森 朋子 さん 指先工場・光の革命 翻弄される研究活動に終止符を 概念を

92
2015
Vol.3
RCAST Cross Talk 喧研諤学 第7回
翻弄される研究活動に終止符を
馬場 靖憲 教授 × 神崎 亮平 教授
先端研探検団Ⅱ file 13
指先工場・光の革命
光製造科学 高橋研究室
Relay Essay 先端とは何か 第16回
概念をつくる、概念をつなげる
当事者研究 熊谷 晋一郎 准教授
輝け! 未来の先端人
森 朋子 さん
RCAST Cross Talk
異分野研究者対談
ケ
ン
ケ
ン
ガ
行うと、政策立案者の意図と違う効果を生むのではないか、とい
ク
ガ
うのが私たち研究者の懸念です。
ク
[第7回]
科学技術論・科学技術政策
馬場 靖憲
教授
広報委員長
神崎 亮平
教授
翻弄される研究活動に終止符を
声高に語られる「科学技術イノベーション」。研究開発への期待が高まり、国や産業界から短期スパン
での成果が求められる今、研究現場や研究者の意識の変化は? 大学で研究をするとは? 研究者同士
の本音トークは、2時間以上に及ぶ熱い内容でした。
科学技術論・科学技術政策
馬場 靖憲
教授
1952年横浜生まれ。1977年東京大学経済学部経済学科卒業。日本興業銀行勤務を経て1986年英国
サセックス大学博士課程修了(Ph.D.)。イノベーション研究の世界的権威・クリストファー・フリーマ
ン氏に師事。サセックス大学科学技術政策研究所(SPRU)リサーチフェロー、科学技術庁科学技術政
策研究所研究員、
東京大学人工物工学研究センター教授等を経て、
2004年より現職。
生命知能システム
神崎 亮平
教授
1957年和歌山県生まれ。1986年筑波大学大学院生物科学研究者博士課程を修了。博士(理学)。アリ
ゾナ大学博士研究員、筑波大学教授、東京大学大学院情報理工学系研究科教授等を経て2006年より
現職。日本比較生理生化学会会長。生物の環境適応悩(生命知能)の神経科学に関する研究に取り組み、
特定の匂いを検出する警察昆虫ことセンサ昆虫や昆虫操縦型ロボットなどの研究が注目されている。
正直ではないが、不正でもない行為
神崎 : イノベーションという言葉の下、
異分野融合や産学連携が
神崎 : 馬場先生がよく引用されるマートン理論※2にある
「科学的
アカデミアの世界に入ってきたことで、以前は別物だった「科
発見を科学コミュニティで共有して科学を発展させる」という
学」と「技術」の考え方や構造、研究者のマインド自体もかなり
ノルム(規範)はすごいですね。理想です。今は知財などの縛りが
変化してきた気がします。
あり手放しの情報公開が難しいですから。当時の科学的マインド
馬場 : 産学連携って、大学の研究室から産業に素晴らしい科学
というのを批判できないし、今でももちろん、論文を書き、ピア
的な知見が滴り落ちるイメージですよね? でも実際には、産学
(同僚)に研究を知ってもらい、評価されるのを、科学者冥利に
連携の主人公はあくまでも企業です。企業は自社に有益な科学
尽きるという研究者はいます。彼らがもっと活躍できる場を
技術をどの大学や研究機関が持っているか詳細に調べ、極めて
提供することも重要なのでしょうが、今の政策ではどうしても
慎重にモニタリングしています。大学は選ばれる側です。では、
その部分が置き去りになってしまう。
どのように探してもらい、
良い関係を築くかというと、
基本的には
馬場 : おっしゃる通りです。私の研究は、科学者の研究活動の
優れた科学研究をしていることに尽きます。きちんとした科学
背景にあるメカニズムの解明です。従来のノルムが最近の研究
研究を行い、しっかり情報発信できていれば、探し当ててくれる。
活動にどれくらい反映されているのかとか。どこまでが科学者に
そのときには、相手の素性に関係なく時間を惜しまずに会い、
期待され、
どこを越えると科学者倫理から見て問題となるかは、
基
親身になり、できればコンサルティングまで行う、オープンな
本的にはその科学界の時代的な在り方に左右される。データの
コミュニケーションが基本です。いわゆる産学連携は結果で
ねつ造や盗作は明らかにアウトですが、
グレーなものもあります。
あって、それを自己目的とするのは本末転倒だと思っています。
例えば、私と柴山さん ※3 の研究で「Dishonest Conformity」と
神崎 : 研究分野や研究者のタイプによって競争的資金や企業
呼んでいる行為があります。
からの支援に温度差が出ます。本来のアカデミアは、企業の興味
神崎 : Dishonest Conformity?
