家電製品における操作性向上のための報知音に関するガイドライン(2001

家電製品における操作性向上のための
報知音に関するガイドライン
平成13年7月
財団法人 家電製品協会
はじめに
近年、我が国においても、高齢社会が現実のこととなり、日常生活で使用される家電製
品は、加齢や障害にかかわらず、だれにでも使いやすくわかりやすい製品であることが求
められています。
今日の家電製品は電子化や多様化が進み、便利な反面、使いにくい等、使用者の不満も
多くみられます。また、メーカーにおいても独自の工夫をこらし業界内で標準化されて
いないこともあり、一部の使用者に混乱をきたしています。
これらの課題に対し、使いやすさ、わかりやすさなどの操作性向上を図るため、視覚、
触覚、聴覚などの観点から、当協会では、触覚面への配慮として平成10年9月に「家電
製品における操作性向上のための凸記号表示に関するガイドライン(第1版)」を制定し
たのに続いて、聴覚面への支援として平成11年8月に「家電製品における操作性向上の
ための報知音に関するガイドライン(案)」を作成しました。
当ガイドライン(案)については、高齢者、視覚障害者、及び若・壮年者の方々に検証
していただく機会を得、関係各所の諸先生方のご指導、助言をいただき、平成13年3月
「報知音モニター調査報告書」としてまとめました。この検証結果を基に、ガイドライン
(案)の見直しを行い、当ガイドラインを作成しました。
当ガイドラインは、家電製品の操作に対する反応や機器の状態などを音で知らせること
により、視覚障害者や視力の衰えがみられる高齢者をはじめとする使用者の操作性を向上
させるために、多くの家電製品メーカーが採用している報知音について、使用する場合の
基本的な考え方を示したものです。
(財)家電製品協会会員各社の高齢者・障害者にもわかりやすい家電製品報知音開発の
参考として活用されることを期待します。
平成13年7月
財団法人
家電製品協会
技術関連委員会
報知音ガイドライン作成ワーキンググループ
目次
はじめに
家電製品における操作性向上のための報知音に関するガイドライン
1. 目的
……………………
1
………………………………………………………………………………
1
2. 適用範囲
…………………………………………………………………………
1
3. 用語の定義
………………………………………………………………………
1
4. 対象報知音
………………………………………………………………………
2
5. 一般的原則
………………………………………………………………………
3
6. ガイドライン対象報知音の基本仕様
解説
……………………………………………
4
表3 報知音の基本仕様 …………………………………………………………
5
…………………………………………………………………………………………
Ⅰ. ガイドライン発行の経緯
解 1
…………………………………………………………
解 1
………………………………………………………………
解 1
1.目的 ……………………………………………………………………………
解 1
2.適用範囲 ………………………………………………………………………
解 1
3.用語の定義 ……………………………………………………………………
解 2
4.対象報知音 ……………………………………………………………………
解 2
5.一般原則 ………………………………………………………………………
解 2
6.ガイドライン対象報知音の基本仕様 …………………………………………
解 3
解説表1 家庭内報知音の機能分類 ……………………………………………
解 6
解説表2 各報知音の報知目的と音作成上の配慮ポイント及び事例 …………
解 7
参考文献
…………………………………………………………………………
解 12
参考資料
…………………………………………………………………………
解 13
技術関連委員会 報知音ガイドライン作成WG 委員 名簿 ……………………
解 16
Ⅱ. 各項目の補足説明
家電製品における操作性向上のための報知音に関するガイドライン
(注)本ガイドラインの内容について「解説」で解説を加えている項目については,末尾に(※→解○P)の
ように対応ページを示した。
1.目的 このガイドラインは,家電製品の操作に対する反応と製品の状態を報知音で知らせ
ることにより,視覚障害者や視力の衰えがみられる高齢者をはじめとする使用者の操作性を
向上することを目的とする。
(※→解1P)
2.適用範囲 このガイドラインは,国内向け家電製品に適用する。
備考1.このガイドラインでは,広く一般に使用されている単一周波数による報知音(ビープ
音とも呼ばれる)を対象とする。
2.周波数変化,メロディなどを用いる場合にも,本ガイドラインの主旨に沿って“同意
同質音”とすることを推奨する。
(※→解1P)
3.用語の定義 このガイドラインで用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
a)家電製品 一般消費者が使用する家庭用電気・電子機械器具。設備用,業務用,
専門家用などの特殊な用途に使用する家庭用・電子機械器具は除く。
(※→解2P)
b)操作 使用者が目的を達成するために,家電製品に対して行う行為。
(※→解2P)
c)操作性 使用者が家電製品を間違いなく使用するための,操作のわかりやすさ及び操
作のしやすさ。
(※→解2P)
d)操作要素 使用者が家電製品を操作するために直接力を加える部分,操作の仕方,
操作方向,操作手順,家電製品の状態などを示す表示部分。(※→解2P)
e)操作部分 使用者が家電製品を操作するために直接力を加える部分。
