DG2015-15: 内因性化合物の定量(2 - Japan Bioanalysis Forum

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内因性物質の定量(2)
Quantitative analysis of endogenous substances
(2)
7th JBF Symposium, DG2015-15
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DG2015-15
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Japan Bioanalysis Forum
Members
LBA
島田
早川
河田
落合
橋本
加藤
LC/MS
英一(小野薬品工業株式会社):LC/MSリーダー
潤(塩野義製薬株式会社)
岩田 あかね(テバ製薬株式会社)
哲志(株式会社新日本科学)
中永 景太(東レ株式会社)
尚子(大日本住友製薬株式会社) 落合 美登里(東和薬品株式会社)
有樹(株式会社住化分析センター) 上野 聡子(味の素株式会社)
望(田辺三菱製薬株式会社)
酒井 和明(帝人ファーマ株式会社):DG2015-15リーダー
若松 明(グラクソ・スミスクライン株式会社)
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堀田 晋也(協和発酵キリン株式会社):LBAリーダー
横田 喜信(SNBL USA)
笹原 里美(東和薬品株式会社)
小谷 洋介(株式会社新日本科学)
鈴木 英子(第一三共株式会社)
DG201515
2
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背景と目的
 生体試料中の内因性物質を定量する場合,ブランクマトリックス中にも
分析に影響を与えるレベルで分析対象物質が含まれる.
 検量線試料又はQC試料の調製において代替マトリックスを利用する
ケースがある.
 2014年の「DG2014-08:内因性化合物の定量」では分析方法を
LC/MSに限定して議論したが,代替マトリックスの選択方法について
はさらに深い議論が必要となった.
目的
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背景
 内因性物質定量における代替マトリックス選択方法について,LC/MS,
LBAそれぞれの分析方法の立場から,以下の点について議論した.
 代替マトリックスの選択法アプローチ
 代替マトリックスを選択する際の妥当性の確認方法
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活動経緯
2015年5月
2015年8月28日
 キックオフ会議(Face to Face会議 :Agilent八王子ラボ)活動開始
2015年9月~2016年1月
 Web会議およびメールによる議論
 LBAチーム(Web会議:4回)
 LC/MSチーム(Web会議:6回)
 全体(Web会議:7回)
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 DGサポーターからメンバー募集
2016年1月~2016年2月
 LBAチームとLC/MSチーム,共通テーマ部分を議論
 ポスター作成
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•用語の定義
•内因性物質と標準物質の同等性に対する考え方
•代替マトリックスの用途,理想像,使用する状況
•LBA分析における代替マトリックスの選択アプローチ
•LC/MS分析における代替マトリックス選択アプローチ
•代替マトリックスの妥当性評価
•代替マトリックス選択に関するLBAとLC/MSの相違点
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発表の構成
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用語
定義
マトリックス
分析のために選択された全血,血漿,血清,尿又は他
の体液や組織
実マトリックス
対象生物由来のマトリックス
代替マトリックス
実マトリックスの代わりとして用いるマトリックス
非生体マトリックス
代替マトリックスのうち,実マトリックスを含まないマト
リックス(水,緩衝液,artificial CSF,synthetic urineなど)
除去マトリックス
代替マトリックスのうち,実マトリックスから分析対象物
質を除去したマトリックス
低値実マトリックス
性差,日内変動,個体間変動,年齢,食事などの制限
により内因性物質濃度を低値に抑えた実マトリックス
このDGでは代替マトリックスに含めない
実試料
PK/TK試験等で分析のために得られた試料
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用語の定義
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用語
定義
マトリックス効果
試料中のマトリックス由来成分による分析対象物質の
レスポンスへの影響.
・LC/MS:分析対象物質のイオン化への影響
・LBA:分析対象物質のシグナル強度に対する影響
ブランクマトリックス
検量線試料やQC試料の調製に用いるマトリックス.
用途や内因性物質レベルに応じて,代替マトリックス,
実マトリックスから選択する
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用語の定義
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用語
定義
MRD
(Minimum required
dilution)
LBAにおいて,検量線試料,QC試料又は実試料をMRD
用希釈液で希釈するときの希釈倍率
MRD用希釈液
LBAにおいて,検量線試料,QC試料又は実試料を希釈
するときの希釈溶液
リコンビナント蛋白質
遺伝子組み換え技術によって人工的に作製された蛋白
質
・検量線試料及びQC試料の調製時の標準物質
・内因性物質を投与するPK/TK試験の被験物質
として利用
妥当な代替マトリック
ス
実マトリックスにおける濃度変化を同じ濃度変化として
捉えられるマトリックス
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用語の定義
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内因性物質と標準物質の同等性に対する考え方
LBA
分析対象
物質
高分子
(蛋白質)
前提・仮定
内因性物質
≠
検量線に使用する
標準物質
内因性物質
濃度
相対濃度
(標準物質の反応
性対比)
(リコンビナント蛋白質)
LC/MS
低分子
ペプチド*
内因性物質
=
検量線に使用する
標準物質
(化学合成品)
絶対濃度
備考
 リコンビナント蛋白質の重要
試薬への反応性がロット(又
は,合成施設)によって異な
る事例あり
 実マトリックス中における安
定性について,内因性物質
とリコンビナント蛋白質で異
なる事例あり
 ペプチドについて,高次構造
をもつ分析対象物質は内因
性物質≠標準物質となる可
能性あり
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測定
手法
*:近年では高分子をLC/MSで測定する事例は多いが,本DGのscopeからは除外した.