あるなしに関係なく研究できればいいはずでしょうが、その
馬場 : 投稿した論文への査読者のコメントに対して「まったく
ような人には厳しい研究環境であるのが実情ですよね。
だ」と納得して直すのではなく、
「 自分は正しいが、査読者に
馬場 : 公的研究資金は苦しい財政からの配分なので、
外部資金の
従った方が早く採択される」と判断して直す行為です。正直では
獲得が重視されるのは仕方ないと思います。ただ、研究よりも
ない、けれども従うことによって自分の利益になる。不正では
資金獲得を重視するのは行き過ぎでしょう。先端研がすごかった
なくノルムにも反していません。まだ研究中ですが、バイオ
のは、TLO
分野を対象とした約360のサンプルでは63%の人がDishonest
※1
のない時代から技術を特許権化して社会還元を
目指す、時代の先を行く人が多かった。彼らにはずば抜けたビジ
Conformityをしています。
ネスマインドがありました。科学研究は、今や一人の研究者の
神崎 : 63%ですか。
頭でできる時代ではなく研究室の運営、つまり研究マネジメ
馬場 : なぜこのような行動が起きるのか、
分析を進めていますが、
ントが重要です。
マネジメント能力の重要性は、
研究でもビジネス
大学等で論文数や被引用数等のマトリックス評価が強化された
でも共通ですから、優れた研究者が産学連携で先行した側面が
結果、研究者のopportunistic behavior( 機会利用行動)が
ある。
逆に、
タコツボ的な科学研究ではマネジメント能力が育たず、
高まって不正ギリギリのグレーゾーンが拡大している可能性が
成果を社会的に可視化して産業と組もうというマインドも生まれ
ある。
大学がマトリックス評価によって教員を採用すると、
トップ
にくいでしょう。
ランクの大学教員ほどDishonest Conformityを進んで選択する
というデータもあります。
神崎 : 研究者の属性や研究背景が影響しているということ
2
産学連携の主役は誰か
研究です。多くの人が誤解していますが、社会科学も科学です
ですか。
から、理論から仮説を導き、データを集め、そのデータによって
馬場 : 実は、Dishonest Conformityを相対的に行わない研究
神崎 : 本日は馬場先生に、サイエンスや産学連携のあり方など、
仮説検定を行うプロセスを踏みます。
者に共通する属性として、留学経験があります。研究者が外国で
私自身日頃悩ましく思っていることを伺えると楽しみにして
神崎 : 産学連携は良い面もあれば功罪もあるのではないかと
PIから一種のOJTを受け、批判や議論の荒波に揉まれた経験が、
参りました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。さっそく
感じるときがあります。
帰国後も残っているのでしょう。言い換えれば、筋を通す研究
ですが、馬場先生のご専門の「科学技術論・科学技術政策」とは
馬場 : デフレが20年以上続く現状では、政府は短期的に効果を
者になっている。個人属性としての海外滞在歴の影響は大きい
どういう分野か、簡単にご説明いただけますでしょうか。
上げられそうな政策を採用します。新しい制度や仕組みを導入
ようです。
馬場 : はい。科学技術がどのようなメカニズムで進展し、政策が
して科学者や産業の変化を促しますが、その背景に必ずしも
神崎 : 論文を隙なくロジックに書く人のほうが、そのロジック
どのように発展を促進し、それが科学の本来的な在り方を阻害
制度等の有効性に対する理論的裏付けはありません。欧米の
故でしょうが査読者のコメントにも的確に答えている印象を
する可能性があった場合にはどのように是正できるか、という
成功事例を取り入れる際に日本固有の事情を考慮せずに政策を
RCAST NEWS
▲対談中、馬場教授から次々と資料やデータが示されていく
受けますね。これはしっかりとしたデータに裏付けられている
RCAST NEWS
3
RCAST Cross Talk
からでしょうが。
いくのではないでしょうか。
モチベーションが上がるし、PIには現場で見過ごされた実験
の2つをうまく組み合わせることで、それぞれで見えなかった
馬場 : 私は反時代的なので敢えて言いますが、今、大学に求め
神崎 : 私は昆虫の脳やセンサを研究の対象にしています。
昆虫は
結果や最新の分析ツールに関する情報が入ります。おそらく
ことが見えて、理解につながるわけです。
られるのは表面的な産学連携よりもやはり教育です。科学者は
犬と同等かそれ以上の嗅覚能力がありますが、このような優れた
研究不正の背景には、PIが資金繰りに忙しすぎて現場に行けず、
馬場 : トップダウンでは、モデルを立てられるとしても、やはり
筋を通す学生を育てることが一番。研究室マネジメントをきちん
匂いセンサはまだ工学的に作られていません。それならという
しかし、評価のための成果を出すために、ベンチから上がって
ボトムアップがないと本当に重要な情報は取れないのではない
と行うことが、実は不正防止やインパクトの高い発見につながり
ことで研究を進め、昆虫の嗅覚能力を遺伝子やタンパク質から
きたスライドを組み立てて論文を書くという現在の日本の科学
でしょうか。
ます。一番大切なのは、知的な組織として研究室のレベルを常に
再現できるようになってきたのですが、そのような成果に先端
界にある程度、共通化した体制があるのでしょう。
神崎 : そうですね。やはり2つのアプローチをうまく補完しな
上げていくことだと思います。
研のいろいろな分野の、まさに異分野の先生が協力してくだ
神崎 : さらに重要だと思うのは、
産学連携がより求められる中で、
がらやることが重要ですね。研究室運営、組織マネジメントの
さって、今大きく展開しようとしています。研究室の学生や研究
今までのピュアサイエンティストの生きる道をどうクリアに
コアですね。
員はまさに多様な研究者と交わって日々研究を進めています。
していくかで。課題ですね。
馬場 : PIがそれをやろうとするとコストが高すぎて無理です
馬場 : この話は、おそらく大学の最後の本丸ですから、世間が
から、若手がやるのはいい手ですね。複数の研究室とうまくつな
厳しくなったからといって制度や国のお金に振り回されてこの
がる人がいると、研究室間のコミュニケーションはより緊密に
部分を毀損すると取り返しがつきません。例えば、Dishonest
なると思います。例えば、先端研基金採用の助教には関連する
Conformityの善悪はおいて、エディターや査読者とコミュニ
複数の研究室ミーティングへの出席を義務化するなど、制度的に
ケーションがきちんとできる学生を育てること、
そして、
そういう
一種の補助線を引く試みがあると面白い結果が出るかもしれま
研究室運営のできるPIを育てることです。きちんとした研究室
せんね。
運営、組織マネジメントの中で研究を行っていれば、重要な研究
