開口部における近赤外域日射の遮蔽による省エネルギー効果

開口部における近赤外域日射の遮蔽による省エネルギー効果
ENERGY CONSERVATION EFFECT OF SHIELDING NEAR INFRARED SOLAR RADIATION AT WINDOW
一ノ瀬 雅之 ∗ ,井上 隆 ∗∗ ,長 圭一郎 ∗∗∗ ,堤 裕樹 ∗∗∗
Masayuki ICHINOSE, Takashi INOUE, Keiichiro CHO and Yuki TSUTSUMI
This paper presents actual performance of the solar shielding blinds and films that can be easily installed to not only the
new-built but also the existing building. Spectral reflectivity and transmissivity are measured that includes the range of the
solar radiation, and actual performance of the solar shading, effect of the thermal environment and characteristics of the transmit
daylight are also investigated. Finally, effect of the energy conservation in the office building is verified by the annual heat load
simulation based on the actual measurement.
Keywords: Solar shielding, Near infrared solar radiation, Glass,
Heat shield film, Heat shield blind, Energy conservation
日射遮蔽, 近赤外域日射, ガラス, 遮熱フィルム, 遮熱ブラインド, 省エネルギー
1
はじめに
のうち約半分を占める非可視である近赤外域の日射を,可視光域に
開口部は室内空間に昼光を導入し,外界の変化や眺望性をもたら
対 し て 波 長 選 択 的 に 透 過・反 射
3)
させることによってもたらされ
すことによって,室内空間の環境を向上させる機能を有するが,建
る.遮熱フィルムの分光特性を研究した事例としては,可視光域に
築物における省エネルギーが緊急の課題である状況において,特に
ついて一般ガラスと比較検討した研究 4) や,多数の市販されている
貫流熱流入出および日射熱取得において不利な開口部の熱的な対策
遮熱フィルムを計測して評価・分類した研究 5) が行われている.
は,最も基本的かつ根本的な重要項目といえる.しかしながら,意
本研究では,これらの既往研究の延長線上として,遮熱ブライン
匠的または内部空間の開放性を高める等の要求の高まりから,建築
ドおよび遮熱フィルムを用いた近赤外域日射の遮蔽による省エネル
物の開口面積は拡大傾向にある.このような背景からエアフロー型
ギー効果および建築物への適用可能性を定量的に明らかにすること
窓 (以 下 AFW と 表 記) に 見 ら れ る よ う な 建 築 と 空 調 シ ス テ ム が 一
を目的として,以下の検討を行う.まず,年間熱負荷計算に必要と
体化した高性能窓システムが開発されるようになり 1) ,事務所建築
なる熱・光性能値およびその角度特性および,窓面に施工した実使
2)
.また,Low-E ガラスのよ
用状況下における熱・光・視環境に及ぼす影響を明らかにする.こ
うに断熱性能および遮熱性能に優れたガラスも広く普及しつつあ
れらの結果を踏まえた計算モデルを構築し,年間気象データに基づ
る.しかしながら,このような先進的な窓システムや高性能なガラ
いた各種窓に適用した場合の省エネルギー効果の検討を行う.
において導入される事例が増えている
スを導入するケースは,大規模な建築物または新築物件である場合
が多く,建物総床面積としては大部分を占める中小規模の建築物や
2
既存建築物への適用は限定的である.先進的な大規模建築物だけで
2.1
なく,中小規模の建築物や既存建築物における省エネルギー性能の
遮熱ブラインドおよび遮熱フィルムの光学特性
測定概要
分光反射率および透過率の測定は,分光放射計 (ASD / FieldSpec
Pro Full Range JR) および積分球 (Labsphere RT-060-SF/IG) を用
底上げも重要な課題である.
ここで,高い遮熱性能を標榜するブラインドや窓用フィルム (以
いて実施した.本測定機は 350-2500nm までの短波長域の分光放射
降,遮熱ブラインドおよび遮熱フィルムと表記) が多数市販される
量を連続的に計測可能となっている.光源はハロゲンランプを使用
ようになっており,これらの実用上の性能が実証されれば,高性能
し ,積 分 球 に 設 置 し た 試 験 体 へ の 入 射 角 の 条 件 を 変 更 し て 計 測 を
な窓システムやガラスと比較して安価で,既存建物への適用も容易
行った.ブラインドスラット面の双方向反射率
注 1)
については,2
であるため,実効性のある省エネルギー手法の選択肢になると考え
軸回転台に試験体と 1˚ の開口角の分光放射輝度センサを設置して
る.このようなブラインドやフィルムにおける遮熱性能は,日射量
計測する既往の研究 3) による方法にて,同様に分光放射計を用いて
* 東京理科大学 助教・博士 (工学)
** 東京理科大学 教授・工博
*** 東京理科大学 大学院生
Assistant Professor, Tokyo University of Science, Dr.Eng.
Professor, Tokyo University of Science, Dr.Eng.
