ワールドコールレポート (Vol.6) 2013 年版 平成 26 年 3 月 31 日 一般財団法人 石炭エネルギーセンター アジア太平洋コールフローセンター 技術・情報委員会 はじめに ワールドコールレポート(WCR)は、弊財団が石炭資源、石炭需給、石炭利用と地球環 境問題、石炭分野における各国との協力等に関し過去 1 年(年度)における最新動向を中 心にとりまとめ、弊財団会員各位に情報提供することを目的に平成 20 年度より発刊してま いりました。関係の皆様からのご要望にお応えし、平成 24 年度(Vol.4)からはより広汎に ご利用いただくべく、ホームページ上で一般公開を始めまして今年度で 3 年目を迎えまし た。 資源量、生産量・消費量や輸出入等の統計データにつきましては、WEC や IEA、各国政 府機関等が出している統計資料を元に弊財団にて編集し、毎年更新しております。 また、弊財団として独自に収集した石炭価格や発電設備等にかかる情報が反映されてい ること、さらに、石炭に関する主要産炭国等との政策対話や石炭の上下流を多角的に捉え た各種トピックス等も本レポートの特色となっています。 本レポートが石炭関係者各位のご参考に供することができれば幸いでございます。 平成 26 年 3 月 一般財団法人 石炭エネルギーセンター(JCOAL) ワールドコールレポート Vol.6 目次 第 1 章 石炭の需給(要旨)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1.1 石炭資源・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.2 石炭需給・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.2.1 生産・消費・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.2.2 輸出・輸入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 1.2.3 石炭需給見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 1.3 各国の石炭事情・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 1.3.1 豪州・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 1.3.2 中国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 1.3.3 インド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 1.3.4 インドネシア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 1.3.5 ベトナム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 1.3.6 米国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53 1.3.7 カナダ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65 1.3.8 モンゴル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67 1.3.9 ロシア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75 1.3.10 ポーランド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77 1.3.11 EU・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79 1.3.12 モザンビーク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87 1.3.13 南アフリカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 1.3.14 コロンビア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99 1.3.15 日本・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 1.4 石炭価格の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111 1.4.1 2013 年の石炭価格の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111 1.4.2 発熱量当たりの石油・LNG・一般炭価格の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111 1 . 5 中国 、 イ ン ド ネ シ ア 及 び ベ ト ナ ムにおける炭鉱災害状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 1.5.1 中国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 1.5.2 インドネシア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112 1.5.3 ベトナム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113 第 2 章 石炭利用の最新動向と地球環境問題(要旨)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114 2.1地球環境問題への取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115 2.1.1 地球温暖化問題をめぐる政治的な状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・115 2.1.2 各国の温室効果ガス削減目標ならびに温暖化対策に関連する主な税制・・・・・・・・・・・・120 2.2 世界の高効率石炭火力の最新動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・122 2.2.1 世界の USC 世界の USC の実績と計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・122 2.2.2 世界の IGCC の実績と計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・138 2.3 日本企業の海外石炭火力ビジネスの最新動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・142 2.3.1 石炭ボイラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・142 2.3.2 蒸気タービン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・151 2.3.3 脱硫設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・154 2.4 二酸化炭素回収・貯留(CCS)に関する動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・158 2.4.1 CCS・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・158 2.4.2 二酸化炭素回収・貯留に関する動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・159 2.4.3 Global CCS Institute 動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・172 第3章 石炭分野における各国との協力(要旨)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・173 3.1 多国間協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・174 3.1.1 アセアンエネルギーセンター・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・174 3.1.2 東アジア・ASEAN 経済研究センター(ERIA)の活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・176 3.1.3 Global CCS Institute(GCCSI)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・176 3.1.4 IEA-GHG・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・178 3.1.5 IEA-CCC・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・179 3.2 二国間協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・179 3.2.1 豪州・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・179 3.2.2 中国・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・179 3.2.3 インド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・181 3.2.4 インドネシア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・181 3.2.5 ベトナム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・183 3.2.6 カナダ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・184 3.2.7 モンゴル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・184 3.2.8 ポーランド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・188 3.2.9 モザンビーク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・189 第 1 章 石炭の需給 要旨 2012 年の世界の石炭生産量は、78 億トンを超えた。この 10 年間に、最も生産量が増加した国は中国 で 21 億トン、次にインドが 2.6 億トン増加した。2011 年の世界の石炭生産量のうち、中国が 45%を占めて おり、中国・米国・インドの上位三カ国で世界の 3 分の 2 の生産量である。一方、2012 年の石炭消費量は 約 77 億トンである。中国の伸びが突出しており、インドも生産量とともに増加している。上位国において欧 米や日本はほぼ横ばいであるが、韓国の消費量が増加している。 石炭輸出入については、数年前までは、アジアにおける日本、韓国及び台湾が豪州やインドネシアか ら、西欧諸国が南アフリカから輸入するという二つの大きな流れがあったが、ここ数年、中国、インドが輸 入量を急激に増やしていることと米国のシェール革命により余剰となった石炭が西欧及びアジアへ輸出 されるようになってきている。石炭輸出については、依然としてオーストラリア、インドネシアが大きなシェア を占めている。特にインドネシアの伸びが大きく 2011 年に最大輸出国となった。 中国の石炭輸入は 2007 年以降急増しており、逆に輸出が大幅に減少している。中国は 2011 年に、そ れまで最大輸入国であった日本を抜いて第1位となり、2012 年には 2 億 9,000 万トン輸入しており、2 位 の我が国の 1 億 8,000 万トンを大幅に上回っている。またインドもここ数年輸入量が増加しており、1 億 3,000 万トン輸入している。日本、台湾はほぼ横ばいで、韓国が増加している。 中国とインドは石炭生産国であるが、両国は広大な面積を有する国であり、石炭生産地と消費地の立 地の関係から、沿岸部は海外から輸入した方が安価で、調達しやすいことから、ここ数年両国の沿岸部 での石炭輸入が急増している。 世界全体で見ると、豪州及びインドネシアからの流れが最も大きく、中国、インド、日本、韓国、台湾等、 アジアに流れている。次に、陸続きであるロシアから欧州への流れが大きく、従来からあまり大きくは変化 していない。その次に、ここ 1、2 年で拡大している米国から欧州への流れがある。 石炭価格は、2010 年末の豪州の 2 回目の洪水発生時の高値から、ヨーロッパ経済危機の影響により 中国の経済成長が鈍化したことにより 2011 年から徐々に下降を続け、2013 年に入ってようやく下げ止ま りの傾向を示している。現在の価格水準はほぼ洪水前の 80 ドル/トン前後に戻っている。 今後の石炭価格ついては、世界的な経済の回復、特に中国経済の回復により現在の下降傾向から上 昇傾向に転ずるものと予想されるが、米国炭のアジアへの輸出が増加しており今後の石炭価格に影響を 及ぼすことが予想される。 1 1.1 石炭資源 世界の石炭資源量をまとめたものには、世界エネルギー会議(WEC)が発表する世界エネルギー資源 量調査結果がある。WEC は、3 年ごとに各国からの資源量報告をもとにまとめている。WEC による最新の 資源量報告は 2013 年になされた。これによると、石炭の確認可採埋蔵量(Proved Recoverable Reserves) は、8,915 億トンである。総石炭可採埋蔵量の上位 20 ヶ国について炭種別に表 1.1-1 に示す。 前回の WEC の石炭資源量の発表は 2010 年に行われており、3 年間での上位 20 ケ国の資源量増減についても まとめた。米国が全体の約 27%を占め、インドまでの上位 5 ヶ国で世界の 4 分の 3 近くを占めている。 IEA によると世界の石炭生産量は 2010 年 70 億 4,034 万トン、2011 年 74 億 3,985 万トン、2012 年 76 億 6,033 万トンである。 これらを用いて R(可採埋蔵量)/P(生産量)を計算すると、石炭の可採年数は 2010 年で 122 年、2012 年で 116 年となる。 表 1.1-1 世界の石炭確認可採埋蔵量 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 瀝青炭/ 無煙炭① 亜瀝青 炭② 108,501 49,088 62,200 37,100 56,100 48 15,351 21,500 98,618 97,472 33,700 2,100 米国 ロシア 中国 豪州 インド ドイツ ウクライナ カザフスタ ン 南アフリカ セルビア コロンビア カナダ ポーランド インドネシ ア ブラジル ギリシャ ボスニア・ ヘルツェゴビナ モンゴル ブルガリア トルコ その他 世界計 30,156 1 6,746 3,474 4,178 0 16,577 10 0 872 28,017 褐炭 ③ 30,176 10,450 18,600 37,200 4,500 40,500 1,945 12,100 合計 ④ 237,295 157,010 114,500 76,400 60,600 40,699 33,873 33,600 26.6 17.6 12.8 8.6 6.8 4.5 3.8 2,236 1,287 0 30,156 13,411 6,746 6,582 5,709 28,017 3.4 1.5 0.8 0.7 0.6 3,020 2,369 6,630 3,020 2,853 0.7 0.4 1,350 2,174 8,380 11,313 201,000 2,520 2,366 8,702 21,237 891,531 0.3 0.3 1.0 2.4 100 13,400 6,630 484 1,170 2 322 6,778 403,199 190 3,46 287,332 割合 % (100 万トン) (‘13-’10) 差(* 1) ① ② -51 -100 3.8 3.1 -8 +380 ③ -351 -380 -160 -1,520 +25,113 +2,071 0.3 -207 +3 +90 -1,563 +26,543 ④ 0 0 0 0 0 -151 0 0 0 -359 0 0 -84 -244 -1,105 +22,488 +2,071 0 0 0 0 +6,566 6,359 +336 +429 +5,613 +30,593 出典:Survey of Energy Resources 2013, WEC 註 *1 : 2013 年と 2010 年の可採埋蔵量の増減 1.2 石炭需給 1.2.1 生産・消費 図 1.2.1-1 に世界の石炭生産量の推移を示す。また、図 1.2.1-2、図 1.2.1-3 に一般炭・原料炭の生産 2 量をそれぞれ示す。IEA の報告によると 2012 年(推計)の世界の石炭生産量は約 76 億 6,000 万トンであ り、2010 年から約 4 億トンの大幅増加となった。中国が 34 億 549 万トンを生産し、世界の約 44%を占めて いる。中国の 2010 年比増加は 4 億 800 万トンであり、世界の生産増加分の 6 割を占める。オーストラリア までの上位 5 ヶ国で、世界の生産量の 4 分の 3 以上になる。 インドネシアは数千万トン規模で前年より生産量を伸ばしている。豪州は洪水の影響で 2011 年は 2010 年より生産量が減少している。 単位:1,000トン 9,000,000 その他 8,000,000 コロンビア 7,000,000 カザフスタン ポーランド 6,000,000 424,402 325,000 5,000,000 4,000,000 562,312 370,590 170,541 429,340 3,000,000 306,722 329,131 219,447 2,000,000 110,225 752,961 1,000,000 620,150 0 1980 420,737 442,808 574,950 589,347 992,441 922,062 995,127 1990 2000 南アフリカ ロシア オーストラリア インド 2,996,907 3,280,471 3,405,495 2,207,357 1,301,376 ドイツ インドネシア 1,025,846 971,591 933,561 982,038 402,237 360,336 アメリカ 中国 2005 2010 2011 2012 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.1-1 世界の石炭生産量推移 単位:1,000トン その他 7,000,000 ポーランド 6,000,000 コロンビア カザフスタン 5,000,000 252,681 322,799 4,000,000 3,000,000 220,996 282,796 2,000,000 1,000,000 0 169,285 760,388 839,685 909,470 1,178,348 1980 1990 2000 375,528 842,423 258,457 439,982 488,290 498,632 837,211 769,152 豪州 ロシア 南ア 903,251 インドネシア 2,537,415 2,770,978 2,895,048 1,910,709 592,462 551,928 243,346 483,147 251,118 357,510 インド 米国 2005 2010 2011 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.1-2 世界の一般炭生産量推移 3 2012 中国 単位:1,000トン 1,200,000 その他 ポーランド 1,000,000 カザフスタン 800,000 41,432 66,884 68,645 600,000 23,584 55,505 81,300 146,712 146,944 117,716 40,086 68,222 1980 1990 54,287 103,750 459,492 509,493 510,447 カナダ 米国 豪州 296,648 中国 123,028 2000 モンゴル ロシア 128,358 93,259 64,631 85,657 ウクライナ インド 51,035 85,458 0 81,656 46,444 400,000 200,000 162,929 44,328 65,362 47,224 74,599 2005 2010 2011 2012 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.1-3 世界の原料炭生産量推移 図 1.2.1-4 に世界の石炭消費量の推移を示す。また、図 1.2.1-5、図 1.2.1-6 に一般炭・原料炭の消費 量をそれぞれ示す。2012 年(推計)の世界の石炭消費量は 76 億 9,690 万トンであった。中国の増加が際 だっている。世界第 2 位の生産国であり消費国でもある米国は、やや消費量が減少している。日本の消 費量は 1 億 8,376 万トンで世界第 7 位であった。 単位:1,000トン その他 9,000,000 ウクライナ 8,000,000 カザフスタン 7,000,000 トルコ 韓国 6,000,000 228,108 223,820 676,895 5,000,000 4,000,000 241,844 214,594 463,510 3,000,000 451,015 374,080 220,707 2,000,000 1,000,000 0 488,138 107,796 650,167 626,010 1980 238,905 230,479 357,009 949,702 234,697 224,843 710,100 241,391 251,120 オーストラリア 753,150 ポーランド 920,300 821,925 日本 南アフリカ 1,029,721 966,391 ドイツ 3,200,683 815,949 3,501,294 3,665,893 2,219,618 1,049,632 1,337,525 1990 2000 ロシア インド アメリカ 2005 2010 2011 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.1-4 世界の石炭消費量推移 4 2012 中国 単位:1,000トン 7,000,000 6,000,000 その他 5,000,000 韓国 ロシア 4,000,000 394,230 3,000,000 296,333 2,000,000 1,000,000 588,414 625,858 826,136 730,720 564,951 166,231 87,296 546,581 559,188 862,251 日本 南ア インド 米国 932,692 中国 866,163 2,698,634 701,657 2,960,147 3,086,525 2011 2012 1,921,253 1,218,487 969,492 0 1980 1990 2000 2005 2010 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.1-5 世界の一般炭消費量推移 単位:1,000トン 1,200,000 1,000,000 その他 米国 800,000 27,210 57,679 49,701 600,000 32,579 53,817 53,665 31,590 52,199 56,348 83,801 79,795 74,256 200,000 57,081 43,938 35,852 64,934 53,885 39,491 0 66,822 80,140 1980 1990 韓国 日本 ロシア 20,883 56,528 44,991 39,041 400,000 ウクライナ インド 502,049 541,147 579,368 中国 298,365 119,038 2000 2005 2010 2011 2012 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.1-6 世界の原料炭消費量推移 1.2.2 輸出・輸入 図 1.2.2-1 に世界の石炭輸出量の推移を示す。また、図 1.2.2-2、図 1.2.2-3 に一般炭・原料炭の輸出 量をそれぞれ示す。2012 年(推計)の世界の石炭輸出量は 12 億 5,534 万トンであり、2011 年から約 2 億 トンの増加となった。インドネシアの輸出量は近年急激に増加しており、2011 年には豪州を抜いて世界 一の輸出国となった。2012 年も 2011 年から約 8,000 万トン増加の約 3 億 8,261 万トンとなり世界一となっ 5 ている。豪州の輸出量は 2011 年には洪水の影響等で落ち込んでいたが、2012 年は回復し 2010 年より わずかに多い 3 億 152 万トンとなった。米国は国内エネルギー需要におけるシェールガスの台頭により 輸出量を伸ばしており、2012 年は 1 億 1,407 万トンで 2011 年から約 1,600 万トン増加している。 単位:1,000トン 1,400,000 その他 1,200,000 ベトナム 74,349 1,000,000 66,396 800,000 68,148 74,132 600,000 71,442 132,801 400,000 69,910 53,607 45,306 86,558 53,061 38,329 232,330 49,900 95,982 200,000 186,962 59,185 83,286 0 42,384 1980 68,807 79,273 97,303 82,172 114,073 カザフスタン カナダ 134,201 124,593 南ア コロンビア 301,515 292,621 モンゴル 284,536 米国 ロシア 豪州 267,201 300,662 2010 2011 382,610 インドネシア 128,608 103,396 1990 2000 2005 2012 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.2-1 世界の石炭輸出量推移 単位:1,000トン 1,200,000 1,000,000 その他 ベトナム 800,000 68,351 66,396 600,000 77,852 73,603 カザフスタン 81,654 米国 115,928 南ア 66,932 114,245 400,000 70,918 52,670 135,356 109,580 コロンビア 159,152 144,081 豪州 76,023 200,000 107,415 87,801 0 1980 45,646 56,181 1990 2000 265,000 297,836 2010 2011 379,784 127,386 2005 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.2-2 世界の一般炭輸出量推移 6 ロシア 2012 インドネシア 単位:1,000トン 350,000 300,000 その他 250,000 18,030 15,099 14,182 20,962 18,251 19,059 27,528 27,666 30,725 63,078 63,392 モザンビーク インドネシア チェコ 200,000 9,983 26,710 150,000 ロシア モンゴル 26,001 カナダ 29,780 100,000 50,000 50,906 米国 57,568 157,265 57,246 33,487 99,161 124,915 140,455 142,363 2011 2012 豪州 57,750 0 1980 1990 2000 2005 2010 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.2-3 世界の原料炭輸出量推移 図 1.2.2-4 に世界の石炭輸入量の推移を示す。また、図 1.2.2-5、図 1.2.2-6 に一般炭・原料炭の輸入 量をそれぞれ示す。2012 年(推計)の世界の石炭輸入量は 12 億 7,603 万トンであり、2011 年から約 1.4 億トンの増加となった。2011 年に日本を抜いて輸入量世界一となった中国は 2012 年も急激に輸入量を 増やしており、2011 年から 1 億トン以上も増加して 2 億 8,879 万トンとなった。これは世界全体の 22%以上 である。日本の輸入量は 2011 年には震災の影響で落ち込んでいたが、2012 年は回復の兆しを見せ 1 億 8,377 万トンとなった。インドの輸入量は中国程ではないが堅調に増加しており、2012 年では 2011 年 から約 2,700 万トン増の 1 億 5,962 万トンとなった。 1,400,000 1,200,000 その他 1,000,000 英国 800,000 64,530 63,155 600,000 118,591 400,000 129,150 115,717 132,121 185,394 174,141 163,065 181,976 2010 2011 60,252 64,895 200,000 0 66,589 68,570 106,918 150,340 1980 1990 2000 76,758 38,586 176,975 125,535 183,771 図 1.2.2-4 世界の石炭輸入量推移 7 インド 日本 中国 288,787 出典 IEA Coal Information 2013 台湾 韓国 159,619 26,172 2005 ドイツ 2012 1,200,000 1,000,000 その他 ロシア 800,000 ドイツ 英国 600,000 56,118 60,553 57,631 400,000 96,916 90,431 55,284 200,000 45,320 53,210 93,259 41,983 0 1980 1990 2000 56,131 21,695 120,447 98,178 81,293 127,715 120,324 115,983 137,322 2010 2011 94,279 123,042 131,572 台湾 韓国 インド 日本 中国 218,143 18,977 2005 2012 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.2-5 世界の一般炭輸入量推移 300,000 250,000 その他 台湾 200,000 10,852 150,000 10,772 11,701 28,160 32,234 34,424 9,395 100,000 9,844 10,146 19,575 11,287 11,063 36,577 52,199 57,679 62,227 57,081 ウクライナ ブラジル インド 日本 53,817 中国 50,000 64,935 ドイツ 韓国 33,943 20,627 16,891 31,256 56,528 70,644 47,082 44,654 2010 2011 7,195 0 1980 1990 2000 2005 2012 出典 IEA Coal Information 2013 図 1.2.2-6 世界の原料炭輸入量推移 1.2.3 石炭需給見通し 表 1.2.3-1 に IEA による世界の一次エネルギー需要予測を示す。表において、Current Policies Scenario は現在の政策で推移した場合、New Policies Scenario は各国が新規の温暖化対策を積極的に 展開した場合、450 Scenario は産業革命後の温度上昇を 2℃に抑えるために大気中 CO2 濃度を 450ppm 以下とする場合である。基本的に石炭は今後も重要なエネルギー資源であると考えられており、特に Current Policies Scenario においては、2030 年には石炭需要が石油需要を抜くと予測されている。尚、 2013 年版の予測ではブラジルに注目し特集を組んでおり、主に最近発見された海上油田と天然ガス開 発により今後世界有数のエネルギー生産国になるであろうと記されていた。 8 表 1.2.3-1 世界の一次エネルギー需要予測(Mtoe 石油換算百万トン) New Policies Scenario 1990 2011 2020 2025 2030 2035 石炭 2,230 3,773 4,202 4,312 4,379 4,428 石油 3,231 4,108 4,470 4,548 4,602 4,661 ガス 1,668 2,787 3,273 3,576 3,846 4,119 原子力 526 674 886 979 1,053 1,119 水力 184 300 392 430 467 501 バイオマス 893 1,300 1,493 1,604 1,719 1,847 その他再生エネ 36 127 309 426 559 711 合計 8,769 13,070 15,025 15,877 16,623 17,387 Current Policies Scenario 450 Scenario 2020 2030 2035 2020 2030 2035 石炭 4,483 5,152 5,435 3,715 2,728 2,533 石油 4,546 4,901 5,094 4,264 3,842 3,577 ガス 3,335 4,007 4,369 3,148 3,372 3,357 原子力 866 990 1,020 924 1,348 1,521 水力 379 442 471 401 512 550 バイオマス 1,472 1,639 1,729 1,522 1,961 2,205 その他再生エネ 278 441 528 342 827 1,164 合計 15,359 17,572 18,646 14,316 14,589 14,908 1990 年と 2011 年は実績値 出典:IEA World Energy Outlook 2013 表 1.2.3-2 に石炭需要の予測を示す。今後も多くの地域で安価な発電燃料である石炭は使われるが、 発電効率の改善など CO2 削減や気候変動緩和のための政策介入が長期的な動向を左右する上で極め て重要となる。特に中国の石炭使用量は同国以外の全世界を合わせた量に匹敵するが、今後石炭の使 用を制限していく政策を示している。世界の石炭需要は 2035 年までに 17%増加するが、その増加の 3 分 の 2 は 2020 年までに生じ、OECD 諸国の石炭使用量は減少する。 これに対して非 OECD 諸国であるインド、東南アジアの石炭使用量は 3 分の 1 増加する。インド、インド ネシア、中国が石炭生産量増加の 90%を占める(中国の需要は 2025 年頃から頭打ちになるにもかかわら ずである)。 9 表 1.2.3-2 世界の石炭需要予測(Mtce 石炭換算百万トン) 1990 2011 2020 2025 2030 2035 701 734 714 683 649 631 657 684 657 625 598 587 ヨーロッパ 645 445 408 351 302 253 アジア・オセアニア 198 339 347 335 311 272 109 153 157 153 149 140 1,543 1,518 1469 1,369 1,262 1,156 525 329 334 337 338 346 273 166 165 170 171 175 991 3,355 3,974 4,211 4,403 4,561 中国 762 2,666 3,026 3,094 3,095 3,050 インド 148 465 607 713 840 972 1 4 6 7 7 8 106 152 176 185 188 194 95 140 151 155 153 154 21 32 44 52 58 61 14 22 27 30 32 34 Non-OECD 諸国計 1,643 3,872 4,533 4,792 4,993 5,170 世界計 3,186 5,391 6,003 6,160 6,255 6,326 北米 アメリカ 日本 OECD 諸国計 ヨーロッパ/ユーラシア大陸 ロシア アジア 中東諸国 アフリカ 南アフリカ 中南米 ブラジル 1990 年と 2011 年は実績値 出典:IEA World Energy Outlook 2013 10 1.3 各国の石炭事情 ※各国の CCS については、第 2 章に記載したのでそちらを参照頂きたい 1.3.1 豪州 (1) トピックス 新政権発足 2013 年 9 月 7 日に行われた総選挙で自由党・国民党が労働党を破り、6 年ぶりの政権交代が実現した。 新首相となったアボット自由党党首は公約として、炭素税・鉱物資源利用税の廃止による財政の立て直し や、道路建設など老朽化したインフラ整備への数十億 USD 規模の投資などを掲げている。Aurizon 社の Lance Hockridge CEO からは 2013 年 12 月に JCOAL を訪問した際に「豪州の景気は好転しており、需 要の増大や炭鉱の生産性上昇によって Aurizon 社の今年 11 月の成績は過去最高記録を達成することが できた。新政権では大規模なインフラ整備への投資が計画されており、石炭産業へも好影響を与えると 思われる。また環境認可に費やされる期間が、従来は 4~5 年かかっていたものが、新政権では 18 カ月と 短縮されていることも好影響を与えるだろう。」という発言があった。 Glencore Xstrata 社が誕生 Glencore Xstrata は 2013 年 5 月に世界最大の商品取引商社である Glencore と資源メジャーの Xstrata が合併して誕生した。鉱業で世界 4 位、商品取引で世界首位の企業である。 合併により同社の石炭生産量は 1 億 3,400 万トンとなった(権益 100%ベースにて合併前 2012 年実績 値を合計)。 石炭価格下落の影響 (4)の石炭価格で後述するように、2013 年の豪州石炭価格は低い水準で推移した。そのため、豪州石 炭産業には様々な影響が出ている。以下に例を記す。 2013 年 10 月 25 日、Rio Tinto は QLD 州で年間 1,200 万トンの一般炭を生産している Clermont 炭鉱を、Glencore Xstrata と住友商事の共同運営する GS Coal に売却することを発表した。売却額 は AUD10.6 億で、Rio Tinto が持つ 50.1%分の権益は Glencore Xstrata が 25.05%、住友商事が 25.05%保有することとなる。 2013 年 6 月 27 日、石炭価格の下落、生産コストの高騰、豪州ドル高などを受け、Glencore Xstrata は同社が QLD 州で保有する Newlands 炭鉱と Oaky North 炭鉱での生産を縮小し、約 450 人の 人員削減を行うと発表した。 2014 年 2 月 7 日、BHP Billiton と三菱商事の合弁会社である BHP Billiton Mitsubishi Alliance (BMA)は、アジアの石炭需要低下に対応するため、230 人程度の人員削減を実施することを明ら かにした。対象となる炭鉱は QLD 州にある Saraji 炭鉱で、2013 年の原料炭生産量は 690 万トン である。 (2) 一次エネルギー消費 2011 年での一次エネルギー消費を示す。石炭とピートが全体の 39%を占め、次いで石油が 34%、天然 ガスが 22%を占めている。 11 その他再生エネルギー そ 2% バイオ・廃棄物 バ 3% 天然ガス 天 22% 石炭とピ ピート 39% % 石油 34% 出典 典:Coal Inform mation2013 より よ JCOAL で整理 で 図 1.3.1-1 豪州 州における一 一次エネルギ ギー (3) 石炭 炭の生産量・消 消費量と輸出量 2012 年 年の豪州の石 石炭生産量は は 4.2 億トンで であった。201 11 年度までは は中国、米国 国、インドに次ぐ ぐ第 4 位 の産炭国 国であったが、 、第 5 位であ あったインドネ ネシアの生産量 量が伸びたた ため順位が逆 逆転した。原料 料炭の生 産量は第 第 2 位、褐炭の生産量はイ インドネシア、 、ドイツ、ロシアに次いで第 第 4 位である る。 出典:Cooal Informatioon 2013 より JCOAL J 作成 成 図 1.3.1-22 豪州の石炭 炭需給推移 12 表 1.3.1-11 豪州の石炭 炭需給推移 単位:100 万トン 万 2008 年 2009 年 2010 年 20000 年 2005 5年 2007 年 石炭 炭生産量 306.7 370.6 3 91 392.3 3 407.9 424.4 402.2 420.7 4 原料炭 103.8 128.4 1 42 144 4 129.8 162.9 146.7 146.9 1 一般炭 135.7 171.7 1811.9 179.6 6 206.1 189.4 184.5 200.3 2 67.3 70.5 699.5 69.9 9 72 72.1 71 73.5 石炭 炭消費量 128.1 139.6 1422.4 141.7 7 143.9 138.1 133.7 137.3 1 原料炭 4.8 4.5 44.5 4.5 5 3.5 4.1 4.4 4.1 一般炭 56 64.6 688.3 67.2 2 68.3 61.9 58.2 59.7 67.3 70.5 699.5 69.9 9 72 72.1 71 73.5 石炭 炭輸出量 187 232.3 2433.6 252.2 2 261.7 292.7 284.6 301.5 3 原料炭 99.2 124.9 1 32 136.9 9 125.2 157.3 140.5 142.3 1 一般炭 87.8 107.4 1122.4 115.3 3 136.5 135.4 144.1 159.2 1 褐炭 褐炭 20011 年 2012 年 出典:Cooal Informatioon 2013 より JCOAL J 作成 成 (4) 石炭 炭価格 API6(豪州ニューキ キャッスル一般 般炭 FOB 価 格)を 2013 年 1 月から示 示す。90 $付近 近から始まり 100 1 $を上 回ることな なく緩やかに に低下したが、7 月位から徐 徐々に上昇し している。 出典:Arrgus/McCloskkey’s Coal Price P Index R Report 図 1.33.1-3 API6 の推移 の (5) 電力 力産業の動き 豪州の の発電設備総 総容量は 54,3 324MW あり、 最も大きいの のが NSW 州で、Qld 州が が続いている。NSW、 QLD、VIIC の各州は石 石炭発電の割 割合が高いが が、西では天然 然ガス、タスマ マニア、ノーザ ザンテリトリー ーでは水 力が多い い。また原子力 力は皆無であ ある。 13 2020 年に向けての発電設備の予測を下図に示す。2017 年以降の発電総量の伸びはほとんどないが、 石炭火力は一定量のままで、ガス火力ならびに再生可能エネルギーの増加が計画されている。2020 年 には石炭が 50.8%、天然ガスが 27.2%、水力が 12.9%、再生可能エネルギー(除く水力)が 5.8%、石油など が 3.4%計画されている。 出典:Energy Supply Association of Australia 資料 図 1.3.1-4 2020 年にかけての発電設備計画 (6) 石炭主要企業動向 豪州ではメジャー企業が生産量の大部分を占めている。表 1.3.1-2 に示すとおり、2012 年のメジャーに よる権益分生産量は豪州生産の 57.5%を占める。 表 1.3.1-2 豪州におけるメジャーによる石炭生産量 単位:100 万トン Glencore BHP Rio Anglo Peabody メジャー 豪州合計 Xstrata Billiton Tinto American 2012 年権益分生産量 99.9 49.9 31.5 30.6 29.9 241.8 豪州全体に占める割合 23.7% 11.9% 7.5% 7.3% 7.1% 57.5% 合計 420.7 出典:各社年次報告等から JCOAL 作成 (7) 日本企業の進出状況 主な日本企業による豪州炭鉱の権益保有状況を表 1.3.1-3 に示す。 表 1.3.1-3 我が国主要企業の豪州炭鉱権益保有状況 ※単位 100 万トン、原:原料炭、一:一般炭。 企業名 州名 炭鉱名 三菱商事 QLD Blackwater 生産量 権 益 炭 権 益 比 パートナー 分 種 率 16.69 8.35 原 / 50.00% BHP Billiton(50.00%) 14 〃 〃 〃 〃 〃 Broadmeadow Crinum Goonyella/Riverside Gregory Peak Downs Saraji Clermont 一 15.00 0.19 16.26 11.42 8.27 NSW Mount Thorley 4.20 〃 8.28 Warkworth 〃 Ulan/Ulan(UG) 小計 三井物産 QLD Dawson German Creek 5.02 85.33 9.01 8.60 〃 Kestral(U/G) 3.02 〃 Moranbah North(U/G) 4.03 〃 South Walker Creek 〃 Poitrel NSW Bengalla 6.12 7.18 8.23 〃 4.16 Drayton 小計 50.35 新日鐵住 QLD Hail Creek 7.03 金 〃 Moranbah North(U/G) 4.03 〃 Foxleigh NSW Warkworth 2.71 8.28 〃 Integra (Cambe.+Glenn.) 1.57 〃 Bulga 9.75 小計 電源開発 QLD Clermont NSW Narrabri(U/G) 33.37 8.27 1.43 7.50 0.10 8.13 5.71 2.60 50.00% 〃 50.00% 〃 50.00% 〃 50.00% 〃 31.40% Rio Tinto(50.1%), 電源開発(15%), 石炭資源開発(3.5%) 0.67 原 / 16.00% Coal & Allied [Rio Tinto(80%), 三 一 菱商事(20%)] (80%), POSCO(20%) 3.31 40.01% Coal & Allied [Rio Tinto(80%), 三 菱商事(20%)] (55.57%), 三菱商事 (28.9%), 新 日 鐵 住 金 (9.53%), 三 菱マテリアル(6%) 0.50 一 10.00% Xstrata(90%) 36.86 4.41 一 49.00% Anglo(51%) 2.58 原 / 30.00% Anglo(70%) 一 0.60 原 / 20.00% Rio Tinto(80%) 一 0.19 原 / 4.75% Anglo(88%), 新日鐡住金(5%), 日 一 鐵商事(1.25%) 1.22 原 20.00% BHPB(80%) 1.44 原 20.00% BHPB(80%) 0.82 原 / 10.00% C&A(40%),Wesfarmer(40%) 一 0.16 一 3.83% 三井豪州(3%),Anglo(88.2%),現 代(2.5%),大宇(2.5%) 11.43 0.56 原 8.00% Rio Tinto(82%),丸紅(6.67%),住友 商事(3.33%) 0.20 原 5.00% Anglo(88%), 三井物産(4.75%), 日 鐵商事(1.25%) 0.27 原 10.00% Anglo (70%), POSCO (20%) 0.79 原 / 9.53% Coal & Allied [Rio Tinto(80%), 三 一 菱商事(20%)] (55.57%), 三菱商事 (28.9%), 三菱マテリアル(6%) 0.09 原 / 5.95% Vale(61.2%), 豊田通商(15%), 中 一 部電力(5.95), POSCO(5.95%), JFE スチール(4.15%), JFE 商事 (1.8%) 1.22 原 / 12.50% Oakbridge [Xstrata(78%),JX 日鉱 一 日石エネルギー(15.2%),豊田通商 (5%),JFE 商事(1.8%)] (87.5%) 3.14 1.24 一 15.00% Rio Tinto(50.1%), 三 菱 商 事 (31.4%), 石炭資源開発(3.5%) 0.11 原 / 7.50% Whitehaven(70.0%),EDF(7.5%), 広 一 東配電(7.5%), 大宇(7.5%) 15 原 原 原 原 一 〃 Maules Creek 10.70 小計 Boggabri Tarrawonga Muswellbrook Ensham 小計 QLD Coppabella/Moorvale 20.40 3.78 1.87 1.12 4.33 11.10 6.71 〃 Hail Creek 7.03 〃 Jellibah East 12.00 〃 Lake Vermont 13.30 出光興産 NSW 〃 〃 QLD 丸紅 〃 Macquarie 〃 German Creek East NSW Ravensworth 小計 住友商事 QLD Collinsville 〃 Hail Creek 7.03 〃 Newlands 5.99 〃 〃 〃 Oaky Creek Rolleston Isaac Plains 7.27 8.89 1.42 小計 伊藤忠商 QLD Collinsville 事 〃 Newlands 双日 3.94 2.79 3.00 48.77 3.41 34.01 3.41 5.99 〃 Oaky Creek NSW Ashton 7.27 3.00 〃 Maules Creek 10.70 〃 小計 Bulga 30.37 9.75 小計 QLD Jellibah East 9.75 12.00 〃 6.71 Coppabella/Moorvale 1.07 原 / 10.00% Whitehaven (75%), 伊 藤 忠 (15%) 一 出炭開始は 2015 年を予定 2.42 3.78 一 100.00% 0.56 一 30.00% Whitehaven (70%) 1.12 一 100.00% 3.68 一 85.00% LG (15%) 9.14 0.47 原 / 7.00% Peabody(73.3%), 双日 一 (7%),CITIC(7%),JFE 商事(3.7%),日 鐵商事(2%) 0.53 原 6.67% Rio Tinto(82%), 新 日 鐡 住 金 (8.00%),住友商事(3.33%) 1.80 原 / 15.00% Jellinbah(70%),双日(15%) 一 1.33 原 10.00% Jellinbah (70%), 双 日(10%),AMCI(10%) 0.67 一 17.00% 0.38 13.64% 0.60 20.00% 5.78 0.34 原 / 10.00% Xstrata(55%),伊藤忠(35%) 一 0.23 原 3.33% Rio Tinto(82%),新日鐵住金(8%), 丸紅(6.67%) 0.60 原 / 10.00% Xstrata(55%),伊藤忠(35%) 一 1.82 原 25.00% Xstrata(55%),伊藤忠(20%) 1.11 一 12.50% Xstrata(75%),IRCA(12.5%) 0.71 原 / 50.00% Vale(50%) 一 4.81 1.19 原 / 35.00% Xstrata(55%),住友商事(10%) 一 2.10 原 / 35.00% Xstrata(55%),住友商事(10%) 一 1.45 原 20.00% Xstrata(55%),住友商事(25%) 0.30 原 / 10.00% Yancoal(90%) 一 1.61 原 / 15.00% Whitehaven(70%), 電源開発(10%) 一 出炭開始は 2014 年半ばを予定 6.65 1.00 原 / 10.25% Oakbridge [Xstrata(78%),JX 日鉱 一 日石エネルギー(15.2%),豊田通商 (5%),JFE 商事(1.8%)] (87.5%), 新 日鐵住金 (12.5%) 1.00 1.80 原 / 15.00% Jellinbah(70%),丸紅(15%) 一 0.47 原 / 7.00% Peabody(73.3%), 丸紅 16 一 〃 Lake Vermont 〃 Minerva NSW Moolarben 小計 JFE ス チ QLD Carborough Downs ール 〃 Sonoma 〃 Byerwen NSW Integra (Cambe.+Glenn.) 小計 日鐵商事 QLD Moranbah North 〃 Coppabella/Moorvale 13.30 1.33 原 2.80 5.30 40.11 1.07 2.69 一 0.53 一 6.82 0.03 原 4.00 10.00 1.57 16.64 4.03 6.71 小計 10.74 豊田通商 NSW Integra(Cambe.+Glenn.) 1.57 〃 Bulga 9.75 小計 三井松島 NSW Liddel 産業 NSW Doyles Creek 11.32 4.58 5.00 小計 JFE 商事 QLD Coppabella/Moorvale 9.58 6.71 〃 Carborough Downs 1.07 〃 Sonoma 4.00 〃 Baralaba 0.71 NSW Integra(Cambe.+Glenn.) 1.57 〃 Bulga 9.75 (7%),CITIC(7%),JFE 商事(3.7%),日 鐵商事(2%) 10.00% Jellinbah (70%), 丸紅(10%),AMCI(10%) 96.00% Kores (4%) 10.00% Yancoal (80%), Kores (10%) Vale(80%), POSCO(5%), Tata Steel(5%), JFE 商事(2.5%) 0.38 一 9.50% Qcoal(85.5%),China Steel(5%) 2.00 原 20.00% Qcoal(80%) 2014 年度より生産開 始予定 0.07 原 / 4.15% Vale(61.2%), 豊田通商(15%), 新 一 日鐵住金(5.95%), 中部電力 (5.95%), POSCO(5.95%), JFE 商事 (1.8%) 2.47 0.05 原 / 1.25% Anglo(88%), 新日鐵住金(5%), 三 一 井物産(4,75%) 0.13 原 / 2.00% Peabody(73.3%), 双 日 一 (7%),CITIC(7%), 丸紅(7%), JFE 商 事(3.7%) 0.18 0.24 原 / 15.00% Vale(61.2%), 新日鐵住金(5.95%), 一 中部電力(5.95), POSCO(5.95%), JFE スチール(4.15%), JFE 商事 (1.8%) 0.43 原 / 4.375% Oakbridge [Xstrata(68.25%),JX 日 一 鉱日石エネルギー(15.2%),豊田通 商 (5%),JFE 商 事 (1.8%)] (87.5%), 新日鐵住金 (12.5%) 0.66 1.49 一 32.50% Xstrata(67.5%) 0.50 原 / 10.00% NuCoal(90%) 出 炭 開 始 予 定 は 一 2015 年 1.99 0.25 原 / 3.70% Peabody(73.3%), 丸 紅 (7%), 双 日 一 (7%),CITIC(7%),日鐵商事(2%) 0.03 原 2.50% Vale(80%), POSCO(5%), Tata Steel(5%), JFE スチール(2.5%) 0.38 一 9.50% Qcoal85.5%),China Steel(5%) 0.27 原 37.50% Cocktoo (62.5%) 0.03 原 / 1.80% Vale(61.2%), 豊田通商(15%), 新 一 日鐵住金(5.95%), 中部電力 (5.95%), POSCO(5.95%), JFE スチ ール(4.15%) 0.15 原 / 1.575% Oakbridge [Xstrata(78%),JX 日鉱 一 日石エネルギー(15.2%),豊田通商 (5%),JFE 商事(1.8%)] (87.5%), 新 日鐵住金 (12.5%) 17 2.50% 小計 23.81 石炭資源 QLD Clermont 8.27 開発 NSW Warkworth 8.28 三菱 マテリア ル 中部電力 NSW Integra(Cambe.+Glenn.) 1.57 1.10 0.29 一 3.50% 0.50 原 / 6.00% 一 0.09 原 / 5.95% 一 Rio Tinto (50.1%),三菱商事 (31.4%),電源開発 (15%) Coal & Allied [Rio Tinto(80%), 三 菱商事(20%)] (55.57%), 三菱商事 (28.9%), 新日鐵住金(9.53%) Vale(61.2%), 豊田通商(15%), 新 日鐵住金(5.95%), POSCO(5.95%), JFE スチール(4.15%), JFE 商事 (1.8%) 出典:各社年次報告等から JCOAL 作成 1.3.2 中国 (1) エネルギー政策及び石炭政策(税を含む) 2011~2015 年を対象とした第十二次五ヶ年計画が策定され、2012 年 3 月に発表されている。十一次 五ヶ年計画期間よりも生産量の増加率をやや抑制する方向で目標が立てられている。また、企業の再 編・大型化、インフラ建設、炭鉱メタンガス積極的回収利用などが目標として掲げられている。主な内容を 表 1.3.2-1 に示す。 表 1.3.2-1 第十二次五ヶ年計画における目標 十一次五ヶ年計画実績 十二次五ヶ年計画目標 (2006~2010 年) (2011~2015 年) 39 億トン(生産能力 41 億トン) 石炭生産量 32.4 億トン 東部 4.6 億トン、中部 13.5 億トン、西部 20.9 億トン 機械化採炭率 65% 75% 選炭率 51%(16.5 億トン) 75%(29 億トン) 坑内水利用率 59% 75% 鉄道輸送能力 30 億トン(需要見込み 26 億トン) 船舶積出能力 8.3 億トン(需要見込み 7.5 億トン) 1 億トン級 10 社、5,000 万トン級 10 社、計 20 社で全国 企業規模 の 60%を生産。全国炭鉱企業数 4,000 社以内とする CBM/CMM 回収量 90 億 m3 300 億 m3(地表 160m3、坑内 140m3) CBM/CMM 利用量 35 億 m3 180 億 m3(60%)以上 また、2013 年 1 月 23 日、エネルギー発展第十二次五ヶ年計画が発表された。主題は「総量規制・構造 調整・市場改革」であり、安全、資源、環境、技術、及び経済等の要素を配慮するとともに総量制御、高効 率化、構造調整、保安確保、環境保護し、民生改善、改革深化等の目標を打ち出した。この計画によると、 2015 年の中国国内一次エネルギー供給能力目標は 43 億 tce(tonne of coal equivalent)、うち国内生産 能力目標は 36.6 億 tce である。一次エネルギー総消費量目標は 40 億 tce である。一次エネルギー消費 における非化石エネルギーの比率を 11.4%に高め、発電における非化石エネルギー割合は 30%を目標と する。