Description of Dishonest Conformity:
Reaction to inconsistent instruction
Followed referee
63%
Resubmitted w/o following referee
19%
Submitted to a different journal
not to follow referee
16%
Gave up publication
2%
テーマも自然と見つかるのではないでしょうか。最初から東大や
S. Shibayama and Y. Baba, "Dishonest conformity in peer review", Prometheus (forthcoming)
先端研といった組織のトップダウンで将来性のある次の研究
Dishonest Conformityに関する調査結果。約360サンプルのうち、63%の
研究者が査読者のコメントに従って修正、19%が査読者のコメントに従わ
ず修正して再提出。16%が査読者のコメントに従わず別のジャーナルへ投
稿、2%の研究者は投稿を断念する。
分野が決まるものではないと思います。
神崎 : これは研究自体でも同様で、
ボトムアップとトップダウン
▲馬場先生の研究室で行われた対談は2時間半に及んだ
※1 大学の技術移転機関
※2 20世紀中期にアメリカの社会学者ロバート・K・マートンを中心とした学派が展開した科学社会学の理論。科学的発見は科学コミュニティによって共有され、個人的な
多様性をいかにポジティブに使うか
利益は発見に対する認知と評価に限定されるという科学界のコミュナリズムを主張した。
※3 柴山創太郎 東京大学工学系研究科技術経営戦略学専攻 特任准教授
※4 先端研に設置されている大学院「先端学際工学専攻(博士課程)」の学生主導型カリキュラム。受講生が自らプロポーザル教員を選択し、指導を受けながら自分の研究
神崎 : 時間をかけてきっちりと研究する人もいれば、要領よく
テーマと直接関連しないトピックスについて研究企画書を作成する。
さっさとポイント押さえて研究する人もいる。分野にもよるの
でしょうが、真理探究を進める人、産学連携を上手く進めたい人
など、全く違うカテゴリーの研究者がいて、まさに多種多様で、
研究者といっても十把一絡げでは捉えられない。
馬場 : 先端研には多様な人がいますよね。規模が小さいですか
ら、変な言い方ですが小振りなものがゴロゴロしているわけで
す。その多様性をポジティブに運用できるかが鍵ではないで
4
対談後記
▲お互いに身振り手振りを混えての熱いトーク
PIは、振り回されず本丸を守る
しょうか。技術の話では、GEに勤める私の学生は、大学院の先導
馬場 : 私が東大で教えきれなかったことはリーダーシップ
人材育成プロポーザル ※4を田中敏明先生(元・先端研特任教授)
だと思っていて。日本が変われなかった最大の理由は変革型
の下で書き、それを会社で3∼4ヵ月で製品化して市場に出し
リーダーシップの不在です。もっと言えば、チームの中でのリー
ました。今年のGEジャパン社長賞を獲ったそうです。
ダーシップ。学生にチームワークのエクササイズをさせると、
神崎 : それは素晴らしいですね!全く知らなかったです。
人と一緒にやりたくない、
と言う学生が多い。
また、
やってみると、
馬場 : 先導人材育成プログラムプロポーザルのデリバティブ
他のメンバーを妙に気にして合意形成に熱心なあまり、どの
です。技術の場合はいかにスピーディにユーザーのニーズを
チームの結果も大同小異。どうやって将来PIになる学生を育て
製品に反映するかが重要です。ポジティブに多様性を使うなら、
るかは、すごく大きな課題だと思います。
さまざまな研究成果がタイムリーに社会還元される可能性が
神崎 : PI自体も状況は苦しくて、私も最近はディレクターの
生まれます。そのためには、まず、先端研を舞台として、学生が
ようになっていて、結果的に講師や助教に現場を任せてしまう。
他分野の研究の雰囲気や、
それこそ科学と技術では何が違うのか、
すると現場のリアルな情報がリアルタイムで入らなくなります。
理解を深めて欲しい。人的な交流を通して分野間の多様性を
馬場 : それは、ベンチワークへ出たほうがいいです。特に探索
体感できれば、
自分たちの研究室のコアになる行動様式がわかって
型の基礎研究は。
理由はいろいろありますが、
教授が来ると現場の
RCAST NEWS
人は自然の不思議を理解するために科学
(サイエンス)
を生みだし、
それを応用して快適な生活のための技術を作り上げてきた。
科学と
技術を生み出すのは人である。
人は自然の理解をインセンティブに、
科学と技術を研ぎ澄ましてきた。科学技術の社会へのさらなる
還元のため産学連携が生まれ、
異分野融合とも相まって科学技術の
イノベーションを推進する時代を迎えた。
このような背景のなか、
研究倫理が問われ、論文捏造、偽造、盗用、さらには研究費の不正
利用など科学を根底から覆す問題もあらわになった。2時間半に
わたる科学と技術に関するインタビューで、馬場先生の議論の
背景にはいつも教育があった。時代や企業の要請により、科学の
枠組みはダイナミックに変容する。
科学の本丸を支えるのは大学で
あり、その基礎体力は科学のノルム(規範)をいかに脈々と伝えて
ゆくかに還元される。
ノルムの根本は教育にあることを馬場先生に
改めて教えられた。
(広報委員長 神崎 亮平)
▲対談後の記念撮影は、充実感あふれる表情
RCAST NEWS
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File
先端研探検団Ⅱ 光製造科学 高橋研究室
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指先工場・光の革命
見えない光「エバネッセント光」が未来を照らす
樹脂を固めるだけでもかなり時間がかかって。正直、これが限界
視覚は、その情報量の多さからもっとも重要な知覚のひとつだ
てくれました。今では、当時思いもしなかった新しい芽がいろい
が、その担い手は、やはり高橋教授が道具であると主張する光。通
ろ出てきています。我慢強く研究を続けることも大事ですね
常私たちに見える光は、物体が発した光や物体で反射・散乱され
かな…と思うときもありましたが、学生がよくがんばりクリアし
(笑)」
と話す様子は明るい。
た光が空間を伝わって届いている。すなわち、日常、私たちが利用
スマートフォン1台で、あれもこれもできる。フィットネスウォッチでヘルスケアデータも取れる。自
動運転化へと進むIT自動車…。身近なモノはどんどん賢く小さくなるが、モノを作り出す工場は、果
たしてどうなのでしょう。光を駆使して最先端モノづくりを目指す高橋研究室が考えるのは、人がつ
かめないデバイスを製造する小さな小さな工場。それは一体…?