Graduate Student, Tokyo University of Science
1
測定を行った.350 から 2500nm までの分光反射率・透過率の波長積
分は,傾斜面全天日射を想定した基準太陽光
6)
を積分対象として紫
外可視光域 注 2) (UV+V:350-780nm),近赤外域 (NIR:780-2500nm),
全波長域 (ALL:350-2500nm) の波長帯別に日射反射率・透過率を算
出した 3) .測定対象とした遮熱ブラインドは,スラット面の反射率
が可視光域においては一般品と同等で,近赤外域のみを高めた明度
明色(明度64%) ※太線:遮熱型
細線:一般型
0.8
]
[
率射0.6
反光0.4
分
中間色(明度30%)
暗色(明度5%)
0.2
の異なる無彩色 6 種類の市販品とした.分光反射率測定においては
0
曲面加工前の平板状の試験体を用意した.また,遮熱フィルムにつ
500
いては,光学的性質が異なる 18 種類を,一般ガラスは代表的な 20
2.2
遮熱ブラインド
図 1 に ,ブ ラ イ ン ド ス ラ ッ ト 面 の 分 光 反 射 率 の 測 定 結 果 を ,明
色・中間色・暗色の各色について一般型と遮熱型を併せて示す.中
間色・暗色においては,一般・遮熱型ともに紫外可視光域では同等
の反射率であるのに対して,近赤外域では遮熱型の反射率が大幅に
一般型
一般型
]
r
s
/
1
[
0.2
UV+V
-30
上昇していることがわかる.その一方で,明色においては一般型と
率 と 同 様 に ,基 準 太 陽 光 を 積 分 対 象 と し て 算 出 し た .結 果 に よ る
と,一般型と遮熱型ともに同様の反射指向特性を示しており,拡散
2.3
遮熱フィルム
図 3 に ,遮 熱 フ ィ ル ム の 分 光 透 過 率・反 射 率 の 測 定 結 果 の う ち ,
率過0.6
透光0.4
分
0.2
0
1
射熱取得率 (横軸) と可視光透過率 (縦軸) の関係を示す.図 4(a) は
0
0.8
率
過
透
光
視
可
射率の入射角特性について,透明単板と比較した図 5 によると,種
類によって大きく異なる角度特性を有しており,熱負荷計算におい
てはフィルム種類毎に入射角特性を反映させる必要がある.
0.05
0.04
0.14
0.06
0.23
NIR
一般
ρD
ρS
0.29
0.27
0.01
0.01
遮熱
ρD
ρS
0.33
0.61
0.01
0.01
ALL UV+V NIR 透過率
0.50 0.63 0.33
反射率
0.27 0.56
吸収率 0.37
0.13 0.10 0.11
Film2(反射)
Film2(透過)
500
1000
波長[nm]
0.2
0.4
0.6
0.8
0.2
Film4(反射)
0.4
0.6
Film4(透過) 0.8
2000
500
1000
波長[nm]
1500
]
[
率射
反光
分
1
0
ALL UV+V NIR 透過率
0.18 0.14 0.21
反射率
0.48 0.59
吸収率 0.53
0.29 0.38 0.20
1500
0
2000
]
[
率射
反光
分
1
透明
熱線吸収
熱線反射
高性能熱線反射
複層
FL+Film1
)
FL+Film2
0.4
0.2
0
0
日射熱取得率
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0
[-]
0.2
0.4
0.6
日射熱取得率[-]
0.8
1
(a) 一般ガラス (6mm 厚)
(b) フィルム貼付透明単板ガラス (3mm 厚)
図 4 一般ガラスおよびフィルムの波長選択性能比較
1
り ,波 長 選 択 性 能 が 高 い ガ ラ ス の 目 安 と な る .い ず れ に お い て も ,
また,Film1 および Film2 を貼り付けたガラスの透過率および反
0.04
90
0.6
を,熱取得を伴わずにとり入れることが可能であることを示してお
られた Film1 および Film2 は,同様に波長選択性能が優れている.
0.62
ALL UV+V NIR 透過率 0.50 0.50 0.50
反射率
0.13 0.13
吸収率 0.13
0.37 0.37 0.37
が 卓 越 す る ほ ど ,室 内 に お け る 昼 光 利 用 と し て 有 効 と な る 可 視 光
長選択性能を示している.遮熱フィルムのうち分光特性に特徴が見
60
Film3(反射)
Film3(透過)
Low-E (
]
[
種類のフィルムを適用したガラスについてプロットしている.縦軸
ガラスでは遮熱型 Low-E ガラス (外側ガラスに反射膜) が優れた波
0.28
0.34
図 3 代表的遮熱フィルムの分光透過・反射率
1
色などが異なる 20 種類のガラス 注 3) を,図 4(b) は透明ガラスに 18
可視光透過率と日射熱取得率には高い相関性が見られる中で,一般
0.31
0.46
]
(透過)
0.2
できる.一方で,Film3 および Film4 では波長選択性は殆ど見られ
ス (以下 FL) に各種遮熱フィルムを貼り付けたガラスについて,日
30
Film1
0.8
幅に抑制しつつ高い反射率を有しており,高い日射遮蔽性能が期待
図 4 に,板厚 6mm の一般ガラスおよび,板厚 3mm 透明単板ガラ
0
ALL UV+V NIR 透過率
0.44 0.69 0.16
反射率
0.10 0.46
吸収率 0.26
0.30 0.21 0.38
率過0.6
透光0.4
分
ては,紫外可視光域での高い透過率に対して近赤外域の透過率を大
は製品によって大幅に異なる波長特性を有していることがわかる.
)
Film1(反射)
]
[
代表的な 4 種類の試験体について示す.Film1 および Film2 におい
ず,Film4 では透過率よりも反射率が卓越している.遮熱フィルム
反射角θR °
0.8
]
[
近赤外域における反射率は拡散成分で高められている.従って,ス
がブラインドを介して強い指向性を伴って透過する懸念は小さい.
