スマートフォンのバリュー・チェーン分析 ―サービスを中心― 程 Ⅰ はじめに Ⅱ スマートフォンにおけるバリュー・チェーン分析の先行研究 Ⅲ Ⅳ Ⅴ 1 スマートフォンにおけるバリュー・チェーン 2 モノづくりからサービスへ 培佳 スマートフォンにおけるサービス分析 1 通信サービス 2 ソ フ ト ウ ェ ア ( OS& App) 3 政策とソフトウェア スマートフォンにおけるバリュー・チェーン分析 1 i P h o n e & X i a o mi の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン 2 原価と付加価値の分配 むすびにかえて Ⅰ はじめに ス マ ー ト フ ォ ン 1 が 普 及 し 始 め た の は i P h o n e の 誕 生 か ら で あ る 。そ の 前 、 スマートフォンに対する認知度が低いため、スマートフォンを研究対象に し た 研 究 が 少 な か っ た 。ま た 、当 時 は フ ィ ー チ ャ ー・フ ォ ン の 時 代 で あ り 、 ス マ ー ト フ ォ ン の よ う な 多 機 能 携 帯 が 世 に 少 な か っ た た め 、 OS や App に ス マ ー ト フ ォ ン の 誕 生 は 90 年 代 で あ る が 、 認 知 度 と 普 及 率 が 低 い た め 、 本 研 究 で は 、 iPhone の 誕 生 か ら 区 切 っ て 、 iPhone の よ う な 携 帯 を ス マ ー トフォンであると定義する。 1 1 対 す る 注 目 度 も 低 か っ た 。し か し 、2 0 1 5 年 の 今 、ス マ ー ト フ ォ ン の 時 代 に 移 り 、多 様 な A p p に よ る サ ー ビ ス が ス マ ー ト フ ォ ン 通 話 以 外 の 機 能 を 拡 大 し て い る 。存 在 感 が 増 え る A p p に よ る サ ー ビ ス が む し ろ 通 話 機 能 よ り 重 要 性を示し始めた。 本 研 究 で は 、 そ れ を 踏 ま え て 、特 に OS や App と い っ た ソ フ ト ウ ェ ア を 研究対象に加え、バリュー・チェーンという分析手法を用いてスマートフ ォンを分析した。具体的に、Ⅱでは、スマートフォンを研究対象にした先 行研究の考察を行う。そのうえで、サービスに対する注目が高まる経緯を 議論する。そして、Ⅲでは、本研究のメインであり、スマートフォンにお けるサービスを議論する。そのなか、サービスを通信サービス、ソフトウ ェ ア ( OS& App) の 2 種 類 に 分 け て 考 察 す る 。 ま た 、 そ れ に 大 き い な 影 響 を 与 え る 各 国 の 政 策 を 議 論 す る 。 最 後 に 、 Ⅳ で は 、 iPhone& Xiaomi の 例 を取り上げて、モノづくりの面において、原価および付加価値の分析を行 う。 Ⅱ スマートフォンにおけるバリュー・チェーン分析の先行研究 1 スマートフォンにおけるバリュー・チェーン ス マ ー ト フ ォ ン 2 に お け る バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン 分 析 に 、K r a e m e r( 2 0 11 ) の 論 文 は 代 表 的 で あ る 。 彼 は 、 iPhone4 の 付 加 価 値 の 分 配 を 国 別 で 分 析 し た 。ア ッ プ ル 社 は i P h o n e 4 総 価 値 の 5 8 . 5 % の 割 合 で 圧 倒 的 に 大 き く 占 め て いる。そして、台湾のサプライヤー、日本のサプライヤーおよび韓国のサ プ ラ イ ヤ ー は そ れ ぞ れ 0.5%、 0.5%、 4.7%の シ ェ ア 3を 占 め て い る 。 こ の よ うな不均等な付加価値の分配は優位性を持つアップル社が強い交渉力を行 2 3 1 9 9 0 年 代 後 半 に 始 ま り 、2 0 0 0 年 代 後 半 i P h o n e を は じ め 、普 及 し 始 め た 。 東 洋 経 済 2012 年 5 月 19 日 記 事 ( 2012 年 6 月 4 日 閲 覧 ) 2 使した結果である。言い換えれば、ブランド・プラットフォーム・リーダ ーシップを持つアップル社は経済関係の中での統治力を行使した結果であ る 。 そ の よ う な 活 動 は 価 値 獲 得 活 動 4 で あ る と 石 田 ( 2 0 11 ) が 定 義 し た 。 し か し 、 K r a e m e r e t a l . ( 2 0 11 ) の 論 文 で は 、 モ ノ づ く り の 視 点 か ら バ リ ュー・チェーンを用いて分析され、サービスに関する議論は触れていなか った。サービスの視点を入れてはじめスマートフォンにおけるバリュー・ チ ェ ー ン 分 析 を 行 っ た の は D e d ri c k e t a l . ( 2 0 1 0 ) が 書 い て 論 文 で あ る 。 彼 は 、 ア メ リ カ の 通 信 業 者 で あ る AT & T を ス マ ー ト フ ォ ン の バ リ ュ ー ・ チ ェ ーンの一環として、今までモノづくりにとどまったスマートフォンのバリ ュー・チェーン分析を発展させた。 図1 モ ト ロ ー ラ 、 AT & T 、 サ プ ラ イ ヤ ー の 付 加 価 値 の 割 合 サプライヤー 5% モトローラ 20% AT&T 75% 注 : 機 種 は モ ト ロ ー ラ V3 で あ る 。 出 所 : Dedrick( 2010) よ り 筆 者 作 成 Dedrick et al. (2010) に よ る と 、 ス マ ー ト フ ォ ン の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン 4 価値獲得活動とはブランドやプラットフォーム・リーダーシップ(ある いはデファクトスタンダード化)を持つというような経済関係の中での統 治 力 を 行 使 す る 活 動 で あ る 。( 石 田 2 0 11 : 1 9 8 ) 3 の な か で 、最 も 多 く 付 加 価 値 を 獲 得 し た 一 環 は キ ャ リ ア で あ る 。そ の 次 は 、 スマートフォンメーカーである。最も少ないのはサプライヤーである(図 1 )。 