している光は必ず伝搬を伴ったものだ。一方、エバネッセント光
は、屈折率の異なる媒質間において特定の角度で光が入射したと
きだけ情報が逃げずに全反射し、その際に低屈折媒質側にわずか
にしみ出す光の層のこと。空間を伝播しない性質、にじみ出る層
がわずか100nm程度の薄さという特徴に着目した高橋研究室で
は、エバネッセント光を光造形に応用する技術を研究する。
「伝播
しないので情報が保たれる上に1層が薄い特徴を活かし、層厚が
光を道具に、モノづくりを改革
のを見る場合は電子顕微鏡に頼ることになる。電子顕微鏡はた
100nmオーダーの微細な3Dプリンタを目指します。
“面”で一括
しかに分解能は高いが、一般的には真空環境が必要となり、生
して層を作るため、特にパネルのような薄く広がった構造に複雑
▲エバネッセント光で造形した東大ロゴの銀杏マーク。
100μm×100μm程度の
「現在の工場では技術を駆使して製品によっては20nm以下
産現場での活用を妨げる。環境を真空に限定しない光のメリッ
な微細機能構造を付与といった特殊な造形が可能になります」
領域に、
厚さわずか100nmの一括造形を実現
(高橋研・鈴木裕貴さん 作)
の形状スケールも扱いますが、基本的に最後は、人が手で持つ
トを拡張できれば、光での計測クオリティが上がり、モノづく
と、高橋教授。太陽電池パネル表面の微細加工に使えば、光の反射
サイズの製品を作りますよね。私たちが考えているのは、人が
りの現場が変わる。高橋研究室では、ただ光を当てても見えな
を抑え、集光率アップに貢献できると言う。
「従来の装置では1層
手でつかめない小さな部品やデバイスを自動化して作り、しか
いものを、光を動かし複雑な計算を行うことによって、一度光
あたり5μm程度で、これは100nmで造形するエバネッセント光
も数十mmの箱の中に納まるサイズの工場です。これはまだ、
を当てただけでは見えない部分をあぶり出す「局在光シフト再
の50層に相当します。エバネッセント光なら、より緻密なモノづ
世界のどこにも存在していません」と説明する高橋教授。研究
構成型超解像法」を研究。また、光を使って粒子を操作し、化学
くりができるはずです」
。
室では、計測、加工など光技術の可能性を追求し、光を究極の道
反応によって微細な構造を作る「光触媒ナノ粒子による三次元
現状は1層あたり数百nmの厚さで10層の積層を実現。積層の
具 と し て 展 開 し た 先 に 、そ の 小 さ な 工 場「 セ ル イ ン マ イ ク ロ
構造創製」、シリコンウエハに付着するゴミなどの欠陥を液体
安定性などクリアすべき課題はあるが「エバネッセント光は微細
ファクトリ」の実現を描いている。
を使って自動的に探し出す「自律的欠陥探索(分裂型マルチ)プ
な情報を持っているため、もともと計測で使われていました。エ
光は道具、と高橋教授は言う。
「 光技術は計測や加工を行う道
ローブ」など、製造現場の変革に直結する研究が並ぶ。
「 中でも、
ネルギーが局在しているという意味では、当然、加工でも使えま
具で、言ってみれば、医者が使う聴診器、メス、ピンセットなど
エバネッセント光という特殊な光を使ってモノを作る研究が
す。
光造形のアイデアを思いついた当初は、エバネッセント光で
と同じです。メリットは、それらをすべて光で展開できること。
進めば、100nmオーダーの極めて薄い層を加工単位とした3D
研究室で扱うさまざまな光の技術を統合したコンセプトが“セ
プリンタが実現します。エバネッセント光を光造形に使う研究
ルインマイクロファクトリ”です」。例えば計測。光でモノを見
は、世界でもおそらく私たちだけです」と、高橋教授が見せてく
る場合、通常は200nm程度が限界となり、それより小さいも
れたのが(右ページ上の銀杏の画像)だ。
エバネッセント光って?
▲実験中の学生と楽しそうに話す高橋教授
教授の横顔
大の冒険旅行好き。大学時代には2ヵ月かけてオートバイで
1層、わずか100nm以下。
エバネッセント光
髪の毛1本の太さは約50∼100㎛だから、エバネッ
セント光の1層は、髪の毛の約1/500の薄さ。
オーストラリアを一周した。大荷物は積めないが故障時の備
えは必要なので工夫を凝らす。
「荷物のパッキングは今でも
大好きなんです」と話す高橋教授。研究室の運営ポリシーは
「チャレンジ精神にあふれ、繊細かつ大胆」。準備や対応は繊
細だが大胆な行動を楽しむ冒険旅行そのもの。
「これは相手
低屈折率媒質
高屈折率媒質
入射光
がモノでも人でも同じです。小さい構造は表面張力に弱い、
というモノの気持ちをイメージしないとできない研究だし、
θ
θ>臨界角度
反射光(全反射)
思いやりがないとチームもうまくいかない」。高橋研究室の
量)
の異なる媒質間において、
ある特定の角度で光が
面々はというと「かなりキャラが濃いですよ。総長賞を獲っ
高橋 哲 教授
入った場合のみ、光は全反射する。
た学生もいれば、社交ダンス部や応援団長も。こんなに多様
1995年3月大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了。大阪大学工学
その際、
低屈折率媒質側にうっすらとしみだす光が
なタレント溢れる人たちと毎年新しく知り合いになれると
「エバネッセント光」。
6
RCAST NEWS
オーストラリア一周旅行当時の高橋教授(内陸砂漠地帯縦走中)
屈折率
(光がある物質の中を進行する際の“抵抗”
の
いう意味でも、大学の研究室という職場は面白いですね」。
部助手、大阪大学大学院工学研究科講師を経て、2003年1月東京大学大学
院工学系研究科助教授、2013年6月東京大学大学院工学系研究科教授。
2014年4月より東京大学先端科学技術研究センター教授
RCAST NEWS
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目指すは横幅10㎜、奥行き数㎜の工場
うきたか!という思いもしないようなギャップが必要なのかも
しれません。よく、朝方の寝ぼけた状態で浮かんだアイデアを
今まで見えないものが見え、作れなかったものが作れるよう
自分宛にメールしたりしていますよ」。
になったとき、そこにある光造形技術の統合形「セルインマイク
関西弁で話は続く。
「私は工場やモノをどうするかというアプ
ロファクトリ」が登場する。かつてない極小サイズのこの工場
リケーション寄りの研究ですが、光に関わりたいという思いが
は、高橋教授のオリジナルアイデアだ。現状で最小とされるの
あるんです。光って非常に根本的なエネルギーで、地球で生命体
は、机上にミニチュア旋盤等の微小化した工作機械を配置した
が誕生したのも、石油があるのも、大昔の太陽の光がエネルギー
「デスクトップマイクロファクトリ」だが、
「 セルインマイクロ
をくれたからで、今も私たちはその恩恵を受けています。光には
ファクトリ」は、計測、加工、ハンドリングから搬送、欠陥探索ま
科学として探求すべき部分がまだたくさんある。光科学に関わ
で横幅数10㎜、奥行き数㎜の中に最先端光技術を集結させ、最
りながら、実践も追求できるのが、この研究の面白いところで
終製品は1㎜以下を目指す。オリジナリティの源を尋ねると「僕
す」。熱く語る高橋教授だが、最近、大きな悩みを抱えている。
「講
は関西人なので、笑いが大好きなんです。笑いって要はギャップ
義でですねぇ…ギャグがスベってばかりなんですよ。お互いに
ですよね? おそらく研究も同じで、普段ならこうするけど、そ
しんみりした状態になるので、かなりツラいです…」。
▲静かな雰囲気の高橋研究室…と思いきや
▲ノリノリでポーズをしてくれる明るいメンバーでした。
そこが知りたい!