f)報知音 使用者が家電製品を正しく使用するための情報を伝える目的で,製品から発
せられる音。
g)単純音 単一の周波数で1回のみ鳴る音。
h)組み合せ音 単一の周波数で複数回鳴る音。
i)ON時間 音の鳴っている時間。
j)OFF時間 音の鳴っていない時間。
k)ON/OFFパターン 音の鳴っている時間と鳴っていない時間の組み合せ。
1
l)同意同一音
m)同意同質音
参考
報知の目的(意味合い)及び仕様が同一の音。
仕様に差異があるが,報知の目的(意味合い)は同一と認識される音。
その他の対象報知音の名称等については,表1,解説表1及び解説表2参照。
4.対象報知音 このガイドラインで対象とする報知音は,以下のとおりとする。
a)操作確認音:使用者がある操作を行った直後に機器が正常に反応したことを
知らせる音をいい,次の3種類に区分する。
1)受付・スタート音:機器への操作を受け付けたことや機器の作動がスタートするこ
とを知らせる報知音をいう。
2)停止音:機器の作動が停止することを知らせる報知音をいう。
3)基点音:複数の設定を一つのボタンを繰り返して押して切り換える場合の,基準と
なるポジションを知らせる報知音をいう。
b)終了音:機器が一定時間作動を続けた後,作動を終了したことを知らせる音をいい,
次の2種類に区分する。
1)終了音(遠):機器の作動が終了したことを知らせる,機器から離れて聞くことの多
い終了音をいう。
2)終了音(近):機器の作動が終了したことを知らせる,手元で聞くことの多い終了
音をいう。
c)注意音:機器が単独では正常な作動を進行できないことを知らせる音をいい,その報
知の緊迫度により,次の2種類に区分する。
1)弱注意音:主として,設定操作ミスなどに対する注意・再設定を促す報知音,及び
作動中に使用者の介在を要求する報知音をいう。
2)強注意音:機器の作動中に何らかの異常などにより機器が作動を中断,又は
使用者の介在を強く要求する報知音をいう。
このガイドラインで対象とする報知音と家庭内における報知音全般についての機能別分
類(解説表1参照)との関係を表1に示す。
備考
火災報知音,ガス漏れ警報音,防犯警報音など法令によって定められた音及びこ
れらに類する音については,対象外とする。
また,機器を介する呼掛け音(電話着信音,チャイム・インタホンなど)は,対象
外とする。
2
表
1
対 象 報 知 音
操作確認音
終了音
注意音
解説表1の小分類
受付・スタート音
受付音(単純反応音)
①
スタート(入)音
②
停止音
停止(切)音
③
基点音
基点音
④
終了音(遠)
終了・完了音
⑤
終了音(近)
終了・完了音
⑤
弱注意音
設定不備音
⑥
環境不備音(非作動)
⑦
準備完了音
⑧
準備異常音
⑨
異常停止音
⑩
異常操作音
⑪
異常プロセス音
⑫
機器の異常事態
⑬
強注意音
(※→解2P)
5.一般的原則 家電製品の操作性を考えた場合,使用者に対する製品からの情報伝達に
あたっては,ランプ,メータなどの表示装置の採用による視覚的配慮,操作部分の形状・構造
等での工夫による触覚的配慮だけでなく,聴覚的にも配慮を行うことが重要である。
報知音は,製品の状態を聴覚的に把握する手段として有効なものであるが,視覚障害者や
視力の衰えがみられる高齢者が家電製品を使用する際の操作性向上の面では,特に重要な
配慮事項となる。
報知音の使用にあたっては,下記の配慮を行うこととする。
a)報知目的に即したイメージを表現する音にする。
b)操作確認音は“同意同一音”,終了音及び注意音は“同意同質音”とする。
c)音量(音圧)は,聴力の衰えた高齢者にも聞き取りやすい大きさにする。 (※→解2P)
d)音の高さ(周波数)は,聴力の衰えた高齢者にも聞き取りやすいよう,2kHz近傍にするこ
とが望ましい。
(※→解3P)
e)設置環境,使用者以外の周囲の人にも配慮し,報知音の“入/切”,“音量調整”が
できることが望ましい。またその操作方法もわかりやすくすることが望ましい。
f)操作に対する反応音は,操作からの時間遅れを感じさせないようにする。
g)操作確認音及び終了音は,使用者及び周囲の人にとって心地良く,耳障りにならない
音にする。
(※→解3P)
3
h)注意音は,使用者及び周囲の人にとって注意を喚起させるよう,注意の程度に応じて
音量(音圧)や音の高さ(周波数)を設定することが望ましい。
i)報知目的によっては,報知音と共に適切な視覚的表示などを併用することによって,報
知の意味をわかりやすくする。
6.ガイドライン対象報知音の基本仕様 ガイドライン対象報知音の基本仕様は,下記に示す
基本仕様設計の考え方(表2を含む)に基づき,表3のとおりとする。
(※→解3P)
基本仕様設計の考え方:
a)人間が識別できる範囲を考慮し,最小限の音のパターンとする。
b)単純音の長短と繰返し回数を基本として構成する。
c)単純音の長短で区別する場合は,0.2秒以上の差をつける。
d)操作確認音,終了音及び注意音は,表2のとおりとする。
表
対象報知音
2
基本仕様設計の考え方
操作確認音 1)“同意同一音”とする。
2)受付・スタート音,停止音及び基点音は,明確に区別する。
3)スタート音を分ける場合は,他の報知音と明確に区別できる音とする。
終了音
1)“同意同質音”とする。
2)終止感のある音とする。
3)終了音(遠)は,確実に認識できる音とする。
4)終了音(近)は,何回も鳴るとわずらわしいので,比較的短い音とする。
5)機器間の区別ができる音にすることが望ましい。
注意音
1)“同意同質音”とする。
2)緊迫感のある音とする。
3)ON時間とOFF時間の緩急(表3の“基本テンポ”)により,弱注意音と強注
意音を区別する。
なお,強注意音は,弱注意音より早い緩急とする。
