GIFU ECONOMIC AND INDUSTRIAL PROMOTION CENTER パルプ・紙・紙加工品 平成27年度 担当者: 主任研究員 堀 謙司 目 次 1.紙・パルプ産業の構造・動向 2.県内の製品分野別の現状・方向性 ➢特殊紙・加工紙 ➢家庭紙 ➢ダンボール ➢紙卸商 3.ユネスコ無形文化遺産に関して 1 1.紙・パルプ産業の構造・動向 日本の製紙業の立地 近代的製紙業の立地条件 ①製紙に必要な水が豊富 ②原料の確保 が容易 (木材チップ国産材・輸入材) (古紙原料・・・都市近郊) ③港などの製品出荷の便が良い 和紙の産地から近代の製紙業が盛 んになったのは、岐阜県美濃の他、 ミツマタの産地で平安時代から和紙 の生産が盛んだった静岡県富士市、 駿河から和紙の製法が伝えられた 愛媛県四国中央市など 岐阜県美濃 愛媛県四国中央市 静岡県富士市 出所:日本製紙連合会「平成25年紙・板紙統計年報」 3 日本の紙・パルプ企業 売上高順位 上位は合併を重ねて規模を拡大 王子ホールディングス,日本製紙2社で国内シェアの約半分を占める 1兆3473億円 東京都中央区 *王子製紙…苫小牧、春日井、米子、富岡(阿南)、日南 *王子マテリア…名寄、釧路、日光、江戸川、冨 中津川、恵那、祖父江、大阪、呉、大分、佐賀 *東海森紙業…岐阜(大野町) 岐阜(大野町) *中津紙工 東証1部 士、松本、中津川、恵那 中津川、恵那 …中津川 *冨士化工…瑞穂市 瑞穂市他関連会社などで多数あり …中津川 瑞穂市 1 王子ホールディングス 2 日本製紙グループ本社 3 レンゴー 5,226億円 大阪市北区 恵那 *レンゴー…東京、三田、名古屋、湘南、利根川、八潮、仙台、福島 *共栄段ボール…下伊那郡、恵那 *トーカンパッケージ…瑞穂 瑞穂、安城他関連会社などで多数あり 瑞穂 東証1部 4 5 6 7 大王製紙 北越紀州製紙 三菱製紙 トーモク 4,502億円 2,284億円 2,149億円 1,485億円 伊予三島、可児 可児 新潟、長岡、関東、紀州、大阪 高砂、京都、八戸 館林、岩槻、札幌、厚木、大阪 東証1部 東証1部 東証1部 東証1部 8 9 10 中越パルプ工業 ザ・パック 特種東海製紙 1,011億円 高岡市、東京都中央区 858億円 大阪市東成区 788億円 東京都中央区 川内、高岡 大阪、奈良、東京、茨城 岐阜、横井(島田) 島田、三島、岐阜 岐阜 東証1部 東証1部 東証1部 11 12 13 14 丸住製紙 ダイナパック スーパーバッグ 巴川製紙所 630億円 468億円 353億円 341億円 四国中央市 名古屋市中区 東京都豊島区 東京都中央区 四国中央、大江 みよし、つくば、川越、静岡、福島、松本、蟹江 所沢、鶴ヶ島 静岡、清水 非上場 東証2部 東証2部 東証1部 15 16 17 18 朝日印刷 イムラ封筒 昭和パックス 大石産業 326億円 221億円 198億円 178億円 富山市 大阪市中央区 東京都新宿区 北九州市八幡東区 富山 奈良 東京、防府、富山、亀山、盛岡、掛川 小倉、直方、鞍手、八戸、茨城 東証2部 東証2部 JASDAQ 福岡 19 20 21 22 古林紙工 中央紙器工業 阿波製紙 ニッポン高度紙工業 167億円 122億円 163億円 129億円 大阪市中央区 清州市 徳島県徳島市 高知市 戸塚、藤井寺、滝野、犬山、和歌山 清州、西尾 徳島、小松島、阿南 高知、安芸、南国、米子 大証2部 名証2部 東証2部 JASDAQ 23 24 25 ハビックス 岡山製紙 光ビジネスフォーム 104億円 岐阜市 86億円 岡山市南区 70億円 東京都新宿区 