第5分科会 講師並びに発言要旨 2016年7月5日版 1.話題提供(講演) 内海房子氏 独立行政法人国立女性教育会館理事長 女性の労働環境の変遷とともに歩んできた私のこれまで道のりを ふり返りながら、日本の働く女性を取り巻く現況について述べる。 4月から施行されている「第4次男女共同参画基本計画」や「女性活躍推進 法」にも触れ、この好機を逃さず具体的な行動に移すことの重要性を説く。 加えて、世界の国々から大きく水をあけられている、女性技術者が少ないこ とや理系に進む女子が少ないという課題を取り上げ、その原因を究明する とともに、女性技術者や女性リーダーが育つ社会とはどのような社会なの か、我が国の科学技術の発展のためにも、今、男女が力を合わせて「男女 共同参画社会」の実現に向け取り組まなくてはいけないこと、などについて 考えるヒントになればと思う。 2.討論会 原田敬美氏(まとめ役) 株式会社SEC(エスイーシー)計画事務所 男女共同参画を促進する3つのインフラ整備 ①労働慣行の改善:欧米の体験。勤務時間は8時から17時。 残業なし。帰宅し家事、育児、地域活動の参加。転職自由。 ニューヨークタイムズ社長は2代続け女性、元高校校長。 ②都市構造の改造:東京圏で通勤時間1時間以上が3割。疲労、 保育園の送迎、育児、家事の参加が困難。欧米の都市の通勤時間は短い。 都心居住が多い。 ③社交スタイルの改革:日本の社交はナイトクラブ、料亭、居酒屋で女性に 参加困難。欧米の社交はビジネスランチ、ホームパーティ。女性も気楽に参 加できる。 第5分科会 講師並びに発言要旨 2 安藤哲也氏 父親支援のNPO法人ファザーリング・ジャパン、厚生労働省 「イクメンプロジェクト推進チーム」顧問、にっぽん子育て応援団共同代表 女性活躍やイクメンが定着した昨今でもワークライフバランスの 妨げとなっているのが、職場の上司の固定化した価値観・仕事の やり方や男女の役割意識です。少子化で労働人口が減りつつ ある中、子育て世代の出産育児時の離職や介護での離職者を いかに防ぐかは企業の喫緊の課題。今後は「男女問わず全て」 の労働者の育児、介護、その他私生活などスタッフの生活事情 全般への理解を示す上司であるところの「イクボス」を育成することが 企業にとっては従業員の満足度、健康度、労働意欲を上げ、生産性 向上と利益拡大に繋がっていく。分科会では、イクメンが抱える 課題やFJで結成した「イクボス企業同盟」の事例、社員のワークと ライフの両立が可能になる経営マネジメントの実践、どうずれば 企業の管理職改革を促せるか等についてお話します。 山口理栄氏 育休後コンサルタント、日本女性技術者フォーラム、 日本女性技術者科学者ネットワーク 組織における仕事と育児の両立支援に関する課題 企業では女性活躍、ダイバーシティ・マネジメント、ワーク・ライフ・ バランスといったキーワードで取組が行われており、特に女性管理 職比率の目標値を掲げている企業が多い。女性管理職比率は現在 約10%と低迷しており、企業は「一定の経験年数に達していない」 「スキル、能力を備えた女性がいない」を理由としている。経験、スキルの条 件を満たす時期が女性の出産・育児期と重なっているので、育児中の社員 を育成しなければ管理職の数値目標は達成できないはずである。ところが 職場では上司が育児中の部下に対して過剰な配慮により適切な対応ができ ていない。それを補うためには両者間のコミュニケーションフレームワークを 導入することが急務である。 第5分科会 講師並びに発言要旨 3 安和広乃氏 千代田化工建設(株)技術本部 インテグリティマネジメント ユニット防消火セクション 横浜市で働く女性ネットワークの紹介 横浜でも、会社業種や世代の枠を超えて働く女性同士が、知り合い、悩みを 共有し、共に学び、心の底から笑顔になれるような場をつくりたい、という思 いから平成24年にみなとみらい女子会が誕生しました。 現在12社24名で活動しており、まちづくりワークショップや勉強会、 ライフスタイルに役立つイベント、そして林文子横浜市長を招いての 講演会を開催してきました。本会は個人能力と人脈を最大限に活用して企 画・運営を行っています。また本ネットワークが、職場において少数である理 系女子のロールモデル発見にも繋がっています。本会を通じて体感した女 性の強みを配信し、技術者を取り巻く環境がより活性化するきっかけとなれ ば幸甚です。 角谷竜二氏 東洋建設株式会社 中国支店 男女共同参画社会に取り残される建設業界 少子高齢化社会において女性活躍の場作りは喫緊の課題である。建設会 社の体質は旧くトンネル工事等では女性が現場に入ると山の神が怒って切 羽の崩れを招くなど迷信的な世界があった。経験工学と言われているこの 世界で未だ管理的立場の大多数を男性が占めていることから、いつまで 経っても「始まり」が無い状態が続いている。まずは管理職の意識改革、女 性技術者の活躍できる場の提供、各種制度の徹底運用、社会環境整備を 共に促進していかねばならない。ここ10年国土交通省が女性技術者活用現 場を実施し、総合評価落札方式で女性活用が受注につながるケースが見 受けられ立派な後押しになっていると思われる。国を挙げての半ば強制的 な仕組みづくりも重要と思われる。
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