雇用労働関係法令のPDFファイル

国名:イタリア (調査項目 5:労働および職業能力開発関係法令)
作成年月日:2005 年 1 月 27 日
5.1
労働法
2002 年に、政府と労使代表により締結された「イタリアのための協定」に基づく最
新の労働法は 2003 年 2 月 14 日付け委任法 30 号 (通称ビアジ法)の施行法 2003 年 9
月 10 日付け委任立法令 276 号 (労働市場改革法)である。既存労働法で見込まれる
雇用に関する厳格な規定が原因で、さらに欧州で最も失業率が高くなったために制
定され、労働市場拡張をその主眼とする。特に、非正規就労 (闇労働)問題解消に重
点を置いている。ただし、同委任立法令は公務員には適用されない。
・ 公的職業安定所が主体であった労働力需要供給へのサービスに民間の積極的参加
を促進し、官民の連携体制を構築する。
・ 職業訓練の充実により労働市場参入の可能性を高める。このために、企業内研修
制度を充実させる。
・ 非典型の労働契約 (オンコール、テンポラリ、ワークシェアリング、パートタイ
ムなど)の規定。
・ 企業、労働者双方の代表から構成される相互間協議団体を設置し、労働契約への
認証手続きを行うことで、労働争議を低減する。労働者側の企業経営への積極的
な参加を目的とする。
・ 適法な労使関係を重複なく合理的に監督するため、INPS (Istituto Nazionale
della Previdenza Sociale:全国社会保険公社)、INAIL (Istituto Nationale per
l’Assicurazione conto gli Infortuni sul Lavoro:全国労働災害保険公社)と労働
省が協力する。
参考
・ CNEL (The National Council for Economics and Labour:経済労働全国評議
会)Website, http://www.cnel.it/
・ Ministero del Lavoro e delle Politiche Sociali ( 労 働 / 社 会 政 策
省)Website, http://www.welfare.gov.it/
委任立法令 276 号は 9 章からなる。
1 章 総則
労働市場改革法である委任立法令の目的を、就労率向上、労働の質向上およ
び安定促進と定め、同目的達成に向けては非典型労働契約導入をも見込む。
ただし、公務員には適用されない。
2 章 職業紹介業者組織、規律
透明かつ機能的な労働市場構築を目的とし、国から認可を受ける労働者派遣
(スタッフリリース)、職業紹介/仲介業者名簿が労働/社会政策省に設置さ
れる。同業者は一定額以上の資本金を有するイタリアまたは欧州連合加盟国
の組織とする。認可、許可は国または州が規制する。情報は労働者の意向に
従って提供される。派遣、職業紹介/仲介業者は労働者から報酬を得てはな
らない。派遣、職業紹介/仲介業者の負担による職業訓練、給与補完基金が
予定される。不利な状況にある労働者雇用促進のため、派遣、職業紹介/仲
介業者への社会福祉などの分担金免除が見込まれる一方、雇用調整で休職中
である労働者が職業訓練や提供された就労機会を拒否した場合、休職手当て
は支給されない。法律に違反する業者は、刑事/行政上罰則を受ける。
3 章 派遣、請負、出向
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派遣業務において、無期限労働契約は 9 項目 (コンピュータ関連のコンサル
タントなど、清掃、守衛業務など、運送、運搬業、図書館など施設管理、企
業経営コンサルタントなど、市場調査など、コールセンター要員および欧州
理事会規則 1260/99 号に定められる困難な地域での新規企業、内装工事関連、
機械設置および建設関連製造業での特殊技術を要する場合など、そのほか全
国労働協約で規定される場合)に限り認められる。有期労働契約の場合には基
本的に全分野で容認されるが、以下 3 項目の場合には許可されない
・ ストライキ権を行使する従業員との代替要員とした場合
・ 6 カ月以内に集団解雇、労働時間短縮などを実施した場合
・ 1994 年委任立法令 626 号に規定する安全対策を施行していない場合
なお、派遣労働者にも組合権は認められる。
4 章 グループ企業、営業譲渡
民法における会社法規定を改正した。グループ企業ではその親会社が労働、
社会福祉問題を代表して監督する。また、企業移転のみならず営業譲渡の場
合にも、労使関係を継続し、労働者の権利は保護されると規定される。
5 章 時間短縮、不定期、フレキシブル労働契約
オンコールジョブは、基本的に企業連盟と労働組合との協議に基づく労働協