し か し 、 そ の よ う な キ ャ リ ア 支 配 の 構 造 は ス マ ー ト フ ォ ン の i P h o n e の誕生により、変わりつつある。 ス マ ー ト フ ォ ン の イ ノ ベ ー シ ョ ン を 起 こ し た ア ッ プ ル 社 は 、優 位 に 立 ち 、 今までキャリアによるメーカーの構図を壊し、逆にアップル社によるキャ リア支配の構図を構築してきた(後藤・森川 2 0 1 3 : 1 2 2 )。 程 ( 2014) に よ る と 、 iPhone4 の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン の な か で 、 ソ フ ト バ ン ク 、ア ッ プ ル 社 お よ び サ プ ラ イ ヤ ー の 付 加 価 値 取 り 分 は そ れ ぞ れ 、5 7 % 、 2 9 % お よ び 1 4 % で あ る( 図 2 )。キ ャ リ ア に よ る メ ー カ ー と い う 構 造 が 徹 底 的に覆されなかったが、アップル社によるキャリア支配の構図への変化は 確 か で あ る 。 図 1 に 比 べ る と 、 メ ー カ ー の 割 合 が 9%を 増 加 し 、 キ ャ リ ア の 割 合 が 18%を 減 少 し た 。 しかし、スマートフォンを対象に研究する時に、モノづくりの活動はも ち ろ ん 、 サ ー ビ ス も 考 察 し な け れ ば な ら な い 。 先 述 し た D e d ri c k e t a l . (2010)で は 、 は じ め て 通 信 サ ー ビ ス を 含 め て 考 察 さ れ た が 、 ま だ 不 十 分 で ある。スマートフォンのソフトウェアによるサービスもスマートフォンの バリュー・チェーン分析に重要な一環であるので、看過すべきではない。 本研究では、それに関する議論はⅢで行う。 2 モノづくりからサービスへ グローバル化が進んでいるとともに、サービスの貿易が拡大している。 サ ー ビ ス に お け る バ リ ュ ー・チ ェ ー ン の 研 究 は サ ー ビ ス 貿 易 の 拡 大 に よ り 、 注目されている。そこで、サービスについての考察を行うべきである。従 来、サービスの定義は運輸、流通および在庫管理などの生産サービスに確 4 図 2 キャリア、アップル社、サプライヤーの付加価値の取り分 サプライ ヤー 14% アップル社 29% ソフトバンク 57% 注 : 機 種 は i P h o n e 4 S ( 1 6 GB ) で あ る 。 出 所 : 程 ( 2 0 1 4 )。 定 さ れ て い た 。し か し 、ハ イ テ ク・エ レ ク ト ロ ニ ク ス な ど の 産 業 に と っ て 、 ソフトウェア・デザインによるサービスが従来の運輸・流通より重要な存 在である。それを無視されてきたのは従来のサービスの定義の不十分な点 である。モノづくりを中心にバリュー・チェーンの研究がなされてきたた め 、 サ ー ビ ス が 実 際 に 創 出 し た 価 値 は 過 小 評 価 さ れ て し ま っ た ( Low 2 0 1 3 : 2 )。 ま た 、 バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン に お い て 、 付 加 価 値 獲 得 の 手 段 は 物 的資産の所有よりも無形資産の所有である(石田 2 0 11 : 1 9 9 ) か ら 、 サ ービスの重要性が増えているなか、サービスについての再検討が必要とな っ て き た 。 本 研 究 で は 、 そ の 背 景 の 下 で 、有 形 資 産 5 の サ ー ビ ス 、 い わ ば 運 輸・流通など従来のサービスを議論せず、無形資産のサービスの議論を行 う。それを議論するまえに、無形資産についての議論を行おう。 OE C D が 無 形 の 資 産 を 3 つ の タ イ プ に 分 類 し た 。タ イ プ 1 は デ ジ タ ル 情 5本 研 究 は 、ス マ ー ト フ ォ ン を 対 象 に し た 研 究 で あ る 。ス マ ー ト フ ォ ン の サ ービスは主にソフトウェアのサービスであるため、無形資産のサービス を主に考察する。有形資産のサービスである通信サービスについての議 論は本研究では深く議論しない。 5 報(ソフトウェアやデータベースなど)である。タイプ 2 はイノベーショ ン 資 産 ( 科 学 的 な &非 科 学 的 な R&D、 著 作 権 、 デ ザ イ ン 、 商 標 な ど ) で あ る。タイプ 3 は経済的な競争力(ブランド力、組織力、広告、マーケティ ン グ な ど ) で あ る ( OE C D 2 0 11 : 1 )。 本 研 究 で は 、 ソ フ ト ウ ェ ア に よ る サ ー ビ ス を 研 究 対 象 に し た た め 、 OECD が 定 義 し た タ イ プ 1 を 採 用 し た 。 そ れ に 基 づ き 、ス マ ー ト フ ォ ン に お け る サ ー ビ ス 6 を 研 究 対 象 に し 考 察 し た の は Ali-Yrkköet et al.( 2011) が 書 か れ た 論 文 で あ る 。 彼 ら は 、 ノ キ ア N95 に あ る ソ フ ト ウ ェ ア 7お よ び 他 の ラ イ セ ン ス 料 の 総 コ ス ト が 21 ユ ー ロであると明らかにした。その中、アプリにかかったライセンス料は総額 4.2 ユ ー ロ で あ っ た 。 こ こ で 説 明 し な け れ ば な ら な い の は ア プ リ の 枠 組 み で あ る 。 当 時 、 N95 に Play Store8あ る い は App Store9の よ う な ノ キ ア store が 存 在 し な か っ た た め 、 新 し い ア プ リ が 必 要 に な っ た 場 合 、 ネ ッ ト 上 の store で ダ ウ ン ロ ードという方法しかない。そのような枠組みは非集中的なポータル ( Decentralized portal ) で あ る と Holzer( 2011:25) が 定 義 し た 。 同 じ 枠 組 み を 持 つ の は マ イ ク ロ ソ フ ト 10で あ る 。 そ れ に 対 し て 、 App Store や Play Store は 集 中 的 な ポ ー タ ル 11で あ る 。 