e)単純音,組み合せ音とも,個々の報知音は意味を伝える目的から,独立して聞こえる
ようにする。
f)操作確認音において,使用者が次の操作を行った場合には,次の操作の反応を
優先し,前の報知音は中断する。
4
表3 報知音の基本仕様
■操作確認音
基本仕様
パターン図
受付・スタート音
種別
単純音
繰り返し
回数
1回
ON時間
(秒)
0.1≦on≦0.15
OFF時間
(秒)
基本テンポ
(秒)
イメージ
短い
on
備考
解説6.a)参照
歯切れが良い
全体長さ
停止音
単純音
1回
停止感
0.5≦on≦0.6
on
解説6.a)参照
全体の長さは
停止音<終了音
全体長さ
基点音
組み合
わせ音
on1
on2
1回
0.05≦on≦0.075
on1=on2
0.05≦off≦0.075
短い
(on≧off)
(on≧off)
歯切れが良い
かつ、受付・スター
ト音と区別できる
こと
解説6.a)参照
off
全体長さ
5
表3(つづき)
■終了音
パターン図
終了音(遠)
種別
単純音
基本テンポ
基本仕様
繰り返し
ON時間
回数
(秒)
任意
0.3≦on≦0.8
OFF時間
(秒)
0.5≦off≦1.0
基本テンポ
(秒)
0.8~1.8
イメージ
終止感
備考
解説6.b)参照
(1)
on
off
(on≦off)
(on≦off)
ゆったり
on1=0.5
Off=0.8
終止感
全体長さ
組み合
わせ音
on2
(2)on1
1回
ゆったり
on2=1.5
off
全体長さ
on2
(3)on1
組み合
わせ音
1回
on1=0.5
終止感
off=0.8
全体長さ
組み合
わせ音
基本テンポ
(4)
on1
解説6.b)参照
ゆったり
on2=1.5
off
解説6.b)参照
任意
on2
on1=0.1
off1=0.1
on2=0.5
off2=0.5
1.2
終止感
解説6.b)参照
ゆったり
off2
off1
全体長さ
終了音(近)
(1)
単純音
on
1回
終止感
0.5≦on≦1.0
解説6.b)参照
ゆったり
全体長さ
(2)
on1
on2
組み合
わせ音
1回
on1=0.1
on2=0.5
off
off=0.8
終止感
解説6.b)参照
ゆったり
全体長さ
注)終了音(遠)は、離れて聞くことが多い終了音。
終了音(近)は手元で聞くことが多い終了音。
6
表3(つづき)
■注意音
パターン図
弱注意音
音の種別
単純音
(1)
基本仕様
繰り返し
ON時間
回数
(秒)
2回以上 on=0.5
OFF時間
(秒)
0.2≦off≦0.25
基本テンポ
イメージ
(秒)
0.7~0.75 弱い緊迫感
備考
解説6.c)参照
基本テンポ
喚起する
on
off
全体長さ
基本テンポ
(2)
組み合
わせ音
2回以上
単純音
3回以上
on=0.1
off1=0.05
off2=0.5
0.75
on=0.1
off=0.1
0.2
(on=off)
(on=off)
0.1≦on≦0.3
0.05≦off≦0.15
(on>off)
(on>off)
弱い緊迫感
解説6.c)参照
喚起する
on
off1
off2
全体長さ
強注意音
(1)
基本テンポ
強い緊迫感
解説6.c)参照
急き立てる
on
off
全体長さ
単純音
(2)
3回以上
基本テンポ
0.15~0.45 強い緊迫感
解説6.c)参照
急き立てる
on
off
全体長さ
7
家電製品における操作性向上のための報知音に関するガイドライン
解 説
Ⅰ.ガイドライン発行の経緯 家電製品の電子化や多機能化にともない,家電製品の使いや
すさ,わかりやすさなど操作性の向上が大きな課題となっており,メーカにおいても家電製品
の操作性向上のために種々の配慮がなされるようになってきたが,メーカ毎に独自の工夫を
凝らしているため,一部で使用者に混乱を引き起こしている。
そこで,平成9年度に財団法人 家電製品協会において,技術関連委員会の下に操作性向
上WGを設置して,“家電製品の使いやすさ向上に向け,バリアフリーの視点も配慮して具体
的共通課題の抽出及び課題解決のためのガイドラインづくり”の検討を開始した。
操作性向上WGでは,家電製品の操作性向上に向けて,“共通性”,“緊急性”,“バリアフリ
ー”の観点から,平成10年9月に「家電製品における操作性向上のための凸記号表示に関す
るガイドライン(第1版)」を制定したのに続いて,報知音に関するガイドラインづくりを検討する
ことにした。
ガイドライン(案)については,高齢者,視覚障害者,及び若・壮年者の方々に検証していた
だく機会を得,関係各所の諸先生方のご指導,助言をいただき,平成13年3月「報知音モニタ
ー調査報告書」としてまとめた。この検証結果を基に,ガイドライン(案)の見直しを行い,当ガ
イドラインを作成した。
Ⅱ.各項目の補足説明
1.目的 このガイドラインは,家電製品の操作に対する反応や機器の状態などを音で知らせ
ることにより,視覚障害者や視力の衰えがみられる高齢者をはじめとする使用者の操作性を
向上させるために,家電製品の多くのメーカが採用している報知音について,使用する場合の
基本的な考え方を示したものである(サービスマンを対象とした報知音は対象外とする)。
後述のとおり,家電製品の報知音の差異によって複雑な情報を使用者に区別させることは,
人の認知機能から考えた場合,数種類しか期待できないので,家電製品の操作に対する反応
や製品の状態などを使用者に知らせる場合には,視覚的手段などと併用することが重要であ
る。
2.適用範囲
a)このガイドラインは,主として国内向け家電製品を対象に作成したものであるので,海外
向け家電製品等に適用するにあたり疑義が生じた場合には,仕向け先の実態を十分
確認のうえ適用していただきたい。