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代替マトリックスの用途及び理想像
実マトリックス中に無視できないレベルの内因性物質
が含まれる場合,
検量線試料又はQC試料用のブランクマトリックスとし
て使用することが主たる用途
理想的な代替マトリックス
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代替マトリックス用途
実マトリックスに組成が限りなく近似したマトリックス
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代替マトリックスを使用する状況
ケース
実マトリックス中の
内因性レベル
代替マトリックス
の要否
1
2
3
内因性レベル <<
LLOQの20% (LC/MS)
LLOQの25% (LBA)
検量線のLLOQ未満だが,低濃度の検量線
又はQC試料の調製に影響するレベル
LLOQの20% (LC/MS)
< 内因性レベル < LLOQ
LLOQの25% (LBA)
検量線のLLOQ以上
不要*
必要
必要
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検量線のLLOQと比較して十分に低値
*: 検量線試料又はQC試料のブランクマトリックスとして実マトリックスが使用可能
実マトリックス中に無視できないレベルの内因性物質が含まれる場合(上表の
ケース2及び3),検量線試料又はQC試料の調製時のブランクマトリックスとし
て代替マトリックスを使用する必要がある.
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LBA分析における代替マト
リックスの選択アプローチ
Strategy to select“alternative
matrix”for LBA method
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代替マトリックスとし
て実マトリックスに
限りなく組成が近似
したマトリックス*1を
選択
・妥当性評価(ポス
ターNo.35~47)を
実施
・妥当性評価におい
て基準を満たす
MRD*2を決定
要求
感度
満たす
代替マトリック
ス及びMRD用
希釈液*2を採用
満たさない
MRD用希釈液*2
を変更
*1: 実マトリックスから分析対象物質をアフィニティ除去したマトリックス等
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LBA測定系の構築の理想的な流れ
*2: 代替マトリックスとは組成の異なるMRD用希釈液を使用
代替マトリックスとして
実マトリックスに限りなく組成が近似したマトリックスを選択すること
が理想
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• 実マトリックスに限りなく組成が近似したマトリックス
(例:実マトリックスから分析対象物質をアフィニティ
除去したマトリックス)は,処理に要する作業の煩雑
さや費用面から,容易には採用できないことが多い.
• 実マトリックスが希少マトリックスである場合は,そ
れを利用して必要量の代替マトリックスを調製する
ことが困難であるケースもある.
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現実的な状況
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LBA測定系の構築に対するアプローチ
⇒マトリックス効果の近似を志向したアプローチ
• 代替マトリックスと実マトリックスのそれぞれのマトリックス
効果を無視できるほど小さくする方向性
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• 代替マトリックスと実マトリックスの間で組成の違いによる
マトリックス効果を限りなく近似させる方向性
⇒マトリックス効果の低減を志向したアプローチ
このアプローチの場合,代替マトリックスとMRD用希釈液で同じ組成を
採用するケースが多い.
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LBA測定系の構築に対するアプローチ
入手可能なもので,
実マトリックスに組
成の近い代替マト
リックスを選択
満たす
要求
代替マトリック
ス及びMRD用
感度
希釈液*を採
用
満たさ
ない
・妥当性評価(ポス
ターNo.35~47)を
実施
・妥当性評価にお
いて基準を満たす
MRD*を決定
留意事項:
実マトリックスの近似マトリックス(例:他動物種
の実マトリックス,活性炭処理した実マトリック
ス,その他,等々)については,実マトリックスと
の組成の近似性について科学的/定量的に判
断することは容易ではない.
実マトリックスに
組成がより近似
した代替マトリッ
クスに変更
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マトリックス効果の近似を志向したアプローチ
MRD用希釈液*
を検討
*: 代替マトリックスとは組成の異なるMRD用希釈液を使用
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LBA測定系の構築に対するアプローチ
タンパク含有
bufferを代替マト
リックス兼MRD用
希釈液*として選択
・妥当性評価(ポス
ターNo.35~47)を
実施
・妥当性評価にお
いて基準を満たす
MRD*を決定
満たす
要求
代替マトリック
ス兼MRD用希
感度
釈液*を採用
満たさない
代替マトリックス
兼MRD用希釈液*
を変更
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マトリックス効果の低減を志向したアプローチ
*: 代替マトリックスとMRD用希釈液は同じ組成の溶液を使用
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各アプローチのPros/Cons
Pros
Cons
• 実マトリックスと代替
マトリックス
マトリックスの組成を
効果の近似
近似させるほどMRD
の低減が可能
• 実マトリックスの正確な組成が不明な場合あ
り
• どこまで組成を近似させればよいかの見極め
が困難
• ロット間差が生じる可能性あり
• 必要なマトリックス量の確保が困難なケース
あり(バリデーション&本試験用に同一ロット
を確保することが好ましい,希少マトリックス
の場合は必要量の確保が困難)
• 代替マトリックスの検討とは別に,MRD用希
釈液の検討も必要
• 第一選択はタンパク
質含有bufferであり,
マトリックス
準備が容易
効果の低減
• MRD用希釈液との兼
用できる場合あり
• 実マトリックスのマトリックス効果が大きい場
合,MRDが大きくなる可能性がある
• 規制情報とのコンフリクト(次頁参照)
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アプローチ
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代替マトリックスに関するガイドラインの記述
医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法(リガンド結合法)
のバリデーションに関するガイドライン (薬食審査発0401第1号,平成26年4月1日)
フルバリデーションでは,特異性,選択性,検量線,真度,精度,希釈直線性,安
定性等 を評価する.通常,フルバリデーションは,分析対象となる種又はマトリッ
クス(主に血漿 又は血清)ごとに実施する. 分析法バリデーションに用いるマトリ
ックスは,抗凝固剤や添加剤を含め,分析対象の実試料にできるだけ近いもの
を使用する.希少なマトリックス(組織,脳脊髄液又は胆汁等) を対象とした分析
法を確立する場合には,十分な数の個体から十分な量のマトリックスが得られな
い状況が問題となる場合がある.そのような場合には,代替マトリックスを使用す
ることができる.代替マトリックスは,検量線を構成する各試料及び QC 試料の
調製等に用いられる.ただし,代替マトリックスを使用する場合には,分析法を確
立する過程においてその妥当性を可能な限り検証する.リガンド結合法では,分
析法を確立する過程において設定されたMRD(minimum required dilution)に従
い緩衝液で希釈した試料を調製し,フルバリデーションを実施する.
