週刊原油

週刊原油
世界の原油情報がここに凝縮されています。
毎週木曜日午後発行
NY原油大幅反落
発行日
:
2017/2/9
2月8日のNY原油3月限は+0.17ドル高の52.34ドル。米石油協会(API)統計での原油在庫急増を受け、夜間取引開
始とともに期近はほぼ3週間ぶりの水準へ下落したが、短期的な売られすぎ感が広がるなか、米エネルギー情報局
(EIA)統計でのガソリン在庫の予想外の減少を受け、プラスサイドへと切り返した。夜間取引開始後に51.22ドルと期
近ベースで1月19日以来の水準へ下落。API統計で原油在庫が急増したことに反応した。ドル高進行も一因となるも、今
週に入って5%近く下げており、その後は短期的な売られすぎ感からの修正へと転じ下げ幅を縮小した。立会い開始後は、
米東部時間午前10時30分に発表されたEIA統計でも原油在庫が予想以上に急増し、受渡場所となるオクラホマ州クッシ
ング原油在庫が5週ぶりに増加に転じたものの、夜間取引の安値を試すような動きは強まらず。一方で、過去最高水準を
更新するとの予想に反してガソリン在庫が減少したことを受け、改質ガソリン相場が急反発したことに追随し、中盤に入
ると52.67ドルまで切り返した。ただし、原油在庫は昨年5月以来の高水準にあり、その後は戻り一服となった。
石油製品は、ヒーティングオイルが反発、改質ガソリンは期近が急反発。API統計での在庫増加を受け、夜間取引では
期近ベースでヒーティングオイル3月限が1週間ぶり、改質ガソリン3月限は昨年11月30日以来の水準へ値を沈めた。立
会い開始後はEIA統計でのガソリン在庫の予想外の減少や、前週に2014年以来の水準まで落ち込んだガソリン需要が平
年水準に回復したことなどに反応し、安値修正へと転じた。
ブレント原油4月限は反発。米市場に追随する格好となり、この日の取引開始直後に54.44ドルと期近ベースで1月20
日以来の水準へ一段と下落するも、その後は下げ渋ると、EIA統計発表後は一変し、一時、55.68ドルまで急回復した。
EIA発表の2月3日までの週の米石油統計での在庫は以下の通り。
前週比 原油 5億0859万2000バレル 1383万バレル増加・クッシング 6527万バレル 114万3000バレル増加・
ガソリン 2億5621万7000バレル 86万9000バレル減少・留出油 1億7074万6000バレル 2万9000バレル増加
今日の材料・API、原油在庫は前週比1420万バレル増・クッシング原油在庫は前週比62万バレル増・ガソリン在庫は前
週比290万バレル増・留出油在庫は前週比137万バレル増・EIA、中西部の原油在庫は前週比173万4000バレル増・
メキシコ湾岸の原油在庫は前週比1091万3000バレル増」 西海岸の原油在庫は前週比62万8000バレル増・原油生産
は日量897万8000バレル、前週比0.7%増・原油輸入は日量937万2000バレル、前週比13.1%増・石油精製は日量
1589万3000バレル、前週比0.3%減
製油所稼働率は87.7%、前週比0.5%低下・ガソリン需要は日量894万1000バレル、前週比7.6%増・留出油需要は
日量391万バレル、前週比2.7%増(日本先物情報ネットワーク)
EIA
Short Term Energy Outlook 2月号
Highlight
2016年の在庫積み増しは+80万バレル、17年は▲10万バレル、18年は+20万バレル
世界の石油在庫は2016年日量+80万バレル増加したと見られる。EIAは需給は引き締まり、2017年は▲10万バレル
の在庫の引き出し、2018年は+20万バレルの積み増しと見ている。1月の予想より在庫積み増し量は下方修正されてい
る。これは需要が思ったより良いことが挙げられる。
過去の非OECD諸国の需要を見直した
図1
※ EIAは世界の2013年~14年のエネルギー利用を見直し、
データを最新に書き換えた。最も大きな変化は中国とその他非
OECD諸国の需要であり、ことにアフリカ地域は変わっている。
中国のメタノール利用の分析が進み、中国など非OECD諸国の、
その他の石油製品需要も明確になった。ことに基準としている
2014年の石油製品需要が上方修正された。
非OECD諸国における2013年~16年の
その他非OECD諸
アフリカ
中国中国
その他
メタノー
石油製品
2月の短期需給予測(STEO)では、2015年の石油在庫の積
み上げは平均+180万バレル、2016年は+80万バレルとした。