伊自良、穂積、海津、本巣 岡山 高尾、野田 茅ヶ崎・二本松・堺・那須塩原・富士・伊賀・結城・岩沼・ 南丹・本庄・柏 桶川 JASDAQ JASDAQ JASDAQ 1兆525億円 東京都千代田区 東京都中央区、四国中央市 東京都中央区、長岡市 東京都墨田区 東京都千代田区 26 大村紙業 50億円 神奈川県茅ヶ崎市 27 国際チャート 37億円 埼玉県桶川市 参考 日本紙パルプ商事 5,301億円 東京都中央区 *日本製紙…釧路、北海道(旭川・苫小牧・白老)、石巻、岩沼、勿来(いわき)、富士、岩国、八代 *旧日本 東証1部 大昭和板紙…秋田、足利、草加、吉永(富士)、大竹他関連会社で多数あり JASDAQ JASDAQ *エコペーパーJP…尾張旭 *大豊製紙…川辺町 川辺町 *昭和包装工業…恵那、中津川 恵那、中津川、津島、犬山 *中 川辺町 恵那、中津川 東証1部 中津川、掛川 他関連会社などで多数あり 津川包装工業…春日井、中津川 中津川 (2015年3月期他 上場企業決算より 業種:紙・パルプ 4 一部非上場を含む) 日本の紙・パルプ需給状況 パルプ原料チップは、 国産 4,911千トン(30.1%) 輸入 11,410千トン(69.9%) パルプ消費は、 国産 8,032千トン(82.8%) 輸入 1,660千トン(17.2%) 古紙回収は、 国内用 17,167千トン(78.8%) 輸出用 4,619千トン(21.2%) 紙・板紙消費は、 27,014千トン 印刷・情報用 45.7% 衛生用 6.5% 包装・加工用 47.7% (2014年) 出所:日本紙業連合会 5 世界の紙生産量 ~世界を俯瞰する~ 日本は、中国、アメリカについで世界第3位の紙・板紙の生産量 (世界の6.5%を生産) 原料であるパルプの生産量は、北米地域が生産量全体の4割弱を占 める。日本は、世界第7位のパルプ生産量(世界の4.9%を生産) 出所:公財)古紙再生促進センター 出典:RISI Annual Review 6 古紙の回収率・利用率 2015年の古紙利用率は64.3%となり、日本製紙連合会が、2011 年に設定した2015年度までの目標である64%を達成した <2000年> 2000年> パルプ消費量 1,360万t 1,360万t (43.0%) 43.0%) 古紙消費量 1,805万t 1,805万t (57.0%) 57.0%) 紙・板紙国内消費量 3,176万t 3,176万t 古紙回収量 1,833万t 1,833万t (57.7%) 57.7%) <2015年> 2015年> パルプ消費量 949万t 949万t (35.7%) 35.7%) 古紙消費量 1,709万t 1,709万t (64.3%) 64.3%) 紙・板紙国内消費量 2,631万t 2,631万t 古紙回収量 2,140万t 2,140万t (81.3%) 81.3%) 出所:(公財)古紙再生促進センター 7 古紙価格の推移(長期) リーマンショックで落ち込んだ古紙価格は、その後上昇。中国等アジアで の需要が増加し高値で推移 2015年は、中国の景気減速による需要減で古紙価格は落ち着くも、国内 古紙のプレミアム価格は継続 輸出価格(主に中国) が高騰。