総論 本格移行を控え不安を抱くNTユーザー

総論
本格移行を控え不安を抱くNT ユーザー
している。
Windows NT Server 4.0のサポート
本誌が2003年4月に実施したWeb
打ち切りが間近に迫り,長年NTを使
アンケートによると,実に9割以上の
もちろん,約4割のユーザーが「時
ってきたユーザーも,そろそろ真剣に
ユーザーがまだNT Server 4.0を使っ
期は決まっていない」
と答えており一
移行を考え始めている。
ていることが分かった
(図1)
。そして,
概には言えない。しかし,2005年第2
このうちの約8割が,今後NT Server
四半期以降の移行を考えているユーザ
ユーザーのほとんどは知っている」
(大
を減らしたいと考えている。既にサポ
ーが合計で2.4%と極端に少なくなっ
塚商会のテクニカルソリューションセ
ートが終了しているNT Server 3.51
ていることを考えると,やはり2005
ンターの清水達哉SE課長代理)
という
を使っているユーザーも1割弱残って
年第1四半期までに移行がほぼ完了す
ほど,NTのサポートが打ち切られる
おり,このユーザーもほとんどが減ら
ると考えていいだろう。
という情報はユーザーの間に広く知れ
していく意向を示している。
「最近はこちらから言わなくても,
NTの移行先はやはりWindows
渡っている。それに伴い,実際に移行
これらのユーザーに具体的な移行の
を始める案件も
「去年の暮れから急激
完了時期をたずねたところ,やはり
移行を考えているユーザーに,導入
に増えてきている」
(エイ・エヌ・ティの
NT Server 4.0の通常サポートが終了
を検討しているOSをたずねたところ,
ソリューション技術部の前田育彦課
する2004年をメドに考えているよう
Windows 2000 Serverが74.9%,Win-
長)
という。
だ。具体的には,2003年第2四半期か
dows Server 2003が47.3%と大多数
ら2005年第1四半期まで順に,7.3%,
を占めている
(複数回答可,詳細は46
8.5%,12.7%,8.5%,5.4%,4.9%,
ページを参照)
。最近注目されている
このNT Serverを新システムに移
6.6%,4.4%となっている。2003年第4
Linuxやその他のフリーUNIXも25.1%
行する動きは一時的なものではなく,
四半期と答えたユーザーが12.7%とや
と4分の1のユーザーで導入を検討し
今後もしばらく続きそうだ。
や多い以外は,ほぼまんべんなく分布
ていたが,やはりWindows NTユー
今後NTからの移行作業が本格化
ザーの移行先としてはWindows 2000/
2003が主流である。
92.9
Windows NT Server 4.0
78.0
の後継に当たるため,この結果は当然
68.9
Windows 2000 Server
4.9
Linuxやその他のフリーUNIX
(FreeBSDなど)
商用UNIX
(Solaris,AIX,hp-uxなど)
ともいえる。OSを選んだ理由も併せ
35.8
2.8
てたずねているが,56.8%と実に半分
26.1
以上のユーザーが「後継OSだから」
と
6.3
8.4
10.5
Windows NT Server 3.51
いう理由を挙げた。
4.5
5.2
NetWare
現在利用中のサーバーOS
今後減らしたいサーバーOS
4.9
その他
10.4
0
これらのOSは現在使っているNT
10
簡単に移行できるわけではないのが
NTユーザーにとっては悩ましいとこ
20
30
40
50
60
70
80
90
100(%)
図1●NTユーザーの大多数が将来的に減らすことを考えている
2003年4月に実施した今回の調査では,NT Server 4.0ユーザーの8割以上,NT Server 3.51のほとんどが利
用を減らしたいと答えた。Windows 2000 ServerやLinuxユーザーが移行をほとんど考えていないのとは対照
的である。
44 日経Windowsプロ 2003年6月(no.75)
ところが,後継OSだからといって,
ろだ。もちろん,クライアントOSの
入れ替えよりも影響が及ぶ範囲が大き
いため,慎重に移行することが求めら
特集 1
NT Serverの寿命に備える
【導入・展開編】
れるのは,どのサーバーOSにも共通
移行でトラブルが発生しないか,
不安を感じている
するところである。
しかし,NTの場合はサーバーOS
の中核といえる認証部分を,後継OS
Active Directoryが
