鋼コンクリート合成柱におけるらせん鉄筋の効果

⑳
②
135.鋼コンクリート合成柱における
らせん鉄筋の効果
は,これにらせん鉄筋を入れて補強したものを用いてい
る。中心軸方向荷辿を受ける場合に,らせん鉄筋の効果
が著しいことが実験的に明らかにされているからであ
る,。しかし,軸方向荷並のほかにモーメントを受ける
場合についての実験は行われておらず,その場合のらせ
ん鉄筋の効果については明らかにされていない。
本研究は,軸方向荷重とモーメントを受けるこの極の
合成柱におけるらせん鉄筋の効果を英験的に検討すると
共に,合理的に解析する方法を提示し,その効果を明ら
かにすることを目的としている。
2.実験方法
実験に用いた供試体は,いずれも円柱形であり,その
高さは直径(‘)の約3倍である。鋼管は,外径を114.3
~318,5mm,厚さを3.5~10.3mmの範囲で計6種類と
した。てん充モルタルの圧縮強度(ん)は312~543kg/
cm2である。モルタルは,膨張材を用いない場合のほか
甫豊哲
エが使用されており,特に大きな支持力の必要な場所に
正
1.はじめに
脊函トンネルでは,鋼管にモルタルをてん光した支保
村田
日本鉄道述設公団
束京大学
岡持辻
東京大学
(s方向)のひずみ(古阿,)とで表わされる。
EJwuI=a,r忍-25…………・・・・…………………・・・・.(2)
(8)らせん鉄筋は完全弾塑性体としたが,その軸方向
応力が降伏点を越るまでは,直角方向のひずみの値にか
かわらず弾性体とした。
z方向の応力が圧縮の部分では,らせん鉄筋のs方向
のひずみ(ど’四)は,らせん鉄筋のz方向のひずみ(B,jと
らせん鉄筋のs方向の引張応力度(⑪、)とで表わされる。
e,`=(1/E「)((1-u’2池,+たり「(1+,,「)
冠ウ'2α「`/(47,s「))+吻巴,〃・…………..…・・・(8)
7,:らせんの半径
E「およびU「:らせん鉄筋の弾性係数およびポアソン比
だ:モルタルとの1111に働く圧縮応力度によるらせん鉄
筋のひずみを平均化するものでsr/(2。,)とする。
(4)z方向の応力が圧縮とならない部分では,モルタ
ルのぎ方向の応力を0とする。
(3)および(4)の仮定より(4)式を得る。
5,3=(1/E,){①,$+陶山”'2ぴ,`/(4r『S「))………(4)
(5)z方向の応力が圧縮とならない部分では,応力が
に,アルミニューム粉末を添加した場合および,アサノ
(針)は20~40mmの範囲で4段階に変化させた。表1に
示すように,合計55体を作成し,45体を中心軸方Ifil圧縮
試験,10体を偏心圧縮試験に供した。偏心fitは鋼智外径
の10%としたが,戟荷装概の摩擦によって,侃心量はそ
れより0.75cmずつ小さくなった。鋼管汲面およびらせ
ん鉄筋表面のひずみを一体につき4~20枚のゲージを用
いて測定した。
3.解析方法
解析には以下の(1)~⑪の仮定を設け,それに基いて(1)
式~⑫式を導いた。
(1)鋼脊のポアソン比(''3)は,常にモルタルのポアソ
ン比(U、)以上である。
U`≧U1,,……・……・………………………・………(1)
(2)らせん鉄筋は,常に円形に配脱されており,らせ
ん鉄筋とモルタルとの付着を無視する。
(1)および(2)より,モルタルの体積ひずみ(ど…)は,部
E8H《・TW可砥苧
材軸方向(g方向)のひずみ(ど廓`)とらせん鉄筋軸方向
八;中心⑰圧田珂A
】】塑珂画I険伊】
麺聿四四四】四四】四四】】】j巴四】】四m四四四】
二》一一》》》一一一》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》
四■■■■■■■■■■■■■■■■四四四凶r四四四四m困匹』』
□■■ロロロ■ロロ■■ロロロ■■ロ四四四四”四四四四m四四四四
鉄筋の呼び径(。「)は9~22mmであり,らせんピッチ
七技年報XXXlVW51
Ⅱ凶Nnnmn四,四m四mm、、、囚mmnmmnnnmmnnnmm
ジプカルを混和材として用いた場合の3種類である。ら
せん鉄筋には,九鋼あるいは異形鉄筋を用いた。らせん
''07
図1モルタルの鑛アゾソ比
図3モルタルの応力一ひず熟曲線
2■
グ
グ
ノ
P
ゲヘーD5TqはPご=
p▲0
0.L、、20.コ0.6--
■3
回OD2Dpq0.6
ひずみ【jBD
,手いい、
図2軸方向応力におよぼす
鋼符の応力一ひず梁BlI係
卿4
■
らせん鉄筋の効果
堅’
い)
打笂
■■
図5
■■00.2。.》G
中心軸圧縮時の計算値些
実験値の一例
pf上炉)
■ロ。&ムタム
すものとする。
(o)より,らせん鉄筋のない場合のモルタルの体祇ひず
み(年,。)は(6)式で表わされる。
齢"=(l-2Um。)E犀・………・……・…,…・…....(o)
(7)モルタルの体敬ひずみ(鴎jは,B…にらせん鉄筋
がモルタルに与える圧縮応力度(ぴげ蕨)の影襟乃を加えた
地鞄
数およびポアソン比
(0)モルタルに一軸圧縮応力が作用する場合のその方
向のひずみ(鴎ご)とポアソン比(U…)との関係は図1に示
21
…=(1/E、,)(-1+u前,)元中'2U'3/(4汁野).…..(5)
E汀,およびU㎡:モルタルのひずみが小さい時の訓i性係
■口・巳ムタム・凸どん■Ⅱ$
1
(5)より,モルタルの円周方向(s方向)のひずみ(ど耐)
は,のけの関数で表わされる。
③的”0
小さいのでモルタルの微小要素がFi【性的挙動する。
殉UL
1.0
リブ牛【先)
Tii鑿;薑iiFfijii:'三丁
ものとする。
鐸ロー艶輌+(・……・…・・…・・・・・・・・・・・・………..…(7)
ここに
□〃=元中炉zひ「,/仏1分sケノ・・…………………・……(7)!