そ し て 、 非 集 中 的 な ポ ー タ ル が 集 中 的 な ポ ー タ ル に 移 行 す る 傾 向 に あ る ( Holzer 2 0 1 1 : 2 5 )。 現 在 、 ソ フ トウェアもノキアも集中的なポータルになっている。それぞれのポータル を Skymarket、 OVI と 名 づ け ら れ た 。 本 研 究 で は 、 2014 年 世 界 OS シ ェ ア の 96.3%12を 占 め た ア ン ド ロ イ ド 13と 6 本研究でのサービスはソフトウェアのような無形資産のサービスを意味 する。 7 A d o b e A c r o b a t R e a d e r, R e a l p l a ye r, Z i p Ma n a g e r な ど 8 P l a y e r S to r e は グ ー グ ル 社 の ソ フ ト ウ ェ ア で あ る 。 9 App Store は ア ッ プ ル 社 の ソ フ ト ウ ェ ア で あ る 。 1 0 そ の よ う な 枠 組 み は 2 0 11 ま で 変 わ ら な か っ た 。 11 Centralized portal に 関 す る 説 明 は Holzer( 2011:25) を 参 照 1 2 I DC が 2 0 1 5 年 2 月 リ リ ー ス し た デ ー タ 。 そ の う ち 、 ア ン ド ロ イ ド は 6 iOS14を 研 究 対 象 と し て 選 び 、 OS と App の 考 察 を Ⅲ で 行 う 。 Ⅲ 1 スマートフォンにおけるサービス分析 通 信 サ ー ビ ス と ソ フ ト ウ ェ ア ( OS& App) 本研究では、スマートフォンによるサービスを通信サービスとソフトウ ェ ア ( OS と App) の 2 種 類 に 分 け て そ れ ぞ れ 考 察 す る 。 ま ず 、 通 信 サ ー ビ スを考察しよう。 図 3 の よ う に 、通 信 サ ー ビ ス は 各 キ ャ リ ア が 顧 客 に 提 供 し て い る 。そ し て 、 スマートフォンのバリュー・チェーンにおいて、付加価値の割合はキャリ ア が 最 も 多 い で あ る ( Dedrick 2010; 程 2 0 1 5 )。 通 常 、 キ ャ リ ア が 通 信 料 金 プ ラ ン を 立 て 、顧 客 に 提 供 す る 。し か し 、そ の よ う な 仕 組 み は i P h o n e の出現により、崩壊されてしまった。強い交渉力を持つアップル社は iPhone を 取 扱 う た め に 、 キ ャ リ ア に 厳 し い 取 引 条 件 を 付 け た 。 そ の 中 、 i P h o n e の 料 金 プ ラ ン は ア ッ プ ル 社 か ら の 承 認 が 必 要 と な っ て い る 。つ ま り 、 ア ッ プ ル 社 は iPhone の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン に お い て 、 料 金 プ ラ ン を 管 理 することによって、キャリアから付加価値を奪っていることが明らかにし た。それだけではなく、アンドロイドを搭載した競争端末より、安い通信 料 金 設 定 を 突 き 付 け る 15。 し か し 、 バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン 構 造 の 違 っ た 中 国 において、アップル社の交渉力は中国移動にとって、通じなかった。確か に 、 2013 年 12 月 に ア ッ プ ル 社 は 中 国 移 動 と iPhone の 販 売 で 合 意 に 至 っ たが、ローカルスマートフォンの台頭によって、激しい市場競争にさらさ れ た iPhone の 通 信 料 金 が 上 が る 一 方 で あ る 。 13 14 15 81.5% 、 iOS は 14.8%の 市 場 シ ェ ア を 占 め た 。 グーグルが開発したシステムである。オーブンソースである。 アップル社が開発したシステムである。クローズドソースである。 日 本 経 済 新 聞 2012 年 5 月 22 日 記 事 ( 2012 年 10 月 5 日 閲 覧 ) 7 第 3 図 デザイン スマートフォンのバリュー・チェーン サプライ やー ブランド 企業 組立 キャリア 顧客 注:上記のバリュー・チェーン構造は日本やアメリカなどの先進国に当 てはまる。中国には当てはまらない。中国でのバリュー・チェーン 構造は図 4 を参考してください 出所:筆者作成 2 ソ フ ト ウ ェ ア (OS&App) スマートフォンのバリュー・チェーンにソフトウェアを示すと、図 4 に なる。図 3 と異なり、日本のような携帯市場において、キャリアに採用し てもらえなければ、携帯への参入はできないのである(丸川 2 0 1 0 : 6 )。 しかし、中国では、キャリアと携帯メーカーはあまり深い関係を持たず、 い わ ば「 垂 直 分 裂 」構 造 で あ り( 丸 川 2 0 1 0: 9 )、 そ れ ぞ れ の 利 益 を 追 求 しているため、携帯への参入は日本のような国と比べれば、容易である。 そのような構造の下で、アンドロイドを搭載した中国ローカルスマートフ 図 4 スマートフォンのバリュー・チェーンにおけるソフトウェア OS& App デザイン サプライ やー ブランド 企業 組立 顧客 キャリア 注:中国市場では、スマートフォンの流通ルートは日本やアメリカと異 なる。キャリアを通らず、ブランド企業、卸売業や小売業によって 流通しているのは一般的である。 出所:筆者作成 8 ォ ン が 飛 躍 的 に 成 長 し 、OS&App の 拡 大 を 全 体 的 に あ げ た の で あ る 。図 5 が 示 し た よ う に 、 2014 年 、 App Store の 収 入 は 100 億 ド ル 16で あ る 。 そ れ に 対 し て 、P l a y S t o r e の 収 入 は 7 0 億 ド ル 1 7 で あ る 。A p p S t o re の 1 0 0 億 の 収 入 は 今 ま で 最 高 の 収 入 で あ る 。 収 入 金 額 に は 、 A p p S t o re が P l a y S t o r e よ り 大 幅 に 上 回 っ た が 、ア プ リ の ダ ウ ン ロ ー ド 数 で 比 較 す る と 、 状 況 が 逆 転 さ れ た 。 