指でつまめる工場「セルインマイクロファクトリ」
局在光シフト再構成型超解像法
自律的欠陥探索
見えなかった
ものを見る
複雑な計算を繰り返し、ナノメートルを判別
並列に一括形成される
三次元ハンドリング用
放射圧プローブ
垂らした液体が蒸発する一瞬に、小さなモノを見る
数10mm
数100μm
固体浸レンズ上面で生成される
静的定在エバネッセント光を
利用したマイクロ部品整理倉庫
機能ビーズ融着用
UVレーザープローブ
完成部品・デバイス
固体浸レンズ上面で生成される
エバネッセント光を利用した
フレキシブルライン対応
メイン搬送システム
数mm
光触媒ナノ粒子による三次元構造創製
エバネッセント光露光造形
作れなかった
ものを作る
小さな粒子で新しいものづくり
マイクロサイズの3Dプリンタ
超小型化で超省エネ。工場の概念を覆す、モノづくりの未来形。
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C
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駒場リサーチキャンパス2015開催
先端研 倫理研修会を開催
6月5日(金)
・6日(土)に、駒場リサーチキャンパス公開2015を開催しまし
6月10日、先端研において、教員および研究に関わる職員を対象とした研究倫理
た。事前申し込み制の理科教室は、受付開始直後に定員オーバーの教室が出
研修会を開催しました。研究倫理教育については、
「研究活動における不正行為へ
るほどの大人気でした。
の対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日文部科学大臣決定)」におい
今年は、先端研オリジナルポスターやポロシャツを制作したり、中邑研究室
て、研究者等への定期的な実施と確実な受講が求められています。本研修では
の客員研究員でアーティストの鈴木康広さんの作品「まばたきの葉」を展示
(独)日本学術振興会の研究倫理教育教材『科学の健全な発展のために ― 誠実な
したりと、新しい試みもいくつか行いました。当日は、学生からファミリーま
▲理科教室「電波のひみつ」で電子レンジに見入る子どもたち
▲講師の浅島誠理事
科学者の心得 ―』の編集委員長・浅島誠理事を講師にお招きし、
「研究活動及び研
で、たくさんの方に研究室公開や講演会にお越しいただき、2日間の来訪者は
究費の不正防止の重要なポイント」についてご講演いただきました。研究倫理の
約5,500人と大盛況でした。
向上及び研究不正行為防止について質疑応答も活発に行われ、有意義な研修とな
先端研では毎年、約半年前から駒場リサーチキャンパスに向けて、助教など
りました。
の若手研究者と事務スタッフを中心としたワーキンググループを結成して
います。メンバーの声からさまざまな新しい試みが生まれた2015年の流れ
超伝導量子ビットと磁石の球の
コヒーレントな結合に初めて成功
を、2016年につなげていきます。
先端研の分野横断型プロジェクト
「東日本大震災アーカイブプロジェクト」
ディスカッション開催
▲鈴木康広客員研究員(中邑研究室)の作品「まばたきの葉」
▲研修会の様子
量子情報物理工学分野の中村泰信教授、
田渕豊特任研究員
(当時)
および石野誠一郎
修士学生らの研究グループは、理化学研究所との共同研究により、超伝導回路を
用いた量子ビット素子と強磁性体中の集団的スピン揺らぎの量子をコヒーレント
に相互作用させることに初めて成功し、
ミリメートルサイズの磁石の揺らぎが量子
力学的に振る舞うこと、
その揺らぎの自由度を制御する方法を明らかにしました。
6月27日、14号館先端研カフェにて「東日本大震災アーカイブプロジェクト」ディ
この技術により、量子コンピュータと量子通信ネットワークの間で量子情報を
スカッションが開催されました。本プロジェクトは、東日本大震災に関連する(発
▲7月10日、先端研にて記者会見が行われた
受け渡す量子インターフェイスや、
量子中継器への応用が期待されます。
災以前も含む)各種の情報の記録・保存・活用を共通コンセプトとして、それを軸
に様々な分野の研究者が自由に議論することを活動の中心としています。今回
は、東京大学情報学環の吉見俊哉教授をゲストスピーカーにお迎えし、
「震災アー
カイブと文化の持続可能性 知識循環型社会と記憶の拠点化」というテーマでお
話しいただきました。
藤田敏郎名誉教授が紫綬褒章を受章
▲ゲストスピーカーの情報学環・吉見俊哉教授
さまざまなアーカイブ化プロジェクトに携わる吉見教授から、
藤田敏郎名誉教授
(臨床エピジェネティクス)
が、
食塩摂取と高血圧や腎臓病発症の
メカニズムを世界に先駆けて明らかにした功績により、本年春の紫綬褒章を受章
● ネット社会においては情報を単なるフローで終わらせず、
蓄積・再活用する仕組みを
しました。
社会の中に実装していくかが重要。
▲紫綬褒章を受章した藤田敏郎名誉教授
● 大学の研究とは、既存のデータや知識を理論と一体化し、新しい価値を生み出す
作業。
アーカイブのような記録知を活用し、議論や対話の中から新たな価値を生み
出すことを大学間連携で行う必要があるのでないか。
台湾文化省大臣が西村幸夫教授を訪問
● 災害記録の保存や防災情報の活用体制がバラバラで把握できない現状において、
いかに異なる災害経験の情報を共有できる仕組みを作るのか。
● 米国のIT企業は次の情報世界のフロンティアとしてアーカイブ的な集合知へとシ
フトしてきている。
日本におけるアーキビストの育成とキャリアパスも重要な課題。
など、
多くの問題提起を受け、
牧原出教授の司会で活発な議論が展開されました。
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RCAST NEWS
▲司会の牧原出教授(左)、御厨貴客員教授(右)
昨年、台湾文化省の名誉顧問に任命された西村幸夫教授(都市保全システム)が
6月15日、