(8)z方向の応力が圧縮の部分では,(は。、『に比例
する。
バーC…『・・・・・・・・..…・・・………………………..⑧
C8は比例定数で25x10-6cm2/kgとした。
(2)式に(8)式,(7)式,(7)'式および(8)式を代入すると(8),
式を得る。
ど財ローUmo8b禰巴-(Emo-齢`。)/2
=u關齢`一Cs症②2u「"/(87西「)・・…………・…(8),
(0)z方向の応力が圧縮の部分ではOらせん鉄筋も含
めて平而保持が成り立つ。
en,8-5「忍..…………・・・・。.………..……・・………(9)
(ゆらせん鉄筋軸に沿って,ひずみを一周積分した価
はらせん鉄筋とモルタルとで一致する。
棒ァ巴。。s=中巴訪$・傘・……・・・・・・・・・・・・・・...............⑩
⑩式に(3)式,(4)式,(5)式および(8)`式を代入すると(IOD
式を得る。
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七技年報XXX昭51
図6偏心軸圧縮時の計算値と
実験値の一例
G■0
ゆず牛《升)
表231.算値と実験値との比較
采を十分な精庇で計算できることを示すものである。
図7は,断面の耐力に関してらせん鉄筋の効果を等瞳
の銅符を付加した効果と比較した計算結果であって,縦
軸に,らせん鉄筋による耐力の増加の付加鋼管による耐
力増加に対する比をとり,横軸にG/CDをとって,両者の
関係を示したものである。ここにDeOは釣合い破壊を起
こす偏心量である。偏心最eがCDの1o形程度以下の場合
は,耐荷力に及ぼすらせん鉄筋の効果は,付加鋼管の効
果と全く同じであるが,偏心量が燗すに従って低下し,
cがCOの50%程度になると,付加鋼笹の効果の約50%と
なることが示された。また,引張破壊となる場合には20
%以下の効果しかないことも推定されたのである。な
お,らせん鉄筋の効果は変形が大きくなってから現われ
HFSムタル町田ロ14+P』■U◆せん夕上
HO丑wSJ硯廿◆モルタル◆らせん険路
C・S・『圧■ロD訓呼鰯)
7図らせん鉄筋の効果と銅瞥の効果の比
るので,部材耐力に及ぼすその効果は,変形の影響をも
考慮して更に検肘する必要がある。
5.むすび
鋼管にモルタルをてん充し,更にらせん鉄筋を挿入し
て補強した場合におけるらせん鉄筋の効果は,モルタル
●
050
工q
の体積ひずみを,らせん鉄筋のない場合の値に,らせん
■
鉄筋がモルタルに与える圧縮応力度の影響を加えた値,
として解析する本研究の解析方法によって、偏心荷重を
0.5ユ□0ユ◇5
q/兇
を示している。
受ける場合についても,評価できることが明らかになっ
た。
らせん鉄筋の効果の一つは,最大耐力を与える時の変
図6は,偏心圧縮試験における実測値と計算値とを比
形鼬を著しく大きくできることであり,偏心圧縮の実験
較した1例であって,偏心載荷を受ける場合にも,非常
に変形の大きい範囲に至るまで,らせん鉄筋を用いた場
合の性状を追跡できることを示したものである。
によっても確かめられた。最大耐力に及ぼすらせん鉄筋
の効果は,本解析方法によれば,中心軸方向荷重を受け
る場合には,等量の鋼管と同様であるが,偏心量が大き
表2は,あるひずみに逮する荷重の実測値に対する計
くなるに従って低下し,偏心量が釣合い偏心量の50形程
算値の比について,各グループ内での平均値と標準偏差
度となると,鋼管の約50%となり,引張破壊となる場合
とを示したものである。らせん鉄筋の影響は,ひずみが
には20%以下となることが推定されるのである。
0.4%を越えてから現われるのであるが,ひずみが1%
本研究は,樋口芳朗教授の指導のもとに,日本鉄道建
に連する時の計算値の実験値に対する比率の平均値は中
設公団脊函建設局からの受託研究費によって行ったもの
心軸戦荷の場合0.99,偏心載荷の場合1.03であり,その
である。また,実験は日本コンサルタント株式会社およ
標準偏差は0.08および0.10である。これらの値は,モル
び東大技官の榎本松司氏が担当した。付記してここに感
タルの圧縮試験あるいは中心IMI方向荷重を受ける銅モル
謝の意を表したい。
タル合成柱についてのひずみ0.3形の時の値と大差なく,
本研究で用いた解析によって,らせん鉄筋による補強効
文献
l)足立口彦,樋口方餌,土壁敬,杉山道行,合成フープ飼管住の強
度鉄遡技術研究報告Nbし789,1971年12月
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