20円/㎏を超 える水準 国内建値は15円/㎏程度だ が、実際の取引価格は+α のプレミアムをつけて上げざ るを得ない 8 出所:関東製紙原料直納商工組合 古紙価格の推移(直近) 輸出 段ボール 輸出 新聞 輸出 雑誌 関東 段ボール 関東 新聞 関東 雑誌 出所:関東製紙原料直納商工組合 9 岐阜県の紙の歴史 正倉院文書に御野国(美濃国)の古代の戸籍(702年に美濃紙で作成)が所蔵 美濃国での和紙生産は、美濃国の国府を中心とした不破・本巣・厚見の三郡か ら、次第に美濃市の板取川下流域に重心が移動 江戸時代には専売制度のもと『和漢三財図会』では「最も佳なるもの」、『新撰紙 鑑』には「凡障子紙の類、美濃を最上とす」と認められているなど上質の和紙が 大量に生産され、「和紙=美濃紙」という位置付けに 明治末から大正初期にかけての美濃市を中心とした美濃紙の生産は、生産戸 数3,700戸、県内生産の80%を占めるまでに発展 東濃・中濃地方では、豊富な水とパルプ木材を基に、大手製紙工場が進出 家内手工業的な和紙生産は、近代化への脱皮が困難な上、昭和期になって機 械すき洋紙が急増したことなどから衰退 戦後は、機械すきによるちり紙・段ボール紙・特殊紙など への転換が図られ、地場産業としての生産が続行 平成26年11月、「本美濃紙 ほんみのし (美濃市)」 を 含む「和紙:日本の手漉和紙技術」について、 ユネスコ無形文化遺産への登録が決定 澤村守(編) 「美濃紙 その歴史と展開」 10 岐阜県の紙パルプ産業の立地 県内紙産業(特に用水多消費型の紙製造業)の多くは、 長良川・木曽川の2つの流域に集積している ①長良川中下流域(美濃市、関市武芸川町、岐阜市周辺等) 手すき和紙業者あるいは問屋の中から「機械すき和紙」に転換してきたもの で、「美濃和紙」の伝統の流れを汲む機械すき和紙製造業が集積 又下流 域平野部に於いても、豊富な地下水により、家庭紙・特殊紙・加工紙などが 立地 ②木曽川(飛騨川)流域(中津川市、恵那市、可児市、川辺町等) 苗木藩などで伝統的手漉き和紙の生産が行われてきたが、明治以降木曽・ 東濃の木材産地で木材パルプを原料とし、木曽川水系の豊富な水を利用し た大手製紙工場が立地した 産業経済の進展に伴う新たな紙需要に対応してきた洋紙や段ボールなどの 板紙製造業が集積 11 岐阜県パルプ・紙・紙加工品製造業の位置 岐阜県の「パルプ・紙・紙加工品製造業」の製造品出荷額は2,020億円で 神奈川を抜いて全国第11位(2014年) 出所:経済産業省 工業統計 12 県内製造業との比較 製造品出荷額 全体の4.0% 第11位 事業所数 全体の3.9% 2,020億円 2,020億円 従業者数 全体の3.3% 事業所数 従業者数 製造品出荷額 岐阜県 製造業合計 パルプ・紙・紙加工品製造業 事業所 構成比 従業者 構成比 百万円 6,035 100.0% 191,987 100.0% 5,101,178 100.0% 233 3.9% 6,251 3.3% 202,016 4.0% 2014 年 構成比 出所:経済産業省 工業統計 13 従業者規模別 事業所数・製造品出荷額 「事業所数」 全国、岐阜県ともに従業者数 4~9人規模の事業所が最も 人規模の事業所が最も 多い 4~9人規模の事業所 人規模の事業所 全国 38.6% % 岐阜 35.3% % 「製造品出荷額」 全国は100~299人規模の事業 人規模の事業 全国は 所が、岐阜県では50~99人規 人規 所が、岐阜県では 模の事業所が最も多い 100~299人規模の事業所 人規模の事業所 全国 41.4% % 岐阜 秘匿 50~99人規模の事業所 人規模の事業所 全国 22.1% % 岐阜 49.8% % 30~49人規模の事業所 人規模の事業所 全国 9.8% % 岐阜 17.7% % データ:2013年 出所:経済産業省 平成26年経済センサス 14 長期の推移(1973~2013年) 「事業所数」は、1983年をピークに大幅に減少、さらに 年をピークに大幅に減少、さらに2009年にも大幅減少し、以降はほぼ横ばいに推移している。 