝理事や公立松任石川中央病院の八重樫貴紀医長による「脳卒中」と「心筋梗塞」 予防相談などに多くの市民の方が参加されました。参加者は 30 代が最も多く、今年は特にお子様を 連れた若いお母さんの姿が目立ちました。幼いころから健康や緊急の心肺蘇生に関心を持つことは大 変意義のあることだと実感しました。白山野々市広域消防本部の皆さん、ご協力ありがとうございま した。 開会式 脳卒中予防相談コーナー 金沢脳神経外科病院 山本医師 心筋梗塞予防相談コーナー 公立松任石川中央病院 八重樫医師 心肺蘇生体験コーナー 白山市北消防団 女性分団 ( 14 ) 第7号 第9回病診連携研修会 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 平成25年10月12日㈯ 金沢国際ホテル 「連携パスを用いた生活期との地域連携」 石川脳卒中地域連携推進協議会 加賀支部 加賀脳卒中地域連携協議会 事務局 医療法人社団 浅ノ川 金沢脳神経外科病院 地域医療福祉部 地域医療連携課 課長 柳村 歩 地域連携の推進は、地域住民を支え、質の高い医療や介護を効率的に提供するためには欠かせません。 脳卒中では、急性期の治療、回復期のリハビリテーション、生活期の健康管理や再発予防、介護が 切れ目なく継続的に提供される体制が必要となります。 石川県における脳卒中地域連携体制は、平成 20 年 4 月に「石川脳卒中地域連携推進協議会」が設置 され、体制構築に向けた取り組みが開始されました。また、同年 6 月には下部組織として加賀地域の 急性期や回復期を担う 24 病院による「加賀脳卒中地域連携パス WG」が設置されています。WG では、 地域連携のツールとして連携パスを作成し、平成 21 年 4 月より急性期と回復期間、平成 23 年 6 月から は生活期を加えた運用が行われています。平成 24 年 8 月には「加賀脳卒中地域連携協議会」が発足し、 医療機関:130 機関、介護サービス事業所:149 事業所が会員となり、体制の強化、活動の発展充実 が図られています。 現在、協議会の活動の一つとして裾野が広い生活期との連携を強化すべく県内各地域にある在宅 ネットワークとの連携を進めています。共催研修等を通じて生活期に有用な連携パスとは何かが話し 合われ、見直しが検討されています。また、来年度より運用が開始されるいしかわ診療情報共有ネッ トワークでの運用についても検討されています。 これまでの活動を通じて連携パスは効率的な医療・介護を提供するための単なる計画表ではなく、 多職種の人々が顔を合わせ、手をつなぐためのツールとしても活用されてきています。 今後とも協議会の活動にご理解とご支援を頂ければ幸いです。 いしかわ診療情報共有ネットワークの現状について 情報担当理事 長尾 信 現在、白山ののいち医師会においては平成 26 年 3 月末までに 50 の医療機関が参加の意思表示をし ていただきました。 パソコンへの入力や手続きのために、随時公立松任石川中央病院担当者が皆様の医療機関にお伺い していると思います。医療機関訪問に少しお時間をいただいておりますのでご了承のほどよろしくお 願いします。 また、システムへの問題、分からない事項、心配なこと等がありましたらその時点でお聞きいただ けばと思います。 なお、普段利用中で分からないことがありましたら、長尾または病院担当者の方までご連絡いただ ければ幸いです。 今後、地域連携パスの運用や在宅医療への利用も予定されております。ICT は時代の流れと考えて おります。取っつき難い点もあろうかと思いますが、参加に迷われている会員の先生方におかれまし ては、これからも研修会を予定しておりますので、少しでも見て触れていただき、利点を見いだして いただければと思います 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 15 ) 「頭の痛い話」 金沢脳神経外科病院 副院長 山本 信孝 頭痛は患者さんが訴える症状のなかではかなり多いもので す。しかし、その原因は多岐にわたります。頻度として最も 多いのは緊張型頭痛でこれは頭蓋骨周囲の筋緊張でおき加温 やマッサージで軽減する傾向がありますが、片頭痛の場合は 逆に暖めたりマッサージや運動で症状が悪化します。嘔吐を 伴い頭痛が始まると動きたくなくなるのは片頭痛に多い傾向 です。これらは頭蓋内に器質的異常がなく一次性と呼ばれま す。これに対し、二次性頭痛は頭蓋内の異常によるもので、 代表的なものはくも膜下出血です。これは頭痛が突然起きる もので、教科書的には経験のないような激しい頭痛とされていますが、それほど強くない場合もあり えます。脳腫瘍では頭痛がかなり長期に続くことが多く朝方に強い傾向があります。髄膜炎による頭 痛の場合、比較的頭痛は短時間で強くなりますが、発熱を伴い嘔吐もしばしば見られます。無菌性の 場合は安静と補液で症状が改善しますが、細菌性の場合緊急に抗生剤を開始しないと生命に関わる事 態となるため注意を要します。患者さんの話を聞くだけで診断はおおむねつきますが、最近は CT な り MRI をとらないと納得しない方が増えています。頭痛を訴える方がおられましたら、御遠慮なく 検査の依頼をお願いいたします。 25 年 10 月 14 日㈷ 第 9 回日本小児科医会生涯研修セミナー開催 平成 ホテル日航金沢 上記セミナーが、石川県小児科医会 10 月 14 日(月・祝)にホテル日航金沢で開催された。午前中 のメインテーマは、 「日常診療で陥りやすいピットホール」として「発熱」 「腹痛」 「皮疹」 「口腔」を 採り上げた。それぞれの課題について、臨床に精通した演者の講演は、臨床家の知識の拡大と陥りや すい陥穽への転落を避けるための貴重なお話であった。昼は、ランチョンセミナーとして「ロタウィ ルス胃腸炎の予防意義」 「小児救急診療における経口補水療法」の 2 題が、2 会場に分かれて行われた。 午後は、小森 貴日本医師会常任理事の「予防接種:定期接種化の取り組み」を皮切りに、小児疾 患ガイドラインの理念として「小児腸重積症」 「起立性低血圧」についてその作成に携わった先生方 の解説をお聴きした。最後の特別講演は、「行きづらさを希望に!〜それぞれの生きる物語を編む」 と題して北陸学院大学人間総合学部 金森俊朗先生が講演され、 「大人は子ども達を信じ、真摯に対 面すべきである」と力説された。 最終的にセミナー登録者は 400 名に達したが、金沢の秋の一時を、知識と観光とグルメに費やし、 明日からの診療のエネルギーになったことを祈り終了した。 ( 16 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 白山ののいち医師会公開講演会 平成25年10月19日㈯ グランドホテル白山 菊薫る季節、第3回目を迎えた白山ののいち医師会主催の市民公開講演会が開催されました。今年 は公立松任石川中央病院の浅井純先生に「からだにやさしい大腸の検査と治療」 、下崎整形外科医院 の下﨑英二先生に「膝の痛みをあきらめていませんか?」と題して話していただきました。 浅井先生の「からだにやさしい大腸検査」とは、大腸にガスを注入してマルチスライス CT 撮影し、 大腸の 3 次元映像をつくるものです。これまでの内視鏡検査に比べ、身体への負担や何よりも心理的 抵抗が少ない画期的な検査方法です。これにより受診率の向上及び大腸がんの早期発見につながるも のと期待されます。 一方、下崎先生は関節外科・スポーツ整形外科医として著名な方ですが、今回は特に高齢者に多く 見られる「膝の痛み」―変形性膝関節症―の治療についてお話していただきました。強い痛みと日常 生活に困っている患者さんにとって、手術とリハビリによって辛い痛みが消えスポーツを楽しんだり 以前と同じように日常生活をおくれることは、まさに朗報と言ってよいでしょう。 当日は、130 名余の市民の参加があり、熱心に聞き入っておられ、また質問も多く、あらためて関 心の深さを感じました。お二人の先生、ありがとうございました。 吉光康平会長挨拶 浅井先生のご講演 下崎先生のご講演 講師のお二人と役員・総務の皆さん 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 17 ) 大規模災害対応訓練 平成26年3月25日㈪ 公立松任石川中央病院 3 月 25 日、森本富樫断層帯を震源とする震度 6 弱の地震が発生したとの想定で災害対応訓練を行い ました。今回のテーマは『発災後 1 時間の初動』とし、医療活動 TTT(トリアージ、治療、搬送) よりも CSCA(指揮系統確立、安全確保、通信確立、評価)に重点をおいて行いました。発災後、職 員の在院登録・班編成を行って指揮系統を確立し、各部署の被災状況報告書から病院機能の把握を行 いました。外来に設置した診療エリアでは活動内容、役割分担、レイアウト、資機材などについてメ ンバーで確認を行いました。 指揮系統の確立に関してまずまず対応出来たものの情報収集と評価に関しては混乱がみられまし た。発災から速やかに本部を機能させるには日頃の準備、繰り返しの訓練が必要と感じました。 当院は昨年 4 月、災害拠点病院に指定されました。今後も定期的に訓練を重ね災害対応能力向上に 努めるとともに、医師会の皆様方や地域の各機関と連携を図るような訓練や研修も計画してまいりた いと思います。 (安間 圭一) 災害対策本部 ( 18 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 公立つるぎ病院大規模災害訓練について 平成26年3月11日㈫ 公立つるぎ病院 当院の大規模災害訓練は 2008 年から始めて毎年 1 回のペー スで行っており、阪神・淡路大震災を教訓として、計 6 回を 数えております。また、東日本大震災が起こった年には、石 巻へ災害支援に当院から私と、3 名のスタッフを派遣して頂 きましたが、帰院後には大規模災害訓練と合わせて福島原子 力災害に対して被ばく医療訓練を行っております。 阪神・淡路大震災以降は災害医療、訓練は着実に発展した ように思えます。私も災害発生 3 日後に現地入りして災害支 援を行いましたが、当時は DMAT も存在せず、また近隣の 災害対策本部 医療施設からの派遣も少なく、指揮命令系統も判然としない 状態で黙々と支援活動を行っておりました。その後当院も他 院と同様に災害医療の充実、訓練を行い、CSCATTT の実 戦。トリアージ訓練、MC(medicalcontrol)協議会の設立、 ACLS、BLS、JPTEC、JATEC、DMAT などの団体へのス タッフの参加、教育を行って来ました。 鶴来地区では活断層による地震災害、がけ崩れ、ダムの決 壊等の水害が懸念されますが、もっと広範囲な大規模災害で 患者さんの処置の様子 は救急隊も、レスキュー隊も医療施設同様需要と供給が逆転することから住民による救助、搬送が重 要となります。 その為、当院では 3 年前から地域住民への防災教育を目的 として災害訓練の参画を促せてきたところでありますが、毎 年見学者を含めて多くの住民の参加をいただいており、住民 防災教育もようやく地に足がつき始めた所であります。 さて、この度の災害基本法の一部改訂により 、地域防災 計画では住民等についても自発的な防災活動参加等の責務が 搬送訓練 規定されており、東日本大震災の後、国もようやく住民の防 災教育の重要性を認めた形になりましたが、当院の災害訓練 においても地域住民主体の救命、搬送の実戦に向けてより一 層の積極的な住民参加、住民教育の実践を目指すところであ ります。 尚、本年度からは当院も初期被ばく医療機関を担っていく 事になり、ルーチンワークとして災害に伴う大規模災害訓 練、被ばく医療訓練を予定しており、ますますの積極的な地 域住民参加を期待しているところであります。 (富田 寛) 患者さんへの対応 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 19 ) 石川県防災総合訓練 平成25年11月2日㈯ 9:00~ キリンビール北陸工場跡地 当初 9 月 2 日に予定されていましたが、台風の影響で延期になっていたものです。毎年県内の各自 治体持ち回りで開催されているもので、今年は 10 何年振りで白山市での開催となりました。当日は 好天の下旧キリンビール工場跡地を会場に大規模災害が発生したとの想定で行われました。 石川県はじめ各市町の防災担当課、各関係機関、施設、地域住民等延べ 1 万 3 千人の参加があり、 かなり大がかりな訓練でした。当白山ののいち医師会は医療救護班としてトリアージを担当し、搬送 されてくる被災者をレッド、イエローに分ける役を担いました。松任石川中央病院も含め県内の災害 拠点病院から DMAT も参加し、相互の連携も確認しました。今後は地域の医師会員、医療介護施設 との連絡網体制構築の課題が挙げられました。 ( 20 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 石川県医師会との懇談会 平成25年11月12日㈫ 19:30~ 白山市民交流センター 平成 25 年 11 月 12 日㈫午後 7 時 30 分より白山市民交流センターにおいて、石川県医師会との懇談会 が開催されました。