また、石炭の発電における割合は 65%程度に抑えるとしている。 (2) 石炭探査状況 2013 中国砿産資源報告によると、中国の 2012 年既発見石炭資源量(査明砿産資源儲量)は 1 兆 4,208 億トンであり、2011 年より 3.1%増加した。最近の推移を表 1.3.2-2 に示す。 18 表 1.3.2-2 中国の既発見石炭資源量(単位 10 億トン) 年 既発見資源量 2006 1,159.78 2007 1,180.45 2008 1,246.40 2009 1,309.68 2010 1,341.19 2011 1,377.89 2012 1,420.80 出典:中国砿産資源報告 2013 また、省別の埋蔵量(中国基準の基礎埋蔵量。おおむね確認埋蔵量と推定埋蔵量の和に相当)につい て、表 1.3.2-3 に示す。2011 年の埋蔵量が 2010 年に比較して 600 億トン以上減少している。特に、新し く鉱床も見つかっている内蒙古において約 400 億トンも埋蔵量が減少しているが、この原因は不明であり、 後に修正がなされるかもしれない。(2 月 7 日現在、中国統計局などにおいてもデータ公開なし) 表 1.3.2-3 中国の石炭埋蔵量 2010 年 2011 年 2010 年 2011 年 北京 379 376 湖北 330 325 天津 297 297 湖南 1,876 1,329 河北 6,059 3,841 広東 189 23 山西 84,401 83,459 広西 774 202 内蒙古 76,986 36,889 海南 90 119 遼寧 4,663 3,097 四川 5,437 1,857 吉林 1,240 952 重慶 2,249 5,182 黒龍江 6,817 6,175 貴州 11,846 5,874 江蘇 1,423 1,081 雲南 6,247 5,967 浙江 49 44 西藏 12 12 安徽 8,193 7,991 陝西 11,989 10,759 福建 406 429 甘粛 5,805 2,351 江西 674 426 青海 1,622 1,612 山東 7,756 7,410 寧夏 5,403 3,128 河南 11,349 9,746 新彊 14,831 14,836 (単位:100 万トン) 合計 279,393 215,789 出典:中国統計年鑑 2011、2012 (3) 石炭生産 図 1.3.2-1 に中国における石炭生産量と前年度生産量からの伸び率を示す。国家統計局によると、中 国の 2012 年原炭生産量は 36.6 億トンであった。比較地域別では貴州省、安徽省、新疆ウイグル自治 区、河南省、山東省、及び雲南省の生産量が 1 億 t を超えた 2012 年は石炭の消費量、価格、投資、 及び企業利益が下落する一方、生産量、輸入量、在庫、生産コスト、及び取引不払い金が増加する 「四降五昇」といわれる問題が顕在化し、中央政府は消費に合わせて計画的に出炭するよう数回にわ たって行政命令を発している。そのため、2012 年においては前年生産量との比較である生産量増加率 は 3.98%と大きく鈍化し、直近十年では最も低い伸び率となったが、依然として生産量は拡大傾向にあ る。 ※中国の報告は基本原炭ベースであり、IEA などの精炭ベースと数量が異なる 19 (出典:中国石炭年鑑 2013) 図 1.3.2-1 石炭生産量と伸び率推移 (4) 石炭輸出入・消費 表 1.3.2-4 に中国の石炭輸出入量の推移を示す。中国の石炭輸入は 2009 年に輸入量が輸出量を上 回り純輸入国となり、2011 年に年間輸入量が日本を上回り世界一の石炭輸入国になって以来、益々輸 入量が増加し、輸出入の差は拡大している。2012 年の輸入量は 2 億 8,914 万トンであった。最大の輸入 相手国はインドネシアであり、全体の 3 分の 1 強を占めている。 表 1.3.2-4 中国の石炭輸出入量推移(1990 年~2012 年、単位 1,000 トン) 中国 輸入 輸出 輸出-輸入 1990 2,003 17,280 15,277 1995 1,635 28,617 26,982 2000 2,119 55,048 52,929 2005 2010 2011 26,173 163,065 181,976 71,673 21,308 21,692 45,500 -141,757 -160,284 出典:Coal Information 2013 表 1.3.2-5 中国の石炭輸入統計(単位 1,000 トン) インドネシア 豪州 モンゴル ロシア ベトナム 南アフリカ 北朝鮮 米国 カナダ コロンビア その他 計 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 11,614 30,461 56,295 65,451 68,555 3,543 44,602 36,962 32,552 59,531 4,043 6,002 16,595 20,155 21,727 759 11,787 11,619 10,607 20,183 16,887 24,078 18,047 22,062 17,433 0 732 7,004 9,252 14,277 2,537 2,972 4,641 11,173 11,807 0 805 4,842 4,901 9,311 558 4,093 5,198 4,493 8,415 0 0 3,778 1,310 2,568 723 1,105 1,268 1,263 1,286 40,664 126,636 166,248 183,219 235,092 出典:中国煤炭資源網 20 2012e 289,135 10,465 ‐278,670 表 1.3.2-6 中国の褐炭輸入統計(単位 1,000 トン) インドネシア フィリピン マレーシア モンゴル ラオス 米国 その他 合計 2010 年 17,021 2,355 29 68 27 214 117 19,832 2011 年 36,338 2,434 538 137 89 151 110 39,797 2012 年 50,612 2,628 427 401 114 12 17 54,210 出典:中国煤炭資源網 中国税関総署のデータによれば、2013 年上半期の石炭輸入量は 1.58 億トンで、前年同期比 13.3%増 となった。2006 年以降、輸入量が増加し、2009 年には輸出量を差引いた純輸入量が同年国内総生産量 の 3.4%に相当する 10,344 万トンとなり純輸入国となった。 炭種別の 2012 年の輸入実績は、一般炭は 18,069 万トン、前年度より 4,295 万トン、31.18%増となり、 輸入先は主にインドネシア(6,494 万トン)、豪州(4,551 万トン)である。原料炭は 5,355 万トン、前年度より 889 万 t、19.91%増となり、輸入国は主にモンゴル(1,906 万トン)、豪州(1,394 万トン)、カナダ(719 万トン)、 及びロシア(480 万トン)である。無煙炭は 3,439 万トン、前年度より 172 万トン、4.77%減となり、輸入国は 主にベトナム(1,740 万トン)、北朝鮮(1,180 万トン)である。褐炭は 5,421 万トン、前年同期比 36.2%増とな り、輸入国は主にインドネシア(5,061 万トン)、フィリピン(263 万トン)である。なお褐炭を輸入した省は図 1.3.2-2 のとおり主に広東、福建、江蘇、広西、上海、北京及び浙江等である。因みに 2013 年の褐炭の主 な輸入国はインドネシア(5,768 万トン)、フィリピン(185 万トン)であった。 図 1.3.2-2 褐炭輸入地域の割合(2012 年) 中国の褐炭輸入規制について 中国国家能源局は「商品炭品質管理暫定方法」草案(以下「暫定方法」)を作成し関係者から意見を聴 取し、2013 年 5 月末より正式に施行している。この「暫定方法」とは、品質の良くない石炭の輸入を規制 し、環境問題の改善に寄与する狙いがある。一方、環境保護の視点からは、輸入炭だけではなく、国内 の高硫黄分・高灰分の石炭利用にも制限をかけるべきとの声もある。 中国石炭資源網の分析によると、現在、中国が輸入している高硫黄分・高灰分の石炭は主に米国の 21 原料炭、ベトナムと北朝鮮の無煙炭である。インドネシアからの褐炭は水分が高く、発熱量が低いものの、 硫黄分・灰分がそれほど高くはなく、またコストの点では競争力がある事から中国沿海部の発電所で多く 利用されている。 同資源網のデータによれば、2011 年 1 月から 2013 年 1 月までに中国が輸入した「低品位炭―褐 炭」は合計 9,941 万トンあり、うちインドネシア炭は 9,196 万トンで、全体の 92.5%を占める。「暫定方法」 の規格を満たさない分は合計 2,237 万トンあり、年平均 1,120 万トン/年となる。即ち中国の年間褐炭 輸入量の 22.5%が「暫定方法」の基準を満たしていないことになる。 さらに 2013 年 8 月 29 日、中国税関総署は国務院の許可を得て、褐炭等商品輸入税率の調整に関す る公告を発表した。これにより 2013 年 8 月 30 日より暫定税率ゼロの褐炭輸入税措置が撤廃され、3%の 最恵国税率(MFN レート)が復活することとなった。これは国家能源局が作成し 5 月より施行されている 「暫定方法」に続く、輸入炭の増加による中国国内石炭市場へのインパクトと石炭価格の下落防止を狙っ た政府の対策と関係者は見ている。 中国石炭資源網の試算では、3%の輸入税により輸入炭の価格が 10 元/トン引上げられることとなり、中 国国内の石炭価格が低調であるため、輸入業者の利益がほぼ消える。このため、中国の火力発電所の 国内炭調達量が増えることが期待されている。 2007 年から 2012 年までの分野別一般炭消費を表 1.3.2-7 に示す。中国において最も石炭を消費して いるのは電力分野であり、割合は 6 割以上を占めており、次いで建材、化工の消費が多い。この表には 原料炭が含まれていないため、鉄鋼産業がその他に含まれているが、中国冶金新聞によると 2011 年の 中国鉄鋼業界の石炭消費量は 5.8 億トンであるため、鉄鋼分野においても建築分野と同程度の石炭が 利用されている。 表 1.3.2-7 中国の一般炭分野別消費量(単位:100 万トン) 年度 総消費量 電力 建材 化工 冶金 その他 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2,038.6 2,098.6 2,282.5 2,543.0 2,751.6 2,981.7 消費量 1,343.3 1,357.5 1,438.2 1,628.7 1,750.4 1,855.5 割合 65.89% 64.69% 63.01% 64.05% 63.61% 62.23% 消費量 415.0 425.9 492.8 553.4 593.2 627.8 割合 20.36% 20.29% 21.59% 21.76% 21.56% 21.05% 消費量 99.9 118.1 120.7 116.9 102.9 110.6 割合 4.90% 5.63% 5.29% 4.60% 3.74% 3.71% 消費量 72.9 75.0 83.1 89.6 96.3 100.4 割合 3.57% 3.57% 3.64% 3.52% 3.50% 3.37% 消費量 187.5 212.1 240.1 243.7 300.0 385.7 占割合 5.27% 5.82% 6.47% 6.07% 7.59% 9.64% 出典:中国統計年鑑、中国石炭資源網から JCOAL 作成 (5) 石炭価格 中国における石炭価格は、従来は政府が関与する煤炭訂貨会と呼ばれる会合において大部分が決ま っていたが、近年は成約率が低下し、現在はほとんどが市場取引により価格が決まっている。図 1.3.2-3 22 に示すよ ように中国国内 内炭価格は、2011 年の 3 月以降豪州 州やインドネシ シアの石炭価格 格を上回る状 状態が続 いている る。世界的な景 景気低迷によ より世界の石炭 炭市場の需給 給逼迫感は薄 薄れており、20013 年に入っ ってから海 外市場に における石炭価格は 2011 1 年の 120 USS$/トン前後か から現在は約 約 80 US$/トン ンと大きく低下 下している。 海外炭価 価格の方が安 安いことから中 中国の海外炭 炭輸入は引き続 続き堅調であ あり、2012 年は は石炭輸入量 量が 2 億 8,914 万 万トンとなり、20000 年からの の右肩上がりを を続けている。 。 出典:Arrgus Coal Price Index Rep port より JCO OAL 作成 図 1.3.2-3 中国、イ インドネシア、 、豪州炭の価 価格推移 (6) 露天 天掘・坑内掘状 状況 中国の の炭鉱は 90%以 以上が坑内掘 掘であり、この の状況は長年 年変わっていな ない。ただし、 近年内蒙古 古や新彊、 寧夏など ど内陸部での開発が進んで でいるが、これ れらの地域に には大規模な露天掘炭鉱が が多く存在す する。 (7) 炭鉱 鉱メタンガス 2012 年 年、炭層ガス((中国語で煤層気。Coal B Bed Methane [CBM] + Co oal Mine Methhane [CMM]) )抜き量と 利用量は は 140 億 m3 と 57 億 m3 に達した。前年 に 年度よりそれぞ ぞれ 23.2%、20.2%上昇し した。メタンガス ス(CMM) 回収量は は前年比 25%%増の 114 億 m3 である。石 石炭生産量の の 9 割以上は は坑内採掘に によるもので、坑 坑内採掘 炭鉱の 442%は炭層のガ ガス包蔵量が が 10m3/t 以上 上のガス災害 害の危険性の高 高い「高ガス炭 炭鉱」に分類 類されてい る。特に生 生産規模の小 小さい炭鉱は は技術不足で で設備も不十分 分でありガス災 災害が頻発し している。一方 方で 2005 年から国 国のガス対策プ プログラムがス スタートしたこ こともあり、災害死亡者数は は 2005 年の 5,938 人が 2012 2 年に は 1,384 人に減少し、 、同期間の石 石炭生産 100 万トン当たりの死亡者数は は 2.811 人か から 0.374 人と と大きく改 善された た。過去 10 年間の 年 CMM の回収量を表 表 1.3.2-6、上 上位 10 省の回収量を表 1.3.2-7、主要 要 8 国有 石炭企業 業の 2005 年と と 2011 年の回 回収量の増加 加を図 1.3.2-4 に示す。 23 表 1.3.2-8 中国における過去 10 年間の CMM 回収量(単位:億 m3) 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 15.2 18 22 32 44 56.7 64.5 75 92 114 表 1.3.2-9 中国における上位 10 省の CMM 回収量(単位:億 m3) 山西 貴州 安徽 河南 重慶 遼寧 四川 黒竜江 陜西 湖南 45.8 19.2 8.6 6.7 4.8 4 3.9 3.8 3.1 2.3 図 1.3.2-4 主要 8 国有石炭企業の 2005 年 表 1.3.2-10 CBM 生産量(単位:億 m3) 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 0.3 1.3 3.2 5 10.1 15 23 27 と 2011 年の CMM 回収量の増加 2012 年に回収された 114 億 m3 の CMM の内で利用されたのは 35 億 m3 と少なく、利用率は約 30%に 留り、利用率は 2005 年以来殆ど改善されていない。利用が進まない原因は①回収ガスの濃度・量の変 動が大きい、②売電価格が安い、③国の補助金の実効性がない、④排出権価格の低迷などである。ガス は発電、都市ガス、CNG、LNG などに利用されているが、2011 年末のガス発電設備の総設備容量は 1,500MW である。近年低濃度ガスが利用できるガスエンジンが開発導入されているが、投資コストは 8,000~9,500 元/kW(13 万円~16 万円)である。 一方で CBM の生産量は表 1.3.2-8 の通りである。CBM の回収利用を行う主要企業は 回収量の多い 順に晋煤集団(約 50%のシェア)、中国石油、中聯煤層気、中国石油化学である。第十二次五ヶ年計画で は 2015 年の CMM 回収量を 140 億 m3、利用率を 60%以上と計画している。一方 CBM 生産量は 160 億 m3、全量利用と計画している。利用については炭鉱メタンガス発電設備容量 2,850MW、都市ガス供給対 象 320 万世帯の計画である。 (8) 輸送インフラ(鉄道・港湾) 中国の石炭大消費地は東部沿岸地域であるが、生産は陝西省、山西省、内蒙古西部(いわゆる「三西」 地域)など西北の内陸部で盛んであるため、輸送が大きな問題となっている。中国の石炭輸送方法として は鉄道、道路、及び水上輸送があるが、その中でも鉄道輸送が主力である。2012 年の鉄道貨物輸送量 が 22.62 億トンであった(一般炭は 15.9 億トン)。 鉄道路線には基幹ルートとして「八縦八横」と呼ばれる鉄道路線がある(図 1.3.2-5)。「八縦」とは①京 哈線、②沿海鉄道、③京滬線、④京九線、⑤京広線、⑥大湛線、⑦包柳線、⑧蘭昆線を、「八横」とは① 京蘭線、②煤運北通道、③煤運南通道、④陸橋線、⑤寧西線、⑥沿江通道、⑦滬昆線、⑧西南出海通 道を指す。煤運北通道と煤運南通道は石炭専用鉄道である。 中国における石炭取扱港湾は、秦皇島港、天津港、京唐港、黄驊港、青島港、日照港、連雲港など北 方 7 港、錦州港、煙台港、揚子江の南京港、撫湖港、及び大運河の徐州港がある。 24 満州里 哈爾浜 瀋陽 包頭 呼和浩特 大同 阿拉山口 烏魯木斉 北京 神木 銀川 秦皇島 大連 黄驊 天津 太原 煙台 済南 西寧 蘭州 天水 宝鶏 成都 拉薩 侯馬 西安 洛陽 長沙 昆明 貴陽 連雲港 鄭州 武漢 重慶 懐化 青島 日照 月山 南京 上海 杭州 南昌 寧波 温州 衛陽 福州 柳州 八縦 広州 廈門 深圳 八横 南寧 黎塘 湛江 香港 出典:各種資料より JCOAL 作成 図 1.3.2-5 中国「八縦八横」鉄道路線 (9) 石炭企業動向 2012 年末、中国では規模的石炭企業(主業務での年間売上 2,000 万元以上の企業)が 6,200 社あり、 前年同期に比べ 1,500 社減少した。山西省では規模的石炭企業が 130 社で、一企業当たりの生産規模 が約 100 万tである。神華集団有限責任公司、中煤能源集団有限公司、大同煤業股份有限公司、山東 能源集団有限公司、冀中能源集団有限公司、陝西煤業化工集団有限責任公司、及び山西焦煤集団有 限責任公司の 7 社が石炭生産量1億 t を超過し、全国石炭生産量の 28%を占める。 米 FORTUNE GLOBAL 500・2013 ランキングでは、中国の石炭資源採掘企業 9 社がランクインし、神 華集団は売上利益 5,451.8 百万米ドルで 178 位、2012 年の 234 位より 56 位ランクアップした。冀中能源 集団は同 353.2 億米ドルで 311 位である。山西省の 6 社がランクインしており、焦煤集団(403 位)、陽煤集 団(407 位)、大同煤業集団(432 位)、潞安集団(430 位)、晋城煤業集団(435 位)、及び山西煤炭運销 (輸送販売)集団(390 位)である。その他、山東能源集団(373 位)、河南煤化工集団(404 位)、開ラン集 団(415 位)である。 中国証券監督管理委員会(証監会)の上場会社分類基準に基づき、上場石炭企業は炭鉱開発とコー クス関連の収入が会社全体の 50%を超えた石炭A株と、50%以下の石炭B株に分けられ、合計 39 社あ る。2012 年の上場石炭企業 39 社の資産総額は 1.36 万億元、前年同期比 20.3%増、売上高は 9,195 億 元、同比 16.6%増、利益総額は 1,319 億元、同比 8.5%減となっている。 純利益では、上場石炭企業 39 社合わせて 939.7 億元で、同比 72.6 億元減となっている。うち、神華は 1 社で 476.7 億元、全体の 51%を占め、また、中国神華、中煤能源、伊泰、エン州煤業の 4 社を合わせる と全体の 73.5%を占める。上場石炭企業 39 社の中、20 社は売上マイナス成長となり、33 社の純利益がマ イナス成長となった。 25 中国神華は「中国神華能源株式有限公司」の略称で、神華集団傘下の石炭が主として電力、鉄道輸送、 港湾、及び販売を扱う会社である。2005 年香港で H 株、2007 年上海で B 株を上場した。2012 年売上高 2,503 億元、前年同期比 19.6%増で、うち石炭売上は 2,068 億元、同比 19.9%増で、全体の 82.6%を占める。 会社純利益は 557.1 億元、同比 7.5%増で、うち石炭純利益は 443.9 億元、同比 3.6%減である。石炭資源 保有では、2012 年末 254 億トン、可採埋蔵量は 151.2 億トンある。2012 年、石炭生産量(商品炭ベース) は 3.04 億 t、同期比 7.8%増となり、主に内モンゴル、山西、陝西、及び海外権益炭鉱である。また同年石 炭販売量は輸出の 330 万トンを含み 4.65 億トンで、同比 19.96%増である。ここ 5 年間の石炭関連実績は 表 1.3.2-9 の通り。 表 1.3.2-11 中国神華石炭業務に係る実績(2008-2012 年) 商品炭生産量 石炭販売量 輸出 自社港扱い量 黄骅港 神華天津石炭港 2008年 185.7 232.7 21.2 101.1 78.2 22.9 2009年 210.3 254.3 13.6 99.5 77.8 21.7 2010年 245.6 313.1 10.3 109.7 87.2 22.5 出典:中国神華年報 2011年 281.9 387.3 5.6 121.2 95.7 25.5 2012年 304.0 464.6 3.3 262.2 95.6 28.8 単位:100 万トン 中煤能源は「中国中煤能源株式有限公司」の略称で、中国中煤能源集団傘下の子会社であり、業務 は石炭生産と貿易、石炭化工、設備製造、山元発電、炭鉱建設、及びエンジニアコンサルティング業務 等である。2012 年売上高 872.9 億元、前年同期比 3.9%減である。自社石炭生産コストは 210.7 元/トン、 2011 年の 236.4 元/トンより 25.7 元/トン、10.9%下げた。石炭資源保有では、2012 年末 195.1 億トン、主 に山西、内モンゴル、陝西、江蘇、新疆、及び黒龍江であり、うち一般炭は 166.4 億トン、資源保有総量の 85.3%、原料炭は 28.7 億トン、同 14.7%を占める。ここ5年間の石炭生産、販売実績は表 1.3.2-10 の通り。 表 1.3.2-12 中煤能源石炭生産、販売実績(2008-2012 年) 商品炭生産量 石炭販売量 自社生産 2008年 9,147 8,870 7,410 2009年 8,053 9,725 7,897 出典:中煤能源年報 2010年 9,438 11,727 8,975 2011年 10,423 13,830 10,160 2012年 11,378 14,970 11,098 単位:万トン 2013 年 4 月 17 日中国貿易促進会が主催した「中国煤炭企業国際化検討会」の発表情報により、中国 煤炭地質総局は国家リスク探査基金 2.7 億元を利用して 2010 年以来、豪州、モンゴル、ロシア、インドネ シア、ベトナム、及びパキスタン等の国において 100 以上の炭田地質構造調査事業を実施し、把握した 石炭資源量は 100 億t強である。炭鉱資源探査に中国政府の補助金が投入され、海外資源獲得に向け、 間接的な取り組みを実施している様子を伺える。 中国政府は第十一次五ヶ年計画に、いま進行中の十二次五ヶ年計画にも企業の海外投資拡大を推 26 進する戦略が明確化されており、今後、具体的な金融制度、保険、税制優遇、情報提供、出入国管理等 の政策的措置が整っていくだろうと報じられる。 中国石炭企業は豪州、インドネシアが主要進出先であるが、ロシアやモンゴル等、新規開発地域にも積 極的に活動を広げている。石炭大手は主に豪州炭鉱が中心であり、下流企業である華能(電力)や宝鋼 (鉄鋼)はそれぞれ海外電力、および原料炭権益確保に動いていることが読み取れる。 (10) 石炭の発電利用 図 1.3.2-6 に火力発電量(石炭以外も含まれる)と発電量の石炭消費量の推移を示す。2012 年の火力 発電量は 3 兆 7,867 億 kWh、発電用石炭消費量は 18 億 5,548 万トンであり、2011 年と比較してそれぞ れ 270 億 kWh、1,323 万トンの減少となった。中国電力網の記事によると 2012 年の発電量は 4.96 兆 kWh であり、この数値を用いると火力発電の割合は約 76%となる。 発電量(億kWh) 石炭消費量(万トン) 45,000 40,000 2,000 火力発電量 1,800 発電用石炭消費量 1,600 35,000 1,400 30,000 1,200 25,000 1,000 20,000 800 15,000 600 10,000 400 5,000 200 0 0 2008 2009 2010 2011 2012 出典:中国煤炭資源網 図 1.3.2-6 中国の火力発電量と発電用石炭の消費量 中国では大気汚染抑制のため、大気汚染抑制などの環境保護ため熱供給に使う燃料を石炭から天 然ガスに切り替える動きが高まっている。とりわけ天然ガス価格が上昇している中でも石炭価格は安価 に抑制されていることから、石炭ガス生産プロジェクトが着目されている。 豊富に存在する石炭をガス化し、天然ガスの代替燃料として用いるプロジェクトが内モンゴルにて進 められている。同地域においては 2009 年 8 月にガス化プラントの建設が進められ、現在は 13 億 3,000 万 m3/年のガスが生産できる第 1 段階である。プロジェクトは 3 段階に分けて着工されており、完成す れば年間 40 億 m3 のガス供給が可能となり、北京の年間ガス需要の半分に達する。第 1 段階にて生産 されたガスは中国大唐集団により 2013 年冬期から北京に供給開始される見込みである。 (11) 環境状況(規制値及び実情) 中国における環境に関する基本法として、環境保護法がある。また、大気汚染防止に関する基準として、 環境空気質量標準(GB3095-2012)、火力発電所からの排気に関しては、火力発電所大気汚染物排出 27 標準(GB-13223-2011)がある。大気汚染物質に関する主な許容濃度について、表 1.3.2-13 に示す。 表 1.3.2-13 大気汚染物質の許容濃度 許容限界濃度 平均時間 一級 二級 年平均 20 60 SO2 24 時間平均 50 150 1 時間平均 150 500 年平均 40 40 NO2 24 時間平均 80 80 1 時間平均 200 200 24 時間平均 4 4 CO 1 時間平均 10 10 年平均 40 70 PM10 24 時間平均 50 150 年平均 15 35 PM2.5 24 時間平均 35 75 出典:環境空気質量標準(GB3095-2012) 単位 μg/m3 μg/m3 mg/m3 μg/m3 μg/m3 注:一級は主に環境保護地域、二級は居住区、商業区、工業区、農村区など。 火力発電所からの大気汚染物質排出については、表 1.3.2-14 の基準が定められている。既存火力発 電ボイラ・タービンについては 2014 年 7 月 1 日、新規建設火力発電ボイラ・タービンについては 2012 年 1 月 1 日、石炭ボイラについては 2015 年 1 月 1 日が遵守基準日となる。また、大気汚染対策をより進める べきとされる重点地区については、表 1.3.2-15 に示すようにより厳しい規制が定められている。 表 1.3.2-14 火力発電設備からの大気汚染物質許容濃度(単位 mg/m3) 設備 汚染物質 煤塵 適用条件 全て 新規設備 SO2 石炭ボイラ 既存設備 NOx 全て 水銀とその化合物 煤塵 全て 全て 新規設備 SO2 既存設備 石油燃料ボイラ・ ガスタービン 新規ボイラ NOx 既存ボイラ ガスタービン 天然ガスボイラ・ガスタービン 煤塵 その他ガスボイラ・ガスタービン 天然ガスボイラ・ガスタービン SO2 その他ガスボイラ・ガスタービン ガス燃料ボイラ・ ガスタービン 天然ガスボイラ その他ガスボイラ NOx 天然ガスガスタービン その他ガスガスタービン 出典:大気汚染物排出標準(GB-13223-2011) 28 許容限界 30 100 200* 200 400* 100 200** 0.03 30 100 200 100 200 120 5 10 35 100 100 200 50 120 注:*広西壮族自治区、重慶市、四川省の設備 **W フレーム燃料型火力発電ボイラ、既存循環流動床ボイラ、2003 年 12 月 31 日以前の設備 表 1.3.2-15 重点地区における火力発電設備からの大気汚染物質許容濃度(単位 mg/m3) 設備 石炭ボイラ 石油燃料ボイラ・ ガスタービン ガス燃料ボイラ・ ガスタービン 汚染物質 煤塵 SO2 NOx 水銀とその化合物 煤塵 SO2 NOx 煤塵 SO2 NOx 適用条件 全て 全て 全て 全て 全て 全て ボイラ タービン 全て 全て ボイラ タービン 許容限界 20 50 100 0.03 20 50 100 120 5 35 100 50 出典:大気汚染物排出標準(GB-13223-2011) 2013 年初頭、中国は特に北京付近において深刻な大気汚染に見舞われた。そのため、政府環境保護 部は火力発電などに排ガス規制を行うことを検討中である。 中国環境保護部は、「2012 中国環境状況公報」で、火力発電分野における大気汚染物質削減に関す る主要措置について報告している。二酸化硫黄排出削減の主要措置として、火力発電所を対象に次の 対策が講じられ総合脱硫効率は 85%から 90%以上に向上した。新規発電ユニット 4,725 万 kW に脱硫 装置が取り付けられ、脱硫装置が設置された発電ユニットの総発電容量は 7.18 億 kW に達し火力発電に 占める割合が 92%となった。既存火力発電ユニット 289 台(1.27 億 kW)を対象に脱硫のバイパス煙道を 除去した。 窒素酸化物排出削減の主要措置としては、火力発電ユニット 250 台(9,670 万 kW)に脱硝設備が取り 付けられ、脱硝設備が設置された火力発電の総発電容量は 2.26 億 kW に達し、発電容量に占める割合 が 2011 年の 16.9%から 27.6%に上昇した。 過去の中国環境状況公報によると二酸化硫黄の排出量は、第十一次五ヶ年以降、連続して減少して きている。一方、窒素酸化物の排出量は、2006 年から 2011 年まで増加傾向を示してきたが、2012 年より 減少に転じた。 (PM2.5 について) PM2.5 とは平均粒径 2.5 ミクロン以下の微小粒子状物質のことで、その発生原因は複雑であるが、大気 中の光化学反応などにより SOx、NOx、粉塵などから生成される。PM2.5 は呼吸器の奥深くまで入り込み、 健康に悪影響を与えるとされている。北京での PM2.5 の観測データを図 2.2-13 示すが、日本あるいは米 国での環境基準を大幅にオーバーしていると同時に中国の環境基準をも超えている。 29 図 1.3.2-7 北京での PM2.5 観測データ 発生源について図 2.2-14 に示すが、発電所やボイラ等の石炭燃焼の寄与が 17%となっている。 自動車由来 発電所の石炭燃焼 粉塵 工業塗装 農村由来(藁の焼却) 天津、河北からの越境 図 1.3.2-8 北京での PM2.5 の排出源 出典:2012 年 1 月北京市発表 1.3.3 インド (1) エネルギー政策及び石炭政策 図 1.3.3-1 に計画委員会が纏めた一次エネルギーの推移を示す。ここでは 2016 年の 12 次 5 ヶ年計画 最終年度の予想ならびに 2021 年の予想を示す。今後石炭ならびに褐炭の伸びが大きいが、一方で天然 ガスにも大きな期待がかかっていることがわかる。 30 700 1次エネルギー量 Mtoe 600 500 400 300 200 100 0 2000 石炭 2006 褐炭 原油 2011 天然ガス 水力 2016 原子力 2021 再生可能エネ 図 1.3.3-1 インド一次エネルギー需要量(Mtoe 石油換算 100 万トン) 出典:インド計画委員会「An Approach to the 12th Five Year Plan」(2013) 国家計画委員会では 12 次 5 ヶ年計画中の GDP 成長率を年率 9%(11 次 5 ヶ年期間:8.2%)と設定して おり、それを満たすエネルギー供給量の伸びを年率 6.5%としている。 また、図 1.3.3-2 インド一次エネルギーの輸入量(Mtoe)を示す。2000 年以降一次エネルギーの輸入 が急増したが、その中でも石炭および石油関連が多くを占めている。2011 年以降は更なる輸入増加が予 測されているが、LNG の輸入の増加も考えられている。これからのわが国の石炭、LNG の輸入にとっても 影響が出てくるのではないかと考えられる。 1次エネルギー輸入量 Mtoe 400 350 300 250 200 150 100 50 0 2000 2006 石炭 2011 石油製品 LNG 2016 2021 水力 図 1.3.3-2 インド一次エネルギー輸入量の推移(Mtoe 石油換算 100 万トン) 出典:インド計画委員会「An Approach to the 12th Five Year Plan」(2013) 31 国家計 計画委員会か からは、石炭輸 輸入に対して てはインド石炭 炭公社(Coal India Limiteed, CIL)に、国内炭生 産にとどまらずに、総 総合的な石炭供 供給の責任を を果たすべき きと明示されて ている。 (2) 石炭 炭探査状況 インドの の確認埋蔵量 量はインド政府 府の 2012 年 4 月 1 日発表 表の最新データ タでは合計 11,181.44 億トン ンであり、 世界第 5 位の埋蔵量 量を有する。 表 1.3..3-1 インドの の石炭埋蔵量 量 (単位 100 0 万トン 2012 2年4月1日 日現在) 強粘結 結炭 弱粘結 結炭 微粘結 結炭 一般炭 炭 合計 確認埋蔵量 Indicatedd 確 Inferre d 合計埋 埋蔵量 4,61 699 5,313 14 0 12,83 37 11,,951 1,,880 2 26,669 1,707 48 82 1,,003 222 100,21 11 128,,515 31,,082 25 59,808 118,14 44 142,,168 33,,184 29 93,496 Provisional Coal Statistiics 2011-201 12 確認埋 埋蔵量の内訳を図 1.3.3-3 3 に示すが、885%は一般炭 炭である。 図 1.3.3-3 インドの確認 認埋蔵量割合 合 出典 Prrovisional Cooal Statistics 2011-2012 (3) 石炭 炭生産 であり、原料炭 表 1.3.3-2 に炭種別 別の生産量推 推移を示す。イ インドの石炭の の多くは高灰分の一般炭で 炭の産出 は少ない い。また生産量 量の伸びでは は一般炭と褐炭 炭が大きく主 主に電力需要の伸びによる るものである。 32 表 1.3.3-2 炭種別生産量(単位:100 万トン) (Mt) 年 1998-99 1999-00 2000-01 2001-02 2002-03 2003-04 2004-05 2005-06 2006-07 2007-08 2008-09 2009-10 2010-11 2011-12 平均伸び率 (2011/1998) 原料炭 39.176 32.983 30.900 28.668 30.195 29.401 30.224 31.511 32.097 34.455 33.309 44.413 49.547 51.654 31.9% 瀝青炭 一般炭 257.332 271.120 282.796 299.119 311.077 331.845 352.391 375.528 398.735 422.627 459.636 487.629 483.147 488.286 89.7% 計 296.508 304.103 313.696 327.787 341.272 361.246 382.615 407.039 430.832 457.082 492.945 532.042 532.694 539.940 82.1% 褐炭 合計 23.419 22.475 24.247 24.813 26.018 27.958 30.411 30.228 31.285 33.980 32.421 34.071 37.733 43.105 319.927 326.578 337.943 352.600 367.290 389.204 413.026 437.267 462.117 491.062 525.366 566.113 570.427 583.045 84.1% 82.2% 出典:Provisional Coal Statistics 2011-12, Coal Controller's organisation & Ministry of Coal Chhattisgarh 州、Jharkhand 州、Odisha 州、Madhya Pradesh 州、Andhra Pradesh 州の 5 州で全国生産 の 8 割弱を占める。一方褐炭は南部 Tamil Nadu 州、西部 Gjarat 州、Rajastan 州に偏在している。 表 1.3.3-3 に 2011-2012 年度の企業別の石炭生産量を示す。インドの石炭生産は、大別して石炭省直 轄の国営炭鉱、州営等の公営炭鉱、および自家消費用の石炭を生産する民間炭鉱(Captive Mine)によ り行われている。 一方、褐炭の生産も国営、公営、民営に別れており、生産量のほとんどが Tamil Nadu 州にある国営の NLC(Neiveli Lignite Company Limited)と公営企業によるものである。 表 1.3.3-3 企業別石炭生産量(単位:100 万トン) (Mt) 種 別 組織 瀝青炭、 亜瀝青 褐 炭 炭 435.833 52.211 488.044 2.702 49.194 539.940 24.591 17.671 0.843 43.105 539.940 43.105 企業 CIL 瀝 国営 青 SCCL / 計 亜 公営 DVC, IISCO等 瀝 民営 TSL, JSPL等 青 炭 瀝青炭計 国営 NLC GMDCL, RSMML等 褐 公営 炭 民営 VS Lignite 褐炭計 合 計 合 計 435.833 52.211 488.044 2.702 49.194 539.940 24.591 17.671 0.843 43.105 583.045 比率(%) 74.8 9.0 83.7 0.5 8.4 92.6 4.2 3.0 0.1 7.4 100.0 出典:Provisional Coal Statistics 2011-12, Coal Controller's organisation & Ministry of Coal 33 (4) 石炭消費(輸出入)・需給見通し 表 1.3.3-4 にインドの石炭需給推移を示す。石炭生産は着実に増えているものの、国内需要を賄えず、 輸入は年々増加傾向にある。2012 年の消費量は 7 億トンを超えている。この表からも輸入の増加傾向が 見てとれる。石炭供給不足が深刻化しており、大規模停電の不安をかかえている。 表 1.3.3-4 インド石炭需給推移(単位:100 万トン) 石炭生産量 原料炭 一般炭 褐炭 石炭消費量 原料炭 一般炭 褐炭 石炭輸入量 原料炭 一般炭 石炭輸出量 原料炭 一般炭 2000 335.7 22.1 289.3 24.2 357 35.9 296.3 24.8 20.9 11.1 9.9 1.3 0.6 0.7 2005 437.3 23.6 383.5 30.2 463.5 39 394.2 30.2 38.6 16.9 21.7 2 0.05 1.9 2009 566.1 36.1 495.9 34.1 650.1 62.4 553.4 34.4 96.2 31.1 65 2.5 0.3 2.2 2010 570.4 41.4 491.3 37.7 676.9 74.3 565 37.7 115.7 34.4 81.3 1.9 1.1 1.8 2011 2012e 582.3 595 44.3 47.2 495.6 504.3 42.3 43.5 710.1 753.2 79.8 83.8 588.4 625.9 41.9 43.5 132.1 159.6 33.9 36.6 98.2 123 2 1.5 1 1.9 1.5 出典:IEA Coal Information 2013 (単位:100 万トン、2012 年は推計値) (5) 石炭価格 国内炭価格 石炭価格はグレードにより大きく異なる。2012 年 1 月の山元基準価格は、最も発熱量の高いグレードで トン当たり 4,870Rs($90)、電力で主力として使われている F グレードでは、600-640Rs($13)となっている が、これに付加コストとして塊炭供給、積込方法・場所、また各種課税分が乗せられ出荷価格となる。 表 1.3.3-5 石炭価格(販売量及び売上からの計算値) 単位:Rs/トン 2012年 2013年 第1四半期 第4四半期 第1四半期 燃料供給契約ベース 1,188 1,251 1,267 電子取引ベース 2,246 2,852 2,562 選炭ベース 2,179 2,318 2,315 石炭価格(販売量及び売上からの計算値) 出典:Indbank, 2012 年 8 月 石炭価格プール制度の導入 石炭の主要用途である火力発電所はその立地に応じて輸入炭の使用状況が異なっている。しかし輸 入炭は国内炭に比べ 40%程価格が高いため、立地により発電コストに差が生じている。特に海外炭をベ ースとして発電事業を進めていた民間企業にとっては高価格海外炭による燃料コストの上昇が大きな問 題となっていた。燃料コスト差是正及び輸入増による石炭供給確保の観点から、CIL(Coal India Limited) と CEA(Central Electricity Authority)は新たに電力用石炭価格のプール制度を設けることに合意した。 34 新価格制度の中身については現在関係所管にて検討中である。 (6) 露天掘・坑内掘状況 表 1.3.3-6 に露天掘り/坑内掘り生産量を示す。2011-12 年度では露天掘り/坑内掘り比率は 90.4%であ る。CIL、SCCL、公営、民営ともに年々坑内掘り生産量は減少傾向にあり、露天掘りによる生産量が増加 している。 表 1.3.3-6 露天掘り/坑内掘り生産量(100 万トン) 2011-2012 2010-2011 2009-2010 Open Cast UnderGround CIL 397.443 38.390 SCCL 41.572 10.639 Pblic 441.691 49.055 Private 46.417 2.777 All India 488.108 51.832 出典:Provisional Coal Statistics 2011-2012 Open Cast 391.303 39.705 433.134 44.705 477.839 UnderGround Open Cast 40.018 11.628 51.927 2.928 54.855 387.997 38.460 428.464 45.055 473.519 UnderGround 43.262 11.969 55.576 2.947 58.523 (7) 選炭技術の状況・普及率 表 1.3.3-7 に CIL 及びその他の炭種別選炭能力を示す。特に生産量の拡大に伴い品質低下が問題視 される中、選炭は重要政策とされている。 表 1.3.3-7 インドの選炭能力(単位:100 万トン) 炭種 能力(Mt/年) 会社 2010 2011 CIL 19.68 19.68 その他 10.01 10.01 29.69 29.69 21.22 21.22 75.1 77.83 原料炭 原料炭 計 一般炭 CIL その他 一般炭 計 合計 96.32 99.05 126.01 128.74 出典:Energy Statistics 2012, Central Statistics Office その一方、2010 年度からの一年間での新規能力増加はわずか 200 万トンにとどまっており、今後も新設、 既設の操業改善による能力増強が課題となっている。 (8) CBM CMM VAM 等の開発利用状況 石炭省年次報告書(2011-2012)の記述では CBM、CMM、UCG(Underground Coal Gasification)、は 政府として進めるべき技術とされている。特に CBM は地球温暖化ガス対策としても有効で、かつエネルギ ー源としても利用可能であるとしてしている。1997 年に制定した CBM 政策にのっとり、現在 33 鉱区で CMPDIL(CoalMining and Planning Design Institute Limited、CIL の研究機関 )が中心となり探査及び開 発が進められている。 35 (9) 輸送 送インフラ(鉄道 道・港湾) 主な石 石炭輸送手段 段は鉄道である。図 1.3.3--4 に鉄道網 網と産炭地、石 石炭の主要用 用途である電力 力の需要 上位 5 州 州を示した。鉄 鉄道取扱量は は 2010-2011 年度に 4 億 2,000 万トン、 、国内生産量 量の 78%が鉄道 道で輸送 されてい いる。また取扱 扱量は総鉄道輸送量の 466%を占めてい いる。平均輸送 送距離は同年 年度で 638km m となって いる。森林 林環境省が 2002 年に開始した灰分 334%以上の石 石炭の 1,000k km 以上の輸送 送が規制され れたため、 主に長距 距離輸送は選 選炭品が多くな なっている。C Coal Linkagee を決定する る際に、選炭品 品は 400km 以上の輸 以 送に優先 先的に割当て て、150km 以下 下の短距離輸 輸送には使用 用しないとの指 指針がでてい いる。 図 1.3.3-4 インド鉄道網 イ 網及び石炭生 生産地域(左図 図黄色)と電力 力需要上位州 州(右図緑色) ) 現在は は、例えば坑口発電等、極 極近距離はト ラック輸送、コ コンベア輸送 送、MGR(積み み地・需要家専 専用鉄道 線)による る輸送が行わ われているが、 、今後は輸送 送効率化のた ためコンベア輸 輸送及び MG GR が増えると と予測され ている。 海上輸 輸送は東部 Odisha 州、Weest Bengal 州 州から南部 An ndhra Pradesh h 州、Tamil N Nadu 州への輸 輸送が行 われてい いるが、その数 数量は限定的である。海 海上輸送の主 主な機能は輸 輸入炭の受入 入であり、西沿 沿岸では Gujarat 州 Mundra 港、Maharast 港 ra 州 Munbaai 港、東沿岸 岸では West Bengal 州 K Kolkata 港、O Odisha 州 Paradip 港 港、Andhra Pradesh P 州 Viishakpatnam 港、Khrishnaapatnam 港、Tamil Nadu 州 Tuticolin 港が主要 港 輸入港で である。特に Mundra M や Krishnapatnam K m は民間に港 港湾開発が委 委託されており り、その規模拡 拡大が著 しいため め、石炭輸入に に関してはこの の数年でイン ンド 1,2 の規模に成長する ると言われて ている。 (10) 石炭企業動向((上位 10 社他 他) 褐炭を除 除く石炭の生産 産では、国営 営の CIL(Coa l India Limiteed)によるもの のが約 75%を占 占める。次いで で国と AP 州政府の の合弁である SCCL(Singaareni Collieriies Companyy Limited)が 5,200 万トン ンで約 9%、民間炭鉱が 4,900 万 万トンで約 8%を を占める。公営 営炭鉱は 2700 万トン 0.5%に にすぎない。CIL は地域ご ごとに 8 社の子会社を 持ち、そのうち SECL(South Easteern Coalfieldds Ltd.)、MC CL(Mahanadii Coalfields L Ltd)は単独で でも 1 億ト ン以上の の生産量となっ っている(表 1.3.3-8)。褐 褐炭の生産は国 国営 NLC が 57%を占めて ている。同様に に、民営、 民間炭鉱 鉱会社の生産 産量を表 1.3.3-9、表 1.3.33-10 に示した た。 36 表 1.3.3-8 CIL の子会社別及び SCCL、NLC の 2011-2012 年度生産量 略称 ECL BCCL CCL NCL WCL SECL MCL NEC Total CIL SCCL Others All India 社名 実生産量 Eastern Coalfields Ltd. 30.832 Bharat Coalfields Ltd. 30.159 Central Coalfields Ltd. 47.884 Northern Coalfields Ltd. 63.613 Western Coalfields Ltd. 41.967 Southern Eastern Coalfields Ltd. 115.154 Mahanadi Coalfields Ltd. 102.527 North Eastern Coalfields Ltd. 0.8 432.936 Singareni Colliers Company Ltd. 51.504 51.29 535.73 出典:Provisional Coal Statistics 2011-2012 表 1.3.3-9 公営炭鉱会社の 2011-2012 年度生産量 瀝青炭・ 亜瀝青炭 0.020 企業 JKML Jammu & Kashimir Minerals Ltd. 褐 炭 合 計 0.020 JSMDCL Jharkhand State Mineral Development Corp. 0.118 0.118 DVC IISCO Damodar Valley Corp. Indian Iron & Steel Company Ltd. 0.328 0.596 0.328 0.596 WBPDCL West Bengal Power Development Corp. Ltd. 0.213 0.213 SAIL DVC Emta Steel Authority of India DVC EMTA Coal Mines Limited Arunachal Pradesh Mineral Development & Trading Corp. Ltd. 0.040 1.165 0.040 1.165 APMDTCL 計 0.222 0.222 2.702 2.702 GMDCL Gujarat Mineral Development Corp. Ltd. 11.343 11.343 GIPCL Gujarat Industries Power Company Ltd. 3.042 3.042 GHCL Gujarat Heavy Chemical Ltd 0.394 0.394 RSMML Rajasthan State Mines & Mineral Ltd. 計 2.892 2.892 17.671 17.671 出典:Provisional Coal Statistics 2011-2012 表 1.3.3-10 民営炭鉱会社の 2011-2012 年度生産量 瀝青炭・ 亜瀝青炭 0.020 企業 褐 炭 合 計 JKML Jammu & Kashimir Minerals Ltd. JSMDCL Jharkhand State Mineral Development Corp. 0.118 0.118 DVC IISCO Damodar Valley Corp. Indian Iron & Steel Company Ltd. 0.328 0.596 0.328 0.596 WBPDCL West Bengal Power Development Corp. Ltd. 0.213 0.213 SAIL DVC Emta Steel Authority of India DVC EMTA Coal Mines Limited Arunachal Pradesh Mineral Development & Trading Corp. Ltd. 0.040 1.165 0.040 1.165 APMDTCL 計 0.020 0.222 0.222 2.702 2.702 GMDCL Gujarat Mineral Development Corp. Ltd. GIPCL Gujarat Industries Power Company Ltd. 3.042 3.042 GHCL Gujarat Heavy Chemical Ltd 0.394 0.394 RSMML Rajasthan State Mines & Mineral Ltd. 計 出典:Provisional Coal Statistics 2011-2012 37 11.343 11.343 2.892 2.892 17.671 17.671 (11) 電力事情 電力行政 インドでは電力需要に対し供給が不足、年間発電量で 10%、最大電力で 17%の電力が不足している。 需給バランスのみならず送電ロスも約 30%と大きく、送電系統の保守整備・強化が優先課題である。イン ドの主な電力行政を図 1.3.3-5 に示す。 電力行政は機能ごとに細分化されており、それが電力政策の進行を遅らせる一因となっている。また州 政府には中央政府と類似した電力価格決定、発電、送・配電組織が存在していることも電力行政を一層 複雑にしている。 Government of India 原子力 新エネ 州電力政策 National Development Council CERC Planning Commission 電力省 Dept. of Atomic Energy MNES State Government NTPC NHPC NEEPCO NTPC:火力発電公社 NHPC:水力発電公社 Ministry of Power 電気料金、州間 委託料金 国家5ヶ年計画 CEA PGCIL PFC 電力政策、計画 送電網 電力プロジェクトの ファイナンス 図 1.3.3-5 インド電力関係行政組織図(一部抜粋) 電力構成 中央電力庁が発表している最新の発電容量を表 1.3.3-11 に示す。総発電容量 210GW に対して、その 半分強の 121GW が石炭火力によることがわかる。その一方で既に再生可能エネルギー容量が約 26GW あり、原子力やガス火力よりも多い。 表 1.3.3-11 地域別、発電形態別の発電容量(単位:GW) No 1 2 3 4 5 6 7 地域 石炭 Northern 31.32 Western 43.1 Southern 23.78 Eastern 22.61 N. Eastern 0.06 Island 0 All India 120.87 化石燃料発電 天然 ディー ガス ゼル 4.67 0.01 8.25 0.01 4.96 0.94 0.19 0.02 0.82 0.14 0 0.07 18.9 1.2 合計 36.01 51.37 29.68 22.82 0.1 0.07 141 原子力 発電 1.62 1.84 1.32 0 0 0 4.78 水力 発電 15.46 7.45 11.34 3.88 1.2 0 39.32 再生可 能エネ 4.62 8.45 12.1 0.44 0.24 0.01 25.86 合計 57.71 69.11 54.44 27.13 2.47 0.08 210.94 出典:インド中央電力庁、発表値 2012 年 11 月末 今後の電力需要見通し 12 次 5 ヶ年計画における成長率に基づくと、今後 2030 年までに総発電容量を 700GW とする必要があ り、大型発電プロジェクトが計画されている。また単基容量も現在主力の 210~500MW 亜臨界から、660 38 ~800MW W 超臨界へと と移行する段 段階にあり、大 大きな市場を形 形成している。 。 2013 年 9 月 30 日時 時点でのインド ド電力庁デー ータによると、インドの発電 電設備の概要 要を図 1.3.3-6 6 に示す。 石炭が 1134.3GW と 58.75%を占め 5 め最大である。 ついで水力が 39.8GW で 17.39%、再 再生可能エネルギーが 28.20GW W12.32%となっ っている。 なお、再生可能エネルギーには は小容量水力 力、バイオマス スガス化、バイオマス発電 電、廃棄物発 発電、風力 がある る。 図 1.3.3-6 インドの発 発電設備の内 内訳 インド電 電力庁資料 2012 年 9 月に発 発行された電力 力需給レポー ートによると、石 石炭の主用途 途である電力分 分野では、20 011-2012 年度のイ インドの総発電 電量は 876.4BU(1BU=1, 000GWh)、火 火力は 708.5BU、総発電量 量の 80.8%、其 其の内石 炭火力は は 584.6BU で総発電量の で の 66.7%となっ っている。年々 々供給量は増 増加しているが が、需要増加に追付か ず、ピーク容量で 10..5%、ピーク発 発電量で 8.5%%の不足となっ っている。図 1.3.3-7 に発 発電容量の需 需給推移を 示す。この不足要因と として、発電所 所が足りない いこともあるが、既設発電所 所でも石炭供 供給量の不足 足、石炭品 質劣化に により計画通り りの発電を行 行えていないと という面もある る。 140,,000 0.00% % -2.00 0% -4.00 0% -6.00 0% -8.00 0% -10.0 00% -12.0 00% -14.0 00% -16.0 00% -18.0 00% -20.0 00% 120,,000 100,,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 需要 要 供給 給 不足 足(%) 1989 1996 2001 1 2006 200 07 2008 20 009 2010 2011 2 図 1.3.3-7 発電容量 量(MW)の需給 給推移及び不 不足率(%) 出典:イン ンド中央電力 力庁 国家電力 力計画 (20112 年 1 月) 図 1.33.3-8 に、GD DP 成長率を 8%、9%とした た場合の発電容 容量の増加見 見通しを示す す。年率 6.5%の伸びで 容量を増 増やさなければ ば国内需要を を満たせない いため、2030 年までに現在 年 在の 205GW か から 700GW まで発電 容量を増 増やす計画で である。 39 1000 GDP G Growth 8% GDP G Growth 9% 容量(GW) 800 600 400 200 0 2007 20122 2017 2022 2 2027 2032 図 1.3.3-8 発電容量の の増加見通し 出典:Intternational Seeminar on Su uper Critical Technology, 2011 発電技 技術に関しては は、2011 年末 末に Gujarat 州 Mundra で運開した超臨 で 臨界圧ユニッ ット(660MW× ×6 基の一 期分 2 基 基)が最初の超 超臨界圧ユニ ニットである。 超々臨界圧ユニットは 13 3 次 5 ヶ年計 計画以降と見られる。さ プロジェクト( らに IGC CC となると B BHEL/APGENCO 共同プ (182MW-IGC CC)のような具 具体的な計画 画はあるも のの、時 時期は全く未定 定である。 (12) Ultra Mega Pow wer Projects( (UMPP) インドの の経済成長に に見合った電力 力供給に備え えるために、少 少なくとも今後 後 30 年間は電 電力の需要は は 10 年ご とに倍増 増となる予測で である。このために大きな な電力供給の の強化プロジ ジェクトが必要 要になる。こ のための Ultra Meega Power Prrojects がスタ タートしている る。 