年にも大幅減少し、以降はほぼ横ばいに推移している。 「事業所数」は、 年をピークに大幅に減少、さらに 「従業者数」は、1993年をピークに大幅に減少、 年をピークに大幅に減少、2006年に一定の回復を示すが、翌 年に一定の回復を示すが、翌2007年~ 年~2009年にかけて再 年にかけて再 「従業者数」は、 年をピークに大幅に減少、 年に一定の回復を示すが、翌 年~ び大幅な下落となり、以降はほぼ横ばいに推移している。 「製造品出荷額」は、岐阜県製造業全体と岐阜県紙産業とは同じ傾向で推移している。ただし、リーマンショック以 降(2010年~)、 年~)、岐阜県製造業全体が回復傾向にあるのに反して、全国・岐阜県の紙産業は伸び悩んでいる。 降( 年~)、岐阜県製造業全体が回復傾向にあるのに反して、全国・岐阜県の紙産業は伸び悩んでいる。 出所:経済産業省 平成26年 経済センサス 15 岐阜県紙産業の品目別出荷額 経済産業省 平成26年 経済センサス 16 品目で見た岐阜県紙製品の位置 [岐阜県での製造が全国5位以内の製品] 2013年 【単位:百万円】 その他の紙製衛生用品(全国:337,184)5 5位 (岐阜県:24,401) 3位 (岐阜県:12,477) 中しん原紙 (全国:176,717)3 その他の塗工紙 (全国:136,770)4 4位 (岐阜県:11,546) 雑種紙 (全国:183,091)5 5位 (岐阜県:10,758) さらし包装紙 (全国: 53,311)2 2位 (岐阜県: 6,291) 衛生用紙 (全国:194,352)4 4位 (岐阜県: 5,947) 特殊印刷用紙 (全国: 23,282)2 2位 (岐阜県: 4,141) 情報用紙 (全国:168,312)4 4位 (岐阜県: 4,019) 壁紙、ふすま紙 (全国: 43,759)3 3位 (岐阜県: 2,496) 3位 (岐阜県: 2,040) 紙製衛生材料 (全国: 17,670)3 障子紙、書道用紙 (全国: 5,126)2 2位 (岐阜県: 409) 【 7.2%】 【 7.1%】 【 8.4%】 【 5.9%】 【11.8%】 【 3.1%】 【17.8%】 【 2.3%】 【 5.7%】 【11.5%】 【 8.0%】 注)・衛生用紙はティッシュペーパー用紙、トイレット ペーパー用紙など ・その他の紙製衛生用品はティッシュペーパー、 トイレットペーパーなど ・紙製衛生材料は紙オムツ、生理用品などの 紙材料など 出所:平成26年 経済センサス (出荷額ベース、従業者4人以上の事業所) 17 岐阜県圏域別 「パルプ・紙・紙加工品製造業」 6,601 87,271 63,188 21,501 2013年 岐阜県の圏域別で見ると、 「中濃圏域:約873億円 (44.7%)」が最も多く、次い で「東濃圏域:約632億円 (32.4%)」が続く 16,496 出所:岐阜県統計課「平成25年 工業統計調査」 (4人以上の事業所) (単位:百万円) 18 集 積 出荷額は「中濃圏域」が多いものの、特化係数は 「東濃圏域」の方が高い 製造業全体に占める紙産業の割合(圏域別) 事業所数 構成比 従業者数 構成比 製造品出荷額等 構成比 事業所 % 人 % 百万円 県全体 全製造業 紙産業 岐阜圏域 全製造業 紙産業 西濃圏域 全製造業 紙産業 中濃圏域 全製造業 紙産業 東濃圏域 全製造業 紙産業 飛騨圏域 全製造業 紙産業 6,184 241 190,733 3.9 1,812 49 2.7 3.1 4.0 1.9 2,384 6.8 1,992 1.5 361 4.1 