図 6 が 示 し た よ う に 、 2014 年 に お い て 、 Play Store の ダ ウ ン ロ ー ド 数 は 世 界 総 ダ ウ ロ ー ド 数 の 6 割 18を 超 え た 。 App Store の ダ ウ ロ ー ド 数 よ り 圧 倒 的 に 多 い 。図 5 と 図 6 の 分 析 が ス マ ー ト フ ォ ン の バ リ ュ ー・チ ェ ー ン に お い て 、従 来 モ ノ づ く り の 視 点 か ら 考 察 す る 以 外 に は 、 通信サービスのほか、ソフトウェアによるサービスは付加価値を創出する 重要な一環であることを明らかにした。その一環はサプライヤーにも、 図 5 A p p S t o r e お よ び P l a y S t o re の 収 入 ( 2 0 1 4 年 ) 単位:億ドル 120 100 80 60 40 20 0 App Store Play Store 注 : 中 国 で は 、P l a y S t o r e の 使 用 が 禁 じ ら れ て い る た め 、中 国 で の P l a y Store の 収 入 が ゼ ロ と す る 。 出 所 : ア ッ プ ル 社 HP& App 16 17 18 19 Annie デ ー タ 19を 参 照 の う え 筆 者 作 成 ア ッ プ 社 HP よ り A p p A n n i e I n d e x : 2 0 1 4 R e t ro s p e c t i ve よ り A p p A n n i e I n d e x : 2 0 1 4 R e t ro s p e c t i ve よ り A p p A n n i e I n d e x : 2 0 1 4 R e t ro s p e c t i v e 9 図 6 A p p S to r e お よ び P l a y S t o r e の ダ ウ ロ ー ド 数 ( 2 0 1 4 年 ) 単 位:億 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 App Store 注: Play Store 中 国 で は 、P l a y S t o r e の 使 用 が 禁 じ ら れ て い る た め 、中 国 で の P l a y Store の ダ ウ ロ ー ド 数 が ゼ ロ と す る 。 出 所 : App Annie デ ー タ 20を 参 照 の う え 筆 者 作 成 キャリアにも影響されず、創出された付加価値はほぼ各メーカーが独占し ている特性を持つ。また、ソフトウェアによる付加価値は顧客から直接的 に メ ー カ ー に 流 れ て い く の で 、メ ー カ ー と 顧 客 の 間 に 、独 立 し た バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン で あ る と 考 え ら れ る 。そ し て 、シ ス テ ム で あ る ア ン ド ロ イ ド と i O S はそれぞれグーグル社とアップル社に所有され、スマートフォン業界のプ ラ ッ ト フ ォ ー ム で も あ る 。 た だ 、 ア ン ド ロ イ ド は オ ー プ ン ソ ー ス で 、 iOS はクローズドソースである。各メーカーはオープンソースのアンドロイド のベースで、自社のシステムの開発ができる。それに対して、クローズド ソ ー ス の iOS は ア ッ プ ル 社 の 製 品 に し か 搭 載 さ れ な い 。し か し 、プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 21で あ る 以 上 、 オ ー プ ン ソ ー ス で あ ろ う 、 ク ロ ー ズ ド ソ ー ス で あ 20 21 A p p A n n i e I n d e x : 2 0 1 4 R e t ro s p e c t i v e プ ラ ッ ト フ ォ ー ム と は 、エ レ ク ト ロ ニ ク ス 業 界 に お い て 、ソ フ ト ウ ェ ア やハードウェアを動作させるために必要な基盤となるハードウェアや O S の こ と で あ る 。 た と え ば 、 Wi n d o ws や イ ン テ ル の チ ッ プ な ど の こ と である。プラットフォーム企業とは、プラットフォームを保有している 企業である。 10 ろ う 、業 界 の 基 準 で あ り 、膨 大 な ラ イ セ ン ス 料 を 得 ら れ る に も か か わ ら ず 、 イ ノ ベ ー シ ョ ン の 軌 道 を も し っ か り コ ン ト ロ ー ル し て い る ( K a wa k a m i a n d S t u r ge o n 2 0 1 0 : 1 5 )。 3 政策とソフトウェア 図 5 と 図 6 が 示 し た デ ー タ に は 、ア ン ド ロ イ ド を 搭 載 し た 中 国 ロ ー カ ル ス マ ー ト フ ォ ン の 収 入 お よ び ダ ウ ロ ー ド 数 が 含 ま れ て い な い 。そ の 原 因 は 、 中 国 政 府 の 政 策 で 、 Play Store の 使 用 は 禁 じ ら れ て い る か ら 。 ソ フ ト ウ ェ アへの影響は各国の政策が最も大きいである。しかし、各国の政策は必ず ソフトウェアにマイナスの影響を与えるというわけでもない。ここで、代 表例である中国の政策を考察しよう。 中 国 工 信 部( 全 称:工 業 和 信 息 化 部 )は 2 0 1 3 年 4 月 11 日 に 公 表 し た『 关 于 加 强 移 动 智 能 终 端 管 理 的 通 知 』 22の 第 3 条 に よ る と 、 す べ て の ス マ ー ト フォンメーカーはスマートフォンのシステムのバージョンおよびプリイン ストールアプリの情報を中国工信部に申告しなければならない。言い換え れば、スマートフォンのシステムやプリインストールアプリが中国工信部 の審査を通らないと、市場での販売はできないということである。また、 第 5 条によると、審査合格としても、開発によるシステムの更新およびそ れによるプリインストールアプリの更新が発生した場合、メーカーは中国 工 信 部 に 申 告 す べ き で あ る 。 