約で規定されるが、25 歳以下および 45 歳以上の長期失業者に対しては試験
的にオンコールジョブ契約を結ぶことができる。禁止条件は、派遣労働契約
と同様である。また、同章ではジョブシェアリング導入のほか、パートタイ
ムに関して超過勤務、有期契約を認めるなど既存法を修正し、より同労働契
約を利用しやすくしている。
6 章 見習い契約、労働市場 (再)編入を目指した職業訓練契約
見習い契約は教育を受ける権利の一環として捉えられ、満 15 歳以上であれ
ば、契約を結ぶことができる。見習い教育の内容は、労働/社会政策省、教
育/大学/研究省との合意の下、州、特別自治県が企業連盟および労働組合
の意見を取り入れて計画する。契約期間は 3 年以内とする。また、18〜29 歳
では、専門職見習い契約を 2〜6 年の期間で結ぶことができる。同契約に基
づく教育は、州、特別自治県が企業連盟および労働組合との合意の下に計画
する。同じく 18〜29 歳では、高等学校、大学など、高等教育機関卒業資格
獲得を目的として見習い契約を交わすことも可能で、教育に必要な期間に関
しては州が企業連盟、労働組合、教育機関との合意に基づき決定する。労働
市場 (再)編入を目的とする職業訓練契約は、18〜29 歳の若者、29〜32 歳の
長期失業者、50 歳以上、2 年以上就労していない労働者、男性と比較した女
性就労率が 20%以下である地域の女性、身体的/精神的障害を持つ人を対象
とし、期間は 9〜18 カ月である。この契約制度は、期間満了となった職業訓
練契約労働者の 60%以上を雇用した場
合のみ、新規に活用できる。
7 章 プロジェクト実施契約、臨時 (偶発)契約、補助労働
Co.Co.Co.と呼ばれる継続的連携雇用協働関係 (準従属労働)では、雇用側が設
定する作業特別プロジェクトまたはプログラム実施に向けた必要労働力を、
雇用側に従属しない労働者が作業方法、時間などに自律性を持って提供する。
2
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8章
9章
プロジェクトなどが終了次第、契約は解消される。同一の注文主と年間 30
日以内、報酬総額 5,000 ユーロ以下の条件で取り交わす臨時契約とは異なる。
失業 1 年以上、主婦、学生、年金生活者、コミュニティに生活する障害者、
失業 6 カ月以内で正式滞在する外国人労働者は、同じ注文主と年間 30 日以
内で補助労働契約を交わすことができる。補助労働は主に、介護など家庭内
作業、補習授業、清掃、天災など緊急事態の援助活動を指す。
労働契約に関する認証手続き
労働紛争を避ける目的で、オンコールジョブ、ジョブシェアリング、パート
タイム、プロジェクト実施、共同組合員による労働契約の場合、同契約類型
に対する認証を企業連盟と労働組合による相互間協議団体、県の労働局、労
働/社会政策省に登録する大学に設置される認証委員会から得ることができ
る。この任意の認証手続きにより、労働契約が法律を遵守する形式のもので
あることが証明される。
暫定則、終則
表 5‑1
労働関係法
労働関係法
内
容
Cost. (イタリア憲法)
1、3、4、35〜39、46、51 条
Cod. civ. (民法)
1742〜1753 条 (委託営業、外交員契約など)
2060〜2246 条 (労働一般)
RDL1825/24 (1924 年勅令 1825 号)
民間労働契約規律
L25/55 (1955 年法律 25 号)
見習い労働
L1369/60 (1960 年法律 1369 号)
労務請負の禁止
L230/62 (1962 年法律 230 号)
有期労働契約規律 (2001 年委任立法令にて廃止)
L604/66 (1966 年法律 604 号)
解雇制限法
L300/70 (1970 年法律 300 号)
労働者憲章
L1204/71 (1971 年法律 1204 号)
働く母親の保護
L877/73 (1973 年法律 877 号)
在宅勤務
L164/75 (1975 年法律 164 号)
雇用調整助成金規範 (所得保障金庫)
L903/77 (1977 年法律 93 号)
男女平等待遇
L155/81 (1981 年法律 155 号)
早期退職規範
L416/81 (1981 年法律 416 号)
建設業者規律
L297/82 (1982 年法律 297 号)
退職手当て制度
DL726/84 (1984 年緊急政令)
パートタイム、連帯的労働契約 (労働時間短縮に伴
う減給分の一部を収入保護基金に積み立てる特別
契約)、訓練契約
L190/85 (1985 年法律 190 号)
中間管理職認定
L108/90 (1990 年法律 108 号)
個人解雇規律