このプロ ロジェクトでは はおよそ 4,00 00MW の電力 力供給量の増 増加を図り、国 国の電力供給 給の不足を解決 決する。 プロジェ ェクトは Buildd, Own, and Operate(BO OO)ベースで であるが、本プ プロジェクトの概 概要は次のと とおりであ る。 ・UMPP P は高効率の の超臨界圧ユ ユニットの採用 用 ・ユニッ ット容量にはフ フレキシブルに対応 ・石炭供 供給地も配慮 慮して立地 ・沿岸火 火力には輸入 入炭を使用 具体的 的なプロジェク クトとしてこれま までに次のユ ユニットが決ま まっている。 ・Mundrra, Gujarat ・Sasann, Madhya Prradesh ・Krishnnapatnam ・Tilaiyaa (13) 環境 境状況 急激な な経済成長に伴 伴い環境が悪 悪化している 。家庭からの のゴミや下水問 問題、農薬や や肥料問題、車 車の排気 ガスや粉 粉塵問題、工業 業分野からの の廃棄物問題 題が顕在化。工 工業分野では は、発電所の粉 粉塵・フライア アッシュ 40 処理、製鉄所の粉塵、アルミ精錬工場でのフッ素問題、インド特有のモンスーン(雨期)期間中の廃棄物 の流出等が挙げられる。 2010 年 1 月、環境森林省(Ministry of Environment & Forest)の下部組織である中央公害管理局 (Central Pollution Control Board)がインド国内の 43 地域を高汚染地域(Critical Polluted Area)に指定。 全ての工場の新設を凍結した。当該地域を管轄する州公害管理局(State Pollution Control Board)が公 害防止に向けたアクションプランを中央公害管理局に提出して認可を受けるまで凍結は解除されない。 工場を建設するまでの一般的な流れは以下の通り。 環境許可申請⇒TOR(Term of Reference)発行⇒環境影響評価書(Environmental Impact Assessment) 提出⇒TOR 委員会開催⇒(必要に応じて公聴会開催)⇒環境許可証(Environment Clearence)発行⇒ 州公害管理局に建設許可申請⇒建設許可(Consent to Establish) 2011 年 3 月、環境森林省は「大規模インフラ・石炭火力発電・水力発電のプロジェクト実施に当たって は事前に森林伐採許可を取ること」とする省令を出した。ただインド電力省は発電計画が達成できないと して反論中である。 2002 年に環境森林省が出した「1,000km 以上を輸送する発電用炭は灰分 34%以下にすること」、及び 煤塵規制の 150mg/m3 以下が、今後強化される予定である。石炭運搬規制は 1,000km 以下が 500km 以 下に、煤塵規制は 150mg/m3 が 115mg/m3 にそれぞれ強化される予定であるが、ただでさえ石炭品質が 劣化している状況で、発電側は一層の対応強化が求められている。 (14) 日本企業の進出状況 日本の重電業界の現地化及び状況は以下の通り。 ・ 三菱重工・三菱電機/Lasen & Toubro Ltd 2007年4月に超臨界圧ボイラーの製造・販売を行う合弁会社を設立。さらに、2007年12月に蒸気タービ ン、発電機の製造・販売を行う合弁会社を設立。 2011年12月、同国Punjab州にて超臨界圧石炭火力発電所を建設・運営するNabha Power Limited向け に、丸紅株式会社が販売、三菱重工業株式会社・Larsen & Toubro Limitedが製造する高効率・高性能 超臨界圧発電用ボイラー及びタービンの主要機器を輸出する。国際協力銀行及び三菱東京UFJ銀行の 協調融資総額は約105億円。 ・ 東芝/JSWグループ 2008年6月に超臨界圧蒸気タービン、発電機等の製造・販売を行う合弁会社を設立。2012年2月、東 芝とJSWグループの合弁会社「東芝JSWタービン発電機(東芝JSW)」がTamil Nadu州Chennai近郊Manali に建設した火力発電所向け蒸気タービンと発電機を製造する新工場が竣工した。同工場は主に超臨界 圧方式の大規模(600-1,000MW)蒸気タービン発電機を生産する。製品は当面の間、インド国内でのみ 販売するが、将来的にはアジア地域へも輸出する計画。 インド現地法人である東芝JSWは、インド火力発電公社から、Karnataka州Kudgiの超臨界石炭火力発 電所向け出力800MWの超臨界圧方式の蒸気タービン発電機設備3プラント分の発電設備を受注した。 41 ・ 日立製作所/BGRエナジーシステムズ 2010年8月株式会社日立製作所と日立の子会社であるHitachi Power Europe GmbHは、インドのエン ジニアリング・重電機器製造会社であるBGRエナジーシステムズ社と66万kW~100万kWクラスの超臨界 圧火力発電用蒸気タービン・発電機およびボイラーの設計、製造、販売、サービスに関する合弁会社設 立に合意した。 2012 年 4 月、日立製作所のグループ会社である日立パワーヨーロッパ社は、インドにおけるパートナー 会社である BGR エナジーシステムズ社とインド国営火力発電公社から、インドマハラシュトラ州のシュラプ ール発電所に新設される 660MW の超臨界圧石炭火力発電所向けボイラー2 基を受注したと発表。BGR エナジーシステムズ社は、3 サイトのボイラーについて、2012 年 2 月に優先交渉権を獲得していたが、そ の中の 1 サイト 2 基分の受注が正式に決定した。 1.3.4 インドネシア (1) 石炭政策および新鉱業法の最新状況 インドネシアでは 2009 年に新鉱物石炭法が施工されて以来、自国の鉱物資源に対する様々な保護政 策が打ち出されている。具体的には生産量、輸出量、石炭価格のコントロール権限を政府に付与し、具 体的には国内販売優先義務(DMO)、石炭価格統制(ICPR)の実施、最近では石炭の高付加価値義務、 石炭輸出税、石炭輸出規制を行うことが検討されている。これらについて以下に示す。 ① 国内供給事務(DMO) 国内石炭需要の安全保障のために施工された法律で、石炭鉱山は国内需要が満たされた時に石炭 を輸出する事ができるとの内容である。従って、インドネシア政府は国内の石炭需要の規模を決める必 要があり、また、石炭鉱山の石炭生産量に対し国内石炭販売(供給)の最低割合(%)を決めなければ ならない。なお、DMO を満たすために石炭鉱山同士の割当権取引も認められている。 現在 DMO についてはその改正議論がなされているが、割当権取引には手数料がかかることから、 炭鉱間での不公平などが指摘されており、鉱物石炭総局では民間企業を含めたヒアリングが行われて いる。近いうちに改善案が出される予定である。 ② 石炭価格統制(ICPR) インドネシア政府は石炭による国家収入の最適化、生産者および消費家、とりわけ国内消費家のため の基準の確立、国内における石炭の安定供給支援を目的に ICPR を導入した。ICPR により石炭価格が 品質別にこれまでよりも統一化されていくため、石炭企業が石炭の国内供給と輸出に同等の関心を持 つ事になり、国際的に発表されているインドネシア石炭指標(ICI)が反映されることにもなり、国の利益 が守られるとしている。 ③ 鉱物資源付加価値の義務化 鉱物資源付加価値の義務化に関する大臣令が 2012 年 2 月 6 日付で発行された。本法令は 2009 年 1 月 14 日に発令された「新鉱物石炭業法」とその細則となる 2010 年 2 月 1 日に発令された「鉱業およ び石炭事業の事業活動に関する細則」の詳細規定となるものである。なお、石炭についてはこの対象と なる鉱物には含まれていない。 ④ 輸出税、輸出規制 インドネシア政府は 2014 年から実施される原鉱石の全面輸出禁止を前に、増大している未処理鉱物 42 資源の安易な海外流出を防止すると共に、鉱物精錬所の建設資金の一部として有効活用するために 輸出税が導入された。 しかし、石炭はここでも除外されており、その対象外となっている。石炭輸出税は 2005 年当時の財務 省によって一度提案されたことがあるが、2006 年最高裁判所の決定によって石炭輸出税は廃止となっ ている。 ⑤ 輸出規制 輸出規制については、鉱物資源の高付加価値化政策をさらに推し進めるために特定の戦略的鉱物 資源の生産・輸出を国の管理下に置き、現在の鉱石輸出については過去の実績を参考にする動きが 出てきている。これが実施されれば国内供給義務の量が増えるために、実質的には輸出が減少するこ とになり、日本への影響が大きい。 (2) 石炭需給 インドネシアの石炭は、主にスマトラ・カリマンタンに賦存している。インドネシア石炭協会(APBI)による と 2010 年時点における総資源量は 1,052 億トン、埋蔵量は 211 億トン(うち確認埋蔵量 55 億トン) であるが、今後探査の進行により埋蔵量は増加していくものと思われる。灰分と硫黄分が少ないという環 境面で有利な特徴がある一方、発熱量は低く大部分は亜瀝青炭~褐炭に属する。 図 1.3.4-1 にインドネシアの石炭生産量、輸出量、国内消費量の推移を示す。生産量、輸出量は順調 に伸び、今後も増加することが見込まれている。国内消費の現状は横ばいであるが、今後の経済成長に 伴い大きな伸びが予想されている。 100万トン 450 生産量 輸出量 国内消費量 391 386 400 353 350 306 304 300 250 200 275 254 240 208 198 187 273 150 100 53 56 67 80 82 85 50 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013* *:計画値 出典:CCD 国際会議におけるエネルギー・鉱物資源省発表試料より JCOAL 作成 図 1.3.4-1 インドネシアの石炭生産量・輸出量・国内消費量の推移 (3) 石炭価格 インドネシア一般炭の輸出価格推移を示す。豪州の洪水などの影響で海外市場において需給が逼迫 した 2011 年初頭に価格が急騰しているが、その後価格は下落傾向であり、2012 年後半は、6,500kcal/kg (GAR)で概ね$90/t 程度で推移している。3,400kcal/kg(GAR)の褐炭は$30/t 前後である。 43 $160.00 $140.00 6500 kcal gar 5800 kcal gar 5000 kcal gar 4200 kcal gar 3400 kcal gar $120.00 $100.00 $80.00 $60.00 $40.00 $20.00 $0.00 2011/1/7 2012/1/7 2013/1/7 2014/1/7 出典:Argus/Coalindo Indonesian Coal Index Report 図 1.3.4-2 インドネシア一般炭価格推移 (4) 電力構成 インドネシアのエネルギー政策は脱石油を打ち出しており、資源量が豊富でコストが低い石炭と、水力、 地熱、バイオ等の新・再生エネルギーが主力ネルギー源に位置付けられている。図 1.3.4-3 に国有電力 公社(PLN)のエネルギーミックスの計画を示す。 PLN では電力安定供給と同時に国として自主的に掲げている 26%の CO2 排出量削減目標に貢献すべ く、排出が多いと言われている石炭火力においても削減努力に取り組む考えである。今後ジャワ-バリで 600-1,000MW 級の発電所が多く計画されており、これらの多くが SC で、1,000MW 級については USC の可能性も検討されている。 出典:CCD 国際会議におけるインドネシア国有電力公社(PLN)発表試料 図 1.3.4-3 燃料別発電量計画 44 (5) 山元石炭火力発電所、PLN、IPP の石炭火力建設計画 インドネシア政府は運搬が不向きな低品位炭(褐炭も含む)の有効利用として、山元石炭火力発電所 の建設を促進している。こういう中、南スマトラでは炭鉱近くに発電所を建設して発電する山元発電所計 画が進行している。ここで作られた電力は Jakarta の電力不足解消のために 2016 年に完成予定のスマト ラ島から Jawa 島を結ぶ海底送電線より Jakarta へ送電される計画である。送電所は南スマトラ Muara Enim に建設予定であるため、発電所はこの近辺に建設される可能性が高い。この Muara Enim を中心とした半 径 200km 以内の地域には約 300 の石炭の鉱業権が存在しており、発電所建設の際に必要な冷却水も豊 富である。PLN による発電所建設計画は Sumsel 計画と呼ばれこれまでに Sumsel 1 から Sumsel 8 までの 案件が進められてきた。現在は、Sumsel 9、10 に関する検討が行われている。 また、PLN が作成する電力供給計画(RUPTL)による PLN、IPP を含めた 2012 年から 2021 年までの新 規発電所建設による年毎の発電設備容量を図 1.3.4-4 に示す。全体の新規発電所建設による発電設備 容量の総量は 57,000MW であるが、その発電構成を見てみると、毎年石炭火力発電の建設割合が最も 大きく、全体では 38,000MW(66%)となっている。その他、水力、地熱、太陽光など再生可能エネルギー が導入されている。 (MW) ○全体 57,000MW ○石炭 38,000MW 出典:2012 年電力供給事業計画(RUPTL) 図 1.3.4-4 発電所建設計画(2012 年~2021 年) (6) 輸送インフラ インドネシアにおいて現在石炭の鉄道輸送が行われているのは南スマトラの一部のみである。その他 の炭鉱においては、基本的に山元から河川の積み出し場所まで道路で運搬し、そこでバージに積み替 えて川を下り、沖合で石炭運搬船に積み替える。この状況は近年変わっていない。 2013 年 11 月 13 日、インドネシア政府は 350 億ドル規模の新たなインフラ事業計画を明らかにした。 2014 年から開始され、計画される 56 事業のうち 32 事業は官民連携(PPP)によるものとなる。政府は来年 にまず 15 の事業が開始されるとし、これには石炭・パーム油の輸出拡大に向けた北スマトラ州クアラ・タン ジュンでの港建設が含まれている。 45 (7) 石炭企業動向 2012 年における石炭生産量上位 10 社を表 1.3.4-1 に示す。生産量トップは Adaro Indonesia の約 4,680 万トンである。上位 7 社が年産 1,000 万トンを超えており、上位 5 社はいずれも CCoW 第一世代の 企業である。PTBA 以外の企業はすべて東・南カリマンタンで操業を行っている。 表 1.3.4-1 インドネシアにおける石炭生産量上位 10 社(2012 年) No. 企業 生産量(トン) 州 形態 1 Adaro Indonesia, Tbk 46,779,423 南カリマンタン CCoW 第一世代 2 Kaltim Prima Coal 39,216,882 東カリマンタン CCoW 第一世代 3 Kideco Jaya Agung 34,648,790 東カリマンタン CCoW 第一世代 4 Arutmin Indonesia 27,379,226 南カリマンタン CCoW 第一世代 5 Berau Coal 20,999,256 東カリマンタン CCoW 第一世代 6 Bukit Asam, PT(PTBA) 13,727,923 南スマトラ他 国営企業 7 Indominco Mandiri 12,031,298 東カリマンタン CCoW 第一世代 8 Mahakam Sumber Jaya 9,249,991 東カリマンタン CCoW 第三世代 9 Trubaindo Coal Mining 7,539,194 東カリマンタン CCoW 第二世代 10 Insani Bara Perkasa 4,420,867 東カリマンタン CCoW 第三世代 出典:エネルギー鉱物資源省 (8) 石炭利用 表 1.3.4-2 にインドネシアにおける石炭の産業別消費割合を示す。2011 年の消費量は約 8,000 万トン であり、うち約 57%を電力が占めている。インドネシアではクラッシュプログラム(Fast Track Program)と呼 ばれる大規模な発電所増設計画を策定し、現在建設を進めている。プログラムは 1 次、2 次に分かれてお り、1 次プログラムでは約 10,000MW の発電所を全て石炭火力で新設する(全て国営電力会社 PLN)。2 次プログラムでは約 10,000MW の発電所を新設し(PLN 37.6%、IPP 62.4%)、うち 31%が石炭火力発電所 となっている。1 次プログラムの開発計画は 2006~2009 年であったが、実際には 2011 年進捗率 32.0%、 2012 年進捗率 64.2%と予定が大幅に遅れている。現時点では 2014 年に建設が完了する見込みとなって いる。2 次プログラムの開発期間は 2010~2014 年の計画であったが、こちらもかなり遅れている模様であ る。 表 1.3.4-2 インドネシアの産業別石炭消費量推移 電力 セメント 紙・パルプ 鉄鋼 ブリケット その他 合計 2007 32,420,000 6,443,864 1,526,095 282,730 25,120 20,772,192 61,470,000 2008 31,041,000 6,842,403 1,251,000 245,949 43,000 14,049,899 53,473,251 2009 36,570,000 6,900,000 1,170,000 256,605 61,463 11,336,932 56,295,000 2010 2011 34,410,000 45,118,519 6,308,000 5,873,144 1,742,000 N/A 335,000 166,034 13,843 18,506 24,191,157 28,381,597 67,000,000 79,557,800 出典:Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2012 インドネシアの電力構成を図 1.3.4-5 に示す。2011 年の発電電力量における石炭の割合は 44%であ る。 46 GWh 200,000 180,000 160,000 その他 140,000 地熱 120,000 水力 100,000 ディーゼル コンバインド 80,000 ガス 石油 60,000 石炭 40,000 20,000 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出典:2012 Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 図 1.3.4-5 インドネシアの電力構成 (9) 環境状況(規制値及び実情) インドネシアの環境に関する規制の基本法として、環境管理法がある。1997 年に制定され、2009 年に 改正されている。環境管理全般についての規定があり、2009 年改正では環境省権限が強化され、犯罪 容疑者を警察と協力して逮捕する権限が付与された。環境影響評価に関しては AMDAL と呼ばれる評価 制度があり、石炭開発を行う際には AMDAL の承認を得ることが不可欠である。 近年、インドネシアの石炭開発利用に伴い発生している主な環境問題は以下のようなものがある。 ・ 大気汚染、道路問題 石炭輸送にトラックが用いられており、このトラックが公道を通ることにより排気ガスや交通渋滞の問 題が発生している。また、重量の重いトラックにより道路の舗装が破壊される例もあり、最近石炭輸送ト ラックの公道使用を禁止する州が相次いでいる。 ・ 河川運搬問題 河川上流側における資源開発が原因で、河口近くで土砂が堆積し、浚渫しなければ十分な水深が 確保できなくなっている。水深は降雨不足によっても引き起こされている。潮の満ち引きなども関連す るが、一日のうちバージが運行できる時間が限られるようになっており、将来的にはバージによる石炭 運搬能力にも問題が生じる可能性がある。 ・ 鉱山酸性廃水 インドネシアの炭鉱では酸性廃水(Acid Mine Drainage; AMD)が問題となっている。採掘跡の修復 も重要な問題であるが、その際に AMD が発生しないような埋め戻し方法の確立が求められている。 企業は環境対策をすべきであると感じているが、現在は環境保全事業に対する政府の優遇策がなく、 環境対策を進めていくためには何らかのインセンティブが必要になると思われる。 47 1.3.5 ベ ベトナム (1) エネ ネルギー政策 策及び石炭政 政策(税を含む む) 2012 年 1 月 9 日、政府首相は「ベトナム石炭 炭産業の 202 20 年まで開発 発計画及び 22030 年までの見込み 検討」を批 批准した。計 計画によると、石 石炭探査目標 標は: 東北 北炭田(クアン ンニン省):20 020 年まで採掘 掘する埋蔵量 量及び資源量 量を確保する ために 2015 年まで- 3000mレベル以浅 浅の石炭資源 源及び埋蔵量 量探査を完了 了し、-300mレベル以深の の一部分を探 探査する。 2021 年~2030 年までの段階 年 階の採掘石炭 炭量を確保する るために 2020 年まで石炭 炭層基底部までの探査 を基 基本的に完了 了することを努 努力する。 紅河 河デルタ炭田 田(Red River):適切な鉱 山地質条件及 及び有望な石 石炭存在区域 域を選び、20 012 年~ 2015 年までの期 期間で探査を行 行い、同期間 間の末期に試 試験採掘をする。2030 年ま まで、コアイチ チャウ-ティ エン ンハイ盆地背斜 斜部に属する る採掘可能性 性が高い部分 分の探査を基本 本的に完了す することを努力 力する。 石炭生産 産目標は: 東北 北炭田及び他 他の炭鉱(紅河 河デルタ炭田 田を除く):201 15 年は 5,500~5,800 万 万トン、2020 年は 年 5,900 ~6,400 万、20225 年は 6,400 0~6,800 万ト トンの精炭を生 生産し、2025 年以降は 6, 500 万トン程 程度を維持 する る。 紅河 河デルタ炭田 田:2015 年から ら投資開発す する基盤を築く くために 2015 5 年まで試験 験採掘として数 数プロジェ クトに に投資する。精炭の生産量(換算)は 2020 年まで 50 万トン~1 100 万トン、22025 年は 200 万トン、 2030 年は 1,0000 万トン以上を を達成するこ ことを目標とす する。 2012 年 年の電源別構 構造を図 1.3.5 5-1 に、また表 表 1.3.5-1 にベトナムの電 に 電源構成の計 計画を示す。2 2020 年ま でに石炭 炭火力の発電 電容量を 36,000 MW (48%))へ、2030 年までにはその の 2 倍の 72,0000 MW (52% %)となる計 画である る。 容量 設備容 比率(% %) (MW) 10 水力 0,037 43 .7% ガスター ービン 7 7,395 32 .2% 石炭 4 4,301 18 .7% 石油 927 4 .0% Diesel 299 1 .3% 合計 22 2,959 100 .0% 発電種類 VN 出典:EV 図 1. 3.5-1 電源別 別構造 48 表 1.3..5-1 電源構 構成計画 石炭火力 水力 石油 油・ガス火力 再生 生エネルギー 原子力 輸入 計 2015 MW S Share % 14,900 35.10% 33.60% 14,200 24.90% 10,500 3.90% 1,670 0.00% 0 3.50% 1,070 42,500 2020 MW M Share % 36 6,000 48.0 00% 19 9,050 25.4 40% 12 2,375 16.5 50% 4 4,200 5.6 60% 975 1.3 30% 2 2,325 3.1 0% 75 5,000 20 025 MW Share % 42,900 0 45.20% 19,800 0 20.90% 16,700 0 17.60% 4,800 0 5.10% 6,000 0 6.30% 4,600 0 4.80% 95,000 0 2030 MW Sh are % 5 51.60% 72,653 22,106 1 15.70% 16,614 1 11.80% 13,235 9.40% 9,293 6.60% 6,899 4.90% 146,800 出典:日越石炭政策対 対話資料より り JCOAL 作成 成 また、2012 年 10 月 11 日より り石炭の輸出 出税が今まで での 20%から 10%へ引き下 下げられた。それまで VINACO あるとして政府 OMIN は、20112 年の当初の の目標である る輸出量 1,15 50 万トンの到 到達が困難であ 府へ税率 引き下げ げを要求してお おり、9 月には は財務省から らも税率引き下 下げの動きが が見られていた た。 (2) 石炭 炭探査状況 WEC20013 によると、ベトナムの可 可採埋蔵量は は 1.5 億トンで である。VINAC COMIN によ る最新の報告 告によると、 無煙炭を を含む資源量 量は 58.8 億トン(紅河デル ルタ炭田を除く く)、その内確 確定埋蔵量が が 49 億トンであ ある。 (3) 石炭 炭需給 石炭生産量、消費量 量、輸出量に関する過去 10 年間の推 推移を、図 1.3 3.5-2 に示す す。消費量は年 年々増加 傾向にあ あり、国内需要 要に応えるた ために生産量も も増加してい いる。2012 年は、不況によ 年 より国内需要 要が低下し たため国 国内販売量が が伸び悩み、4 4,400 万トンと となった。 輸出量 量は 2007 年をピークに近年 年は停滞傾向 向にある。2012 2 年の石炭輸 輸出量は、輸出 出税の引き下 下げにより 目標 1,150 万トンに対 対して大きく上 上回り、1,4400 万トンとなっ った。 出典:VINACOMIN 図 1.3.5-2 石 石炭生産・消費 費・輸出量推移 天掘り・坑内掘 掘り状況 (4) 露天 露天掘 掘り・坑内掘り り別の生産量(原炭)を図 1.3.5-3 に示 示す。2012 年は は露天掘り・坑 坑内掘りによ よる生産量 が減少し しているが、炭 炭層の深部化 化により坑内掘 掘りによる生産 産が増加傾向 向である。 49 原炭生産量 (百万トン) 40 露天掘 り 35 30 25 20 15 10 5 0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 図 1.3.5-3 露天掘り・校内掘り別生産量 (5) 2014 年 1 月の石炭生産・消費計画 VINACOMIN のチュアン総裁は 2014 年 1 月、VINACOMIN は 350 万トンの石炭を生産、販売する計 画を発表した。その内、国内供給量は 275 万トンであり、輸出量は 75 万トンである。2013 年 12 月、 VINACOMIN は 370 万トン生産し、440 万トン販売した。2013 年の石炭販売量は約 3,900 万トンで、前年 とほぼ同量であった。その内、輸出量は 1,160 万トン(2012 年の 80.4%)であり、国内販売量は約 2,740 万トン(2012 年の 111%)である。2013 年ベトナム全国の精炭量は約 4,119 万トン(2012 年の 98.2%)で、 VINACOMIN の精炭量は約 3,950 万トン(2012 年の 97.5%)であった。 2014 年の第 1 四半期、VINACOMIN は 2014 年の計画(3,500 万トン)の 27%以上の達成を目指し、そ の他、アルミ、工業用火薬材、電力等の産業も 2014 年の初四半期から安定的に稼働していくことを目指 している。 (6) 石炭価格 現在、ベトナムの発電所は国内無煙炭のうち粉炭 4 級以下の低品位炭を使用している。具体的には、 既設の微粉炭炊き発電所は主に粉炭 5 級を使用し、30 年以上稼動する古い発電所のみが粉炭 4 級を 使用している。粉炭 6 級以下(6b 以下及び選炭排水のスラッジ)のものは VINACOMIN の CFB 発電所で 使用している。2014 年 1 月 1 日から発電用国内無煙炭の価格は以下に表す。 表 1.3.5-2 2014 年 1 月 1 日以降の発電用石炭価格 № 炭種 灰分(dry basis)% 発熱量(kcal/kg) 価格(US$/トン) 1 粉炭 4A 19.01~23.00 >6,400 2 粉炭 4B 23.01~27.00 >5,950 94.28 2 粉炭 5A 27.01~31.00 >5,600 80.40 3 粉炭 5B 31.01~35.00 >5,250 68.35 4 粉炭 6A(CFB 用) 35.01~40.00 >4,800 63.11 5 粉炭 6B(CFB 用) 40.01~45.00 >4,350 55.52 出典:VINACOMIN 2012 年 7 月~9 月の HONGAI 炭の最安輸出価格を表 に示す。 50 炭種 一般塊炭 塊炭 4 号 塊炭 5a 粉炭 6 号 粉炭 7 号 粉炭 8B 号 粉炭 9A 号 粉炭 9B 号 粉炭 10B1 号 粉炭 11A 号 粉炭 11B 号 粉炭 11C 号 粉炭 12A 号 出典:VINACOMIN 表 1.3.5-3 HonGai 炭の最安輸出価格 輸出価格 発熱量(kcal/kg) 発電用炭価格/ US$/トン 輸出価格 212 >7,350 221 7,901~8,200 216 7,901~8,100 156 7,801~8,000 151 7,601~7,800 136 7,201~7,400 111 6,901~7,200 103 6,701~6,900 90 6,201~6,400 68 5,201~5,500 約 50% 62 4,901~5,200 約 51% 57 4,601~4,900 約 52% 52 4,350~4,600 産業用炭の価格/ 輸出価格 約 90% 約 90% 約 90% 約 91% 約 92% 約 89% 約 91% 約 90% 約 90% 約 90% また参考として、表 1.3.5-4 にベトナム無煙炭の銘柄区分の詳細を掲載する。 表 1.3.5-4 ベトナム無煙炭銘柄表 Name Domestic World 2a 02A 2b 02B 3 03A 4a 04A Lump 4b 04B 4c 04C 5a 05A 5b 05B 1 06 2 07 3a 08A 3b 08B 3c 08C Fine 4a 09A 4b 09B 5a 10A 5b 10B 6a 11A 6b 11B 1a 12A sludge 1b 12B Size (mm) 35-100 35-100 35-50 15-35 15-35 15-35 6-18 6-18 <15 <15 <15 <15 <15 <15 <15 <15 <15 <15 <15 <0.5 <0.5 Ash content Moisture VM HHV TS (%) Average (%) Range (%) Average (%) Average (%) (kcal/kg) 8.00 6.00-10.00 4.00 6.00 0.65 7,600 12.50 10.01-15.00 4.00 6.00 0.65 7,100 4.50 3.00-6.00 4.00 6.00 0.65 7,950 5.50 4.00-7.00 4.50 6.00 0.65 7,900 9.50 7.01-12.00 4.50 6.00 0.65 7,400 14.00 12.01-16.00 4.50 6.00 0.65 7,050 6.50 5.00-8.00 4.50 6.00 0.65 7,850 10.00 8.01-12.00 4.50 6.00 0.65 7,400 6.50 5.00-8.00 8.00 6.50 0.65 7,800 9.00 8.01-10.00 8.00 6.50 0.65 7,600 11.50 10.01-13.00 8.00 6.50 0.65 7,300 14.50 13.01-16.00 8.00 6.50 0.65 7,000 17.50 16.01-19.00 8.00 6.50 0.65 6,750 21.00 19.01-23.00 8.00 6.50 0.65 6,400 25.00 23.01-27.00 8.00 6.50 0.65 5,950 29.00 27.01-31.00 8.00 6.50 0.65 5,600 33.00 31.01-35.00 8.00 6.50 0.65 5,250 37.50 35.01-40.00 8.00 6.50 0.65 4,800 42.50 40.01-45.00 8.00 6.50 0.65 4,350 29.00 27.01-31.00 20.00 7.00 0.65 5,550 33.00 31.01-35.00 20.00 7.00 0.65 5,200 出典:VINACOMIN (7) 石炭火力の現状と今後の計画 現状 ベトナム国内の石炭火力発電所は現在 14 ヶ所あり、このうち 13 ヶ所の発電所は国営企業所有の無煙 炭専焼亜臨界圧発電所であり、残りの 1 ヶ所の発電所(Formosa)はインドネシアからの輸入炭専焼亜臨界 圧 IPP 発電所である。既存石炭火力発電所の総容量は 4,301MW(2011 年)であり、総電源の 18.7%を占 51 めるに過ぎない。このように既存の石炭火力発電所は、全て亜臨界圧発電であり、微粉炭(以下 PC)ボイ ラと循環流動層(以下 CFB)ボイラを利用している。特にベトナム電力公社(以下 EVN)が管理する発電所 は PC ボイラであり、これらの発電所は主に粉炭 5 号を利用している。また VINACOMIN は他の産業が利 用できない低品位炭を有効利用する方針を持つ。この方針に基づき炭鉱近くに CFB ボイラ発電所を建 設し、これを運営している。これらの発電所は内陸の低品位炭と Quang Ninh 炭田の粉炭 6 号を利用して いる。 今後の計画 前述の通り石炭火力発電は未だ約 18.7%占めているに過ぎないものの、第 7 次国家電力マスタープラ ンの基本政策に基づくと、2020 年時点では約 48%に増加し、2030 年に 50%を超える大幅な伸びが見込ま れている。その実現に向け、2011 年から 2020 年までに総出力 31,940MW となる 36 ヶ所の石炭火力発電 所新設の計画がある。特に 2011 年から 2030 年までの計画では、総出力 71,710MW の石炭火力発電所 の新設が計画されている。このうち約 59.44%(42,620MW)の大勢を占める発電所は超臨界圧(以下 SC) や超々臨界圧(以下 USC)発電方式を導入する計画とされる。また CFB ボイラは全体の 8.14%(5,840MW) に過ぎない。その他、亜臨界圧 PC ボイラは約 32.42% (23,250MW)であり、Quang Ninh 炭田の無煙炭を 使用する。SC/USC は Ha Tinh 省の Vung Ang 地区から南方にかける地域に建設される予定である。その 多くの発電所は海岸に立地し、海外から石炭を直接搬入できる設備となる。混焼技術が導入できる可能 性のある候補地としては Vung Ang, Quang Trach, Quynh Lap, Vinh Tan, Duyen Hai 等が上げられる。 (8) 環境保全 排水処理 選炭では多くの水を使用することから、炭鉱の操業に係る一般的な環境問題の一つに排水が挙げられ る。選炭排水には微粒子の鉱物質や微粉炭が含まれているため、直接、河川などへ放流することができ ない。VINACOMIN の環境部では環境問題のうち特に、排水処理とズリ山の緑化を重点に実施して来て いる。クアンニン省の炭鉱地域での排水処理施設は、今まで 30 ヶ所以上で設置してきており、今後 2025 年までに、更に 25 ヶ所新設する予定である。 表 1.3.5-5 分類 水質 項目 排水 対象 炭鉱・採掘 炭鉱・ズリ場 ズリ場・輸送 排水の問題点とそのニーズ 環境問題 pH3.5~4.5 と酸性度が非常に高い露天掘 りの採掘現場からの排水を未処理で河川に 放流している。 ズリ場からの排水対策として周辺にダムを 建設しているが、雨水の多い雨期は河川に 放流している。 炭鉱の管理面積が大きいため、すべての表 層水・地下水を管理するのは困難である。 ズリ場や輸送路で実施している洗浄・散水 後の排水が十分に処理されていない。 ニーズ 採掘現場からの炭鉱排水 処理技術 ズリ場からの排水を十分 に処理できる排水対策容 量の確保 排水管理技術 洗浄水・散水の排水処理 技術 ズリやボタの有効利用 炭鉱及び選炭工場で発生するズリとボタの対策は、天然資源環境省からは、特段数値目標を示しての 規制はしていないが、VINACOMIN が責任を持って行っている。緑化技術においては、①急斜面での緑 化技術、②ズリ捨て場の下部の緑化、③土壌の中和、④ズリ山からの排水の中和、等の課題がある。この 52 ため VINACOMIN は同地域で操業する石炭火力発電所で発生する石炭灰の処理を兼ねたズリ山の改 修工事について日本側に技術協力を求めていた。平成 23 年度の NEDO 事業報告によると、緑化が困難 な場所として①急斜面、②ズリ捨て場下部の大塊ズリが集積されやすい所、③炭質を含んだ酸性土壌及 び酸性排水の流入箇所が指摘されており、試験の結果、酸性土壌の中和に石炭灰の有効性が確認され た。また、これらに対して日本企業の対策技術の適用性が試験され有効性が確認されている。 (9) 日本企業の進出状況 ベトナムでは、人口の増加や経済成長に伴い、今後、年間 10%以上の電力需要の伸長が予想されて いる。中でも同国最大の経済圏であるホーチミン市を抱える南部地域では、電力需給が逼迫することが 予想されており、新たな電源開発やインフラ整備が急務となっている。 三菱商事株式会社(以下、三菱商事)は、韓国の斗山重工業(以下、斗山)、及びベトナム現地パート ナー2 社(Power Engineering Consulting Joint Stock Company 2、Pacific Corporation)との 4 社コンソーシ アムにて、ベトナム電力公社 Vietnam Electricity(以下、EVN)から、石炭火力発電プラントを受注している。 このプロジェクトは、EVN が同国南部ビントゥアン州に建設を計画しているビンタン 4 発電所向けに、出力 60 万キロワットの大型石炭焚き発電プラントを合計 2 基(計 120 万キロワット)納入するもので、同発電プラ ントは、1 号機が 2017 年、2 号機が 2018 年に運転開始を予定している。 また丸紅株式会社(以下、丸紅)、EVN により、総出力 600MW のタイビン 1 石炭火力発電設備建設一 式を単独受注し、2013 年 12 月 26 日に契約調印した。この案件は土木据付工事および機器納入を含む フル・ターンキーで、契約金額は約 900 億円である。主機である蒸気タービンおよび発電機は富士電機 株式会社が、ボイラはフォスター・ウィラー社(米国)が設計・製造を行い、2014 年 3 月の着工、2018 年 4 月の完工を予定している。また、日本政府が独立行政法人国際協力機構を通じた円借款により、資金供 与を予定している。 丸紅はこれまで EVN より、2010 年にギソン 1 石炭火力発電建設案件(600MW、2014 年完工予定)を受注、2013 年 3 月にギソン 2 石炭火力発電事業案件(1,200MW、2018 年完工予定)では 優先交渉権を獲得しており、これらに続く連続受注になる。丸紅はベトナムにおいて 10 件の火力発電所 建設を手がけており、ベトナムでの発電所受注実績は 4,000MW を超え、総発電量の 15%に達している。 1.3.6 米国 (1) 石炭についての概要 天然ガスと石炭の競争は米国の瀝青炭や PRB 炭の価格を押し下げている。瀝青炭の Central Appalachian 炭の価格は 2011 年に比べ 18%ダウン、同じく Northern Appalachian 炭の価格も 14%ダウンし た。 PRB 炭の平均スポット価格についても 2012 年には 2011 年に比べ 30%も下がった。 図 1.3.6-1 には米国における石炭生産量の動きを示すが、米国内の石炭生産総量も全般的に減少し てきている。長い間瀝青炭が約6億ショートトンの生産量を持続してきたが、PRB 炭を中心とする亜瀝青炭 の生産量が 1969 年以降右肩上がりを継続してきた。2010 年に至り、とうとう亜瀝青炭の生産量は瀝青炭 のそれを上回ることになった。 ワイオミング州からモンタナ州に広がるパウダーリバー炭田(PRB)では 2011 年の生産量は 4.63 億ショ ートトン(4.2 億メトリックトン)で、全米の石炭生産量の約 44%を生産している。 Central Appalachian 炭は 19%、PRB 炭の生産は 9%も減少したが、一方で良質瀝青炭である Illinois 炭 53 の生産は 2011 年に比べ 9%の増加であった。消費が減ってきた分、輸出の増加に努力した結果である。 消費については全般的に減少の傾向となっているが、これはシェールガスの影響である。 米国ではシェールガス革命の影響を受けて石炭による発電量が減少を続け、天然ガスによる発電が増 加し、既設石炭火力の廃止あるいは新設石炭火力の計画が減少している。しかしその状況の中でも新設 石炭火力の建設も進められている。 800,000,000 700,000,000 石炭生産量 ショートトン 600,000,000 500,000,000 400,000,000 300,000,000 200,000,000 100,000,000 0 瀝青炭 亜瀝青炭 褐炭 図 1.3.6-1 米国の石炭生産量の動き(EIA ホームページより JCOAL にて作成) NETL 資料(下注)によると、2012 年 1 月で建設中の米国内石炭火力は 10 基(6,519MW)あり、建設準備 が始まっているユニットが 1 基(320MW)、許可済みのユニットが 13 基(8,934MW)、合計で 24 基 (15,773MW)もあるとされている。これらの内訳は、亜臨界圧ユニットが 4 基、CFB が 4 基、超臨界圧ユニ ットが 7 基、IGCC が 5 基と、全般的には高効率あるいは CFB のような良環境性のユニットを目指している と言える。 このように IGCC が 5 ユニットも計画され、そのうち 1 ユニットはすでに商用運転が開始されており、他の 1 基は 2014 年には運転に入る計画である。なお、EU では IGCC はコスト高などの理由で殆どの IGCC 計 画がキャンセルされている事と対照的である。 (注)Tracking New Coal-Fired Power Plants、 January 13, 2012 なお、リタイアさせるとアナウンスされた石炭火力の状況は次のとおりであるが、建設されてから多くの 年を経て現在は稼働率の低いユニットが選ばれている。 ① 平均稼働率 : 45.6%と低いユニット ② 容量 : 200MW 以下(平均 191MW)の小容量ユニット ③ 平均運転時間:54 年と高経年ユニット ④ 脱硫設備 :84%は脱硫設備なしのユニットで、運転継続に当っては脱硫設備の追設が 必要と推定されるユニット リタイアの合計容量は 24.7GW あり、運転が継続されるユニットは約 300GW と約 20%の老朽火力がリ タイアさせられる。すなわち、運転継続はビジネスにとってもメリットがなく、温暖化議論が始まったのを契 機に運転を停止しようとの経営判断がなされたものであると考えられる。 (2) 米国オバマ大統領の気候変動行動計画 オバマ大統領の気候変動行動計画 2013 年 6 月 25 日、オバマ大統領はジョージタウン大学で今後の地球温暖化対策に関し、「大統領気 54 候変動行動計画(The President’s Climate Action Plan)(以下、オバマアクションプラン)を発表した。オバ マアクションプランは、①国内排出削減、②気候変動の影響に対する米国の備え、③気候変動の挑戦に 対し米国が世界をリード、という 3 つの柱で構成されている。「気候変動の挑戦に対し米国が世界をリード」 の中に、「海外の石炭火力新設に対する米政府公的金融支援の終了。但し、経済的な代替手段がない 最貧国における最高効率の石炭火力技術、もしくは、二酸化炭素分離・回収・貯留(CCS)技術を導入す る場合は除く)としており、「他国や多国間開発銀行に対し、早急に同様の措置を取るよう求めていく。」と している。 オバマアクションプランの影響 米輸銀 2013 年 6 月 26 日、ホッチバーグ総裁は、大統領のイニシアティブに沿った取り組みを進める旨表明(7 月 17 日、ホッチバーグ総裁再任) 米財務省 米財務省は、オバマアクションプランに則し、「途上国での石炭火力における MDB(Multilateral Development Bank)の関与についての米国の立場に関するガイダンスを発表(10 月 29 日)した。新設石炭 火力への融資用件に CO2 排出規制値 500 gCO2/kWh の設定(9 月に EPA が発表した新設火力発電所 に対する CO2 排出規制案と同水準)、CCS の導入等を求めるものとなっている。米財務省は、本ガイダン スが個々の MDB で採択され、運用指針に組み入れられることを企画し、作成・発表した。 他国への呼びかけ 9 月 4 日、米国、及び Nordic Country(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン) は共同声明を発出し、11 月には英国が追随。Nordic Country は、海外の新設石炭火力向け公的金融支 援を取りやめるとの米国のイニシアティブに協調し、他国 MDBs に働きかける旨を表明した。 MDBs の動向 ・世銀グループ(*)は、7 月 26 日、エネルギーセクターの支援方針に係る新たな方針「Toward a Sustainable Energy Future for All /Directions for the World Bank Group’s Energy Sector」で、新設石炭 火力への融資を石炭以外に経済的な選択肢がない場合に限るなど、厳しい融資方針を発表した。 *:IBRD(国際復興開発銀行)[準コマーシャルベース]、IDA(国際開発協会)[コンセッショナルベー ス]、IFC(国際金融公社)[コマーシャルベース民間企業対象]、MIGA(多数国間投資保証機 関)[民間対外直接投資対象] ・EIB(欧州投資銀行)は、6 月 24 日エネルギープロジェクトに対する新たな貸付ガイドライン「EIB and Energy: Delivering Growth, Security and Sustainability」のドラフト(前年からのパブリックコンサルテーショ ンを踏まえた改訂版)を公表。7 月 23 日の理事会で新設火力への排出原単位基準(550g CO2/kWh)など、 厳しい融資条件を含む化石燃料発電案件の選定・評価指針を採択。 ・EBRD(欧州復興開発銀行)は、エネルギープロジェクトに係る新たな貸付方針(EBRD: Energy Sector Strategy)を策定中。7 月 25 日にドラフトを公表(9 月 30 日までパブリックコンサルテーションを実施)。12 月 10 日の理事会で採択。同方針では、「ほかに経済的に代替可能なエネルギー源の選択肢がないとい った極めて希なケースを除き、如何なる新設石炭火力支援も行わない」と明示。 ・ADB(アジア開発銀行)は、「エネルギーセクターの支援方針」を直近 2009 年に改定。高効率石炭火力 への支援を行う途を開いている。高効率に加え、SOx・NOx 等の大気汚染物質削減を重視するとともに、 IGCC 等の次世代技術に対しても積極的な支援姿勢を示している。 55 我が が国の対外的 的スタンス ・エネルギ ギー効率改善 善とそれを通じた CO2 排出 出削減を実現 現する必要性 性を米国等と共 共有。 ・このため め、今後とも石 石炭火力に依 依存するであろ ろう途上国が が、発電効率の の低い石炭火 火力発電所を を新増設 する事 事態は好ましく くなく、我が国 国としては、こ これらの国にお おいて、可能な限り高効率 率発電の技術 術の導入 に貢献 献すべきと考え える。 ・我が国は、石炭火力 力発電所の導 導入が必要とさ される場合に には、高効率化 化及び低炭素 素化を図ること とに貢献 してい いく。 (3) 1 次 次エネルギー消 消費 2012 年 年の 1 次エネ ネルギー消費 費内訳を図 1.33-6-2 示す。最も多いのが が石油で 36% %を占め、次いで天然 ガス石油 油が 28%で、石 石炭は 20%となっている 。 図 1.3.6-2 米 米国の 1 次エ エネルギー消費 費 (Coal Information 20013 より JCOA AL にて作成)) 発電に に関してこれま まで消費され れてきた燃料の の推移を図 1.3-6-3 1 に示 示す。石炭が 22005 年までは増加の 一途をた たどっていたが が、その後は減 減少を続けて ている。逆に天 天然ガスは 2005 年以降増 増加を続け、2 2012 年に は石炭が が 1640.5 TW Wh、天然ガス スが 1277.3TW Wh と両燃料が接近してき きている。石油 油はもはや発電にはほ とんど使われなくなっ ってきており、風 風力はまだ絶 絶対量としては は大きくないも ものの増大し してきている。 56 図 1.3.6-3 1 米国 国における発電量内訳の推 推移 (Electriccity Informatiion 2013 より JCOAL にて て作成) (4) 石炭 炭の生産量・消 消費量・輸出量 量 図 1.3-6-4 に 19788 年からの石炭 炭の生産量・・消費量・輸出 出量の推移を を示す。2012 年の米国の石 石炭生産 量は 9 億 3500 万トン ンで中国に次い いで世界第 2 位であり、発 発電用の一般 般炭が 95%と と多くを占め、原料炭と 褐炭は合 合わせて 5%となっている。石炭消費の の 9 割は電力 力用である。 1200 石炭量 百万トン 1000 800 600 400 200 0 1 1978 1990 2000 石炭生産量 量 200 05 石炭消費量 量 2010 2011 2012e 石炭輸出量 量 図 1.3.6-4 米国炭の生 生産量・消費量 量・輸出量(単 単位 100 万トン ン) (Coal Innformation 2013 2 より JCO OAL にて作成 成) 表 1.33.6-1 米国炭 炭の炭種ごとの の生産量・消 消費量・輸出量 量(単位 100 万 万トン) 一般炭 石炭生産量 量 原料炭 褐炭 一般炭 石炭消費量 量 原料炭 褐炭 一般炭 石炭輸出量 量 原料炭 1978 484.6 92.2 31.16 484.73 68.89 30.77 9.84 27.433 1 990 0.39 760 93 3.26 79 9.91 701 1.66 35 5.27 79 9.02 38..344 57..568 2000 2005 839.69 916 54.29 46.44 77.62 76.15 866.16 932.69 25.96 20.89 74.27 76.14 23.226 19.094 29.78 26.001 (Coal IInformation 2013 2 より JCO OAL にて作成 成) 57 2 2010 85 56.49 6 68.65 7 70.97 83 39.35 1 14.04 6 65.11 23 3.023 50 0.906 201 1 2012e 850.6 9 782.02 81.3 81.6 6 71.61 73.5 7 862.2 5 826.14 19.4 19.1 5 74.76 68.3 34.05 7 50.629 63.07 8 63.392 (5) 石炭価格 米国の発電用の燃料価格の動きを図 1.3-6-5 に示す。重油は大きな価格上昇を示しているが、石炭 は極めて安定している。天然ガスについては 2008 年に一旦ピークを迎えたが、その後の安価のシェール 70 700 60 600 50 500 40 400 30 300 20 200 10 100 0 重油、 天然ガス価格 $/tce 一般炭価格 $/tce ガスの増産の影響で安定した価格で推移している。 0 1978 1990 1995 2000 2005 2009 2010 2011 2012 一般炭 重油 天然ガス 図 1.3.6-5 米国での発電用燃料別価格の動き(ドル/石炭換算トン) Coal Information2013 より、 エンドユーザー価格(税金・輸送費込) (6) 露天掘・坑内掘の状況 図 1.3.6-6 には米国炭の露天掘と坑内掘の生産量実績を示す。1970 年代前半までは坑内掘が露天 掘より多くの石炭を生産していたが、その後は露天掘の生産が坑内堀の生産量を上回ってきている。これ は露天掘の PRB 炭生産量が多くなってきたことによる。 900,000,000 800,000,000 石炭生産量 ショートトン 700,000,000 600,000,000 500,000,000 400,000,000 300,000,000 200,000,000 100,000,000 坑内掘 2009 2006 2003 2000 1997 1994 1991 1988 1985 1982 1979 1976 1973 1970 1967 1964 1961 1958 1955 1952 1949 0 露天掘 図 1.3.6-6 米国炭の露天掘と坑内掘の実績(EIA より) (7) 石炭の輸送手段 図 1.3.6-7 には米国における炭鉱から発電所までの石炭輸送手段を示す。鉄道が全体の 72%も占めて いるが、トラックなどは 10%と少ない。これは国土の広さにもよるものと思われるが、スラリーパイプライン輸 58 送等も 7%と比較的多い。これは炭鉱と発電所が近接している場合であると考えられ、この様な発電所が全 体の 7%にもなるという事を表している。 スラリー、コ ンベヤーなど バージ、運搬 7% 船 11% トラック 10% 鉄道 72% 図 1.3.6-7 米国における石炭輸送手段(炭鉱から発電所まで) (引用 EIA、JCOAL にて作成) 図 1.3.6-8 には米国における炭鉱から発電所までの単位石炭あたりの平均鉄道輸送コストを示す。 2002 年ころから徐々に上昇してきているが、2010 年には 2002 年に比べ約 1.4 倍となっている。 図 1.3.6-8 米国における平均石炭鉄道輸送コスト(炭鉱から発電所まで) (引用 EIA) (8) 石炭企業の生産量 表 1.3.6-2 には 2012 年における米国の主要石炭生産会社 10 社を EIA のデータに基づき示してある。 前年の 2011 年のから表の上位 5 社は順位が変わっていないが、Cerrejon Coal Co と Peter Kiewit Sons Inc の2社が外れ、新たに Murray Energy Holding Corp と Patriot Coal Corp の 2 社がトップ 10 入りしてい 59 る。このトップ 10 社の合計生産量は全米の生産社合計の 71.6%を占めている。その他の中小生産会社 による生産量は 28.4%であるが、米国には多くの中小石炭生産会社がビジネスを展開している事がわか る。 なお 2012 年の米国全体の石炭生産量は 10 億 165 万メトリックトンであり、最大手の Peabody Energy Corp1社で 18.9%、上位 3 社で 42.7%になり、前年より寡占が進んでいるように見える。 順 位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 表 1.3.6-2 米国の主要石炭生産企業(2012 年) (引用 EIA) 会 社 名 生 産 量 全米生産量に (1,000 メトリックトン) おける割合(%) Peabody Energy Corp 192,563 18.9 Arch Coal Inc 136,992 13.5 Alpha Natural Resources LLC 104,306 10.3 Cloud Peak Energy 90,721 8.9 CONSOL Energy Inc 55,752 5.5 Alliance Resource Operating Partners LP 35,406 3.5 Energy Future Holdings Corp 31,032 3.1 Murray Energy Corp 29,216 2.9 NACCO Industries Inc 28,207 2.8 Patriot Coal Corp 23,946 2.4 (9) 石炭消費分野 図 1.3.6-9 に 2012 年の米国における石炭消費分野を示す。93%が発電用であり、その他の分野の消費 の合計は約 7%と少ない。 産業用 5% コークス 2% 商業など 0% 発電用 産業用 コークス 発電用 93% 商業など 図 1.3.6-9 米国における石炭消費内訳 (引用 EIA 2012 JCOAL にて作成) また、図 1.3.6-10 には製造業における石炭の消費割合を示す。製鉄などの非金属生産が 25%と最も多 く、次いで食品製造が 24%、製紙が 18%などとなって続いている。 60 図 1.3.6-10 米国に における製造 造業における石 石炭消費量 (引用 EIA JCOAL にて て作成) (10) Poowder River Basin B 炭(PRB B 炭)の動向 米国に に大量に賦存 存する亜瀝青炭、Powder R River Basin 炭(PRB 炭 炭)は火 火力発電を中 中心に多く使 使われてい る。図 1.3.6-11 には米 米国における るPRB炭の生 生産の推移を を示すが、2009 年以降は生 生産量の増減 減は少な いが、20011 年の米国 国全体の一般炭 炭生産量が 8.5 億トンであ あるので、その のおよそ 50% %はPRB炭で であると言 える。 500 PRB炭生産量 メトリックトン/年 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 1990 1995 1 2000 2001 2002 2 2003 2004 2005 2 2006 2007 2008 2009 2010 2011 図 1.3.6-11 米国にお おけるPRB炭 炭の生産の推移 移(EIAデー ータからJCOA ALにて作成) 当地の の Western Organization O of o Resource C Councils,Pow wder River Baasin Resourcce Council の記事によ ると、次の のように報告さ されている。す すなわち、PR RB 炭の 99% %は米国内で消費されてい いる。しかし、国内の石 炭マーケ ケットの縮小と と海外での石炭 炭ニーズの増 増加に対して て、米国最大の の石炭生産会 会社である Peeabody は、 アジア太 太平洋地域では 2015 年ま までに年間石炭 炭消費量は 2.2~2.6 億ト トンに増加し、 、そのために に年間 1.4 億トンの輸 輸入を必要と とすると推測し している。その のために同社 社は石炭を中国、インド、日 日本や韓国へ への石炭 61 輸出を増加する計画を持っている。ヨーロッパには 2008 年からはワイオミングの PRB 炭の輸出を始めて いるが、この輸送については炭鉱からミシシッピ川までは鉄道輸送、その後は船でメキシコ湾を経由して の輸送である。アジア太平洋地域でも同様な計画であるが、最近では米国西岸から日本への石炭輸出も 行っている。 また他の石炭生産会社である Arch Coal は、過去 2 年間にワイオミング州の PRB 炭鉱を買収して、生 産量を増やしており、更に近くの PRB 炭の採掘権を得たりしている。また、Cloud Peak Energy 社は 2010 年に 330 万トンを輸出し、2011 年には 400 万トンの輸出計画であったとのことである。Signal Peak Mine 社 も輸出用として PRB 炭を West Coast に送っている。 このために PRB 炭の輸出港の拡張も行われなくてはならないので、その検討も行われており、具体的 な対応として Peabody 社はワシントン州 Cherry Point の近くに太平洋への輸出ターミナルを作ることを提 案しており、その目標能力は 2,400 万トンとし、将来的にはその 2 倍までの拡張としている。 