柱状砕石補強体を用いた地盤補強工法

427
E - 04
第 46 回地盤工学研究発表会
(神戸) 2011 年 7 月
柱状砕石補強体を用いた地盤補強工法(ハイスピード工法)による支持力特性
砕石パイル、内部摩擦角、応力分担比
ハイスピードコーポレーション㈱
正会員
宮原
寛幸
ハイスピードコーポレーション㈱
正会員
堀田
誠
ハイスピードコーポレーション㈱
正会員
杉野
真衣子
1.はじめに
本工法は、軟弱地盤上に建物を建てる際に、地盤補強の方法として天然砕石を用いている。それを用いることで環境
にやさしい、エコな地盤補強工法となる。また、本工法による補強地盤の支持力度の計算は、砕石の内部摩擦角、原地
盤と砕石パイルの応力分担比、および原地盤の割合に対する砕石パイルの面積(置換率)を考慮して行う。本報告では、
粘性土地盤 4 箇所、砂質土地盤 2 箇所の平板載荷試験の結果から、砕石の内部摩擦角および原地盤と砕石パイルの応力
分担比の安全性を確認するものである。
2.荷重分担の概念
図 1 に荷重分担の概念を示す。単位面積あたりに作用する荷重は、原地盤と砕石パ
イルに配分され、砕石パイルに応力が集中し、原地盤は応力が低減される。作用する
荷重に対し原地盤と砕石パイルは複合体となり、支持力度を発揮するものである。
3.試験概要と結果
試験は、原地盤、主材料として砕石および砂を用いた砕石パイルおよびサンドパイ
ルに対し行った。砕石パイルとサンドパイルの試験は、材料の違いにより試験結果に
差があるかどうか確認するためである。試験で用いた載荷板は、φ300 の円盤、面積
が 1m2 の長方形板および正方形板である。置換率は、0.126 と 0.252 である。表 2 に
載荷板の形状と置換率を示す。載荷板が長方形の 1540×650 の試験では、粘性土地盤
では A タイプ、砂質土地盤では B タイプを用いた。試験地盤は、粘性土地盤 4 箇所(富
図 1
荷重分担の概念
表 1
試験場所と土質
山県氷見市、愛媛県西予市、松山市、八幡浜市)、砂質土地盤 2 箇所(高知県香南市、
岡山県瀬戸内市)の合計 6 箇所である(表 1)。写真 1 は、試験の状況である。
(1)平板載荷試験の結果
例として粘性土地盤は愛媛県松山市の、砂地盤は岡山県瀬戸内市の結果を示す。図 2
に粘性土地盤の荷重度と沈下の関係を、図 3 に砂質土地盤の荷重度と沈下の関係を示
250
300
G1000-3
SP1000-4
HYS1000-3
200
1200
荷重度(kN/m2)
荷重度(kN/m2)
1400
1000
800
G300-3
SP300-4
HYS300-8
600
400
150
100
50
0
0
20
40
60
80
100
200
表 2
150
100
載荷板の形状と置換率
円φ300
20
40
60
80
100
0
20
40
沈下量(mm)
60
80
100
沈下量(mm)
A:
砕石補強
地盤
(a)φ300
(b)1000×1000
250
荷重度(kN/m2)
荷重度(kN/m2)
1200
HYS300-11
1000
置換率
800
600
400
1
A:0.126
B:0.252
250
G1000-6
SP1000-8
HYS1000-7
200
G1540-5
SP1540-7
HYS1540-6
200
荷重度(kN/m2)
G300-6
SP300-7
1400
B:
(c)1540×650
粘性土地盤の荷重度と沈下量の関係(愛媛県松山市)
1600
正方形
1000×1000
原地盤
0
0
沈下量(mm)
図 2
長方形
1540×650
50
200
0
G1540-2
SP1540-4
HYS1540-3
250
荷重度(kN/m2)
1600
150
100
150
100
50
50
200
0
0
0
0
50
100
沈下量(mm)
(a)φ300
図 3
150
200
0
20
40
0
60
20
40
沈下量(mm)
沈下量(mm)
(b)1000×1000
(c)1540×650
砂質土地盤の荷重度と沈下量の関係(岡山県瀬戸内市)
Crushed stone pile,Ground reinforcement,Bearing capacity,Settlement
MakotoHotta,HiroyukiMiyahara,MikoSugino(Hyspeed corporation)
859
60
写真 1
試験状況
0.126
している。図中の記号は、G:原地盤、SP:サンドパイル、HYS:砕石パイ
1600
ルである。載荷板φ300 の試験結果から、原地盤よりサンドパイル、サンド
1000 および 1540×650 の試験結果は、原地盤よりサンドパイル+原地盤、サ
ンドパイル+原地盤より砕石パイル+原地盤の方が支持力度は大きい。粘性
1200
荷重度(kN/m2)