L146/90 (1990 年法律 146 号)
ストライキ規制
L428/90 (1990 年法律 428 号)
企業移転
3
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労働関係法
内
容
L125/91 (1991 年法律 125 号)
男女機会均等への活動
L223/91 (1991 年法律 223 号)
雇用調整助成金、休職
DLgs80/92 (1992 年委任立法令 80 号)
企業倒産時所得補償基金
L104/92 (1992 年法律 104 号)
障害者の権利
DLgs29/93 (1993 年委任立法令)
公務民営化
DLgs626/94 (1994 年委任立法令 626 号)
労働安全、Allegati (衛生)
L335/95 (1995 年法律 335 号)
年金改革、企業年金
L675/96 (1996 年法律 675 号)
個人情報保護
L59/97 (1997 年法律 59 号)
地方分権 (公務民営化、バッサニーニ法 1)
L127/97 (1997 年法律 127 号)
地方分権 (公務民営化、バッサニーニ法 2)
DLgs152/97 (1997 年委任立法令 152 号)
労働条件開示義務 (雇用側から雇用者へ)
L196/97 (1997 年法律 196 号)
雇用促進法 (トレウ法)
DLgs469/97 (1997 年委任立法令 469 号)
職業紹介所分散化、民営化
DLgs80/98 (1998 年委任立法令 80 号)
労働裁判制度 (和解交渉義務 )
L191/98 (1998 年法律 191 号)
地方分権 (公務民営化、バッサニーニ法 3)
DLgs286/98 (1998 年委任立法令 286 号)
外国人労働者
DL335/98 (1998 年緊急政令 335 号)
超過勤務
DLgs387/98 (1998 年委任立法令 387 号)
公務民営化および和解交渉義務規定改定
L25/99 (1999 年法律 25 号)
夜間労働規律 (欧州規範の国内法化)
DLgs65/99 (1999 年委任立法令 65 号)
販売員規律 (欧州規範の国内法化)
L68/99 (1999 年法律 68 号)
障害者の労働権利規範
L53/00 (2000 年法律 53 号)
育児休業許可
DLgs61/00 (2000 年委任立法令 61 号)、 パートタイム労働基本合意およびその改正
DLgs100/01 (2001 年委任立法令 100 号)
L83/00 (2000 年法律 83 号)
ストライキ規制改正
L150/00 (2000 年法律 150 号)
公共行政情報提供規律
DPCM278/00 (2000 年首相政令 278 号)
育児休業規則 (2000 年法律 53 号 4 条)施行法
DLgs38/00 (2000 年委任立法令 38 号)
労災保険制度 (1999 年法律 144 号 55 条 c)施行法
DM12/7/00 (2000 年 7 月 12 日省令)
身体障害度合い表
DLgs18/01 (2001 年委任立法令 18 号)
1998 年欧州理事会指令 50 号 (企業譲渡における労
働者の権利)施行法
L62/01 (2001 年法律 62 号)
出版業、出版物にかかわる新規範、1981 年 8 月 5
日法律 416 号改定
L142/01 (2001 年法律 142 号)
協同組合関連法修正
DLgs151/01 (2001 年委任立法令 151 号)
母性、父性保護に関する統一法
DLgs165/01 (2001 年委任立法令 165 号)
公務員の労働一般規範
DL158/01 (2001 年緊急政令 158 号)
年金、社会的緩衝措置に関する緊急規定
4
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労働関係法
内
容
DLgs368/01 (2001 年委任立法令 368 号)
有期労働契約規律
L30/03 (2003 年法律 30 号)
就労、労働市場統制に関する政府への委任法 (ビア
ジ法)
DLgs66/03 (2003 年委任立法令 66 号)
労働時間
DLgs276/03 (2003 年委任立法令 276 号)
2003 年法律 30 号 (ビアジ法)施行法
DLgs215/03 (2003 年委任立法令 215 号)
人種、民族にかかわらない均等取扱い
DLgs216/03 (2003 年委任立法令 216 号)
均等取扱い
DLgs196/03 (2003 年委任立法令 196 号)
個人データ保護関連法
DLgs124/04 (2004 年委任立法令 124 号)
保障、労働監査機能合理化
L243/04 (2004 年法律 243 号)