0.30
図 2 遮熱ブラインド スラット面の双方向反射率 (中間色)
お よ び 指 向 反 射 成 分 の 半 球 積 分 値 ρD , ρS を 比 較 す る と ,遮 熱 型 の
ラット面に直達日射が照射される場合においても,近赤外域の日射
完全拡散
1
また,図 2 に,分光反射率において有意な差が見られた中間色の
結果を波長帯別に示す.角度毎の波長帯積分値は日射反射率・透過
0.70
UV+V
UV+V
[
遮熱型との違いは僅かであった.
ブラインドスラット面について,45˚ 入射での双方向反射率の測定
遮熱型
(
-60
0.65
0.73
NIR
s
o
c
0
-90
0.68
0.72
2000
NIR
θR
ρ
0.66
遮熱ブラインド スラット面の分光反射率
遮熱型
0.4
1500
波長 [nm]
図1
種類を比較検討対象とした 注 3) .
暗色 一般
遮熱
1000
ρUV+V ρNIR
ρ
明色 一般
遮熱
中間色一般
遮熱
0.8
]
[
率
0.6
射
反
・
0.4
率
過
透0.2
00
FL
FL+Film2(NIR)
FL+Film1(UV+V)
FL+Film1(NIR)
FL+Film2(UV+V)
FL+Film2(NIR)
FL
FL+Film1(NIR)
30
60
入射角 [°]
90
0
(a) 透過率
FL+Film1(UV+V)
FL+Film2(UV+V)
30
60
90
入射角 [°]
(b) 反射率
図5
入射角特性
3
実使用状況下における性能評価
3.1
測定概要
前節にて遮熱ブライドおよびフィルムの単体としての光学特性を
0
0
0
2
明らかにした.本節では,実際に建築物に実装され,時々刻々変化
する気象条件の下での性能を実測評価する.
実測は,図 6 に示す本学内の西方位に窓面を有する教室において
0
0
7
4300
実施した.対象室は建物周辺からの障害物の影響を受けない立地で
9600mm
あ る .事 務 室 を 想 定 し て 室 温 は 26˚C に 設 定 し た .図 7 に 示 す よ う
図 6 測定対象室の断面模式図および窓面の写真
に,窓面における測定は透過・反射日射量および窓面輝度分布の測
床高1700mm
窓から2000mm
定 を 中 心 に 行 っ た .測 定 項 目 お よ び 使 用 計 器 の 一 覧 を 表 1 に 示 す .
の組み合わせであり,ブラインドは明色一般型・中間色遮熱型,ガ
反射日射
ラスは Low-E 複層 (遮熱型 3+6+3mm, η = 0.42) および高い波長選
4 種類の窓仕様について同一窓面内で比較実験を行った.
型 ブ ラ イ ン ド 併 用 窓 の 分 光 透 過・反 射・吸 収 率 の 測 定 結 果 を 示 す .
近赤外域における反射率は遮熱型の方が一般型よりも高く,日射吸
収率が約 0.2 程度低い.他の季節条件においても同等の結果であっ
た.直達日射のプロファイル角が小さくなる西面ピーク時において
は,直達日射を遮蔽するためにブラインドスラット角を全閉に近い
測定項目
使用計器
温度
熱画像
分光日射量
窓面熱流
窓面輝度
0.1mm 熱電対
NEC / TH-9100 MV
図 7 測定模式図
1
遮熱ブラインド
図 8 に,スラット角全閉状態における一般型ブラインド及び遮熱
透過日射
床高1700mm 床高1700mm
窓から100mm 窓から100mm
択性能を示した FL+Film1・FL+Film2 を換装して,最多で同時に
3.2
表 1 測定項目
輝度分布
基本的な窓仕様は FL(板厚 3mm) および中間色ブラインド (一般型)
率収0.8
吸・0.6
射反
・過0.4
透光
分0.2
Konica Minolta / CA-2000
一般型
反射率
]
[
前出
全面熱流計型計測箱 7)
反射率
0.2
吸収率
透過率
ALL UV+V NIR 透過率
0.01 0.01 0.01
反射率
0.27 0.21
吸収率 0.25
0.74 0.72 0.78
0.6
ALL UV+V NIR 透過率
0.01 0.01 0.02 0.8
反射率
0.30 0.35
吸収率 0.32
0.67 0.69 0.63
0 500
熱取得を低減する効果が期待できる.
図 8 全閉ブラインド併用窓の分光特性 (2008.9/24 15:05 晴天)
1000
波長[nm]1500
1
るため,直達日射の侵入を遮るためのスラット角度が異なる時間別
0.8
に,同様の計測を行った.スラット角の設定は,直達日射が照射し
]
[
過率の測定結果を示す.遮熱型と一般型を比較すると,紫外可視光
域ではいずれの時間においても殆ど差がない一方で,近赤外域では
わずかに透過率の上昇が見られるが室内への影響は限定的である.