1.0 21,501 1.7 0.42 16,496 1.4 0.35 6.4 1.57 8.5 2.09 2.4 0.28 1,367,736 4.6 87,270 744,509 5.8 11,774 2.7 195,056 1,150,462 34,117 415 11 636 等の特化係数 1,260,895 52,144 1,199 82 3.3 42,269 1,539 61 958 % 4,797,429 50,429 1,219 38 6,331 製造品出荷額 63,188 273,826 3.1 6,601 出所:岐阜県統計課「平成25年 工業統計調査」(4人以上の事業所) 備考:特化係数は、製造業全体に占める割合が、県全体の比率の何倍あるかを示す指標 19 2.県内の製品分野別の現状・方向性 県内企業の製品別分野 *【特殊紙】【加工紙】【家庭紙】 の厳密な境界があるわけではない。 <塗工紙製造業> <機械すき和紙製造業> <洋紙製造業> <衛生用紙製造業> <紙加工業> <紙器製造業> <紙袋製造業> 紙業 製造業 <板紙製造業> <美濃手すき和紙共同組合> <本美濃紙保存会> <段ボール製造業> <段ボール箱製造業> 紙業 卸売業 <紙・紙製品卸売業> 21 ① 特殊紙・加工紙分野 <業界の特色・現状> 〇特殊紙とは、特殊な加工により、従来の紙に新たな機能(濾過、吸着、 耐熱性、耐薬品性、脱臭、防錆等)を付与した高付加価値製品 〇紙のみでは無く、様々な素材を原料にした製品を取り扱っている 〇食品、生活・住宅、土木建築、機械、医療・健康、航空・宇宙、電気など 幅広い産業で使われる。最終製品では無く素材提供が多いため、各業 界の動向に影響される 〇汎用品では無く、業務用等、ニッチな市場の製品が多い(付加価値の高 い製品を造り、スキマを狙う) B to Bが中心 Bが中心 〇多品種・小ロット・短納期の生産体制 〇市場が拡大すると、大手が大量生産し単価の下落、海外生産へのシ フトが懸念 〇原材料費の上昇分を価格転嫁する事は難しく、コスト削減に注力 22 ① 特殊紙・加工紙分野 <今後の方向性・課題> 〇自社の技術力を活かし、時代に合った製品づくりを行う 特殊紙の分野が、最も展望が開ける分野であると考えられる ➔「紙」から離れていくことも・・・ 〇常に新製品の開発に取り組む意欲と技術力(人材)が求められる 製品開発は顧客の要望にどれだけ応えられるか、さらには積極的な提案 ができるか、技術力、開発力、提案力が鍵 〇特殊紙はニッチな分野が多いが、市場が拡大すると大手の参入が脅威と なる また、汎用品レベルになると、海外勢が脅威となり、絶え ざる品質 の差別化が必要 〇一つの製品に特化することは、スペシャリストとしてのメリットがある反面、 リスクも大きいことに留意が必要 23 ② 家庭紙(トイレットペーパー)分野 <業界の特色・現状> 〇全国での生産量シェアは、中小メーカー約65% 全国での生産量シェアは、中小メーカー約65%・大手メーカー約 65%・大手メーカー約35% ・大手メーカー約35%を占める 35%を占める ・静岡県はトップで生産量も維持、岐阜県は生産量低下 ・岐阜県内事業所は、かつての28 ・岐阜県内事業所は、かつての28社 28社 ⇒ 現在6 現在6社へ減少 〇供給過剰による製品の低価格(低収益)が常態化 ・消耗品であり需要は確実にある商品だが、商品の差別化は難しい ・大手メーカーが大量生産(純パルプ)し価格を下げて販売 ⇒中小メーカー(再生紙)の価格はさらに下げざるを得ない 〇量高な製品で輸送コストが高いが、近場で捌ききれない為、関東、関西へ供給 〇業務用が主流⇒官公庁、企業、公団など 〇一般用⇒小売りの大型化。