しかし、最近になって天然ガス価格の上昇により米国では石炭火力発電が 8%増加し、逆に天然ガス発 電が 8%減少しているとのこと(Bloomburg Business Week)であり、発電業界での燃料政策は、ひとえに発 電コストの優劣によっているとも言える。したがって今後の石炭輸出についてもこのファクターを考慮しな ければならないが、大きくは日本やアジアへの石炭輸出はこれらの地域での安定した石炭火力発電の伸 びを見極めて、PRB 炭を含めた輸出が増加してゆくと推測される。しかし PRB 炭の競合炭としてインドネシ アの亜瀝青炭があるが、PRB 炭の輸出価格が競合炭を上まわるようになれば、状況は違ってくる可能性も ある。 (11) 米国のシェールガスの動向 図 1.3.6-12 に米国におけるシェールガスの生産予測を示す。今後シェールガスの伸びが極めて大き いと見込まれている。 図 1.3.6-12 米国シェールガスの生産予測 (引用 EIA Annual Energy Outlook 2013) また、米国での天然ガス価格の指標の一つである Henry Hub 価格の最近の動きを米国の平均坑口石 炭価格と比較して図 1.3.6-13 に示す。現在は Henry Hub 価格と石炭価格が近接しているが、2040 年に 62 向けてその差は大きくなる予測である。2040 年には Henry Hub 価格は 8 ドル/100 万 Btu と現在の 4 ドル /100 万 Btu 前後の 2 倍にもなる予測である。一方石炭については、現時点から 2040 年までの上昇は約 40%と Henry Hub 価格の上昇よりかなり少ないことが予想されている。 図 1.3.6-13 Henry Hub 価格の動き(2013 クリーンコールデー国際会議より ) また、米国でのこのような背景の下に、天然ガスならびに瀝青炭の生産量データを図 1.3.6-14 に示す。 石炭生産は 2008 年以降毎年減少しているが天然ガス生産量は逆に増加の一途をたどり、特に発電への 供給量が増えている。なお、ここに示すように、シェールガスの生産量が急増しているが、この急増が米 35000 1200 30000 1000 25000 800 20000 600 15000 400 10000 200 5000 0 石炭生産量 メトリックトン/年 天然ガス量 bcf/年 国の石炭と天然ガスの競争に大きな影響を与えている。 米国の石炭生産量 百万メトリック トン/年 天然ガス全米供給量bcf/年 天然ガス発電への供給量bcf/年 天然ガス輸出量bcf/年 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 0 シェールガス生産量bcf/年 図 1.3.6-14 米国における天然ガスと石炭の生産量推移(EIAデータからJCOALにて作成) このように発電において天然ガスへのシフトが進んだために、米国で余剰となった石炭の海外への輸 出が急増している。図 1.3.6-15 には米国から各国・地域への石炭輸出量の推移を示す。2002 年以降、 全体としては石炭の輸出が増加しているが、中でもヨーロッパへの輸出が大きく増加している。同図には ヨーロッパ全体の米国からの石炭輸入量を示してあるが、ヨーロッパで特に輸入量が多いドイツ、オランダ のみ抜き出して、折れ線で示してある。 63 日本へ への輸出量も 2011 年からや やや増加して ている。 からの石炭輸 輸出量の推移 移(EIA データよりJCOALに にて作成) 図 1.3..6-15 米国か (12) 環境 境状況(規制値 値及び実情)) 米国に においては、石 石炭火力発電 電所からの排 排出規制値は は大気清浄法(Clean Air Act)が米国議 議会で承 認された た連邦法であり、環境保護 護庁(Environm mental Proteection Agenc cy、EPA)によ より環境大気質 質基準が 決められ れている。 基本的な な汚染物質規 規制基準に示 示されている基 基準のうち主要 要な項目を表 表 1.3-6-3 に に示す。 汚染物質 二酸化 化窒素(NO22) 第一種 種規制 第一種 種及び第二種 種 表 1.3.6-3 米国の の基本的な汚 汚染物質規制 制基準 平均計測時間 排出 出基準 1 時間 間 100ppb 年間を通じて 53p ppb 1 時間 間 75p ppb 3 時間 間 0.5 5ppm PM10 24 時間 時 150μ μg/m3 PM2.5 年間を通じて 15μg/m3 24 時間 時 35μg/m3 二酸化 化硫黄(SO2) 第一種規制 制 第二種規制 制 規定 3 年間の平均 均で 98Parcen ntile を 超えない 超 年間平均が基 年 基準値を超え えない 3 年平均で 1 日 1 時間あたりの 最高濃度が 最 999 Parcentilee を超 えない え 排出基準を 排 1 年に1回以上超 えない え 粒子 3 年平均で排 排出基準値を を1年 に 1 回以上超 超えない 年間平均値の 年 の 3 年間平均 均が基 準値を超えな 準 ない 3 年間の平均 均で排出基準 準値を 1 年に1回以上 上超えない (13) 米国における電 電気料金 図 1.33.6-16 には IEA Electricitty Informationn 2013 による る米国での電 電気料金の動き きを、産業用 用と住宅用 とに分け けて示した。参 参考として日本 本の場合も記 記してあるが、この場合には は円/MWh と とし産業用電力 力の場合 64 と住宅用 用電力の場合 合に分けてある る。米国では 1978 年から 2008 年まで で上昇してきて ているが、200 08 年以降 は安定し した価格となっ っている。一方 方日本では 11980 年にピークであった たものが一旦下 下がったものの現在で はやや上 上昇している。 。2012 年の産 産業用電力に について、米国 国では$66.98 8/MWh である るが、日本では 15,500 円/MWhh($150 強)と 2 倍以上 上の開きがあり り、住宅用では米国が$11 18.83/MWh、 日本では 22,090 2 円 300 30 0 250 25 5 200 20 0 150 15 5 100 10 0 50 5 0 日本電気価格 円/kWh 米国電気価格 $/MWh /MWh(約 約$215/MWhh)となっている る。 0 1978 1980 1 1990 2000 2008 20 009 2010 20 011 2012 米国 産業 産 米国 住宅 日本 産業 日本 住宅 図 1.3.6-16 米国におけ ける電気料金の の動き (引用 IEA Electricitty Information 2013) 1.3.7 カ カナダ (1) 石炭 炭生産量及び び消費量の推 推移 図 1..7.3-1 に石炭 炭生産量・消費量推移を示 示す。石炭生 生産量は、過去 去 10 年間ほ ほとんど変化し しておらず、 6,500 万 万トン前後であ あるが、最近で では原料炭の の生産量が増 増加し、一般炭 炭の生産量が が減少している る。一般 炭はほと とんど国内で消 消費され、原料炭はほとん んど輸出されている。 国内消 消費は減少傾 傾向にあり、20 012 年は約 44,200 万トンで で、一般炭の約 90%が 211 基の石炭火 火力プラン トで利用される。 図 1.7.3-1 カナ ダの石炭生産 産量・消費量 量推移 65 (2) 輸出 出入量の推移 移 図 1.3.7-2 に石炭輸 輸出量・輸入 入量推移を示す す。カナダの の 2012 年にお おける石炭輸 出は 3,500 万トンに達 万 しており、 、ここ数年は漸 漸増している る。内訳は、原 原料炭が約 3,100 万トン、一般炭が 4000 万トンであ ある。原料 の主な輸出先 炭は 20005 年比で 4000 万トン増加 加しており、その 先は中国であ ある。 図 1.3.7-2 カナ ダの石炭輸出 出量・輸入量 量推移 カナダ ダ炭は 50 カ国 国以上に輸出 出されており、 輸出先はアジ ジアが約 73% %を占め、ヨー ーロッパ及び中 中東で約 15%、その の次は南北ア アメリカで約 13%である。 2012 年 年の輸出は、原料炭は、中 中国 957 万ト トン、日本 748 8 万トン、韓国 国 505 万トン、 、ブラジル 181 万トン、 オランダ 146 万トンとなっており、ま また、一般炭 炭は、日本 209 9 万トン、韓国 国 142 万トン ンとなっており、 、合計で は中国へ への輸出が最 最も多くなって ている。 一方、2012 年の輸 輸入は、原料炭 炭は米国 4388 万トン、一般 般炭は米国 378 3 万トン、コ コロンビア 134 4 万トンと なってい いる。 (3) 石炭 炭価格(IEA Coal C Information 2013 より り) ① カナダにおける石 石炭価格 • 一般炭(発電 電用):2011 年 33US ドル/ ル/トン /トン、2010 年 36US ドル ② カナダから日本入 入着炭価格 ・ 一般炭:2010 年 108 ドル ル、2009 年 1104 ドル、200 08 年 126 ドル ル(Coal Inform mation 2012)) ・ 原料炭:2010 年 192 ドル ル、2009 年 2221 ドル、200 08 年 234 ドル ル(Coal Inform mation 2012)) (2011 年、22012 年につい いては、記載 載なし) (4) 露天 天掘・坑内掘状 状況 カナダ ダの炭鉱は主 主に西部に位置 置しており 211 の石炭鉱山 山がある。ブリティッシュコロ ロンビア州に 10 鉱山、 アルバー ータ州に 8 鉱山、サスカチュワン州に 3 鉱山あり、殆 殆どが露天掘り炭鉱である る。表 1.3.7-1 にカナダ の炭鉱の の一覧を示す す。 66 表 1.3.7-1 カナダの炭鉱一覧 炭鉱名 州 Cheviot Coal Mountain Elkview Fording River Greenhills Line Creek Trend Grande Cache Wolverine Willow Creek Brule Coal Valley Quinsam Genesee Highvale Paintearth Sheerness Whitewood Poplar River Bienfait Boundary Dam AB BC BC BC BC BC BC AB BC BC BC AB BC AB AB AB AB AB SK SK SK 炭種 原料炭 原料炭 原料炭 原料炭 原料炭 原料炭 原料炭 原料炭 原料炭/PCI 原料炭/PCI PCI 瀝青一般炭 瀝青一般炭 亜瀝青 亜瀝青 亜瀝青 亜瀝青 亜瀝青 褐炭 褐炭 褐炭 市場 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 輸出 国内 国内 国内 国内 国内 国内 国内 国内 能力(100 万トン/年) 炭鉱 2.2 2.7 5.5 8.9 5.1 2.7 2.0 2.0 2.2 1.5 1.2 3.8 0.5 5.6 13.0 3.5 4.0 1.4 4.0 2.8 6.5 選炭工場 2.5 3.5 7.0 10.0 5.0 3.5 2.0 2.0 3.0 2.0 1.2 3.8 0.5 所有企業 操業企業 Teck EVCC Teck EVCC Teck EVCC Teck EVCC Teck EVCC Teck EVCC PRC PRC GCC GCC WCC WCC WCC WCC WCC WCC Sherritt/OTPP Sherritt Hillsborough Hillsborough Sherritt/EPCOR Sherritt TransAlta Sherritt Sherritt Sherritt Sherritt Sherritt TransAlta Sherritt Sherritt Sherritt Sherritt Sherritt Sherritt Sherritt 出典:Natural Resources Canada (5) 選炭状況 原料炭及び輸出用一般炭を採掘している炭鉱は選炭を行っている。一方、国内で使用する亜瀝青炭 及び褐炭の炭鉱は選炭していない。 (6) 輸送インフラ カナダでは Canadian National と Canadian Pacific の 2 つの国有鉄道によって石炭輸送を行っている。 港から出荷される石炭の 80%はバンクーバー港とプリンスルパートに位置するブリティッシュコロンビア港 が使われている。 1.3.8 モンゴル (1) エネルギー政策及び石炭政策(税を含む) 1997 年に制定されたモンゴル国の鉱物資源法では、国内はもとより、外国からの申請者に対しても鉱区 が開放されており、税の優遇措置も受けることが可能であった。このため、国内では一部に、貴重な資源 の国外持ち出しにより自国への利益の還元がない、国益の損失である、等の意見があった。このような背 景から、モンゴル国の国会では 2006 年 7 月に鉱物資源法の一部の改定が決定された。改正後は、「戦略 的鉱床(strategically important deposits)」について、国の予算により調査をしたものについては上限 50%、 それ以外については上限 34%まで国が参入できるようになった。また、探査権・採掘権は法人格がないと 67 保有できないように改正されている。その他では、投資協定や鉱区税、外国人の雇用上限、環境保全義 務、情報提供等の規程が変更された。ロイヤルティについては 2011 年に再度改定されており、鉱物資源 の販売価格の 2.5%から 5.0%に変更されている。 外国投資については 1991 年に外国投資法が施行され、その後何回か改正が行われている。外国投 資促進政策の中心となるのは規制緩和であり、「モ」国内法に触れない限り全ての分野において外国投 資が可能である。しかし、2012 年 4 月に中国のアルミ最大手企業チャルコが、カナダのアイバンホー・マイ ンズが所有する South Gobi Resources の株式を最大 60%取得して買収すると発表したことを背景に「戦略 的業種(鉱物資源、金融、報道・情報通信分野)への外国投資を管理する法律」が 2012 年 5 月 17 日国 会で可決され即日施行された。同法により、戦略的分野で営業している企業の外国投資家の持ち株比 率が 33%を超える場合は政府の承認が必要となり、49%を超え、かつ投資金額が 1,000 億 Tg を超える場 合は、政府に申請し、国会の承認が必要になった。 また、2007 年から石炭プログラムが旧鉱物資源エネルギー省(現鉱業省)内で検討されており、石炭管 理政策として①エネルギーセキュリティの観点からの石炭供給強化、②石炭価格の段階的引き上げと将 来の自由化、③投資の促進、④有力な鉱床開発への国家の主体的管理、⑤インフラ整備強化など、石 炭環境政策として①CCT 導入促進、②ウランバートル大気汚染対策強化など、石炭利用政策として①液 化、ガス化、CBM の利用促進、②コークス加工、輸出促進、などが検討され、法律化した項目もあった。 また現在、「石炭分野開発」に係わる国の指針として石炭開発・利用に関して上記の石炭プログラムを更 に具体化した内容が検討されており、①石炭資源の管理・運営、②環境保全と修復、③投資の調整、④ 市場原理による石炭分野の発展、⑤電力産業への燃料供給、⑥輸出、⑦石炭高度化処理(加工)、⑧中 小企業開発、⑨人材開発、等が検討されている。 (2) 石炭開発状況 モンゴルでの炭鉱開発はウランバートル東部 Baganuur 炭鉱と南部の Shivee Ovoo 炭鉱を中心に行われ てきたが、近年南ゴビの Tavan Tolgoi 地域での開発が進んでいる。図 1.3.8-1 にモンゴルでの炭鉱位置 図を示す。国内向け石炭生産の主力は Baganuur 炭鉱および Shivee Ovoo 炭鉱の褐炭であり、その大半 がウランバートルの第 3 発電所、第 4 発電所向けのものである。一方、輸出炭の 90%以上は南ゴビからの 生産で、輸出先は中国である。Tavan Tolgoi 鉱床では 2007 年には約 78 万トンの石炭が採掘され中国に 輸出されている。原料炭を産する非常に大規模な鉱床であるため近隣のロシア、中国をはじめ日本、韓 国、アメリカの政府、企業が興味を持っており、鉱山開発からインフラの整備を含めた総合的な開発計画 がモンゴル国を中心として検討されている段階である。今後は南ゴビを中心として石炭生産量が伸びて いくものと思われる。 68 出典:鉱業省等資料よ より JCOAL 作成 作 図 1.3.8-1 モ モンゴルの炭 炭鉱位置状況 況 炭開発の状況 況 (3) Tavann Tolgoi 石炭 モンゴ ゴル国の石炭資源は 15 の主要石炭堆積 の 積盆に埋蔵さ されており、約 約 320 ヶ所以 以上の石炭鉱床 床が確認 されてい いる。モンゴル ル国の資源量は 1,650 億ト トンであり、その の内の約 70% %が褐炭と言わ われている。その中で 良質な原 原料炭を含む む石炭埋蔵量 量が約 64 億ト ンとされている南ゴビの Tavan T Tolgoii 鉱床の開発 発が注目さ れ、「戦略 略的重要鉱床 床」と位置づけ け、開発方針 針等を政府主導 導で進められ れている。今後 後数年で 5,0 000 万トン 規模に海 海外輸出が拡 拡大することが が見込まれ、特 特にコークス用 用原料炭輸出 出が期待され れている。 Tavan Tolgoi 鉱床のうちモンゴル ル国政府が保 保有する鉱区 区は、West Tsankhi 地域と と East Tsankhi 地域に 分けられ 掘を進めてお れ、East Tsankkhi 地域は、国 国営企業であ ある Erdenes Tavan T Tolgoi 社が現在採掘 おり、2012 年には 2250 万トンを生 生産している。 。一方、資源 源量 6 億トンと言われている る West Tsankkhi 地域は 2010 年 12 月に入札 札案内が公表 表され、2011 年には国際 際入札の結果が発表された たが、その後仮 仮発表であっ ったとされ 現在も決 決定していない い。しかし、20 013 年 5 月に にモンゴル企業である Khiishig Arvin Inndustrial LLC が同鉱 区の剥土 土作業を開始 始したと発表さ された。2013 年 9 月、West Tsankhi 地域 域の石炭輸出 出を開始し、出荷式典 が開かれ れた。東西の両 両鉱区が同時 時に稼動した たことにより、今 今年東鉱区か から 400~4550 万トン、西 西鉱区から 300~350 万トンの石 石炭を採掘する ることが可能と となった。 (4) 石炭 炭需給 モンゴ ゴル国家統計 計局の発表資料 料である Monngolian Statisstical Yearbook によると、22012 年の石炭 炭生産量 は約 2,992 万トン、そ そのうち 2,091 万トンが輸出 出された。図 1.3.8-2 1 に石炭 炭生産量、輸 輸出量、国内消費量の 推移を示 示す。2010 年、2011 年 年と大 大きく生産量 が伸びたが、2012 年は中 中国経済の停 停滞が影響し生 生産量が 減少して ていることが分 分かる。また、国内消費はさ さほど変わっておらず、増 増産分のほとん んどが輸出されてい る。 69 35,000 30,000 生産量 消費量 輸出量 thous. ton 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 出典:Mongolian Statistical Yearbook 図 1.3.8-2 石炭生産量、輸出量、国内消費量 (5) 石炭需給見通し 図 1.3.8-3 は鉱業省による 2025 年までの石炭需給予測である。2009 年の時点では 2020 年の石炭生 産量は 4,000 万トン程度とされていたが、最新の発表では倍の約 8,000 万トンとなっている。さらに 2025 年には年産 9,000 万トン以上の数値が見込まれており、輸出先については 9 割方中国である。 100,000 90,000 80,000 thous. ton 70,000 60,000 生産 量 消費 量 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2013 2014 2015 2020 2025 出典:鉱業省のデータから JCOAL が作成 図 1.3.8-3 石炭需給予測 (6) 石炭価格 モンゴルでは国により国内向け石炭価格が定められている。国内向けの多くが褐炭ということもあるが、 2012 年の価格は約 12,600~26,300Tg/トン(概ね 800~1,600 円/トン)と非常に安い価格となっている。 70 表 1.3.8-1 国内向け石炭価格 炭鉱 Baganuur Shivee Ovoo Sharin Gol Aduunchuluun Ulaan Ovoo 2007 12,500 8,500 16,600 6,100 2008 16,200 11,400 21,400 8,584 2009 16,200 11,400 21,400 na 2010 18,200 13,960 22,680 8,584 22,680 2011 20,500 15,560 26,275 8,584 na 2012 22,422 16,892 26,275 12,600 na 2013 24,889 18,581 26,632 12,600 na 2014 28,400 21,750 28,400 12,600 na 出典:Mineral Resource Authority, Mongolia、Coal Power 2012 国際会議資料 注)2012 年以降はエネルギー規制庁により定められた値。 輸出用原料炭については、Erdenes Tavan Tolgoi(ETT)の 2012 年中国向け原炭販売量が US$70/ト ンという聞き取り調査結果がある。ETT は CHALCO から融資を受けて操業をしており、債務返済の一部 を石炭で支払っているが、この引き取り価格 US$70/トンが国際市場価格と比較して安すぎるとして反発、 現在両社が紛争状態にある。 (7) 露天掘り・坑内掘り状況 現在開発中の炭鉱は基本的にすべて露天掘りである。非合法的に操業している Nalaikh の炭鉱は坑内 掘りである。Nalaikh の炭鉱は保安設備をほとんど使用することなく、巻上と通気ファン以外はほとんど機 械化されていない。2012 年 10 月にも通気ファンの停止により 5 名が死亡する事故が起きており、2013 年 2 月に鉱業省は Nalaikh 炭鉱の採掘停止措置に関する提案を提出した。現地報道によると、現在 Nalaikh 炭鉱では 174 の坑口があり、1,413 名が働いている。過去 20 年で 198 名が事故で死亡している模様であ る。 (8) 石炭利用と今後 発電技術 モンゴルの火力発電プラントは再熱器を設備しない亜臨界圧力の蒸気条件で運用されている。現在の 発電プラントは既にかなり老朽化が進んでおりリプレースの時期に来ているものもある。現在、新設が計 画されている第 5 発電所では、今後の電力設備の増加を考慮してタービン単機の容量を 150MW とし、 亜臨界圧力ではあるが、蒸気条件を高圧とし、更に効率向上策の一環として再熱サイクル、タービン・ボ イラの 1 機 1 缶方式を採用し、熱供給はタービン抽気からの蒸気を利用する、DCS(Distributed Control Systems)制御などより高度の技術の採用を計画している。亜臨界圧力の設備であるため、技術的に大き な飛躍はなく、運転技術の習得、設備の保守点検、部品の確保などが比較的容易である。また、現在運 用され老朽化している設備も、順次に亜臨界圧力、再熱サイクルの最新技術を使用した発電設備に更新 していくのが望ましい。 ハウスコークスと活性炭利用 現在ハウスコークス製造は 3 ヶ所で実施されているが、セミコークス製造技術は将来に向けた石炭加 工業の第 1 歩と位置づけされる。石炭乾留技術の中では低温乾留と呼ばれるもので、乾留に伴い発生 する COG、低温タールの利用は課題が多いが石炭化学分野の実証機として研究分野が広がるばかりで 71 なく、研究者、技術者の育成が期待できる。現在の技術課題の一つに製造コストの削減がある。ハウスコ ークスは石炭価格の約 2〜3 倍の価格になるので、これを如何に下げるかが課題である。 活性炭はまだ消費量が少ないが、工業化が進むモンゴルには必要不可欠な環境対策材料となるのは 間違いない。活性炭の原料には石炭も重要な位置を占めており、世界的に瀝青炭と褐炭があり、モンゴ ルに豊富にある褐炭も有望である。活性炭の製造方法はセミコークス製造に似ており、更に水蒸気賦活 設備を加えると活性炭製造設備になる。技術的にはセミコークス製造技術が活用できモンゴルには有利 である。また将来高性能な活性炭が製造可能となれば、販売価格から考慮してもコンテナで第 3 国への 輸出も経済的に可能となる。 (9) 選炭技術の状況・普及率 現時点で選炭工場が稼働しているのは南ゴビの Ukhaa Khudag 炭鉱のみである。豪州 Sedgman 社製設 備であり、湿式篩、分級サイクロン、重液サイクロン、スパイラル、浮選機で構成される。現在原炭処理量 500 万トン/年の設備が 2 ユニット稼働しており、さらに 1 ユニットが 2013 年には稼働する。 その他、Erdeness Tavan Tolgoi 炭鉱において、原炭処理量 1,500 万トン/年の選炭工場建設計画があり、 F/S の実施まで完了している。 特に南ゴビ地域は水資源に乏しく、JCOAL が JICA 事業の一環として実施した研修においては、乾式 選炭への関心が非常に高かった。 (10) CBM、CMM、VAM 等の開発利用状況 2010 年に米国 EPA の資金協力を得て、炭鉱メタンガスに関する調査を開始した模様である。技術的協 力は米国 Ravan Ridge Resources 社が行っている。2011 年に Nariin Sukhait、Erdenes Tavan Tolgoi、 Shariin Gol、Baganuur、Khushuut の 5 炭鉱を選定し、2012~2013 年に炭鉱メタンガスの評価を実施する 予定である。 (11) 輸送インフラ(鉄道・港湾) 現在モンゴルではモンゴル鉄道(Mongolian Railway State Owned Shareholding Company)が鉄道網を 重要度別に Phase I、II、III に分けて建設を行う計画を立てている(図 1.3.8-4)。Phase I と II の鉄道建設 により、2020 年に年間 6,600 万トンの石炭輸送が可能になると同社は見込んでいる。2012 年に Tavan tolgoi~Sainshand(468km)、Tavan Tolgoi~Gashuun Sukhait(267km)、Nariin Sukhait~Shiveekhuren (46km)の 3 路線の建設が開始された。 72 Ulaangom Altangulag Tsagaan tolgoi Sukhbaatar Darkhan Erdenet Tsagaan nuur Ereen Tsav Tumurtei Shariin Gol Mardai Tsav Choibalsan Baganuur Ulaanbaatar Bulgan Tamsagbulag Matad Bor-Undur Altai Choir Altai Tseel Shinejinst Burgastai 既存路線 Phase I Phase II Phase III Khuut Bagakhangal Khushuut Bichigt Airag Sainshand Zuunbayan Tsagaan suvarga Numrug Baruun Urt Zamiin Uud Nariin Sukhait Suveekhuren Tavan tolgoi Oyu tolgoi Gashuun Sukhait 出典:Railway of Mongolia による資料より JCOAL 作成 図 1.3.8-4 モンゴルの既存鉄道ならびに鉄道建設計画 (12) 環境状況(規制値及び実情) モンゴルの環境に関する規制は、法律ならびに標準規格で定められている。炭鉱開発における環境に 関するものとしては、自然環境保護法、自然環境アセスメント法があり、鉱区取得時の環境関連評価や閉 山後の対処などについても規定されている。政府担当者の話では守られていない事例も見られるようであ るが、そのような場合は生産停止措置などを取り、改善措置がとられるまで生産再開を許可しないようにし ているとのことである。 首都の Ulaanbaatar では石炭を燃焼することにより排出される煤煙による大気汚染が深刻な問題となっ ている。モンゴルにおける大気汚染物質の許容濃度は表 1.3.8-2 のように定められている。 現在のところ排出基準は守られていない場合も多くみられる。古い熱供給ボイラ(HOB)には汚染物質 処理装置がついていないものがかなりある。 発電所については、その能力や燃焼室の形状などにより細かく汚染物質排出基準が設けられている。 2011 年に新しく基準が作られ、新規発電所については表 1.3.8-3、表 1.3.8-4 に示すような許容値を守る ことが義務づけられる。 表 1.3.8-2 モンゴルの大気汚染物質許容濃度 物質 測定平均時間 単位 許容含有量及び許容基準 10 分間 500 20 分間 450 二酸化硫黄 (SO2) µg/m3 24 時間 20 1 年間 10 30 分間 60,000 一酸化炭素 (СО) 1 時間 µg/m3 30,000 8 時間 10,000 20 分間 85 二酸化窒素 (NO2) 24 時間 µg/m3 40 1 年間 30 73 8 時間 オゾン(O3) 煤塵(総物質重量) PM10 PM2.5 鉛(Pb) ベンゾピレン(C20H12) 出典:MNS4585(2007) µg/m3 30 分間 24 時間 1 年間 24 時間 1 年間 24 時間 1 年間 24 時間 1 年間 24 時間 100 50 150 100 100 50 50 25 1 0.5 0.001 µg/m3 µg/m3 µg/m3 µg/m3 µg/m3 表 1.3.8-3 新規火力発電所からの CO、SO2、煤塵排出許容量 CO 地域 SO2 3 煤塵 PM、 3 (mg/m ) (mg/m ) (mg/m3) 人口密度 10~1000 人/km2 180 400 50 人口密度 10 人/km2 300 600 200 出典:MNS6298:2011 表 1.3.8-4 新規火力発電所からの NOx 排出許容量 石炭揮発分 NOx(mg/m3) Vdaf<10% 1,100 10%≦Vdaf≦20% 650 Vdaf>20% 450 注釈:Vdaf - 石炭の灰分、水分を除いた状態揮発分 出典:MNS6298:2011 (13) 日本企業の進出状況 Tavan Tolgoi 鉱床の開発拡大に伴い、周辺のインフラ拡大・整備が進められている。モンゴル鉄道公 社は今後同鉱床からの石炭をロシア又は中国の既存路線との連結を通じて輸出拠点となる港湾へ輸送 するため、Sainshand-Choibalsan、Khuut-Bichgt 間の新規路線建設と ZamiinUud-EreenHot 間の既設 路線の改良を計画している。 2013 年 5 月に日本工営株式会社と国営モンゴル鉄道との間で、石炭輸送用貨物鉄道の建設計画に 係るコンサルタント業務契約が締結された。鉄道路線整備計画のうち 1,600 キロメートル区間を対象とする ものであり、業務の契約期間は、2013 年 5 月から 2014 年 7 月までの 15 ヶ月間で、契約金額は約 17 億 円である。 また同年 8 月には 12 億ドル(約 1200 億円)に上るモンゴル・ウランバートルでの 450MW の石炭火力 発電所建設事業で、双日 や仏公益事業 GDF スエズなどで構成する企業連合が選定されている。双日 などの企業連合は、サムスン C&T や韓国電力公社などの韓国勢のグループを退けて受注に成功した。 建設予定地はウランバートル中心部の 15 キロ東。2017 年までの試運転実施を見込んでいる。 74 1.3.9 ロシ シア (1) 石炭 炭探査状況 ロシア ア連邦の天然資源省と環境 境省のデータ タによれば、探 探査されたロシアの確認石 石炭埋蔵量は は1,933億 トンでそれ れは世界埋蔵 蔵量の19%を を構成する。ロ ロシア政府は は褐炭の埋蔵量は1,012億 億トン、ハードコール埋 蔵量は853億トン(原料炭埋蔵量3 398億トンを含 含む)、無煙炭 炭埋蔵量68億 億トンだと示し している。それ れは埋蔵 量分布が が非常に偏在 在していると強 強調されるべき きである。全て てのロシアの の埋蔵量の100%だけは最も工業化し ているロ ロシア欧州域 域に分布して ており、西シベ ベリアに45%、 、東シベリアと極東に45%%に分布して ている(表 1.3.9-1 )。 図1.3..9-1にはロシ シアの主要炭田と鉱床の分 分布を示す。 9-1 ロシアの の石炭の推定 定資源量・確認 認埋蔵量 表1.3.9 推定資源 源量 確認埋蔵量 確 ロシ シア合計 3兆9,2 277億トン (100%) ロシア欧州 州地域 2,2 272億トン (5.8%) ロシアアジ ジア地域 3兆7,0 005億トン (94.2%) 内訳 訳 西シベ ベリア 5,157億トン (13%) 東シベ ベリア 2兆2 243億トン (52%) 極東 1兆1,6 606億トン (30%) 出典:Caalculated by the t data 図1.3.9-1 図 ロシ シアの主要炭 炭田・鉱床分布 布 75 1,933億 億トン (100%) 195億 億トン (10%) 1,738億 億トン (90%) 857億 億トン (45%) 678億 億トン (35%) 203億 億トン (10%) (2) 石炭生産 石炭生産量の推移を表1.3.9-2 に示す。ロシアの生産量は1999年ごろから生産が増加し始め、その傾 向は2008年まで続いた。増産の理由としては、 ①1998~1999年ごろから民間資本が石炭分野に本格参入し石炭分野の生産効率が全般的に上昇した ②1999年以降クズバス炭田(ケメロヴオ州)の採炭量が大幅に増加し始めた(1993年以降1998年まで同 炭田の採炭量は9,000万~1億トンの水準で推移していたが、1999年以降急増し始め2009年の採炭量は 約1億8,000万トンに達した) ③石炭の輸出量が1999年以降急増した 等を挙げることができる。 その後、2008年の世界的経済危機の影響を受け内外市場において石炭消費量が減少した結果、 2009年は採炭量がやや減少したが2010年に入り状況が急激に改善されてきており、2012年度は3億 5,300万トンに達した。 表1.3.9-2 ロシアの石炭生産推移 Hard coal Brown coal Total 1990 237,514 134,385 371,899 1995 162,411 83,317 245,728 2000 152,538 87,786 240,324 2005 209,213 73,668 282,881 2006 210,418 74,148 284,566 2007 217,878 71,143 289,021 2008 222,432 82,530 304,962 2009 206,980 69,011 275,991 2010 245,580 76,121 321,701 2011 256,206 77,625 333,831 2012 276,085 77,855 353,940 出典:IEA Coal Information 2013 単位1,000トン 100% 90% 80% Others 70% OAO Raspadskaya 60% OAO Severstal 50% Evraz Group S.A. 40% Mechel OAO 30% Kuzbassrazrezulol 20% Suek 10% 0% 2010 2011 2012 出典:石炭年鑑、IEA Coal Information2013 図1.3.9-2 ロシアの主要炭鉱別石炭生産推移 (3) 石炭消費 表1.3.9-3にロシアの石炭消費量の推移を示す。ロシアにおける石炭のトータルの消費量は2億トン強で あり、生産量約3億トンとの差、1億トンが輸出されている。ここ10年間、消費量に大きな変化は見られな い。 76 表 1.3.9--3 石炭消費 費実績推移 Hard c oal Brown coal Total 1990 240,033 134,047 374,080 1995 163,266 82,065 245,331 2 2000 142 2,222 88 8,257 230 0,479 2005 141,438 73,156 214,594 2006 145,771 73,929 219,700 2 007 142,034 70,147 212,181 2008 148,763 80,769 229,532 2009 116,437 70,225 186,662 20 010 147,5 544 76,2 276 223,8 820 2011 156,886 77,780 234,666 2012 173,277 77,843 251,120 出典:IEA A Coal Inform mation 2013 単位1,000ト トン (4) 石炭 炭輸出 ロシア アの石炭輸出実 実績を、表 1.3.9-4 1 に示 した。近年の の石炭輸出量は約 1 億トン ンに達してお おり、そのう ち、一般 般炭が 9,000 万トン強を占 占めている。輸 輸出先は、ウク クライナ、英国 国、トルコ、日本 本、韓国、フィンランド が上位を を占めている。 。 表1.3.9-4 ロ ロシアの石炭 炭輸出量推移 移 Hard c oal Brown coal Total 1990 56,051 3,134 59,185 1995 26,263 2,171 28,434 2 2000 36 6,737 1 1,592 38 8,329 2005 86,006 552 86,558 2006 91,391 539 91,930 2 007 98,054 584 98,638 2008 97,470 649 98,119 2009 105,552 893 106,445 20 010 132,2 275 5 526 132,8 801 2011 123,169 526 123,695 2012 134,179 22 134,200 出典:IEA A Coal Inform mation 2013 単位1,000ト トン 図 1.33.9-3 に生産 産量と輸出量比 比較を示した た。2005 年以降において、石炭の輸出 出量が増加して ており、そ れに伴い い生産量も増加しているこ ことが判る。 出典: IEA Coal Inform mation 2013 図 1.3..9-3 生産量 量と輸出量比 比較 単位:1,0 000 トン 1.3.10 ポ ポーランド (1) 石炭 炭生産量及び び消費量の推移 ポーラン ンドにおいて ては、褐炭がか かなり生産され れ消費されて ていることから、Hard Coal と Brown Coal に明確 に分けて ている。図 1.33.10-1 に石炭 炭の生産量及 及び消費量の推移を示した た。2012 年の の生産量は、H Hard Coal は約 8,0000 万トン、B Brown Coal は約 6,400 万トンで、前 前年よりわずか かに増加してい いる。消費量 量は、Hard Coal は少 少し減少し、B Brown Coal はほぼ横ばい は いであった。 77 図 1.3.10-1 ポーラ ランドの石炭生 生産量・消費 費量推移 (2) 石炭 炭輸出入量の の推移 図 1.3.10-2 にポー ーランドの石炭 炭輸出入の推 推移を示した た。ポーランドの の石炭輸出量 量は概ね 70 00~1,000 万トン程度 度で推移して ている。一方、 、輸入量はこ ここ数年は増加 加傾向にあり、2011 年は 1,500 万トン ンであった が、20122 年は 1,000 万トン程度と減少した。 2012 年 年の原料炭の の輸出は、チェ ェコ 85 万トン、 、オーストリア ア 19 万トン、ス スロバキア 133 万トン等で、合計 127 万トンであ ある。また、一 一般炭の輸出 出は、ドイツ 2 73 万トン、チ チェコ 67 万トン、オーストリ リア 59 万トン ン等で、合 計 528 万 万トンである。 一方、輸 輸入に関して ては、原料炭は は、米国 66 万トン、チェコ コ 48 万トン、 、オーストリア ア 36 万トン等 等で、合計 152 万トン ンである。また た、一般炭は、ロシアから 654 万トンと非 非常に多く、以下、チェコ コ 97 万トン、米 米国 13 万 トン等で、 、合計 812 万トンとなって 万 ている。 図 1.3.10 0-2 ポーラン ンドの石炭輸出入推移(Hard Coal) 78 (3) 石炭 炭価格(IEA Coal C Information 2013) ポーラン ンド国内価格 格 一般炭 炭:電力向け 2012 年 113.5 ドル、20111 年 116 ドル ル 一般炭 炭:産業向け 2012 年 142 2 ドル、2011 年 143 ドル 原料炭 炭: 2012 年 184 1 ドル/tce((7,000kcal/kgg 相当)、2011 年 254 ドル ル/tce、2010 年 188 ドル/ttce、2009 年 130 ド ドル/tce (4) ポー ーランドにおけ ける石炭利用 ① 20111 年における石 石炭火力での の石炭消費量 量は以下のと とおりである。 Haard Coal 4,895 万トン (生 生産量 7,980 万トンの 61% %) Broown Coal 6,180 万トン (生産量 ( 6,42 8 万トンの 96 6%) ② ポー ーランドにおけ ける電力構成 2011 年 年の電力構成 成及び 2030 年の見通しを図 年 図 1.3.10-3 以下に示す。 以 将来的には、 、石炭の比率 率を下げ、 原子力と と再生可能エネルギーを増 増やす見通し しとなっている る。 図 1.3.10-3 ポ ポーランドの電 電力構成見通 通し 1.3.11 EU (1) EU に における石炭 炭事情 欧州に に賦存する化 化石エネルギー ーの約 80%は は石炭と褐炭 炭であり、EU 加盟諸国には 加 はどちらか或いは双方 が賦存し している。2004 年に加盟し した国々は、 石炭及び褐炭 炭資源を多く く有しており、 EU 全体の石 石炭資源 量を増や やした。特に、ブルガリア、チェコ、ハン ンガリー及びポ ポーランドが石 石炭資源国で で、国内炭を をベースと 79 した石炭産業があり、石炭が主要エネルギーとなっている。最近は生産及び消費が減っているが、将来 的には重要なエネルギー資源として残っていくと思われる。多くの EU 国においても、石炭は重要な発電 用燃料として使われると思われる。 表 1.3.11-1 EU 各国の石炭可採埋蔵量 ドイツ ポーランド ギリシャ ブルガリア ハンガリー チェコ スペイン ルーマニア スロバキア イギリス スロベニア ポルトガル オーストリア クロアチア アイルランド イタリア 合計 瀝青炭・無煙炭 48 4,178 亜瀝青炭 2 13 181 200 10 2 228 190 439 300 1 24 3 褐炭 40,500 1,287 3,020 2,174 1,208 871 30 280 260 199 33 333 4 14 50 1,004 4,883 50,195 合計 40,548 5,465 3,020 2,366 1,660 1,052 530 291 262 228 223 36 14 50 55,745 出典:2013 Survey of Energy Resources, WEC 単位 100 万トン ※EU 加盟 28 ヶ国のうち報告している国のみ掲載 表 1.3.11-2 EU の Hard Coal 生産量 (単位:1,000 トン) チェコ ドイツ イタリア ポーランド スペイン 英国 その他 合計 2006 13,385 23,762 21 94,407 8,353 18,079 4,714 162,721 2007 12,894 24,185 158 87,406 7,873 16,540 6,535 155,591 2008 12,663 19,068 117 83,661 7,314 17,605 6,031 146,459 出典:IEA Coal Information 2013 80 2009 11,001 13,766 72 77,478 6,952 17,374 5,505 132,148 2010 11,435 12,900 101 76,172 5,986 17,816 4,459 128,869 2011 11,265 12,059 92 75,668 4,262 17,892 3,914 125,152 2012 11,440 11,558 80 79,234 3,891 16,338 3,789 126,330 表 1.3.11-3 EU の Brown Coal 生産量 (単位:1,000 トン) チェコ エストニア ドイツ ギリシャ ハンガリー ポーランド スロバキア スロベニア スペイン その他 合計 2006 49,518 14,095 176,321 64,787 9,952 60,844 2,201 4,522 10,094 43,319 435,653 2007 49,732 16,544 180,409 66,308 9,818 57,538 2,111 4,535 9,309 51,823 448,127 2008 47,537 16,117 175,313 65,720 9,404 59,668 2,423 4,520 2,873 56,164 439,739 2009 45,416 14,939 169,857 64,893 8,986 57,108 2,573 4,429 2,493 57,267 427,961 2010 43,774 17,933 169,403 56,520 9,113 56,510 2,378 4,430 2,444 48,512 411,017 2011 46,639 18,734 176,502 58,666 9,555 62,841 2,376 4,501 2,359 50,353 432,526 2012 43,533 18,796 185,432 61,789 9,290 64,280 2,292 4,278 2,254 43,876 435,820 出典:IEA Coal Information 2013 表 1.3.11-4 EU の Hard Coal 消費量 (単位:1,000 トン) オーストリア ベルギー チェコ デンマーク エストニア フィンランド フランス ドイツ ギリシャ ハンガリー イタリア オランダ ポーランド ポルトガル スロバキア スロベニア スペイン スウェーデン 英国 その他 合計 2006 4,236 7,183 9,881 9,172 70 7,612 19,071 65,538 463 1,851 24,798 12,648 86,130 5,467 5,148 46 29,395 3,235 67,340 26,260 385,544 2007 4,271 6,518 9,760 7,901 130 7,075 20,512 70,097 710 1,965 25,118 13,445 85,336 4,742 5,021 66 33,090 3,192 62,903 28,764 390,616 2008 4,019 5,881 9,428 6,836 129 4,986 19,125 64,067 523 1,907 24,910 12,685 82,668 4,156 4,651 63 23,982 2,774 58,220 25,894 356,904 出典:IEA Coal Information 2013 81 2009 3,263 4,682 6,757 6,778 87 5,413 16,322 52,016 337 1,349 19,364 11,871 75,730 4,677 4,327 25 18,303 2,433 48,786 24,573 307,093 2010 3,735 4,920 7,812 6,496 60 6,982 17,333 58,588 614 1,787 21,367 11,873 84,788 2,702 4,163 20 13,876 2,859 51,447 28,219 329,641 2011 3,780 4,399 8,019 5,521 70 5,477 14,547 58,020 380 1,670 24,235 11,674 83,527 3,697 4,058 22 21,377 3,043 51,500 29,204 334,220 2012 3,402 4,399 7,310 4,176 65 4,633 16,823 56,220 97 1,503 23,928 12,792 75,618 4,873 3,917 23 26,467 2,776 63,984 34,550 347,556 表 1.3.11-5 EU の Brown Coal 消費量 (単位:1,000 トン) ベルギー チェコ エストニア ドイツ ギリシャ ハンガリー ポーランド スロバキア スロベニア スペイン その他 合計 2006 290 47,973 14,028 176,378 64,598 10,181 60,800 3,168 5,185 10,103 42,505 435,209 2007 317 48,577 16,810 180,560 66,373 10,088 57,529 2,935 5,198 9,579 51,126 449,092 2008 281 45,381 15,704 174,833 64,632 9,930 59,651 3,374 5,134 2,431 55,340 436,691 2009 173 44,238 13,769 169,846 65,213 9,327 57,084 3,266 4,917 1,375 58,799 428,007 2010 244 43,732 17,889 169,520 57,704 9,202 56,593 3,051 4,894 785 48,150 411,764 2011 292 44,101 18,739 176,677 59,978 9,944 62,708 3,151 5,007 2,809 51,703 435,109 2012 292 42,576 18,794 185,171 63,726 9,902 64,114 2,994 5,034 2,399 43,645 438,647 出典:IEA Coal Information 2013 表 1.3.11-6 EU の Hard Coal 輸出量 (単位:1,000 トン) ベルギー チェコ オランダ ポーランド スペイン 英国 その他 合計 2006 1,078 6,517 9,858 16,735 0 443 2,745 37,376 2007 1,470 6,808 11,882 11,900 974 544 4,120 37,698 2008 1,213 6,087 7,528 8,461 1,829 600 4,269 29,987 2009 886 6,518 4,732 8,396 1,374 647 2,955 25,508 2010 604 6,272 5,866 9,965 1,488 715 2,286 27,196 2011 667 6,279 12,608 7,007 1,190 491 1,948 30,190 2012 105 5,131 715 6,989 1,861 480 1,781 17,062 出典:IEA Coal Information 2013 表 1.3.11-7 EU の Hard Coal 輸入量 (単位:1,000 トン) オーストリア ベルギー チェコ デンマーク フィンランド フランス ドイツ ハンガリー イタリア オランダ ポーランド ポルトガル スロバキア スペイン スウェーデン 英国 その他 合計 2006 4,121 8,056 1,997 8,688 6,684 20,391 42,132 1,759 24,632 22,844 5,271 5,782 4,665 23,704 3,052 50,528 24,160 258,466 2007 4,426 7,415 2,553 8,122 6,670 18,958 46,287 2,000 24,953 26,035 5,924 4,782 5,286 24,439 3,180 43,364 26,823 261,217 2008 4,063 7,431 2,285 7,569 5,672 21,288 45,427 1,931 25,099 21,157 10,331 3,829 4,600 20,967 2,857 43,876 23,612 251,994 出典:IEA Coal Information 2013 82 2009 3,107 4,806 1,929 6,711 5,949 15,408 38,475 1,336 18,914 19,906 10,793 5,061 4,359 17,038 1,898 38,167 23,404 217,261 2010 3,634 5,527 2,009 4,570 5,920 17,579 45,725 1,767 21,712 20,440 13,603 2,771 3,798 12,817 3,285 26,540 24,463 216,160 2011 3,082 5,192 2,310 6,133 6,970 14,427 47,845 1,560 23,261 24,463 14,955 3,753 3,972 16,168 3,076 32,528 27,261 236,956 2012 3,565 4,504 1,851 3,906 3,954 15,856 45,195 1,523 24,138 11,236 9,632 5,176 3,935 22,414 2,281 44,797 31,929 235,892 表 1.3.11-7 EU の Brown Coal 輸入量 (単位:1,000 トン) ベルギー ハンガリー イタリア スロバキア スロベニア その他 合計 2006 289 674 8 932 558 407 2,868 2007 317 652 4 923 567 368 2,831 2008 282 813 4 1,037 835 462 3,433 2009 172 381 585 780 506 506 2,930 2010 245 292 400 613 548 376 2,474 2011 291 317 210 602 503 586 2,509 2012 300 299 210 695 614 892 3,010 出典:IEA Coal Information 2013 図 1.3.11-1 に EU 諸国における一次エネルギー供給量の割合を示す。一次エネルギー消費で石炭は 18%を占め、32%の石油、24%の天然ガスに次ぎ重要なエネルギーである。石炭消費量は約 8 億トン、電力 用に 7 割が消費される巨大市場であるが、生産は減少傾向にあり、2008 年では 5.90 億トンと不足分の 2 億トン程度は輸入に依存する。一方で天然ガスも 60%を輸入しており、その 42%すなわちガス需要の 4 分 の 1 はロシアに依存している。 2050 年には大気中 GHG 濃度を現在比で 60~80%削減し、再生可能エネルギーを 60%までに高め、更 にはエネルギー消費を 35%削減する計画。中期目標の 13%は 2005 年比であり、1990 年比では 20%削減 であり、20-20-20 計画とされる。これは 2020 年までに GHG 排出量を 20%削減し、20%の省エネ、再生可 能エネルギーを 20%とする計画である。 Biofuels & waste 7.7% Hydro & other 5.5% Coal & Peat 17.9% Nuclear 13.2% Oil 32.2% Gas 24.0% 出典:Energy Balances of OECD countries 2013 図 1.3.11-1 一次エネルギー供給量の割合 (2) ドイツの電力事情 ドイツの 2013 年の発電設備容量(単位 MW)内訳は図 1.3.11-2 に示すように、原子力が 8%(約 13,000MW)となっており、ついで褐炭が 12%、石炭が 14%と両者合計は 26%で、47,000MWとなってい る。 83 図 1.3.11-2 2 ドイツにお おける発電設備 備の内訳(引用 RWE 社資 資料より) 表 1.3.11-4 に示すよ しかし、日本の原子 子力発電所の の一連のトラブ ブルを契機に にドイツでは原 原子力発電を表 うに 20222 年までにゼ ゼロまで持って てゆく計画とし しているが、す すでに 2011 年には大容量 年 量のユニットも も含め、合 計で 8 ユ ユニット、8,820MWが停止 止している。 表 1.3.11-4 ドイツの原子 子力閉鎖計画 画(引用 RWE E 社資料より ) 着色部はすでに に停止した原 原子力発電所 所を示す。 注:着 この中 中でドイツは大 大幅に再生可 可能エネルギー ーを導入して て、CO2 を増加 加させることな なく安定した電 電力供給 を実現す する戦略を立て て、その方向 向に走りだして ている。具体的 的には表 1.3.11-5 に示 したように、2 2050 年に は再生可 可能エネルギ ギーのシェアが が 80%とかな なり厳しい目標 標を立ててい いる。この時点 点では原子力発 発電はゼ ロとなって ており、発電の の変動の予測 測が難しい 880%もの再生 生可能エネル ルギーに対し、 、火力も含めたその他 の電源が がどのように対 対応するのか、また対応可 可能なのか、良 良くウオッチし してゆく必要が がある。 84 表 1.3.11-5 ドイツの再生可能エネルギーシェア目標(引用 RWE 社資料より) CO2削減目標 電力供給削減 再生可能エネシェア 2020 40%削減 10%削減 35% 2025 2035 40から45% 55から60% 2050 80~95%削減 25%削減 80% 現時点(2013 年)ではすでに太陽光と風力の再生可能エネルギーのシェアはあわせて 38%になって いるが、この場合の電力供給の実際を、2013 年の冬の場合(3 月)と夏の場合(6 月)について図 1.3.11-3 および図 1.3.11-4 に示す。ここでは電力の需要と風力と太陽光による供給量を示しているので、 その差が主に原子力と火力に夜電力供給量となる。 これらの状況を見ると次のようになっている。 ・3 月 21 日について(冬の比較日) 風が吹かずまだ太陽が沈んでいる時間の原子力と火力により必要とされる供給量は 65.274MWである。 一方、風が強く吹き太陽光も十分供給されている 3 月 24 日のそれは 14.405MWである。原子力はベース ロードであり、前記のように 13,000MW とすると再生可能エネルギーを除いた電力供給は次のように推定 される。 2013 年 3 月 21 日 原子力(13,000MW)+火力=65,274MW 火力は約 52,000MW 2013 年 3 月 24 日 同上 +火力=14,405MW 火力は約 1,400MW すなわち火力発電は 1,400MW~52,000MW の間で大きく振られることになる。3 月 21 日には大部分の 火力は停止したのではないかと推定される。 図 1.3.11-3 ドイツの冬(2013 年 3 月)の電力の需要ならびに供給状況 引用 RWE 社資料より ・6 月 16 日について(夏の比較日) 85 上記と同様な推定を行うと、同じ 6 月 16 日の中で火力は 11.4MW~44.8MW と変動することになる。 図 1.3.11-4 ドイツの夏(2013 年 6 月)の電力の需要ならびに供給状況 引用 RWE 社資料より このように現時点でも石炭を含む火力発電に大きなしわ寄せが来ており、2050 年にはどのようになるの か興味のあるところである。 (3)ドイツの石炭火力の実情 RWE 社の Neurath BoA 2&3(BoA とは Brown Coal Optimized Advanced Technology の略で、リグナイト 焚 USC のこと。EU ではこのように呼ばれている。) は 2012 年 8 月 15 日に商用運転開始された。定格負 荷はそれぞれ 1,100MW であり、高い効率 43%(LHV ベース)と柔軟性のある運転が可能である事を特徴 とする世界で最も先進的なリグナイト焚発電所である。竣工式典では州政府 Hannelore Kraft 首相、Peter Altmaier 連邦環境相、RWE の Peter Terium CEO ら 400 人を超えるゲストが招かれた。 竣工式にあたって高い負荷変化率のデモ運転が行われ、5 分で 150MW(注)の負荷降下・上昇運転が 行われた。この高い負荷変化率のニーズは風力や太陽光の不安定負荷変化に対応する能力を示したも のである。総投資は€2.6billion(€26 億、約 2,550 億円)で、RWE がこれまでに行った最大の投資である。 (注:この値は 13.6%負荷に対応し、負荷変化率は 2.72%/分となる。) これらのユニットの設計初期段階で RWE はプラントの早い負荷変化対応可能を強調した。それぞれの ユニットは 500MW 変化を 15 分で行う事が出来るので、2 ユニットでは 1,000MW の負荷変化に対応でき、 これは風力発電の 400 ユニット分に当たる。またこの負荷変化率は天然ガス火力と張り合う事が出来るほ どのものである。 86 図 1.3.11-5 RWE 社 Neurath BoA 2&3 ユニット 1.3.12 モザンビーク (1) 新たな鉱業政策・戦略 政府は 2013 年 12 月 17 日に国家鉱物資源分野の活動・指針を定める新たな「鉱物資源政策およ び戦略」案を発表した(国会の承認待ち)。本案は、1998 年に策定された「地質鉱物政策」が資源分 野におけるこれまでの環境変化にそぐわないことから、これに変わる新たな政策・戦略を策定し、資 源開発が社会経済文化発展に貢献し、持続的な資源開発を目指すことを目的としている。今後のモ ザンビークにおける資源開発を行うにあたって注視すべき指針となる。本案の骨子は以下に列記す る。 <鉱物資源政策の柱> a. 権限:海底と海底地下を含め、モザンビーク共和国の地上、地下、河川、海域、排他的経 済域、大陸棚の鉱物資源は国家財産である。 b. 恩恵:鉱物資源の恩恵は第一に国家社会経済発展及びモザンビーク国民に注がれるべき である。 c. 持続性:鉱物資源開発は現世代と将来世代の発展を見据えて持続的な形で成されるべき である。 d. 環境:鉱物資源は環境面で健全な形で発展開発されるべきである。 <鉱物資源政策導入のための戦略> a. 地質調査-地質情報取得の継続と技術能力の強化 b. 鉱業・石油開発-魅力的で企業が鉱物を国内加工または国内利用できるような投資体制 の確立、モザンビークを採掘産業の投資対象優先国に設定。 c. 鉱物資源の地域利用と加工-国内の鉱物資源の有効化、国内付加価値網の発展を通し その経済価値の最大化、国内産業の多様化(持続的経済発展と国内利益を増進)、国内 外市場での競争力を挙げるための、鉱物資源の処理加工産業の統合化推進 d. 鉱業活動への国の参加- 社会経済発展を視野に置く鉱物資源開発の保証。国家・企 業・国民参加を含めた鉱業開発関係事項とその工程の明確化。 - 本事項について、鉱物資源省副大臣は、新規の資源開発にかかる国の参入は、国 87 営会社を通じてこれまでの権益 5%から 25%に増加させることになろうとコメント (2013/12/18)している。 なお、以上の事項に関して、それぞれの専門分野での公的・私的機関の能力強化、人材育成が 謳われている。 (2) 石炭鉱床 モザンビークの炭田とテテ州の主要炭鉱位置、さらに鉄道・港の位置を図 1.3.12-1 に示す。 図 1.3.12-1 モザンビークの炭田分布と主要炭鉱位置 モザンビークの炭田別埋蔵量と特徴を下表に示す。 石炭開発の中心はテテ州の Moatize 周辺地域である。炭質は灰分が高いものの石炭そのものは一級 強粘結炭の特性を有しており、原料炭としての期待が高い。 88 表 1.3.12-1 モザンビークの炭田別資源量とその特徴 州 名 Tete Niassa Cabo Delgado Manica 炭 田 名 資源量 炭層 数 Moatize と Minjova 全体 埋蔵量: 7 8.70 億トン Moatize 資源量:44 億ト ン (2009 年) 11 億トン(1984 7 Minjova 年) カテゴリ B+C1+C2: 7 層群 19 億トン Mucanha-Vuzi 予想:17.3 億 ト ン Sanãngoe 予想:2-3 億トン 6 Merfideze (1995 年) 上層群 8 Lunhu 2.33 億トン 下層 Maniamba (1995 年) 群: 薄層 4 億トン (10 億ト ンの報告もあ ― Luângua るが、対象範 囲不明) Espungabera 不明 ― 主要炭層 特 Chipanga 他 Chipanga を含めた 5 層 採掘可 能。走向 NW-SE、最大傾斜 17°。岩脈の貫入で厚さ 20~30 mのコークス用炭が生成。 Chipanga 他 炭田面積:3,000km2。 走向 WNW-ESE、傾斜 15°S。 ― Lower Seam (=Chipanga) ― 走向 E-W、傾斜 5-15°S。 南西部の石炭はダム下に位置。 砂層、沖積層が厚く、試錐少な い。ダム下の炭量あり。 炭田面積:720km2。 上下層群中の炭層は薄層が多 い。 走向 NE-SW、傾斜 5~10°、 N-S 方向の断裂でサブブロックに 分割。 ― 狭い凹地に形成されているため 炭量は期待できない。 ― ジンバブエとの国境付近に位 置。炭田の面積 80km2。断裂でサ ブブロックに区分されている。薄 層でもあり、採掘できる石炭は少 ない。 表 1.3.12-2 モザンビークの炭田別炭質 89 徴 Moatize 2.0 (1.0 to 10) 20 水分 (%) Mucanha-Vuzi Maniamba 1.3 - - - - 25 to 40 22 to 38 Up to 42 37.6 to 40.8 26 to 36 14 to 19 - - - 7,680 to 7,710 - - 1.8 to 3.2 - - (8 to 22, up to 45) 35 to 38 揮発分 (%) 18 (22 to 33) 37 to 60 発熱量 6,800 (Kcal/kg) (4,800 to 7,200) 硫黄分 (%) 1.0 to 2.0 (Macaa Itula) Espungabera 8.28 to 22.05 灰分 (%) 固定炭素 (%) 49 (44 to 59) Lugenda Minjova - 5,440 to 7,800 1.5 (up to 49) 20.00 to 32.97 (up to 35) 44.75 to 58.90 4,840 to 7,220 (ave. 6,600) 0,70 to 1,00 (3) テテ州の石炭探査・開発状況 テテ州では石炭開発は 2011 年よりバーレ社の Moatize 炭鉱で本格的に開始され、今後、大規模開発 が期待されている。 表 1.3.12-3 に開発がすでに行われている炭鉱、探査中の炭鉱・プロジェクトの概要を示す。 表 1.3.12-3 テテ州の石炭開発状況・計画 会 社 炭鉱・プロジェクト名 権 益 Vale Mozambique Moatize Vale Riversdale Benga Zambeze Tete East RioTinto/Tata Ncondezi Coal Co. Minas de Revuboe Talbot 新日鐵住金 POSCO Minas Moatize Latitude Zero/ Pelham Beacon Hills Investmets Resources Changara Project Consolidated Mozambi Coal Songo Mozambi Coal Tete West Ltd. Mutuara Jindal Steel & Power Chirodzi Coal Mine ENRC ETA Star Revuboe Kazakhmys Plc 個人株主 ETA Star India 開発・探査(含計画) 資源量 生産計画量(百万トン/年) 発電所 選炭設備 探査 採掘 (億トン) モ国内 輸出 能力 運転開始 開始年度 2011 15 4000トン/h 2,400MW 27(原炭ベース) 一般炭 2.5 原料炭 8.5 (4モジュール) 10 2012 40 800t/h 2,000MW 10 ○ 2021 90 (1.8百万t/年(原料炭) ○ 2015? 13 0.3百万t/年<一般炭) 2016 18 7.2 ≦3 300MW x 6 2017年 Phase I 300MW 2016 14 原料炭 2,400トン/h 5(精炭) (2モジュール) 2012 ○ ○ ○ ○ 4(原炭) 0.55 1.8 (内原料炭 0.92) 0.8 180万トン 280万トン(2013) 18-23 0.1-0.2 28-36 2012 ○ 2015/16 ○ 2021 10(原炭) 20 9.75 9 (原炭) 5 (原料炭1.5 一般炭 3.5) (各社の Annual report 既存資料をもとに JCOAL 作成) (4) 石炭需給 モザンビークの石炭生産は、かつて Moatize 地域を主として行なわれ、当時 30 万トン/年の石炭が生産 されており、日本へも 5 万トン/年程度の石炭が輸出されていた。1980 年代の内紛により Sena 鉄道線が 90 破損されたことで、海外市場への出荷に制限を受け、生産量が減少した。表 1.3.12-4 に石炭生産量の推 移を示す。モザンビークの石炭鉱床は世界的にも有数の原料炭を有し、将来の原料炭供給国として期待 されていることから 2011 年には、テテ州でバーレ社 Moatize 炭鉱による石炭開発が将来の大規模露天掘 り開発に向けて生産が開始された。 一方、石炭輸出に必要な港までの鉄道、港湾積み出し等の既存インフラ能力の問題もあり、炭鉱の生 産計画に対し、輸出数量はこれまでのところ限られたものとなっている。 モザンビークにおける石炭消費量および輸出量を表 1.3.13-5、表 1.3.13-6 に示す。 表 1.3.12-4 石炭生産量推移 (1,000 トン) 1990 1995 2000 2005 2008 2009 2010 2011 原料炭 一般炭 計 207 38 16 3 207 38 16 3 0 0 2012e 275 2,689 38 373 1,079 38 648 3,768 出典:IEA Coal Information 2013、各社の annual report 表 1.3.12-5 石炭消費量推移 (1,000 トン) 1990 1995 2000 2005 2009 2010 2011 2012e 58 56 - - 10 10 26 73 出典:IEA Coal information 2013 表 1.3.12-6 石炭輸出量推移 (1,000 トン) 2005 2007 - 2008 - 2009 - 2010 - 2011 0 500 2012e 3,695 出典:IEA Coal Information 2013 (4) エネルギー供給バランスと発電構成 2011 年のモザンビークにおける一次エネルギー供給量と発電構成を図 1.3.12-2、表 1.3.12-5 に示 す。 91 Mtoe 石油換算100万トン 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 8.08 0.04 0.13 0.83 1.12 石炭 天然ガス 石油 水力 バイオマス 出典:IEA Energy Balances of Non-OECD Countries 2013 図 1.3.12-2 モザンビークの一次エネルギー供給量 表 1.3.12-5 モザンビークの発電構成(2011 年) 年 石炭 石油 天然ガス 水力 生産量 0.0% 0.0% 0.1% 99.9% 出典:IEA Energy Balances of Non-OECD Countries 2013 モザンビークの一次エネルギー供給はバイオマス・廃棄物が主体となっており、発電はほぼ全てを水力 で賄っている。国内で生産されるガスは殆どを輸出に廻しており(2010 年実績で 97%)、石油は全て輸入で ある。 モザンビークの石炭分野は今後の成長の鍵となっており、政府は民間投資や外国投資を積極的に誘 致している。今後の生産量とともに石炭輸出は今後世界的なエネルギー需要の拡大とともに伸び、将来 的に南アに次ぐアフリカ第二の石炭輸出国となるポテンシャルを秘めている。 (5) 輸送インフラ 1)鉄道 モザンビークの鉄道は、内戦時に大きな被害を受け、現在復旧工事が実施されている。各路線間で 相互連結はしておらず、それぞれが開発回廊計画を有している。 ・Goba 線、Ressano Garcia 線、Limpopo 線:年間貨物輸送量 400 万~450 万トン ・Sena 線(全長 554km):テテ-ベイラ間 鉄道のリハビリ後の年間貨物輸送量 600 万トン ・テテ-ナカラ線(913km):新規の鉄道建設分は 218km、計画では 2014 年下期に開設予定 年間貨物輸送量 1,800 万トンを計画 ・マプート-南ア線::南アフリカのウィットバンクからの石炭輸送。コールターミナル(Matola Coal Terminal) の拡張計画(600 万トン/年から 2,000 万トン/年)があり、この場合、現在の単線から複線化する必 要がある。 2)港 モザンビークの貨物取扱港としてマプート、ベイラ、ナカラの大型港がある。港湾貨物取扱量につい 92 ては、2005 年の 1,000 万トン弱から 2011 年年の約 1,900 万トンへと増加傾向にある。 a.マプート港 マプート港はモザンビーク最大の港である。同港は南ア、ボツワナ、スワジランド等の交易量の拡大 に貢献する可能性の大きな港として南東アフリカ地域で期待されている。マプート港ではバルクターミ ナルとは別に石炭取扱港としてのマトラコールターミナル(Grindrod 社運営)に分かれている。マトラコ ールターミナルでの石炭の受け入れは鉄道輸送のみで、石炭とマグネタイトの専用ターミナルである。 マトラコールターミナルの積出し実績は 300 万トン(2011 年)、取扱炭は、現在のところ南アフリカ炭(ウイ ットバンク炭)のみである。マトラコールターミナルの拡張計画は以下のとおりである。 Phasse4 と呼ばれる計画では、現在の積出能力 600 万トンから 2020 年までに 2,000 万トンに拡張する 計画である。拡張計画後はパナマックスとケープサイズの船への積み込みを同時に可能とする。 b. ベイラ港 ベイラ港はテテ州で生産される石炭の積出港として非常に重要であり、2012 年 1 月に最新の設備を 備えた石炭用ターミナルが完成した。また今後の需要に対応するため、改修や新石炭ターミナルの建 設などにより、現在の 600 万トン/年から 1,500~2,000 万トン/年に拡大する計画が検討されている。 c. ナカラ港 バーレ社は現在のナカラ港対岸に石炭ターミナルを建設することを計画している。建設予定地の水 深は約27mとされており、ケープサイズの大型船舶へ直接石炭を積み込むことが可能となる。最大40 百万トン/年の能力まで拡張可能である。当初の能力はナカラ鉄道と同等の18百万トン/年から20百万 トン/年程度を見込んでいる。 (5) 石炭火力発電所 モザンビークの電力供給量の 88%は水力発電(Hydroelectrica de Cahora Bassa)による。エネルギー戦 略の中には今後の発電容量として、水力発電で 12,000MW、天然ガス火力発電で 500MW 及び石炭火力 発電で 5,000MW 以上の発電能力の可能性が示されている。また、炭鉱開発に伴う石炭火力発電所の建 設も計画されており、バーレ社の Moatize 炭鉱(1,500MW)、Rio Tinto の Benga 炭鉱(2,000MW)及び Jindal 炭鉱(2,600MW)などが対象となっている。 一方、前術の発電計画値とは異なるが、バーレ社の Moatize 炭鉱での石炭火力発電所建設に関して、 2016 年 2 月の報道では 600MW の発電所を 2 フェーズに分けて建設する計画が政府により承認されたと の発表があった。 ここでは、フェーズ1の 300MW の建設で炭鉱への供給ならびに残りを国営電力会社 のグリッドに送電する計画となっている。 モザンビークでの電力ネットワークにアクセス可能な割合は 13%程度であり、大部分の国民は電気を利用 する環境が整っていない地域に居住している。政府はいくつかの送電設備整備の事業を計画しており、 諸外国の支援を受けながら進められている。 1.3.13 南アフリカ (1) エネルギー政策及び石炭政策 南アフリカの産業は、鉱物資源に多く依存するが、石炭に関しては、具体的政策が構築されていない。 しかしながら、国内で得られる豊富な石炭から石油代替の液化燃料を製造する「石炭液化技術」の開発 93 が進んでおり、自国の石油需要の一部を賄う重要なエネルギーとなっている。 (2) 石炭探査状況 南アフリカの可採埋蔵量は無煙炭および瀝青炭が主で 301 億トンである。世界の可採埋蔵量 8,915 億 トン(この内、無煙炭・瀝青炭は 4,032 億トン)の 3.4%を占める世界第 9 位の石炭資源保有国である。無煙 炭・瀝青炭だけでは 7.5%で第 6 位となる。 図 1.3.13-1 に南アフリカの炭田位置と炭鉱の位置図を示す。 これまで石炭採掘が盛んであったウイットバンク炭田は、残存可採埋蔵量が少なくなってきており、新たな 資源量ソースの炭田として北西のウォーターバーグ炭田が考えられている。ここでは南アフリカの中でも 未開発の石炭資源が大量に残されているものとして期待されている。 一方、北のジンバブエとの国境沿 いに当たるリンポポ炭田では原料炭に相当する高品位炭が賦存する。 図 1.3.13-1 南アフリカの炭田と炭鉱の位置図 (3) 石炭生産 図 1.3.13-2 に 2001~2012 年の石炭生産量の推移を示す。 南アフリカの 2012 年の一般炭生産量は 約 2 億 5,800 万トンで中国、アメリカ、インド、インドネシアに次ぎ世界第 5 位であった。原料炭生産量は、 2011 年が約 160 万トンに対し、2012 年はその半分の約 84 万トンであった。 94 (1,000トン) 一般炭 270,000 原料炭 260,000 250,000 240,000 230,000 220,000 210,000 200,000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (見込) 出典:Coal Information 2013 図 1.3.13-2 南アフリカの石炭生産量推移 (4) 石炭消費・輸出入・需給見通し 図 1.3.13-3、図 1.3.13-4 に南アフリカの一般炭、原料炭の需給推移を示す。一般炭の 2012 年国内消 費量はこの 10 年で約16%増加、原料炭は、約 34%増加している。 一般炭の 2012 年における輸出先上 位 5 ヶ国はインド、中国、台湾、イスラエル、イタリアの順であり、近年は欧州に代わりアジア地域への輸出 量が伸びている。原料炭の貿易規模は一般炭に比べて非常に小さい。 2012 年の輸出量は約 72 万ト ンで、逆に 207 万トンを輸入している。 (1,000トン) 生産量 消費量 一般炭 260,000 210,000 160,000 110,000 60,000 10,000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (見 込) 出典:Coal Information 2013 図 1.3.13-3 南アフリカの一般炭需給推移 95 生産量 (千トン) 消費量 4,000 輸出量 輸入量 原料炭 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (見込) 出典:Coal Information 2013 図 1.3.13-4 南アフリカの原料炭需給推移 (5) エネルギー供給バランスと発電構成 図 1.3.13-5 に南アフリカにおける一次エネルギー供給構成を示す。南アフリカにおける一次エネルギ ーの内、石炭が多くを占め約 71%、ついで石油が約 15%、バイオマス・廃棄物が約 10%を占める。WCA に よると石炭火力発電への依存度は南アフリカが世界第 1 位である。2011年の発電電力量における石炭の 割合は約 95%である。 南アフリカのエネルギー局によれば(2014 年 2 月)、温暖化ガス削減のために発電に占める石炭の割合を 2050 年までに全体の 50%まで減少させる計画を発表している。 これに代わり、一部を再生可能エネルギ ーでまかなうとしている。 120 (Mtoe)石油換算100万ト 100 98.16 80 60 40 20 21.06 3.79 14.63 天然ガス バイオマス ・ 廃棄物 0 石炭 石油 出典:IEA Energy Balances of Non-OECD Countries 2013 図 1.3.13-5 南アフリカの一次エネルギー供給量(2011 年) (6) 輸送インフラ(鉄道・港湾) 南アフリカの石炭輸出は、Richards Bay、Durban、モザンビークの Matola の 3 港で行われ、その 90%以 96 上は Ricchards Bay から輸出され れている。鉄道 道はトランスネット貨物鉄 鉄道(政府が株 株主)があり、山元から Richardss Bay に輸送されている。図 1.3.13-6 に主要鉄道路 路線を示す。 出典:Trransnet Webssite 図 1.3.13-6 南 南アフリカの主 主要鉄道路線 線図 ジンバブ ブエ 南アと周辺 辺国の鉄道路線 線 出典:SA A Coal Road Map M Steeringg Committee,, 2011 図 1.3.13-7 1 南ア アフリカの石炭 炭輸送ルート トと想定される る新規輸送ル ルート 97 (7) 炭鉱開発・投資・権益状況 表 1.3.13-1 に南アフリカで開発中のプロジェクトを示す。 表 1.3.13-1 南アフリカにおける石炭開発プロジェクト プロジェクト名 参 加 企 業 現 状 Vlakplaats Continental Coal 50% ・ F/S 段階 KORES 37% Vlakplaats 13% Penumbra Continental Coal ・ 2012 年第 1 四半期より生産開始(坑内掘)、第 3 四半期 よりフル操業、生産量は 75 万トン/年、輸出用炭 Waterberg Firestone Energy 60% ・ 2012 年より生産開始 Sekoko Coal 40% ・ 生産した一般炭は南ア国営電力会社 ESKOM に出荷 Remhoogte OptimumCoal Holdings ・ 2011 年 8 月に同社が 2 つ開発権を BHP より買収し、開 発を進めている。 ・ 輸出向け 250 万トン/年、ESCOM 向け 40 万トン/年生産 予定。 Moabsvelden Xceed Resources ・ 2012 年 4 月 FS 終了、2013 年採掘権取得 ・ 輸出向け一般炭 66 万 6,000 トン/年、国内向け 89 万ト ン/年を生産予定(2014 年後半を予定) (8) 石炭企業動向 図 1.3.13-7 に企業別の石炭販売トン数の割合を示す。 Sasol、 Anglo、BHP-Billiton、 Exxaro(Eyesiswe)、Exxaro(Kumba Resources)、Xstrata の上位6社で南アフリカの石炭販売トン数(2 億 900 万トン)のおよそ 79%を占めている。 図 1.3.13-7 南アフリカの企業販売トン数 (2012 年) 上位 5 社に入っている Exxaro 炭鉱では、2013 年 3 月にストを行った、このストにより 2013 年は約 210 万トンの石炭生産の損失を蒙った。 98 1.3.14 コロンビア (1) エネルギー政策 コロンビアのエネルギー政策の基となる長期国家エネルギー計画を、UPME(エネルギー鉱業計画局)が 2007 年 6 月に策定した。内容は、コロンビアのエネルギー分野における需要と供給能力について分析し、 2025 年までの基本方針を打ち出している。具体的には、太平洋岸地域における製油所建設プロジェクト、 北部地域における液化天然ガスの再ガス化プロジェクト、石油・石炭製品の輸出増加計画などが取り上 げられている。また、計画ではバイオ燃料に注目しており、国内外での市場開拓の必要性について述べ られている。 石炭に特化した政策は現在のところ策定されていない。UPME は 2006 年に「COLOMBIA PAÍS MINERO-Plan Nacional para el Desarrollo Minero, visión al año 2019」(鉱業国コロンビア-国家鉱業開 発計画、2019 年までの見通し)を策定しており、石炭もこの計画の枠組みに含まれている。 (2) 石炭探査状況 表 1.3.14-1 にコロンビアの石炭埋蔵量を示す。コロンビアの石炭資源量は約 165 億トン、確認埋蔵量 (Measured)は約 70 億トンである。北部の La Guajira、Cesar 地域に大部分が賦存しており、生産もこの地 域で行われている。USGS のデータによると、コロンビア炭の灰分は 6%程度、硫黄分は 1%程度となってい る。内陸部には一部原料炭も賦存しているとみられる。 表 1.3.14-1 コロンビアの石炭埋蔵量(単位 100 万トン) 地域 炭鉱 北部 La Guajira 地域 Cesar Boyaca 内陸 Cundinamarca 部地 域 Norte de Santander Santander Cordoba 西部 Antioquia- Antiguo Caldas 地域 Vale de Cauca 合計 Measured Indicated Inferred Hypothetical 3,933 449 128 27 2,035 1,564 1,963 994 170 683 867 236 645 539 62 120 314 361 56 258 149 381 341 90 226 132 26 41 92 98 11 7,062 4,572 4,237 1,120 出典:鉱山エネルギー省資料を基に JCOAL 作成 表 1.3.14-1 に炭田別の炭質を示す。 99 計 4,537 6,556 1,720 1,482 795 463 722 474 242 16,991 表 1.3.14-2 炭田別石炭品質 地域 炭田 炭鉱 北部 La Guajira 地域 Cesar Boyaca 内陸 Cundinamarca 部地 域 Norte de Santander Santander Cordoba 西部 Antioquia- Antiguo Caldas 地域 Vale de Cauca Cerrejon La Loma Checua-Lenguazaque Soesca Albattacin Tasajero Cimitarra Sur Alto SanJorge Venecia Bolombolo Mosquera El Hoya 水分 灰分 揮発分 炭素 硫黄分 熱量 (%) (%) (%) (%) (%) (Kcal/kg) 11.94 6.94 35.92 49.20 0.43 6,437 10.29 5.61 36.79 47.31 0.59 6,454 3.56 10.00 25.19 61.25 0.80 7,467 3.92 10.43 33.53 52.12 0.69 7,077 2.84 10.17 34.82 52.18 0.85 7,404 4.61 4.61 29.77 61.01 0.62 7234 14.49 9.24 37.55 38.73 1.31 5,156 9.84 11.10 38.45 40.61 1.04 5,606 8.11 16.30 35.18 40.42 1.42 5,588 出典:JOGMEC2012 年海外炭開発高度化調査 (3) 石炭生産 コロンビアの石炭産地は大きく北部地域、内陸部地域、西部地域に分かれており、北部地域では La Giajira 県、Cesar 県、内陸部地域では北 Santander 県 Santander 県、 Boyoca 県、Cundinamarca 県、西 部地域では Cordoba 県、Antioquia 県、 Cauca 県から石炭が生産されている。北部地域の La Giajira 県、 Cesa 県からコロンビアの全石炭生産量の 9 割が生産され、ほとんどが一般炭である。内陸部地域、西部 地域は 1 割足らずの生産量であるが、原料炭が産出される。図 1.3.14-1 にコロンビアの石炭生産量の推 移を示す。IEA のデータによると 2012 年の生産量は 89,451,000 トン(見込)であった。生産量は 10 年前の 約 2 倍強にまで増加し、世界第 9 位の一般炭生産国となっている。 (1,000トン) 一般炭 100,000 原料炭 90,000 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (見込) 出典: IEA Coal Information 2013 図 1.3.14-1 石炭生産量の推移 100 出典:2009 年度 NEDO 高度化調査報告書から 図 1.3.14-2 コロンビアの石炭分布図 (4) 石炭消費・輸出入 2012 年の石炭輸出量は 8,217 万トンで、世界第 5 位であった。ほとんどが一般炭で占める。ちなみに 原料炭輸出は約 52 万トンである。図 1.3.14-3 に輸出量の推移を示すが、輸出量は年々着実に増加して いることが分かる。 全世界の石炭輸出量の約 7%がコロンビアからの輸出である。 101 90,000 (1,000トン) 一般炭(輸出) 原料炭(輸出) 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (見込) 出典: IEA Coal Information 2013 図 1.3.14-3 石炭輸出量の推移 コロンビアの一般炭輸出量は、2012 年に 8,170 万トンまで増加し、前年の 7,79 万トンに対し 4.9% の伸 びを示している。コロンビアの一般炭輸出相手国と輸出量を図 1.3.14-4 に示す。欧米への輸出量が過半 数を占めており、2010 年度までは米国が最大輸出相手国であったが、米国はシェールガス開発の影響 により石炭需要が減退したため、米国向けのコロンビア石炭輸出量は減少し欧州向けが増加した。2011 年はオランダが最大の輸出相手国であったが、2012 年にはイギリスが最大輸出国となっている。 出典:IEA Coal Information 2013 図 1.3.14-4 コロンビアの一般炭輸出相手国 一方、国内における石炭消費量はさほど多くない。表 1.3.14-3 に示すとおり、2012 年におけるコロンビ 102 アの石炭消費量は約 720 万トンであり、これは生産量の 1 割程度である。 表 1.3.14-3 コロンビアの石炭消費量推移 一般炭 原料炭 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 4,043 526 3,542 508 3,786 507 3,110 525 3,659 514 3,298 517 2,487 522 3,048 541 4,201 1,198 3,581 2,621 (1,000 トン) 2012 2011 (見込) 3,961 3,807 2,569 3,472 出典:IEA Coal Information 2013 用途では原料炭を使用したコークス事業が最も多く 43%、続いて発電 13%、鉄鋼業 11%、セメント 11%、製 紙・印刷 5%となっている。 国内の電力は、図 1.3.14-5 に示すとおり水力発電が主であり、石炭火力は 7%にすぎない。 出典:IEA Coal Information 2013 図 1.3.14-5 コロンビアの電源構成 (5) 炭鉱開発・投資・権益状況 コロンビアの主要石炭プロジェクトを表 1.3.14-4 に示す。 新規開発プロジェクトとしては Cerrejon 炭鉱 での増産プロジェクトがある。3,200 万トン程度の出炭量を 4,000 万トンに拡張する計画である。石炭積出 港である Puerto Bolival 港の拡張を行っている。 Drummond は、自社の炭鉱からの総石炭生産量を 2015 年には 3,500 万トンに引き上げる計画であり、 今後、現在の La Loma 炭鉱、El Descanso 炭鉱の拡張、3 つの新規炭鉱開発プロジェクトが進行中であ る。 また、Calenturites 炭鉱、La Jauga 炭鉱、El Tesoro 炭鉱を有する Prodeco の石炭生産量は 1,500 万ト ン/年程度であるが今後新規炭鉱開発、増産の予定である。 103 表 1.3.14-4 主要炭鉱の概要 炭鉱名 出資構成 オペレータ 生産開 2011年 ステー 採炭方法 備考 ジ 始年 出炭量 Cerrejon BHP33%、Anglo American33%、 Xstrata33% Cerrejon 1983年 32.0 生産 露天掘 出資3社によるJV Calenturites Glencore(100%) Prodeco 1993年 8.0 生産 La Jauga Glencore(100%) Prodeco 1986年 5.5 生産 露天掘 Prodeco:Glencoreの 100%子会社 露天掘 El Tesoro Glencore(101%) Prodeco 1.4 生産 露天掘 出炭量は2010年の実績 La Francia Goldman Sachs(100%) CNR 1976年 1.5 生産 露天掘 El Hatillo Goldman Sachs(100%) CNR 2007年 3.4 生産 露天掘 Corrolargo Sur Goldman Sachs(100%) CNR 2014年 0.5 生産 露天掘 Caypa Pacific Coal(100%) Pacific Coal 1983年 1.3 生産 露天掘 親会社はBuluoluo Pacific (カナダ) La Loma Drummond Drummond 1995年 18.9 生産 露天掘 伊藤忠20%、Drummond 80% El Descanso Drummond Drummond 2009年 5.1 生産 露天掘 伊藤忠20%、Drummond 81% CNR:Goldman Sachs100%子会社 2012年5月Valeから権益 購入 ※Xstrata と Glencore は 2012 年 2 月に合併されたが、上記は分けて表示している。 ※Xstrata と Glencore は 2012 年 2 月に合併されたが、上記は分けて表示している。 ※Xstrata と Glencore は 2012 年 2 月に合併されたが、上記は分けて表示している。 (出典 鉱山エネルギー省) (6)輸送インフラ 1)鉄道輸送 北部地域を中心に、今後の石炭生産量を増やす計画である。従って、北部地域の鉄道輸送の強 化は、今後のコロンビアの石炭生産計画に大きく影響するため、政府も重要視している。北部地域の 生産量を増加させるためには、鉄道輸送能力の強化は必須であり、官民一体となり、現在鉄道拡大計 画工事が積極的に進められている。 また、内陸部地域、西部地域でも鉄道開発が計画されている。 104 出典:http://www.u3o8corp.com/images/Projects/Columbia を編集 図 1.3.14-6 鉄道路線図 2)道路輸送 道路輸送は重要な石炭の内陸輸送手段である。しかし、道路輸送の拡大計画では 高速道路の建 設計画はあるものの、石炭専用道路の計画はない。石炭の道路輸送に関しては、一般道路の 2 車線 化工事が進められてはいるようだが、詳細な路線計画は不明である。 3)河川バージ輸送 内陸部地域からはマグダレナ川を利用して石炭輸送が行われている。マグダレナ川に面する主な バージ積出港は、Gamarra 港(河口から 445km)、Wilches 港(河口から 589km)、Barrancabermeja 港(河口から 630km)、Berrio 港(河口から 730km)、Salgar 港(河口から 886km)である。 4)港湾 カリブ海に面した港湾は、地形も緩やかで、港までの内陸輸送も整っており、多くの良港を有して 105 いる る。積み込み能 能力は9,500 0万トン/年で、 、貨物輸出量 量の約90%を取 取り扱ってい いる。太平洋側 側は、アン デス ス山脈に沿っ って長く海岸線 線は伸びてい いるが地形も急峻な箇所が多いため港 港湾の数は少 少なく、大 型船 船が入港でき きるのはValle del Cauca 県 県のBuenaventura の港と とChoco 県の のBahia Solano の港に 限ら られ、積み込み み能力は33万 万トン/年、取 取扱量は貨物輸出量全体の の約10%に留 留まる。 1.3.15 日本 (1) 石炭 炭生産 日本の の石炭生産量 2013 年は 120 1 万 3,630 トンとなった。2012 年は 132 万 1,1122 トンであり、12 万トン 弱の減少 少である。ここ こ数年は概ね 100 万~1300 万トン程度で で推移してお おり、国内自給 給率は 1%未満 満である。 (2) 石炭 炭消費(輸出入 入)・需給見通 通し 図 1.3.15-1~図 1.3.15-4 に我が が国の 2013 年における月 月毎の石炭輸 輸入量と価格 格の推移を示す す。 図 1.3.15-1 日本の 石炭輸入量と価格推移(2013 年) 106 図 1.3.15-2 日本の一 一般炭輸入量 量と価格推移(2013 年) 無煙炭輸入量 量と価格推移(2013 年) 図 1.3.15-3 日本の無 107 図 1.3.15-4 日本の原 原料炭輸入量 量と価格推移(2013 年) 出典 : 図 1.3.15-1~ ~図 1.3.15-4 4 財務省貿易 易統計 上記グ グラフを見ると分 分かるように、 、4 月~5 月 にかけて輸入 入価格は上昇 昇傾向にあった たが、その後 後 11 月頃 までは下 下がっていく。価格の動きは は輸入量にも も関係している るが、4 月と 9 月の原料炭 炭の平均輸入価格を比 べると、22,000 円近く差 差がある。 2013 年 年の日本向け け石炭輸出国を図 1.3.15--5 に示す。60 0%以上が゛豪 豪州からの輸入 入であり、その の後インド ネシア、ロ ロシア、カナダ ダと続くが、上 上位 4 カ国で でほぼ 90%の輸 輸入量となっ っている。 米国 3.47% 国 ベトナム 南ア 中国 1.12 2% 0.53% 0.24% その他 他 0.31% % カナダ ロシ シア 5.15% 6.4 45% 2013年 年石炭輸入量 インドネ ネシア 1億2,1 78万1,060ト 19.15 5% 豪州 63.58% 務省貿易統計 計より 出典:財務 図 1.3.15-5 1 20 13 年の日本 本への石炭輸出 出国 108 (3) 石炭価格 1988 年以降の日本の石炭輸入平均価格の推移を図 1.3.15-6 に示す。 25,000 石炭 20,000 一般炭 無煙炭 15,000 原料炭 10,000 5,000 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 1989 1988 0 出典:財務省貿易統計より 図 1.3.15-6 日本の石炭輸入価格推移 (4) 石炭利用 ① 電力事情 図 1.3.15-7 にわが国の電源構成の推移を示す。2011 年の東北大震災後、ガス火力、石油火力が大幅 に増加するとともに石炭火力もやや増加しており、これまで以上に火力発電が重要な役割を担っているこ とが分かる。 以下、電気事業連合会ホームページを参考に電源別の電源構成比のグラフを示す。 100% 90% 80% 0.8% 10.4% 11.2% 70% 60% 27.9% 地熱及び新エネルギー 水力 石油等 0.9% 0.9% 1.0% 1.0% 0.9% 7.6% 7.8% 8.2% 9.1% 10.0% 9.7% 10.8% 9.1% 25.7% 23.7% 25.9% 13.2% 11.7% 27.4% 28.3% LNG 石炭 1.1% 8.3% 1.1% 8.5% 7.1% 7.5% 29.3% 原子力 1.4% 9.0% 1.6% 8.4% 14.4% 18.3% 29.3% 39.5% 42.5% 50% 40% 24.0% 24.7% 25.6% 24.5% 25.3% 25.2% 24.9% 25.0% 30% 25.0% 20% 10% 25.7% 29.1% 30.8% 30.5% 25.6% 26.0% 29.3% 27.6% 28.6% 10.7% 0% 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 図 1.3.15-8 日本の電源構成 109 2010 2011 1.7% 2012 ② 石炭火力発電所新設動向 常磐共同火力㈱は 2013 年 4 月より勿来発電所 10 号機(IGCC、25 万 kW)が商用運転を開始した。 東京電力㈱広野火力発電所 6 号機(60 万 kW)、常陸那珂火力発電所 2 号機(100 万 kW)が 2013 年 12 月より運転を開始した。何れも超々臨界圧(USC)型を採用した石炭火力発電設備で熱効率 45.2%と世 界最高水準である。 東京電力㈱は広野火力発電所と勿来発電所において、それぞれ 50 万 kW の石炭ガス化複合発電 (IGCC)発電設備の建設を計画している。 また、J-POWER は新日鐡住金㈱と共同で新日鉄住金鹿島製作所に超々臨界圧(USC)発電所の建設 を予定し、特定目的会社である鹿島パワーを設立した。 110 1.4 石炭 炭価格の推移 移 1.4.1 22013 年の石炭 炭価格の推移 移 図 1.44.1-1 の示す通り、一般炭 炭、原料炭共に に低い価格で で推移した。一 一般炭価格は は一時、80 $を を下回っ た。 出典:Arggus API6 = ニ ニューキャッス スル FOB 価格、ICI = Inddonesian Coaal Index API C1 = 豪州原料炭 炭 FOB 価格 格 格の推移 図 1.4.11-1 石炭価格 1.4.2 発 発熱量当たりの の原油・LNG・一般炭価格 格の推移 図 1.44.2-1 に 20088 年から 2013 3 年までの化 化石燃料のカロ ロリー当りの価 価格推移を示 示した。石炭価 価格は、 原油、LN NG に比べて て極めて安価で で安定してい いる。 円/ 1 1,000 kcal 原油 一 一般炭 LN NG 12 10 8 6 4 2 0 出典:日本エネルギー ー経済研究所 所データより JJCOAL 作成 成 図 1.4.2-1 発熱量当た たりの原油・L LNG・一般炭価 価格の推移 111 1.5 中国、インドネシア、ベトナムにおける炭鉱災害状況 1.5.1 中国 図 1.5.1-1 に中国の炭鉱災害統計を示す。2013 年、全国の炭鉱事故は 604 件、死亡者数は 1,067 人と、 前年同期比で 2.5%、22.9%減少した。百万トンあたりの死亡率は 0.288 人(前年同期比で 23.0%減少)で あり、2011 年の 0.347 人から更に改善され、初めて 0.3 人を割った。 (人) (人/100万トン) 7,000 3 死亡者数 6,000 2.5 100万トンあたり死亡率 5,000 2 4,000 1.5 3,000 1 2,000 0.5 1,000 0 0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (出典:国家煤鉱安全監察局および各種報道より JCOAL 作成) 図 1.5.1-1 中国の炭鉱災害統計 1.5.2 インドネシア 表 1.5.2-1 に 2000 年~2011 年のインドネシアの炭鉱災害による負傷者、死亡者を示す。 インドネシアはほぼ全ての炭鉱が露天掘であり、死亡者はおおむね年間 10~20 名程度である。2009 年 は西スマトラにおいて違法操業を行っていた坑内掘炭鉱でガス爆発が発生して 32 名が死亡するなど年 間で 40 名の死亡者が発生した。 表 1.5.2-1 インドネシアの炭鉱災害統計 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 軽傷(人) 77 55 17 45 54 18 69 32 117 135 56 60 重傷(人) 26 25 25 27 25 21 32 35 46 53 49 58 出典:エネルギー鉱物資源省 112 死亡(人) 6 10 17 13 12 19 19 6 9 40 13 14 合計(人) 109 90 59 85 91 58 120 73 172 228 118 132 1.5.3 ベトナム 図 1.5.3-1 にベトナムの炭鉱災害統計を示す。2012 年は坑内 28 人、坑外 6 人、合わせて 34 人が炭鉱 災害により死亡した。残念ながら 2011 年の 16 人の倍以上の数値となった。事故原因は機電・運搬関係が 12 件と最も多く、次いで採炭関連で 5 件、掘進関連で 4 件となっている。ガス爆発も 1 件発生し、4 人が 死亡している。各種記事からの JCOAL 統計では 2013 年の上期だけで VINACOMIN には 16 件の厳重 災害が起き、16 人死亡した。その内、炭鉱災害は 15 件で 15 人死亡、うち坑内掘炭鉱には 11 件で 11 人 死亡した。坑内掘炭鉱での災害は主に機電・運搬関係(6 件)であり、次いで落盤・崩落関係である。 (人) 40 35 30 25 坑外 20 坑内 15 10 5 0 2007 2008 2009 2010 2011 出典:VINACOMIN 図 1.5.3-1 ベトナムの炭鉱災害統計 113 2012 第 2 章 石炭利用の最新動向と地球環境問題 要旨 地球環境問題 本章では石炭利用に対して深い関係のある、特に温暖化を中心にした地球環境問題と、地球温暖化 問題への対応を避けて通れない石炭利用技術の最新動向について述べてある。 地球温暖化環境問題の議論は 2008 年 6 月に行われた G8 エネルギー大臣会合から CO2 排出削減検 討が本格的に開始されてから、2013 年 11 月にポーランドのワルシャワで開催された COP19 まで議論が 継続してきている。 本章ではここに至るまでの議論の経緯を示しているが、議論の流れは、COP19 までになっても 2020 年 以降の将来枠組みに関する議論、将来枠組みにおける条約上の原則の扱いをめぐる先進国と途上国間 の対立構図は全く変わらず、収束が難しい果てしのない議論が延々と続いていると言う事である。日本は 京都議定書の第二約束期間から離脱したが日本の主張するすべての国が参加する枠組みが望まれる。 なお、次回のCOP20 は 2014 年 12 月にペルーのリマで開催される予定となっているが、ここで 2020 年以降の枠組みについて決定されることになる。そこで前進できるかどうかについては全く不透明である と言える。 石炭利用の最新動向 石炭の継続的な使用に対しては、地球温暖化問題への対応をしての使用が不可欠である。石炭火力 での CO2 のような地球温暖化ガス削減には、高効率な発電設備を使用するか、発電設備から排出された CO2 を分離回収して、大気に放出しない手だてを考えるしかない。 本章では、我が国を含む世界各国で開発が進められている効率向上の最新技術とその開発状況、なら びに CO2 の分離・回収・地中貯留技術(CCS 技術)の開発状況について記述してある。 これまで多くの石炭火力発電所で使われてきた微粉炭焚ボイラと蒸気タービンの組み合わせでは、基 本的な効率向上策は蒸気圧力と温度の上昇である。この分野では我が国は世界に先駆けて超々臨界圧 の蒸気条件に対応し、USC と呼ばれる世界に冠たる技術を持っている。我が国では、新たに建設される 事業用石炭火力発電にはすべて USC が採用され、その結果、我が国の石炭火力発電の発電効率は世 界最高となっており、これは世界も認めているところである。この技術は既に中国などにも技術供与され、 今や中国では USC ラッシュとなっている。EU も日本に遅れて独自に USC を開発し、現在は USC の導入 期と言え、米国、アジアの一部の国々でも USC が計画されるようになった。他にも高効率としては IGCC が期待されているが、これについても状況を示す。 また、CCS については、世界の国々、特に CO2 地中貯留が適当な地点を多く持っている EU や米国で の開発が先行しているが、各所の状況について示した。日本でも 2012 年から苫小牧地点にて経産省の 委託を受けた日本 CCS 調査㈱による CCS 一貫試験がスタートしている。この状況についても示したが、 CCS について世界的に導入を支援している GCCSI の公表資料も適宜紹介してある。 114 2.1 地球環境問題への取り組み 2.1.1 地球温暖化問題をめぐる政治的な状況 これまでの地球温暖化に係る政治的な動きの変遷を以下に示す。 ①G8 エネルギー大臣会合(2008) 2008 年 6 月に開催され、洞爺湖サミットの成果を反映し多くの国が参加しての CO2 排出量削減検討が 本格的に開始されている。G8 諸国は 2020 年までの CCS の幅広い普及の開始に向けた技術開発を支 援することを念頭に、各国の国情を考慮しつつ、2010 年までに 20 の大規模な実証プロジェクトを立ち上 げる必要があるという IEA および CSLF(炭素貯留隔離リーダーフォーラム)の勧告を強く支持した。 ②“低炭素社会・日本”をめざして(福田ビジョン 2008) 2008 年 6 月 9 日に発表され、日本における 2050 年までの長期目標として、温暖化ガスの 60~80%の 削減を掲げて世界に誇れるような低炭素社会の実現に向け、基本的な方針が示された。 ③ G8 洞爺湖サミット(2008) 2008 年 7 月に、低炭素社会を目指し 2050 年までに世界全体で温室効果ガス排出量の半減を実現す るために、主要経済国はもちろん世界の全ての国々がこの問題に取り組む必要があるといった提言を行 った。 ④ 低炭素社会づくり行動計画(2008) 2008 年 7 月 29 日に閣議決定され、革新的技術開発については今後 5 年間で 300 億ドル程度を投入 して推進し、CCS 技術は 2009 年度以降、早期に大規模実証に着手して 2020 年までに実用化、また石 炭のクリーン燃焼技術に関しては 2015 年にガス化複合発電の発電効率を 48%とすることを目指すととも に、CCS 技術とあわせて石炭火力発電のゼロエミッション化を目指すとしている。 ⑤ METI 低炭素社会づくり行動計画(2008) 2008 年7月に METI から発表され、石炭利用の高度化についての方針が、発電効率を高め排出量を 削減できるクリーン燃焼技術や、排出された CO2 を大気中に出さずに地中に埋め戻す CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage : 二酸化炭素回収貯留)技術の開発を推進することが示された。また、クリ ーン燃焼技術については、IGCC(石炭ガス化複合発電)の発電効率について 2015 年頃に 48%、長期的 には 57%の達成、IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)の発電効率について 2025 年頃に 55%、長期的に 65%の達成を目指すのに必要な技術開発、実証試験等を進めることも示された。 一方、CCS については、我が国の CO2 排出量の約 3 割を占める火力発電や約 1 割を占める製鉄プロ セスの大幅削減につながり得る技術である。その分離・回収コストを 2015 年頃にトン当り 2,000 円台、2020 年代に 1,000 円台に低減することを目指して技術開発を進めるとともに、2009 年度以降早期に大規模実 証に着手し、2020 年までの実用化を目指す。実用化に当たっては、環境影響評価及びモニタリングの高 度化、法令等の整備、社会受容性の確保などの課題の解決を図るとしている。これらの技術を併せ、最 終的には CO2 の排出をほぼゼロにするために、石炭火力発電等からの CO2 を分解し、回収し、輸送、貯 115 留する一貫したシステムの本格実証実験を実施し、ゼロエミッション石炭火力発電の実現を目指すことが 示された。 ⑥ COP14(2008) 2008 年 12 月 1 日から 12 月 12 日まで、ポーランドのポズナニにて気候変動枠組み条約第 14 回締約 国会議(COP14)および京都議定書第 4 回締約国会合(COP/CMP4)が開催された。 COP14 の位置付けとしては、“将来の枠組みの合意”が期待されている 2009 年開催のコペンハーゲン での COP15 に向けた交渉の中間地点とした。 (a)将来枠組みのたたき台作成 (b)2009 年作業計画への合意 なお、ポズナニでの会議の各国のスタンスには、新興国と先進国とで大きな開きがあったが、 COP15 での合意に向けた政治的メッセージの合意がなされた。 日本政府の評価としては、国際的金融危機の中にあっても気候変動問題に積極的に取り組んでいくと の各国の強い決意の下で議論が行われ、我が国は洞爺湖サミットの議長国としてその成果を国連におけ る成果につなげるべくセクター別アプローチの考えなどについて議論に積極的に参加した。今回の会合 で来年の交渉の道筋を示すことができたこと、2013 年以降の国際枠組みに対する各国の見解について の幅広い議論が真剣に行われたことは来年の COP15 での交渉の準備としても有益であった。 ⑦ G8 首脳会合ラクイラ会議の結果(2009 年 7 月 8~10 日開催、外務省ホームページより抜粋) 首脳宣言として、次のような内容が合意された。 ・2009 年 12 月の COP15 に向けてすべての主要排出国が責任ある形で次期枠組みに参加することを 確保することの重要性を再認識。工業化以前の水準から世界全体の平均気温が 2℃を超えないように すべきとする広範な科学的見地を認識。 ・洞爺湖において合意した世界全体の温室効果ガス排出量を 2050 年までに少なくとも 50%削減すると の目標を再認識し、先進国全体で 1990 年、またはより最近の複数の年と比して 50 年までに 80%、また はそれ以上削減するとの目標を支持。 ・低炭素技術開発・普及を促進し、もって低炭素社会への移行を更に推進することの重要性を強調。 ・途上国の緩和・適応支援、技術の開発・普及のため、官民を問わずにすべての資金を活用すること の重要性を確認。 なお麻生総理は、主要排出国の参加、環境と経済の両立、長期目標の実現を前提に、日本は 2020 年 に 2005 年比 15%の温暖化ガス削減の中期目標を発表した。 ⑧ COP15(2009 年 12 月 20 日 外務省ホームページより引用) ・2009 年 12 月 7 日から 19 日まで、デンマークのコペンハーゲンにおいて、気候変動枠組条約第 15 回締約国会議(COP15)、京都議定書第 5 回締約国会合(CMP5)などが行われた。 ・30 近くの国・機関の首脳レベルの協議・交渉の結果、「コペンハーゲン合意」が作成され、COP 全体 会合でほぼ全ての国が賛同し、採択を求めたが、数ケ国が採択に反対したため、条約締約国会議と 116 して「同合意に留意する」と決定された。 ・コペンハーゲン合意の主たる内容は次の通りである。 1)世界全体としての長期目標として産業化以前からの気温上昇を 2 度以内に抑える。 2)先進国は 2020 年の削減目標を途上国は削減行動を、それぞれ付表に記載する。各国は 2010 年 1 月 31 日までに記載事項を提出する。 3)締約国の行動は測定/報告/検証可能なものとされなければならない。 4)先進国は 2010~2012 年の間に 300 億ドルの新規かつ追加的な資金による支援を共同で行い、ま た 2020 年までには共同して年間 1,000 億ドルの資金動員目標を約束する。 5)2015 年までに合意の実施状況を評価する。 ・日本政府の対応は次のようにする。 日本は全ての主要排出国が参加する公平で実効性のある枠組みの構築と野心的な目標合意を前 提に、2020 年までに 90 年比 25%の削減を目指すことを改めて表明した。また、鳩山イニシャティ ブの具体化として、COP15 における政治合意の成立の際には、温室効果ガスの排出削減など気 候変動対策に積極的に取り組む途上国や、気候変動の悪影響に脆弱な状況にある途上国を広く 対象として、2012 年までの 3 年間で1兆 7,500 億円(概ね 150 億ドル)、そのうち公的資金は1兆 3,000 億円(概ね 110 億ドル)の支援を実施していくことを決定した旨発表し、各国から歓迎される と共に交渉の進展に弾みをつけた。 ⑨ COP16(2010 年 外務省ホームページからの抜粋) 2010 年 11 月 29 日から 12 月 10 日までメキシコのカンクンにおいて、気候変動枠組条約第 16 回締 約国会議(COP16)、京都議定書第 6 回締約国会合(CMP6)が開催された。日本からは松本環境大 臣他が出席した。 ・日本政府の対応 日本政府は COP15 で作成された「コペンハーゲン合意」を踏まえ、米国・中国を含むすべての主要 排出国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みを構築する新しい 1 つの包括的な法的文書の早 急な採択を目標とし、先進国と途上国の排出削減と資金等の支援との間のバランスのとれた COP 決 定の作成を目指した。 ・COP16 の成果 1)「コペンハーゲン合意」に基づく 2013 年以降の国際的な法的枠組みの基礎になり得る、包括的でバ ランスのとれた決定が採択された。 2)その一部として、同合意の下に先進国及び途上国が提出した排出権削減目標等を国連の文書と してまとめた上でこれらの目標等を COP として留意することとなった。これにより我が国が目指すすべ ての主要排出国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みの構築に向けて交渉を前進させることと なった。 3)今後は 2011 年末に南アフリカにて開催される COP17 に向け、作業部会において COP16/CMP6 で の合意内容を基礎とした交渉を続けることとなる。 4)市場メカニズムに関する項目として、CO2 回収・貯留を CDM プロジェクトとして適用することについて、 117 これまではブラジル等から強硬な反対がなされていたが、条件付きながらも CDM として認める決定 文案が締約国会合に提案され、政治的判断を求めることになった。次回の京都議定書第 7 回締約 国会合に本案が提案される。 ⑩ COP17(2011 年 外務省ホームページからの抜粋) 2011 年 11 月 28 日から 12 月 11 日まで南アフリカのダーバンにて、気候変動枠組条約第 17 回締約 国会議(COP17)、京都議定書第 7 回締約国会合(CMP7)等が行われた。 ・日本政府の主要な対応 1)すべての主要排出国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みを構築する新しい 1 つの包括 的な法的文書の早急な採択という目標に向けて交渉に臨んだ。途上国が求めていた京都議定書の 第二約束期間について日本は参加しないとの立場を貫いた。 2) 東日本大震災という困難にあっても日本国民は気候変動問題に積極的に取り組んでいる事を説 明した。 ・COP17 の主要な成果 将来の枠組みへの道筋、京都議定書第二約束期間に向けた合意、緑の気候基金、カンクン合意の 実施のための一連の決定において 4 つの成果があった。 