パイルより砕石パイルの方が支持力度は大きいことがわかる。載荷板 1000×
800
No.14
No.24
No.33
No.42
No.51
No.62
400
土地盤と砂質土地盤で置換率が 0.125、0.252 で異なるが、結果に差はないよ
うである。この結果より、原地盤<砕石パイル、原地盤<複合地盤であると
0
0
いえる。また、サンドパイルと砕石パイルでは、砕石パイルを用いた方が、
20
図 4
補強地盤の支持力度は向上するようである。
40
60
沈下量(mm)
80
100
φ300 円盤の載荷試験の結果
(2)砕石の内部摩擦角について
1400
図 4 にφ300 円盤の載荷試験の結果を示す。図 5 に極限荷重度と内部摩擦
から内部摩擦角を計算した。φ300 の円盤の試験結果から、砂質土地盤にお
いての砕石の内部摩擦角は 47°~48°程度、粘性土地盤においての内部摩擦
角は 46°~48°程度となった。なお、粘性土地盤では粘着力を無視できない
1200
極限荷重度(kN/m2)
角の関係を示す。内部摩擦角は、テルツァーギの式から Nγを計算し、Nγ
試験の極限荷重度の範囲
1000
800
600
400
が、載荷板はφ300 で砕石パイルφ400 の中央を載荷しており、ほぼ一様な砕
200
石地盤を載荷している状態と仮定した。また、砕石の内部摩擦角は、日本建
0
35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50
内部摩擦角φ(°)
築学会:「建築基礎のための地盤改良設計指針案(2006)」の pp.351、表 5.3.1
に内部摩擦角は 35°~40°であることが示されている。内部摩擦角を 40°と
図 5
極限荷重度と内部摩擦角の関係
2
設定した場合に、図 5 の極限荷重度は 201kN/m であり、載荷試験の結果か
の設定は安全であることがわかった。
(3)原地盤と砕石パイルの応力分担比について
原地盤と砕石パイルの応力分担比は、載荷板φ300 の砕石パイルの試験結
果と、載荷版 1000×1000 および 1540×650 の砕石パイル+原地盤の試験結果
から、砕石パイル負担応力に着目して応力分担比を設定している。例として
300
荷重度(kN/m2)/平均N'値
ら 201kN/m2 は極限荷重度の 1/4~1/5 程度であることから、内部摩擦角 40°
250
n=7
200
150
100
HYS300-8
HYS1000-3
HYS1540-3
50
0
図 6 に粘性土地盤の応力分担比 n=7 を設定した荷重度/平均 N 値と沈下量の
0
10
20
除去するためである。載荷板φ300 の砕石パイルの試験結果と砕石パイル+ 図 6
原地盤の砕石パイルの荷重度が同程度の挙動を示していることがわかる。図
係を示す。粘性土地盤と同様に、載荷板φ300 の砕石パイルの試験結果と砕
石パイル+原地盤の砕石パイルの荷重度が同程度の挙動を示していることが
わかる。以上の結果より、応力分担比は粘性土地盤と砂質土地盤を分けずに
n=3 と設定した。
また、応力分担比 n=3 の設定が安全であるかどうか確認するため、実験で
荷重度/平均 N 値と沈下量(粘性土)
400
n=4
350
300
250
200
HYS300-10
HYS1000-5
HYS1000-6
HYS1540-5
150
100
50
0
得られた応力分担比の最小値を用いて計算した支持力度と n=3 を用いて計
0
20
を用いて計算した荷重度は n=3 を用いて計算した荷重度より平均で 1.4 倍大 図 7
きいものであった。土質、載荷板の形状による差はないようである。n=3 の
荷重度/平均 N 値と沈下量(砂質土)
y = 1.39 x
2
平板載荷試験の結果から、砕石の内部摩擦角 40°、原地盤と砕石パイルの
応力分担比 n=3 は安全であることを確認した。
参考文献
日本建築学会:小規模建築物基礎設計指針(2008)
60
150
荷重度(n=実験の最小値) (kN/m )
4.まとめ
40
沈下量(mm)
算した支持力度の比較を行った。荷重度の比較を図 8 に示す。実験の最小値
設定は安全であることがわかった。
40
450
荷重度(kN/m2)/平均N'値
7 に砂質土地盤の応力分担比 n=4 を設定した荷重度/平均 N 値と沈下量の関
30
沈下量(mm)
関係を示す。なお、荷重度を平均 N 値で除したのは、原地盤の表層の強弱を
120
90
60
粘性土 1000×1000
砂質土 1000×1000
30
粘性土 1540×650
砂質土 1540×650
0
0
日本建築学会:建築基礎のための地盤改良設計指針案(2006)
㈱産業技術サービスセンター:実用軟弱地盤対策技術総覧
30
P703~707
図 8
860
60
90
120
荷重度(n=3) (kN/m 2 )
荷重度の比較
150