厳 し い 中 国 政 策 の 中 、 グ ー グ ル は 2010 年 に 中国市場から撤退してしまった。そして、アンドロイドというシステムを 搭 載 し た ス マ ー ト フ ォ ン に 、 グ ー グ ル の ア プ リ ( P l a y S t o re , G o o g l e m a p など)のプリインストールすることも中国工信部は一切許されない。 ま た 、 2 0 11 年 に グ ー グ ル が モ ト ロ ー ラ を 買 収 し た 後 、 2 0 1 2 年 5 月 に 、 中国商務部がそれに関する政策を出した。 『关于附加限制性条件批准谷歌收 22全 文 は 中 华 人 民 共 和 国 工 业 和 信 息 化 部 HP ま で 参 考 し て く だ さ い 。 11 购摩托罗拉移动经营者集中反垄断审查决定的公告』 23に よ る と 、グ ー グ ル がモトローラを買収することによって、グーグルはアンドロイドに対する 支配力(独占力)があげられ、現在のスマートフォン市場の秩序を乱し、 各メーカーに不平等な条件を強制的に押し付ける動機・可能性がある。最 終的に悪競争をもたらし、消費者の利益を損なう。その理由で、中国商務 部はグーグルにアンドロイドの開放性・無料性を維持させることを義務付 けた。そして、6 か月ごとに、中国商務部に報告しなければならないと命 じた。 しかし、中国政府が外国のスマートフォンを厳しく取り締まることによ って、ローカル企業に絶好のチャンスを与えた。そのなか、最も注目しす べ き で あ る 企 業 は X i a o mi で あ る 。 表 1 が 示 し て い る よ う に 、 ロ ー カ ル で あ る 企 業 X i a o m i は 2 0 1 0 年 に 会 社 設 立 し て か ら 5 年 間 経 た ず 、中 国 に お け るスマートフォン市場シェアおよび年間出荷量の 1 位に上った。さらに、 ロ ー カ ル 企 業 で あ る L e n o v o や Hu a we i も 、そ れ ぞ れ 市 場 シ ェ ア 11 .6 5 % お よ び 10.18%で 、3 位 と 5 位 に ラ ン キ ン グ さ れ た 。 中 国 信 息 通 信 研 究 院 24の デ ー タ に よ る と 、 中 国 ロ ー カ ル 企 業 は 2014 年 中 国 ス マ ー ト フ ォ ン 総 出 荷 シェアの 8 割 以上を 占めて いる。中国 ロ ーカル 企業が 中国ス マート フォン 市 場 の 大 半 を 占 め 、急 成 長 を 遂 げ た の は 、 「 保 護 の 傘 」の よ う な 中 国 政 府 の 政策であったからのである。しかし、海外各国の政策は中国スマートフォ ンにとって、厳しい障壁である。スマートフォンのソフトウェアは知財の 1 つである。知的財産権の保護に対する健全な制度を持つ外国が知的財産 権 の 侵 害 を 厳 し く 取 り 締 ま っ て い る 。そ の 状 況 の 中 で 、海 外 進 出 の X i a o m i は 海 外 で 訴 訟 さ れ た こ と が 案 の 定 で あ る 25。 そ し て 、 こ れ か ら も 知 的 財 産 23全 文 は 中 华 人 民 共 和 国 商 务 部 HP ま で 参 考 し て く だ さ い 。 国 信 息 通 信 研 究 院 が 2015 年 1 月 12 日 リ リ ー ス し た デ ー タ で あ る 。 h t t p : / / w w w. c a tr. c n / k x y j / q w fb / z d yj / 2 0 1 4 年 7 月 、イ ン ド に 進 出 し た X i a o mi は エ リ ク ソ ン に ラ イ セ ン ス 料 を 24中 25 12 表 1 中 国 に お け る ス マ ー ト フ ォ ン 市 場 シ ェ ア お よ び 出 荷 量 ( 2014) 順位 メーカー 市場シェア% 出 荷 量( 百 万 台 ) 1 Xiaomi 14.97% 60.8 2 Samsung 14.38% 58.4 3 Lenovo 11 . 6 5 % 47.3 4 Apple 11 . 4 8 % 46.6 5 Hu a w e i 10.18% 41.3 出 所 : IHS よ り 筆 者 作 成 権の侵害で、各国での紛争が続くだろう。スマートフォンのソフトウェア にとって、各国の政策による影響は最も大きいである。しかし、立場によ って、マイナスの影響もプラスの影響もあり、諸刃の剣のような存在であ る。 Ⅳ 1 スマートフォンにおけるバリュー・チェーン分析 iPhone& Xiaomi の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン Ⅲで、スマートフォンの通信サービスおよびソフトウェアについて考察 した。そのうえで、Ⅳでは、スマートフォンのモノづくりの部分を考察す る 。 具 体 的 に は 、 iPhone お よ び Xiaomi の 例 を 取 り 上 げ て 考 察 し て い く 。 図 7 は iPhone の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン を 示 し て い る 。 そ の な か 、 製 品 の デザインおよびブランド企業にアップル社は独占している。そして、 Baldwin( 2012) に よ る と 、 そ の 二 つ の 活 動 は 、 バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン に お いて最も高付加価値を持つ活動である。高付加価値の活動をコントロール 支 払 う こ と を 拒 否 し た の で 、エ リ ク ソ ン に 訴 え ら れ た 。X i a o mi が 敗 訴 し 、、 インドのデリー高等裁判所から販売禁止の仮処分を受けた。 13 している企業は研究開発やイノベーションに力を入れ、参入障壁を高めて いく。それに対して、低付加価値の活動に位置している企業はより低い原 材 料 や よ り 低 い 人 件 費 に 頼 ら ざ る を 得 な い ( A p p e l b a u m , S mi t h a n d C h r i s t e r s o n 1 9 9 4 : 1 0 )。 さ ら に 、 ア ッ プ ル 社 は サ プ ラ イ ヤ ー に よ り よ い 品 質の部品を求めるのに対して、コストダウンを強いる行動も取っている。 