0.2
晴 天 状 態 が 終 日 継 続 し た 中 間 期 代 表 日 に ,遮 熱 型 お よ び 一 般 型
0
ブ ラ イ ン ド の 窓 周 り 温 度 を 同 時 に 計 測 し た 結 果 を 図 10 に 示 す .ス
ラット面温度を見ると,直達日射の当たらない時間帯では遮熱型と
一般型で差はなかったが,直達日射が当たるピーク時間帯では遮熱
型は一般型に対して約 5K 低く抑えている.ガラスと組み合わせた
状態において近赤外域日射の反射効果が大きいことが示された.
τ 水平τUV+V
一般型 遮熱型 11:00
0.6
率
過
透
0.4
光
分
ない午前中は水平,13:30 は 45˚,14:30 は 60˚ とした.図 9 に分光透
500
2000
τ
τNIR
45
1000
波長[nm]1500
°
τ °τUV+V
13:30
60
τUV+V τNIR
0.10
0.18
0.04
0.04
0.05
0.01
0.01
0.17
0.11
0.24
0.06
0.11
0.08
0.01
0.01
(
(
一般型 水平
遮熱型 °
一般型 °
(
14:30)
14:30)
(45
(45
500
1000
率射
反光
分
14:30
0.14
遮熱型 全閉
一般型 全閉
][
2000 1
状態とするため,遮熱型ブラインドを用いることによって吸収日射
次に,スラット角の状況によっては透過日射量の増加が懸念され
0
0.4
吸収率
透過率
遮熱型
τNIR
0.01
0.02
遮熱型 水平
(
11:00)
11:00)
13:30)
13:30)
波長[nm]
1500
2000
図 9 スラット角の状態による分光透過率の比較 (2007.11/18 晴天)
50
一般型スラット面
遮熱型スラット面
一般型ガラス面
遮熱型ガラス面
40
℃30
度温
]
[
3.3
遮熱フィルム
(1)
窓単体での日射熱取得
図 11 に,ブラインドがない状態における各種窓面の分光透過・反
射日射量の測定結果を示す.FL は全波長帯において最も透過量が
多いのに対して,Film1 および Film2 いずれも Low-E と同様に波長
選択的に日射を透過していることがわかる.また,反射日射におい
てもいずれのフィルムも近赤外域日射を多く反射しているが,紫外
可視光域については特徴が異なっている.
こ れ ら の 窓 仕 様 に つ い て ,全 面 熱 流 計 型 の 日 射 熱 取 得 率 計 測 装
置 7) を用いて,直接に日射熱取得率を比較計測を行った結果を図 12
に 示 す .ま ず ,FL+Film1 の 時 刻 変 動 を 示 し た 図 12(a) に よ る と ,
日射量がピークとなる 15:00 から窓面温度の上昇に伴い若干の日射
熱取得率の上昇が見られるが,窓単体で 0.55 程度の値を得た.同時
室温
外気温
西鉛直面日射量
20
10
11:00
12:00
図 10
1.2
]
m
n 1
2/
m
/ 0.8
W
[ 0.6
量
13:00
15:00
17:00
反射日射
FL+Film2
Low-E
FL+Film1
500
16:00
透過日射
FL
射日0.4
光分0.2
0
14:00
スラット面およびガラス面の温度変化 (2008.10/21 晴天)
1000
波長[nm]
1500
FL+Film1
FL+Film2
Low-E
FL
2000
500
1000
波長[nm]
1500
図 11 窓面の分光透過・反射日射量 (2008.9/24 14:50 晴天)
2000
期 に 測 定 し た 結 果 を 比 較 し た 図 12(b) に よ る と ,FL に 遮 熱 フ ィ ル
ムを適用したガラスは,Low-E には及ばないものの FL と比較して
0.8
率
得
取
熱
射
日
(
1
日射熱取得率
実線: 分平均値
(
)
30
ブラインド併用時での熱性能
て,明色ブラインド併用時における各窓仕様の比較計測を行った.
に示す.ガラス面・スラット面いずれにおいても Low-E が最も温度
が低い.Film1 は近赤外域における日射吸収量が大きいためガラス
面温度が高い結果となったが,スラット面に入射する近赤外域にお
45
た.図 14 に,複数の異なる仕様の窓面における,色温度および色度
の時刻変動を測定した結果を示す.色温度および色度は,色彩輝度
計によって測定した XYZ 検出値の面的分布から,窓面内を平均化
して算出した.図 14(a) によると,可視光域における分光透過率の
変 化 が 小 さ い た め ,最 も 昼 光 に 準 じ た 透 過 光 と な る FL に 対 し て ,
16:00
いても,Film2 は色度上でも若干の差が見られる.フィルム透過光
の色特性についても留意が必要である.
度
温30
25
スラット面温度
]
℃
[ 30
FL+BL
度
温25
20
10:00
4.1
12:00
14:00
た.窓の熱収支計算は既往の 1 次元定常熱収支式
8)
を用いて,ブラ
インドを併用した普通窓,PPW(プッシュプルウィンドウ),AFW
の窓仕様について比較検討を行った.ガラス厚は 6mm としている.
な お ,特 に 記 述 が な い 場 合 は 中 間 色 の 一 般 ブ ラ イ ン ド を 併 用 し て
お り ,ブ ラ イ ン ド は 直 達 日 射 を 遮 蔽 す る 最 小 限 の ス ラ ッ ト 角 度 に
調整した.日射熱の計算は,紫外可視光域と近赤外域の 2 波長帯
9)
に区分することによって窓の波長選択性能を反映した計算とした.