補足年金制度支援、雇用促進を目指す公的年金改
革の政府委任にかかわる規範
DLgs251/04 (2004 年委任立法令 25 号)
2003 年委任立法令 276 号修正
DM6/10/04 (2004 年 10 月 6 日省令)
年金先送り奨励 (スーパーボーナス)
*出典:DL-Online Website, http://www.di-elle.it/
5.2
労働基準関係法
従 属 労 働 の 労 働 基 準 は 、 業 種 別 の CCNL (Contratti Collectivi Nationali di
Lavoro:全国労働協約)により規定される。全国協約は、国家規格を定義し、その規
範部分 (適用対象、期間、組合関係、人事、規律、休暇など)は 4 年ごとに経済部分
(給与体系、手当て、基金など)は 2 年ごとに更新される。全国協約は、各企業と労
働者代表との間で締結される企業契約、州、県と結ばれる地域協約に関しても規定
する。
各労働協約で規定がない場合には関係法律に従う。
参考
CNEL Website, http://www.cnel.it/
−労働時間
欧州理事会指令 93/104/CE、2000/34/CE を批准する国内法、2003 年の委任立法
令 66 号で、通常の労働時間は週 40 時間と規定する。4 カ月平均労働時間は、7
日間で、時間外労働を含め 48 時間を超えないこととする。24 時間ごとに連続 11
時間の休養を保障される。1 日の労働時間が 6 時間を超過する場合には、休憩時
間を保障される。1 週間に少なくとも連続 24 時間の休日を保障される。夜間労働
は 24 時間中 8 時間以内とする。
−休暇
・ 有給休暇
2003 年委任立法令 66 号の規定に基づき、労働者は年間 4 週間の有給休暇を
取得する権利がある。対象年度に最低 2 週間、年度終了後 18 カ月以内に残留
分を取得することも可能だが、未消化休暇を手当てで代用することはできな
い。合意により休暇が 4 週間を超える場合には、その超過分に関して手当て
としての支給も可能である。見習い契約の場合、有給休暇は 1955 年法律 25
5
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号で規定し、16 歳未満の場合には暦日 30 日以上とする。16〜18 歳の場合に
は、一般規定を適用する。
・ そのほかの休暇
結婚休暇 (有給)、公職の任期中無給の休暇、訓練休暇などがある。
−労働福祉
育児の権利は 2001 年委任立法令 151 号で規定する。産前産後の 5 カ月間強制休
業の対象となる。強制休業期間中は休暇前 4 週間 (または 1 カ月)の平均給与の 8
割が手当てとして支給される。子供の養育が父親に委託される場合、父親が強制
休業の権利を行使できる。強制期間以降は、子供が 8 歳に達するまで、両親とも
合計 10 カ月以内の任意育児休暇を取得する権利がある。この場合、子供が 3 歳
までは、合計 6 カ月以内に限り、給与の 3 割が手当てとして支給される。これら
の権利は養子縁組の場合にも行使できる。子供が 1 歳までは、両親のどちらかが
1 日 2 回、1 時間ずつ、有給育児休憩を取得する権利がある。ハンディキャップ
を持つ場合は、有給休暇取得は 3 歳までに延長される。
−労働安全衛生
1994 年委任立法令 626 号を関連欧州指令そのほかに従い改正した 2004 年 11 月
24 日付けの Testo Unico (統一法)で規定されている。
安全/衛生に関するモニタリング、管理などは、州、ISPESL (Istituto Superiore
per la Prevenzione e la Sicurezza del Lavoro:高等労働予防安全研究所)、
INAIL (Istituto Nationale per l’Assicurazione conto gli Infortuni sul
Lavoro:全国労働災害保険公社)、企業連盟と労働組合による相互間協議団体
が担当する。
−性別・人種別・年齢別雇用規制
・ 差別禁止
2003 年委任立法令 215 号は、就労機会、労働条件、そのほか社会的権利にお
いて人種、民族にかかわる差別を禁じている。人権保護団体は、首相府機会
均等局に登録され、機会均等を促進し、人種、民族にかかわる差別廃止を担
当する事務所が設置される。
2003 年委任立法令 216 号は、就労機会、労働条件において宗教、信条、身体
障害、年齢、性的指向にかかわる差別を禁じている。
1991 年法律 125 号で、男女の機会均等を規定する。また、機会均等省が設置
され、女性の地位向上促進を図る。
・ 強制採用