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p3 「4.1 フルバリデーション」より抜粋
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• 代替マトリックスの入手の容易さを考慮すると,マトリックス効果
の近似を志向したアプローチと比較してマトリックス効果の低減
を志向したアプローチの方が検討を開始する上でのハードルは
低い.
• 測定系の妥当性を科学的に担保できれば,代替マトリックスの
組成を実マトリックスに近似させることは必須ではない.
\\
1)マトリックス効果の低減を志向したアプローチ*にて検討
*: 第一選択はタンパク含有buffer
を開始.
2)上記1)で測定系の構築が難航するようであればマトリッ
クス効果の近似を志向したアプローチを合わせて検討と
いう流れが現実的であると考える.
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LBA測定系の構築の現実的な流れ
20
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LBA測定系の構築の現実的な流れ
採用不可能
採用可能 ⇒ バリデーション試験を実施
2)マトリックス効果の低減を志向したアプローチで,選択可能な代替マトリック
ス兼MRD用希釈液(複数)を検討
いずれも採用不可能
採用可能 ⇒ バリデーション試験を実施
マトリックス効果の低減を志向したアプローチでは,要求感度を満たす測定系
の構築は不可能と判断
3)マトリックス効果の近似を志向したアプローチで,選択可能な代替マトリック
ス(複数)を検討 (別途,MRD用希釈液を検討)
いずれも採用不可能
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1)第一選択として,タンパク*含有bufferを代替マトリックスに使用して妥当性評
価(ポスターNo.35~47)を実施&MRDを確認
*: BSA,Casein等
採用可能 ⇒ バリデーション試験を実施
4)重要試薬又は測定フォーマット(測定原理の異なる測定法)を変更して再検
討
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代替マトリックスの候補と留意点
留意事項
理想的な
抗分析対象物質抗
代替マトリック 体で調製した除去マ
ス
トリックス
第一選択の
代替マトリック
ス
蛋白質含有buffer
(非生体マトリック
ス)
備考
マトリッ ロット 分析対象物
クス効果 間差 質の吸着*
・抗分析対象物質抗体の準備及分
析対象物質の除去方法の検討が
必要
・必要量が多いと調製が煩雑
・費用的に高額となるケースあり
✓
✓
✓
・代表的な添加蛋白質はBSA又は
Casein
・界面活性剤(例:Tween),キレート
剤(例:EDTA),有機溶媒(例:
DMSO)等を添加するケースあり
・NaCl/Na2CO3等の濃度を調整する
ケースあり
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位置付け
代替マトリックス
候補
*: 前処理時に使用するチューブ等への吸着
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代替マトリックスの候補と留意点
市販のマトリッ
クス(キット添付
希釈液を含む)
別動物の
マトリックス
検討可能な
代替マトリッ
クス
別組織の
マトリックス
活性炭処理
した除去
マトリックス
留意事項
マトリック
ス効果
ロット
間差
✓
✓
✓
✓
備考
分析対象物
質の吸着*
✓
・販売中止のリスクあり
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位置付け
代替マトリッ
クス候補
✓
・内因性物質濃度が低値を示す動物がい
る場合に適用可能なケースあり
・LBA測定に使用する抗体に交差しない
動物がいる場合に適用可能なケースあり
✓
・内因性物質濃度が低値を示し,量を確
保できる組織がある場合に適用可能な
ケースあり
✓
・内因性物質の種類によって除去効率が
異なる.低分子と比較して高分子の除去
効率は悪い傾向がある
・分析対象物質を含めた様々な物質が活
性炭 により除去されるため,実マトリック
スとは組成が大きく異なる
✓
*: 前処理時に使用するチューブ等への吸着
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LC/MS分析における
代替マトリックス選択アプローチ
Strategy to select“alternative
matrix”for LC/MS method
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代替マトリックス選択に対する考え方①
マトリックス例
 アフィニティー処理により,分析対象物質を除去したマトリックス
 内因性物質濃度が低い異動物種の同一マトリックス
課題
① 代替マトリックスの準備にコストを要する.(費用,時間,労力など)
② 一定の品質のマトリックスを安定的に入手することが難しい.
(ロット間差や個体差が生じる可能性や希少マトリックスの場合など)
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理想的な代替マトリックス
実マトリックスに組成が限りなく近似したマトリックス
<代替マトリックス選択における実情>
『実マトリックスに組成が近似したマトリックス』を準備すること
は非常に難易度が高い.
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代替マトリックス選択に対する考え方②
組成を近似させることが理想だが,必須ではない.
(DGメンバーの意見)
 代替マトリックスに求められる必須要素は,妥当性が得られること(実マ
トリックスとの組成の違いによる定量性への影響がないこと)である.
 組成を類似させたとしても妥当性が得られなければ代替マトリックスとし
ては不適切となるため,類似性は必要ではないと考える.
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【DGメンバーで議論】
実マトリックスと組成を近似させることは必要であるか?