AFW および PPW の通気風量は 50CMH/m として,その他の窓周
りの計算条件は既往の文献に基づいて設定した
計算は応答係数法による非定常熱負荷計算
10)
注 4)
4.2
]K
[
窓面熱取得・光透過
図 15 に ,西 方 位 の 夏 期 ピ ー ク 日 に お け る 窓 仕 様 に よ る 日 積 算 日
射熱取得および透過光束量の比較結果を示す.なお,図中において
窓面到達日射量の内訳 (透過日射量, 吸収日射取得, 貫流熱, 窓システ
ム の 排 熱, 反 射・外 気 へ の 放 熱),透 過 光 束 量 ,ピ ー ク 時 間 に お け る
窓から 1m 位置の人体に対する窓面からの放射による作用温度上昇
量 ΔCOT注 6) を左軸に,日射熱取得率および透過光束量に対する日
射熱取得量の比率として発光効率を右軸に,それぞれ表している.
FL+Film1+BL
FL+Film2+BL
Low-E+BL
室温
18:00
0.35
度
6000
温
色
y
0.3
FL
12:00
図 14
15
] 12
[K
13:00
14:00
(a) 色温度
15:00
中間色
遮熱BL
内BL 窓
中間色一般BL
・m 度温 6
lk 用
[ 作
量束 ], 3
光過 ㎡/JM
透 [量 0
熱3000
6000
15
] 12
K
[
0.25
0.25
0.3
0.35
1.0
0.8 ]
-[
率
0.6 得
0.4
0.2
0
80
反射+外気
への放熱
通気による
処理熱量
日射熱
取得率
取熱 貫流熱量
射日 吸収日射
取得量
透過
日射量
]
/W
lm
[
作用温度
上昇
率効 透過
光束量
光発
凡例
発光
効率
160
FL FL FL FL Low-E熱線 高熱反
FL FL +Film1
+Film2 +Film3+Film4
反射
(a) 遮熱ブラインド・遮熱フィルムおよび一般ガラスの比較
内BL窓
(BL内蔵)PPW
(BL内蔵)AFW
透明単板 透明複層 透明単板 透明複層 透明単板 透明複層
(外ガラス) (外ガラス)
9
1.0
0.8 ]
-[
0.6
6
0.4
3
0.2
透量 0
熱3000
6000
図 15
0.4
x
(b) 色度
窓面透過光の色温度・色度の変化 (2007.12/27 晴天)
] 昇
㎡h/ 上 9
] 昇
㎡/h 上度
・m 温
lk 用
[ 作
量束 ,]
光過 ㎡/J
[M
FL
Low-E
FL+Film1
FL+Film2
Low-E
.また,熱負荷
制御を備えたオフィスビルを想定した計算条件とした 注 5) .
300
FL+Film1
7000
に,昼光照度および
照明調光制御の計算を組み込んだプログラムを使用し,照明の調光
量
射
日
600
0.4
FL+Film2
8000
計算概要
実測によって得られた遮熱ブラインドおよびフィルムの光学特性
16:00
]
m
/
W
[
図 13 スラット・ガラス面の温度変化 (2009.5/10 晴天・一時曇天)
4000
に基づいて,年間の熱負荷および照明電力消費量への効果を試算し
2
外気温
西鉛直面日射量
5000
省エネルギー効果の検討
FL
FL
Low-E
+Film1 +Film2
(b) 窓仕様による比較
FL+Film1+BL
FL+Film2+BL
FL+BL
Low-E+BL
Film1 は Low-E と同程度に,Film2 はさらに大きく色温度が上昇し
ていることがわかる.同時間帯の色度をプロットした図 14(b) にお
FL
17:00
ガラス面温度
20
35
フィルムの貼り付けに伴う昼光の色への影響について検討を行っ
15:00
(a) 時刻変動 (FL+Film1 2008.5/16 晴天)
図 12 遮熱フィルム窓の日射熱取得率
40
光・視環境への影響
率得0.6
取熱0.4
射
日0.2
0
14:00
]
℃
[ 35
低減による温熱環境改善効果が期待できることを示した.
Max
75%
Average
25%
Min
0.8
0
ける透過日射量が低減されているため,スラット面温度は FL に対
過率及び吸収率が低く,約 7K のスラット面温度低下効果が見られ
]
[
0.2
して約 5K 低く抑えられている.Film2 は近赤外域における日射透
た.遮熱フィルムを適用したガラスは,ブラインド併用時に輻射熱
西鉛直面日射量
日射熱取得量
0.4
中 間 期 代 表 日 に お け る ガ ラ ス 及 び ス ラ ッ ト 面 温 度 の 推 移 を 図 13
4
)
0.6
ブラインドを用いて直達日射を遮蔽する実使用状況下を想定し
(3)
日射熱取得率
破線: 分計測値
]
[
日射熱取得率を抑制している.
(2)
1
1
0
80
無 有
無 有 無 有 無
有 無 有 無 有
160
率
得取
熱
射日
]
W
/
lm
[
率効
光発
(b) 窓タイプ別の Film1 による効果
日積算日射熱取得および透過光束量(西方位・夏期ピーク日)
ら つ き は 大 き い .最 も 高 い 波 長 選 択 性 能 が 見 ら れ た フ ィ ル ム
まず,遮熱ブラインド,各種の遮熱フィルムおよび一般ガラスを
比較した図 15(a) によると,遮熱ブラインドよりも遮熱フィルムに
は,透明単板に適用することによって,遮熱型 Low-E 複層ガラ
お い て 変 化 が 大 き い .遮 熱 ブ ラ イ ン ド は 一 般 ブ ラ イ ン ド と 比 較 し
スに準じる効果が期待できる.