これは1月の予想よりそれぞれ▲20万、▲10万バレル下方修正
されている。EIAは2017年の在庫積み上げは横這いとなり、ほ
ぼ需給は均衡すると見ており、2018年には米国の生産増により、
再び在庫が増加すると見ている。この結果2017年の世界の石油
在庫は▲10万バレル減、2018年は+20万バレル増となると見
ている。
中国のメタノール関連製品の需要を上方修正した
※ EIAは中国のエネルギー利用について再調査を完了した。
これによると、中国の石油精製製品市場や分野別のエネルギー
消費がより良くわかるようになった。エネルギーの分野別分析
により過去の輸送用燃料としての石油消費データは過少評価さ
れていることが分かった。これはメタノールとその派生商品の
需要が正確にカウントされていなかったためと思われる。これ
らはガソリンに混合されLPGにも添加されている。その結果、
EIAが指名したArgus Media Groupはメタノールとその派生
商品の中国における用途を掌握することができた。この調査に
よりEIAの中国における石油需要の数値は上方修正されること
となった。
図2
中国のメタノール消費量(2006年~
ガソリンにメタノール
を 直接ブレンドする
ガソリン用メタノール
派生商品
メタノールの石油燃料
のとしてその他の用途
中国のメタノールあるいはその派生製品のガソリン混合は
2000年から始まっており2016年には日量50万バレルに達し
ている。オクタン価を上げるためのMethyl Tertiary butyl
ether(MTBE)更に、Dimethly ether(DME)、その他のメ
タノール派生商品、は中国国内のLPGタンク市場において安価
な代替品としてLPGにもブレンドされている。こうしたメタ
ノールとその派生商品の増加している用途を加えると、中国の
石油消費量は大きく上方修正されることになる。
EIAが中国のメタノールの供給量や消費量を変更したことでも、世界の石油在庫の動向には大きな変化はない。それ
は大半のメタノールの供給は中国では国内の石炭を原料としているためであり、天然ガスやコーキングガスは材料にな
る割合が少ない。中国のメタノールの少しの部分しか輸入されてはいない。
その他の変化
中国のメタノール需要を最新化した以外では、EIAは中国とアフリカにおける2013年と14年の消費量を上方修正し
た。これあの国の石油精製製品の市場と需要のデータをより正確に収集した。メタノール需要も含めて、2014年の世
界の石油消費量は以前の見積もりに比べて+100万バレル上方修正された。
中国については、EIAは石油消費量を2013年~14年について+21万バレル上方修正した。これはメタノールの修
正と共に、2016年に発刊された中国エネルギー統計年鑑2014等いくつかのソースからのデータを合わせて変更を加
えたものである。
アフリカについては、EIAは2013年~14年の需要を+23万バレル上方修正した。中国の修正以外ではアフリカが
大半を占める。2015年~16年に発刊された国際連合2013-14年鑑等を参考とした。
中国のメタノール需要の上方修正や、アフリカの需要の上方修正に見合う供給増はないことから、2013年~14年の
世界の石油需給は以前の予想よりもタイトになっている。そのため、2015年~16年にかけての世界の在庫積み増しは
以前よりも下方修正される。
最後にEIAは中国とサウジアラビアには季節的な需要の変動がある。このため、世界の在庫もこれらの国の季節要因
により変動することが認められる。ただその割合は小さい。他の国の需要の季節変動についても今後のSTOEで検証し
たい。
米国の原油生産量は2016年は日量890万バレル、17年は900万バレル、
2018年は950万バレル
北海ブレント原油価格は1月は12月から+1ドル高の55ドル、前年同期比+24ドル高、
2015年7月以来の水準
EIAは2017年の北海ブレント原油価格を平均55ドル、18年を57ドルと想定する。
WTIはブレント価格から▲1ドル安。
2月2日までの5営業日のNYMEX先物価格の17年4月限の95%確率範囲は、45ドル〜65ドル
米国のガソリン小売価格は2017年1月は2.35ドルだったが、2月は2.27ドル、3月は2.33ドルに上昇す
ると予想。
2017年平均は2.39ドル、2018年は2.44ドル。
WTI原油価格予測
米国ガソリン価格と原油価格予測
原油価格と世界の原油需給
原油価格期近限月の先物価格
1月の世界の原油価格は最近の動きに比べては、狭