そ の 状 況 の な か で 、韓 国 サ プ ラ イ ヤ ー は i P h o n e の 4 .7 % 、台 湾 企 業 と 日 本 企 業 は そ れ ぞ れ 0.5% 弱 の 取 り 分 し か 占 め て い な い 26 。 そ れ に 対 し て 、 X i a o mi の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン は 、 前 述 と い っ た よ う に 、 日 本 や ア メ リ カ な ど の 枠 組 み と 異 な る( 図 8 )。中 国 で は 、ス マ ー ト フ ォ ン は 白 物 家 電 の よ うに販売されているのが一般的である。また、ブランド力と交渉力の低い X i a o mi は ソ フ ト ウ ェ ア に よ る 価 値 を 除 く と 、バ リ ュ ー・チ ェ ー ン に お い て 、 価 値 の 取 り 分 が サ プ ラ イ ヤ ー よ り 低 い 。 た っ た の 9%で あ る 。 そ れ に 対 し て 、キ ャ リ ア( 中 国 移 動 )と サ プ ラ イ ヤ ー の 取 り 分 は そ れ ぞ れ 、4 9 % と 4 2 % を 占 め て い る( 程 2 0 1 5: 1 4 2 )。 そ の よ う な 構 造 の し た で 、 単 に モ ノ づ く 第7図 デザイ ン •Apple サプライ ヤー •サムスン •LG •シャープ iPhone の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン ブラン ド企業 組立 •Apple •ホンハイ キャリ ア •ソフトバン ク •au 顧 客 •消費者 注:実際は組立後、アップル社を通らずに、一部の製品はアップルストア に、一部はキャリアに出荷される。ただし、すべての製品はアップル のロゴを付けなければならないので、その流れを、第7図のように示 している。 出 所 : 程 ( 2014) よ り 修 正 26 東 洋 経 済 2012 年 5 月 19 日 記 事 ( 2012 年 6 月 4 日 閲 覧 ) 14 図8 デザイン •Rigo Design •英華達 Xiaomi の バ リ ュ ー ・ チ ェ ー ン サプライ ヤー •クアルコム •シャープ •天宇 組立 ブランド企業 •Xiaomi •ホンハイ •英華達 顧客 •消費者 キャリア •中国移動 •中国連通 注:ここでのデザインはハードウェアのデザインを指している。 R i g o D e s i gn と い う 会 社 は 2 0 1 4 年 11 月 に X i a o mi に 買 収 さ れ た 。 出 所 : 程 ( 2015) よ り 修 正 り の 面 で 勝 負 す る の は Xiaomi に と っ て 極 め て 困 難 で あ る 。 た だ し 、 モ ノ づくりおよびサービスの特性を両方持つスマートフォンに対しては、モノ づくりの面において勝ち目がないとしても、サービスの面においてまだチ ャ ン ス が 残 っ て い る 。X i a o m i の 成 功 例 は そ れ を 証 明 し た 。も ち ろ ん 、中 国 の政策にグーグルなどの企業との競争から保護されていることが前提であ る。 2 原価と付加価値の分配 本 研 究 で は 、i P h o n e の 原 価 お よ び X i a o mi の 原 価 を 取 り 上 げ て モ ノ づ く りの面を考察する。 表 2 が 示 し て い る よ う に 、 歴 代 iPhone に お い て 、 ア ッ プ ル 社 の 利 益 率 は ほ ぼ 7 割 を 維 持 し て い る 。し か し 、i P h o n e の 品 質 お よ び サ イ ズ が 上 が る 一方、サプライヤーに部品原価を維持することを求めずコストダウンを強 い る 行 動 を 取 っ て い る 。 iPhone5S と iPhone6 の 原 価 を 見 よ う 。 コ ア 部 品 のなかで、6 つの部品のコストが下がった。ディーラムの下がったコスト は 約 50%で 、 最 も 大 き い で あ る 。 ま た 、 全 体 的 に 見 れ ば 、 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ 、コ ネ ク テ ィ ビ テ ィ の コ ス ト 減 は そ れ ぞ れ 、1 8 ド ル と 5 ド ル で あ る 。特 15 表 2 i P h o n e 4 、 4 S 、 5 、 5 S 、 6 ( 1 6 GB ) の コ ア 部 品 の 原 価 1 Key Component (コ ア 部 品 ) Manufacturing cost ( 製 造 コ ス ト) NAND Flash (フラッシュメモリ) DRAM(DDR/DDR2) ( デ ィ ー ラ ム) Display & Touch screen (ディスプレイとタッチスクリーン) Processor(プロセッサー) Camera(カメラ) Wireless Section (ワイヤレスセクション) User interface & Sensor ユーザーインターフェイスセンサー WLAN/BT/FM/GPS (コネクティビティ) Power Management (パワーマネージメント) Battery(電 池 ) Mechanical/Electro-Mechanica l (メカニカル) Box contents ( ボ ッ ク ス コ ン テ ン ツ) Total Cost(トータルコスト) Wholesales price(Average) 平均卸売価格2 Profit rate (利 益 率 ) iPhone6 iPhone5S iPhone5 iPhone4S iPhone4 $4.00 $8.00 $8.00 $8.00 $6.50 $9.00 $6.00 $9.40 $10.40 $10.45 $19.20 $9.10 $27.00 $13.80 $11.00 $45.00 $41.00 $44.00 $37.00 $38.50 $20.00 $11.00 $33.00 $19.00 $13.00 $17.50 $18.00 $34.00 $15.00 $17.60 $23.54 $10.75 $10.75 $22.30 $6.50 $6.85 $10.13 $5.00 $6.50 $9.55 $8.50 $7.20 $3.93 $4.50 $33.00 $5.90 $33.00 $5.80 $10.80 $7.00 $7.00 $5.50 $207.00 $581 $196.00 $599 $175.31 $647 64% 67% 73% $22.00 $4.50 $7.00 $3.60 $30.00 $32.00 $15.00 $4.20 $7.50 $3.60 $28.00 $5.00 $7.00 $200.00 $649 $198.70 69% 69% $649 注1 本 研 究 の 原 材 料 リ ス ト は ハ ー ド ウ ェ ア だ け を 取 り 上 げ て い る 。