1)将来の枠組みへの道筋 法的文書を作成するための「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会」 を立上げ、2015 年中に作業を終えて、議定書、法的文書または法的効力を有する合意成果を 2020 年から発効させ、実施に移すとの道筋に合意した。 2)京都議定書 第二約束期間の設定に向けた合意が採択されたが、日本ならびロシア、カナダなどはは第二約 束期間に参加しないことを明らかにした。 なお、森林吸収源等については、各国の状況を反映した算定方式が適用され、日本のこれまでの 主張が大筋で反映された形で合意した。 3)緑の気候基金の基本設計に合意した。新たな市場メカニズムについては国連が管理を行うメカニ ズムの方法・手続の開発、各国の国情に応じた様々な手法の実施に向けて検討を進めることで合 意した。 4)次回の COP18 はカタールのドーハで開催されることになった。 なお、CCS を CDM として実施する場合の手続きと手順について CCS の計画書、貯留サイトの選定、 リスク評価、環境へのインパクト、モニタリング要件、資金的要件などについての文書を整備すること を義務づけ、さらに、検証機関の役割なども確認された。 ⑪ COP18 の結果(METI 資料からの抜粋) 2012 年 11 月 26 日~12 月 8 日にカタール・ドーハで開催された。日本政府からは長浜環境大臣 他が参加。当初の予定を 1 日延長し、ドーハ気候ゲートウエイをはじめとする一連の合意を採択し た。 118 (1) 2020 年以降の将来枠組みに関する議論 将来枠組みにおける条約上の原則の扱いをめぐる先進国と途上国間の対立構図は変わらず。 (2) 京都議定書第二約束期間 EU、豪州等のみに削減義務がかかる第二約束期間が成立した。CDM の京都メカニズムについては、 我が国を含む第二約束期間不参加国はその国際取引が認められない事になった。 (3) 2020 年までの長期的協力 2020 年までの長期的協力に関する作業部会は終了し、2020 年の削減目標等に関する議題は将来 枠組みの検討と合わせて議論される。 2020 年目標の公式化、前提条件の取り外し等は我が国を含む先進諸国の反対により回避した。 その他については次のように決められた。 ・二国間オフセットクレジット制度 日本が提案する二国間オフセットクレジット制度を含む将来的な市場メカニズムを位置づける枠組 みに関する技術的な手続の検討が開始された。 モンゴルと 2013 年早期の二国間オフセットクレジット制度の開始を確認した。また バングラデシュ、インドネシア、ベトナム等との二国間協議も実施された。 ・資金支援 先進国全体としての短期資金(2010~12 年)達成を認知。先進国全体の供与目標 300 億ドルに対 して実績は 336 億ドル(日本は 133 億ドル)に達した。 ・その他 気候技術センターネットワークの諮問委員会の構成が確定。日本からも委員を出す。 日米産業界が連携してドーハ・ダイアログを開催したが、日、米、EU、墨等の主要国等が参加。 ・次回の COP19 はポーランドで 2013 年 11 月中に開催予定とされた。 今後の国際交渉の流れは下記の通りとなり、2020 年末にはすべての国が参加する法的枠組み発行を目 指す事になった。 ・2020 年以降の将来枠組みのあり方についての議論・・・・2015 年までに妥結予定 ・2020 年の削減目標に関する議論・・・・・目標明確化の作業を継続し、2014 年 1 月に削減目標の隔年 報告書を提出し国際レビューを開始。2020 年目標。 ・京都議定書第二約束期間・・・・・・・・・・我が国は不参加を確定したが、参加国*は先進国全体で 90 年比 25~40%削減に沿った形で 2014 年までに目標値を見 直す。 * EU、スイス、ノルウェー、豪州等 我が国の二国間オフセットクレジット制度についての各国との協議状況は次の通りである。 ・2011 年からアジア諸国を中心に制度構築に向けた政府間協議を開始 ・モンゴル、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアとは 2013 年早期の運用開始に向けて協議を開始 ・ドーハでは上記 4 ケ国に加え、タイ、ラオス、カンボジア、ケニア、エチオピアと二国間協議を実施 なお第二約束期間に参加しない我が国は次のようになる。 119 ・第一約束期間の調整期間(2013 年~2015 年後半)では CDM クレジット、JI クレジットの獲得、国際 排出量取引による京都メカニズムのクレジットの国際的な移転や獲得を引き続き行う事が出来る。 ・第二約束期間では国際排出量取引による京都メカニズムクレジットの国際的な移転や獲得はでき ない。ただし今後登録される CDM プロジェクトに参加しクレジットを獲得することはできる。 ⑫ COP19 の結果(METI 資料からの抜粋) 2013 年 11 月 11 日~23 日にポーランドのワルシャワにおいて開催された。日本政府からは石原 環境大臣他が出席した。 最終的に以下の一連の決定を含む COP および CMP の決定などが採択された。 (1)ダーバン・プラットフォーム特別作業部会の作業計画 (2)気候資金に関する一連の決定 (3)気候変動の悪影響に関する損失と被害 2020 年以降の枠組みについて、COP はすべての国に対して自主的に決定する約束草案のため の国内準備を開始し、COP21 におけるすべての国が参加する将来枠組みの合意に向けた準備を 整えることになった(これは今回の COP の日本の目標でもあった)。 日本政府の対応は次のとおりである。 (1)2020 年以降の新たな法的枠組みについての 2015 年までの合意 (2)第一約束期間の日本の CO2 排出削減実績は 8.2%が見込まれ、6%の削減目標の達成の見通し。 2020 年の削減目標を 2005 年比 3.8%減とすることを説明。 (3)技術革新、日本の低炭素技術の世界への応用、途上国に対する 2013 年から 2015 年までの 3 年 間に1兆6千億円の支援を表明。 (4)二国間クレジット制度に署名した8カ国による JCM 署名国会合を開催。 今次会合の主な成果として、政府は次のように示している。 (1)2020 年以降の枠組みについて、COP はすべての国に対して自主的に決定する約束草案を COP21 に先立って示すことを招請。また、COP20 の会合においてハイレベル閣僚対話を開 催することなどのスケジュールが決定された。 (2)資金についてはこれまでの先進国の資金の認知や、途上国は気候基金への拠出についての目 標設定を織り込むようにとの主張などがなされた。 (3)気候変動の悪影響に関する損失・被害については COP22 で見直すことを条件にワルシャワ国際 メカニズムを設立。 (4)次回の COP20 はペルーが議長国を努めリマで開催される。また COP21 はフランスが議長国を努 めることが決まるとともに、セネガルが COP22 の議長国を努める意思があることを表明した。 2.1.2 各国の温室効果ガス削減目標ならびに温暖化対策に関連する主な税制 国連環境計画(United Nations Environment Program、UNEP)公式サイトに掲載されている最新の主 120 要各国の温室効果ガス削減目標を示す。ただし、2013 年版にはこれまでのような各国が表明した削減率 は明記されていないので 2012 年版に示されている目標排出量削減値を示す。ただし日本については COP19 での表明数値を示した。 表 2.1-1 国連環境計画公式サイト記載の温室ガス目標値(2020 年にて、MtCO2e) (UNEP The Emission Gap Report 2012) 国名 日本 項目 目標 米国 EU―27 中国 ロシア 豪州 インド 目標 目標 目標 目標 目標 目標 内 容 2020 年にて 2005 年レベルの-3.8% 2013 年の COP19 にて表明(注:本数字は UNEP 公式サイトにはま だ明記されていない) 2020 年にて 2005 年レベルの-17% 2020 年に 1990 年レベルの-30% 2020 年に-40~-45% ただしベース年は与えられていない。 1990 年レベルで 2020 年には-25% 2000 年レベルで 2020 年には低めで-25% 目標設定なく、自身の努力として示している。 インドは 2020 年に 2005 年レベルに比較して GDP インテンシティー(GDP あたりの排出 量)を 20~25%削減する努力をする。 なお各国の温暖化対策に関連する主な税制について、表 2.1-2 に示す。ここに示すように、 1990 年のフィンランドでの炭素税導入を皮切りに、EU 各国で導入が進められている。 IEA Electricity Information 2011 によると、フィンランドでの石炭火力発電の割合は 2009 年に約 26% あり、またデンマークでは約 80%もあるが、VGB 資料によると両国で今後計画されている石炭火力は示さ れておらず、石炭への課税が大きいことも理由の 1 つかも知れない。なお、石炭については事業用を前 提としており、また、国によっては各種減免措置もある。 豪州については、議会はギラード首相提出の 2011 年 7 月 10 日に CO2 に対する課税を行う法案を可 決し課税は 2012 年 7 月 1 日から開始され、炭素税額は当初は CO2 トン当たり 23 豪ドルからスタートし、 その後実質 2.5%/年で増額される。また、2015 年には排出権取引に移行するものであり、2020 年には温 暖化ガスの 1 億 6,000 万トンの削減が期待されるとしていた。しかし選挙により政権がラッド首相に移行し た後、ラッド首相は公約通り炭素税を 2014 年に廃止し、1 年早く温暖化ガス排出権取引制度への移行を 1 年前倒しすると発表している。 表 2.1-2 主要国の温暖化対策に関連する主な税制 (環境省税制のグリーン化資料 H23 年度税制改正参考資料 H22 年 11 月 9 日 税制改正参考資料より 抜粋し JCOAL にて一部追加) 年 1990 年 1991 年 1991 年 1992 年 1992 年 1993 年 1996 年 国 名 フィンランド スエーデン ノルウェー デンマーク オランダ イギリス オランダ 温暖化対策関連税制状況 炭素税導入 二酸化炭素税導入 二酸化炭素税導入 二酸化炭素税導入 一般燃料税導入 炭化水素油税 規制エネルギー税 石炭に対する課税 (円/石炭1トン) 2,982 15,997 792 887 121 1999 年 1999 年 2001 年 2001 年 ドイツ イタリア イギリス ドイツ 2004 年 オランダ 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2012 年 7 月 ギラード首相 により導入 EU ドイツ フランス スイス 豪州 2012 年 10 月 日本 鉱油税の段階的引き上げ 鉱油税の改正 気候変動税導入 再生可能エネルギー法による固定買取制度 開始(FIT) 一般燃料税を既存のエネルギー税制に統合 (石炭のみ燃料税として存続) EU 域内排出量取引制度開始 鉱油税をエネルギー税に改組(石炭を追加) 石炭税導入 二酸化炭素税導入 二酸化炭素に対する課税 地球温暖化対策課税 1978 年から導入されている石油石炭税に上乗 せで課税される。 税率は 3 段階で引き上げられ、2016 年から CO2 排出量1トン当り 289 円になるように石炭に 670 円が上乗せされる。 501 228(EU 最低税率の場合を示す) 502 CO2 大量排出企業に 24.15 豪ドル/ トンを課税したが、政権が移行した ラッド首相は 2014 年に廃止と発表 し、温暖化ガス排出量取引制度へ の移行を 1 年前倒しすると発表。 石炭 1 トン当たり 2012.9 末まで 700 円 2012.10.1 から 920 円 2014.4.1 から 1,140 円 2016.4.1 から 1,370 円 注:フィンランドは付加税 2,912 円、戦略備蓄料 70 円の合計、デンマークは石炭税 12,720 円、CO2 税 3,277 円の合計 参考までに、日本の場合は図 2.1-1 のように計算される。(環境省ホームページより) 図 2.1-1 日本の地球温暖化対策課税(引用 環境省ホームページ) 2.2 世界の高効率石炭火力の最新動向 2.2.1 世界の USC の実績と計画 (1)日本の状況 ①高効率火力発電の現状及び新たな開発 2013 年 3 月末時点で、運転中の 10 電力、卸電力ならびに共同火力の合計石炭火力発電容量は 36,717MW であるが、このうち運転中の USC は 18,360MW(出力比で 50.0%に相当)と、約半分は USC である。このように日本の発電技術は、世界のトップランナーであり、その効率も世界トップの数値を実現 している。 122 表 2.2-1 に示すように、日本には 23 基の USC があり、更に 2 基の USC が 2013 年 12 月に運転開始 済みである。 表 2.2-1 日本の USC 火力実績及び計画予定 発電所名 会社名 碧南3号 能代2号 七尾大田 1 号 原町 1 号 松浦 2 号 三隅 1 号 七尾大田 2 号 原町 2 号 橘湾 橘湾 1 号 敦賀 2 号 橘湾 2 号 苅田新1号 碧南 4 号 苫東厚真 4 号 碧南 5 号 磯子新1号 苓北 2 号 常陸那珂 1 号 中部電力 東北電力 北陸電力 東北電力 J-POWER 中国電力 北陸電力 東北電力 四国電力 J-POWER 北陸電力 J-POWER 九州電力 中部電力 北海道電力 中部電力 J-POWER 九州電力 東京電力 広野5号 舞鶴 1 号 磯子新 2 号 舞鶴 2 号 広野 6 号 常陸那珂 2 号 東京電力 関西電力 J-POWER 関西電力 東京電力 東京電力 定格出力 MW 700 600 500 1,000 1,000 1,000 700 1,000 700 1,050 700 1,050 360 1,000 700 1,000 600 700 1,000 主蒸気圧力 MPa 24.1 24.1 24.1 24.5 24.1 24.5 24.1 24.5 24.1 25.0 24.1 25.0 24.1 24.1 25.0 24.1 25.0 24.1 24.5 600 900 600 900 600 1,000 24.5 24.5 25.0 24.5 24.5 24.5 蒸気温度 ℃ 538 / 593 566 / 593 566 / 593 566 / 593 593 / 593 600 / 600 593 / 593 600 / 600 566 / 593 600 / 610 593 / 593 600 / 610 566 / 593 566 / 593 600 / 600 566 / 593 600 / 610 593 / 593 600 / 600 600 595 600 595 600 600 / / / / / / 600 595 620 595 600 600 運転開始 年 / 月 ’93/4 ’94/12 ’95/3 ’97/7 ’97/7 ’98/6 ’98/7 ’98/7 ’00/6 ’00/7 ’00/9 ’00/12 ’01/7 ’01/11 ’02/6 ’02/11 ’02/4 ’03/6 ’03/12 ’04/7 ’04/8 ’09/7 ’10/8 ‘13/12 ‘13/12 (JCOAL にて調査作表) 更なる石炭火力の高効率を目指して、図 2.2-1 に示すように次世代の高効率発電が検討され、実証さ れつつある。IGCC はガス化技術とガスタービンの高効率化を組み合わせたクリーンで高効率な石炭火 力であり、燃料電池と組み合わせた IGFC により更なる効率向上が期待されている。 123 出典:クリーンコール部会 図 2.2-1 次世代高効率発電 EU では既に 1998 年より 700℃級の先進型超々臨界圧石炭火力(A-USC)の研究開発が進められてい るが、我が国でも A-USC の研究開発が 2008 年からスタートした。経済産業省の下に重電メーカー6 社、 材料メーカー1 社、制御システムメーカー1社ならびに電中研、物質材料研究機構が開発体制を組み、 研究期間は 9 年間で、前半の 5 年間にてシステム全体の基本設計関連、後半の 4 年間で材料の長期高 温試験を実施する予定である。 開発の概念は図 2.2-2 に示すように、蒸気温度 700℃級、蒸気圧力 35MPa を見据え、目標とする送電端 熱効率は 46~48%以上(高位発熱量ベース)に設定しており、現在実用化されている USC の送電端熱 効率 42%に比較し、絶対値で 4~6%の向上が期待されている。 図 2.2-2 先進超々臨界圧火力発電の概念(METI 資料) 開発項目とスケジュールの概要は表 2.2-2 のとおりであるが、ここで行われる実用化要素技術開発終 124 了後の 2017 年から、実用化を目指した 10 万時間試験に移行する計画としている。 表 2.2-2 A-USC 開発項目とスケジュール システム設計 要 素 開 発 基本設計、配置、経済性 大径管、伝熱管材料開発 高温長期材料試験(3~7 万時間) 材料開発 ボイラ 材料製造性検証 タービン 材料開発 高温弁 構造・要素・材料開発 実缶試験・回転試験(高温弁を含む) 溶接技術開発、曲げ試験 材料改良試験 ロータ、ケーシングなどの溶接技術 高温長期材料試験(3~7 万時間) 試設計、試作 設備計画。設備設計・製造、試験 終了時期 2011 年 2012 年 2016 年 2012 年 2012 年 2016 年 2012 年 2016 年 (METI 資料から JCOAL にて抜粋) ②日本の発電に占める石炭火力の位置付け 図 2.2-3 には日本の総発電量ならびに、このうちの石炭発電量の推移を、電力事業連合会資料から示す。 総発電量は 2010 年をピークにやや減少傾向となっている。2011 年の東日本大震災以後、原子力の運転 停止に伴って天然ガス発電量が急増加しているが、石炭発電量は微増に止まっている。石炭火力は震 災以前からほぼフルロードに近い状況で運転していたので、震災後の発電の増加は難しいためである。 発電量 12000 10000 億 8000 kWh 6000 4000 2000 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 総発電量 石炭火力 天然ガス火力 図 2.2-3 日本の総発電量ならびに石炭発電量の推移 電力事業連合会資料より JCOAL にて作成 図 2.2-4 には、日本の石炭火力ならびに天然ガス火力の発電量比率を示す。2005 年以降は両者とも 25~30%の間でほぼ一定になっていたが、大震災以降は石炭はほぼ 25%あるいは微増である。一方天 然ガスは 2005 年を除いて石炭より発電量割合が多いが、大震災以降は特に急増している。これは大震 災で運転が停止された原子力を天然ガスが埋め合わせた事を意味している。 125 発電割合 % 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 石炭火力割合 天然ガス火力割合 図 2.2-4 日本の石炭発電比率および天然ガス発電比率の推移 電力事業連合会資料より JCOAL にて作成 (2)EU の状況 ①高効率火力発電の現状及び新たな開発 表 2.2-3 に EU の USC 火力実績及び計画予定を示すが、EU では現在は USC の導入も進み、ここに 示す USC 総容量はキャンセルや延期のプロジェクトを除くと 25,821MW になり、USC がかなり進んできて いることがわかる。ドイツではすでに 1,100MW、600℃/605℃といった最新の大容量機が運転に入ってお り、また日本の磯子火力と同様の 600℃/620℃と言った蒸気温度もドイツやオランダで採用されている。 なお、イタリアの ENEL では 660MW 機が多く採用されているが、これは標準機との位置付けと考えられ る。他にもチェコやスロベニアにも 2014 年以降に USC 計画が出てきている。 なお、2014 年建設を目指して A-USC 700℃石炭火力を NRW PP700 計画として開発中である。開発目 標としては 540MW、主蒸気温度 700℃、プラント効率 50%(LHV)であるが、当初の計画からは遅れている が、本プラントがフィージブルと言う事になれば 2015 年~2020 年に建設されるとしている。 国名 ドイツ 表 2.2-3 EU の USC 火力実績及び計画予定 発電所名 会社名 定格出力 主蒸気 MW 圧力 MPa Niederaussen 975 26.5 Boxberg R Vattenfall EU 670 31.5 Datteln #4 E.ON 1,100 28.5 kraftwerke Moorburg# 3 Vattenfall 820 30.5 EU Moorburg# 4 Vattenfall 820 30.5 EU Neurath F RWE 1,100 27.2 Power AG Neurath G RWE 1,100 27.2 Power AG Walsum#10 STEAG 750 25.8 Lünen Trianel 813 28.8 126 主蒸気/再 熱蒸気温度 ℃ 565/600 600/600 600/620 凍結中 600/610 ’13~14 600/610 ’13~14 600/605 ’12 600/605 ’12 600/620 600/610 ’14 以降 ’13 運転開 始年 ’02 Wilhelmshaven Lubmin ポーラン ド Karlsruhe (RDK 8) Hamm MANNHEIM 9/CHP Lagisza Belchatow Ⅱ オランダ Patnow Ⅱ Opole Kozienice Maasvlakte#3 オランダ オースト リア スペイン イタリア イタリア チェコ Centrale,Rotterdam Eemshaven Dumrohr As Pontes Torrevaldaliga Nord #1 Torrevaldaliga Nord #2 Torrevaldaliga Nord #3 PORTO TOLLE 1/REPLACEMENT PORTO TOLLE 2/REPLACEMENT PORTO TOLLE 3/REPLACEMENT Ledvice5 スロベニ ア SOSTANJ GmbH Electrabel Dong Energy EnBW 800 2x800 600 600 ’13 キャンセル 910 600 ’14 RWE GKM PKE Elektrowni a,Belchato w PAK PGE Enea E.ON BENELUX Elektrabel 2x820 910 460 858 600 ’13-14 ’13 ’09 ’11 460 2x900 1,000 1,100 600 RWE 600 600 600/620 ’14 ’17 ’17 ’12 800 600 ’12 Endesa ENEL 2x800 800 2x350 660 600 600 600 ’12 ’16 ’08 ’08 ENEL 660 ’08 ENEL 660 ’09 ENEL PRODUZI NE ENEL PRODUZI NE ENEL PRODUZI NE CEZ 660 凍結 660 ’13 660 ’13 660 ’13-14 TERMOEL EKTRARN A SOSTANJ (TES) 600 ’14 28.5 (JCOAL にて調査・作成) ②EU の発電に占める石炭火力の位置付け 図 2.2-5 には EU の総発電量ならびに石炭発電量の推移を示す。総発電量は 2010 年以降ほぼ一定で 推移しているが、石炭火力発電がやや増加し逆に天然ガスが減少傾向である。これは米国で余剰となっ た安い石炭が EU に輸出され、その分石炭火力による発電量が増加しているためである。 127 4000 3500 発電量 TWh 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 1973 1980 1990 2000 2005 2007 2008 2009 2010 2011 2012e 総発電量 石炭発電量 天然ガス発電量 図 2.2-5 EU の総発電量ならびに石炭発電量の推移 IEA Electricity Information 2013 より JCOAL にて作成 図 2.2-6 には石炭発電割合と天然ガス発電割合の推移を示すが、石炭発電割合は 1980 年以降減少 の一途をたどり、逆に天然ガス割合は 1990 年以降増加し、2010 年には両者は近接した。しかし 2011 年 にいたり石炭発電割合が増加した一方、天然ガス割合が減少している。これは日本の大震災でドイツが 原子力を見直し、石炭火力を増加させた事もあると推定される。 発電割合 50 % 30 45 40 35 25 20 15 10 5 0 年 2012e 1973 1980 1990 2000 2005 2007 2008 2009 2010 2011 石炭発電割合 天然ガス発電割合 図 2.2-6 EU の石炭発電比率および天然ガス発電比率の推移 IEA Electricity Information 2013 より JCOAL にて作成 (3)中国の状況 (清華大学 2012 年 9 月 Workshop on Advanced USC Coal-fired Power Plants,Vienna の発表から引用) 中国の 2011 年における発電内訳は図 2.2-7 のとおりであり、石炭火力が全体の 78%を占めている。 128 天然ガス 4% 石油 9% その他 9% 石炭 78% 図 2.2-7 中国の 2011 年における発電内訳 2005 年から 2011 年までに建設された発電量を図 2.2-8 に示すが、この間においては総発電量で約 2 倍、火力発電でも同じく約 2 倍と、めざましい増加を示している。 発電量 1200 1000 GWh 800 600 400 200 0 2005 2006 合計 2007 2008 火力発電 2009 2010 2011 水力発電 図 2.2-8 中国の 2005 年~2011 年までに建設された発電設備 また、2011 年における石炭発電の内訳を図 2.2-9 に示すが、設備は 72.5%、発電量としては 82.5%が石 炭によるものであり、他国に比較して極めて高い数字であると言える。 129 割合 % 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 設備容量 発電量 石炭 その他 図 2.2-9 2011 年における中国の石炭発電設備及び石炭による発電量 中国としてもこの発電量の伸びに伴う温暖化ガスの上昇には気を使っており、効率向上、低炭素燃料 との混焼ならびに CCS を視野に入れている。このうち、石炭火力からの CO2 削減の、最善で最も経済的 な方法は USC であるとして、積極的にその建設を促進している。 また、高効率モデルプラントを設定して、ここに新技術を投入しての効率改善を図っている。モデルプ ラントとして設定されたのは外高橋 3 号発電所 1,000MW ユニット×2 である。 ここに投入された新技術としては、主要項目例として下記などが挙げられている。 ・脱硫のエネルギーバランスの改善 ・空気予熱器リーク低減 ・蒸気タービン背圧調整 ・再熱器の圧力損失低減 など 表 2.2-4 には、外高橋 3 号発電所 1,000MW ユニットパラメーターを示す。 表 2.2-4 外高橋 3 号 1,000MW ユニットパラメーター 項目 設計数値 流量 2733t/h 計画主蒸気パラメー 圧力 25.86MPa ター 温度 600℃/600℃ 計画発電効率(送電端) 42%(低発熱量基準) 負荷率 81% 実績運転データ 平均発電効率 (2011 年末) 44.5% (発電端) (運転開始 2008 年 3 月、6 月) 図 2.2-10 には外高橋 3 号発電所 1,000MW ユニットの写真を示すが、貯炭場もドーム貯炭が採用され、 石炭コンベヤーなどにもカバーが取り付けられており、また緑地帯等も見られ、日本の石炭火力をモデル にしているようにも見える。 130 図 2.2-10 外高橋 3 号発電所 1000MW ユニット 図 2.2-11 には、中国の全国平均の石炭火力発電の送電端効率(低発熱量ベース)の向上を示す。2005 年には 33.20%であったものが、2011 年には 37.22%まで向上している。これは経年火力の廃止と新鋭火力 の建設による結果である。すなわち、2010 年までの第 11 次 5 カ年計画で小容量低効率の老朽石炭火力 が 76,830MWe 廃棄され、さらに今後数年をかけて、200~300MWe の 100,000MWe に及ぶ老朽火力の 廃止が決まっている。また 2010 年までに 660MWe の USC が 76 基計画され、そのうち既に 35 基が運転 に入っており、94 基の 1,000MWe の USC が計画され既に 47 基が運転に入っている事などがあり、全般 の効率が実現されてきている。 ( 発 電 38 効 37 率 % 36 35 ) 送 電 34 端 L 33 H 32 V 31 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 図 2.2-11 中国の全国平均の石炭火力発電の発電端効率の向上 中国の USC は 3 大メーカー(ハルピンボイラ、東方ボイラ、上海ボイラ)で建設が推進されているが、す でに中国も本格的に USC 時代となっている。中国に適用されている USC は 2 つの標準設計である 131 660MW と 1,000MW ユニットのみとし、蒸気条件も表 2.2-5 に示すように一律に設定されている。 表 2.2-5 中国の USC 基本計画数値 計画数値 1,000MWe 660MWe 温度(℃) 605 605 主蒸気 圧 力 26.25 26.15 (Mpa) 温度(℃) 603 603 再熱蒸気 圧 力 4.79 4.64 (Mpa) 送電端効率 44.63%以上 (低発熱量ベース) 中国ではさらに主蒸気温度を 700℃とし、2 段再熱を採用した A-USC の開発が 2020 年の実用化を目 標にスタートしている。送電端効率は 52%程度(低発熱量ベース)で、そこに使用する材料開発も進めら れているが、A-USC のボトルネックは高温に対応した主蒸気管や再熱蒸気管が高コストであることであり、 この克服が成功のカギであるとしている。このために図 2.2-12 に示すように、高圧タービンをボイラ上部の 最終過熱器近くに配置し、高価な主蒸気管を極力短くする試みも行っているとの事であるが、高圧タービ ンの振動を如何に小さくするかがポイントとなりそうである。 高圧タービン 低圧タービン 図 2.2-12 中国にて検討されている A-USC 配置計画 なお、中国での石炭火力の最新の排ガス規制については、27~28 ページ表 1.3.2-13~表 1.3.2-15 を 参照されたい。 132 (4)韓国の状況 (引用 APEC Clean Fossil Energy Technical and Policy Seminor 2012, Brisbane) 韓国は 2012 年時点で世界第 7 位の石炭消費国であり、世界第 3 位の石炭輸入国である。高効率火 力発電の現状及び新たな開発に関しても、韓国は石炭が引き続き主要燃料と位置付けられており、2010 年には石炭発電割合が 31.8%であったものが 2020 年では 29.4%、2030 年には 29.2%と、原子力発電と 天然ガス発電との戦略的にバランスをとった配分を考えている。 韓国での石炭火力発電に関わる技術開発動向を図 2.2-13 に示す。2020 年前には 1,000MW 容量 USC ならびに IGCC の商用化を目指し、CCS も大容量デモプラントの運転を開始することを目標としてい る。 図 2.2-13 韓国での石炭火力発電に関わる技術開発動向 出典:2012 APEC 資料から JCOAL にて作成 韓国の石炭火力発電の蒸気条件の向上の歴史を図 2.2-14 に示すが、1990 年代から超臨界圧発電 (蒸気温度 538℃クラス)が導入され、2000 年代中ごろから USC フェーズ 1(蒸気温度 593℃クラス)が 導入開始されている。さらに 2010 年代中頃からフェーズ 2(蒸気温度 610~620℃クラス)が導入予定と なっている。 出典:2010 APEC KOSEP 発表資料 図 2.2-14 韓国の石炭火力での蒸気条件の変遷 133 一方、韓国の最近の石炭消費傾向として、低品位炭の利用拡大に注力しており、図 2.2-15 に示すよう に、発熱量の低い石炭の使用が増え、使用炭種全体の発熱量も低下傾向である。特に 2010 年からはそ の傾向が顕著になってきている。 % 平均石炭発熱量 kg /kg 消費石炭割合 6000 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 5900 5800 5700 5600 5500 5400 5300 2006 2007 2008 2009 2010 5700Kcal/kg以上 5000-5700Kcal/kg 5000Kcal/kg以下 平均発熱量Kcal/kg 図 2.2-15 韓国における発電用石炭の発熱量の変化 出典:2012 APEC 資料から JCOAL にて作成 今後の石炭使用についても新設火力では低発熱量炭を 50%以上混焼することとしているが、石炭混 焼技術や強いスラギング性のある石炭の使用等も検討されている。これらの技術を適用する事により瀝青 炭で設計された 500MW、800MW ユニットボイラで低発熱量炭を 30%混焼する運転が行われている。また 瀝青炭+亜瀝青炭で設計されたボイラで亜瀝青炭混焼率を 30~70%まで増加した運転もなされている。 具体的には表 2.2-6 の計画が示されている。 表 2.2-6 韓国の石炭火力における低品位炭混焼率 石炭火力発電所 使用石炭種類 最大亜瀝青炭混焼率 Young Hung #3,4 瀝青炭と亜瀝青炭の混焼 50% Dang Jin #5,6 瀝青炭と亜瀝青炭の混焼 30% Samchunpo#5,6 瀝青炭と亜瀝青炭の混焼 70% 出典:2010APEC KOSEP 発表資料 この混焼率を達成するために、石炭の混焼方法の改善、スートブロワーの追加とスートブロワーの運転 頻度などの改善、強スラギング性の石炭の燃焼時間の調製等を行っていると報告されている。 表 2.2-7 にはこれまでの韓国の USC 実績を示す。2014 年以降に USC の計画が多いが、蒸気温度は 泰安発電所 9、10 号機の 1,050MW 機で 600℃/610℃が選択されている。本ユニットは日立製作所が受 注したと発表している。(2012 年 2 月日立ホームページ) 134 表 2.2-7 韓国の USC 実績 発電所名 会社名 唐津#5,6 唐津#7,8 唐津#9,10 泰安#7,8 泰安#9,10 霊興島#1,2 霊興島#3,4 霊興島#5,6 東海北平 東部建設 IPP 東西発電 東西発電 東西発電 西部発電 西部発電 南東発電 南東発電 南東発電 STX 東部建設 定格出力 MW 500 500 1,000 550 1,050 800 870 2 x 870 2 x 595 2 x 600 主蒸気圧力 MPa 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 25.0 蒸気温度 ℃ 566/593 566/593 600/600 566/593 600/610 566/593 566/593 566/593 運転開始年 ’02 ’07 ’15 ’07 ’16 ’04 ’08 ’14 ’16 ’17 JCOAL にて調査作成 図 2.2-16 には韓国の総発電量ならびに石炭発電量の推移を示す。総発電量は一貫して増加傾向と なっている。 発電量 600 500 TWh 400 300 200 100 0 1973 1980 1990 2000 2005 2007 2008 2009 2010 2011 2012e 総発電量 石炭発電量 天然ガス発電量 図 2.2-16 韓国の総発電量ならびに石炭発電量の推移 IEA Electricity Information 2013 より JCOAL にて作成 図 2.2-17 には石炭発電割合と天然ガス発電割合の推移を示すが、2010 年には石炭ならびに天然ガ スとも発電割合は大きな変化はない。 発電割合 % 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1973 1980 1990 2000 2005 2007 2008 2009 2010 2011 2012e 石炭発電割合 天然ガス 発電割合 図 2.2-17 韓国の石炭発電比率および天然ガス発電比率の推移 IEA Electricity Information 2013 より JCOAL にて作成 135 (5)米国の状況 米国に関しては 1960 年代に超高温の Eddystone#1 ユニットが世界に先駆けて建設されたが、技術的理 由により失敗に帰し、その後は超高温ユニットの開発はなされなかった。その後は今日まで超臨界及び 亜臨界の計画が先行しているが、最近は USC 火力の計画が出てきている。 米国の高効率火力発電の現状及び新たな開発に関し、初の USC としてアーカンサス州に建設されて いた John W.Turk Jr 発電所 1 号 600MW ユニット(表 2.2-9 参照)が 2012 年に運転開始にこぎつけてい る。主蒸気圧力は 26.2MPa、主蒸気/再熱蒸気温度は 601℃/608℃である。ここでは PRB 炭が使用され ている。本発電所の様子を図 2.2-18 に示す。 図 2.2-18 John W.Turk Jr 発電所 1 号機 出典:B&W 社ホームページ 米国の発電に占める石炭火力の位置付けに関し、表 2.2-8 に、米国の USC 火力実績及び計画予定を 示す。 表 2.2-8 米国の USC 火力実績及び計画予定(JCOAL にて調査作成) 発電所名 Eddystone#1 Walter Scott Jr Energy Center#4 TURK 1 Sandy Creek Energy Station #1 Holcomb # 2 会社名 Exelon Power MidAmerican Energy SWEPCO Sandy Creek Energy Associates, L.P Tri-State 定格出力 MW 353.6 主蒸気圧力 MPa 34.5 蒸気温度 ℃ 649 / 566 運転開始年 870 25.3 566/593 ’07 600 26.2 601/608 ’12 1,000 26.9 586/584 ’12 1,000 26.9 586/584 ’60 また National Energy Technology Laboratory(NETL)は米国の A-USC プロジェクトとして 760℃、35MPa の蒸気条件を選択し、ボイラとタービンの材料開発の研究を実施している。この開発を推進している B&W 社の技術レポートによると、米国で開発目標としている 760℃ベースの A-USC では、CO2 回収を考慮した 発電コストは他に比べ優位になるとしている。 136 石炭火力発電の運用状況としては、図 2.2-19 には米国の総発電量ならびに石炭での発電量の推移 を示す。総発電量は 2007 年をピークにやや減少の方向に向かっている。なお 2013 年は集計のタイミン グの関係から 1~11 月のみのデータとなっている。石炭火力については 2008 年まではほぼ一定の発電 量となっているが、その後は減少に転じ、2010 年以降は大きな減少になっている。一方、天然ガスの場合 も示すが、2000 年代から増加の一途を辿っており、特に 2012 年の増加は目立っている。 4500 発電量 GW h 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(1-11月) 0 総発電量 石炭発電量 天然ガス発電量 図 2.2-19 米国の発電量の推移 EIA データ 2013 年から JCOAL にて作成 図 2.2-20 には米国の石炭火力と天然ガス火力の割合を示すが、2012 年には石炭と天然ガスの発電 量が接近してきたが、2012 年からは逆に石炭割合が増加し天然ガス割合が減少し、両者が離れる方向 になってきている。これはガス価格の上昇と石炭価格の低水準の両方の影響である。 60 発電量割合 50 40 30 % 20 10 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013( 1-11月) 0 石炭発電割合 天然ガス発電割合 図 2.2-20 米国の石炭発電、天然ガス発電の割合 EIA データ 2013 年から JCOAL にて作成 137 (6)その他の国・地域の USC についての状況 ・台湾の状況 台湾の USC の状況を表 2.2-9 に示す。台湾でも 2016 年から 800MW2 基の USC が運転に入る計画で ある。 表 2.2-9 台湾の USC 火力実績及び計画予定 発電所名 会社名 林口 大林 台湾電力 台湾電力 定格出力 MW 3x800 2x800 主蒸気圧力 MPa 蒸気温度 ℃ 25.0 600/600 運転開始年 ‘19 ‘16-‘17 ・その他のアジアの状況 その他アジアでもいよいよ USC の時代に入る。表 2.2-10 にこの地域の USC の状況を示すが、2015 年 に運転に入る計画である。 国名 マレーシア マレーシア インドネシア 表 2.2-10 その他のアジアの USC 火力実績及び計画予定 発電所名 会社名 定格出力 主蒸気圧力 蒸気温度 MW MPa ℃ MANJUNG 4 TNB 1,080 Tanjung Bin 4 Malakof 1,080 Central Java J パワー、伊藤 忠、PT ADARO 2x1,000 POWER 運転開始 年 ’15 ’16 2.2.2 世界の IGCC の実績と計画 表 2.2-11 に世界の IGCC の稼働状況と計画を示す 1)2)3)。IGCC は 1990 年代に 250~350MW の実証 プラントがオランダ、スペイン、米国 2 カ所で建設された(同表、No.1~4)。ガス化炉はどれも噴流層式であ るが、ガス化方式(ライセンサー)は全て異なっている。どのプロジェクトも試運転から 3~4 年間は様々な 障害に遭遇し、定格運転ができなかったが、近年は商用的な運用をしている。2003~2004 年に米国で 600MW 級 IGCC 商用機の構想が相次いだが、どれも延期された。税優遇や補助金の不確定性、及び近 年の設備価格高騰が原因と思われる。現在は表の No.11 に示す Duke Energy 社の IGCC が 2013 年 6 月に運転開始され、世界で 6 番目の IGCC 商用機となった。Texaco ガス化炉と GE の 1,300℃級 GT と のプロセスである。発電効率は 38%程度である。No.18 のオランダ Nuon 発電所は上述 250MWIGCC を経 験し、これを発展させようと Magnum 計画をスタートさせたが、コスト高で中断している。No.26 Sweeny 社は E-gas ガス化炉による IGCC の環境評価を推進している。No.10 の中国初の IGCC である GreenGen は計 画が遅れ気味であったが、Gas Turbine World(2012 年 12 月 21 日)によると、2011 年 10 月にはガスター ビンが油運転で運転スタートし、2012 年 12 月 12 日に完成式が挙行された。そして Phase1 が商用運転と してフルプラントとして引き渡しを終了したと伝えられている。ガス化炉は中国独自で西安熱工院が開発 した酸素吹き 2 段ガス化法である。 IGCC は商用化されているが、微粉炭火力に比較し経済性、信頼性の一層の進歩と同時に発電効率 面、環境面及び適用石炭種の有利性を生かすことが重要である。 138 表 2.2-11 運転中ならびに計画中の各国の主要 IGCC (着色部が運転中の IGCC を表す。本表では石炭ベース以外にも、参考として石油残渣ベースのIGCC も 掲載してある。) No 国 プロジェクト 出力 (MW-net) 253 262 ガス化 炉 Shell E-Gas 運転 開始 1994 1995 状 況 運転中(商用) 運転中(商用) 1 2 オランダ 米国 Buggenum Wabash River 3 4 5 6 7 米国 スペイン イタリア イタリア イタリア Polk County Puertollano ISAB Energy SARLUX api Energia S.p.A. 315 335 512 551 287 GE Prenflo 1996 1998 1999 2000 2001 運転中(商用) 運転中(商用) 運転中(商用) 運転中(商用) 運転中(商用) 8 9 日本 日本 根岸 勿来 342 250 GE 三菱重 工 2003 2007 10 11 12 13 14 15 16 中国 米国 韓国 米国 韓国 米国 日本 GreenGen Edwardsport 実証機 Cash Creek Taejan#1 Kemper County 大崎クールジェン 250 630 300 630 300 583 170 TPRI GE Shell GE Shell KBR 日立 2012 2013 2014 2015 2016 2016 2017 運転中(商用) 2013 年 4 月か ら商用運転開 始 運転中(商用) 運転中(商用) 建設中(実証) 計画中 計画 計画 2013 年 3 月着 工 原料 石炭 石炭/ペトロ コークス 石炭 石炭 石油残渣 石油残渣 石油残渣 石油残渣 石炭 石炭 石炭 石炭 石炭 石炭 褐炭 石炭 (JCOAL にて調査作表) 1)The Gasification Technologies Council, World Gasification Database, http://www.gasification.org/database1/search.aspx?a=66&b=3&c=85 2) Ashitani.S., Osaki CoolGen Project, Clean Coal Day in Japan 2011,International Symposium, September, 2011 3)林,華能集団グリーンジェン計画の進展,JCOAL Magazine,No.68,平成 23 年 1 月 21 日 Yang.Z., Sustainable Coal Utilization Summit 2011 for Coal Conversion and Polygeneration, No.2-3,Beijin,2011 4)US DOE/NETL Report 2010/1037, Cost and Performance Baseline for Fossil Energy Plants, Vol1:Bituminous Coal and Natural Gas to Electficity-Revision2,November 2010 (1) 米国の IGCC の状況 米国で現在 IGCC の商用化が進んでいるのは、2013 年に運転開始した Edwards IGCC と 2014 年に運 転開始を目指して現在建設中の Kemper County IGCC は順調に計画が推移したプロジェクトである。 Duke Energy 社の Edwardsport IGCC(No.11)は 2013 年 6 月に商用運転が開始され、世界で 6 番目 の商用 IGCC の仲間入りをし、また Kemper County のトランスポートリアクター(No15)は 2014 年運転開 始を目指して現在建設中である。しかし進捗に伴い諸般の条件により大幅なコストアップが見込まれたが、 改善に努め進捗が図られ、順調な進展となっていると伝えられている。 (2) 日本の IGCC の状況 139 日本ではクリーンコールパワー研究所が三菱重工の空気吹きガス化炉を採用した 250MW IGCC で実 証に成功した(No.9)。運転開始後1年で総合 2,000 時間連続運転を達成し、3 年目に年間 5,000 時間の 耐久テストも完了した 4)。この実績は、上記 1990 年代欧米の 4 つの IGCC の試験開始後の実績をはるか に上回るもので、我が国 IGCC 稼働機能の優秀性を示すものである。この実績を背景に、本 IGCC は 2013 年 4 月 1 日から常磐共同勿来火力発電所 10 号機 250MW として商用運転を開始し、世界で 5 番 目の IGCC 商用機となった。 また、J-POWER と中国電力は 170MW 酸素吹き IGCC の実証試験を計画しているが、2013 年 3 月に 着工し、2017 年の試験開始を目指している。(N0.16) 本計画はすでに終了した EAGLE 技術の商用化に向け、石炭量 1,100t/日級の IGCC を建設するため に大崎クールジェン㈱を中国電力と J-POWER の共同出資により設立し、酸素吹石炭ガス化技術大型実 証試験を進めてきている。ここでは酸素吹石炭ガス化複合発電設備を建設し、システムとしての信頼性、 経済性、運用性等を検証し、その後引き続き最新の CO2 分離回収技術の適用試験による検証を行って いくとしている。この実証を確実に前進させることで、将来的に燃料電池との組み合わせにより、さらに高 い効率が可能となる石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)と CO2 分離回収技術の早期実用化を目指 す。 発電所の出力は 16.6 万 kW(これまでの公表値から変更された)としている。同社のホームページによる と、実証試験目標は表 2.2-12 の通りである。 項 目 基本性能 多炭種適用性 設備信頼性 プラント制御性・ 運用性 経済性 表 2.2-12 大崎クールジェン酸素吹 IGCC 実証試験目標 目 標 プラント性能 送電端効率:40.5%(HHV) 環境性能 SOx:8ppm、NOx:5ppm、ばいじん:3mg/m3N(O2:16%換算) 炭種性状適合範囲の把握 (将来的には微粉炭火力に適合しにくい低灰融点炭から微粉炭火力に適合する石 炭まで拡大) 1,000 時間、5,000 時間の長時間耐久試験により商用機レベルの年利用率 70%以上 事業用火力プラントとして必要な運転特性、制御性、負荷変化率:1~3%/分 ほか 商用機レベルで発電原価が微粉炭火力と同等以下になる見通しを得ること 出典:大崎クールジェン㈱ホームページ (3) 中国の IGCC の状況 中国には多くの石炭ガス化炉が建設されており、それらは主として石炭から化学原料を生産するため に使われている。歴史的に見ると、古くから石炭を小型固定床ガス化炉でガス化して、燃料ガス、アンモ ニア、尿素等が生産されていたが、1993 年に GE 炉、2006 年に Shell 炉、2009 年に GSP 炉、2011 年に KBR ガス化炉と次々と海外の大型ガス化炉が導入された。同時に中国国産技術としてのガス化炉開発・ 普及も進み、商用機として、2004 年に灰溶融ガス化炉(山西煤炭化学研究所)、2005 年に OMB ガス化 炉(華東理工大学)、2006 年に清華大学ガス化炉、2008 年に HT ガス化炉、2011 年に西安熱工院ガス 化炉が導入され、JCOAL 調査では既に 400 基近くが導入されており、このうち最大のガス化炉は 3,000t/d である。 発電を目的とした IGCC 開発は唯一 GreenGen Program である。天津石炭発電所にて、250MW 容量 140 IGCC を建設する GreenGen Program を 2009 年から開始し、2012 年 12 月 13 日に正式に稼働したと人 民日報が伝えている。(当初は 2011 年稼働予定とされていたので 1 年以上の遅れ)華能集団の Web サ イトでは、その前日の 12 月 12 日に送電開始のセレモニーが行われたと発表されているが、その後の状況 についての発表は殆どなく、運転状況を掴むことは難しい。 なお、将来的には400MW IGCCの建設、2016~2020にはゼロエミを目標としたIGCC+CCSを推し進め るとしている。 (4) 韓国の IGCC の状況 韓国の石炭ガス化炉開発は、2010 年に韓国エネルギー研究院に SK エネルギーと米国エンジニアリング 会社の KBR が流動層ガス化炉 1t/d を建設して開発をスタートさせたが、現在は 3t/d パイロットプラントを SK エネルギー研究所に設置し運転研究を実施中である。また KEPCO は Uhde の PRENFLO ガス化炉を 用いた事業化を検討中であるとも伝えられている。 2006 年からは政府主導で韓国型 300MW 級 IGCC の設計技術の確立ならびに実証プラント建設を目 指して開発をスタートさせている。ガス化炉は Shell 炉を採用し、開発期間は 2006 年~2014 年の 8 年間 であり、プラントの建設場所は Taean 発電所、プラント運転開始は 2016 年の見込みである。事業目的とし ては IGCC に関する技術の確立であり、後続号機で設計技術の自立を目指し、また設備国産化率 90% を達成する事が大きな目標である。 Taean IGCC 計画要領は次の通りであるが、全体システムフローを図 2.2-21 に示す。 ・発電出力 300MWe 級(送電端)(ガスタービン 230MWe、蒸気タービン 150MWe) ・発電効率 42%以上 ・環境数値 SOx 15ppm 以下 ・フィードストック NOx 30ppm 以下 亜瀝青炭あるいは瀝青炭 ・石炭フィード方式 乾式(ロックホッパーシステム) ・シンガスの固体分除去 セラミックフィルター なお、2013年2月に策定された第6次国家エネルギー基本計画では、韓国のIGCC計画として、 Taean300MW以降にYeonnam 300MW(2017年運転開始)、Gunjan 300MW(2019年運転開始)が計 画されている。 図 2.2-21 Taean 300MW IGCC のシステムフロー 141 2.3 日本企業の海外石炭火力ビジネスの最新動向 (Courtesy from McCoy Power Reports) McCoy Power Reports 2013(http://www.mccoypower.net)を使用して、世界の石炭火力発電の動きを 分析した。本レポートは世界の火力発電に関する発電所名、ユニット名、ユニット容量、オーナー、燃料、 発注年や運転開始年などのデータが網羅されているが、このうちボイラ、蒸気タービンならびに排煙脱硫 装置について分析を行った。これらについて、燃料としては石炭の場合のみの統計としており、他の重油 あるいは天然ガスなどの数字は入っていない。また、微粉炭ボイラについてのみ選択しており、流動層ボ イラについては含まれていない。 なお、2014 年 2 月 1 日に三菱重工業と日立製作所が両社の火力発電システム事業を統合して三菱日 立パワーシステムズ㈱を誕生させたが、本稿での分析は両社統合前の実績を旧三菱重工業と旧日立製 作所に分けて記載してある。また、McCoy Power Reports のボイラに関する日本の記載内容については、 JCOAL にて最新情報に適宜修正してある。 2.3.1 石炭ボイラ (1) 世界の石炭ボイラの発注状況 過去 5 年間の世界主要国で運転を開始した石炭ボイラの年毎の合計容量を、表 2.3-1 に示す。中国と インドが抜きん出て多く、次いで米国、インドネシア、ドイツと続き、日本は 10 番目となっている。本表で、 米国が過去 5 年間に運転を開始したユニットの合計容量で上位に位置しているが、これらは過去に発注 されたユニットの合計であり、過去 5 年間での発注は 2007 年に 4290MW、2008 年に 800MWに過ぎず、 その後の発注は途絶えている。従って今後の世界の石炭ボイラの運転実績からはかなり順位が下がるも のと予測される。 表 2.3-1 各国で過去 5 年間に運転開始したボイラの年毎の容量(単位 MW) (McCoy Power Reports 2013) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 China India USA Indonesia Germany Vietnam Turkey South Africa Netherland Japan Russia Italy Brazil Czeck Republic Chile South Korea Poland Sri Lanka Malaysia Mexico Brugaria Botuwana Thailand Philippines North Korea Canada Australia Guatemara Morocco Sudan Colombia Panama Taiwan Denmark United Arab Eminates New Zealand Nigeria Yemen Total 2009 72932 7913 3564 660 98 0 600 0 0 600 60 660 350 0 240 1300 0 0 718 0 340 0 0 0 0 0 428 0 0 0 0 120 0 80 0 0 0 0 90663 2010 81051 16951 3832 2501 750 450 0 0 0 900 1005 0 0 0 762 0 833 300 0 700 0 0 0 0 600 0 54 84 0 0 0 0 0 0 48 0 0 29 110850 142 2011 71340 24038 2517 3865 2680 1230 3720 0 0 0 395 0 1020 0 645 0 0 0 0 0 340 0 660 0 0 495 0 0 0 0 0 0 54 0 0 0 0 0 112999 2012 48917 40036 3590 4591 4113 1800 0 0 2740 0 1320 0 1020 1460 370 0 0 300 0 0 0 0 0 650 0 0 0 0 0 0 215 0 34 0 0 0 30 0 111186 2013 44280 29818 900 1170 1700 2444 0 3980 800 1600 0 1980 0 750 0 0 80 300 0 0 0 660 0 0 0 0 0 300 350 300 0 0 0 0 0 45 0 0 91757 Total 318520 118756 14403 12787 9341 5924 4320 3980 3540 3100 2780 2640 2390 2210 2017 1300 913 900 718 700 680 660 660 650 600 495 482 384 350 300 215 120 88 80 48 45 30 29 517155 表 2.3-1の上位 10 カ国の状況をグラフ化して図 2.3.1 に示す。中国ならびにインドが圧倒的に大量であ るが、中国では 2011 年以降、インドは 2013 年において減少方向である。 主要国で運転開始した石炭ボイラMW 90000 80000 70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0 2009 2010 2011 2012 2013 China India USA Indonesia Germany Vietnam Turkey South Africa Netherland Japan 図 2.3-1 最近の 5 年間に運転開始した石炭ボイラの推移 (McCoy Power Reports 2013) また、上記は運転開始実績であるが、今後のボイラビジネスを予測する上で発注量も重要な数字であ る。そこで 2013 年の石炭ボイラ発注量について見ると、図 2.3-2 に示すようになる。2013 年の発注は、こ こに示した中国、インド、インドネシア、トルコ、ベトナムの 5 カ国のみであり、その他の国には発注がない。 発注合計は 37,440MW と 2013 年に運転開始した世界の石炭ボイラ総容量 91,757MW に比べ 40%にし かならない。 なお、発注量割合はここでも中国が全体の約 68%にもなっており、次いでインドの約 20%と、両国あわ せて世界全体の 90%弱にもなる。 