b)このガイドラインでは,現在,最も普及している電子ブザー(圧電ブザー,圧電スピーカな
ど)で表現しやすい単一周波数の報知音を対象とした。音の基本要素には,高さ(周波
数),大きさ,時間があり,更にはそれらの組合わせを考えるとかなり複雑な報知音が
存在する。ここではまず基本として時間の要素を主体にガイドラインの作成を行った。
解 1
音の高さや大きさの変化,ひいてはメロディなどまでも含めた報知音に関しては,既研
究報告11)はあるものの,ガイドラインの作成は将来の課題である。しかし,基本仕様設
計の考え方に照らした“同意同質音”の採用を図っていけば,使用者にとってわかりや
すい報知音が実現できると期待している。
3.用語の定義
a)家電製品
b)操作
c)操作性
d)操作要素
e)操作部分
JIS
JIS
JIS
JIS
JIS
C
S
S
S
S
9102-1996に準拠した。
0011-2000に準拠した。
0011-2000に準拠した。
0012-2000に準拠した。
0011–2000に準拠した。
4.対象報知音 このガイドラインを検討するにあたっては,操作性に関わる一般の報知音を2
4種類に分類した(解説表1参照)。
検討対象とした24種類の報知音に関し,使用者への報知の重要性,報知機能を判別する
必要性の視点から,少なくとも第一段階のガイドライン化としては,表1に示した13種類の小
分類の報知音を選択し,検討対象とした。
なお,13種類に絞り込んだ背景としては,報知音の差異によって複雑な情報を使用者に区
別させることは,人の認知機能から考えた場合,数種類しか期待できないことも挙げられる。
表1では,同じ理由により,13種類の報知音を更に統合して受付・スタート音,停止音,基点
音,終了音(遠),終了音(近),弱注意音,強注意音の7種類に分類しガイドライン化すること
にした。13種類以外の報知音については,報知目的,必要性などを考慮の上,7種類(受付・
スタート音,停止音,基点音,終了音(遠),終了音(近),弱注意音,強注意音)の報知音のい
ずれかに区分して,報知することが望ましい。ただし,7種類に属さない特別な音を作成する場
合には,7種類の音と明確に識別できる音とすること。
何らかの異常等によって機器が作動を終了又は途中停止した場合,及び使用者に対し続く
操作を促す場合の報知は“注意音”に区分した。
主として,使用者の設定操作ミスなどによって機器が使用者の望む機能をうまく進行できな
いため,注意・再設定を促す報知音(タイマー予約での設定ミス),及び作動中に使用者の介
在を要求する場合の報知音(グリル調理での食品の裏返し催促,予熱完了など=準備完了音)
は,弱注意音とした。
作動中でなく操作時であっても安全に関わる警告(洗濯機の脱水中のふた開操作など=異
常操作音)は,強注意音とした。
なお,火災報知器の音,電話の呼出し音,目覚まし時計の音などは,通常の操作に関連,と
いう意味からは,予め検討対象外とした。
5.一般的原則
a)音圧については,既研究報告7)9)を参考にすると,機器からの距離が1m程度の距離
で60dB程度が一つの目安と考えられる。 特に,終了音(遠),注意音などについ
ては,機器と使用者との距離が離れていることが多いので,途中での減衰や背景音
解 2
も考慮して,騒音と感じない範囲でより大きい音圧,適切な周波数とする必要がある
と思われる。また,機器の設置や使用シーンを十分考慮して,報知の採否を検討す
ること(例:就寝時に使用することの多いエアコンの「切」タイマー)。
b)周波数については,JIS C 9102-1996(家電製品の操作性に関する設計指針)の
解説などで明らかなように,加齢に伴い高い周波数帯域の聴覚感度が低下する8)9)た
め,報知音の周波数を1~2kHzあたりに下げるべきとの意見がある。一方,家庭内
の生活環境音がそれと近いところに分布しているとの測定例9)もあり,マスキングに
よる聞こえにくさの発生9)も考慮して,若・壮年者にも,高齢者にも聞き取りやすい音
となるように,周波数は,2kHz近傍が望ましい。
c)使用者及び周囲の人にとって心地良く耳障りにならない音にするためには,正弦波の
ような立ち上がりのゆるやかな音にするなど音源及び機器設計側で配慮することが
望ましい。
なお,報知音ついては,財団法人 家電製品協会(平成11年3月発行)の「高齢者・障害者
にも使いやすい家電製品 開発指針」に,報知音のわかりやすさ(配慮事項)について解説(P3
2~34)されているので,参考にされたい。
その他,視覚障害者は,健常者より聴覚が優れている場合もあるので,視覚障害者の意見
も十分にとりいれ,報知音の仕様を決定することが望ましい。
6.ガイドライン対象報知音の基本仕様
a)操作確認音の仕様については,ガイドライン(案)において4種類の仕様が提案された
が,検証した結果,表3に示した仕様に統一した。
1)操作確認音設計にあたっては,“同意同一音”の考え方に基づき,機器の種類に
かかわらず,表3に準拠することを基本とする。
2)停止音において,使用者の利便性を考慮し,やむを得ず0.5秒未満の音が必要に
なった場合でも,受付・スタート音との識別性を考慮し,音長において0.2秒以上の
差をもたせること。
3)基点音について、OFF時間を0.05≦off≦0.075(秒)とした。
報知音モニター調査報告書(平成13年3月発行)では,操作性などを考慮し0.025
≦off≦0.075(秒)を推奨しているが,高齢者への配慮の視点で,さらに検討を加
えた結果,聴力が大きく低下した高齢者等では音と音の間隔が短くなると,その間
隔を感知しにくくなるため,0.025秒より長いOFF時間が好ましいとの指摘もあるた
め,基点音のON/OFFパターンが明確に聞き取れるように,より長いOFF時間0.