ま た 、 iPhone4 、 iPhone4S 、 iPhone5 、 iPhone5S 、 iPhone6 の コ ス ト は そ れ ぞ れ リ リ ー ス さ れ た 時 の コ ス ト で あ る 。す な わ ち 、i P h o n e 4 、 iPhone4S、 iPhone5 、 iPhone5S、 iPhone6 の デ ー タ は そ れ ぞ れ 、 2 0 1 0 年 、 2 0 11 年 、 2 0 1 2 年 、 2 0 1 3 年 、 2 0 1 4 年 に 収 集 さ れ た デ ー タ である。 2 リ リ ー ス さ れ た 時 の す べ て の 機 種 ( 1 6 GB 、 3 2 GB 、 6 4 G B 、 1 2 8 GB ) の平均卸売価格である。 出 所 : I H S の 年 次 別 原 価 予 測 , d i g i ta l t re n d s 、Te ch S o u r c e 、S t . A u gu s t i n e を参照のうえ筆者補正。 に 、 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ が iPhone4 の 27 ド ル か ら 、 iPhone6 の 9 ド ル ま で 下がった。付加価値の視点からいえば、アップル社はフラッシュメモリの 1 8 ド ル の 付 加 価 値 を サ プ ラ イ ヤ ー か ら 奪 っ て き た 。ま た 、知 的 財 産 権 を め ぐ っ て 、 サ ム ス ン と 対 立 し て い る か な で 、 ア ッ プ ル 社 は 2013 年 か ら 本 格 16 表 3 Mi3、 Mi2 お よ び 廉 価 Red key co mp o ne nt (コ ア 部 品 ) Assemb led (組 立 ) M em or y ( メモ リ ) D i sp l a y & T o u c h s cr e e n ( デ ィス プ レ イ& タ ッ チ スク リ ー ン ) Pr o ce s s o r ( プ ロ セッ サ ー ) Ca m e r a (カ メ ラ ) Wireless Section (ワ イヤ レ ス セク シ ョ ン ) U s er i n t e r f ac e & S e n s o r イ ン タ ーフ ェ イ ス& セ ン サ ー WL A N /B T /F M /G P S ( コネ クテ ィ ビテ ィ) Pow e r Ma n a g em e n t (パ ワ ーマネ ー ジ メ ント ) B a t t e ry ( バッ テ リ ー) M e ch a n i ca l / E l e c t r o - M e ch a n i ca l ( メカニ カ ル) o th e r s (m a t e l b o x an d s o o n ) 他 ( 金 属 ボ ッ クス な ど ) T o ta l C o s t (ト ー タ ル コ スト ) Retail price(販 売 価 格 )2 Profit(利 益 ) p r o f i t ra t e ( 利 益 率 ) R i ce の コ ア 部 品 の 原 価 1 Mi3 Mi2 1 6G B $ 2. 2 7 1 6G B $ 12 . 00 R ed R ic e 4G B $ 2. 0 0 $ 19 . 00 $ 42 . 00 $ 11 . 20 $ 55 . 41 $ 60 . 00 $ 27 . 00 $ 27 . 00 $ 16 . 66 $ 30 . 00 $ 18 . 00 $ 16 . 80 $ 8. 8 0 $ 21 . 67 -- $ 9. 3 0 $ 9. 1 6 $ 7. 0 0 -- $ 4. 3 0 $ 7. 0 0 $ 1. 2 0 $ 2. 2 3 $ 8. 8 0 -- $ 6. 0 6 $ 7. 0 0 $ 3. 8 0 $ 19 . 82 $ 30 . 00 $ 3. 3 0 $ 3. 8 7 $ 50 . 00 $ 1. 3 0 $ 18 7 .4 5 $ 24 1 .5 4 $ 54 . 09 2 2% $ 27 2 .0 0 $ 32 1 .8 0 $ 49 . 80 1 5% $ 84 . 70 $ 13 0 .0 0 $ 45 . 30 3 5% 注1:本研究では、各機種の最少容量バーションのデータを使う。 Red Rice の 機 種 は 廉 価 版 機 種 な の で 、 4 GB の 容 量 し か な い 。 2 :販 売 価 格 に 関 し て は 、 リ リ ー ス さ れ た 時 点 で の 価 格 を 利 用 し た 。 出 所 : T E C H I N S I G H T S 、 M o r ga n S t a n l e y R e s e a r ch E s ti m a te 、 D a i w a お よ び X i a o mi HP を 参 照 の う え 筆 者 補 正 にサムスンから脱却し始めた。そして、プロセッサーの製造は台湾企業で あ る T SM C 2 7 に 移 転 し 、 A 8 の 6 割 2 8 を 占 め て い る 。 優 位 性 を 持 つ ア ッ プ ル 27 Ta i wa n S e m i c o n d u c to r M a n u f a c tu r i n g C o . の 略 称 17 社は、サプライヤーによりいい品質部品の提供を求める割に、コストダウ ンをも強いる行動を取り続ける。それによって、各サプライヤーからの価 値を獲得する。 そ れ に 対 し て 、 優 位 性 を 持 た な い X i a o mi の 原 価 は 表 3 に な る 。 i P h o n e と 比 べ る と 、利 益 率 が 低 下 で あ る 。