郵趣における Acrobat PDF 文書の利用について

郵趣における Acrobat PDF 文書の利用について
平成14年1月3日 。
平成14年1月6日一部訂正
パソコン郵趣部会 山本 昂
ス コ ッ ト カ タ ロ グ C D R O M の出現
平成13年(2001)夏に郵趣出版の平林氏からスコットカタログの CD-ROM 版が出版されたこと知らされた。
そこで、米国版の CDROM をパソコンにセットして Acrobat Reader を使って検索を試みた。 Acrobat
Reader 付属の検索機能は単なる文字列検索で、検索語を入力して検索を選択すると巻頭から順に検索を始め
る。何ページ目を検索中なのかは表示から判るがファイルサイズの大きいカタログなどの検索には検索速度の
問題、一カ所ごとに検索するだけで、複数の検索語を使った、アンド検索、オア検索などができないことは致
命的といえるほどの使い難さといえる。それでも、さらに研究してみようとおもって国連、フランス編などを
購入して使い勝手を試した見た。購入するにはスコットのインターネットサイトから簡単にできる。支払いは
クレジットカードでできるので便利である。 現在入手できるスコットカタログ CD は下記の通り
USA, CANADA, UN SET
$47.99
DDR GERMANY SET
$27.99
GB, CHANNEL ISDS SET
$27.99
USA
$44.99
SPECIALIZED
第1図
国別カタログCDは次の国が販売されていて各
$19.99 である
Austria, Australia, Belgium, Canada, Channel
Islands, France, Germany, German Democratic
Republic, Israel, Italy, Great
Korea, Mexico,
Britain,
South
Monaco, New Zealand, South
Korea, USA の各国
スコットカタログ C D の入手方法
http://www.amosadvantage.com/scottonline/
にアクセスする。上記のページが表示される右手に
CD の 絵 の あ る と こ ろ を ク リ ッ ク す る と
US,UN,Canada 版の広告ページがでてくる。左手の
Catalogue CD をクリックすると現在販売
中のリストがでてくる。
第2図 Acrobat Reader での検索結果
1
さて、スコットカタログCDフランス編を入手してこれを自分のパソコンに入れたとする。 Acrobat
Reader で開くとの最初のページが現れる。 Acrobat Reader のメニューバーから 編 集 → 検 索を選ぶと検索語を入
れる窓が開くので TGV を入れて検索すると、#2173 切手がヒットする(第2図)。編 集 → 次 を 検 索 を 選
択しても巻末まで検索して該当がありませんと表示される。ところが再度検索→検索を選んで検索語に
T.G.V. を入れてやると#1392 T.G.V. Turbo train の切手がヒットする。これは Acrobat Reader では単一検
索語での検索しかできないので "TGV" と "T.G.V." とは別の語と判断されるからである。もしも"TGV" と
"T.G.V." 二つの検索語を "and" と "or" を使った複合検索ができれば一度の検索で両方がヒットする筈であ
る。さらに欲張ればいきなり PDF ファイルの該当ページを表示するのではなくヒットした部分の一覧が表
示されて、この中から指定した箇所が開くようにできるほうがはるかに便利である。 Acrobat Reader によ
るスコットカタログの検索はそれぞれ1分近くを要した。これは検索を要求するとファイルの先頭から検索を
始めるからで、フランスのようにページ数の少ない国は早いが、米国の様にページ数の多い国ではもっと遅い
ことになる。私のように図案で切手を探すものには分厚いカタログを全ページを目で追って求める図案の切手
を探すやり方をしてきた人間には時間は掛かってもパソコンで検索するほうが抜けがない点では評価はする
もののもっと検索手段が多様でないと不便で仕方がない。pdfファイル( Acrobat を使って圧縮した文書
ファイル)による郵趣情報の保存や交換と Acrobat 閲覧ソフトによるこのファイルの高度利用はまだまだだ
なと感じた
そもそも、印刷版スコットカタログの版下を Acrobat という市販のソフトで圧縮してあり、無償で配布さ
れている Acrobat Reader ソフトで解凍して読む方式になっている。十年ほど前からスコットの編集を電子編
集にしたので、この時期以後の切手写真がカラーになっているような改善はされているが、古い部分は手によ
る編集をそのまま採用してる。切手の写真の解像度も小さいので古い切手のイメージの拡大はあまり使えない。
最近の切手のイメージは拡大に耐える解像度になっている。それ以上に電子出版に際しては同意語の統一など
検索に便利なように最初の原稿段階から配慮しないと新しい革袋に古い酒をいれたような結果に終わる。