難しそう
38.5%
58.5%
移行先のサーバーOSを
Windows 2000にするか,
2003にするか悩んでいる
37.1%
のWindows 2000/2003 でActive
Directoryという全く新しいアーキテ
クチャに変更してしまっている。既存
現行のアプリケーションが
動かないのではと不安を
感じている
31.0%
NTのノウハウが通用しない
のではと不安を感じている
21.0%
ユーザーにとって,移行に当たっての
障壁がかなり高く,おせじにも気軽に
移行できるとはいえない。
乱立したNTドメインを
どうするか悩んでいる
19.5%
移行を促進するために,マイクロソ
フトとしても既存のNT環境との互換
性や相互運用性について,Windows
2000/2003では極力確保するようには
ユーザーの再教育が
必要になりそう
13.9%
図2●Windows 2000/2003への移行を検討/予定しているNTユーザーが抱えている不安や悩み
移行を検討/予定しているNTユーザーを調査したところ,
「トラブルが発生しないか不安を感じている」など移
行で定番の悩みが圧倒的に多い。このほか,
「Active Directoryが難しそう」
「移行のサーバーOSをWindows 2000にするか2003にするか」
,
「現行のアプリケーションが動かないのでは」
も,約3人に1人は不安や悩
みの1つに挙げていることが分かった。
している。それでも,Windows 2000
が出荷されてから,移行にまつわるト
ラブルがいくつも報告されており,こ
れから移行を考えているユーザーにと
って不安は大きい。
様々な不安を抱えるNTユーザー
実際に,アンケートで移行を考えて
いるユーザーにたずねたところ,
「特
みも多い。
それでもNTからの移行は不可避
そこで本特集では,NT Serverか
そんなに面倒なら,このまま使い続
らの移行を成功させるためのポイント
けることを考えるNTユーザーもいる
を,これら典型的な不安や悩みを勘案
かもしれない。もちろん正式サポート
して6つのポイントに分けて解説する。
が終了しても,いきなりOSが使えな
具体的には,
「移行先はWindows 2000
くなるわけではない。場合によって
とWindows 2003のどっちが最適?」
は,ライセンスのダウングレードとい
に不安や悩みはない」
と答えたユーザ
「これまでのNTドメインはどうしたら
ーはわずか9.0%と,9割以上が何らか
いい?」
「実際の移行作業としては何を
の悩みや不安を抱えていることが分か
すればいい?」
「NTのアプリケーショ
しかし,NTが使える環境は,現実
った
(図2)
。
ンの移行って簡単?」
「エンドユーザー
にはますます狭まってきている。周辺
最も多かったのは,
「移行でトラブ
が使っているパソコンはそのままで大
機器を中心に,動作対象OSとしてNT
ルが発生しないか」で,60%弱のユー
丈夫?」
「NT時代の運用ノウハウは通
を含まないハードウエアが増えてきて
ザーが不安を持っている。続いて,
用しなくなる?」
という6つのポイント
おり,使い続けるためには予備のハー
について答えている。
ドウエア部品を用意するといった対策
「Active Directoryが難しそう」
「移行
った手段で新規のNTサーバーを導入
することも可能だ。
先のサーバーOSをWindows 2000に
いずれも,NTユーザーが移行を実
するか,2003にするか」
「現行のアプ
際に考えたときに遭遇する疑問だろ
ここまで本腰を入れてNTを使い続
リケーションが動かないのでは」
といっ
う。これから移行を考えているユーザ
けようと考えているユーザーはほとん
た不安や悩みを約3人に1人が挙げて
ーだけでなく,移行済みあるいは移行
どいないだろう。だとすると,NTユ
いる。
「NTのノウハウが通用しないの
中のユーザーも,自分で実施した方法
ーザーにとってサーバーOSの移行は
ではと不安を感じている」
「乱立した
の確認に活用してもらいたい。Win-
いずれは避けられない道である。ここ
NTドメインをどうするか悩んでいる」
dows Server 2003が登場することで影
で解説した6つのポイントを押さえて,
響がある部分もいくつかある。
確実に成功させてほしい。
「ユーザーの再教育が必要」
といった悩
が求められる。
45
日経 Windowsプロ 2003 年6月
(no.75)
システムの寿命は2003が圧倒的有利
ポイント1
移行先はWindows 2000と
2003のどっちが最適?