い範囲で取引されていた。ブレント原油価格は1月3日
ブレント原油価
から2月の56.56ドルまで+1.09ドル上昇しただけで
あった。WTIは52.54ドルまで+1.21ドルだった。ブ
レントとWTIはどちらも12月の平均から約1ドル高
だった。OPOEC諸国と非OPEC諸国による生産が伸
びていないことが要因だった。OPECから2か国、非
WTI原油価
OPECから1カ国で構成されるJoint Ministerial
Monitoring Committee(大臣級共同モニター委員
会:JMMC)は1月22日会合を開き、日量180万バレ
ルの減産が行われていることを確認し、11月と12月
に取り決められた減産シェアを確認した。JMMCは毎
月産油国各国の生産状況を更新し、協定した減産量に
到達するかを見届ける計画である。こうした産油国か
らの生産データの報告以外にも、タンカーの動きの
データ等で中近東からアジアの顧客向けに輸出される
石油量の減少を確認する。2017年は2016年より石
油製品消費量の伸びが早いと予測され、ここ数年続い
た供給過剰状態はバランスすることに近づくと見られ
ている。
原油需要の上方修正と需給
上述のように、中国等の2013年~14年の需要量が見直され、2016年の中国の需要と供給はそれぞれ+70万バレル、
+40万バレル上方修正された。またその他の非OECD諸国の需要も見直されてた。こうした改定により、原油需給は以
前よりタイトな状況になっていると見込まれる。EIAは世界の原油在庫が2016年は前回の予想より▲90万バレル少ない
+80万バレルの増加に修正している。そして2017年と18年の世界の原油需給はほぼバランスすると見ている。石油在
庫は17年は▲10万バレル、18年は+20万バレルと見ている。これは前回の予想ではどちらも増加であり、減少に転じ
るのは第3四半期以降と予測していた。
しかし、こうした需給のタイト化の影響は価格にはそれほど影響しないと見ている。現在の価格水準がバランスしたも
のであり、米国とOPECの生産が2017年と18年には増加する需要に見合うように生産も増加すると見ている。従って
ブレント原油価格は2017年は55ドル、18年は57ドルと需給がバランスするとの見方で価格は安定すると見ている。
12月の原油価格のボラティリティーは減少し1月もそれが継続している。ブレント原油価格の変動幅は2014年5月以
来の狭いレンジに留まり、WTIは2006年12月以来の狭い範囲での取引となった。これは売り手も買い手も50ドル台の
価格に満足していることを示している。2016年の第1四半期は+150万バレルの在庫積み増しがあったが、2017年第
1四半期は▲20万バレルの在庫引き出しとなるとEIAは見ている。
世界の原油生産量
OPECの原油供給量は2017年は日量+20万バレル、
18年は+50万バレルと見込んでいる。リビアからの最
近の生産量は、減産の対象外であるが、1月に平均70
万バレルになっており、2014年以来最も多い水準に達
している。サウジアラビアは最近減産目標を達成してい
ると公表している。1月は日量1000万バレル弱だった
と思われる。
米国の生産量は、2017年は+10万バレル増で、
2018年は+50万バレル増になるだろう。1月だけで
41リグが稼働を開始し8カ月連続の増加となっている。
年間でも2014年以来の増加となった。
月間原油価格の取引幅
ブレント原油価
WTI原油価
景気回復の兆しと原油需要
OECDは、経済成長に関するMonthly Composite
Leading Indicatorsという指標をOECDメンバー諸
国と新興諸国について公表している。これらの指標
は、その国の長期的な経済成長を表す100のイン
デックスなど各国固有のデータシリーズによって構
成されている。こうした指標はしばしばその国のビ
ジネスサイクルを6ヵ月から9カ月先行して変化のシ
グナルを発することがある。このOECDのCompsite
Leading Indicatorは
2016年6月から上昇傾向にある。これはロシアやブ
ラジル等の諸国等が今後経済活動が活発になる可能
性がある子を示唆している。
OECDのComposite Leading
NY原油に対するファンドの動き
取組高
買い残
11月1日 2,654,648枚 538,885枚
11月8日 2,819,007枚 556,021枚
11月15日 2,027,539枚 581,416枚