05≦off≦0.075(秒)を基本仕様とした。
b)終了音においては,検証結果から導いた推奨値を表3に示した。
1)終了音の設計にあたっては,“同意同質音”の考え方に基づき,表3の仕様を基本
とし,終止感のある音にすること。
2)終了音(遠)の(2)と(3),終了音(近)の(2)は,終止感を表現するために,最終音
のON時間(on2)を長くした。
3)終了音の繰り返し回数は規定しなかったが,全体の長さに関しては,一つの報知
解 3
音として認識しやすい長さの限界が存在するとの既研究報告があり1),試聴結果か
らは,5秒程度以下がよいと推測される。ただし,実環境では,生活環境音にマス
クされる場合やユーザと製品の距離が離れている場合もあるので,必要に応じて
長さを決めること。
4)終了音(遠)は,機器間での混乱をさけるため,機器を区別できる音にすることが望
ましい。そのためには,表3の仕様の範囲内で繰り返し回数やON時間,OFF時間
の長さで調整する。やむを得ず,表3の仕様をはずれる必要が生じた場合は,使
用者などによる試聴評価の結果を基に終止感のある音にする。さらには,音の高
低や,メロディを採用することにより,より識別性を向上させることができる11)。
c)注意音については,検証結果から導いた推奨値を表3に示した。
なお,ISO 8201(E)-1986(Acoustic – Audible emergency evacuation signal )4)で
規定されている仕様との重複を避けるとともに,ISO 7731(E)-1987(Danger
signals for work places – Auditory danger signals)5)で示されている考え方を参考にし
た。
1)注意音の設計にあたっては,“同意同質音”の考え方に基づき,表3の仕様を基本
とし,緊迫感のある音とすること。
2)注意音の繰り返し回数は,基点音との識別を図るため,弱注意音を2回以上,強
注意音を3回以上と規定した。
3)注意音の繰り返し回数は,製品の性格,報知目的,使用環境を考慮して設定する
必要があるため,鳴り続くことが使用者以外の人に不快を与える場合も考えられ
るので,注意すること。
4)同一機器内で複数の注意音を用いる場合は,互いに区別できるように表3の仕様
の範囲内で繰り返し回数やON時間,OFF時間の長さで調整する。(例 ⑧準備完
了音と⑨準備異常音など)やむを得ず,表3の仕様をはずれる必要が生じた場合
は,使用者などによる試聴評価の結果を基に緊迫感のある音にする。
5)音楽リズムで,反復は興奮を喚起させる1)。したがって,同一パターンの繰り返しは,
注意音としての利用に向くと考えられる。なお,パターンの間の休止時間の長短と
興奮を感じる度合いも,長=穏やか,短=せわしないの方向にある1)2)。
d)報知音の設計にあたっては,以下の点も参考にすると良い。
1)操作確認音や終了音の評価では,全般に若・壮年者は短めの音を支持し,高齢者
になるほど長めの音を支持する傾向にあった。よって,高齢者を配慮するならば,
充分に注意力を喚起できる音の長さを持った報知音が望ましい。
2)基本的なパターンは,テンポ(表3では“基本テンポ”と記載)以外に,ON時間・
OFF時間の比(デューティ比)で印象が異なる。一般にON<OFFのパターンは,
印象が穏やかと言われている1)
解 4
解説表1 家庭内報知音の機能分類
解説表1は,報知音使用に関するガイドライン化の検討を進めていくうえで,家庭内におけ
る報知音全般について機能分類の視点から,便宜的に分類したものである。
解説表2 各報知音の報知目的と音作成上の配慮ポイント及び事例について
解説表2は,解説表1の“小分類”で分類した各報知音の報知目的,基本的な配慮ポイント
及び事例についてまとめたものであるので,報知音の仕様を検討するにあたって参考にしてい
ただきたい。
解 5
解説表1
家庭内報知音の機能分類
総称
大分類
(マンマシンインタフェース)
中分類
(操作・機器の状態)
小分類
(目的)
内容・例
報知音
機器の操作に対する反応音
正常操作
受付音(単純反応音) ①
一般設定音(入力の受付を知らせる音)
(人→機器/即時)
温度変更,コース切換
スタート(入)音
②
電源入,洗濯開始,炊飯開始,燃焼開始
停止(切)音
③
電源切,洗濯停止,オーブンレンジの停止
④
サイクリックの基準点(温度設定の「中」への切替時)
リセット,取消操作音
基点音
異常操作
設定レベル音
水位設定,温度設定
モード切換音
報知音有無,メロディモード,チャイルドロック
設定完了音
タイマー予約等の設定完了
受付無効音
設定不備音
条件不備操作
機器が自動的に発する音
正常時
リセット,取消
温度設定の上限・下限(エアコンなど)
⑥
タイマー予約等の設定ミス
使用者責任警告音(作動)
明るさ不足,バッテリー残量少(ビデオカメラ)
環境不備音(非作動) ⑦
高温時の発酵・解凍(オーブンレンジ)
終了・完了音
⑤
洗濯終了,調理終了,満水(風呂)
準備完了音
⑧