1320 2400 660 7540 25520 China India Indonesia Turkey Vietnam 図 2.3-2 2013 年の世界の石炭ボイラ発注量(MW) (McCoy Power Reports 2013) (2)中国、韓国、日本の大手ボイラメーカーの国内向けならびに輸出向け生産実績 中国、韓国、日本の大手ボイラメーカーについて、それぞれの国内ならびに輸出の動きを運転開始年 ベースで示す。図 2.3-3 には中国について東方ボイラ、ハルピンボイラ、上海ボイラについて示し、韓国 の大手ボイラメーカーは Doosan 重工業のみであるのでこれを図 2.3-4 に示す。 日本では三菱重工業、 143 バブコック日立ならびに IHI が大手のボイラメーカーであるので、これらを図 2.3-5 に示す。なお、これらの 図で空色が国内向け石炭ボイラの生産量実績、黄色が輸出量実績である。 以下にそれぞれの国ごとの 状況を示す。 ・中国メーカー 大手メーカーはいずれも 2003 年から大量に運転に入れており、国内のピークは 2006 年、2007 年とな っている。この時期からやや実績が減少しているが、それにあわせて海外向けの輸出石炭ボイラに注力 し始めた。 東方ボイラは 2007 年から輸出を開始し、2011 年には多くのボイラを海外で運転に入れ、国内の落ち込 みをカバーしている。 ハルピンボイラも同様に 2008 年から輸出を開始し、国内の落ち込んだ時期に合わせて仕事量を埋め ている。 上海ボイラはやや早く 2006 年から輸出を開始しているが 2012 年には国内と輸出で最大の仕事量を確 保している。 中国メーカーの納入先の 1 つであるベトナムには無煙炭などの低揮発分炭があり、その技術的な対応 が必要である。中国勢の無煙炭 1 号機である 2005 年東方ボイラの 300MW×2 ならびに 2007 年の 300MW×2 については実績のある米国 FW 社からのライセンスを供与されており、また上海ボイラは無煙 炭の 2006 年の 300MW×4 のうちの 2 基については Alstom ライセンスを得ている。なお無煙炭の東方ボ イラ 1 号機である 2009 年 622MW×2 超臨界圧は自主技術で建設している。 (東方ボイラ) 40000 ボイラ建設実績MW 35000 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0 Donfang(国内ボイラ) Donfang(輸出ボイラ) (ハルピンボイラ) 40000 ボイラ建設実績MW 35000 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0 Harbin(国内ボイラ) 144 Harbin(輸出ボイラ) (上海ボイラ) 35000 ボイラ建設実績MW 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0 Shanghai(国内ボイラ) Shanghai(輸出ボイラ) 図 2.3-3 中国大手メーカー毎の石炭ボイラの国内生産量および輸出量(MW) (McCoy Power Reports 2013) ・韓国メーカー 韓国のボイラ大手メーカーは Doosan 重工であるが、図 2.3-4 に示すように国内分は 2009 年までで、 その後数年間は国内向けの実績はない。国内向けは 2014 年、2017 年に計画されているのみで、2010 年以降は輸出ボイラに力を入れている。 Doosan 重工のインドへの進出は 2004 年の 660MW×3、2007 年 800MW×5 などがあるが、これらにつ いては提携先の Alstom 技術を使っている。また、1996 年に初めて台湾に進出した時の 600MW×2 Sub-Critical は Alstom ライセンスを使っている。 Doosan 重工はベトナムの無煙炭ボイラも 2010 年に 600MW×2、2013 年にも同じく 600MW×2 を受注 しているが、自主技術での対応の様子である。 (Doosan 重工) 5000 4500 ボイラ建設実績MW 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 Doosan Heavy(国内ボイラ) Doosan Heavy(輸出ボイラ) 図 2.3-4 韓国大手メーカーの石炭ボイラの国内生産量および輸出量(MW) (McCoy Power Reports 2013) ・日本メーカー 日本の大手メーカーは三菱重工、バブコック日立ならびに IHI であるが、各社の国内、輸出分のボイラ 実績を図 2.3-5 に示す。 日本メーカーとして共通して言えることは日本国内の石炭ボイラ発注が極めて少ないために、海外展開 145 を図っている点である。また各社とも運転に入るボイラがなかった年が数年に一度あり、厳しい受注条件 であることがわかる。しかし後述するように、現時点の世界の USC マーケットは日本の独壇場であり、何と かしてこの優位な点を生かした展開が望まれるところである。 (三菱重工) 6000 ボイラ建設実績MW 5000 4000 3000 2000 1000 0 MHI(国内ボイラ) MHI(輸出ボイラ) BHK(国内ボイラ) BHK(輸出ボイラ) (バブコック日立) 3500 ボイラ建設実績MW 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 (IHI) IHIボイラ建設量MW 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 IHI(国内ボイラ) IHI(輸出ボイラ) 図 2.3-5 日本の大手メーカー毎の石炭ボイラの国内生産量および輸出量(MW) (McCoy Power Reports 2013) (3)各国の石炭ボイラメーカーの輸出ビジネスの展開 ここでは詳しくボイラの輸出実績について示す。図 2.3-6 に示すように、日本はすでに 2000 年以前から 輸出を行っているが、中国は 2001 年から、韓国は 2004 年から輸出が始まった。2005 年まではこの 3 カ 146 国の中で日本が最大の輸出国であったが、2006 年からは中国の輸出が激増して、以降は日本、韓国を 大きく引き離している。2012 年からは 3 カ国とも輸出の受注が少なくなってきている。 30000 ボイラ輸出量MW 25000 20000 15000 10000 5000 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 日本 中国 韓国 図 2.3-6 日本、中国、韓国の石炭ボイラ輸出量の推移 (McCoy Power Reports 2013) ボイラ最大の生産国である中国が、どの国に石炭ボイラを輸出しているかを図 2.3-7 に示している。ここ ではハルピン、東方、上海のボイラ 3 社の合計輸出量であるが、前記のように輸出は 2001 年に始まり 2005 年くらいから急激に増加した。輸出先を見るとインドが最多で、続いてインドネシア、トルコとなってい る。また輸出量についてみると、ピーク時の 2008 年には約 24,000MW と、100 万 kW ボイラ 24 缶分にも なった。2009 年には一旦急減したが翌年から再び増加した。2011 年以降は減少を続けており、2013 年 には 1,900MW と、過去 10 年に比べればかなり小さな数字となった。インドネシア、トルコへの輸出量は 2008 年までは多かったものの、それ以降は減少している。 中国ボイラメーカーのボイラ輸出先および輸出量MW 30000 25000 20000 15000 10000 5000 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 India Indoneshia Malasya Sri Lanka Turkey Vietnam Myanmer 図 2.3-7 中国ボイラ大手 3 社の合計の石炭ボイラ輸出先および輸出量 (McCoy Power Reports 2013) 147 図 2.3-8 には同様に日本のボイラ大手 3 社の合計の海外への石炭ボイラ輸出量を示す。ここに示すよ うに中国のようなインドへ偏った少数の国への輸出とは異なり、多くの国に実績があり、最近では台湾、韓 国、マレーシアへの輸出が多くなっている。また米国やカナダ、ドイツなど火力発電の先進国への輸出も 多い。 2003 年には史上最大の輸出実績があり、この年にはマレーシア、米国、タイ、ベトナムへの輸出が好調 であった。逆に、2006 年には輸出が少なく、2009 年には輸出実績がなかった。2011 年には台湾への輸 日本のボイラメーカーの輸出先および輸出量MW 出がある。 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 Australia Canada Chile China Germany Indonesia Malaysia Mexico Morocco Romania USA Thailand India Vietnam South Korea Taiwan 図 2.3-8 日本ボイラ大手 3 社の合計の海外への石炭ボイラ輸出量 (McCoy Power Reports 2013) (4)USC の状況 USC については、本レポート第 2 章 2.2.1 で詳細に述べているが、本稿では McCoy Power Reports 2013 に基づいて、世界や中国などの USC についてのグローバルな状況や関連メーカーの状況について の分析結果を示す。 現在、USC は地球温暖化対応への切り札として世界から注目を集めており、今後の期待を担っている。 世界の USC の実績を見るときに、圧倒的に基数も容量も多い中国を入れての世界の分析を行っても世 界の実態を理解しやすくあらわすことができないので、ここでは中国を除く世界全体と中国のみと 2 つに 分けることとした。図 2.3-9 には中国を除く世界全体の新設 USC、SC ならびにSUB(亜臨界圧)の過去 10 年間の推移を示す。本図に示すように、中国を除いた実績では日本での USC が全体の傾向を支配して おり、USC 割合が高い年も少ない年もある。これは日本での USC 建設の有無によるところが多い。 しかし、ここで見るように世界全体としては USC の時代になったというよりは SC の普及が増え、漸く SC の時代に入ったが、2012 年以降は USC にも注目が向かうようになったと言っても過言ではない。しかし石 炭火力で必要とされる CO2 削減といった地球温暖化対応を見据えて、温暖化への切り札である USC が各 国で伸びていくことは当然である。 148 20 18 60000 16 50000 14 USCの割合% 中国を除く世界の新設発電容量MW 70000 12 40000 10 30000 8 6 20000 4 10000 2 0 0 2004 2005 2006 2007 USC 2008 SC 2009 Sub 2010 2011 2012 2013 USCの割合 図 2.3-9 中国を除く世界の新設石炭火力の USC、SC、SUB 容量 (McCoy Power Reports 2013) 上記したように中国のみについての同様な運転実績を、図 2.3-10 に示す。新たに運転開始した石炭火 力に 2006 年から日本技術に支援された USC が現れ、以降の新設火力の中で急増し、2013 年には新設 火力のうちの 50%以上にもなり、SUB はもとより SC をも凌ぐようになってきている。 60 100000 50 80000 70000 40 60000 30 50000 40000 20 30000 20000 USCの割合% 中国の新設発電容量MW 90000 10 10000 0 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 USC SC Sub USCの割合 図 2.3-10 中国での新設石炭火力の容量 (McCoy Power Reports 2013) 図 2.3-11 には世界各国の新設 USC 基数を示している。日本の USC1 号機は 1993 年の中部電力碧 南 3 号(700MW)で 2004 年までは日本の実績のみであった。すでに述べたとおり、中国では 2006 年に日 本の技術ベースでの USC が始めて運転開始したが、その後は世界で圧倒的な基数を運転している。日 本、中国以外にはヨーロッパでの実績が出てきているが、2014 年以降に運転開始予定では韓国やポー ランドにも計画が出てきている。 149 各国のUSCボイラ建設基数(運転開始年ベース) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 China Germany Malaysia Taiwan Japan South Korea Czeck Republic USA Italy Poland Netherland Slovenia 図 2.3-11 各国の新設USC基数 (McCoy Power Reports 2013) なお、表 2.3-2 には USC 先進国である日本、中国、韓国の国内向けユニット容量と基数を示す。ここで は発注年での数量を示しているが、中国では 600MW と 1,000MW を USC の標準設計としているが、ハル ピン、東方、上海の 3 大ボイラメーカがこの需要を支えている。 表 2.3-2 日本、中国、韓国の SC、USC 発注量 (McCoy Power Reports 2013) 2000 中国 日本 韓国 0 2001 0 2002 2003 0 2004 0 0 600*1 700*2 700*1 600*1 1000*1 700*1 1050*1 1000*1 900*1 1000*1 0 0 0 0 0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 600*4 600*2 600*4 660*7 600*1 660*4 660*9 600*2 630*1 660*7 600*6 660*2 640*2 700*4 660*13 660*9 1000*4 1000*5 1000*16 660*2 660*9 1000*8 1000*4 1000*7 660*5 1000*15 1000*15 1000*13 1036*2 1036*1 1000*10 1000*14 1100*2 1036*1 1000*23 1100*3 1100*1 1050*2 0 0 0 0 0 600*1 900*1 0 0 600*1 1000*1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1000*1 1000*1 1050*2 0 USC 輸出に関しては表 2.3-3 に示すように日本メーカーはすでに 2008 年からスタートしているが中国 メーカー、韓国メーカーではまだ輸出実績はない。 表 2.3-3 日本の USC 輸出実績 (McCoy Power Reports 2013) 2003 日本メーカーの USC輸出量MW 0 2004 0 2005 0 2006 0 2007 0 150 2008 813×1 800×1 2009 0 2010 1000×2 2011 0 2012 1050×2 800×2 2013 1065×1 2.3.2 蒸気タービン 図 2.3-12 には過去 10 年間の国別蒸気タービン発注量を示す。全体としては 2007 年がピークでその 後は減少したが、2009 年からはほぼ一定の発注量となっている。中国での発注が最も多いが、同図には 世界の総発注量に対する中国での発注量割合も示している。2004 年ころには世界の 70%以上が中国で の発注であったが、2009 年にかけて下がってきたものの 2013 年では再び増加傾向にある。中国につい で発注の多いのはインドであるが、その他は日本も含め際立って発注が多い国は存在しない。 90 250000 70 60 150000 50 40 100000 30 中国の割合% 蒸気タービン発注量MW 80 200000 20 50000 10 0 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 China India Germany Indonesia Japan Malaysia South Korea Taiwan USA Vietnam Others 中国の割合% 図 2.3-12 過去 10 年間の国別の石炭火力用蒸気タービン発注量 (McCoy Power Reports 2013) 表 2.3-4 には 2004 年~2013 年の 10 年間に石炭火力用に蒸気タービンの発注のあった国とその容量 を示している。すでに図 2.3-12 に示したように中国とインドが圧倒的な発注量を示しているが、10 年スパ ンで見れば米国、韓国、ドイツ、インドネシア、ベトナムなども多くの発注が出ている。その他ではトルコ、 マレーシアが多い。 151 表 2.3-4 過去 10 年間の石炭火力用蒸気タービンの発注量 (McCoy Power Reports 2013) 国 名 発注量 国 名 発注量 Argentina Australia 238 567 Morocco Netherland 700 3538 Bangladesh Beralus Bosnia & Herzegovina 275 50 410 New Caledonia Niger North Korea 274 24 600 Botswana Brasil Bulgaria 1260 2483 700 Panama Philippines Poland 320 3276 3037 Reunion Russia Senegal 63 5672 125 33 110 600 Canada Chili China 681 3162 644270 Colombia Czeck Republic Denmark 229 2540 80 Singapore Slovakia Slovenia Ethiopia Finland Germany 24 175 14260 South Africa South Korea Spain 9660 16636 35 Sri Lanka Sudan Taiwan 915 600 4606 Thailand Turkey Turkmenistan 830 9256 23 Greece Guatemala Hondurus 660 396 35 Hungary India Indonesia 80 193998 17183 Italia Japan Kazakhstan 2040 3909 1209 Ukraine United Arab Eminate United Kingdom 1345 314 52 Laos Malaysia 1980 4770 USA Uzbekistan 19081 150 Mali Mexico Montenegro 70 700 207 Vietnam Yemen 14502 29 図 2.3-13 には世界の大手蒸気タービンメーカーの過去 10 年間の受注シェアを示す。ボイラの場合と 同様に、中国の上海タービン、ハルピンタービン、東方タービンのビッグスリーのシェア多く、三社合計で はおよそ 4 分の 3 である。言い換えれば、この 3 社が世界の 4 分の 1 づつ分け合い、残りの 4 分の 1 を 他のタービンメーカーが受注している構図である。世界 4 位はインドの BHEL で、この後で日本メーカー が踏ん張っている。 日本メーカーもその後に続き、上位で活躍している。日本メーカーは現地に関連会社を作り、ここでの 実績も多くなってきている。 Doosan 重工や現代重工などの韓国勢は 2012 年の受注は少なく、本図の「その他」の中に括られてい る程度でしかない。 152 0% 1% 1% 12% 1% 26% 2% 2% 9% 24% 22% Shanghai Turbine Harbin Turbine Donfang Turbine BHEL Toshiba Hitachi Mitsubishi Heavy Doosan Heavy Siemens Power Fuji Electrtic Others 図 2.3-13 過去 10 年間における世界の主要タービンメーカーの受注実績 (McCoy Power Reports 2013) 世界の蒸気タービン発注量は近年増加の傾向にはないが、中国勢は輸出に力を入れてきているも のと思われる。図 2.3-14 には中国の大手蒸気タービンメーカー3 社の総生産量と輸出量の推移を示す。 生産量は 2007 年をピークに減少傾向にあるが、輸出量は 2004 年~2005 年は僅かであり、この間に輸出 に関しての経験を積んでいたのではないかと思われる。2005 年以降は一気に輸出が増加し、2010 年に は輸出割合が約 35%と、生産した蒸気タービンの約 3 分の 1 は輸出に回されたことになる。しかし、2010 160000 40 140000 35 120000 30 100000 25 80000 20 60000 15 40000 10 20000 5 0 輸出割合% 蒸気タービン生産/輸出量MW 年をピークに輸出率も低減し、2013 年では輸出率が一桁台まで落ちている。 0 2004 2005 2006 総生産量(MW) 2007 2008 2009 輸出量(MW) 2010 2011 2012 2013 輸出量の割合(%) 図 2.3-14 中国大手タービンメーカーの総生産量ならびに輸出の推移 (McCoy Power Reports 2013) なお最近の状況として、2013 年のタービンメーカーの受注シェアを図 2.3-15 に示す。中国メーカーはこ こでも多くのシェアを持っており BHEL がそれに続いている。しかし日本の蒸気タービンメーカーはここで は日立が入っているのみである。 153 10% 2% 3% 3% 31% 4% 20% 27% Harbin Turbine Shanghai Turbine Donfang Turbine BHEL Hitachi Alstom Siemens Powers Others 図 2.3-15 2013 年における世界の蒸気タービンメーカーの受注シェア (McCoy Power Reports 2013) 2.3.3 脱硫設備 図 2.3-16 には過去 10 年間の排煙脱硫設備の発注状況を上位 20 カ国について示す。圧倒的に中国 が多いが、ついで米国が多くの脱硫装置を設置してきた。同図には世界全体の設置容量に対する中国 ならびに米国の設置割合も示している。2005 年から 2009 年では世界全体の 60~70%は中国での設置 であり、20%前後は米国での設置であった。しかしその後、この両国とも脱硫設備設置数は激減してきて おり、2013 年には最も大量の設置が行われた 2005 年に比べ、中国では 12 分の 1、米国では 16 分の 1 となっている。米国では EPA の排煙ガス規制の強化の動きあるいは石炭火力発電の運転継続に対する 180000 90 160000 80 140000 70 120000 60 100000 50 80000 40 60000 30 40000 20 20000 10 0 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 China USA Poland Germany Vietnam South Korea United Kingdom India South Africa Spain Romania Taiwan Malaysia Chile Israel Indonesia Japan Italy Czeck Repiblic Netherland 中国の割合% 米国の割合% 図 2.3-16 過去 10 年間の脱硫設備発注量の推移 (McCoy Power Reports 2013) 154 中国・米国の割合% 脱硫設備発注容量MW 不透明性が出てきていることなどの影響で、排煙脱硫設備への建設も激減しているものである。 大発注量であ あった 2005 年 年での発注量 量割合を示すが、中国が圧 圧倒的に多く次いで米 図 2.3--17 には最大 国であり、第 3 位から らは各国ともあ あまり変わらな ない発注量で であった。ここに示されてい いない国では は日本も含 め発注が がなかった。 図 2.3-17 20005 年での脱 脱硫設備発注量 (McCoy Power Reports 2013) 図 2.3--18 には 20133 年の発注量 量を示す。中国 国や米国が突 突出する状況 況ではなく、20005 年に比べ べれば多く の国に分 分散している。 。 図 2.3-18 20013 年での脱 脱硫設備発注量 (McCoy Power Reports 2013) 155 排煙脱硫設備はボイラやタービンと異なり、まず技術を供給する会社がおり、その周りに多くのメーカー が集まっている構図である。表 2.3-5 には、McCoy Power Reports 2013 から整理した過去 10 年間の排煙 脱硫装置受注総量を、技術供与の会社別に受注数量の多い順に示している。なお特に複数社のグルー プとなっていない場合も「その 3」に記載したので、ここに示したメーカーが McCoy Power Reports 2013 に 記載されているすべてのメーカーである。 この中で最も受注数量の多いのが FISIA BABCOCK ENVIRONMENTAL であり、約 93GW であり、次に BABCOCK & WILCOX の約 86GW、3 番目は ALSTOM POWER の約 82GW である。4 位には韓国 DOOSAN HEAVY の約 73GW である。 日本の企業は KAWASAKI グループの 44GW、三菱重工グループの 29GW と続いており、その後は千 代田化工建設グループ、バブコック日立、IHI となっている。 FISIA BABCOCK ENVIRONMENTAL について同社のホームページによると、ドイツ、コロンに本拠を 置く環境専門メーカーであり、17,000 人以上の従業員を擁し、年商は 26 億ユーロ(約 3,600 億円)で、す でに 30 年以上経ている排ガス処理設備のエキスパートであるとしている。製品は各種脱硫設備、脱硝設 備、EP やバグフィルターなどの除塵設備など幅広く、対象は火力発電所やごみ焼却処理設備、また化学 プラントの総合排ガス対策で、これまでに経験した燃料は石炭(瀝青炭、褐炭)、重油などすべてをカバ ーしていると見られる。 また AE&E Austria も流動層ボイラや排煙処理設備を手がけ、すでに 150 年もの経験を有するオーストリ アの会社であり、MARSULEX ENVIRO TECH は米国の排煙処理の専業メーカーである。 表 2.3-5 その1 過去 10 年間の排煙脱硫設備の技術グループごとの受注実績(MW) (McCoy Power Reports 2013) 社 名 技 術 供 給 各社受注量MW FISIA BABCOCK ENVIRO FISIA BABCOCK ENVIRO 8465 LONGYUAN FISIA BABCOCK ENVIRO 66430 SUYUAN FISIA BABCOCK ENVIRO 16990 ZHEJIANG FISIA BABCOCK ENVIRO 1200 BABCOCK & WILCOX BABCOCK & WILCOX BABCOCK NOELL/BILFINGER BABCOCK & WILCOX 総受注量MW 93085 30881 4200 WUHAN KAIDI EL BABCOCK & WILCOX 30895 ZHEJIANG TIANDI BABCOCK & WILCOX 20430 ALSTOM POWER ALSTOM POWER 75268 ALSTOM\IDRECO\INSIGM INSIGMA ALSTOM POWER ALSTOM POWER 3600 2110 ZHEJIANG FEIDA ALSTOM POWER 1325 DOOSAN HEAVY IND DOOSAN HEAVY IND 6185 AE&E LENTJES DOOSAN HEAVY IND 15640 LENTJES\DONGFANG BOI DOOSAN HEAVY IND 3400 LENTJES\DONGGUO DOOSAN HEAVY IND 600 LENTJES\GUIZHOU XING DOOSAN HEAVY IND 1200 LENTJES\GUOHUA EBARA DOOSAN HEAVY IND 3060 LENTJES\GUOHUA REN DOOSAN HEAVY IND 14280 LENTJES\SHA LONGJING DOOSAN HEAVY IND 6910 LENTJES\SHANDONG SAN DOOSAN HEAVY IND 18610 LENTJES\SHANGHAI LON DOOSAN HEAVY IND 1800 LURGI\FUJIAN LNGKNG DOOSAN HEAVY IND 600 LURGI\LENTJES DOOSAN HEAVY IND 600 LURGI\LONGYUAN DOOSAN HEAVY IND 250 SHANDONG EL PR ENV AE&E AUSTRIA SHANDONG LUNENG AE&E AUSTRIA 600 DATANG ENVIRONMENTAL AE&E AUSTRIA 16410 YUANDA ENVIRONMENTAL AE&E AUSTRIA 40825 ZHEJIANG ATMOSPHERE AE&E AUSTRIA 5455 ANDRITZ ENERGY & ENV AE&E AUSTRIA 1475 86406 82303 73135 1200 156 65965 表 2.3-5 その 2 過去 10 年間の排煙脱硫設備の技術グループごとの受注実績(MW) (McCoy Power Reports 2013) 社 名 技 術 供 給 各社受注量MW MARSULEX ENVIRO TECH MARSULEX ENVIRO TECH 9999 BEIJING KANGRUI MARSULEX ENVIRO TECH CHINA HUDIAN ENG (CHEC) MARSULEX ENVIRO TECH 600 24340 EVER CLEAN SHANDONG SHANDA MARSULEX ENVIRO TECH MARSULEX ENVIRO TECH 5640 1900 SHANGDA WIT ENV ENG SHANDONG SHANDA MARSULEX ENVIRO TECH MARSULEX ENVIRO TECH 420 1900 SICHUAN ENTECH SOUTHERN ENV PROTEC MARSULEX ENVIRO TECH MARSULEX ENVIRO TECH 1600 1800 BEIJING BOQI KAWASAKI 30660 SHANDONG SANRONG SHANDONG SANRONG KAWASAKI KAWASAKI 6870 6870 MITSUBISHI HEAVY IND MITSUBISHI HEAVY IND 18439 ADVATECH MITSUBISHI HEAVY IND 2431 STX HEAVY IND YUANDA EN MITSUBISHI HEAVY IND MITSUBISHI HEAVY IND 7010 600 SINOFINN MITSUBISHI HEAVY IND 600 IDRECO HUNAN YONG QI IDRECO IDRECO 17274 600 INSIGMA TECH IDRECO 4800 CHIYODA BLACK & VEAC CHIYODA CHIYODA 12586 3075 BWE SOUTHERN CO CHIYODA CHIYODA 400 3412 BABCOCK-HITACHI BABCOCK-HITACHI IHI SHANGHAI SEC IHI IHI 48199 44400 29080 22674 19473 14318 2636 5400 DUCON TECHNOLOGIES DUCON TECHNOLOGIES 3650 EEC DUCON TECHNOLOGIES 2100 GRAF-WULFF GRAF-WULFF\KAIDI FOSTER WHEELER FOSTER WHEELER 157 総受注量MW 454 600 8036 5750 1054 表 2.3-5 その 3 過去 10 年間の排煙脱硫設備の技術グループごとの受注実績(MW) (McCoy Power Reports 2013) 特にグループとはなっていない単独企業 社 名 技 術 供 給 SIEMENS WHEELABRATOR SIEMENS WHEELABRATOR GUODIAN LONGYUAN GUODIAN LONGYUAN BABCOCK PR ENVIRONMENT BABCOCK PR ENVIRONMENT 各社受注量MW 19010 14792 14380 BEIJING GUODIAN BEIJING GUODIAN 6300 HUADIAN ENGINEERING BEIJING LUCENCY HUADIAN ENGINEERING BEIJING LUCENCY 5800 3200 RAFAKO ZHEDAWANGXIN RAFAKO ANSALDO 3090 2700 ALLIED ENVIRONMENTAL ALLIED ENVIRONMENTAL 2651 WUXI FANYA FUJIAN LONGKING WUXI FANYA FUJIAN LONGKING 2580 1920 ENFIL ENFIL 1445 NANJING ENVIRONMENT HAMON ENVIROSERV NANJING ENVIRONMENT HAMON GROUP 1400 1376 HARBIN EL PR HARBIN EL PR 1260 NANFANG ENVIRONMENT SHANGHAI ZHONGFEN NANFANG ENVIRONMENT SHANGHAI ZHONGFEN 1200 600 J POWER ENTECH J POWER ENTECH 600 MEGADEKS-RAFAKO KC COTTRELL MEGADEKS-RAFAKO KC COTTRELL 460 450 RESEARCH-COTTRELL RESEARCH-COTTRELL 240 NEUMANN SYSTEMS NEUMANN SYSTEMS 220 LAB (GROUP CNIM) LAB (GROUP CNIM) 150 CANSOLV TECHNOLOGIES MISCELLANEOUS CANSOLV MISCELLANEOUS 150 250 2.4 二酸化炭素回収・貯留(CCS)に関する動向 2.4.1 CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage)について 二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)とは、大規模なCO2発生源から排 出されるガス中のCO2を、分離・回収し、それを地中深くに貯留・隔離することにより、大気中にCO2が放 出されるのを抑制する技術であり、省エネルギー、再生可能エネルギー等CO2の排出が極めて低いエネ ルギーの導入、低炭素含有燃料への転換などによる温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出量削 減とともに、地球温暖化対策に役立つ技術である。実用化されれば、地球温暖化対策の重要な選択肢 の一つとなり得るとされ、経済産業省は、重点技術の一つとしてCCSの実用化に向けた技術開発を推進 している。図2.4-1にCCSの概念を示す。 158 図 2.4-1 CCS の概要(地中貯留の例) CCS2020 経済産業省 世界のCO2貯留容量については、IPCC特別報告書では表2.4-1のように報告しており、世界全体で少 なくとも約2兆トンのCO2を貯留する容量がある。これは世界の排出量の100年分に相当するとされている。 また我が国周辺の貯留可能場所や容量の評価も(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)により進め られており、既存データを基に算出した貯留可能量は1461億トンと報告されている。 表 2.4-1 世界の CO2 貯留容量(出典 IPCC 炭素回収・貯留に関する特別報告書) 推定値(下限) 推定値(上限) (Gt-CO2として) (Gt-炭素として) (Gt-CO2として) (Gt-炭素として) 石油・ガス田 675 184 900 245 炭層(ECBM) 3~15 1~4 200 55 帯水層 1000 273 10000(不確実) ~2700 CCS2020 経済産業省 IPCC第4次評価報告書第3作業部会報告書(気候変動の緩和策)において、CCSは、2030年までに気 候変動の緩和に重要な貢献をする可能性のある新しい技術として位置づけられており、また、IEAからも CCSについての期待が大きく、長期的な緩和シナリオにおいて、地球温暖化ガス濃度を低濃度で安定化 させるためには、CCSの利用が重点となると評価している。 2.4.2 二酸化炭素回収・貯留(CCS)に関する動向 (1) CCS についての IEA の見解 IEA Energy Outlook 2013に記載されている新たに導入されたNew Policy Scenarioによる1990年から 2035年における世界の燃料別の需要量を、図2.4-2示す。New Policy Scenarioは、世界の国々により、こ れまで環境やエネルギーや関連でアナウンスされた約束や計画を勘定にいれたシナリオである。このシ 159 ナリオでは温暖化ガス低減のためのコペンハーゲン協定も考慮しており、これまでの“Current Policy Scenario(これはレファレンスシナリオと呼ばれてきた)“と比較する事によりエネルギーマーケットへの潜在 的なインパクトを定量的に考えるのに役立つものである。 New Policy Scenarioでは次の想定をしている。 ・ 石油価格はこれまでのシナリオより早く上昇し、2020年には$99/バレル、2035年には$113/バレルに なるとしている。 ・ 天然ガス価格は石油価格より安く保たれる。 ・ 石炭価格上昇は石油や天然ガス価格よりかなり低く、450ppmシナリオより低く抑えられる。 ・ 石炭取引は更に広くなり、CO2価格はこのNew Policyと450ppmシナリオ下では徐々に上昇する。 これによると石炭は次のように予測されており、2011年から2035年までの石炭の割合は下がるものの、 需要絶対量は1.17倍にも達する。 年 全エネルギー需要量(Mtoe) 2011 13070 2035 17387 石炭の需要量(Mtoe) 3773 4428 石炭の割合(%) 28.9 25.5 図2.4-2にはIEAが示している世界の燃料別の需要量予測(New Policy Scenarioの場合)を示す。2035 年においても石炭、石炭や天然ガスは引き続き主要な燃料の地位を占めることになるものと予測されてい る。 世界の一次エネルギー需要 Mtoe 20000 18000 16000 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 1990 石炭 石油 天然ガス 2011 原子力 2020 水力 2025 バイオエネルギー 2030 2035 その他の再生可能エネ 図2.4-2 IEA 世界の燃料別の需要量予測(New Policy Scenario) 出典:World Energy Outlook 2013 石炭についての発電部門の燃料需要予測を図2.4-3に示す。ここに示すように発電では石炭の需要が 多く2035年に向けて増加する予測である。しかし全体に対する石炭割合は1990年で41%、2011年が最も 高く約48%であり、以降は減少し2035年には39.3%と見られている。 言い換えれば2035年までは世界の発電量の約40%は石炭が負担していくと言える。 160 世界の発電での燃料需要Mtoe 8000 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 1990 2011 2020 2025 2030 石 炭 の 割 合 2035 石炭 石油 天然ガス 原子力 水力 バイオエネルギー その他の再生可能エネ 石炭の割合(%) 図2.4-3 世界での部門毎の石炭需要量 出典: World Energy Outlook 2013 World Energy Outlook 2013による2035年までに追加される発電容量の予測を図2.4-4および図2.4-5 に示す。ここではOECD の場合を図2.4-4に、Non-OECDの場合図2.4-5に分けて示しているが、石炭の 伸びはOECD の場合には2011年以降は減少するが、逆にNon-OECDの場合には2011年以降も引き続 き際立った伸びを示している。天然ガスのついても同様な傾向がある。一方OECDでは2020年以降の石 炭は減少に転じ、天然ガスについては、OECD諸国でも Non-OECD諸国でも右肩上がりを示している。 14000 3500 12000 発電量 TWh 4000 3000 10000 2500 8000 2000 6000 1500 4000 1000 2000 500 0 0 1990 石炭 原子力 合計 2011 2020 天然ガス 水力 2035 石油 再生可能エネ他 出典: World Energy Outlook 2013 図2.4-4 2035年までの追加発電設備の予測(OECDの場合) 161 30000 10000 25000 8000 20000 6000 15000 4000 10000 2000 5000 合計発電量 TWh 発電量 TWh 12000 0 0 1990 2011 2020 石炭 天然ガス 石油 水力 再生可能エ ネ他 合計 2035 原子力 出典: World Energy Outlook 2013 図2.4-5 2035年までの追加発電設備の予測(Non-OECDの場合) また、図2.4-6には2035年までに追加されると予測される石炭火力発電技術を示す。EUでは多くは高 効率のUSCベースであり、中国がこれに続いてUSCが多く導入される。平均効率(LHVベース)はEUでは 2035年には45%に近い値まで期待しているが、中国、インドも2035年に向けて効率のアップに努力してい くであろうことが予測されている。 45 40 35 30 25 20 15 発電効率 LHVベース 設備の割合 % 50 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 10 5 0 2011 2035 2011 2035 2011 2035 2011 2035 米国 米国 EU EU 中国 中国 インド インド 亜臨界圧 超臨界圧 超々臨界圧 発電効率(LHV) 出典: World Energy Outlook 2013 図2.4-6 2035年までに追加される石炭発電での将来の導入技術 図2.4-7は、IEA World Energy Outlook 2013に示されている新たなCO2低減目標である。ここには前出 のNew Policy Scenarioを想定し、このScenarioまでCO2削減を図ることを目標にしている。 図2.4-7に示した現状ベースでのCO2量の推移(Current Policy Scenario)からNew Policy Scenarioを 実現するために必要となるCO2削減量は次のとおりである。 ・2012年での現状のCO2排出量 :31.5Gt ・現行ベースの2035年でのCO2予想排出量 :43.1Gt 162 ・2035年での目標のCO2排出量 :37.2Gt ・2035年までのCO2必要排出量 :5.9Gt(=43.1 Gt-37.2 Gt) このように2035年では5.9 Gt のCO2排出削減が必要となる。IEAが示している2035年での排出量内訳 も図2.4-7に示してあるが、その内訳は消費側の効率向上で42%、再生可能エネルギーへの転換で25%、 エネルギーサービス側で9%などとなっており、CCSについては2%の期待としている。 IEAでは、消費側の具体的な削減としてはビルや一般産業での電力消費削減を挙げている。また、発 電所や精油所での効率の向上、効率の低い石炭火力の運転削減やガス火力などへの転換も必要であ るとしている。 出典: World Energy Outlook 2013 図2.4-7 エネルギー起源のCO2 (2) 世界の CCS プロジェクトの概要 CCS を促進させるために設立された国際組織の GCCSI(Global Carbon Capture and Storage Institute) が発表した最新の The Global Status of CCS 2014 では、2014 年 2 月時点で、運転中であるプロジェクト から、計画が始まったばかりのようなすべての段階の総合計として 60 件の大容量一貫プロジェクトが世界 で推進されているとしている。この数字は前年 2013 年のレポートでの 65 件から 5 件減少していることにな る。これはいくつかのプロジェクトがキャンセルとなり、また最近ホールド状態になったことによるが、主にヨ ーロッパで起こっている。 最近いくつかの国で次のような重要な決定がなされている。 米国:環境保護局(EPA)では発電所からの CO2 排出と CCS に関する提案がなされた。 英国:エネルギー法が 2013 年 12 月に法律となり、CCSの実施に影響を与えることになった。 EU :2014 年 1 月に 2030 年の気候変動とエネルギー目標の新たなパッケージが提案された。 カナダ:アルバータ州政府は 2013 年 8 月にアルバータ規制アセスメントレポートを発表した。 なお、アルジェリアの In Salah プロジェクトは 2011 年 6 月に中止になってしまったが、CO2 モニターは継 163 続されることになっているので、集計には引き続き入れてある。 図 2.4-8 には大容量の総合プロジェクト 60 件の内訳を示すが、運転中 12 件、建設中 9 件、その他 39 件となっている。国別にみると米国が 19 件(運転中が7件)で最も多く、次いで EU の 11 件となっている。 アジアでは中国はまだ運転中とか建設中の CCS はないが、検討段階である Define、Evaluate あるいは Identify の合計で 12 件ある。その中には発電所を対象としたポスト、プレ、オキシ等が含まれている。また 韓国では検討段階のものが 2 件あるが、韓国で CCS-1 と呼ばれているポストコンバッションプロジェクトな らびに CCS-2 プロジェクトと呼ばれているオキシあるいはプレコンバッションである。ここには日本の計画 は含まれていない。 18 16 プロジェクト数 14 12 10 8 6 4 2 0 Identify 米国 EU Evaluate 中国 カナダ Define 豪州 中東 Execute 他の地域 Operate 南アメリカ アフリカ 出典: GCCSI The Global Status of CCS 2014 図 2.4-8 大容量の総合プロジェクト 60 件の内訳 これらのプロジェクトについて、EOR への適用かそれ以外かについてを分けて図 2.4-9 に示す。ここに 示したように北米では多くが EOR 適用であり、その他は少ない。これは米国では EOR が古くから実施さ れてきており、すでに経済性が成立している状況にあることによる。逆に EU では EOR が行われておらず、 天然ガス井から随伴される CO2 の帯水層への再貯留である。 出典: GCCSI The Global Status of CCS 2014 図2.4-9 Active Large Scale integrated Projects 164 なお、The Global Status of CCS 2014 には、表 2.4-2 に示すように運転中のプロジェクトは全部で 12 件あり、米国で 7 件、ノルウェーで 2 件、カナダで 1 件、ブラジルで 1 件と 2011 年に注入を中止したアル ジェリア(In Salah)の 1 件であると示されている。 このうち、ほとんどは天然ガス井からの随伴ガス再注入であり、石炭起源の CCS は、Great Plains Synfuel Plant の 1 件のみである。 また建設段階(Excecute stage)のプロジェクとは 9 件あり、米国 2 件、カナダ 4 件、豪州 1 件、サウジ アラビア 1 件、アラブ連合 1 件となっている。この中で石炭起源のプロジェクトは米国の Kemper County IGCC やカナダの Boundary Dam、カナダの Quest がある。 表 2.4-2 プロジェクト名 運転中あるいは建設段階の CCS プロジェクト 国名 CO2貯留量 (百万トン/年) 運転開始 米国 1.3 1972 天然ガス随伴ガス 分離 EOR 0.68 1982 産業用 EOR CO2分離方式 貯留区分 Operate Stage Val Verde Natural Gas Plants Enid Fertilizer CO2-EOR Project Shute Creek Gas Processing Facility 米国 Sleipner CO2 Injection ノルウエー 米国 Great Plains Synfuel Plant カナダ and Weyburn-Midale Project 7 1986 0.85 1996 3 2000 天然ガス随伴ガス 分離 天然ガス随伴ガス 分離 石炭ガス化 天然ガス随伴ガス 分離 天然ガス随伴ガス 分離 天然ガス随伴ガス 分離 EOR 帯水層 EOR 帯水層 In Salah CO2 Storage アツジェリア 注入中止 2004 Snohvit CO2 Injection ノルウエー 0.6-0.8 2008 Century Plant 米国 8.4 2010 米国 1 2013 石炭ガス化 EOR 0.7 2013 天然ガス随伴ガス 分離 EOR 米国 1 2013 産業用 EOR 米国 1 2013 天然ガス随伴ガス 分離 EOR カナダ 1 2014 ポストコンバッション EOR 米国 1 2014 産業用 米国 3.5 2014 石炭ガス化 EOR 0.8 2014 天然ガス随伴ガス 分離 EOR カナダ 0.4-0.6 2015 産業用 EOR 豪州 3.4-4.1 2015 天然ガス随伴ガス 分離 帯水層 1.08 2015 石炭ガス化 帯水層 1.2-1.4 2016 石炭ガス化 EOR 0.8 2016 製鉄での直接還元 プロセス EOR Air Products Steam Methane Reformer EOR Project Petrobras Lula Oil Field CCS Project Coffeyville Gasification Plant Lost Cabin Gas Plant ブラジル 帯水層 EOR Execute Stage Boundary Dam Integrated CCS Demonstration Project Illinois Industrial CCS Project Kemper County IGCC Project Uthmaniyah CO2-EOR Project ACTL with Agrium CO2 Stream Gorgon Carbon Dioxide Injection Project Quest ACTL with North West Sturgeon Refinery CO2 Stream The Emirates Steel Industries CCS Demo Project サウジアラ ビア カナダ カナダ アラブ連邦 出典:GCCSI The Global Status of CCS 2014 165 帯水層 注:ここでプレと記されているプロジェクトには、石炭ガス化からの CO2 分離、天然ガス井からの随伴 CO2 分離を含んでいる。 なお、図 2.4-10 には地域別、年度別大容量総合 CCS プロジェクトを示す。2014 年には前年に比べ米 国、EU で減少しているが、その他の地域での増減はない。 35 2014 30 2013 2012 2011 2010 プロジェクト数 25 20 15 10 5 0 出典: GCCSI The Global Status of CCS 2014 図 2.4-10 地域と年度ごとの大規模プロジェクト数の動き (2) 各地域での CCS プロジェクトの状況 ① 米国 米国では Carbon Sequestration Program として、DOE が中心になって CCS 開発を進めている。DOE では効率向上、コスト低減、低炭素化、CCS の 4 つのキーワードの下にプログラムを実施している。 米国の主要 CCS プロジェクトを図 2.4-11 に示す。この中で CCPI、FutureGEn 2.0、ICCS Area 1 は次 の通りである。 ・CCPI :Clean Coal Power Initiative 4 件のプロジェクトがある。2 件は発電所からの CO2 分離であり(HECA、NRG Post combustion )、 2 件は IGCC(Kemper IGCC Summit TX Clean Energy)である。 ・FutureGEn 2.0 : 大容量酸素燃焼 CCS プロジェクト ・ICCS Area 1 : Industrial Carbon Capture & Sequestration 一般産業からの CO2 分離回収プロジェクトで Archer Dainels Midland、Air Products、Leucadia Energy などのプロジェクトがある。 なお、三菱重工が参加した AEP の Mountaineer Power Plant での大規模ポストコンバッションによる 166 CCS プロジェクトは世界初の 500t/日の CO2 を分離・回収・注入をアラバマ州の Barry 発電所内にて実施 したが、2014 年 1 月には成功裏に終了したと発表されている。 2014 年に終了 図 2.4-11 米国における CO2-EOR デモ試験 出典:DOE NETL ホームページ 米国では特に CCUS が CCS を推進するビジネスとして力を入れられている。米国での CCUS とは、 EOR を意味し、エネルギーと雇用を生み出す「鉱山でない金」とまで称している。 CCUS がビジネスに展開できる条件として、化石燃料での CCS プログラムが順調に進み、もし CCUS な しの NGCC と等価の発電コストが可能となった場合には EOR で 1 トンの CO2 から$32~46 の利益がも たらされるとしている。 次のステップは EOR の技術開発と EOR に最適な油田の発見などにより、2020 年以降には CCUS 商 用化を達成するとの意気込みである。 ・FutureGen2.0 ボイラの担当である B&W 社の情報によると、B&W 社は FutureGen Alliance と Full Front-end Engineering と CCS システムの設計業務を行うことでサインした。これはフェーズ2であり、プラント建設は フェーズ 3 になり 2014 年 6 月開始と予測されている。このプロジェクトで B&W 社はボイラーアイランド、 酸素燃焼システムならびに排ガス性状コントロールシステムを供給することになっている。 プロジェクトのゴールは 90%以上の CO2 を回収することにあり、毎年の CO2 排出量の 100 万トン以上 の削減を図るものである。回収された CO2 は近隣の貯留地点に注入される。 ・Archer Daniels Midland Ilinnois州にて計画されているCCSプロジェクトで、トウモロコシからのメタノール製造工場から排出され 167 るCO2を地中貯留する計画で、2011年11月にCO2注入が開始され、2014年まで総計100万トンになるまで 継続する。技術はDOW Chemicalが開発した化学吸収液でAlstomがプラントを計画している。 本プロジェクトは大容量のDOEから支援されたCCSプログラムに移行し、早ければ2014年第1四半期か ら運転開始となる見通しである。 ・AEP 商用規模のポストコンバッションの実証計画であり、AEP社のMountaineer Plant(ウエストバージニア州 ニューハーベン)で実施する。プラント出力は1300MWeであるが、フェーズ1は30MW分、フェーズ2はそ のうちの235MWe分のCO2をCCS設備に導入し、帯水層にフェーズ1が年間10万トン、フェーズが年間150 万トン貯留する。プロジェクトはフェーズ1が2009年にスタートし、2010年までで4400時間運転され、15,000 トンのCO2が貯留された。フェーズ2は2013年1月に建設開始、2015年12月に運転開始予定であったが、 米国の温暖化政策の不透明さからキャンセルされた。 ・Southern Company 発電端出力 582MWe トランスポートガス化炉プロジェクトは 2006 年 1 月に決定され、ミシシッピー州ケ ンパーに建設される。建設は 2010 年 6 月に開始され、運転は 2014 年 5 月からとなっているが、予算が膨 らみ遅れているものと推察される。67%の CO2 が回収され、EOR に販売される。 予算総額は当初$2.69billion(26.9 億ドル)、DOE 予算は$293million(2.93 億ドル)である。 ・Air Products EOR用として、産業関連から排出されたCO2の回収・濃縮・精製に関するエンジニアリングプランとプロ ジェクトプランに関わる内容である。設置場所はテキサス州のPort Arthurの製油所であり、Air Products社 のSteam Methane Reformer(SMR)を使用する。第2フェーズではCO2分離回収の最新技術をプロポーズす るもので、テキサスのEORパイプラインの計画も含んでいる。 CO2分離は2013年1月から開始され、年間100万トンのCO2回収を計画している。 ②カナダ ・カナダにおける CCS 実証プロジェクト カナダ政府は、2020 年までに地球温暖化ガスを 2005 年比で 17%削減することを目標としており、石炭 火力からは 375 トン CO2/GWh 以下を達成することを明言している。それに伴って、石炭火力発電につい ては、SaskPower Boundary Dam CCS プロジェクトが連邦政府及び州政府の補助金を得て実施されてい る。本プロジェクトは、110MW の褐炭焚発電所を改造して実施する世界で最初の石炭火力による CCS 実 証プロジェクトである。2013 年中に改造工事が終了し、2014 年春に運転開始予定となっている。CO2 回 収は、Cansolv 社(Shell 傘下)のアミン法を採用。年間 100 万トン回収し、EOR に使う予定である。また、一 部帯水層にも貯留する計画である。予算は 12.4 億 CAD ドル、政府から 2.4 億 CAD ドルである。 ・SaskPower Boundary Dam CCS プロジェクト 110MWの褐炭焚発電所を改造して実施する世界で最初の石炭火力によるCCS実証プロジェクトであり、 現在改造中で2013年1月には既設の3号ボイラを撤去し、新設に備えている。2014年に運転開始予定。 CO2回収は、Cansolv社(Shell傘下)のアミン法を採用。年間100万トン回収し、EORに使う予定。 168 ・Weyburn-Midale プロジェクト 2000年から実施しているプロジェクトで、米国の化学会社の石炭ガス化ガスからCO2を分離回収して、 パイプラインで約320km輸送し、EORに使っている。8,000トン/日で回収し、これまで2,000万トン注入した が、漏洩はない。 ・Enhance Energy-Alberta Trunk Line プロジェクト アルバータ州中部に240kmのCO2パイプラインを建設する。