白山ののいち医師会は 22 名(昨年は 25 名) 、県医師会からは 11 名が出席しました。 白山ののいち医師会側から(1)在宅訪問マッサージの取り扱いについて、 (2)医師会活動活性化 への方策について、 (3)かかりつけ医の定義について、 (4)県医師会理事会との交流促進について、 の 4 議題が提出されました。 在宅訪問マッサージの同意書については、ルールをよく理解した上で、必要なもの以外は安易に書 かない方がよいとのことでした。その他の議題についても、会長以下担当理事の説明と質疑応答を行 いました。 県医師会側からは、 (1)財政状況について、 (2)診療情報共有システム事業について、 (3)その他、 の 3 題が提出さました。 現在の財政状況と今後の予測に基づく、会費・会館運営負担金の改定の説明が「ありました。なお、 この件につきましては後日県代議員会により承認され、26 年度より適用されることとなりました。 当地区は以前より公立松任石川中央病院の連携システム(ねっと PET)により各医療機関とネッ トで接続され、許諾を得た患者さんのカルテデータのすべてを自院のコンピュータから閲覧できま す。今回の診療情報共有システムも、当地区では「ねっと PET」を利用して構築されており、県内 で最も早く運用を開始しています。このシステムを維持・発展させていくためにも、県内での先進地 域である当地区医師会では、さらに多くの医療機関が参加し、活用して行くことでシステムの必要性 を高めていくことが重要であると認識されました。 その他の事項としてもいくつかの質問・要望があり、ほぼ時間通りに会は終了しました。 その後、引き続いて主治医意見書の書き方説明会が行われました。担当理事より(1)主治医意見 書の早期提出(1 週間以内)、(2)口腔内状態の確認、 (3) 「末期がん」の明示について、の 3 点の説 明がありました。 一年一回の県医師会役員との顔を合わせた懇談会は、一般会員との距離を近づけ、医師会活動の内 容を知るためにも重要なことだと思います。しかし、残念なことに当地区では年々一般会員の出席 が少なくなっているような感じがします。当初は 40 名をこえる会員が出席していたと記憶しますが、 最近は 20 名台のことが多い様です。 一般の会員に医師会の活動をさらに理解してもらうために、以前から当医師会も努力してきていま すが、なかなか実を結ばないことの悩みかが、今回の提出議題の(2) 、 (4)にも現れているように思 われました。 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 21 ) 産業医研修会 平成25年11月13日㈬ 公立松任石川中央病院 地域連携棟 2階会議室 金沢労働基準監督署署長 越川 昌明 氏 1.平成 24 年 5 月大阪の校正印刷会社 S 社において、校正印刷 業務に従事していた若い従業員を中心に 17 名が胆管がん に罹患し、内 9 名が死亡しているという事実が明らかにな り、インク洗浄剤として使用していた 1.2 ジクロロプロパ ンが原因物質として疑われる事件が発生した。 (使用期間 15 年、平均 150ppm の高濃度暴露) 2.校正印刷は、印刷の仕上がりを確認するため前もって少部 数(10 枚程度)を印刷するものである。赤、青、黒、黄の 4 色を一色毎に洗浄剤で落としながら印刷するもので、短時間に色の変更を繰り返すため洗浄回 数が非常に多くなる。S 社では 1990 年代 7 台の校正印刷機で 1 日 300 ~ 800 回の洗浄を行っていた。 3.労災認定 S 社で 1.2 ジクロロプロパンによる版の洗浄作業に従事した労働者の胆管がん罹患率は日本人 平均の約 1200 倍であった。「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」報告書 では、長期間、しかも換気が不十分(汚染空気が 56% 室内に還流)な地下の作業場で 1.2 ジクロ ロプロパンに高濃度に暴露したことが原因で胆管がんに罹患した蓋然性が高いという結論が出さ れ、これを基に業務と胆管がんの因果関係を認め労災認定した。 4.その後の処理 (1)民事 事業場は、在職中に死亡した労働者 1 名に 1 千万円、現職で治療中の 2 名に 4 百万円の補償金 を支払い 3 名と示談が成立した。 (2)刑事事件 1.2 ジクロロプロパンが有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則等の特別規制対 象物質でないため大阪労働局は、平成 25 年 9 月 26 日 S 社を特別規制違反でなく衛生管理者、 産業医の未選任、衛生委員会の未設置による労働安全衛生法違反で大阪地方検察庁に書類送検 している。 5.産業医の役割 S 社に産業医が選任されていたら胆管がん発症者が出た時点で異常さに気づきこれほどの被害 にならず防げていたと思われる。産業医の職務には作業環境の管理や労働者の健康管理がある が、従業員が次々体調を壊し胆管がんで亡くなれば気が付かない産業医はいないであろう。また、 人口動態統計における胆管がんの死亡者全体に占める 49 歳以下の割合は非常に少ないが、S 社の 胆管がん発症者は発症時いずれも 50 歳未満(24 歳~ 45 歳平均 37 歳)であり、極めて低い年齢で 高率で発症している異常性から、早期に認識できた可能性があったと思われる。 また、職場巡視を行い、SDS(セーフティデータシート)を見れば、換気が不十分など劣悪な 状況で版の洗浄作業が行われており早急な暴露低減対策が必要なことに気が付いたであろうと思 われる。産業医の未選任が悔やまれる事例である。 今後も職場では色々な化学物質が使用されるであろうが、法規制がないからと安易に導入する のでなく産業医や衛生管理者等が中心となって十分なリスクアセスメントを行い SDS に基づい て、有害物については局所排気装置の設置や作業方法の改善による有害物暴露低減措置をとるこ とが衛生対策を進めるうえで重要である。 ( 22 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 第6回 医療と介護のシンポジウム ~認知症と多職種連携~ 平成25年12月7日㈯ 白山市民交流センター 毎年恒例となった第 6 回「医療と介護のシンポジウム」は 12 月 7 日に白山市交流センターで行われ ました。