(人→機器/始動後)
テープの巻き戻し終了(ヘッドホンステレオ)
予熱完了,裏返し催促(グリル)
プロセス経過音(作動状態)
早送り・巻戻し中
プロセス経過音(作動切替り)
残時間表示への変更,連動調理切換
予告音
油切れ,温度低下,自動停止[石油ファンヒータ
3時間経過時,アイロン(自立)の切り忘れ時]
条件不備時
異常停止音
⑩
脱水アンバランス,油切れ時自動消火,
燃焼不良検出時運転停止,3時間停止
準備異常音
⑨
鍋無し,小物検知,扉開放
異常操作音
⑪
脱水中のふた開操作
異常プロセス音
⑫
温度過昇(空炊きなど),紙づまり
異常予告音
フィルタ目詰まり,取出し忘れ(オーブンレンジ)
燃焼不良検出時の換気
異常時
機器の故障
機器の異常事態
センサ断線
⑬
アイロンの水平放置(転倒)
火災等の発生(*)
火災報知,ガス漏れ警報
泥棒の侵入等(*)
防犯警報
(*)これらは報知音の
検討からは除外する
機器を介する呼掛け音(*)
通常時
呼出し音
(人→機器→人/随時)
電話着信音,チャイム・インタホン,呼出し(風呂)
目覚まし,キッチンタイマー
*報知音の検討からは除外する。
解6
解説表2
各報知音の報知目的と音作成上の配慮ポイント及び事例
(注)小分類の項で○印を付して示した数字は,本ガイドラインで検討対象とした13種類の
報知音を示す(解説表1参照)。
大分類
中分類
小分類
機 器 操 作 正常
受付音
操作
に対する
(単純反応音)
反応音
①
報知目的と配慮ポイント及び事例
目的 ・機器への入力操作を受け付けたことを知らせる。
配慮 ・クリック感などの感覚,スイッチ自体の操作音などによる操作
感触が得られない場合は付加することが望ましい。
・操作感触の代用でもあるため,入力操作の後,即時に発する
こと。
・短い間隔で連続して操作される場合を想定し,音の長さは短く
簡潔であること。
・操作の受付時に発する報知音のうち,最も基本的な音である
ため,多様な場面で頻繁に鳴るとともに,他の様々な報知音
との識別性が重要となるので,単純で無性格な音であること
が望ましい。
事例 ・温度変更,コース切換など。
ス タ ー ト ( 入 ) 目的 ・機器が作動を開始する(入る)ことを知らせる。
音
配慮 ・加熱や燃焼を伴い作動中に触れると危険な機器,作動音が
②
小さい機器など,機器作動の起動が聴覚や触覚で感じにくい
場合は付加することが望ましい。
・作動を開始する(入る)印象が得られ,“停止(切)音”,“基点音”
など他の報知音と確実に識別できる音であること。
・“停止(切)音”と対で使用されることが多いので,対として覚え
やすい音であることが望ましい。
事例 ・電源入,洗濯開始,炊飯開始,燃焼開始など。
停 止 ( 切 ) 音 目的 ・機器が作動を停止する(切れる)ことを知らせる。
③
配慮 ・加熱や燃焼を伴い安心のためにも停止したことを確認する必
要性が高い機器,作動音が小さい機器など,機器作動の起
動が聴覚や触覚で感じにくい場合は付加することが望まし
い。
・作動が停止する(切れる)印象が得られ,“受付音”など他の報
知音と確実に識別できる音であること。
・“スタート(入)音”と対で使用されることが多いので,対として覚
えやすい音であることが望ましい。
事例 ・電源切,洗濯停止,オーブンレンジの停止など。
リセット,取消 目的 ・それまでに設定した操作や入力途中の操作が取り消されたこ
操作音
とを知らせる。
配慮 ・操作が取り消される印象が得られる音にすることが望ましい。
事例 ・リセット,取消など。
解7
大分類
中分類
小分類
機 器 操 作 正常
基点音 ④
操作
に対する
反応音
報知目的と配慮ポイント及び事例
目的 ・ある設定を1ボタンで順次繰返して行い,一巡して元に戻る形
の「サイクリック」操作法などにおいて,基準となる設定ポジ
ションを知らせる。
配慮 ・基本は“受付音(単純反応音)”との明確な区別が必要である。
・短い間隔で連続して操作される場合を想定し,確実な操作感
を損なわないようにする。
設定レベル音
事例 ・サイクリックの基準点(例:温度設定の「中」への切替時)な
ど。
目的 ・設定(選択)したレベルを知らせる。
配慮 ・短い間隔で連続して操作される場合を想定し,確実な操作感
を損なわないように配慮する。
・“基点音”と組み合わせる場合があるので,確実に認識できる
音の長さ,種類にする。
モード切換音
設定完了音
事例 ・水位設定,温度設定など。
目的 ・操作,作動方法などを一括して切換える場合,その操作でど
ちらかのモードに切換わったことなどを知らせる。
配慮 ・どのモードに切り換わったのかが聞き分けられるように,各モ
ードに対応した音を設けるのが望ましい。
事例 ・報知音有無,メロディモード,チャイルドロックなど。
目的 ・一連の設定操作が完了したことを知らせる。
配慮 ・一連の操作の達成感を感じさせる音にすることが望ましい。
異常
操作
受付無効音
事例 ・タイマー予約等の設定完了など。
目的 ・正常に作動しない無効な操作であることを知らせる。