次頁以降に示すフローに沿った代替マトリックス選択を提案する
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代替マトリックス選択フロー
第一選択
代替マトリックス
の妥当性確認
(ポスターNo.35~56
参照)
採用OK
代替マトリック
スの採用
(ポスターNo.28参照)
採用NG
代替マトリックス以外の
手段を検討する
 代替標準物質の使用
 標準添加法 等
他の代替マトリックスを検討する
または 分析条件等を変更する
以下の課題に分けて,他の代替マトリッ
クスやそれ以外の対策を検討
1.マトリックス効果,2.溶解性,3.吸着,
4.安定性 (+選択性)
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調製や入手が容易
で単純な組成の
非生体マトリックス
を選択する
適当な代替マトリック
スが選択できない
(ポスターNo.31~34参照)
7th JBF Symposium, DG2015-15
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推奨する第一選択肢
例
特徴
水
•
極性化合物に適しているref1)
生理食塩水
•
•
上記特徴に加え,pH,ionic strength,浸透圧が等しいため,血漿・血清
の代替マトリックスとして用いられることが多いref1)
緩衝液では緩衝能が見込まれる
•
非極性で水への溶解度が低い化合物に適している
PBS,リン酸緩衝液
有機溶媒(MeOH等)
Pros
•
•
•
Cons
容易・安価・安定的に入手が可能
組成が既知であるため,定量に影響する因
子を特定しやすい
ロット間差が小さく再現性が得られやすい
!マトリックス効果や回収率等が実試料と大きく
異なる可能性がある
!PBS等不揮発性添加物の使用時にはMS汚染
に注意する必要がある
!高回収率の前処理法が望ましいref1)
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調製や入手が容易で単純な組成のものを選択する
第一選択の妥当性に問題がある場合,除去マトリックス,または第一選択の課題に対応した添加物あるいは分析条
件等の変更を検討する.
Ref1) Quantitative determination of endogenous compounds in biological samples using chromatographic techniques, Nico C., Trends in Analytical Chemistry (2008)
27 (10), 924-933
th
7 JBF Symposium, DG2015-15
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第一選択肢以外のマトリックス-1/2
調製法
個別留意点
分解 化学的分解
!分解物(酸化物)が再変換する等で,測定を妨害する可能性有
!実際の測定操作時には反応を止める措置が必要
例:インキュベーション,UV照射
酵素消化
例:エステラーゼ,ラクトナーゼ
除去 アフィニティー処理
!化学的分解と同じく,実際の測定操作時には反応を止める措置
が必要
!選択性は高いが,経費が掛かり労力も大きい
(抗分析対象物質抗体による)
Pros
活性炭処理
!完全には除去できないことが多く,除去できない物質も有
!活性炭を完全に除去できないと,測定に大きな影響が出る
!他の成分も除去されるため,実マトリックスの組成に近いとは言
えない
透析
!透析膜のポアサイズ以下の分子は除去される
!特異的ではない,時間がかかる,完全に除去できない
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除去マトリックスref1)
Cons
実マトリックスとの類似性が高い結果,マ !ロット間差が大きいref1)
トリックス効果や回収率等が実マトリック !十分低値なものを安定的に入手できないことが多い
スと近いことが期待される
!除去方法の検討にリソースを要する
7th JBF Symposium, DG2015-15
Ref1) Nico C., Trends in Analytical Chemistry (2008) 27 (10), 924-933
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第一選択肢以外のマトリックス-2/2
非生体マトリックス
期待される効果
具体例
Synthetic CSF, synthetic urine,
SeraSub, UriSub ref1)
市販の代替マトリックス
第一選択にタンパク質を添加
安定性(化学反応),溶解性, アルブミン
吸着の改善
第一選択をpH調整
安定性(加水分解),回収率
の改善
第一選択に抗酸化剤等を添加
安定性(酸化)の改善
アスコルビン酸
Ref1) Nico C., Trends in Analytical Chemistry (2008) 27 (10), 924-933
その他
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例
・内因性物質濃度が低い異動物種の同一マトリックス
・内因性物質濃度が低い別組織のマトリックス
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30
Japan Bioanalysis Forum
A)
代替マトリックスと実マトリックスにおける相違
1.マトリックス効果が実マトリックスと異なる
2.分析対象物質の溶解性が実マトリックスと異なる.
3.容器等への吸着が実マトリックスと異なる
4.代替マトリックス中で分析対象物質が分解する.
<対応策>
① 代替マトリックスの変更(ポスターNo.32)
② 代替マトリックス以外での対策(ポスターNo.33)
B)
代替マトリックス固有の課題
 代替マトリックスで選択性が得られない.
 実マトリックスから分析対象物質を除去して代替マトリックスを調製する際に
分析対象物質を除去しきれない.