当日は悪天候ながら、医師 10 名を含め、115 名の参加を頂きました。今回は、 「認知症と多 職種連携」をテーマとして、大阪市の松本診療所(ものわすれクリニック)の松本一生先生をお招きし、 「認知症の人と家族を地域で支えるため」と題して講演頂きました。先生は、歯学部と医学部を卒業 された異色の経歴をお持ちで、豊富な経験から、認知症患者と家族の接し方、患者と共に家族の心の ケアの重要性など軽妙な語り口でお話頂きました。次に、石川県、白山市及び野々市市の各行政に於 ける認知症の取り組みの現状報告の後、松本先生を含め、3 人多職種のパネリストの発表と共にシン ポジウムが行われました。当医師会からは嶋医院の嶋裕一先生が、多くの在宅医療の解析から、示唆 に富む発表をされました。会場からも、質問や、コメントがあり、3 時間の長時間にも拘らず、尚時 間不足を感じた内容の濃いシンポジウムでした。 (白山野々市在宅連携委員会 松葉 明) 基調講演の松本一生先生 全体会の様子 嶋裕一先生 パネリストの皆さん 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 23 ) 白山市の在宅医療連携を考える会 地域包括ケアシステムに向けて 平成25年12月14日㈯ 白山市民交流センター 団塊の世代が 75 才以上となる 2025 年には石川県の 65 才以上の高 齢化率は 30 %を超えると予想され、医療が必要な高齢者や認知症 高齢者が増加することが推察される。終末期の療養場所に関する調 査では 60 %以上の国民が自宅で療養したいと希望しており、自宅 や子供・親族の家での介護を希望する人が 4 割を超えている。この ようなことから在宅医療・介護を推進するためには地域における医 療・介護の関係機関の連携が重要となってくる。このようなことか 基調講演1(木村慎吾氏) ら、医療と介護が連携した包括的で継続的な在宅医療の提供体制を 構築することを目的に「白山市在宅医療連携協議会」が設立された。 この「白山市在宅医療連携協議会」の主催で講演会が平成 25 年 12 月 14 日㈯白山市民交流センターで行われた。基調講演 1 では石 川県健康福祉部地域医療推進室次長 木村慎吾氏から「第 6 次医療 計画に基づく在宅医療」というテーマで在宅医療・介護連携の方向 基調講演2(後藤友子氏) 付けが示され、基調講演 2 では愛知県にある国立長寿医療研究センター後藤友子氏から「在宅医療を 含めた地域包括ケア構築に向けた各地域の活動」というテーマで全国各地の在宅医療・介護連携の事 例について説明が行われた。医療及び介護関係者 100 名以上の参加者があり休憩時間ではテーブルご とに自己紹介などを行い懇親を深めることができた。 白山市・野々市市との保健衛生・学校保健懇談会 平成26年2月13日㈭ 19:00~ 金沢国際ホテル 冬のオリンピックでの日本選手の活躍に夜遅くまでテレビに釘付けとなっている中、また、北陸で はなく関東甲信越に大雪が降るという例年とは異なるこの時期ですが、恒例の標記の懇談会が開催さ れました。 白山市より松井毅教育長、中村直人健康福祉部長、野々市市より堂坂雅光教育長、中村彰健康福祉 部長にご臨席賜り、市民や小中学校の児童生徒の健康安全の問題について意見交換を行いました。協 議題として「任意接種ワクチン等への公費助成について」は、まだ認められていない水痘(この秋に は定期化が実現する予定)やロタウイルス胃腸炎等 への助成についての要望を伝えると共に、がん検 診や特定健診・特定保健指導について現状及び評価を直接お聞きしました。また、今年は特に「障害 児教育の現状について」両教育長よりお聞きし、学校医としての立場からも年々増加しつつある障害 児の現状について学ぶ機会を持つことができました。 この後の懇親会では、公務ご多忙の中、作野広昭白山市長、粟貴章野々市市長もご臨席賜り、これ からの医療について胸襟を開いて話し合うことができました。行政との意思の疎通を図るという点で は、とても有意義な会になったと思われます。 ( 24 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 石川県学校医研究発表会 7年間にわたる白山市立中学校生徒の貧血等血液検査結果について 白山市 斉藤 建二 斉藤小児科医院 平成25年2月17日(日)ホテル金沢で開催された第53回石川県学校医研究 発表会での発表より。当地域では小中学生の貧血検査はかなり古くより行ってい ますが、今回は血清フェリチン値測定方法の変更に伴い基準値を変更した平成1 8年度分より昨年度分までの過去7年間にわたる白山市立中学生徒の貧血等血液 検査結果についての報告です。 中学2年生の希望者を対象に夏休み中および9月中旬までに49の協力医療機 関で、例年のように赤血球数、白血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値、血小板数、血清鉄量、フ ェリチン値、TIBC、UIBC、総コレステロールについて検査を行いました。 受験者総数は7年間で男子2,354名(受検率57%)、女子2,604名(受検率63%)、計4,958名でした。 ヘモグロビン値低値と潜在性鉄欠乏状態について またヘモグロビン値とフェリチン値いずれかまたは両方で低値を示している者は7年間の受験者数男子2 354名中240名、女子2604中538名で、男子でヘモグロビン値のみ低値を示す者は1.23%、ヘモグロビン値も フェリチン値も低値を示す者は1.74%、フェリチン値のみが低値を示す者7.22%で、女子ではそれぞれ2.0 4%、5.38%、13.25%でした。ヘモグロビン値低値を示す顕在性貧血状態の者の約倍近くのフェリチン値 低値の潜在性鉄欠乏状態の者が存在することになります。 