て,窓面温度を低下させる効果が高い一方で透過日射量が若干増え
5. 熱 負 荷 お よ び 放 射 環 境 へ の 効 果 は 遮 熱 ブ ラ イ ン ド よ り も 遮 熱
てしまうが,日射熱取得率および作用温度の改善効果が見られる.
フィルムの方が大きく,特に,熱性能が低い窓への適用効果が
遮熱フィルムの効果は種類によって大きく異なっており,Film4 で
大きい.熱性能の低いガラスで構成される PPW や AFW への
は日射熱取得率が 0.5 程度も低減しているが,発光効率は大幅に低
適用効果も見込める.
照明電力[kWh/㎡/年]
下しており昼光利用効果は見込めない.それに対して,Film1 では
40
日射熱取得率を 0.3 程度低減し,透過光束量も若干減じるものの発
光効率としては Low-E と同等まで上昇している.
また,一般的な窓仕様において適用効果が大きかった Film1 につ
いて,各種窓タイプへ適用した場合の効果を比較した図 15(b) によ
ると,窓システムである PPW や AFW においても明確な適用効果
が見られる.
4.3
熱負荷・照明電力消費量
図 16 に ,西 方 位 ペ リ メ ー タ ゾ ー ン に お け る 年 間 暖 冷 房 負 荷 お よ
び 照 明 電 力 消 費 量 に つ い て ,窓 仕 様 別 に 比 較 し た 結 果 を 示 す .な
お ,照 明 に つ い て は ,室 稼 働 時 間 帯 に お け る 平 均 点 灯 率 (最 大 出 力
時 1.0) を併せて示している.遮熱フィルムによる効果は種類によっ
て大きく異なるが,暖房負荷が若干増加するものの冷房負荷削減効
FL(調光なし)
FL(+遮熱BL)
FL
FL+Film1
FL+Film2
FL+Film3
内BL窓 FL+Film4
Low-E
熱線反射
高性能熱線反射
FL複層
FL複層+Film1
(BL内蔵) FL複層
PPW FL複層+Film1
FL複層
(BL内蔵)
AFW FL複層+Film1
果が卓越するため,20∼40% 程度の大幅な熱負荷低減効果を得られ
20
10
0
熱負荷[MJ/㎡/年]
200
暖房負荷
400
600
800
1000
冷房負荷
照明電力
点灯率
1.0
る こ と が わ か る .Film4 は 熱 負 荷 が 最 も 大 き く 低 減 さ れ て い る が ,
30
0.5
照明点灯率[-]
0
図 16 年間熱負荷・照明電力量の比較(西方位ペリメータ・東京)
昼光利用効果が小さくなり照明電力消費量が増加する.日射遮蔽効
果と昼光利用効果を合わせると,高い波長選択性能を有する Film1
が最も効果的と判断される.PPW や AFW に Film1 を適用した場
合においても 10∼20% 程度の熱負荷削減効果が得られる.なお,ガ
ラス厚を 12mm にした場合でも同様の結果であった 注 7) .
以上の結果から,熱性能が低い窓仕様のみならず,窓システムに
至るまで近赤外日射の遮蔽による省エネルギー効果を見込めること
謝辞
本研究を進めるあたり,東京理科大学大学院生の宮本敦史氏から
実測についての協力を得た.また,首都大学東京 石野久彌名誉教授
および永田明寛准教授から,研究の助言と測定機器についての協力
を得た.ここに記して感謝の意を表します.
を示した.
5
まとめ
市販の遮熱ブラインドおよび遮熱フィルムを対象とした紫外可視
光域・近赤外域を含めた光学特性の実測,実使用状況を想定した熱・
光・視 環 境 の 実 測 ,実 測 結 果 に 基 づ く シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ っ て ,
注
注 1)
入射角に応じて変化する反射特性における,表面での非均等拡散性状に
よって生じる反射面から半球全方向への単位立体角あたりの反射率分布を双
これらの日射遮蔽手法を各種窓システムに適用した場合のオフィス
方向反射率(BRDF: Bidirectional Reflectance Distribution Function)
ビルにおける年間熱負荷・照明電力消費量の比較検討を行い,以下
という.
の結果を得た.
注 2)
350-780nm の波長域には,紫外域と可視域が含まれているが,本論文で
は簡略的に紫外可視光域と表記する.
1. ブラインド併用窓に,近赤外日射の遮蔽効果が高いフィルムを
注 3)
お,熱負荷計算では 6mm 厚を基本条件としているのに対して,実験では測
環境の改善効果が大きい.
定対象建物の制約上 3mm 厚を対象としているが,ガラス厚 3mm と 6mm
2. 遮熱ブラインドは近赤外域においても拡散的な反射性状を有す
の間の透明ガラス単体およびフィルム適用時の性能変化は小さく,また性能
の相対的な関係も大きく変化しないことから,ここでは 6mm 厚のデータに
るが,スラット角と日射の条件によっては室内への透過日射量
が若干増大する傾向にある.しかしながら,一般型よりも大幅
にスラット面温度を低下させるため,年間熱負荷としては若干
の低減効果が見込まれる.