既存のパイプライン技術でCO2を加圧し EORサイトまで輸送する。年間最大190万トンで、長期的には年間1500万トン輸送する計画。2012~2013 年で建設し、最初は肥料工場とオイルサンド工場からのCO2を輸送する。 ・Shell Quest CCS プロジェクト 2015年からShell Scotfordのオイルサンド工場からのCO2を回収、輸送、貯留プロジェクト。Shellカナダ (60%)、Chevronカナダ(20%)及びMarathonオイルサンド(20%)のJV。メタンリフォーム設備からアミン法 によりCO2を年間110万トン回収し、帯水層に貯留する。2015年終わりから、この操業から排出されたCO2 を年間100万トン以上地中貯留することになる。 ③EU EU では CCS に関する EU 指令を出して CCS の法的枠組みを規定しているが、2015 年までに最大 12 の実証プロジェクトを推進することとしている。ZEP(European Technology Platform for Zero Emission Fossil Fuel Power Plants)を設置し、当初は 2020 年までに EU 内の化石燃料火力における CO2排出ゼロ を目標としているが、種々の事情で遅れている。主要電力会社を中心に、EU の研究資金をベースに産 業界、国研や大学がコンソーシャムを組み技術開発に注力している。2008 年 12 月には発電所への CCS 設備の導入を促す内容を含む一括法案を採択した。 しかしEUではCCSに関し、2015年に運転開始するデモンストレーションプロジェクトのみならず、EU本 部からの指令にあるように2020年以降の展開についても、素早い動きを必要としている。ZEPのメンバー は2020年以降のCCSに関する提案やファンドへの助言、知見をシェアすること等で、EUデモプログラムを 支援することにしている。 しかし、各州の事情から2014年に運転開始していたRWE社の450MW容量のIGCC+CCS計画、同じく 2011年に運転開始していたNUON社の1300MW容量のIGCC+CCS計画、さらにはドイツVattenfallが計画 していたオキシでのJanschwaldeプロジェクト等が中止に追い込まれている。 EU CCS指令に基づくファンドについて、現在検討中とされているプロジェクトは次の通りであるが、そ の他で提案されているプロジェクトへのファンドは考えられていない。 ・フランス・・・Ulcos BF ・イタリア・・・Porto Tolle ・オランダ・・・Eemshaven、ROAD、Green Hydrogen、Pegasus ・ポーランド・・Belchatow ・ルーマニア・・Getica ・スペイン・・・Compostilla ・UK・・・・Peterhead、Don Valley、C.Gen Killingholme、Teeside、White Rose、Caledonia 169 ④豪州 豪州の地球環境問題対応の中心はCCSプロジェクトであり、連邦政府、州政府及びCO2CRC(CRC for Greenhouse Gas Technologies)等の機関が先導して進めている。全体のプロジェクトマップを図2.4-12 に 示すが、数多くのプロジェクトが実行中あるいは計画中であり、いくつかは商用プロジェクトとして提案され ている。 新技術開発に関する政府の支援も CCS フラグシッププログラムに対して 17 億豪ドル、GCCSI から 3.15 億豪ドルなど総額約 25 億豪ドルの支援が決定されている。 図2.4-12 豪州のCCSフラグシップ/コマーシャルスケールプロジェクト (出典:クリーンコールデー2013発表資料) 具体的に進行中の代表的なプロジェクトを下記する。 ・Queensland州 Callide Oxyfuel Project、Wandoan Project (CCS Flagship Project ) ・Victoria州 CarbonNet Project、Otway Project、Latrobe Valley Post Combustion Capture Project ・Western Australia Collie South West Hub Project、Gorgon Project これらのうちCallide Oxyfuel Projectは日本企業も参加しているプロジェクトであるが、2012年12月15日に 現地で竣工式が挙行され、2012年から約2年間の実証試験が実施されている。本プロジェクトは豪州政府、 クイーンズランド州政府ならびに日本政府から資金援助を受けているほか、JCOALが技術支援をしてい る。 ⑤中国 中国国家発展改革委員会では 2013 年に「NDRC Climate[2013]Document No.849」として CCUS(注) のパイロットとデモ試験についての通知を発表した。その内容は、第 12 次 5 カ年計画で CCUS のパイロッ トと実証試験は重要なタスクであり、火力発電所、石炭化学分野、セメント分野、製鉄分野での CCS デモ 170 プログラムには大きなウエイトがあり、CO2 分離回収貯留実証試験や EOR の分野で人材育成も含め、取り 組みを強化すると明記されている。 (注)中国では CCS の意味で CCUS と表現する事が多い。 この動きに呼応して基礎研究からデモ試験までのプロジェクトの実施がすでに行われていると示されて いるが、そのうち企業が参加しているデモ試験について、その概要を示す。(引用 GCCSI Japan Regional Members Meeting 2013) ・企業が実施しているポスト、プレコンバッションのパイロットとデモ試験 Huaneng Beijing Gaobeidian 火力発電所 3,000t/年 CO2 は食品用 2008 から Shenhua Group’s 100,000t/年 CCS Demo 100,000t/年 2011-2014 この試験の目的は CO2 の化学原料としての利用と帯水層への貯留 Huneng GreenGen IGCC CCS パイロット 60,000-100,000t/年 CCS-EOR 2012 から Shengli Oil Field、Sinopec 40,000t/年 EOR 用 Shanghai Shindongkou 火力発電所 120,000t/年 食品用・製造業用 2010 年から Shuanghuai 火力発電所 10,000t/年 Lianyungang City の CO2 分離回収 Pilot plant 3,000t/年 食品用 2008 年から 2010 年から 食品用・製造業用 2010 年から ・オキシフューエルパイロットテスト 35MWt Oxy Demo Huazhong University of Science and Technology50,000-100,000t/年 ・CO2 の有効利用開発を目指してのパイロット試験 Petrochina の Jilin Oil Field での CO2-EOR 研究・デモプロジェクト China United Coalbed Methane 社の ECBM プロジェクト ENN Group のマイクロ Algae を使ったバイオエネと CCS デモプロジェクト Jinlong-CAS の化学原料製造における CO2Utilization プロジェク ・国際協力 中国-豪州 CO2地中貯留 中国-EU NZEC 協力事業 中国-EU CCS 協力事業(COACH) 中国-イタリア CCS 協力プロジェクと(SICCS) ENEL 中国-US Clean Coal Research Center MOST,NEA,DOE CSLF Capacity Building Projects CSLF MOST-IEA Cooperation on CCUS IEA 中国-ADB Cooperation on CCUS ADB RET, GA UK,EU,Norway EU 2012-2014 2007-2009 2007-2009 2010-2012 2010-2015 201220122008- なお、中国における代表的な CCS 計画である GreenGen プロジェクトについては、天津石炭発電所 に中国初の 250MW 容量 IGCC の建設であるが、プラントが 2012 年 12 月 13 日に正式に稼働したと 人民日報が伝えた。(当初は 2011 年稼働予定、1 年以上の遅れ)華能集団の Web サイトでは、12 月 12 日に送電開始のセレモニーが行われたと発表されている。 171 ⑥日本 ・日本 CCS 調査㈱による実証プロジェクト 日本の CCS 開発に関しては、日本 CCS 調査により CO2 の分離、回収、輸送、地中貯留の一貫実証 プロジェクトが開始された。 我が国では初の大規模排出源の CO2 分離・回収から輸送、圧入、貯留までの CCS トータルシステム 実証を目的として、2012 年~2020 年に苫小牧大規模実証試験を経済産業省の事業として開始してい る。製油所の CO2 を排出源とし、化学吸収法により CO2 を分離・回収し、パイプライン輸送により注入地 点まで CO2 輸送し、海域の地中帯水層に貯留する内容であり、貯留量は年間 10 万トン以上としている。 実証試験は経済産業省から日本 CCS 調査㈱が受託し、最初の 3 年間でプラントを建設した後、3 年間 で CO2 を注入・貯留することとしている。試験終了後もモニタリングを継続する。経済産業省としては 2020 年度までには国内での実用化を目指す。 CO2 注入設備の建設は 2014 年に開始され、2 つの注入井の掘削は 2014 年度末に終了予定で、注 入は 2015 年度第 3 四半期を予定している。 2.4.3 Global CCS Institute 動向 2010 年 7 月に豪州連邦政府により GCCSI(Global CCS Institute)が設立されたが、これまでは GCCSI のキャンベラ事務所、ヨーロッパにパリ事務所、北米にワシントン及びオタワ事務所、日本に東京事務所 が活動してきたが、2013 年 3 月 1 日には北京事務所が開設され、中国が Institute Member として、9 組 織が登録された。この中には、中国政府、華能グループ、主要石油会社、発電会社、大学などが含まれ ている。 2013 年 2 月 13 日現在、合計 368 の組織がメンバー登録しており、その中には多くの政府、主要企業、 研究機関などが含まれている。日本メンバーは日本政府を初め大学、民間会社など合計 45 になっており、 世界で最も多いメンバーを擁している。 GCCSIの活動は、温暖化問題に対応してCCSを加速させることにあるが、最近の主な活動としては、 Knoeledge Sharing、各国のCCSに関する政策提言への支援等があり、具体的にはプロジェクトの立ち上 げ、政策決定者や研究者への支援活動や資料の提供などである。そのためにメンバーシップを募ってい るが、前記のとおり多くのメンバーが集まってきている。日本でも、知識共有ネットワークの構築などを日本 メンバーと行ってきているが、メンバーとface-to-faceの議論をしながらネットワークを構築していく事は、 GCCSIにとって大切な活動と意味付けている。他にもCCSに関するビジネス展開、そのためのコスト検討 なども重要な活動である。 なお、2015年度からGCCSIに登録する団体、企業などのメンバーには、会費が課せられることになって いる。 172 第3章 石炭分野における各国との協力 要旨 多国間協力では、アセアン・エネルギーセンター(ASEAN Energy Center/ACE)との間で MOU を 結んで協力をしているが、JCOAL は ASEAN CCT Handbook の作成を AFOC(アセアン石炭フォ ーラム)年次理事会で提案し、Handbook の作成は 2013 年の AFOC 活動の二本柱のひとつと位置 づけられ、ASEAN 以外の各国関係者からも高い関心が示され、2014 年前半に完成・公開予定とな っている。 東アジア・ASEAN 経済研究センター(Economic Research Institute for ASEAN and East Asia/ERIA)の活動としては、JCOAL は 2012~2013 年に「東アジア域(EAS)における石炭の戦略 的利用」調査を ERIA より受託しており、2013~2014 年にも引き続き上記調査を受託した。 また、Global CCS Institute(GCCSI)は第 6 回メンバーズ総会を 2013 年 10 月 9 日から 11 日に韓 国ソウルで開催し、JCOAL からも参加した。 IEA-GHG(Greenhouse Gas R&D Programme)とは、2013 年度に将来の国際会議の共催、あるい は日本の優れたクリーンコール技術を紹介するワークショップを実施する等の検討を行ったが、 IEA-CCC(Clean Coal Centre)とは、2013 年度は特別の進展はなかった。 次に、二国間協力については、各国以下のようなエネルギー及び石炭政策対話、あるいは技術 交流が開催された。内容は本文参照。 中国:2013 年 12 月 11 日、杭州にて第 6 回日中共同委員会および日中技術交流会 インド:2013 年 9 月 12 日、ニューデリーにて第 7 回日印エネルギー対話 インドネシア:2013 年 3 月 26 日、東京にて第 5 回日尼石炭政策対話 2013 年 3 月 27 日、東京にて第 1 回日尼エネルギーフォーラム ベトナム:2013 年 11 月 28 日、ベトナム ハノイにて VINACOMIN チュアン総裁と METI 石炭課と の面談実施。第 2 回日越石炭政策対話は 2014 年 4 月開催で調整中。 モンゴル:2013 年 5 月 3 日、ウランバートルにて第 6 回日本・モンゴル鉱物資源開発官民合同協 議会 ポーランド:2013 年 9 月 30 日~10 月 5 日、ポーランドにて石炭ガス化プロセス TIGAR 及びその 他のポーランドとの技術交流に関する交流 2013 年 11 月 25 日~11 月 29 日、ポーランドにて我が国の石炭火力における水銀除去 技術及び CO2 転換利用技術に関する技術交流 2013 年 12 月 10 日~14 日、ポーランドにて UBC プロセスに関する技術協力及びその他 の CCT に関する技術交流 モザンビーク:2013 年 5 月 16 日~18 日、国際資源ビジネスサミト(J-SUMIT)及び日ーアフリカ資 源大臣会合にビアッシュ鉱物資源大臣が参加 2014 年 1 月 11 日から 13 日に安倍首相がモザンビーク訪問。ゲブーザ大統領と首脳会 談実施。 173 3.1 多国間協力 3.1.1 アセアン・エネルギーセンター (ASEAN Energy Centre/ACE) (1) 組織体制 ACE は、アセアン 10 カ国(ブルネイ、カンボディア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャン マー、フィリピン、シンガポール、タイ、べトナム)の域内エネルギー戦略の共有化、統一化を図 り域内エネルギー協力を実施することにより域内各国が共通に抱えるエネルギー分野の課題 の解決を経済成長および環境持続性に適合したかたちで進めていくと同時に、地球規模の関 連課題にもアセアンとして応えていく体制づくりを目指し設立された組織である。その設立は 1999 年であるが、前身の ASEAN-EC エネルギー管理訓練・研究センター(AEEMTRC)が 10 年間の活動を終え発展的に解消するかたちで ACE への引き継ぎが行われている。 ACE の事務所はアセアン事務局と同じインドネシア国ジャカルタにあり、所長には ASEAN 各国が交代で就任することになっているがこれまでの実績ではいわゆるアセアンの中心国(フ ィリピン、タイ、ベトナム、インドネシア)から選任されている。ACE の運営審議会はアセアン各 国の上級官僚およびアセアン事務局の代表から構成されるとともに、基本予算はこれら各国に よるエネルギー基金(Energy Endowment Fund)に拠っている。 ACE はアセアン電力会社/電力当局上席フォーラム(HAPUA)、アセアン石油評議会 ( ASCOPE ) 、 ア セ ア ン 石 炭 フ ォ ー ラ ム ( AFOC ) 、 省 エ ネ サ ブ セ ク タ ー ・ ネ ッ ト ワ ー ク (EE&C-SSN)、新・再生可能エネルギー資源サブセクター(NRSE-SSN)等分野別の取り組み 検討に携わる専門家組織と連携、調整しつつその活動成果をより上位のアセアン上級官僚会 合(SOME)やアセアン大臣会合(AMEM)等の政策レベルにつなげていく立場にあり、毎年 9 月に開催される ASEAN エネルギー大臣会合等の高級レベル会合の諸調整も行っている。 (2) 「エネルギー協力のためのアセアン行動計画」(APAEC) ACE は域内エネルギー協力の具体策として「エネルギー協力のためのアセアン行動計画」 (APAEC)の策定と実施支援を行っている。同計画は第 1 次計画(1999 年から 2004 年まで)、 第 2 次計画(2005 年から 2009 年まで)に続き、第 3 次計画(2010 年から 2014 年まで)を実施 中。 同計画における各セクターのプログラム名は次のとおり: 1) アセアン送電線(電力融通)プログラム 2) アセアンガスパイプラインプログラム 3) 石炭およびクリーンコールテクノロジー推進プログラム 4) 省エネ推進プログラム 5) 新・再生可能エネルギー開発プログラム 6) エネルギー政策・計画プログラム 7) 核の平和利用プログラム(第 3 次計画から新規追加) 174 (3) 対外協力 ACE は域内協力強化に努めるだけでなくマルチおよびバイベースでのエネルギー協力にも 積極的に行っている。ACE は EU の支援により設立された経緯があり EU との関係が深くまた EIA とも MOU を結ぶ等マルチ・バイの機関との連携を進めているが、日本では経済産業省の 下省エネルギーセンター(ECCJ)が長期の協力関係を構築している。 またバンコクに拠点を置き JCOAL とも随時連携している USAID ECO-Asia との間で 2009 年までクリーンコールの推進に関する協力関係があった。 なお、これら各国との協力については APAEC で言及されている。 (4) ACE-JCOAL 協力の経緯 JCOAL は、以前より ACE との間では AFOC 年次理事会や AEBF(アセアン・ビジネスフォ ーラム;エネルギー大臣会合と併催)に招待され出席、発表を行う等一定の交流を継続して来 た。その経緯を踏まえつつ成長著しい ASEAN 各国に対し二国間だけでなくマルチのアプロー チも利用し石炭火力にかかる協力案件を形成すべく、MOU を締結した。 JCOAL が ACE との間で 2009 年から 2 年間継続した MOU は ASEAN における石炭火力開 発状況に関する情報交換を主旨としたもので、同 MOU の下で AFOC メンバーによる 3 回の WG(石炭火力開発の現況及び今後の展開見込を議論)及び 2 回の日本への招聘・意見交換 が実施された。 (5) ASEAN CCT Handbook 2011 年 5 月に協力の第 1 フェーズを終了後、JCOAL は協力をさらに具体的なアウトプット を目指す第 2 フェーズへ移行させるべく ACE と協議、ASEAN の石炭火力開発の現況及び政 策動向を踏まえニーズに合った日本の電力 CCT をアピールし案件形成を推進するため ASEAN CCT Handbook の作成を提案、ACE も近年の ASEAN エネルギー大臣共同声明で毎 回強調されている CCT 導入・利用の取り組みを具体的に後押しするものとしてこれを歓迎し た。 JCOAL と ACE は Handbook の作成を AFOC 年次理事会で提案し Handbook の作成は 2013 年の AFOC 活動の二本柱のひとつと位置付けられ、また ASEAN 以外の各国関係者からも高 い関心が示されている。 なお同 Handbook は 2014 年前半に完成、公開予定である。 (6) その他 ACE は近年、CCS についても GCCSI 等の協力を得てワークショップを開催する等、取り組み を強化しつつある。 ACE は、成長著しい ASEAN 各国にとって成長軌道を妨げることなく排出を抑制するには現 状規模的には急伸する需要に対応できない新・再生可能エネルギーではなく石炭を電力供給 の主柱とするのが妥当、との基本線に沿い石炭資源及び石炭利用、とりわけ石炭火力にかかる 議論を深め、国間の経済・社会の成長段階が異なることは踏まえつつも域内各国の意見をまと め発信できるよう調整に努めている。 175 JCOAL は、日本の知見と経験を ASEAN 各国で活用してもらい日本の CCT 導入がさらに促 進されるよう、引き続き ACE との協力を継続・強化していこうとしている。 3.1.2 東アジア・ASEAN 経済研究センター(ERIA)の活動 東アジア・ASEAN 経済研究センター(ERIA; Economic Research Institute for ASEAN and East Asia)は、2006 年 8 月に日本から「東アジア版 OECD 構想」として提唱され、2007 年 11 月の第 3 回東アジアサミットの議長声明等を受け、2008 年 6 月 3 日に ASEAN 事務局における ERIA 設立 総会にて設立された。ERIA は、政策研究事業の3つの柱として、「東アジア経済統合の推進」、「域 内経済発展格差の縮小」、「持続可能な経済成長」を掲げ、調査分析・政策提言等の知的貢献を 通じて、地域一体となった政策的取組を支援している。具体的には、域内の研究機関のネットワー クなども活用して各種政策研究プロジェクトを実施し、その成果を東アジアサミットや ASEAN 経済 大臣会合等の場で各国首脳・閣僚を含む政策当局者に提言し、政策の実現を促している。 2012~2013 年に、JCOAL は「東アジア域(EAS)における石炭の戦略的利用」調査を ERIA より 受託し、関係する主要石炭生産・消費国のエネルギー・電力の関連機関からのメンバーで構成さ れる Working Group を設置して本調査を検討・審議した。EAS 地域における石炭の重要性、およ び CCT 導入により期待される各種効果としての「環境影響低減効果」、「開発・投資への波及効 果」、「雇用創出効果」等について調査・検討した。さらに CCT の確実な普及のためには、各国の 実情に応じて最適な技術を選択・導入できるよう、技術毎に実現可能な発電効率、環境性能、メン テナンスの体制等を提示する事が必要であり、それを実現するための方策としての技術ポテンシャ ルマップを提案した。 この調査結果については、2013 年 9 月のクリーン・コール・デー国際会議で EIRA の研究担当者 から報告された。また、調査報告書は ERIA の HP で公開されている。 (http://www.eria.org/publications/research_project_reports/) 2013~2014 年は、上記調査を継続して行うこととなり、CCT 導入による経済波及効果の更なる 検討やシェールガスによる影響等を調査するとともに、各国の状況に応じた CCT 導入・普及のた めのロードマップや技術ポテンシャルマップを作成することになっている。 3.1.3 Global CCS Institute(GCCSI) GCCSI は、大型 CCS 実証プロジェクトの推進、商業化を支援することを目的としており、国際的 なコーディネートや各種支援(法的、技術的)等を促進する事業を実施している。 2011 年 9 月 5 日に日本事務所が東京に設立されたが、2013 年 3 月 1 日には中国に北京事務 所が設立された。現在、韓国にも事務所設立構想が挙がっているようである。 現在の世界のメンバー数は 368 機関で、わが国からは 45 機関がメンバーとなっている。 <第 6 回メンバーズ総会 2013 年 10 月 9 日(水)~11 日(金)、韓国ソウル> ソウル、コンラッドホテルにおいて、パネルディスカッションを中心とした会議が行われ、参加者は 176 250 名を超え、第 6 回となる今回はこれまでで最大規模となった。パネルセッションのテーマと登壇 者は次の通り。 パネル 1 気候変動への取り組みとエネルギー安全保障 -CCS の果たす役割- Dr. Myles Allen, University of Oxford Tim Bertels, Shell Philippe Benoit, IEA Dr. Subho Banerjee, Department of Industry(Australia) パネル 2 アジア諸国における CCS Chen Zhihua, National Development & ReformCommission (China) Ashok Bhargava, ADB Dr.Chonghun Han, Seoul National University パネル 3 安全で効果的な CCS の展開のための協力 David Hawkins, Natural Resources Defense Council Peta Ashworth, CSIRO Sean McClowry, GCCSI パネル 4 最新の CCS 技術動向 Takaya Watanabe, MHI Dr. Elizabeth Burton, Lawrence Berkeley Dr. Kunwoo Han, RIST パネル 5 稼働中の CCS プロジェクト Dr. Chong Kul Ryu, KEPRI Dr. Gao Ruimin, Yanchang Petroleum Dr. Jon Gibbins, university of Edinburgh パネル 6 他のクリーンエネルギー技術開発と同様な政策投入 Jeff Chapman, CCS Association Dick Wells, National CCS Council (Australia) Matthew Billson,Department of Energy &Climate Change (United Kingdom) パネルセッションはそれぞれ1時間で、登壇者によるプレゼンテーションののち会場との間で質 177 疑応答が行われるという形式によって進められた。登壇者すべてが CCS を推進していくべき立場 にあり、地球温暖化の抑止のためには今直ちに本格的な取り組みを始めるべきであり、遅れれば 遅れるほど、必要となる対策の規模、費用が膨らんでいくというのが全体を通したメッセージとして 出されたと感じられた。また、CCS の進捗の現状について、世界的に停滞感があることから、如何 に CCS の重要性を発信し、共有していくかということについても多くの登壇者が触れており、関係 者の焦りにも似た感覚を感じた。 パネルセッションの前に、GCCSI の CEO ブラッド ペイジ氏からプレゼンテーションが行われ、ま とめとして6項目の提言がなされた。 提言 1. 気候変動の緩和に対する長期的なコミットメント、CCS が不利とならないための市場原理に 基づいた強力なメカニズムを盛り込んだ持続的な政策支援が実施される必要がある。 2. デモンストレーションプロジェクトを展開していくための短期的支援を加速的に投入していく ことが必要である。そのために、先行しているプロジェクトの計画段階から建設までを速やか に進め、操業中に必要となる支援を実施する等、的を絞った財政支援が必要となる。 3. 長期にわたる信頼性の確保といった、現時点で懸念される重要な規制に関わる不確実性に ついて対応策を講じなければならない。そのためには、豪州、カナダ、ヨーロッパ、米国での これまでに行われた、そしてこれからも行われていく法的または規制に関わる課題の解決に 向けた取り組みを学ぶことが必要である。 4. CCS の研究開発に対する強力な財政支援を継続し、CCS コミュニティを横断する知識の共 有に向けた共同作業を促進していくことが必要である。 5. 貯留サイトの選定を進めることにより、CCS 実証に向けた明確な道筋を作りだす必要があ る。 6. 複数の CO2 回収プロジェクトにとって幹線となる共有のハブを経由する輸送インフラの効率 的な設計と建設を促進することが必要である。 年次総会(Institute’s Annual General Meeting)概要 株主総会に当たる総会が10月11日午前中、ホテル内会議室で約40名が参加し開催された。 事前にインターネット経由での投票も可能であった。会費制移行に向けた定款の変更が議題の一 つになっており、投票結果が注目されたが、その場では開票されず、国際会議全体が終了したの ち、メールにて原案通り可決されたとの連絡が会員あてに送付された。 3.1.4 IEA-GHG JCOAL は、2012 年 6 月 5 日、IEA-GHG(Greenhouse Gas R&D Programme)と情報交換及び業 178 務・国際会議等での協力等に関する MOU を締結し、関係を強化した。2012 年 11 月、IEA-GHG の Executive Committee 会議に参加。 2013 年度は、将来の国際会議の共催、あるいは日本の優 れたクリーンコール技術を紹介するワークショップを実施する等の検討を行った。 3.1.5 IEA-CCC JCOAL は、2012 年 10 月 16 日、IEA-CCC(Clean Coal Centre)と情報交換及び業務・国際会議 等での協力等に関する MOU を締結し、関係を強化した。2013 年は、特別の進展はなかった。 3.2 二国間協力 3.2.1 豪州 2013 年度は政策対話等が開催されなかった。 3.2.2 中国 (1) 第 6 回 日中共同委員会および日中技術交流会(2013 年 12 月 11 日、於:中国 杭州) 第 6 回日中共同委員会の開催にあたり、中国電力企業聯合会(CEC)と JCOAL が事前協議し た結果、日中共同委員会に合わせてワークショップも開催する運びとなった。12 月 11 日に開催さ れた同委員会およびワークショップにおいて、中国の発電効率改善状況、PM2.5、水銀等の環境 問題に関する日中双方の状況を報告して今後の進め方を議論した。参加者は下記の通り。 日本側委員: 石炭課 井上課長補佐、JCOAL 並木理事長、JEMA 海老塚専務理事、電事連 久米専務理事、 エネ総工研 入谷参事 日本オブザーバ: バブコック日立 木田専務、三菱重工 臼井環境プラント副総括部長、東芝三菱電機産業システ ム 大和田取締役、電源開発 石渡中国総代表 他 10 名 中国側委員: 電力司総合処 馬軍主任、CEC 魏副理事長、西安熱工院汪副院長 中国オブザーバ: 華能集団、大唐集団科学研究院、華電集団、国電集団、中電投集団、国華電力、浙能集団 中国は大気汚染が深刻化するなか、習近平新政権は大気汚染対策 10 カ条の措置を提示し、 国務院が 2017 年までの具体的な大気汚染対策をまとめた「大気汚染防治行動計画」を発表、これ に呼応して北京市が「大気清浄行動計画(2013-2017 年)」を制定するなど、中国では中央政府な らびに重点都市が大気汚染防止対策を相次いで打ち出している。このような状況を受け、第 6 回 委員会では昨年度 8 月に東京で開催された第 5 回委員会で示された今後の展開方針をベースに、 石炭火力発電に関連する環境対策(SOx、NOx、煤塵、水銀、その他環境汚染物質等)に関する 179 日中協力の促進を最重点課題としつつ、IGCC、A-USC、CCS 等の先進的石炭火力発電技術分 野での日中交流促進ならびに従来の既設石炭火力の効率改善に向けた日中の電力関係企業間 の交流に関する今後の協力についても協議する予定である。 CEC 魏副理事長はリノベーション事業の今までの努力を高く評価していると発言し、引続き両国 政府からの支援を期待していると述べた。発言の要旨は下記の通りである。 ・近年は一部の先進国は積極的に省エネ・廃棄物削減義務を守り、多くの発展途上国は実情に応 じて、また先進国の資金、技術の協力の下、地球環境を改善するために貢献をしてきた。これら 成果は各国政府の支援に密接な関係があるため、今後も両国政府の強力な支援が必要で不可 欠であると思う。 ・業界団体間の架橋の役割を十分に発揮すべきである。市場経済メカニズムにおいても政府の指 導的役割が依然として非常に重要であると認識しながら、ビジネスベースの協力は政府の支援 を頼っている。企業間の相互交流と理解が最も大事なことであり、今後さらに企業間の信頼を深 める交流を強化することが重要な課題となる。これについて良好な実績を作ってきており、2010 年以降に4ヶ所の発電所での診断フォローを実施しながら ESCO モデル事業の実施可能性を検 討し、構築に取組んできた。 ・現在までの実績を活かしながら協力成果を拡大すべきである。日中双方は単に過去のリノベーシ ョンに止まらず協力の拡大に工夫しなければならない。如何に拡大するか、真剣に検討する必 要があるが、次の 2 点を重視してほしい。1 つは診断の成果を活用、2 つ目は国連への CDM 事 業申請を加速することである。我々は着実に業務を展開してきているものの、飛躍的な突破がま だ実現されていない。客観的な原因があるが、適切な突破口を見つけていないことは我々に問 われます。そのため、我々の共同努力によっていっそう深掘りする必要があると思います。 ・日中両国の政府から大きな支援を期待していると同時に業界団体の役割や、日中企業間の共同 努力等の優位性を発揮して、今後大いに成果を獲得することができると信じている。 委員会の結果、発電効率の改善効果を定着させるため、過去に設備診断した発電所(8ケ所)、 及び主要電力会社のメンテナンス状況を CEC と共にフォローすること、脱硫設備の能力アップ、脱 硝設備の普及を支援するため、CEC と共にセミナー等を開催し、日本企業との環境技術交流のプ ラットホームを構築することを決定した。 また CEC と JCOAL 間にて「中国石炭火力発電所の効率向上及び環境改善に関する協議書」 を締結調印した。 180 写真 「中国石炭火力発電所の効率向上及び環境改善に関する協議書」を締結の様子 3.2.3 インド (1)第7回日印エネルギー対話 茂木敏充経済産業大臣とインド計画委員会モンテク・シン・アルワリア副委員長は 2013 年 9 月 12 日、インドニューデリーにおいて、日印間のエネルギー対話の第7回会合を行った。今回の会合 では日印エネルギー対話を毎年開催する事が重要であると認識エネルギー安全保障および地球 環境問題は持続的かつ実効的な行動を必要とする重要な優先課題であると認識した。 本対話では省エネルギー、再生可能エネルギー、電力、石炭等の協力について話し合われた が、そのうち電力ならびに石炭における分野の協力について示すと次のように確認された。 なお、次回の第8回日印エネルギー対話は、2014 年の双方望ましい時期に日本で開催することで 決定された。 3.2.4 インドネシア (1)第 5 回日尼石炭政策対話(2013 年 3 月 26 日、東京) 第 5 回日尼石炭政策対話が 3 月 26 日に東京で開催された。 石炭政策対話は今年で第 5 回目となるが、当日はインドネシア側、日本側合わせて 40 名程度が 参加した。インドネシア側からの参加者は経済担当大臣府、エネルギー鉱物資源省、外務省、日 本インドネシア大使館からの参加があり、エネルギー鉱物資源省では大臣官房、鉱物石炭総局、 電力・エネルギー利用総局、地質庁、研究開発庁、教育訓練庁からの参加であった。また、政府 関係機関としては PTBA(国営石炭公社)、インドネシア石炭協会からの参加もあった。日本からは METI 資源・燃料部石炭課、JOGMEC、NEDO、JBIC、JICA、JCOAL が参加した。インドネシア側 議長はエネルギー鉱物資源省のエディ鉱物石炭総局石炭事業管理局長、日本側の議長は安居 資源・燃料部石炭課長が行った。会議ではセッションごとの話し合いがもたれ、セッション 1【石炭政 策】、セッション 2【石炭資源開発】、セッション 3【人材育成】、セッション 4【技術開発】、セッション 5 【高効率石炭火力発電】、セッション 6【その他】に分かれて実施された。 日本企業の関心が高い石炭への付加価値義務、また、輸出税については、現時点では石炭へ 及ぶことは無いとの発言がインドネシア政府側からあり、また、石炭の効果的な利用や CCT 技術の 積極的な導入促進や石炭火力発電所入札に際しての導入技術のトータル的な適正評価に関する 議論が交わされた。 181 ① セッション1【インドネシア、日本の石炭政策】 日本側から 1)日本のエネルギー政策の歴史、2)2012 年新政権下での新エネルギー政策、3) 日本のエネルギーミックスの現状、4)世界のエネルギーでの石炭の役割、5)石炭資源量、6)世界 の石炭需給、7)石炭価格、8)資源外交、9)低炭素化、10)CO2 排出量削減、11)低品位炭の利用 促進等についての発表があった。 インドネシア側から 1)インドネシア国家政策(経済・投資・石炭のポテンシャル)、2)インドネシア の現状(石炭需給、石炭輸出、価格、鉱物生産量、鉱業権、石油ガス・石炭の税外収入)、3)政 策・戦略(4 大政策、投資ロードマップ、石炭政策、国家エネルギーミックス計画、石炭戦略、電力 需給、石炭投資機会、MP3IE マスタープラン、精錬所計画)等の発表があった。 ② セッション2【石炭資源開発】 日本側から「炭素・資源循環型炭鉱地域のマスタープラン」についての 1)事業概要、2)スケジュ ール、3)2012 年の訪問箇所、4)候補炭鉱、5)基本コンセプトについての発表があった。 インドネシア側から「石炭探査事業の計画と今後の協力」についての 1)これまでの探査事業の実 績、2)探査事業評価、3)探査箇所、4)事業の結果、5)資源量・埋蔵量、6)新規探査提案につい ての発表と「坑内採掘のアイルラヤ事業」についての 1)背景、2)地質状況、3)生産量、4)コールフ ロー、5)鉱区断面図、6)路頭位置、7)埋蔵量についての発表があった。 ③ セッション3【教育、人材育成】 日本側から「石炭技術海外技術移転事業」として 1)人材育成、2)実施サイト、事業実績について の発表があった。 インドネシア側から「炭鉱技術研修(石炭採掘、選炭研修)」として 1)概要、2)教育訓練庁組織、3) 協力事業結果、4)新規研修提案、5)選炭関連についての発表があった。 ④ セッション4【技術開発】 日本側から「日尼石炭利用技術協力の現状と将来計画」について 1)高効率石炭利用技術の普 及、2)インドネシアでの CFB 導入、3)STB 導入による低品位炭利用調査についての発表と「低品 位炭の利用技術」についての 1)コークス製造、2)石炭スラリーの発表があった。 インドネシア側から「コークスに関する共同事業」について 1)背景、2)開発結果、3)協力事業の 提案、4)その他事業(石炭スラリー、IHI ガス化、石炭液化)の発表があった。 ⑤ セッション5【高効率石炭火力発電所】 日本側から「高効率石炭火力発電普及協力」について 1)ジャワ-バリでの電力拡張状況、2)日本 の EPC の実績、3)EPC スケジュールの発表があった。 インドネシア側から「石炭火力発電所の将来開発」について 1)インドネシアでの電力インフラ、2) 電力の現状、3)電力開発計画、4)CFPP 導入計画、5)投資計画、6)投資メカニズム、7)エネルギ ーミックス目標の発表があった。 ⑥ セッション【その他】 日本側から「JCOAL 活動の現状」について 1)CCT 研修(概要、USC 技術、PLN との技術交流、 人材育成協力)、2)JCF 計画のプレ FS(国家エネルギー政策、電力計画、CO2 排出削減政策、技 182 術概要、協力体制、リプレース候補箇所)の発表があった。 インドネシア側から「MP3IE 達成への低品位炭利用支援」について 1)石炭資源量・埋蔵量、2)低 品位炭炭鉱、3)MP3IE 政府政策、4)MP3IE に関する投資計画、5)Delma 炭鉱、6)インフラ計画、7) Pendopo 炭鉱、8)CCT 技術の発表があった。 第 5 回日尼石炭政策対話についての政府発表のリリース内容は以下の通りである。 1) 両国は、継続的・安定的な石炭貿易関係の維持と、石炭探鉱・開発やそれらに関する人材育 成について引き続き協力していくことを確認された。 2) 日本政府からインドネシア政府に対して、我が国への高品位炭の安定供給の継続を要請する とともに、それらに資する探鉱・開発へ協力していく用意がある旨を伝え、今後も両国の互恵的 協力について議論を続けていくことを確認した。 3) インドネシアにおいては、石炭埋蔵量の約半数を占める低品位炭の有効利用は重要な政策 課題であり、低品位炭を利用した発電や、スラリー化、ガス化、改質等における両国の協力を 一層推進していくことを確認した。さらに、低品位炭利用の商業化に向け、日本政府からインド ネシア政府に対し、税の減免等インセンティブの検討を要請した。 4) 今後インドネシアにおいて数多く導入計画がある高効率石炭火力発電について、両国の一層 の協力の重要性を確認した。併せて、日本政府からインドネシア政府に対して、新規の石炭火 力発電所のプロジェクトにおいて我が国企業が有する先進的な設備、運転・管理技術に対し 適正な評価が行われることや我が国の公的金融支援の円滑な実施に対する協力を要請した。 (2)第 1 回日尼エネルギーフォーラム(2013 年 3 月 27 日、東京) 日尼石炭政策対話の翌日の 3 月 27 日には同じ会場にて第 1 回日尼エネルギーフォーラムが開 催された。本フォーラムは民間企業も参加するオープン的なものであり、日尼双方から、政府関係 者や民間企業からの発表があった。インドネシア側議長は Mr.A.Edy Hermantoro エネルギー鉱物 資源省石油・ガス総局長、日本側の議長は中西宏典資源エネルギー庁大臣官房審議官(エネル ギー・技術担当)が務めた。セッションの内容はセッション1が【エネルギー政策】について、セッショ ン 2 が【石油・ガス】について、セッション 3 が【電力】について、セッション 4 が【省エネ・再生可能エ ネルギー】について、セッション 5 が【その他】についてであった。その他では日本側から石炭ガス 化について、インドネシア側からはエネルギー、鉱物資源に関する研究開発についての発表があ った。 3.2.5 ベトナム 2013 年 11 月 28 日、ベトナム石炭鉱物工業グループの本社で、VINACOMIN のレ・ミン・チュアン 総裁と経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石炭課の島倉企画官が会談を行った。本会談 では、2014 年 3 月に予定されている第 2 回日越石炭政策対話、ケーチャム選炭工場の導入、石炭 の輸入等について意見交換が行われた。島倉企画官からは、ベトナムの高品位の無煙炭は日本 183 の製鉄産業にとって非常に重要な炭種であることが示された。一方、チュアン総裁からは、日本政 府及び日本関係機関の VINACOMIN に対する金融ローンの支援、技術移転、人材育成、環境改 善等数多くの事業支援に感謝の意が示された。また、2015 年以降、この 20 年間余り VINACOMIN と協力してきた日本を含む伝統のパートナーに優先的に国内で利用されない高品位炭を引き続き 輸出するという内容が表明された。 第 2 回日越石炭政策対話は、2014 年 4 月頃開催で調整中である。 3.2.6 カナダ ・サスカチワン州政府との MOU の更新 サスカチワン州政府と JCOAL は、2011 年 1 月 25 日に、CCT/CCS 分野で情報交換し、協力プ ロジェクトを見出すための MOU を締結した。MOU は、何もなければ 2 年毎に自動的に更新される ことになっているが、丸 2 年が経過した 2013 年にこれまでの成果を Appendix に記載し、更新しよう という事で双方合意し、MOU の更新を行った。 <Appendix の概要> ・カナダ SaskPower 社と㈱日立製作所は、SaskPower 社の Shand 発電所に、日立製の CO2 分離 回収試験装置を設置して、共同研究開発を実施する。アミン吸収法による分離回収技術で、実際 の石炭火力発電所で試験を行うことで、実機運転状態におけるパフォーマンスを確認することがで き、商業化が加速されるものと期待される。 ・カナダ SaskPower 社と中外テクノス㈱及び K-COAL CANADA 社は、SaskPower 社が実施する Aquistore プロジェクトにおいて、中外テクノス㈱の技術を使った CO2 の地上漏えいモニタリングを 実施することで3者が協力することについて、MOU を締結した。 ・カナダ SaskPower 社と㈱NTT データ CCS は、Aquistore プロジェクトにおいて、貯留した CO2 の 挙動を把握するための連続的な地震波観測について、㈱NTT データ CCS の技術を試験的に実 施することについて合意した。 ・カナダ SaskPower 社は、Boundary Dam3 プロジェクトにおいて、プロジェクト実施に係る技術的経 済的検討についてメンバー制コンソーシアムを形成して、運転データを開示することにより検討を 行うこととしており、そのコンソーシアムのメンバーと共に検討を行うアドバイザリー委員の一人とし て JCOAL が指名された。 3.2.7 モンゴル 第 6 回日本・モンゴル鉱物資源開発官民合同協議会 1. 概要 第 6 回日本・モンゴル鉱物資源開発官民合同協議会が 2013 年 5 月 3 日にモンゴル国ウランバ ートル市の外務省で開催された。この会議は 2007 年からほぼ毎年日本とモンゴルの相互開催とな 184 っており、前回(2011 年 12 月)は東京で開催された。日本側は菅原副大臣が、モンゴル側はガン ホヤグ鉱業大臣が出席した他、日本及びモンゴルの官民約 110 名が出席した。モンゴル側からの 参加者は鉱業省、外務省、経済開発省、産業農業省、鉱物資源協会等の政府関係者及び政府 系企業を始め、ENERGY RESOURCES 社等の多数の民間企業が参加した。また、日本側からは、 METI 資源・燃料部、JOGMEC、NEDO、JICA、JCOAL 及び商社等の民間企業が参加した。 2. モンゴル側発表内容 ① 地質調査、レアアース分野における協力関係(鉱業省地質政策課) 鉱業分野における急激な変化は、モンゴルにとっては国際市場に注目を浴びた要因の一つに なったが、国民全体に対して情報の透明性が図られていなかったため、不満の声が高かったという 欠点もあった。この欠点を直すべく鉱業省では、様々な政策をたてて取り組んでいる。政策が開始 された当初は、厳しい試練もあり、日本の JICA や JOGMEC 等の組織団体、機構の協力を得て、 国民に対して透明性を図るためのもととなる調査を行ったことに対して感謝している。 ② 地質調査、レアアース、CCT 分野における協力関係(鉱業省燃料政策課) モンゴルと日本の協力関係において、地質調査、探査調査がどのように行われてきたかの簡単 な説明がなされた。レアアース分野においては、鉱業省と地下資源庁は日本の JOGMEC、AIST と いった機構と協力して、地下資源開発分野における協力関係に関する覚書に 2010 年 7 月に署名 し、ウムヌゴビ県、ドントゴビ県、ドノゴビ県等において、2010 年 10 月から共同調査を実施している。 CCT については、ウランバートル市の大気汚染が深刻であるため、現在、市内で使用している年 間 60~70 万トンの石炭に対してセミコークスは 1.1 万トンしかなく、非常に少ない。これを解決する ためには石炭加工・製造分野で日本の技術の導入、人材育成が重要である。 ③ ダルハン製油所(石油分野の協力関係)(鉱業省石油庁) 1998 年に試験的に石油採掘が開始され、現在までに 1,300 万バーレルの石油が生産され、中 国の市場に出している。 3. 日本側発表内容 ① 石炭分野での期待と協力 モンゴルのタバントルゴイ炭田に日本側として大変関心を持っており、モンゴル側の日本企業に 対する支援及び日本企業・外国企業が安心して投資し、長期に事業が行えるような投資環境の整 備にあたるように期待している。モンゴルの石炭産業の発展に貢献できる日本の技術(ブリケット製 造、乾式選炭)の紹介を行った。 ② タバントルゴイ炭田開発への期待 タバントルゴイ西鉱区の国際入札については、2011 年に日本・韓国・ロシアのコンソーシアムとし 185 て、これに応札し、モンゴル政府ワーキンググループと公式交渉を行ってきたが、2012 年以降、交 渉は完全にストップしているのが実状である。交渉の今後の取り組み方・見通し等について現状を モンゴル政府側から説明して欲しい。鉄道プロジェクトへの参画というものがタバントルゴイ権益取 得の前提となるかについての確認、モンゴルの石炭の輸出拡大のために日本側として協力出来る と考えている。 ③ 天然資源に関わる取組、モンゴルでの貢献 モンゴルは豊富な天然資源を保有しており、かつ日本と中国に近い地理にあるのでビジネスを 行うのは非常に魅力的な地域であると捉えており、今後も資源開発を進めていきたい。モンゴルの 資源の中でも特に関心があるのがタバントルゴイ炭田で、炭鉱の開発に加えて原料炭の販売、発 電、鉄道等を含む周辺のインフラの建設、プロジェクトの資金調達等、様々な角度からタバントルゴ イ炭田の開発に貢献する準備がある。 ④ 水を使用しない乾式選炭技術 乾式選炭技術の基本について説明、シリカの砂、ジルコンの砂、鉄粉の 3 種類の粉体を混合さ せることにより、比重 1.25~4.4 までの流動層を自由に作ることが可能である。このような流動層を 用いた比重選別機は、既に実用化されており、資源のリサイクル分野では、プラスチックの選別や アルミニウムの選別などに使われている。石炭選別については、現在開発中ではあるが、既にパイ ロットプラントの試験は終了している。 ⑤ モンゴルにおける大気汚染問題解決に対する日本の協力の経緯と達成状況 モンゴルでは、都市部への人口集中により、生炭の直接燃焼に起因する大気汚染、それに伴う 呼吸器疾患など健康被害の拡大が深刻な問題となっている。2006~2007 年に乾留ブリケットに関 する FS を実施、2009~2012 年においては試験研究用の乾留炉を日本の費用でモンゴルに設置 し、品質が良いセミコークスとブリケットの製造が出来ることを実証し、また人材育成も実施した。 ⑥ モンゴルにおけるセミコークス製造の検討 モンゴルにおけるセミコークス製造設備について検討を進めており、年産 25 万トンの規模である。 日本の技術である乾燥器(スチームチューブドライヤー)を用いて、褐炭の水分を 10%まで乾燥、そ の後、外熱式ロータリーキルンで乾留し、成型機でブリケット化する。乾留工程であるキルンからの 乾留ガスを燃焼することにより、ドライヤとキルンの熱源としており、全て LPG を熱源にするのと比較 して、約 10 分の 1 の消費量でプラント運転することができる省エネルギー設計となっている。 4. 日本・モンゴル代表者挨拶概要 ① モンゴル側挨拶 モンゴル側の議長を務めた鉱業省のジグジット次官が挨拶を行い、概要は以下のとおりである。 186 タバントルゴイの開発が始まった当初の世界情勢及び石炭市場の情勢は今と全く異なっており、 前政権の時代に行われた入札の結果は行き詰まった。その原因の 1 つしてコンソーシアムを組ん だ企業の中で、意見の一致がなかったことが挙げられる。新政権としてはタバントルゴイ石炭開発 については、まず、インフラ整備を整えるため、鉄道の建設を行う。市場というものは変わりやすい もので石炭の市場も少し待てば良くなる可能性もあり、それを待ちながら、鉄道建設を行えばタバ ントルゴイの価値も上がる。鉄道建設以外の残るインフラ開発・整備の膨大な事業が残っている。 具体的には、火力発電所、水事業、選炭等大きな案件がある。日本側にとっても良質な石炭を長 期に渡って調達することに関心があると思う。長期的に契約を結ぶことは可能であると考えている。 ② 日本側挨拶 日本側を代表して経済産業省の菅原副大臣から挨拶があり、主な内容は以下のとおりである。 日本とモンゴルの両国の官民のそれぞれの方々が一堂に会し、貿易・投資そして鉱物資源に関す る双方の意見あるいは思ったことを忌憚なく議論されたと思う。協議会においてお互いに胸襟を開 いて、できること・できないことをはっきり言う。そういう、今までの ODA の時代を乗り越えた新しい日 本とモンゴルの関係を築くことが大事だと感じた。 鉱物資源開発官民合同協議会の様子 187 日本・モンゴル協力案件 署名式 3.2.8 ポーランド (1)ポーランド NCBR と JCOAL との MOU 締結 2013 年 10 月 3 日付で、ポーランド国立研究開発機構(NCBR)の Leszek Grabarck 副理事長と JCOAL 並木理事長とのサインによる MOU が締結された。NCBR はポーランドにおける各分野の研 究開発に資金を提供する機関で、今回の MOU 締結により我が国とポーランドで共同研究開発さ れるプロジェクトについて、ポーランド側の資金提供が得られることとなった。 この先陣を切って、AGH 大学と東京大学生産技術研究所が共同で実施する「ポーランド産褐炭 乾燥特性基礎試験」に対して、NCBR から AGH 大学へ資金提供がなされることとなり、本年度 AGH 大学の研究者が東京大学に滞在し、ポーランド産褐炭の乾燥特性基礎試験を実施してい る。 (2)石炭ガス化プロセス TIGAR 及びその他のポーランドとの技術協力に関する交流 日時:2013 年 9 月 30 日~10 月 5 日 参加者:(ポーランド)AGH 大学、石炭化学処理研究所(IChPW)、鉱山中央研究所(GIG) (日本)IHI、JCOAL (結果) ① IHIの石炭ガス化プロセスTIGARに関して、石炭化学処理研究所に最近できたCCTセンタ ーの研究施設を利用しての共同研究の可能性が確認されたので、IHIでサンプル炭物性試 験を実施し、その結果を踏まえてIHIが提案書を作成することとなった。 ② 両国の技術協力に関して、ポーランド側で関心のあるテーマとして、CMM濃縮技術、CO2の 化学的利用技術、水銀除去技術、褐炭水素チェーンが挙げられた。 (3)我が国の石炭火力における水銀除去技術及び CO2 転換利用技術に関する技術交流 日時:2013年11月25日~11月29日 188 参加者:(ポーランド)AGH 大学、石炭化学処理研究所(IChPW)、鉱山中央研究所(GIG)、 TAURON 社(電力) (日本) 東京理科大学杉本教授、バブコック日立、JCOAL (結果) ① CO2転換利用技術に関しては、紹介されたテーマについてポーランド側の関心度を取りまと めることと、さらに個別技術の研究開発の進捗状況等を調査することとなった。 ② バブコック日立の水銀除去技術はすでに完成したものであり、ポーランド電力会社と日立に よる民-民ベース案件とする。学術的側面については、AGH大学がどのような協力ができる か検討する。 (4) UBC プロセスに関する技術協力及びその他の CCT に関する技術交流事業 日時:2013 年 12 月 10 日~14 日 参加者:(ポーランド) PGE 社 (日本)神戸製鋼所、JCOAL (結果) PGE本部において、UBCプロセスの概要説明、6月の打合せ後にPGE社から提供された褐 炭サンプル(ベルハトフ発電所及びタウロン発電所の標準炭)に関する基礎試験結果(中間 報告)を報告し、山元発電での適用技術としてのプレFS実施可能性について打診した結果、 PGE社の役員会にて検討するとの回答があった。 3.2.9 モザンビーク (1) 国際資源ビジネスサミット(J-SUMIT)にモザンビーク鉱物資源大臣が参加 ①J-SUMIT について 平成 25 年 5 月 16 日、17 日の 2 日管の日程で、東京のホテルにて国際資源ビジネスサミッ ト(J-SUMIT)が経済産業省と独立行政法人石油ガス・金属鉱物資源気候(JOGMEC)との共催 で開催された。また、サミット開催翌日の 5 月 18 日には「日アフリカ資源大臣会合」が開催され、 日本とアフリカの資源の在り方について議論された。アフリカより 11 ケ国の大臣を含む 15 ケ国 の参加がありました。 J-SUMIT では「サンゴのフロンティア」であるアフリカを中心とした海外資源ビジネス推進と日 本が誇る技術活用によるビジネス促進という二つの観点から、アフリカ諸国の最新の情報の共 有を図り、また、具体的なビジネスマッチングによる商談を活性化することを目的としていま す。 ②モザンビークビアッシュ鉱物資源大臣による「モザンビークの資源開発政策」発表 モザンビークよりは、ビアッシュ鉱物資源大臣が参加され、「モザンビークの資源開発政策」 と題する発表が行われた。大臣の発表では、モザンビークは膨大な天然資源を持った国であ り、これらの資源をうまく活用するためには、政府が戦略を立てる必要があること、また、鉱物 189 資源戦略として、鉱物資源は有限であり、持続的な管理が必要であること、採掘、開発の知識 を集積すること、透明性を図ること、生産性のアップを図り、環境保全に注視すること、人材育 成を促進し、組織の補強を図ることが示された。 ③日-アフリカ資源大臣会合 J-SUMIT の翌日の 5 月 18 日に日-アフリカ資源大臣会合が開催され、茂木経済産業大臣 と南アフリカ共和国のシャバング鉱物資源大臣が共同議長になり、11 ケ国の大臣を含む 15 ケ 国が参加した。同会議ではアフリカの資源開発支援における 4 つの基本方針について議論さ れ、茂木大臣から「日アフリカ資源開発イニシャチブ」を説明し、参加国から賛同を得た。なお、 同会議の結果は「第 5 会アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)」で報告されている。 (2) 安倍首相がモザンビーク訪問。ゲブーザ大統領と面談 日本の安倍首相が 2014 年 1 月 11 日から 13 日までモザンビークを訪問され、1 月 13 日にはモ ザンビークゲブーザ大統領との首脳会談が開かれた。 また、両国首脳立会いの下,7 件の経済協力、農業研 究開発、大学間の学術交流などの文書の署名式が行わ れた。また、今回、多数の日本企業も同行され、マプート において 1 月 12 日に投資フォーラムが開催された。日本 側からは、資源・エネルギー分野だけではなく、インフラ 開発や医療・金融分野など広範な分野において日本企 (内閣広報室提供写真) 業が可能なことを述べた。モザンビーク側からは 4 省庁 (エネルギー省、国家石油院、商工省、モザンビーク投資促進センター)の各代表が、それぞれの 分野における将来計画や投資ポテンシャルを紹介するとともに、日本企業とのパートナーシップ強 化を期待する旨のメッセージが日本側に出された。 投資フォーラムのオープニングセッションで、安倍首相はスピーチを行い、その後、ゲブーザ大 統領とともに、エネルギーと金融分野における 6 件の両国政府機関や民間企業間の協力文書の署 名に立ち会った。 両首脳の共同記者発表では、「日本国とモザンビーク共和国との間の「友情」(AMIZADE)パー トナーシップに関する共同声明」を発表された。 二国間関係の全般においても、二国間関係をさらに高めるべくハイレベルの政策対話の定期開 催を決定している。 経済分野における協力に関しては、日本側からインフラ開発、戦略的マスタープラン作成、人材 育成を通じ、日本企業の投資促進、資源分野の人材育成、ビジネス環境整備に向けた「日モザン ビーク天然ガス・石炭発展イニシアティブ」を表明した。 さらに、ビジネス環境整備に向けた官民合同対話を前述のハイレベル政策対話と併せて開催す ることも決定した。2013 年 6 月 1 日に署名された「投資の相互の自由化、促進および保護に関する 日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定」(日モザンビーク投資協定)の早期発効に向 190 けた期待も表された。 経済分野における具体的協力には、以下が含まれる。 モザンビーク北部のナカラ回廊の開発―ナカラ回廊地域の総合的な開発を中心に 5 年間 で約 700 億円の ODA を供与する。 人材育成― 前述のイニシアティブおよび他の技術協力を活用し、資源開発、資源を利用 した産業開発、環境整備分野において、5 年間で 300 人以上の人材育成を行う。 191
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