1968 年法律 482 号を改正する 1999 年法律 68 号で、従業員 15 人以上の官民
部門は、一定の割合で障害者を採用することが強制される。従業員 15〜35
人の場合は障害者 1 人、36〜50 人は 2 人、50 人以上では従業員の 7%が障害
者の雇用枠となる。
5.3
労働組合関係法令
労働者憲章と呼ばれる 1970 年法律 300 号が組合関係法の基礎となる。憲章は 6 章
からなる。
6
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1章
労働者の尊厳/自由
適合性、障害の評価を疾病、事故を理由に雇用側が行うことは禁じられる。
雇用、昇進などの決定に際し、政治、宗教的信条を調査することは禁じられ
る。
2 章 組合の自由
結社の自由は権利であり、労働組合加入の有無を雇用条件とすることは禁じ
られる。また、ストライキ参加を理由に解雇することは禁じられる。不当解
雇が裁判でも確認された場合には、職場復帰が義務付けられる。
3 章 労働組合活動
企業内の事業所組合代表の設置は自由である。勤務時間外の集会を行う権利
と同時に、年間 10 時間以内であれば勤務時間内に有給で集会を行う権利が
保障される。事業所組合代表の役員は任務遂行のため、有給休暇、組合の交
渉、会議、集会参加のために無給休暇を規定範囲以内で取得することができ
る。
4 章 総則
公職に任務期間は、労働ポストが保障される。
5 章 職業安定所
雇用促進のため、多くの特別法が導入され、同章の規定は大きく改正されて
いる。
6 章 終則、罰則
憲章 3 章の規定適用範囲は従業員 15 人以上の企業とする。
2001 年の労働白書による労働市場改革案では、同憲章の 3 章 18 条 (正当事由、正
当な理由なく解雇された場合、裁判の判決後、現職復帰を課す)に賠償金制度で対応
するとの改正が提示された。しかし、労働組合を筆頭に激論となり、国民投票まで
実施されたが、結論はいまだ出ていない。
5.4
労働保険関係法
−失業保険
失業手当て請求権は、憲法 38 条により保障される。2 年以上保険に加入しており、
申請前 2 年間に 52 週以上保険料の支払いを行った非自発的失業者に、最長 180
日間、失業前 3 カ月間の平均給与の 40%が手当てとして INPS から給付される。
50 歳以上の場合には、最長 9 カ月である。ただし、上限が設定される。
・ 所得保障金庫制度
(1) 通常所得保障金庫制度
経営側、雇用者に帰責できない経営危機への対応として操業時間短縮、停
止に伴い労働時間が短縮する場合、賃金を保障する制度である。ただし、
見習い労働者には適用されない。最長 13 週間 (正当な理由により 12 カ月
まで延長可能である)、労働できなった時間、その分の賃金の 80%が
INPS より補填される。ただし、上限が設定される。
(2) 特別所得保障金庫制度
企業のリストラ、再組織、転換、企業危機、倒産手続きが進められる場合、
7
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労働されなかった時間にその分の賃金の 80%が INPS より補填される。
ただし、上限が設定される。製造業では 15 人以上、サービス業では見習
い、職業訓練契約を除く 50 人以上の被雇用者数が、制度適用条件となる。
企業危機の場合は 12 カ月、リストラ、再組織、転換では 24 カ月、倒産
手続き進行中の場合には 18 カ月を最長期間とする。
通常、特別所得保障金庫制度をあわせて適用することはできない。5 年間で双方
の適用期間合計は最長 36 カ月である。
・ 退職手当て
TFR (Trattamento di Fine Rapporto)と呼ばれる退職金制度は 1982 年法律
29 号により創設された。退職金は年間給与を 13.5 で除算した額を超えない
額で積み立てられ、毎年末、物価上昇率の 75%に 1.5%を加えた率が乗じられ
る。2000 年に内閣が承認した委任立法令により、退職金積立てに替え、企業
年金を運用する年金基金への積立を選択することが可能となった。
参考
INPS Website, http://www.inps.it/
−労災保険
強制的労災保険制度は、1898 年の法律 80 号により設立され、1965 年の大統領令
により統一法が制定された。統一法が列記する対象職業に従事する被雇用者に対
しては、労働災害と職業病に保険金が自動給付される。制度運営は INAIL に委託
される。支払い報酬額総額に業種別保険料率を掛け合わせて算出される保険料は、
雇用者が支払うことになっているが、それを給与控除の形で労働者に転嫁するこ