台湾文化省大臣 洪孟啓
(こうもうけい)
氏一行の表敬訪問を受けました。
西村教授と洪文化大臣は、
今後の台日文化交流について意見交換を行いました。
▲洪孟啓大臣(中左)、西村教授(中右)
RCAST NEWS
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I
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人事情報
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活動報告
R e p o r t
[ プ レ ス リ リ ー ス ] http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/pressrelease/
採 用・任 命・転 入 等
2015年7月30日
氏名
職名
前職等
2015年6月1日
石本 憲司
特任研究員
大阪大学大学院薬学研究科付属
創薬センター
2015年6月1日
松田 英子
特任研究員
東大総合文化研究科 学術研究員
2015年6月1日
西山 和巳
特任専門職員
電気通信大学 事務補佐員
2015年7月1日
渡邉 宙志
特任助教
日本学術振興会 特別研究員
2015年7月1日
Sodabanlu
特任助教
東大大学院工学系研究科
Hassanet
簗瀬 森明
学術支援専門職員
係長
放送大学学園東京文京学習センター
総務係長
2015年7月1日
江﨑 順子
係長
西野 真理
宇宙航空研究開発機構財務部
主任
放送大学学園財務部経理課施設
グループ主任
2015年8月1日
池内 真志
講師
2015年7月10日
大きさでの量子力学的振る舞いを明らかに―
2015年7月3日
横紋筋肉腫におけるゲノム・エピゲノム異常の全体図を解明 ∼横紋筋肉腫を4群
に分類∼
放射性抗体による小細胞肺がんの治療法の開発に期待
2015年5月7日
体温維持には熱産生遺伝子の立体構造変化が必須 ∼寒冷の感知によるタンパク
東大先端研 助教
退 職・転 出
氏名
質のリン酸化と、遺伝子DNAの高次構造変化∼
障がい児の学習・生活支援を行う「魔法のプロジェクト2015 ∼魔法の宿題∼」
職名
2015年5月31日 相田 俊一
特任専門員
2015年7月1日
係長
原田 正史
協力校決定 ∼特別支援学校・特別支援学級および通常学級など69校に携帯情報
転出先
端末合計180台を貸し出し∼
中野 洋介
係長
東大医学部附属病院総務課総務チーム
[ テ レ ビ・ラ ジ オ 出 演 ]
若林 則夫
係長
東大教養学部等経理課施設 係長
特任教授
文部科学省
テレビ朝日◇『報道ステーション』◇牧原 出 教授(政治行政システム)
2015年7月15日 後藤 裕
2015年7月9日
登録後の課題は?』◇西村 幸夫 教授(都市保全システム)
W i n n i n g
2015年6月17日
浜窪研究室(計量生物医学)の太期 健二 特任助教がイタリアHumanitas大学に
2015年6月27日
[新聞掲載]
2015年7月17日
【日本経済新聞 電子版】動画ニュース◇「秘めた昆虫の「能力」ロボットの頭脳に」
◇神崎 亮平 教授(生命知能システム)
2015年6月25日
【朝日新聞】朝刊◇「たんぱく質 体温に貢献? 東大などのチーム解明」◇酒井 寿郎
教授(代謝医学)
2015年6月12日
【日経産業新聞】朝刊◇「小動物の体内機構に学ぶ ロボやセンサー 用途多彩」◇
神崎 亮平 教授(生命知能システム)
2015年6月7日
システム)
【新潮社フォーサイト】
◇中東 ― 危機の震源を読む(88):ギリシア ― ヨーロッパの
内なる中東 ― ◇池内 恵 准教授(イスラム政治思想)
2015年6月10日
【Journalism 6月号】◇政治をつかむ「過疎、地域再生…。課題は多いが、ニュース
にしにくい統一地方選 関心喚起に全国紙の工夫が必要」◇牧原 出 教授(政治行政
システム)
2015年6月6日
【週間東洋経済】◇「検索を会社分割して平等に利用させよ」◇玉井 克哉 教授
(知的財産法)
2015年5月14日
【中東協力センターニュース】◇連載「中東 混沌の中の秩序」第1回 中東情勢を
読み解く7つのベクトル」◇池内 恵 准教授(イスラム政治思想)
【毎日新聞】朝刊◇「来春「障害者差別解消法」施行」◇近藤 武夫 准教授(人間支援
工学)
2015年6月6日
【日本経済新聞】朝刊◇「同じ成分の薬なら…別の製法でも特許侵害 特許の乱立
2015年5月30日
白山・アクトリーが研究所」
2015年5月29日
【日刊工業新聞】朝刊◇「悪性進展型小細胞肺がん 放射免疫療法で縮小」◇浜窪
2015年5月10日
【WIRED】◇VOL.16 WIRED X (ワイアード エックス) 東大先端研の「3メートル
風洞」
中邑研究室(人間支援工学)
2015年6月27日
2015年5月29日
NHK総合◇『助けて!「きわめびと」』◇西成 活裕 教授(数理創発システム)
賞を受賞
受賞論文:
「高速MEMSスキャナを用いた第三世代SS-OCT用波長走査型光源」
新 刊
B o o k
ぼくの命は言葉とともにある
福島 智 著 / 致知出版社 / 2015年5月30日 刊
※視覚障害、肢体不自由などの方へのテキストデータも提供されています。 隆雄 教授(計量生物医学)、児玉 龍彦 教授(システム生物医学)
M2M/IoT教科書
2015年5月15日
稲田修一
(監修)
富田二三彦、
山崎徳和、
MCPC M2M/IoT委員会
(編)/ インプレス
/ 2015年5月1日 刊 【日刊産業新聞】朝刊◇「寒さで発熱 仕組み解明 ―東大 タンパク質が関与 ―◇
酒井 寿郎 教授、稲垣 毅 准教授ら(代謝医学)
NHK Eテレ◇『ETV特集 不器用なぼくらの教室 東大異才発掘プロジェクト』◇
おいて毎年優秀な若手研究者4名に贈られるGerry Scotti賞を受賞