そ れ ぞ れ の 利 益 率 は 、M i 3 の 2 2 % 、M i 2 の 1 5 % お よ び R e d R i c e 3 5 % に な っ て い る 。し か し 、 低 下 の 利 益 率 で あ る に も か か わ ら ず 、X i a o mi の 本 体 コ ス ト は i P h o n e の 本 体 コ ス ト に 負 け な い ほ ど で あ る 。 同 時 期 に リ リ ー ス さ れ た iPhone5S と Mi3 を 比 較 的 に み よ う 。 i P h o n e 5 S の コ ス ト は 1 9 8 . 7 0 ド ル で 、M i 3 の コ ス ト は 1 8 7 . 5 4 ド ル で あ る 。 11 ド ル の コ ス ト の 差 し か な い 。原 因 の 1 つ は も ち ろ ん 交 渉 力 の 低 下 で コ ス ト の 削 減 が で き な か っ た 。 も う ひ と つ は X i a o mi の コ ア 部 品 の サ プ ラ イ ヤ ー が i P h o n e と 同 じ で 、ス ペ ッ ク 的 に は 、i P h o n e に 負 け な い 高 性 能 を 持 つ 。 X i a o m i が 、 モ ノ づ く り に お い て 、 利 益 を 生 じ る と い う 狙 い を 諦 め 、「 高 性 能 ・ 低 価 格 」 と い う 破 壊 的 な イ ノ ベ ー シ ョ ン ( Christensen,C.M. 1997: 10) を 起 こ し 、 市 場 シ ェ ア を 奪 う こ と を 最 初 か ら 狙 っ た 。 表 1 が 示 し た よ う に 、2014 年 Xiaomi は 中 国 の ス マ ー ト フ ォ ン 市 場 に お い て 、サ ム ソ ン を 抜き、1 位にのぼった。 Ⅴ むすびにかえて 本研究では、スマートフォンのバリュー・チェーンを分析し、特にサー ビスを中心に考察した。スマートフォンのサービスは有形資産によるサー ビスと無形資産によるサービスに分けて分析した。有形資産によるサービ スはキャリアが提供している通信サービスである。無形資産によるサービ ス は ソ フ ト ウ ェ ア に よ る サ ー ビ ス で あ る 。さ ら に 、無 形 資 産 を ア プ リ と O S 28 Appleinsider 2014 年 9 月 23 日 記 事 ( 2015 年 5 月 1 日 閲 覧 ) 18 の 2 種 類 に 分 け て 、 そ れ ぞ れ の サ ー ビ ス を 考 察 し た 。 Xiaomi の 成 功 例 が これからスマートフォンの競争および付加価値の創出はサービスに移るこ とを示唆した。 モノとサービスという特性を両面持つスマートフォンにおいて、優位性 はもはやサービスの所有企業に移っている。単にモノづくりにおいて、バ リュー・チェーンの分析および各活動の関係の考察を行うことは全体像を 把握することができないほか、モノづくりに偏る可能性が高い。 また、サービスの分析を行う時に、各国の政策を考察しなければならな い。グーグルのアンドロイドの例によると、いかに優位性を持っても、相 手国の政策に反すれば、研究対象にもならない。しかし、中国において、 グ ー グ ル は 禁 じ ら れ 、 iOS は 禁 じ ら れ な い の が な ぜ だ ろ う 。 簡 潔 に 説 明 す る と 、 グ ー グ ル は 検 索 機 能 の 提 供 を 行 っ て い て 、 iOS は た っ た の シ ス テ ム であるから。その背後には、中国政府の情報規制という問題があると示唆 した。 バリュー・チェーン分析という手法を用いスマートフォンを研究対象に して考察する時に、モノとサービスという特性を両面持つので、完全にモ ノとサービスを分離してそれぞれ考察するのは困難である。特に、企業内 部 で 生 産 ・ 製 造 さ れ た 製 品 に 関 し て は 、 そ の な か の サ ー ビ ス 29を 企 業 間 の 取 引 か ら 分 離 す る の が 困 難 で あ る 30。 常 に 、 サ ー ビ ス と 提 供 さ れ た 製 品 あ るいは他のサービスをバンドリングされているから、単にサービスを取り 上 げ る の も 難 し い で あ る 3 1 。し か し 、i P h o n e & X i a o m i は 生 産 ・ 製 造 す べ て 29 従 来 の サ ー ビ ス を 指 し て い る 。つ ま り 、モ ノ づ く り に お け る 生 産 ・ 製 造 の間のサービスを指している。 3 0 2 0 1 4 年 8 月 2 6 日 F u n g Gl o b a l I n s ti t u ti o n に 載 せ た L o w.P の イ ン タ ビ ューを参照 ( h t tp : / / w w w. f u n g gl o b a l i n s ti t u te . o r g / e n / c o n v e rs a ti o n -p a t ri c k -l o w - v a l u e -s e r vi c e s )( 2 0 1 4 年 11 月 2 9 日 閲 覧 )。 3 1 2 0 1 4 年 9 月 3 0 日 F u n g Gl o b a l I n s ti t u ti o n に 載 せ た L o w.P の イ ン タ ビ ューを参照 19 アウトソーシングしているので、分離するのが困難ではなかった。 だが、アウトソーシングでない製品に対するサービスの分離はどこまで できるのかが今後の課題であり、バリュー・チェーン分析の適用範囲の拡 大にもつながる。 参考文献 Appelbaum, R.P., D.Smith and B.Christerson(1994) Commodity Chains and industrial Restructuring in the Pacific Rim:Garment Trade and M a n u f a c t u r i n g , C om m od i t y C ha i ns an d G l ob a l C a pi t al i sm , G.Gereffi and M.Korzeniewicz(Ed.), Green Press. 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