販売ルートは大手食品スーパー、ドラッグストア、 ホームセンターなど、一定以上の生産能力が要求される 〇古紙の高騰が直撃。燃料高・電気高と相俟って、非常に厳しい収益圧迫 古紙の高騰が直撃。燃料高・電気高と相俟って、非常に厳しい収益圧迫 ・ペーパーレス化の進展、中国の古紙需要増(日本の古紙は分別が徹底、上質) 〇廃棄物処理問題(汚泥の処理)⇒自前の汚泥処理施設無く、県外へ 24 ② 家庭紙(トイレットペーパー)分野 <今後の方向性・課題> 〇古紙高騰(原料高)の影響を抑える ・古紙業者からの高価買い取りではなく、廃棄文書溶解サービスによる自社回収率 を上げる。取引先の拡充と関係強化による、古紙リサイクル体制を構築する 〇小売価格の維持・上昇を図る ・現状、一巻き(55m ・現状、一巻き(55m) 25.41円(小売物価統計調査2016 55m)25.41円(小売物価統計調査 円(小売物価統計調査2016年 2016年1月名古屋)の水準 前年比+2.16 前年比+2.16円(同 +2.16円(同2015 円(同2015年 2015年1月名古屋) 原材料価格の上昇により価格転嫁が進むも、競争は厳しい 〇県内事業所は現在6 〇県内事業所は現在6社までに減少、今後も減っていくだろうとの見方 〇今後の生き残りのための方策 ・中小ならではの強みを活かす(多品種・小ロット・短納期) ・機械設備の更新などによる品質向上(古紙の不純物除去・リサイクル技術等) ・業務用のウェイトを高める(比較的価格が高く変動がない) ・取引先との関係強化(リサイクル・環境保全の提案、安定供給、アフターサービス) ・地産地消に活路(古紙リサイクル循環) 25 ③ ダンボール分野 <業界の特色・現状> 〇ダンボール業界は、主に以下3段階に区分 ①原紙メーカー ・ライナー・中芯から製造する(大手グループ) ②一貫メーカー ・原紙を仕入れ ・原紙を仕入れ、ダンボール製造 仕入れ、ダンボール製造 ③ボックスメーカー ・ダンボールを仕入れ ・ダンボールを仕入れ、ボックス製造 仕入れ、ボックス製造 1工場あたり 設備300 300億円 設備 300億円 1工場あたり 設備30 設備30億円 30億円 1工場あたり 設備 3億円 〇現在、ダンボールに代わ 〇現在、ダンボールに代わる新 代わる新代替 る新代替品はなく、 代替品はなく、様々 品はなく、様々な産業用 様々な産業用包装資 な産業用包装資材等として 包装資材等として広 材等として広 く利用。特 用。特に、食 に、食品業界が大半 品業界が大半を占める(食 める(食品関係はあまり変動もない) 〇包装資材としての 包装資材としての寸法やデザ 材としての寸法やデザインなどは 寸法やデザインなどはユ インなどはユーザー仕様であり、 仕様であり、受注 であり、受注生産 受注生産型 生産型 〇軽量だがかさば 量だがかさばり、運送コ り、運送コスト高くつくため、消 運送コスト高くつくため、消費 スト高くつくため、消費地圏内の立 内の立地 〇大手が原紙~ 〇大手が原紙~ダンボール~箱加工 ダンボール~箱加工まで ~箱加工までや までやってしまう。また、小口 ってしまう。