年吉 洋 教授(極小デバイス理工学)らが平成27年電気学会電気学術振興賞論文
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での政府の未経験 未熟なメディアは検証力を上げよ」◇牧原 出 教授(政治行政
2015年7月9日
NHKラジオ第一◇『先読み!夕方ニュース「明治日本の産業革命遺産」 世界遺産
受 賞
【Journalism 7月号】◇政治をつかむ「邦人人質事件報告書から浮かぶテロ事件
【中日新聞】朝刊◇「光&熱 最先端発電 太陽エネ 7割回収目標 ― 東大と開発
東大生産技術研究所予算執行チーム 係長
2015年7月17日
2015年7月1日
行方』◇森川 博之 教授(情報ネットワーク)
2015年7月10日
防止に効果」◇玉井 克哉 教授(知的財産法)
(庶務担当)係長
2015年7月1日
NHK総合◇『クローズアップ現代 新・産業革命?“モノのインターネット”の
超伝導量子ビットと磁石の球のコヒーレントな結合に初めて成功 ―目に見える
2015年4月15日
発令日
ワーク)
台風数との相関を指摘∼
2015年5月28日
(調布航空宇宙センター)主査
2015年7月1日
日本近海の夏の大気圧分布に数十年規模で変化する関係を発見 ∼コメの収穫量や
[雑誌掲載]
J-WAVE◇『PARADISO Smart Life Special』◇森川 博之 教授(情報ネット
2015年5月28日
発令日
2015年7月1日
2015年6月5日
2015年5月9日
【朝日新聞】朝刊◇「未来への発想委員会 ― リスク社会を生きる(下)予測不能な
事態に対処する」◇牧原 出 教授(政治行政システム)
昆 虫 科 学 読 本:虫 の 目 で 見 た 驚 き の 世 界
神崎亮平、光野秀文、櫻井健志 著 / 東海大学出版部 / 2015年3月31日 刊
iOS×BLE Core Bluetoothプログラミング
堤 修一、松村 礼央 著 / ソシム / 2015年3月26日 刊
2015年4月27日
2015年6月21日
TBSテレビ◇
『サンデーモーニング
「風をよむ」
』
◇御厨 貴 客員教授
(情報文化社会)
【日本経済新聞】朝刊◇「知財戦略ここに注目⑤」営業秘密の漏洩防止」◇玉井 克哉
教授(知的財産法)
先端研ウェブサイトで最新の活動状況をご覧いただけます
RCAST NEWS
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知られざる先端研 <キャンパス公開舞台裏 編>
6月5日・6日に開催された駒場リサーチキャンパス公開。先端研では毎年、約半年前に研究者と事務スタッフによるワーキンググルー
プを設置し、開催に向けたさまざまな準備を進めています。今回はその舞台裏を少しだけご紹介します。
すべては会議室で起きている!
生研と共同制作の
エコバッグは先端研の
Relay
Essay
Vol.
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先端とは何か
デザイン案に!
当事者研究 熊谷 晋一郎 准教授
2014年の年末、
先端研独自ポスター制作を決定。
2015年1月にデザイナー桑田さんが案をプレゼン。
頼もしい!事務の推進力
業者選定から受発注、
支払いまで事務がバッチリ進行。
ポロシャツ到着直後に13号館前でヨロコビの記念撮影。
哲学者ジル・ドゥルーズと精神分析学者フェリックス・
だろう。こんな時、当事者研究によって新しい概念を生み
ガタリは、最晩年の共著『哲学とは何か』のなかで、哲学と
出し、さらに専門的概念に翻訳する関数ができれば、相互
科学の区別をしてみせた。彼らによれば、哲学は「新しい
理解は深まり、
より細やかな治療が実現する可能性も高まる。
概念を創造する営み」であるのに対して、科学は一定の概念
もちろん、当事者が医師の使う概念に適応するだけでは
群を所与としたうえで、概念同士をつなぐ「関数を創造する
不十分である。
医師の側も当事者研究に応答する形で、
自らの
営み」
である。
すべての研究者が求めてやまないのが、
現実を
使い慣れた概念を反省的に振り返り、その一部を更新する
よりよく説明し予測する「知」、そして現実をたくみに制御
ような回路ができなければ、医師と当事者のコミュニケー
する「技」だとしたら、先端領域に哲学と科学の両方が求め
ションは実現しない。すなわち、当事者と専門家が、双方、
られることはあきらかだろう。
哲学を行わなければならない。最近では、多くの医療機関や
私がテーマにしている当事者研究という取り組みは、
研究者が当事者研究の可能性に注目しており、
実際の診療や
何らかの困りごと(たとえば、精神障害や発達障害、依存症
支援に取り入れている施設もある。
など)
を抱えた当事者たちが、
互いに協力して、
自分の経験を
ますます高度化する科学技術が、
各々使い慣れた概念群に
施設担当で事前に所内を見回り。
言い当てる新しい概念を生み出そうという哲学的な実践で
内閉して哲学をやめてしまったら、自らが説明できない
照明の明るさや危険な
ある。
たとえば診察室で、
当事者が自分の生きづらさをうまく
範囲の現実を捨象することになってしまうだろう。それ
場所などをチェック。
言葉にできない場面を想像してみよう(私たちが使う自然
だけではない。科学や技術のステークスホルダーである
言語は、多数派の経験をうまく表現できるようデザイン
広義の当事者の経験と、科学的観測との間に接点が失われ、
されており、少数派の経験の中には対応する言葉が見つ
科学コミュニケーションも立ち行かなくなるに違いない。
からないことも多い)
。
たとえ言葉にできたとしても、
それを
先端は、互いの概念と関数を更新しあう異質な他者との
医師に通じるボキャブラリーと関連付けられずに、相互
コミュニケーションの中に位置付けられるのではないだろ
理解のないまま処方薬だけが増えていくという状況もある
うか。
ポロシャツ制作も決定!