運動部は貧血になりやすく、スマートな体型 運動部と文化部の 貧血検査項目別 平均値 これまでも、運動部に所属している生徒は所属 してない生徒に比べて、ヘモグロビン値、ヘマト クリット値、赤血球数、血清鉄量、血清フェリチ ン値など貧血を示唆する項目についていずれもそ の平均値が低値を示していることを報告しました 男子 運動部 文化部 女子 運動部 文化部 2,546名 181名 1,889名 1,097名 有意差 **<0.001 *<0.05 男 女 男 赤 血 球 数 女 男 血 色 素 量 女 男 ヘマトクリット 女 男 フェリチン精密 女 男 U I B C 女 男 T I B C 女 血 清 鉄 量 運動部 102±36 94±38 483±34 445±30 13.8±1.1 12.7±1.0 41.7±3.0 39.1±3.0 36.8±20.0 32.3±19.6 267±57.2 278±64.8 370±41.7 370±46.2 文化部 < 107±33 < 94±39 <* 500±34 <** 450±29 <** 14.3±1.0 <** 12.9±0.9 <** 43.1±3.1 <** 39.6±2.7 <** 39.4±23.6 <** 35.8±23.4 < 268±52.3 > 273±64.9 > 375±42.3 > 367±46.4 が、今回の最近の7年間について見ても、全くその通りの結果で、鉄欠乏気味の中学時代に運動によ って鉄の需要がさらに高くなることがあらためて確認されました。 また体格については、運動部に 所属している生徒は所属していない生徒に比べて身長が高めで体重が少なく、スマートな傾向でした。 中学生に多い鉄欠乏性貧血では愁訴の少ないことがその特徴の一つですが、思春期における身体の 著しい発育、月経発来、運動量の増大などで、鉄の喪失に供給が追いついていけないで、鉄不足状態 を容易に引き起こしてきます。鉄欠乏状態は男女共に多い状況にあり、Hb 低値者は鉄剤投与が必要 で、安価な鉄剤投与によって対費用効果も極めて大きい。 鉄欠乏状態に注意を一層喚起し、思春期の生徒に対する健康教育に資するよう付加的価値を期待し たい。 -1- 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 25 ) 平成24年度 白山・野々市学校保健研究協議会 平成25年2月14日㈭ 白山市民交流センター 平成 25 年 2 月 14 日㈭、白山市民交流センター 5 階大会議室にて「歯・口の健康と生活習慣」をテー マに標記協議会が開催されました。 今日、学校現場では、これまで行われてきたむし歯予防の取り組みに加え、咀嚼などの口腔機能の 発達や口腔衛生による口腔疾患の予防も大きな課題となってきました。これらの課題は子どもたちの 生活環境や家庭での食生活に影響を受けるものであり、食育にも関連していることを踏まえ、これま で各学校で行われてきた事例をもとに活発な協議が行われました。 提案:養護教諭 2 名より「望ましい生活習慣の実践をめざして」をテーマに各学校での取り組みの内 容と成果、課題が提示されました。歯科医師や歯科衛生士の専門的・具体的な保健指導が子どもたち に口腔衛生に対する関心を高めたこと。はみがきカレンダーや生活に関するアンケートを通して保護 者の意見や感想を知ることによって、担任や保護者との連携ができ、子どもたちが積極的にはみがき や歯科受診を行うことができたこと。などの事例に対し、継続的な指導をもとに、よりよい生活習慣 の定着を目指し、自ら考え行動できるよう、児童の健康意識をどのように高められるかが議論されま した。 講演:こばやし歯科 院長 小林雅人先生を講師に迎え、演題「生活習慣と歯科」について講演されま した。歯周病と生活習慣病の関係についてわかりやすく解説され、また、噛むことの大切さについて 具体的な例をあげ、お話していただきました。 歯科医師との連携について 現在、日本歯科医師会は 8020 運動を展開しておりその効果も出てきているとお聞きして おります。 医科関連として、歯周病が喫煙、生活習慣病等と密接に関連していることは言うまでもあ りません。高齢化社会の中で歯科予防治療が肺炎予防やビスフォスフォネート製剤使用時の トラブルを押さえ込むとも考えられ、受診されている患者に対して歯周病予防の大切さをお 伝えすることも必要でしょう。 今以上に医科歯科連携が必要とされる時代がきているものと思われます。 (編集委員 長尾信) ( 26 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 平成25年度 白山・野々市学校保健研究協議会の開催 平成26年2月6日㈭ 白山市民交流センター 上記協議会が平成 26 年 2 月 6 日㈭午後 1 時 20 分より、白山市 民交流センター 5 階大会議室にて、 「学校における食物アレル ギーおよびアナフィラキシーショックへの対応」をテーマに開 催された。初めに福永善則学校保健会会長の挨拶があり、食物 アレルギーの子どもが増え、アナフィラキシー用「エピペン」 を処方されている子どもたちも増えていること、それらに対し て学校での治療的対応が求められていることからが述べられ た。 提案:養護教諭 2 名より「学校における食物アレルギーの現状 と課題」が示された。主な内容についてまとめると以下のよう になる。 ・白山市内中学校 9 校の生徒 3548 名のうち食物アレルギーをも つ生徒は 168 名(4.74 %) ・原因食品として、多いものから鶏卵、牛乳、エビ、カニ、魚類 その他、そば、ピーナッツ、果物その他、キウイの順であった。 ・学 校生活管理指導票を医師の記入にて提出した 33 名の内、 12 名がアナフィラキシー病型であった。また、33 名中 3 名が エピペン処方を受けていた。 ・アレルギー疾患のある生徒への対応の流れ 生徒の把握⇒管理の必要性の確認 ⇒保護者に管理指導票記入提出を依頼⇒指導票に合わせたプ ラン作成 ⇒保護者との話し合い⇒教職員の共通理解⇒取り組み実施 ⇒保護者との定期的な話し合いを通じて柔軟性を持ったプラ ンの変更 (校外行事や宿泊を伴う行事への対応など) 講演:演題「学校における食物アレルギーおよび アナフィラキシーショックへの対応」 講師 石川県立中央病院副院長 小児科 久保 実先生 日本学校保健会「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」に沿って分かりやすく解 説された。特に学校での対応について、学校生活管理指導表の提出やアナフィラキシーへの具体的対 応、エピペンの使用法等について話された。 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 27 ) 第 54 回 学 校 医 研 究 発 表 会 平成26年3月2日㈰ 加賀市市民会館 平成 26 年 3 月 2 日㈰、加賀市市民会館にて「発達障害のある児童生徒への支援を」をテーマに標記 発表会が開催された。 当日は医師会から 44 名、校長や園長、養護教諭など学校関係者 106 名と多くの参加があり、事前に 参加者から寄せられた質問を中心に講演者を交え、多くの議論が行われた。 