配慮 ・注意を促すため,弱い緊迫感を感じさせる音が望ましい。ただ
し,操作時の反応音であるため,あまり長い音や繰り返し数
の多い音でない方が望ましい。
事例 ・温度設定上限・下限(エアコン)など。
設 定 不 備 音 目的 ・複雑な一連の設定の一部が誤っていることを知らせる。(操作
の結果,正常に機能しないことを知らせる。)
⑥
配慮 ・注意を促すため,弱い緊迫感を感じさせる音が望ましい。ただ
し,操作時の反応音であるため,あまり長い音や繰り返し数
の多い音でない方が望ましい。
・不備の理由が示唆できれば更に望ましい。
事例 ・タイマー予約設定ミスなど。
解8
大分類
中分類
小分類
機 器 操 作 条件不 使用者責任
備操作 警告音(作動)
に対する
反応音
環境不備音
(非作動)
⑦
報知目的と配慮ポイント及び事例
目的 ・操作時に,一部適切でない条件があることを知らせる。
配慮 ・注意を促すものであるが,操作時の反応音であるため,あま
り長い音や繰り返し数の多い音でない方が望ましい。
・“環境不備音(非作動)”との識別と不備の理由・状況が示唆で
きることが望ましい。
事例 ・明るさ不足,バッテリー残量少(ビデオカメラ)など。
目的 ・操作時に,機器側の環境が不備なためうまく機能しないことを
知らせる。
配慮 ・注意を促すため,弱い緊迫感を感じさせる音が望ましい。ただ
し,操作時の反応音であるため,あまり長い音や繰り返し数
の多い音でない方が望ましい。
・不備の理由が示唆できれば更に望ましい。
・“使用者責任警告音(作動)”との識別と不備の理由・状況が示
唆できることが望ましい。
事例 ・高温時の発酵・解凍(オーブンレンジ)など。
機 器 が 自 正常時 終了・完了音 目的 ・機器が作動を完了したことを知らせる。
動的に発
⑤
配慮 ・操作後,長時間の経過や距離的に使用者が離れている可能
する音
性があるため,音量など認知性を高める必要がある。
・多様な使用環境に対応するため音量は調節可能とするのが
望ましい。
事例 ・洗濯終了,調理終了,満水(風呂),テープの巻き戻し
終了(ヘッドホンステレオ)など。
準 備 完 了 音 目的 ・一連の操作,作動プロセスの途中段階において,次のプロセ
スに移るための準備が整ったことを知らせる。
⑧
配慮 ・放置することが好ましくない場合は,やや強い緊迫感とするこ
とが望ましい。
・前の操作からの経過時間が長い又は不定な場合,音量など
認知性を高め,また必要により繰り返し報知も行う。
・必要な関与の内容を示唆できれば更に望ましい。
事例 ・予熱完了(オーブン),裏返し催促(グリル)など。
目的 ・ある一定の作動が継続状態にあることを知らせる。(使用者
プロセス
が機器の作動状態を把握する上において,確実性 を高め
経過音
ることができる。)
(作動状態)
配慮 ・作動状態の把握において,“終了・完了音”,“準備完了音”,
“プロセス経過音(作動切替り)”などと組み合わせて,より確
実性を向上させることが望ましい。
事例 ・早送り・巻戻し中など。
目的 ・ある作動状態から別の作動状態へと自動的に切替わったこと
プロセス
を知らせる。
経過音
(作動切替り)
配慮 ・作動状態の把握において,“終了・完了音”,“準備完了音”,
“プロセス経過音(作動状態)”などと組み合わせて,より確実
性を向上させることが望ましい。
事例 ・残量時間表示への変更,連動調理切換など。
解9
大分類
中分類
小分類
機 器 が 自 正常時 予告音
動的に発
する音
報知目的と配慮ポイント及び事例
目的 ・電池,石油,水等の減少やフィルタのつまりなどで機器が作
動を中断することを予告報知する。
配慮 ・予告報知から機器が作動を中断するまでの時間は,使用者
が十分に対応できるように設定する。
事例 ・油切れ,温度低下,自動停止[石油ファンヒータ3時間経過
時,アイロン(自立)の切り忘れ時]など。
条件
異 常 停 止 音 目的 ・作動中の機器が正常でない状況となったため,自動的に終了
不備時 ⑩
したことを知らせる。
配慮 ・操作者関与の必要度・緊急性,放置した場合に発生する問題
の度合いなどにより,音の緊迫感及び離れた人への認知度
を設定する。
事例 ・脱水アンバランス,油切れ時自動消火,燃焼不良検出時運転
停止,3時間停止(石油ファンヒータ)など。
準 備 異 常 音 目的 ・操作後,機器が適正な作動をする条件にないことを知らせる。
(作動を継続する場合も,中断する場合もある。)
⑨
配慮 ・報知までの所要時間により注意の強弱を設定すること。
事例 ・鍋無し(IH調理器),小物検知(IH調理器),扉開放(冷蔵庫)な
ど。
異 常 操 作 音 目的 ・機器の作動中に,その作動に適切でない操作を行った場合に
知らせる。(単に報知し操作を受付ず作動を継続する場合も
⑪
あり,使用者の介入を許す場合もある。)
配慮 ・異常操作による問題の程度により注意の強弱を設定する。
事例 ・脱水中のふた開操作,録画中のテープの取出し(ビデオ)な
ど。