また、小口需要も取込 需要も取込み ながら裾野 ながら裾野へ下りてきている 裾野へ下りてきている 〇製紙業は装置 〇製紙業は装置産業であり、大手は 装置産業であり、大手は規模 産業であり、大手は規模・収 規模・収益 ・収益体質の強化のため再編 体質の強化のため再編・統合 ・統合されてきた 新規には多大な設備投資 には多大な設備投資が 投資が必要で、中小メーカーの廃業・M&A 要で、中小メーカーの廃業・M&Aは M&Aは続いている 26 ③ ダンボール分野 <続き <続き> 〇古紙価格が急 〇古紙価格が急騰(中国の台頭 騰(中国の台頭)していたが、中国 台頭)していたが、中国経済 )していたが、中国経済の減 経済の減速 の減速により価格は安定してきた (ダンボールは100 (ダンボールは100% 100%古紙リサイクル) 〇再生古紙のリサイクルが進み、古紙の品質が落ち 〇再生古紙のリサイクルが進み、古紙の品質が落ちてきている。 落ちてきている。… てきている。…リサイクルを繰 リサイクルを繰り返す と、紙の繊 と、紙の繊維がだん 維がだんだん小さくなり抄 小さくなり抄いたときに紙の強度 いたときに紙の強度が落ちる 落ちる 〇原材料高に見合 〇原材料高に見合った値 った値上げができていない。原紙メーカー(大手)が値 上げができていない。原紙メーカー(大手)が値上げしてきても、 ボックスメーカー(中小・零細 ボックスメーカー(中小・零細)への転嫁は 零細)への転嫁は簡単 )への転嫁は簡単ではない 簡単ではない <今後の方向性 今後の方向性・課題> 〇景気に 景気に左右さ 左右される産業ではあるが、ダンボールに勝 る産業ではあるが、ダンボールに勝る代替品がないか 代替品がないかぎ 品がないかぎり、比較的出 り、比較的出 荷量は安定(物流 量は安定(物流があるかぎ があるかぎりなくならない) 〇(販売価格転嫁原紙仕入 〇(販売価格転嫁原紙仕入先(大手)との関係強化等による 仕入先(大手)との関係強化等による仕入コ 先(大手)との関係強化等による仕入コスト抑制 仕入コスト抑制や スト抑制や、 製造合理 製造合理 化によるコ 化によるコスト削 スト削減が欠 減が欠かせない 〇大手とはバ 〇大手とはバッティングしないようにする。多品種・小ロット・短納期の地 ティングしないようにする。多品種・小ロット・短納期の地域密着型営 ングしないようにする。多品種・小ロット・短納期の地域密着型営業を 域密着型営業を 通じて、 通じて、顧客ニ て、顧客ニー 顧客ニーズを満たす、精度 たす、精度の高い設計・強 精度の高い設計・強度 の高い設計・強度を提案・実現していく 〇新たな需要の掘 〇新たな需要の掘り起こし 起こし (PRディスプレイ等) PRディスプレイ等) 27 ④ 紙卸商 <業界の特色・現状> 〇代理店・商社( 代理店・商社(1次卸 ・商社(1次卸)は、大手製紙 1次卸)は、大手製紙会 )は、大手製紙会社グループ の販社や の販社や大手商社 〇卸商(2次卸 商(2次卸)は、 2次卸)は、都市部及び )は、都市部及び地方に 都市部及び地方に存 地方に存在し、かつ て600社以上あったものが現在は 600社以上あったものが現在は400 社以上あったものが現在は400社をきった 400社をきった 〇岐阜県県内では、30 〇岐阜県県内では、30社 30社ほど存在しているが、飽和 在しているが、飽和 状態 〇主要顧客 〇主要顧客である中小 顧客である中小印刷 である中小印刷業界も 印刷業界も縮 業界も縮小してお 小しており厳しい 〇商品(印刷 〇商品(印刷用紙)の差別化は難しく、 印刷用紙)の差別化は難しく、絶 用紙)の差別化は難しく、絶え間ない価 格競争 <今後の方向性 今後の方向性・課題> 〇代理店・商社( 代理店・商社(1次卸 ・商社(1次卸)主 1次卸)主導 )主導による、卸 による、卸商(2次卸 商(2次卸)の 2次卸)の合併 )の合併が増えていくと 合併が増えていくと予想 が増えていくと予想さ 予想される 〇需要家ニ 〇需要家ニー 家ニーズに即した裁断加工精度 した裁断加工精度アップ、 裁断加工精度アップ、配送 アップ、配送機 配送機能強化を図る 28 3.