スコットガタログCDへの過大な期待は裏切られた結果となった。
【インターネット版郵趣ウィークリーの試行】
過去3年間 JPS のホームページプロジェクトでインターネットを使った会員サービスの改善に頭を悩ませ
てきた。郵趣ウィークリー(YW))は情報誌だから購読者の手許に情報を迅速に届けることが最優先する。毎週
水曜日までの取材内容を木曜日に印刷して金曜日に発送する日程では、首都圏の一部、航空便の便の良い札幌、
大阪、福岡など一部の地方で土曜日配達、他の地方は月曜日配達になる。我家は 2/3 は土曜配達、1/3 は月曜
配達になる。土曜に受け取れば郵頼などの処理を休日に済ませられるが、月曜帰宅後に読むと数日遅くなる。
もしインターネットで YW を配布できれば全国どこでも金曜夜には読める。そう考えて提案した結果採用と
なり昨年1号から実施された。年末の 50 号で一年の試行期間が終わって 2001 年から有償購読となった。当
初は速報性と郵送料の節約が両立する。印刷版を買わずに、インターネット版だけ購読するなら、購読料の引
き下げが実現できることだけが頭にあった。
10月頃に日経パソコン誌上で(株)クセロの広告に目を留めた。同社では Acrobat 5.0 に対応した全文
検索プラグインを開発市販するというものであった。早速同社に資料と評価版 CDROM を要求して試してみ
た。いくつかのプラグインがあって法人が業務上大々的に使うには良いのかも知れないが、パソコンを利用す
る個人が自分の趣味に使うにしては牛刀の感を免れなかった。初期画面からどうするかが判らず、ヘルプを見
2
るのは字が小さいし、我慢して長時間掛けてマニュアルを読むのはかなわないのでそのままにしていた。
《 注》( 株 ) ク セ ロ の ホ ー ム ペ ー ジ か ら 評 価 版 を 入 手 で き る
http://www.xelo.ne.jp/
年末に町田の小さなパソコンショップを冷やかしていたらPDF高速王2というソフトを見付けた。箱書き
を読んでみると検索だけに機能を絞り込んであるし、 Acrobat 本体は必要とするがプラグインの価格は1万
円以下で手頃である。これなら YW の全文検索ができるかなと考えて買い求めた
このソフトは(株)アスクの PDF 活用ユーティリティーPDF高速王2(PDFinder3.0)標準小売価格 12,800
円(実売価格 9000 円程度)で超高速検索で合計2万ページの複数のPDFファイルを2秒で検索するという
ものであり AND・OR の組み合わせ検索も可能、一旦データベースを作成すれば検索はワンタッチで可能で
あるとうたわれていた。
元々 Acrobat 4.0 はパソコンにインストール済みだったので、このプラグインをインストールしてみた。こ
の作業は簡単でCDROMを挿入すればオートランでスタートして名前とキー(保証書記載)を入力するだけ
で完了。
Acrobat 4.0 を立ち上げ、メニューバーのプラグイン(P)をクリックすると PDFinder 検索、PDFinder デ
ータベース作成という二つの選択肢がでる。最初にデータベース作成をクリックすると第3図のような窓が開
き元の PDF ファイルのあるディレクトリとデータベース作成先ディレクトリを求めてくる。
私の場合 d:¥yw¥yw2001 というディレクトリに昨年分の YW1号∼50号の PDF ファイルがダウンロード
してためてあるので両方ともこのディレクトリを指定した。
(第3図)
YW 各号の PDF ファイルのサイズは 600KB 前後で 50 フ
ァイル合計で 30MB 程度である文書の総ページ数は約 300
ページ、この検索データベース作成に要した時間は CPU 能
力にもよるが2分程度であった。データベースとして新たに
作成されたファイルは6個の*.SJ というファイルで合計
6MB ほどであった。
第3図
第5図
第4図
3
次にここで作ったデータベースを使って検索を試みた。多くの方に興味のある題材と思い財務省、大蔵省とい
う二つの検索語で OR 検索をしてみた。検索語を入れて OR か AND かを選んで検索ボタンをクリックすると
能書き通り1秒で第4図のような検索結果が表示された。ヒットした検索語が赤字表示されてその前後の文字
が黒字表示されるのと YW 何号何ページに記載があるという表示がでている。
最初の二つは大蔵省内郵便局が財務省内郵便局に局名改称になった記事なのでお目当ての財務省銘切手の第
一報は三番目である。この項をダブルクリックすると第5図のように当該ページが表示される。
次にエゾクロテンと検索語を入れるとこれも1秒で3件発見できる。最初は2号の切手の発行難内記事で図
案説明などのデータが書かれている。次は5号で関係小型印の情報がある。最後は14号でこの切手を題材に
してふみカードの発行案内記事であった。この記事の部分をマウスでなぞってその内容をリーフにコピーする
こともできる。該当記事からリーフに書き込みたい図案説明文をカットアンドペーストしてみた。
〔題材について〕
エゾクロテンは,北海道に生息するイタチ科の動物。他のイタチ科の動物と同様に捕食性を持ち,活動的に行