異常プロセス 目的 ・作動中に機器が正常でない状態に陥ったことを知らせる。(機
器の不具合の状況を取り除く操作を促す場合もある。)
音
配慮 ・操作者関与の必要度・緊急性,放置した場合に発生する問題
⑫
の度合いなどにより,音の緊迫感及び離れた人への認知度
を設定する。
・音のイメージは‘異常’を感じさせるものが望ましい。
事例 ・温度過昇(空炊きなど),紙づまりなど。
異常予告音
目的 ・作動中の機器が正常でない状況に至る前にそれを作動状況
からの予測で知らせる。
配慮 ・注意喚起が目的であることから,“異常停止音”とは明確に区
別できることが望ましい。
事例 ・フィルタ目詰まり,取出し忘れ(オーブンレンジなど),燃焼不
良検出時の換気など。
解10
大分類
中分類
小分類
機器が 自 異常時 機器の故障
動的に 発
する音
機器の
異常事態
⑬
報知目的と配慮ポイント及び事例
目的 ・機器が故障状態にあることを知らせる。
配慮 ・放置して不具合がある場合は,強い緊迫感を持たせることが
必要。
・状況や原因を示唆することができれば更に望ましい。
事例 ・センサの断線など。
目的 ・機器の取扱い上の過失又は環境要因などにより,機器が問題
を発生した又はしそうな状況に陥ったことなどを知らせる。
配慮 ・離れた人や第三者などにも気付かせる必要があることから強
い緊迫感が必要。ただし緊迫の程度は,予測される問題の大
小・緊急度により設定する。
事例 ・アイロンの水平放置(転倒)など。
解11
参考文献
1) 梅本尭夫:音楽心理学の研究,株式会社 ナカニシヤ出版, 1996
2)
水谷 美香,松岡 政治,小松原 明哲:家庭用電気製品の報知音の吹鳴パターンと聴取印象について,人間
工学,Vol.32,特別号,1996
3)
水谷 美香,松岡 政治,小松原 明哲:長期休止時間を含む報知音の吹鳴パターンと聴取印象との関係
について,人間工学,Vol.33,No.5,1997
4) Acoustic – Audible emergency evacuation signal, ISO 8201(E),1987.
5) Danger signals for work places – Auditory danger signals, ISO 7731(E), 1986.
6) Acoustic – Normal equal - loudness level contours, ISO 226(E), 1987.
7) 倉片 憲治,久場 康良,口ノ町 康夫,松下 一馬:家電製品の報知音の計測,人間工学 Vol.34.No.4,1998
8)
倉片 憲治,久場 康良,口ノ町 康夫:人間工学関連技術シンポジウム資料集,高齢社会における家電製品
の報知音-高齢者にも聞き取りやすい音とは?-p22-26,1996
9)
倉片 憲治,松下 一馬,久場 康良,口ノ町 康夫:第5回人間工学・福祉技術シンポジウム資料集,ユニバー
サル製品における報知音,p33-36,1998
10) 倉片 憲治,松下 一馬,久場 康良,口ノ町 康夫:家電製品の報知音の計測,人間工学 Vol.35.No.4,1999
11) 難波 静冶:家電機器における区別化された機能音,東芝レビューVol,55 No.7,2000
解12
参考資料
6) Acoustic – Normal equal - loudness level contours, ISO 226(E), 1987
音圧レベル(基準音圧:20Pa)、dB
「自由音場聴取条件下での純音に対するラウドネスレベルの等感曲線」(音の大きさの等感曲線)
周波数、Hz
自由音場聴取条件下での純音に対するラウドネスレベルの等感曲線および最小可聴場(MAF)のグラフ
解13
7) 倉片 憲治,久場 康良,口ノ町 康夫,松下 一馬:家電製品の報知音の計測,人間工学 Vol.34.No.4,1998
8) 倉片 憲治,久場 康良,口ノ町 康夫:人間工学関連技術シンポジウム資料集,高齢社会における
家電製品の報知音-高齢者にも聞き取りやすい音とは?-p22-26,1996
解14
9) 倉片 憲治,松下 一馬,久場 康良,口ノ町 康夫:第5回人間工学・福祉技術シンポジウム資料集,
ユニバーサル製品における報知音,p33-36,1998
解15
作成委員名簿
技術関連委員会 報知音ガイドライン作成WG
(順不同、敬称略)
主査
:
東芝ドキュメンツ(株)
難波 静冶
副主査
:
松下電器産業(株)
小山 茂
三菱電機(株)
藤江 京子
三洋電機(株)
森田 晴良
シャープ(株)
近藤 堅志
ソニー(株)
鈴木 主真
ダイキン工業(株)
中澤 由佳
(株)東芝
酒井 雅明
日本ビクター(株)
青木 淑江
パイオニアデザイン(株)
長島 光克
(株)日立製作所
糟谷 清基
(株)富士通ゼネラル
山之井全裕
松下電器産業(株)
安倍 秀二
松下電工(株)
川北 桂三
(社)電子情報技術産業協会
鷲尾 善一
(社)日本電機工業会
尾身 健二
(財)家電製品協会
山口 勲
(財)家電製品協会
根岸 一雄
委員
事務局
:
:
解16