事務スタッフがカタログでモデルデビュー。
準備も当日も大奮闘!
2015年キャンパス公開ワーキンググループメンバー
ワーキンググループと
当日は委員長の
中村教授と副委員長の
石北教授が所内を巡回。
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RCAST NEWS
来年度の委員長・石北教授にキラキラポーズでエール!
RCAST NEWS
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輝け!未来の先端人
森 朋子さん
もり
ともこ
その場所にしかない
価値をつなぐ
東大・本郷の歴史的空間構造と景観の価値を継承する
森 朋子
キ ャ ン パ ス 計 画 に も 参 加 。1 9 0 0 年 の 本 郷 の 様 子 を
西村研究室(都市保全システム)助教。奈良女子大学卒業後、民間企業へ就職。コロンビア大学
記した本を手に。
大学院建築・都市デザイン学専攻修士課程修了。2013年、東京大学大学院工学系研究科都市
工学専攻博士課程修了。博士(工学)。世界遺産である五箇山の相倉・菅沼集落やネパール・ルン
ビニの都市保全プロジェクトなどに携わる。
世界遺産の中でも人は生活する。富山
を掘り起こして地域の方に伝え、納得し
べる日々だ。
「 生業が空間の違いを作る
県・五箇山にある合掌造りの家もそのひ
てもらえるとすごく嬉しい」と話す。
ベースとなるので、アジアの農村地域は
とつ。
「美しい建築や景観だけが文化財に
マンションの折込広告を見ては間取り
比較的よく似た空間になっています。
なる理由ではなく、その場所にも意味が
を考える子どもだった。大学で住居学科
将来は日本での研究成果をいい形でアジ
あるんです」。現状凍結のごとくそのまま
へ 進 み 、卒 業 後 は マ ン シ ョ ン の デ ィ ベ
ア の 途 上 国 に 輸 出 し 、ア ジ ア の 文 脈 に
残すのが“保存”。森助教が研究する都市
ロッパーへ。在職中に米国で修士を取得
沿った都市保全を進められる普遍的な
“保全”は、ある部分の価値は活かし、ある
し、後に不動産証券化の仕事へ転職。リー
方法論を見つけたい」と声に熱が入る。
部分は現代社会でも機能するように変え
マンショックに翻弄された時期に訪れた
地域の人と深く関わりながら見逃され
ることだと言う。
「合掌造りは建築が注目
伊豆諸島・新島で島の人の温かさに触れ、
ている価値を見つける作業は「検索して
されますが、あれは水環境に恵まれず稲
「大事なものを残して未来へつなげたい」
わかることではない」。地域の中に入り込
作できない土地を桑畑として利用し養蚕
と研究生活への扉を開く。西村研究室で
む一方で、終了時には自分たちが実行者
を生業とした工場兼住宅です。その集落
の五箇山プロジェクトが博士論文となっ
ではないという罪の意識と似た気持ちに
空間は、そこにある自然環境に人間が向
た。現在は世界遺産のネパール・ルンビニ
なるという。
「 この気持ちについて、西村
き合った生活の知恵の結晶です。それは
で、丹下健三氏のマスタープランを再解
先生に聞いてみたいですね…」。現地で
地域の方にはありふれた日常生活の場と
釈し保全計画を提案するプロジェクトに
まっすぐ向き合う姿が目に浮かぶ。
なっていますが、そういう埋もれた価値
参加。地図にない遺跡を調査し、歴史を調
編集後記
広報委員 谷内江 望 准教授
(合成生物学)
今年度から広報委員を担当させて頂きます谷内江
とは研究者一人ひとりがその一端を担うのだという
です。どうぞ宜しくお願い致します!今回のRCAST
ことを思い出させてくれます。人々の生活の歴史に
NEWSは若手PIとして勇気付けられるものばかり
入り込んで都市保全を進めておられる森先生のインタ
でした。馬場先生と神崎先生の喧研諤学には「真に
ビューにはプロフェッショナルの責任感が見えた
良い仕事をせよ」というメッセージがあり、
「 PIは
ような気がします。6月のキャンパス公開の大成功に
リーダッシップを発揮し、現場に立て」が心に刺さり
見られるように、事務職員の皆さんと先生方・学生・
ました。高橋先生は光技術を駆使した「指先工場」と
スタッフのチームワークもがっちりな先端研には多くの
いう刺激的なヴィジョンを牽引されておられます。
先端的な研究と哲学があります。今回もそんな様子が
熊谷先生がおっしゃる「概念をつくり、つなげる」こ
見えるRCAST NEWSをお楽しみ下さい!
先端研ニュース 2015 Vol.3 通巻92号
© 東京大学先端科学技術研究センター
転載希望のお問い合わせ
[email protected]
この冊子は植物インキを
使用しています。
発
行
発行日:2015年8月21日
所 : 東京大学先端科学技術研究センター
〒153-8904 東京都目黒区駒場 4-6-1 http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp
編 集 : 広報委員会
[神崎亮平(委員長)、岡田至崇、高橋哲、池内恵、ティクシェ三田アニエス、巌淵守、谷内江望、村山育子、山田東子]
表 紙 写 真 : 鈴木康広客員研究員(中邑研究室)の作品「まばたきの葉」展示風景
ISSN 1880-540X