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代替マトリックス選択時に生じる課題
<対応策>
③ 選択性・内因性除去の対策(ポスターNo.34)
7th JBF Symposium, DG2015-15
31
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対応策① 代替マトリックスの変更
単純な組成の第一選択肢の推奨代替マトリックス(ポスターNo.28参照)で課題が生
じた場合,以下を参考に代替マトリックスを変更する
第一選択肢で課題となった項目
マトリックス
効果
溶解性
吸着
安定性
○
○
○
○
○
○
○
○
○
分解(化学的分解,酵素消化)
除去マトリックス
除去(活性炭処理,透析,ア
フィニティー処理)
市販の代替マトリックス
アルブミン添加
第一選択肢の
代替マトリックスを
用いて調製
○
有機溶媒添加
抗酸化剤添加
○
pH調整
○
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第一選択肢以外の
代替マトリックスの種類/調製法
○:課題解決が期待される代替マトリックスを示す
留意点 ・代替マトリックス変更時はポスターNo.29,30を参照
・代替マトリックスでのみ高濃度側で検量線の直線性が得られない場合は溶解性を疑う
参考情報 ・低濃度側でのみ検量線の直線性が得られない場合は吸着を疑う
7th JBF Symposium, DG2015-15
32
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対応策② 代替マトリックス以外での対策
対策
内標準物質に安定同位体標識体を使用
MSイオン化法の再検討
LC分離条件の再検討
前処理法の再検討
内標準物質に安定同位体標識体を使用*
生体温度(37度程度)に加温し,溶解度を実マトリックスに
近づける
• 内標準物質に安定同位体標識体を使用*
• 材質を考慮し容器や器具を変更
• 界面活性剤添加
•
•
マトリックス効果
•
•
•
溶解性
•
吸着
安定性
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課題
• 低温・遮光下など化学反応が起こりにくい条件下で取り扱
う
*: 安定同位体標識体は非標識体(内因性化合物)と溶液中の挙動がほとんど同じであると考えられるため、
溶解性や吸着の補正が可能なケースがあると考えられる
7th JBF Symposium, DG2015-15
33
Japan Bioanalysis Forum
対応策③ 選択性・内因性除去の対策
① 他の課題解決のために変更した代替マトリックスで選択性が得られ
ない.
② 実マトリックスから内因性物質を除去して代替マトリックス(除去マト
リックス)を調製する際に内因性物質が除去しきれない.
<①の対応策>
• 選択性に影響を与える添加剤を変更する
⇒比較的シンプルな組成のため,夾雑物の影響を受けにくい.
• マトリックス変更以外の対応(前処理法・分析法を改良し,選択性を改善)
⇒対応の方法・選択肢が複数あり,代替マトリックスの変更と共に要検討となる.
<①・②の対応策>
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• 推奨のシンプルな組成の代替マトリックスでは夾雑物が少ないが…
複雑な組成の代替マトリックスでは夾雑物・内因性の影響が大きくなる
• 市販の代替マトリックスを選択する
⇒比較的実マトリックスに近い性質を持っている.内因性を除去しきれない際に
有用.背景データを得られることが多い.一方,製品の種類が多く比較検討には
コストがかかる.
7th JBF Symposium, DG2015-15
34
代替マトリックスの妥当性評価
How to verify “alternative
matrix”
7th JBF Symposium, DG2015-15
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Japan Bioanalysis Forum
35
Japan Bioanalysis Forum
代替マトリックスの妥当性評価
評価項目
概要
希釈平行性:内因性物質を含む実マトリックスを多段階で
希釈平行性 希釈し,希釈率補正後の濃度の精度を評価する.
希釈直線性:リコンビナント蛋白質を添加した実マトリックス
希釈直線性
を多段階で希釈し,希釈率補正後の濃度の真度・精度を評
価する.
LBA
LC/MS
選択性
複数の個体別実マトリックスにリコンビナント蛋白質を添加
して調製したQC試料の真度を評価する.
※内因性物質のリコンビナント蛋白質を投与したときのPK
測定法に限る
真度・精度
代替マトリックスで検量線を作成し,実マトリックスにリコン
ビナント蛋白質/標準物質を添加して調製したQC試料の真
度・精度を評価する.
真度・精度
同上
もしくは
傾き *)
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測定手法
代替マトリックス及び実マトリックスで検量線を作成し,傾き
を評価する.
*) 本DGにて妥当な評価法であるかを検証した結果,推奨しない項目とした(ポスターNo.51~56)
7th JBF Symposium, DG2015-15
36
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:希釈平行性(LBA)
マトリックスの近似
によりMRDが低減
シグナル強度
希釈平行
性が担保
されている
領域
↓
この領域で
の試料測
定が必要
(希釈なし)
実マトリックス(内因性物質)の反応曲線
マトリックス効果の近似を志向したアプローチ
マトリックス効果の低減を志向したアプローチ
*: マトリックス効果の低減を志向したアプローチの
場合,MRD用希釈液と代替マトリックスは同じ組成
を使用するケースが多い.
MRD用希釈液*で希釈
1
検量線(代替マトリックスに標準物質を添加し
て調製)の反応曲線
http://bioanalysisforum.jp/
検量線(代替マトリックスに標準物質を添加して調製)と実試料(内因性物質を含む実マ
トリックス)では反応曲線の傾きが異なるケースが多い.従って,実マトリックスと代替マ
トリックスの間のマトリックス効果を近似又は低減させることにより,両者の反応曲線の
傾きを一致(≒希釈平行性を担保)させる必要がある.
MRDth
希釈倍率
7 JBF Symposium, DG2015-15
37
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:希釈平行性(LBA)
目的:内因性物質投与時のPK *
評価
対象
評価方法,基準
備考
BMVガイドラインに
 ガイドラインでは希釈平行性は
希釈 リコンビナント 準拠
必須の評価項目とされてはいな
直線性
蛋白質
真度:±20%以内
いが,実試料の測定値の妥当性
精度:20%以下
を科学的に判断する上では,評
 3段階以上の希釈
価することが望まれる.
倍率で希釈した試  薬剤投与前の内因性物質レベ
ルが低値(定量下限未満)の場合
料を測定
希釈
は,希釈平行性は評価できない.
内因性物質  希釈倍率で補正し
平行性
た測定値の精度を  個体間差の把握のため,複数
ロットの実マトリックスで希釈平
評価
行性を検討することは有用.