とはできない。また、保険料率は、各企業の安全衛生基準遵守、労災件数などを
考慮して増減される。
以下は保険給付内容である。
(1) 一時的絶対的労働不能への日当
災害発生日から 4 日以降 90 日までは実質給与の 60%、91 日目から完治まで
は 75%が給付される。なお、3 日間については、雇用主から給与が支払われ
る。実質給与は、被災前 12 カ月間を対象とする。
(2) 永続的労働不能への障害年金
労働災害では不能 11%以上、職業病では 21%以上の場合、一時的絶対的労働
不能停止以降給付される。給付額は障害の度合いに対応する率を平均給与に
乗じた額となる。
(3) 珪肺症、石綿症罹患で 80%以下の永続的不能
給付期間は 1 年間で、同期間終了後 10 年以内に従事した職業が有害である
と認められた場合には、再度請求できる。
(4) 遺族年金
労働災害、職業病で死亡した労働者の遺族に対し、実質給与に一定比率を乗
じた額が支給される (配偶者には 50%、子供には 20%、ただし両親とも死亡
の場合には 40%)。また、葬儀費用として一時金の支給もなされる (1,630.73
ユーロ、2004 年 6 月 21 日現在)。
(5) 療養給付
労働能力回復に必要な治療を行う場合に支給される。INAIL が必要と認定す
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る療養を被災者は正当な理由なく拒否することはできず、拒否した場合は、
(1)の保険給付資格を失う。
(6) 介護手当て
永続的絶対的不能の被災者は、介護が必要な場合、障害年金に加えて介護期
間中介護手当てを受けられる。
(7) 就業不能手当て
不能 34%以上で 65 歳以下の被災者で、強制採用制度の適用を受けない場合、
就業不能手当て (210.43 ユーロ、2004 年 6 月 21 日現在)を受けられる。
(8) 不能 80%以上の重度障害者扶助
毎年 INAIL が決定する額以下の所得である場合、年末調整金として一定額が
支給される。2001 年では、所得 17,166.43 ユーロ以下 (家族 1 人につき
848.80 ユーロ加算)で、継続的介護を要する場合は 209.50 ユーロ、介護は必
要ないが不能 80%以上の場合は、168.66 ユーロである。また、所得にかかわ
らず、12 歳以下の子供一人当たり年間 49.32 ユーロが支給される。
(9) 補装具
INAIL からは生活に必要な補装具が支給される。
(10) 温泉療養、転地療養
指定医が必要と診断した場合、温泉療養、転地療養の経費 (交通費、滞在費
用、必要性が認められれば付添い人の分も含む)は INAIL の負担となる。
(11) 外来診療
SSN (Servizio Sanitario Nazionale:国民保健サービス)との合意に基づき、
各州の病院、診療所で専門治療を受けられる。
*出典:INAIL Website, http://www.inail.it/
家庭内事故への災害保険が義務付けられている。
保険の対象は、無償で家庭内作業に携わる 18〜65 歳、ただし、家庭外で就労し
ているため、義務的社会保険制度に加入している場合は除く。保険金は年 12.91
ユーロ (2005 年現在)で 1 月 31 日以内に払い込みが必要である。収入が個人で
4,648.11 ユーロ以下 (家族単位では 9,296.22 ユーロ)の場合には、保険料は国家負
担となる。被災者への保険給付内容は、労働者と同様だが、自動給付ではない。
−家族手当て
2 人以上の家族を持つ、従属労働者、準従属労働者、年金生活者への手当てであ
る。手当て給付の条件となる収入上限は、毎年法律にて定められる。収入とは労
働による収入、年金、そのほかであり、税金、社会保障分担金を差し引いた金額
を指す。給付額は、収入および家族構成により異なる。
9
国名:イタリア (調査項目 5:労働および職業能力開発関係法令)
作成年月日:2005 年 1 月 27 日
表 5‑2
家族手当て (両親と未成年の子供 1 人以上の場合) (2005 年 1 月現在)
家族構成 (人)
3
4
1 家族年収
5
6
7
金額 (ユーロ)
〜11,989.56
130.66
250.48
358.94
492.18
619.75
11,989.57〜14,836.01
114.65
220.53
339.83
481.34
600.64
14,836.02〜17,681.91
92.45
190.57
312.97
473.07
584.11
17,681.92〜20,526.70
65.59
158.04
283.02
453.97
565.00
20,526.71〜23,373.71
43.90