3. 冷房が卓越し日射遮蔽が必須となるオフィスビルにおいては,
これら近赤外域日射の遮蔽手法による省エネルギー効果は大き
く,放射環境改善にも効果的である.
4. 遮熱フィルムの分光特性・入射角特性は一般ガラスとは大きく
異なる特徴を有するものが見られ,光学性能値や透過光色のば
光学性能値の比較検討対象とした一般ガラスおよび代表的な遮熱フィルム
の性能一覧 (メーカー公表値) を,表 A-1 および表 A-2 にそれぞれ示す.な
適用した場合はスラット面温度低下効果が大きく,長波長放射
ついて代表的に示している.
注 4)
窓の熱計算における設定値 8) は以下とした.
ガラス・ブラインド間放射熱伝達率 αrgb = 4.5[W/m2 /K], ガラス・
室 内 表 面 間 対 流 熱 伝 達 率 αcg = 5.0[W/m2 /K], ガ ラ ス・室 内 表 面 間
放 射 熱 伝 達 率 αcg = 4.0[W/m2 /K], ブ ラ イ ン ド 表 面 対 流 熱 伝 達 率
αcb = 10.0[W/m2 /K], 単位窓面積あたりの窓通気量 V 2 = 5.8, V 4 =
5.8[lit/m2 /sec] スラット隙間の循環風量 V = 7.0[lit/m2 /sec], 屋外側
表面熱伝達率 夏期 17.6, 中間期 20.4, 冬期 20.6[W/m/K], ガラス熱伝導
率 1.0[W/m/K], 複層ガラス空気層の熱抵抗=FL 複層 0.12, Low − E 複
層 3.3[m2 · K/W]
表 A-1 一般ガラスの一覧 (6mm 厚)
種類
透明
色
可視光
透過率
反射率
※
0.88
0.79
0.49
0.56
0.73
0.63
0.54
0.3
0.35
0.50
0.09
0.20
0.34
0.30
0.37
0.30
0.64
0.70
0.68
0.75
青
灰
茶
緑
熱線吸収
青
灰
茶
緑
熱線反射
高性能
熱線反射
緑
灰
緑
遮熱型 Low-E
6+A6+6mm
※ガラス色はカタログ記載の参考表記
日射
透過率
反射率
日射熱取得率
0.08
0.07
0.05
0.06
0.07
0.32
0.25
0.11
0.13
0.22
0.42
0.23
0.11
0.15
0.19
0.31
0.13
0.18
0.10
0.12
0.80
0.60
0.50
0.56
0.45
0.62
0.42
0.34
0.40
0.30
0.07
0.17
0.30
0.23
0.29
0.23
0.35
0.48
0.37
0.52
0.07
0.06
0.06
0.06
0.06
0.23
0.16
0.10
0.11
0.12
0.35
0.20
0.10
0.15
0.16
0.24
0.27
0.23
0.25
0.18
0.84
0.71
0.65
0.69
0.62
0.67
0.56
0.54
0.57
0.50
0.23
0.35
0.49
0.41
0.46
0.39
0.42
0.56
0.44
0.60
表 A-2 遮熱フィルムの一覧 (性能値は透明単板 6mm 貼付時)
全厚
可視光
透過率
反射率
[µm]
60
60
33
75
Film1
Film2
Film3
Film4
0.66
0.67
0.52
0.18
透過率
0.09
0.20
0.11
0.55
0.40
0.45
0.45
0.13
0.16
0.29
0.10
0.48
昇
] 上
度9
/㎡
h 温
・
用6
lm
k[ 作
],
量
/㎡
束
J 3
光
[M
過
0
透量
熱
0.6
0.4
0.2
0
3000
80
6000
160
0.55
0.54
0.61
0.26
無 有 無 有 無 有 無 有
率
得
取
熱
射
日
反射
+外気
への放熱
通気による
処理熱量
貫流熱量
吸収日射
取得量
透過
日射量
]
W
/
m
[l
作用温度
上昇
透過
光束量
-][
率
効
光
発
日射熱
取得率
発光
効率
凡例
(a) 夏期ピーク日における窓面日射熱取得および透過光束量
照明電力[kWh/㎡/年]
30
内BL窓
(BL内蔵)
AFW
日射
反射率
日射熱取得率
内BL 窓
(BL内蔵)AFW 1.0
透明単板
透明単板
透明複層
透明複層
6mm
12mm
(外ガラス) (外ガラス)
6-A6-6mm 12-A12-12mm 0.8
15
]
K
[ 12
20
10
0
FL(6mm)
照明電力
FL(6mm)+Film1
FL(12mm)
点灯率
FL(12mm)+Film1
FL複層(6mm)
FL複層(6mm)+Film1
FL複層(12mm)
FL複層(12mm)+Film1
熱負荷[MJ/㎡/年]
200
暖房負荷
400
600
800
1000
冷房負荷
照明点灯率[-]
0.5
0
(b) 年間熱負荷・照明電力量の比較
図 A-2 ガラス厚の違いによる遮熱フィルム適用効果への影響
注 5) オフィスビルを想定した熱負荷計算の条件を図 A-1 に示す.