11月29日 2,685,652枚 567,726枚
12月6日 2,098,290枚 589,787枚
12月13日 2,952,284枚 608,230枚
12月20日 2,720,965枚 609,594枚
12月27日 2,760,088枚 614,401枚
1月3日 2,831,064枚 614,534枚
1月10日 2,868,908枚 605,808枚
1月17日 2,841,988枚 643,184枚
1月24日 2,839,256枚 652,474枚
1月31日 2,888,128枚 667,129枚
+48,872枚 +14,655枚
前週比
2か月前比 +202,476枚 +99,403枚
売り残
ネット買い残
増減
価格
132,945枚 405,940枚 ▲44,508枚
228,315枚 327,706枚 ▲78,234枚
$46.7
305,090枚 276,326枚 ▲51,380枚
$45.8
219,068枚 348,658枚 +72,332枚
$45.2
212,161枚 377,626枚 +28,968枚
$50.9
127,541枚 480,689枚 +103,063枚
$53.0
113,326枚 496,268枚 +15,579枚
$52.2
111,755枚 502,646枚
+6,378枚
$53.9
▲3,611枚
121,933枚 483,875枚 ▲15,160枚
$52.3
134,482枚 508,702枚 +24,827枚
$52.5
125,640枚 526,834枚 +18,132枚
$53.2
$45.0
115,499枚 499,035枚
$52.8
▲2,341枚 +16,996枚 ▲1,136枚
▲95,769枚 +195,172枚 ▲55,336枚
▲$0.37
+$7.58
NY原油に対するファンドの建玉
(ネット買い残と価格)相関係数0.60)
$120
$110
500,000枚
$100
$90
400,000枚
$80
$70
300,000枚
NY原油に対するファンドの建玉
(売り残と価格の相関関係▲0.78)
ネ
ッ
ト
買
い
買
残
い
残
$60
200,000枚
$50
$40
100,000枚
0枚
15年1月
15年2月
15年3月
15年4月
15年5月
15年6月
15年7月
15年8月
15年9月
15年…
15年…
15年…
16年1月
16年2月
16年3月
16年4月
16年5月
16年6月
16年7月
16年8月
16年9月
16年…
16年…
16年…
17年1月
$30
$20
逆相関性の高い売り残は現在は少な
い水準なので、何ともいえない。
$50.8
123,299枚 543,830枚 +16,996枚
600,000枚
ファンドのネット買い残は3週連続で
多くなっているが、価格との相関性は
以前よりは少し薄くなっている。
売
り
残
0枚
売り残
価格
$70.0
50,000枚
$60.0
100,000枚
$50.0
150,000枚
$40.0
200,000枚
$30.0
250,000枚
$20.0
300,000枚
$10.0
350,000枚
$0.0
15年1月
15年2月
15年3月
15年4月
15年5月
15年6月
15年7月
15年8月
15年9月
15年10月
15年11月
15年12月
16年1月
16年2月
16年3月
16年4月
16年5月
16年6月
16年7月
16年8月
16年9月
16年10月
16年11月
16年12月
17年1月
までの週
今後の予想
EIAのShort Term Energy Outlookによれば、OPECは1月に日量▲180万バレルの減産を多成し、需給は改善し
て、今年は在庫が減少するという。ただし来年にかけて米国やOPECの生産が増えて再び若干の在庫積み増しとなる
が、その間に新興諸国の景気が改善する気配があるという。それでも、現在の55ドル前後の価格水準は売り手にとって
も買い手にとっても居心地の良い水準なため、今年は55ドル来年は57ドルと小幅な上昇しか見込めないというのがEIA
の予測である。常にコンサーバティブな見方ではあるが、現状から見て原油価格が大化けして上昇する気配は見当たら
ない。EIAの言う通りか。
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買い残
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価格