まず、各医師会から寄せられた小児科領域、耳鼻科領域、眼科領域と多岐に渡る研究 4 題が発表さ れた後、特別講演として石川県立錦城特別支援学校の中川俊美教諭による「発達障害のある児童生徒 への支援」、独立行政法人国立医王病院の関秀俊病院長による「不安を抱える子どもたちと向き合う」 の 2 題があった。 中川教諭は特別支援学校がこれまで行ってきた学校現場での支援とその成果を具体的に分かりやす く解説された。そして、今後、学校現場での支援の充実に加え、地域での支援も必要になる。そのた めにも学校、保護者、行政に加え医療現場の連携が大切であると訴えられた。 関病院長は、思春期に抱える子どもたちの不安に基づく問題行動や身体症状、広汎性発達障害、摂 食障害などを実際の症例をもとに解説していただいた。 短時間であったが、学校現場で支援を必要とする子どもたちにどのように向き合っていけばよいか 考える機会を与えられた、とても有意義な会となった。 石川県医師会近藤邦夫会長挨拶 関秀俊先生による特別講演 ( 28 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 第21回白山ののいち医師会親睦ゴルフ大会 平成 25 年 5 月 26 日、穏やかな日差しのもと、白山ののいち医師会の親睦ゴルフ大会が、小松の GC ツインフィールズで開催されました。若手からベテランまで 10 名が腕を競いました。 優勝は初参加ながらアウト 56 イン 50 ネット 73.60(ハンディキャップ 32.40(WP) )で回られた柳 川勇人先生でした。大学卒業以来ほとんど回る機会がないとのお話でしたが、どうしてどうして。同 組の中でもドライバーの飛距離はトップ、しかも曲がらないのですから手の付けようがありません。 2 位に 4 打以上の大差をつけての圧勝でした。おめでとうございました。(第 21 回幹事:西田 良治) 第22回白山ののいち医師会親睦ゴルフ大会 平成 25 年 10 月 6 日㈰、第 22 回白山ののいち医師会親睦ゴルフ大会が小松市の GC ツインフィールズ にて行われました。当日は天候も良く、8 名の先生方にご参加いただきました。結果は前半 48、後半 56(グロス 104、ネット 72)と大波賞も獲得した浅井恭一先生が優勝しました。おめでとうございます。 当医師会ゴルフコンペは会員同士の親睦と日頃の運動不足、ストレス発散のためには良い機会だと 思います。毎年春と秋の 2 回開催されますので、皆様の参加をお待ちしております。 (第 22 回幹事:柳川 勇人) 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 29 ) 第9回 会員・家族新年会 平成26年1月18日㈯ ホテル日航金沢 恒例の白山ののいち医師会第 9 回会員・家族新年会が 1 月 18 日㈯ホテル日航金沢にて開催されまし た。お子さん 5 名を含め 51 人の会員およびそのご家族が参加され賑やかに楽しいひとときを過ごしま した。今回は津田功雄先生の叙勲のお祝いもあり、幹事の山本信孝先生・津山 博先生の手際のよい 司会進行で、女性 3 人組の「Share(シェア) 」によるミニコンサート、年男の井村 優先生と寺島成 明先生の進行でビンゴゲームでのお年玉抽選会など楽しいアトラクションで大いに盛り上がりまし た。ご家族を含めた会員同士の親睦が一層深まった素晴らしい新年会になりました。 (柳 昌幸) Share のコンサート 司会の山本・津山・寺島の各理事 年男 井村優先生によるビンゴゲーム 一等当選の満面の笑顔 ( 30 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 「いしかわ診療情報共有ネットワーク」設立 公立松任石川中央病院 甲状腺診療科・PET センター 横山 邦彦 石川県全県にわたる 32 基幹病院の電子カルテをネットワークでつなぎ、診療情報を公開。390 の病 院やクリニックが閲覧する。2014 年春に「いしかわ診療情報共有ネットワーク」が本格稼働します。 初会合は 2012 年 9 月 15 日でした。基幹病院と 3 医師会(金沢市、白山ののいち、河北郡市)が集ま り、県から補助事業の説明がありました。手挙げ方式でしたので、参加機関が最終的に決定したのは、 2012 年末でした。2013 年 2 月に ID-Link(SEC 社の商品名、北海道函館市)が稼働している佐賀と長 崎へ視察に行きました。長崎ドクターネットの詫摩和彦先生の経験談を今もよく覚えています。 「〇〇 大学に紹介した患者のカルテを ID-Link で見ていたら、血清カリが高いことに主治医が気づいていな い。すぐ電話して主治医を呼び出し、オレの患者を殺す気か!」と。医療が変わる、少なくとも透明 性が上がると思いました。2013 年 6 月 3 日にいしかわ診療情報共有ネットワーク協議会の準備会が開 かれ、事業内容がようやく公にされました。当医師会の長尾信理事が「運用について当医師会は、松 任中央病院に全面的に協力する。 」 席上で表明されました。県の扱いがそれ以降大きく変わりました。 地域拠点病院と医師会がうまくいっている地区は電子連携が進み県内の先行事例になるだろうと。 当地区では 2006 年からねっと PET の機能を順次拡張し、2011 年秋にはカルテ閲覧まで可能でした。 「見られるかも知れない」の気持ちが、当院のカルテの書き方を変えたように思います。閲覧する医 師会の先生方と信頼関係ができていると信じるので、躊躇なくカルテを電子公開してきたのです。こ んなところは、県内どこにもありません。 ID-Link は全国 2,000 以上で稼働していますが、他県にない特長が 2 点あります。電子連携システム が ID-Link で一本化されていることと県内全域を網羅して参加機関数国内最大であることです。電子 連携システムが複数あると、甲県立病院を見たい時は、A 社の電子連携システムにログイン。乙大学 病院を見たい時は B 社システムにログイン。閲覧ユーザは患者がどのシステムに属する病院にいるか を区別する必要がありますし、インターフェイスも異なるため使い方が違います。一方、量的変化は 質的変化をもたらします。ネットワークが県域全体を網羅していますから、この医療機関とは電子連 携できるが、こっちはダメが起こりません。以上 2 つの理由で、石川県で電子連携がうまくいくかど うか、全国の試金石と捉えられています。 2013 年 12 月 2 日協議会が正式に発足し、今後の全県運用を担います。 