mm
5,000
5,
80
0
50 38
,0 ,4
00 00
調光
項目
設定値
立地条件 東京(北緯 36°, 東経 140°)
気象
標準年拡張アメダス2000年
192 [m²]
床面積
建物条件
3.3 [m]
天井高
89 [m²]
窓面積
38 [m²]
外壁面積
1.16 [W/m²/K]
外壁
1.97 [W/m²/K]
壁面
内壁
1.51 [W/m²/K]
天井・床
Hf 照明
照明機器
15 [W/m²]
密度
100 [lm/W]
発光効率
750 [lx]
適正照度補正
照明
100%
80%
40%
時
照明スケジュール
5,000
コアスペース
ペリ
メー
タゾ
ーン
(9
2m
)2
5
m 80,0
m
15,000
イン
テリ
アゾ
ーン
ペリ
メー
タゾ
ーン
(7
6m
)2
(9
2m
)2
在室人数
コアスペース
1
非調光
室使用状況
1,500
mm
OA電力量
0.1 [人/m²]
67%
4
3
0
5
7
空調設定
温度
湿度
外気導入量
50%
時
70%
20%
4
7 10 13 16 19 22
夏期: 26.0 [ºC]
中間期: 24.0 [ºC]
冬季: 22.0 [ºC]
40-60 [%]
3.5 [m³/m²/h]
(c) 建物・スケジュールの条件
(b) 断面図
図 A-1 熱負荷計算の入力条件
注 6) 既往の文献 11) にて示されている,室温を基準とした空間構成面からの放
射熱の影響を表す加熱効果量 ΔCOT を拡張して,短波長放射の影響も含め
た式 (A-1) によって,窓面による放射環境への影響を評価した.
ΔCOTW indow =XR · FH,W indow · (tS W indow − tA )
aH
+
· FH,W indow · RS W indow
αH
3) 一ノ瀬雅之, 石野久彌, 永田明寛: 建材の日射透過および反射性能における
分光感度特性, 日本建築学会環境系論文集 第 583 号, pp.15-21, 2004.9
4) 櫻井希, 飯野秋成, 日下部征信: 遮熱フィルムと Low-E ガラスの分光特性の
測定およびアトリウム空間における日射遮蔽効果の検討, 日本建築学会技術
報告集 第 13 巻 第 26 号, pp.653-658, 2007.12
5) 足永靖信, 伊藤大輔, 藤本哲夫: 建築窓ガラス用フィルムの分光特性に関す
る調査, 日本建築学会技術報告集 第 14 巻 第 28 号 pp.487-490, 2008.10
6) Annual book of ASTM Standard, G159-98, Standard Tables for References Solar Spectral Irradiance at Air Mass 1.5: Direct Normal
and Hemispherical for a 37° Tilted Surface, Vol. 14.04, 2003.
7) 一ノ瀬雅之, 井上隆, 齊藤寛: 高性能窓システムの熱・光性能の現場測定法,
日本建築学会環境系論文集 No.641, pp.845-851, 2009.7
8) 郡公子, 石野久彌: 熱負荷計算のための窓性能値に関する研究, 日本建築学
会環境系論文集, No.600, pp.39-44, 2006.2
(A − 1)
ここに,COTW indow :窓面による作用温度上昇量 [K], tS W indow :窓面温
度 [˚C], tA :気温 [˚C], RS W indow :窓透過日射量 [W/m2 ], aH :人体表面
の日射吸収率 [−](=0.6), FH,W indow :人体から窓面を見る形態係数 [−],
XR :人体放射熱伝達率の総合熱伝達率に対する比率 [−](=0.5), αH :人体総
合熱伝達率 [W/(m2 ·K)](=11.0),
注 7) 本論文における窓面負荷・熱負荷計算におけるガラス厚は 6mm 厚を基本
条件としているが,高層ビルにおいては耐風圧の関係上,厚いガラスを使用
する場合も考えられる.そこで,図 A-2 に示すようにガラス圧を 12mm と
した条件下で検討を行った結果,ガラス厚による大きな変化はなく,また窓
仕様間の相対関係への影響も小さいことから,本論文では 6mm 厚の条件で
の比較結果を中心的に示すこととする.
2) 川口知真, 田辺新一 他: 建築ファサードにおける環境デザイン手法の熱的評
価 その 5:ガラス建築の動向・設計意図調査, 日本建築学会大会学術講演梗
概集 D-2, pp.1237-1238, 2009.9
7 10 13 16 19 22
10 [W/m²]
OAスケジュール
0
0
3
,
4
100%
1
0
0
0
,
時
33%
1
1) 松 尾 陽, 井 上 隆, 射 場 本 忠 彦 他: 窓 の 熱 的 性 能 に 関 す る 研 究 (そ の
1),(そ の 2),(そ の 4)∼(そ の 7), 日 本 建 築 学 会 大 会 学 術 講 演 梗 概 集,
pp.621-624,1983.9, pp.705-706,1984.10, pp.823-824,1985.10, pp.767768,1986.8 ほか
7 10 13 16 19 22
在室スケジュール
(a) 平面図
机上面照度算出点
4
参考文献
9) 永田明寛: 2 波長域に分けた日射量近似モデル, 日本建築学会大会学術講演
梗概集 D2, pp.49-50, 2003.9
10) 宇田川光弘: パソコンによる空気調和計算法, オーム社, 1986
11) 郡公子, 石野久彌, 古川貴宏: アトリウム各面からの輻射熱の影響評価に関
する実測研究, 日本建築学会計画系論文集, No.535, pp.9-14, 2000.9