現時点でNTからの移行を考えてい
るユーザーの多くは,現NTシステム
の寿命を気にしているだろう。しか
し,移行先にWindows 2000を選ぶ
と,近い将来また同じ悩みを抱える。
これからNT Serverの移行を考え
商談中の案件でも
「Windows 2000
製品のライフサイクルを重視するな
るユーザーが,真っ先に考えるテーマ
とWindows 2003のどちらがいいかと
ら,後から登場するWindows 2003が
は,
「移行先をWindows 2000 Server
いう質問が出始めている」
(日本ユニシ
圧倒的に有利である。マイクロソフト
とWindows Server 2003のどちらにす
スのアドバンストテクノロジ本部の柴
は,製品のサポート・ライフサイクル・
るか」ということだろう。Windows
田聖悟チーフSE)
という。
「今来てい
ポリシーを2002年10月に発表してお
Server 2003の国内発売が6月2日と迫
る移行の話の7割はWindows 2003」
り,企業向け製品ではフル・サポート
っており
(パッケージは6月25日から)
, (デルコンピュータの営業技術支援本
ト・フェーズ」が製品発売から最短で5
部の堀川嘉朗コンサルタント)
。
Windows Server 2003も移行OSとし
期間である
「メインストリーム・サポー
こういったユーザーの反応は決して
年間,ホット・フィックスを有償で入
先走りではない。今回の取材では,こ
手できる
「延長サポート・フェーズ」は
Windows 2003を考えるユーザーが急増
れから移行するユーザーは可能な限り
その後2年間となっている。
4月に実施したNTユーザー向けの
Windows 2003を選んだほうがよいと
て現実的な選択肢になってきた。
発売したWindows 2000 Serverについ
いう結論に達した。
アンケートでも,Windows 2003を検
このため,現時点では2000年2月に
その一番の理由は,移行後の新シス
ては,2005年3月末でメインストリー
る。
「移行を検討している新しいOS」
テムの寿命である。インテグレータに
ムが終了し,ホット・フィックスを無
への回答で,約7割のユーザーがWin-
取材して,どちらを選ぶべきかを判断
償では入手できなくなる予定である
dows 2000 Serverを検討しているのは
。通常のサポート契約が可能な
する要素をまとめたのが図4である。 (図5)
当然として,まだ出荷前のWindows
Windows 2003にすべき理由として,
期間も2007年3月末には終了する。つ
2003についても既に約半数のユーザ
各インテグレータが必ず挙げたのが
まり,今すぐに移行が完了したとして
討し始めたユーザーの姿が見えてく
も,Windows 2000では2年も経たな
「製品のライフサイクル」だった。
ーが検討を始めている
(図3)
。
いうちに現在のNTと同様にサポート
切れが問題となってしまう。
もちろんサポート・フェーズの終了
74.9
Windows 2000 Server
はWindows Server 2003でもいずれは
47.3
Windows Server 2003
問題になる。しかし,この6月から発
Linuxやその他のフリーUNIX
(FreeBSDなど)
商用UNIX
(Solaris,
AIX,
hp-uxなど)
25.1
売するWindows Server 2003なら,
メインストリーム・サポートの終了ま
3.7
で約5年間あり,当面はサポート切れ
2.7
まだ決まっていない
を気にしなくてよい。
その他 0.2
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90%
図3●NTユーザーの移行先としては,Windows 2000とWindows 2003が主流
約7割のユーザーがWindows 2000 Serverへ,約5割がWindows Server 2003への移行を既に検討して
いる。
46 日経Windowsプロ 2003年6月(no.75)
Windows主流の環境も2003が適任
Windowsを企業の基幹プラットフ
ォームとして積極的に活用しようと考
特集 1
NT Serverの寿命に備える
【導入・展開編】
メインストリームは残り3カ月。
セキュリティ・パッチの提供もそ
の後2年しか受けられず,3年
経たずしてまた移行を検討し
なくてはならない
移行予定時期
2000にすべき理由
2000にすべき理由
(2004年12月)
●
既にWindows 2000移行プロジェクトが進行中
●