動し餌を獲る。巣は自然の岩穴などを利用し,冬ごもりはしない。現在,生息数の減少等が考慮されて捕獲禁
止となっている。
切手は,雪の中から顔を出すエゾクロテンの写真で,北海道の自然と北国の動物の愛らしさを表現している
《YW2号1ページの記事をAcrobatのソフトを使ってコピーした状態を示す》
アルバムリーフに限らず自分用のメモにするのも自由である。但し支部報などに転記する場合には著作権上
の問題はあるが、郵政事業庁の発表文の部分だけなら。その広報目的からして転記に異議はない筈である。
次に先ほどのスコットカタログのTGV検索をこのプラグインを使って再度試みた。T.G.V.と TGV を or 検
索すると、あっという間に該当個所のリストが表示される間違いなく2件が表示された。
例えばフランスの国別コレクションをされている方ならスコットの内1巻まるまる買わなくてもフランス
と領土の CDROM を一枚買ってこの検索ソフトを使えば、手持ち品の整理やウオントリストの維持など大幅
な省力ができる。またアルバムリーフ作成に切手の発行年月日、名称、額面などは PDF 文書からカットアン
ドペーストでアルバム上に転記できるので入力間違いなどの心配もないし簡単である。
このプラグインはインストールも操作も極めて簡単でマニュアルはA5版 20 ページほどの小冊子でる。
単純な検索から複合検索のやり方までが書かれている。最後のQアンドAに興味ある記載があった。
Q:PDFinder を CD-ROM ではいふしたいのですが
A:CD-ROM で配布する場合、CD-ROM 出版システム「PDFinder Basic Kit 3.0」があります。出版システム
には Acrobat Reader 用の PDFinder が付属されており Acrobatt4.0/4.5 を持っていない不特定多数のユー
ザーに配布する際最適です。詳細はお問い合わせ下さいと書かれている。
これは大変魅力的なものである。Pdf 文書の検索をしたいだけの購読者に Acrobatt 本体や検索ソフトを買
ってもらうのは大変な負担だが、無償配布のその CD だけに使える検索ソフトが安価のコストでつけられる
と CD による出版は非常に簡単になる。これは是非よく調べてみたい。
今後広がるAcrobat文書の利用
現在の少部数の印刷物のコスト高騰、印刷物送付費用の負担増の趨勢からして今後、学術雑誌の論文や記事、
4
カタログなどの印刷物は Acrobat pdf 文書が同時にインターネットで配布されることが増えると考えるとこ
のような検索ソフトは大変便利である。支部報なども印刷物で配布するには郵送料の負担が重い。秋田支部の
ように支部報最近号を画像でホームページに掲載しているが、これを Acrobat pdf 文書で掲載すると非常に
鮮明に表示される上メモリーの負担が軽減される。Acrobat pdf 文書は再編集、印刷などに不許可、パスワー
ド付き許可、許可などの指定ができるので、さわりの部分だけ表示して購読会員になれば全文のプリントをパ
スワード付き許可を指定して、購読会員にはパスワードを与えておけば郵送や印刷代なしに希望者に配布でき
るほか、会員が印刷物のほかに Acrobat pdf 文書を持てば、探したい記事を簡単に検索できる便利さが得られ
る。支部報編集者のメリットは計り知れない。合本のようなまとまった Acrobat pdf 文書に Acrobat Reader
用の PDFinder を一緒に焼き付けておけば、CDROM を買った人は特別なソフトを必要なく利用できる可能
性があると思われる。
以上私の Acrobat pdf 文書を利用した郵趣情報の利用体験を簡単にまとめてみた。パソコンにさほど慣れ
ておられない方にも理解できるようにややくどい表現をしたが、反面パソコンに習熟された方には冗長になっ
たと思うがお許し頂きたい。
私は風景印データベースで図案別、局名別、都道府県別など使用者が必要の応じて自由に検索できる形態での
チェックリスト配布をしたいと考えている。現在のやり方ではデータベースに同じアプリケーションソフトを
持っていない人には使えないので何種類ものファイルで提供せざるを得ないのでこれの維持管理は煩雑であ
る。やむなく文書での配布に留まっている。現在改訂中の風景スタンプ集は費用のと購入者数見込みの関係で
現行印のみのデータ収録に留めてある。
少数の収集家が廃止印も含めた全データの入手を希望している。例えば、前の「全国郵便局 10000 局風景
スタンプ集」のようなカタログをPDF版だけで作成してインターネットサイトに内容見本を置き、希望者に
フルサイズのファイルをメール添付ないしはCDROMの形式で買ってもらえば、たとえ Acrobat や検索ソ
フトを買う負担は掛かっても初期投資だけの問題で好みの情報を得られる便宜を得ることができると思う。
日本郵趣出版でも1年分のYWの PDF ファイルや「郵趣」の新切手ニュースの1年分の CDROM、あるいは
「郵趣」全体の1年分の PDF を CDROM で販売してもこれを希望する読者に提供できるだろう。
この方式のメリットは出版側には制作コストは僅かで、在庫や売れ残りのリスクが極めて小さい点にあるの
で少数読者対象の企画が実現しやすい点にある。
5