 精度が20%以下
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評価
項目
*: 内因性物質のリコンビナント蛋白質を投与するケースを想定
7th JBF Symposium, DG2015-15
38
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:希釈平行性(LBA)
目的:薬剤投与時のバイオマーカー
評価
対象
評価方法,基準
備考
 薬剤投与前の内因性物質レベ
ルが低値で希釈平行性を評価
できない場合は,バリデーション
試験まではリコンビナント蛋白質
 内因性物質投与時
を用いた希釈直線性の評価を推
のPKと同じ評価法
奨(内因性物質とリコンビナント
希釈
蛋白質の同等性は不明である
内因性物質  精度の基準はFit点に留意).内因性物質レベル
平行性
for-purpose
が高値の実試料などを入手した
(目安としては精度が20
時点で,希釈平行性の追加検討
~25%以下)
が望まれる.
 個体間差の把握のため,複数
ロットの実マトリックスで希釈平
行性を検討することは有用.
7th JBF Symposium, DG2015-15
http://bioanalysisforum.jp/
評価
項目
39
Japan Bioanalysis Forum
•
•
•
内因性物質のリコンビナント蛋白質を投与したときのPK測定法に限る
選択性試料の調製方法
 実マトリックスにリコンビナント蛋白質を添加
(通常のQC試料調製と同様の手法)
 除去マトリックスにリコンビナント蛋白質を添加
 代替マトリックスにて実マトリックスを希釈し(希釈平行性が確認で
きている範囲内が望ましい),内因性物質濃度が低値となるマトリ
ックスを調製後,リコンビナント蛋白質を添加
評価基準,評価n数: BMVガイドラインに準拠
7th JBF Symposium, DG2015-15
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妥当性評価:選択性(LBA)
40
Japan Bioanalysis Forum
補足:選択性 -LC/MSとの評価内容の違い-
測定手法
一般的な評価内容/方法
LBA
• ”マトリックス効果”を評価する.
• 個体別実マトリックスを用いて調製した定量下限付近のQC 試料の
80%以上の真度が±20%以内(LLOQの場合は±25%)を確認する.リ
コンビナント蛋白質を添加しない個体別実マトリックスの80%以上が
定量下限未満であることを確認する.
LC/MS
• ”妨害ピーク” を評価する.
• 標準物質を添加しない個体別実マトリックスで妨害ピークがLLOQの
20%以下であることを確認する.
• ”マトリックス効果”は別途評価する.
http://bioanalysisforum.jp/
ガイドライン*の記載
「試料中の他の成分の存在下で,分析対象物質(及び内標準物質)を区別して検出する
ことができる能力のことである.」
(内標準物質はLC/MSのみ記載)
*医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法のバリデーションに関するガイドライン(薬食審査
発0711 第1号 平成25年7月11日)
医薬品開発における生体試料中薬物濃度分析法(リガンド結合法)のバリデーションに関するガイド
ライン(薬食審査発0401第1号,平成26年4月1日)
7th JBF Symposium, DG2015-15
41
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:真度・精度(LBA及びLC/MS)
ULOQは評価対象外と考えた
• 実マトリックスで調製する場合,Total濃度(内因性物質濃度
+ULOQ)が定量範囲を超えると予想されるため
測定目的
PK
実試料中
分析対象物質
内因性物質
+投与リコンビナント蛋白
質/標準物質
Biomarker 内因性物質
基準
BMVガイドラインに準拠
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LLOQ, LQC, MQC, HQCを評価
Fit for purpose
(測定目的に応じて設定する)
7th JBF Symposium, DG2015-15
42
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:真度・精度(LBA及びLC/MS)
以下の情報を参考に,測定目的に応じて設定する
• 事前に測定した実マトリックス中内因性物質濃度
• 文献などの公知情報
• (臨床測定法開発が目的の場合)非臨床の情報
• 精度については,把握したい変動レベル幅
(元のレベルの何%又は何倍まで測定したいなど)
• PKのガイドライン基準
7th JBF Symposium, DG2015-15
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Biomarker測定での基準設定(Fit for purpose)
43
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:真度・精度(LBA及びLC/MS)
実マトリックス中の内因性物質濃度に応じて以下が使用可能(1つ~複数併用)
1. 実マトリックス(プール検体が望ましい)*1に標準物質*2を添
QC試料濃度
加する(通常のQC試料調製と同様の手法)
(高濃度QC)
*1 プールする個体数は入手可能な数に依存
*2 LBAの場合はリコンビナント蛋白質のこと.以下同じ
実マトリックス中
内因性物質濃度
2.
3.
QC試料濃度
(低濃度QC)
4.
代替マトリックスあるいは除去マトリックスに標準物質を添
加する.
代替マトリックスにて実マトリックスを希釈し,実マトリックス
中の内因性物質濃度が低濃度となるマトリックスを調製後,
標準物質を添加する.
代替マトリックスにて実マトリックスを希釈し,実マトリックス
中の内因性物質濃度がQC試料濃度付近となるよう調製
する.
http://bioanalysisforum.jp/
QC試料の調製方法
(4はLBAのBiomarkerの場合.内因性物質で評価できる方法.ただ
し希釈平行性が確認できている範囲内で実施するのが望ましい.)
7th JBF Symposium, DG2015-15
44
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:真度・精度(LBA及びLC/MS)
QC濃度
A
B
C
D
HQC
1
1
1
4
MQC
1
1
1
-
LQC
1
2
3
4
LLOQ
1
2
3
-
実マトリックス中内因性物質濃度
調製方法
1. 実マトリックスに標準物質を添加
2. 代替マトリックス/除去マトリックスに標
準物質を添加
3. 内因性物質が低濃度となるまで代替マ
トリックスで希釈した実マトリックスに標
準物質を添加
4. 実マトリックス中の内因性物質濃度が
QC試料濃度付近となるよう代替マトリッ
クスで希釈(標準物質は添加しない)
http://bioanalysisforum.jp/
QC試料の調製方法:組み合わせ例
<QC試料濃度と実マトリックス中濃度の関係>
A<LLOQ<LQC<MQC<HQC
LLOQ<LQC<B, C<MQC<HQC
LLOQ<LQC<MQC<HQC<D (LBAのBiomarkerのケース)
7th JBF Symposium, DG2015-15
45
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:真度の算出法(LBA及びLC/MS)
Total濃度に対して算出
標準物質添加試料中濃度
内因性物質濃度+標準物質添加濃度
×100
又は
添加濃度に対して算出
真度(%)=
標準物質添加試料中濃度-内因性物質濃度
標準物質添加濃度
×100
DGでの意見
 内因性物質濃度と添加濃度のバランスから適切な評価方法を判断すべき.