安定性(実績)重視
2003にすべき理由
2003にすべき理由
Windows 2000 Server
メインストリーム・サポート・フェーズ(最短5年)
延長サポート
・
延長サ
フェーズ(2年)
ライフサイクル重視
●
●
今後もWindows PCがクライアントの中心
●
.NET Frameworkを今後使っていく
延長サポート・フェーズの終了
まで5年以上もあり,長く使い
続けられる
Windows Server 2003
図4●Windows 2000と2003を選ぶ際の大まか
な目安
メインストリーム・サポート・フェーズ(最短5年)
延長サポート・
延長サ
フェーズ(2年)
えているユーザーも,Windows Serv2000年
er 2003を選ぶべきであろう。
Windows Server 2003は,マイクロ
ソフトがアプリケーションの開発/運
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
図5●ライフサイクルを考えるなら後から登場するWindows Server 2003のほうが圧倒的に有利
仮に,NTのセキュリティ・パッチの提供が終わる2004年12月に移行するとしたら,Windows 2000のメインスト
リームは残り3カ月。セキュリティ・パッチの提供もその後2年しか受けられず,3年経たずしてまた移行を検討し
なくてはならない。これに対してWindows Server 2003は延長サポート・フェーズの終了まで5年以上もあり,
長く使い続けられる。
用基盤として位置づけている.NET
Frameworkを標準搭載する。また,
Windows Server 2003では,共有フォ
で移行プロジェクトを進行中」のケー
している。特にドメイン・コントロー
ルダで削除したデータを復活できるボ
スである。もちろん,途中でWindows
ラ間のレプリケーションが原因ではな
リューム・シャドウ・コピーや,ソフト
Server 2003に切り替えることも可能
いかと思われる障害に関しては大幅に
ウエアをユーザーのログオン時に完全
だが,Windows 2000で設計・検証を
減っている」
(ジェイアール東日本情報
にクライアントPCへ配信してインス
始めている場合は,それまでかけた手
システム技術部の小泉健太郎氏)
とい
トールする機能,といったWindows
間とコストが無駄になりかねないので
う意見もある。
クライアントをより便利に運用する新
無理に変えないほうがいいだろう。
Windows Server 2003は,Win-
まだ製品としての歴史が浅いWin-
dows 2000と比べるとアーキテクチャ
さらに,マイクロソフトでは,Long-
dows Server 2003に対する不安がある
のような根本的な変更はなく,どちら
hornやBlackcombという開発コード
人も多いだろう。
「まだ正式リリース
かというとマイナー・バージョンアッ
で開発している次期OSの新機能を追
されておらず検証して間もないWin-
プの色が強い。そのため,確かに安定
加モジュールとして提供する計画があ
dows Server 2003を推すことはできな
性の面ではかえって高まっている可能
る。追加モジュールが本当に提供され
い」
(野村総合研究所の小澤良男主任テ
性もあるが,こればかりは出荷されて
るとしたらWindows Server 2003は確
クニカルエンジニア)
というのが典型的
みないと分からない。
実に対象となるだろうが,Windows
な意見である。
機能が追加されている。
2000に関しては対応が不明である。
確かに,
「マイクロソフト製品はSer-
Windows Server 2003を選ぶのにま
だ不安があるなら,1〜2カ月ほど様
vice Packが出るまで使わない」
という
子を見るとよいだろう。そうすれば,
認識をもっているユーザーは多い。し
インテグレータやベンダーにもいろい
一方,Windows 2000 Serverにした
かし,Windows Server 2003の早期導
ろ情報が入るし,マイクロソフトの
ほうがいいユーザーがいるのも事実だ。
入プログラムに参加しているユーザー
Webサイトにもトラブル情報が掲載
例えば,インテグレータの意見で最
の中には,
「Windows 2003のRC1は
されるだろう。それを見て判断すれば
も多かったのは「既にWindows 2000
Windows 2000のSP3より格段に安定
確実といえる。
移行中や安定性重視なら2000
47
日経 Windowsプロ 2003 年6月
(no.75)