当院で運用してきたねっと PET は画像連携を含めた電子連携システムです。ワンタイムパスワー ドを使うことで認証には最高水準のセキュリティを担保しています。パスワード発生装置のトーク ンを医師会のメンバーには無償提供しており、8 年間の安全な運用実績があります。医師会からの要 望もあり、ねっと PET にログインしてから ID-Link に抜けるポータルサイトの機能も付加しました。 ID-Link では、どうしても画像連携機能に足りない部分があります。今後は、ねっと PET の運用を画 像連携や検査予約システムに特化させ、ID-Link と共用してゆく予定です。 誤解のないようあえて明確にしておきます。電子連携システムは個人情報保護法に基づきます。す なわち、ある医療機関の医師が他の医療機関に患者を紹介する時、その患者の同意が得られた場合に 紹介先の診療情報を閲覧できる仕組みになっています。当院を例にとれば、患者さんを大学に紹介す る際に、「あなたの大学での診療情報を見ても良いか?」と尋ね、 「OK」となってはじめて、その患 者データのみ閲覧可能となります。どの患者のデータにでもアクセスできるわけではありません。ま た、カルテ、検査結果、診断レポートのどれを出すかは各病院の判断です。 「あなたのカルテは誰の もの?」という根源的な質問には誰も明快に答えていません。 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 第7号( 31 ) 地域医療情報勉強会 第 1 回 2013 年 2 月 10 日 基調講演「金沢大学病院での継続診療のシステムによる支援」 金沢大学病院副病院長 金沢大学教授 長瀬 啓介 先生 たまひめネットについてご講演いただき、現在の状況や ID リンク等についてお話をいただきまし た。システムを導入する際に議論すべき礎となる内容であったと思います。 貴重なお話を拝聴し大変勉強になりました。 第 2 回 2013 年 3 月 16 日 一般講演「在宅医療と酸関連疾患」 演者 やなぎ内科クリニック 院長 柳 昌幸 先生 今後も増加すると考えられる逆流性食道炎と治療薬剤についての功罪についてわかりやすくお話い ただきました。 特別講演「これからのIT医療と在宅医療」 演者 桜新町アーバンクリニック 院長 遠矢純一郎 先生 在宅医療の普及と拡大のための ICT 活用について、スマートフォンやクラウド型地域連携システ ムを用いた最新の内容を自院の具体例とともに提示していただきました。 今後の在宅介護医療連携システムを考える上で参考になる内容であり、興味深く拝聴しました。 第 3 回 2013 年 8 月 23 日 一般講演「当院における認知症評価の考え方とその治療および服薬治療アドヒアランスを考えた在宅医療」 医療法人社団長尾医院 院長 長尾 信 先生 在宅医療における認知症の評価と対応について、また服用の問題についてお話いただきました。 特別講演 「2025 年に向けた在宅ケアシステム」 演者 千葉大学医学部付属病院 地域医療連携部部長 診療教授 藤田 伸輔 先生 国が進めている在宅介護医療連携モデルである柏モデルにかかわられておられ、今後の在宅医療の 進むべき方向性については、地域連携地域医療を地域全体で考える必要性について言及されました。 当地域においても市役所、基幹病院、医師会(各医療機関)において更なる連携の必要性を感じまし た。また、石川県における 2 次医療圏別医療需要予測についてもお話しいただき医療機関の進むべき 道についても考えさせられる内容だったと思います。 平成 25 年度学術講演会開催一覧 開催日 場 所 演 題 呼吸器感染症の最近の話題 ~耐性マイコプラズマ感染症を中心に~ 食物アレルギーの誤解と正解; 平成25年 4月24日 公立松任石川中央病院 正しい診断と治療のためのQ & A 川崎医科大学総合内科学1 宮下修行准教授 金沢大学小児科 谷内江昭宏教授 金沢大学泌尿器科 グランドホテル松任 過活動膀胱に対する薬物療法 北川育秀臨床教授 生活習慣病と骨粗鬆症 富山県厚生連滑川病院整形外科 グランドホテル松任 ~骨粗鬆症性椎体骨折の治療と予防~ 南里泰弘副院長 榊原記念病院 グランドホテル松任 登山と高血圧、身体の反応とコントロール 高山守正副院長 変わる乳がん診療 公立松任石川中央病院外科 グランドホテル松任 ~遺伝子から再建まで~ 石井要医長 抗凝固薬と抗血小板薬の使い分け 金沢大学高密度無菌治療部 グランドホテル白山 (特に心房細動において) 朝倉英策准教授 金沢医科大学臨床感染症学 公立松任石川中央病院 市中感染症の最新治療戦略 飯沼由嗣教授 平成25年 3月12日 公立松任石川中央病院 平成25年 5月15日 平成25年 6月18日 平成25年 7月19日 平成25年 9月17日 平成25年10月 9日 平成25年11月20日 演 者 ( 32 ) 第7号 白山ののいち医師会報 病院紹介 平成26年5月1日 ときわ病院 野々市の明倫通りを白山方向に進んだ中林 4 丁目の交差点の手前に当院はあります。屋上に ある夜間には点灯する 2 個の尖塔が目印になり ます。 当院は地域の精神科医療を担う病床数 268 床 の精神科病院です。以前は統合失調症の治療と リハビリテーションが中心でしたが、近年は精 神科疾患の多様化と精神科病院の敷居が以前よ り低くなったことから、さまざまな患者様に利 用いただいております。最近の外来では、うつ 病、双極性障害などの気分障害と認知症の受診 者数が増え、不安障害などの神経症圏の受診も多くなっています。薬物療法の進歩などによって、統 合失調症を含め精神科疾患全般に外来のみで治療が行われる傾向があります。白山ののいち医師会の 諸先生からの紹介も増えており、紙面を借りて御礼申し上げます。当院では病床の機能分化を考えて、 5 つの病棟で精神科疾患の急性期治療から慢性期のリハビリテーションおよび認知症治療を行ってい ます。また、生活の障害を防ぐため、あるいは軽減するために精神科作業療法を積極的に行っていま す。退院後は、再発、再燃を防ぐべく外来診療で支えます。精神科訪問看護を行い、病気との付き合 い方や日常生活の送り方の相談を受け、必要な支援を行っています。看護師に加え栄養士が訪問する ことで栄養面や食生活の改善が図られ、患者様から喜ばれています。精神科作業療法を外来において も行っています。さらに、精神科デイケア・ショートケアを行い、 「日中過ごす場所がほしい」 「人と 話す練習がしたい」 「生活のリズムを整えたい」 「仕事に就く体力をつけたい」などのニーズに応え、 さまざまなプログラムを通して社会に復帰していく手助けをしています。