ユネスコ無形文化遺産登録に関して ユネスコ無形文化遺産登録 平成26 平成26年 26年11月、 11月、本美濃 月、本美濃紙の手すき 本美濃紙の手すき和 紙の手すき和紙技術についてユネ 紙技術についてユネスコ無 ユネスコ無形文 スコ無形文化 形文化遺 産登録が 登録が決定 <本美濃紙の指定要件> 1.原料は、こうぞのみであること。 2.伝統的な製法と製紙用具によること。 ①白皮作業を行ない、煮熟には草木灰また はソーダ灰またはソーダ灰を使用すること。 ②薬品漂白を行わず填料を紙料に添加しな いこと。 ③叩解は手打ち、またはこれに準じた方法で 行うこと。 ④抄造は、「ねり」にとろろあおいを用い、「か ぎつけ」または「そぎつけ」の竹簀により流漉きで あること。 ⑤板干しによる乾燥であること。 3.伝統的な本美濃紙の色沢、地合等の特質を保 持すること。 本美濃紙は、美濃和 紙の最もコア部分 30 ユネスコ無形文化遺産登録 本美濃紙は 美濃紙は,最 紙は,最高 ,最高級の障子紙として高く 障子紙として高く評 紙として高く評価され 価されてきた 現在は, 現在は,主に,障子 主に,障子紙の ,障子紙のほ 紙のほか文化財 か文化財保存修理用紙としても用いら 存修理用紙としても用いられ 用紙としても用いられている 産業界 企業の声 <否定的意見> 〇産業用特殊紙業界への影響は特にない(産業紙は「美濃和紙」ブランド よりも「(最終製品の)企業」ブランドが前面に出る) 〇家庭紙(トイレットペーパー)やダンボール業界にも特に影響はない 〇本美濃紙の需要が本当にあるかといえば、実際はごく限られている 〇注目されるのも一時的であり、価格も1枚数千円することから、 今回上昇 した注目度や売上を維持するのは難しい 〇あくまで、(過去のものを残そうとする)「遺産」である <肯定的意見> 〇美濃和紙のルーツがはっきりして、本美濃紙をコアとして対外的に明示 できることには意味がある 〇美濃紙の「芯」ができ、フラッグ的役割を期待 〇美濃紙の「芯」ができ、フラッグ的役割を期待している 期待している 〇話題性はあり、 話題性はあり、取引先 性はあり、取引先とのパイ 取引先とのパイプ とのパイプが強くなった(一目置 くなった(一目置かれる) 〇「和雑貨 〇「和雑貨」等の紙加工業 雑貨」等の紙加工業者 」等の紙加工業者にとっては、相乗効果 にとっては、相乗効果を 相乗効果を狙える 〇県内 〇県内より県外、国内 より県外、国内より 国内より海 より海外での注目度・評 外での注目度・評価は高い 〇中国での 中国での商標登録 商標登録に対 に対抗 抗 し、いわば世界のお墨付 し、いわば世界のお 墨付きを た本物の「美濃 での商標登録に対 墨付きを得 きを得た本物 紙」として宣 紙」として宣伝できる 〇「観光」のカテゴリ 〇「観光」のカテゴリーとして、地 カテゴリーとして、地場 ーとして、地場振興につなげられる⇒ 振興につなげられる⇒インバウ インバウンドの バウンドの増 ンドの増 加 対応策 〇「紙業界」にとらわれない多用 途の可能性追求 〇「異業種」「異文化」との融合に よる新たな価値(需要)の創造 〇「最高品質」が受け入れられる ニッチ分野・文化の開拓 〇「本美濃紙」を冠した、美濃の 紙産業全体としてのブランドを底 上げ 〇和紙の産地との連携、世界を 見据えた積極的な対外発信 〇岐阜県全体の協力体制で観光 産業として振興 手すき和紙(後継者・技術)の 保存継承の促進へつながる 31
© Copyright 2024 Paperzz