 LBAではリコンビナント蛋白質は内因性物質とは異なるためTotal濃度での評価に違
和感がある.
 LLOQと内因性物質濃度の関係に応じ変更している.
 いずれも内因性物質濃度を算出するのであれば同じではないか.
 真度の定義とは「真値との隔たり」であるため,内因性物質濃度が未知の段階では
添加濃度にて評価するべきでは.
7th JBF Symposium, DG2015-15
http://bioanalysisforum.jp/
真度(%)=
46
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:真度算出法の相違点(LBA及びLC/MS)

Total
濃度




添加
濃度


内因性物質濃度を含んだ実際の濃度での真度を評価している.
基準を満たしやすい(評価が緩い)
添加濃度分の真度を評価できていない.
添加濃度を正確に定量できていない場合でも,判定基準を満たす場合があ
る.
内因性物質濃度に対して添加濃度が低い場合*,添加分による変動を評価
しにくい.
添加分(理論値)に対する真度を評価している.
基準を満たしにくい,よりシビアな評価が可能.
http://bioanalysisforum.jp/

内因性物質濃度に対して添加濃度が低い場合*,添加分による変動を評価
しにくい.
*本DGでは内因性物質低値の実マトリックス、代替マトリックス、除去マトリックスでの調製を推奨
7th JBF Symposium, DG2015-15
47
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:真度の算出法
2016年3月10日 JBFシンポジウム当日に意見徴収を実施
<全14件>
<Total濃度算出>
<添加濃度算出>
LBA;0件
LC/MS;5件
LBA;1件
LC/MS;3件
7th JBF Symposium, DG2015-15
<両方で評価>
または
<使い分け>
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真度の評価はTotal濃度 or 添加濃度どちらで実施すべきと考えますか?
LBA;4件
LC/MS;1件
48
Japan Bioanalysis Forum
内因性物質の真値の確認法(LC/MS)
実マトリックスに含まれている内因性物質濃度が真の値であるかを
どのように確認するか.
を評価することにより,真値としての妥当性を担保できる.
選択性の評価方法
実施が望まれる評価方法
① 複数のMRMでモニターし,内因性物質のピークを標準物質と比較.
② HPLC条件を大幅に変更し,内因性物質のピークが単一であるかを確認.
(複数のプロダクトイオンが得られない場合)
③ 異性体等の類縁物質の標準物質がある場合は,分析対象物質との分
離を確認.
④ 精密質量分析計にて内因性物質のピークを標準物質と比較.
⑤ 誘導体化し,内因性物質と標準物質で同じ挙動を示すか確認.
⑥ LC-UV,FLRまたはLBA を用いてLC-MS/MS法と比較.
http://bioanalysisforum.jp/
① 真度・精度が判定基準を満たすこと
② 選択性に問題がないこと
【引用文献】Jian W, Bioanalysis (2012), 4 (20), 2431-34
7th JBF Symposium, DG2015-15
49
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:傾き(LC/MS)
評価手法
概要
見た目
明らかに傾きが異なる
(定性的評価) か否か.
課題
簡単に判断が可能である一方,
私見が入るため,定量的な評価
手法ではない.
定量的な判断が可能であるが,
各マトリックスに対し傾き
統計処理
判断基準として採用した場合,
を算出し,95%信頼区間
(定量的評価) を算出.
基準として往々にして厳しくなり,
現実的でない.
直線性
見た目および直線性を
評価し,厳密な傾きを重
視しない.
http://bioanalysisforum.jp/
妥当性評価として,「傾き」は,明確な評価手法が定められていないため,
DGとして評価案を考察した.
定性的および定量的評価の組
み合わせだが,受け入れられる
判断基準となるか不明.