ご本人、ご家族が抱えてい る困り事、悩み事については生活支援課ソーシャルワーカーが一緒に考えます。とくに社会資源の活 用について相談にのれます。 また、病院の隣接地にグループホーム「すまいる」と「メゾン・ド・つばき」 、障害者地域活動支 援センターおよび障害者相談支援事業所「ののいち」を運営しています。 なお、当院が現在地で診療を開始したのは昭和 48 年ですが、当院のルーツは昭和 6 年 2 月の金沢市 方面委員有志による精神病者保護のための鈴見保護所の開設に遡ります。昭和 10 年常盤町に移転し、 昭和 23 年医療部門が分離し「常盤園」が開設されました。現在の「ときわ病院」の名称の由来はこ こにあります。昭和 27 年に経営主体は「社会福祉法人 金沢市民生協会」となり、現在に至っています。 全国的にも珍しい民生委員児童委員が運営に携わる病院です。こういう歴史から、当院の関連施設と して、金沢市高坂町に救護施設「三谷の里ときわ苑」があります。 今後も引き続き、幾多の先人により培われた社会福祉の伝統と人間愛の理念を持って、運営にあた りたいと思います。 (炭谷 信行) 平成26年5月1日 白山ののいち医師会報 訪 問看護ステーションを訪ねて 第7号( 33 ) 柳 昌幸 少子高齢化、核家族化が急速に進む我が国において病気 を持ちつつも可能な限り住み慣れた場所で老後や療養生活 を送りたいという生活の質を重視する在宅医療のニーズが 益々高まっています。一方でこれまで家族介護に依拠した 在宅医療が、訪問看護を主体とした様々な医療介護専門職 が協働して行う地域完結型チーム医療に変貌しつつありま す。我々医師会会員においても地域のかかりつけ医として 積極的に取り組んでいくべき課題であり、今回は在宅医療 において連携の大切なパートナーである野々市地区の訪問看護を担当している一般社団法人石川県医 療在宅ケア事業団「野々市訪問看護ステーション」を紹介させていただきます。 石川県・石川県医師会・石川県看護協会・当該市町が共同で設立した事業所で、管理者の田崎真理 子さんを含め、常勤 3 人嘱託 2 人非常勤 2 人の看護師 7 人と事務員 1 人の計 8 人で運営されています。 野々市市を中心に一部金沢や白山市も担当されており、約 25 医療機関と連携し、利用状況は訪問件 数約 250 件 / 月、利用患者数は計 45 人(医療 12 人 + 介護 33 人、年齢 7 ~ 97 歳)です。特別管理患者 内訳は、人工呼吸器 1 人、NIPPV1 人、気切のみ 1 人、胃瘻 7 人、経鼻経管栄養 1 人、膀胱留置カテー テル 3 人、在宅酸素 2 人、人工肛門 4 人だそうです(H25 年 11 月現在) 。看取りを含めターミナルケア は年間 8 ~ 9 人担当しており、緊急訪問件数は月 5 ~ 6 件ですが、患者の容態によってかなり変動する ようです。訪問看護の合間を縫って患者の正確な病状や生活環境把握のためのミーティングやケアマ ネージャーとの検討会を定期的に開き、施設内外の勉強会などにも積極的に参加しスキルアップに努 めているとのことでした。 われわれ医師会に対する要望や問題点としては、1)麻薬管理を含めてターミナルケアを積極的に 引き受けていただけるかかりつけ医の依頼に難渋するようです。特に患者が大学病院などから直接在 宅医療に移行した場合、病院と連携をとりながら在宅緩和医療を担当していただける近隣のかかりつ け医を見つけることが難しいようです。2)特殊な難病患者など大きな病院と直接連携して在宅医療を 進める場合、病院主治医との連絡・連携が取りづらく緊急時の対応にも苦慮するようです。3)在宅 医療を引き受けてくれる皮膚科や泌尿器科などの開業医が市内になく近隣市外の医療機関に依頼して いるようです。4)市内に在宅医療支援病院がなく、緊急時は公立松任石川中央病院や金沢赤十字病 院などにお願いしているようです。これらの要望や問題点を解決していくためには、やはり基盤とし て「顔の見える連携」を目指して多職種間のコミュニケーションが取りやすい地域包括ケアシステム づくりを医師会や市町村行政が積極的に取り組んでいくべきだと思います。また、地域完結型の在宅 医療を目指していく上で、行政圏と医療圏が必ずしも一致していない現状を自治体が十分に理解し排 他的閉鎖的にならず患者中心に柔軟に対応して地域力向上に努めていただく必要があると思います。 最後に、少ない人数で緊急時 24 時間連絡体制をとって訪問看護に日々奮闘しておられるスタッフの 方々に心より敬意を表すると同時に、かかりつけ医として我々医師会とも今後も末永いお付き合いを よろしくお願いいたします。 【野々市訪問看護ステーション】 〒 921-8804 石川県野々市市野代 1-20 クリエースト 102 号室 TEL 076-248-8707 / FAX 076-248-8750 ( 34 ) 第7号 白山ののいち医師会報 平成26年5月1日 新しくなった松任駅南口を望む(白山市提供) 編 集 後 記 会報誌は今年度から白山ののいち医師会総会を 5 月に開催することにあわせ、また年度の内容 を網羅することも踏まえ 5 月発刊に変更させていただきました。 今年度は診療報酬改正があり、既に 4 月から会員の先生方はそれぞれ対応されるとともに苦慮 もされているのではないかと推察します。 医療界においては 「医政なくして医療なし」 と言う言葉がよく使われます。現在の医療提供体制が政府 (厚労省) の定める医療制度の下で行われており、政治との関わりなくして医療制度の改善を成し遂げることができないこ とを表現したものです。地域の医療においても政治 (市等) との関係は不可欠です。医療崩壊が叫ばれる昨今、 我々 地域の医師会員も国民(地域)医療における様々な政策提言や警鐘を行うことが必要ですが、そのためには会 員各位の参加が大きな力となることは言うまでもありません。お忙しいと思いますが、総会や医師会の研修会に 参加いただき会員同士の顔が見えるコミュニケーションが基盤になると考えています。5 月の総会懇親会への参 加を御待ちしております。 (編集委員長 長尾 信) 発行責任者 吉光 康平 編集委員長 長尾 信 編 集 委 員 浅井 恭一・斉藤 建二・杉本 尚樹・坂東 琢麿 武藤 一彦・柳 昌幸・横山 邦彦・吉光 康平 事 務 局 西田 良治 発行所 能登印刷株式会社
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