7th JBF Symposium, DG2015-15
50
Japan Bioanalysis Forum
判断基準(異ならないと判断出来る基準)
実マトリックスによる検量線の信頼区間と代替マト
リックスによる検量線の信頼区間が交わるかどう
か
イメージ図
1)代替マトリックスは妥当ではない
引用論文
Jones BR, Bioanalysis (2012)
4 (19), 2343-56
実マトリックス
信頼区間
代替マトリックス
信頼区間
2)代替マトリックスは妥当
実マトリックス
信頼区間
7th JBF Symposium, DG2015-15
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妥当性評価:傾き(LC/MS) -判断基準例-
代替マトリックス
信頼区間
51
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:傾き(LC/MS) -検討事例検討事例
引用論文
Jones BR, Bioanalysis
(2012) 4 (19), 2343-56
http://bioanalysisforum.jp/
1. 各マトリックスで検量線を作成する際,
各時点を複数濃度で算出して評価
(検量線作成による検討)
2. QC&真度の判断基準を参考にして,
低濃度±15%(LLOQではない)および
高濃度±15%(ULOQ)ずれた場合の傾
きの変動を評価
(QC試料作製による傾き評価)
(使用した統計処理方法)
傾きと切片の推定 : 線形回帰分析(最小二乗法)
傾きの信頼区間:傾きの標準誤差「SEb」, 棄却限界値「t(φR, α)SEb」
100(1-α)%信頼区間: 下限βL = β – t(φR, α)SEb, 上限βu = β+t(φR, α)Seb
自由度:φR,有意水準:α
7th JBF Symposium, DG2015-15
52
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:傾き(LC/MS) -検討事例1 検量線作成による傾き評価
3500
STD
0.4
0.8
4
20
100
500
2500
実測値
0.39
0.84
3.87
19.57
99.48
498.97
2576.59
計算値
0.31
0.47
0.71
0.97
3.29
4.45
16.63
22.51
84.56
114.40
424.12
573.82
2190.10 2963.08
95%信頼区間による算出
傾き:1.03
信頼区間:0.96~1.099
y
3000
期待値
2500
信頼上限
2000
±20%
±15%
±15%
±15%
±15%
±15%
±15%
1500
信頼下限
1000
500
0
0
1000
2000
3000
理論値
-500
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ある化合物の実測値と共に,実測値より
計算した値(±20,±15%)を同時にプロット
して解析(各濃度N=3)
信頼区間(幅 0.139)は
広くはないと考えられる
7th JBF Symposium, DG2015-15
53
Japan Bioanalysis Forum
妥当性評価:傾き(LC/MS) -検討事例2QC試料作製による傾き評価
QC
実測値
基準値からのずれ
0.8
0.71
85%
100%
20
19.57
115%
2500 2963.08
95%信頼区間による算出
傾き:1.186
信頼区間:1.169~1.203
3500
二つの条件を重ねると
3000
2500
2000
3500
1500
3000
1000
2500
500
2000
0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
1500
-500
1000
500
赤線(低濃度115%,上限値 85%)
QC
実測値
基準値からのずれ
0.8
0.966
115%
20
19.57
100%
2500 2190.102
85%
95%信頼区間による算出
傾き:0.876
信頼区間:0.868~0.884
0
3500
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
-500
3000
各条件の信頼区
間は交わらない.
2500
2000
1500
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黒線(低濃度 85%,上限値 115%)
1000
黒
500
0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
-500
7th JBF Symposium, DG2015-15
赤
1.169~1.203 0.868~0.884
54
Japan Bioanalysis Forum
• 定性的評価および定量的評価を判断基準として考察した
場合,定量的評価を第一選択として考えたが,定量的評価
の手段である統計的処理は,判断基準として厳しくなること
が示唆された.
• 既にガイドラインが存在する投薬によるPK測定のバリデー
ション基準でも,傾きは判断基準として求められていないこ
と,QC試料の判断基準である±15%基準より厳しい評価方
法になることから,現実的な評価方法でないと考える.
http://bioanalysisforum.jp/
妥当性評価:傾き(LC/MS) -まとめ&考察-
• 本DGの結論としては,傾きによる評価は現実的ではなく,
真度・精度での評価を推奨する.
7th JBF Symposium, DG2015-15
55
代替マトリックス選択に関す
るLBAとLC/MSの相違点
① 吸着
② マトリックス効果
③ 前処理
7th JBF Symposium, DG2015-15
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Japan Bioanalysis Forum
56
Japan Bioanalysis Forum
LBA
 容器等への吸着に配慮が必要であり,一般的には代替マトリックス
中に少量の蛋白質(CaseinやBSA),界面活性剤を含めることで吸着
を防止する.
<低分子・高分子共通>
 容器等への吸着に加え,分析装置やカラムへの吸着に対しても配慮
が必要である.
<高分子>
 検量線/QC試料の調製時(リコンビナント蛋白質を使用)は,代替マ
LC/MS
トリックス中に少量の蛋白質(caseinやBSA),界面活性剤,安定同
位体IS,等々を含めることで吸着を防止する.
(一方,前処理時は分析対象物質以外の不要な蛋白質の除去が必要
であり,代替マトリックス中の蛋白質の種類と量には配慮が必要で
ある.)
7th JBF Symposium, DG2015-15
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LBAとLC/MSの相違点① 吸着
57
Japan Bioanalysis Forum
LBA
 代替マトリックスと実マトリックスでマトリックス効果が乖離し,
分析対象物質の反応性に大きな違いが認められる場合がある.従っ
て,試料をMRD用希釈液を用いてMRDまで希釈することで,マト
リックス効果を測定上問題ないレベルまで減弱させる必要がある.
<低分子・高分子共通>
 マトリックス効果を回避する方法が多く,代替マトリックス選択に
関する自由度が高い.
LC/MS
具体例
 ISに安定同位体を使用し,マトリックス効果を補正する.
 前処理により影響因子を除去する.
 LC条件の変更や誘導体化により,分析対象物質と影響因子を分離す
る.
 MS条件を変更する(イオン化法あるいはMSの機種の変更など).
7th JBF Symposium, DG2015-15
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LBAとLC/MSの相違点② マトリックス効果
58
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LBAとLC/MSの相違点③ 前処理
 一般的に前処理*を検討しない.
<低分子・高分子共通>
 前処理方法を工夫することにより,夾雑成分を除去することが可能
である.
LC/MS <高分子>
 分析対象の蛋白質の抽出(除蛋白,固相抽出,抗分析対象物質抗体
によるアフィニティ処理等)や酵素消化(trypsin,Lys-C等)におけ
る効率/収率(マトリックス効果)が代替マトリックスと実マトリック
スで同等であることの担保が必要である.
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LBA
*: 本DGでは,MRD用希釈液による試料の希釈操作や測定プレート上で行う各種処理は
前処理には含まれないものと定義した.
7th JBF Symposium, DG2015-15
59