111.55
241.70
407.48
507.68
23,373.72〜26,219.59
25.82
81.60
217.43
390.96
488.57
26,219.60〜29,066.60
15.49
57.33
176.63
364.10
466.88
29,066.61〜31,911.40
15.49
38.73
135.83
339.31
439.50
31,911.41〜34,757.30
12.91
25.82
102.77
317.62
426.08
34,757.31〜37,602.64
12.91
25.82
91.93
225.18
398.70
37,602.65〜40,450.21
12.91
23.24
91.93
154.42
292.83
40,450.22〜43,296.09
-
23.24
78.50
154.42
218.98
43,296.10〜46,142.56
-
23.24
78.50
132.21
218.98
46,142.57〜48,988.44
-
-
78.50
132.21
189.02
48,988.45〜51,835.46
-
-
-
132.21
189.02
51,835.47〜54,682.48
-
-
-
-
189.02
*出典:INPS Website, http://www.inps.it/
・ 障害児介護特別手当て
子供が一定以上の障害を持つ場合、その介護のために最長 2 年、有給休暇を
取得できる。両親とも死亡の場合には、兄弟が権利を行使できる。
5.5
職業能力開発法令、法規、条例
1993 年法律 236 号 (緊急雇用支援法)9 条は、継続教育への財政援助を規定する。労
働/社会保障省 (現労働/社会政策省)、州、県は以下の場合継続教育活動への財政
援助を行う。
・ 教育/訓練担当団体職員
・ 所得保障金庫制度の適用を受ける企業の従業員
・ 企業が経費 2 割以上を分担する場合、その従業員
・ 移動労働者リスト (経営危機にある企業の余剰従業員を同一産業の別の企業に移
動させるためのリスト)に登録される労働者
・ 失業者、職業紹介リスト登録者
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国名:イタリア (調査項目 5:労働および職業能力開発関係法令)
作成年月日:2005 年 1 月 27 日
2000 年法律 53 号 5、6 条はそれぞれ、訓練休暇、継続訓練休暇について定める。訓
練休暇は、勤続年数 5 年以上の労働者が労働生涯において 11 カ月を超えない期間
(連続、分割とも)、義務教育、高等教育、大学卒業資格を得るため、または、職業
訓練を受ける目的で取得できる無給休暇である。その間、労働ポストは保持される。
使用者は、組織の必要上 (証明が必要)、休暇取得の請求を拒否するか、時期変更を
行うことができる。
就労者、非就労者とも生涯、知識/職能向上のため、教育/訓練を受ける権利行使
として継続訓練休暇を取得できる。期間、方法など細則は、労働協約で規定する。
国家、州、地方団体は継続訓練を受ける機会を保障する。また、州は労働時間短縮
に繋がるもの、もしくは労働者から提案される訓練計画への財政援助を行うことが
できる。
参考
Forma Parti Sociali Website, http://www.eformazionecontinua.it/
2003 年委任立法令 276 号 47 条以下により、見習い契約が職業能力開発および教育
の一環として再導入された。
契約には以下の 3 種類が予定されている。
・ 教育/訓練を受ける権利/義務の遂行
満 15 歳以上の若年者が職場での職能向上と共に教育を受ける権利/義務の遂行
を目指す場合、教育義務が課せられる 18 歳までの最長 3 年間、契約を締結する。
教育/訓練は職場内外で受けられるが、職場には能力を有するチューターの存
在が義務付けられる。
・ OJT 方式で資格、専門技術の習得
OJT で基本的、専門的技術の習得を目指す 18〜29 歳の若者が 2〜6 年で契約を
締結する。
・ 高等学校または大学以上の教育、特殊技術専門学校など受講、卒業資格を習得
対象は 18〜29 歳である。働きながら高等教育を受ける目的で契約を締結する。
契約期間での教育期間に関しては、州が規定する。
各職能レベルの調和化を図るため、教育/大学/研究省、使用者団体、代表的労働
組合、国家/州会議代表による専門組織が準備する職能リストが労働/社会政策省
に設置される。
【参考文献】
1. CNEL (The National Council for Economics and Labour : 経 済 労 働 全 国 評 議
会)Website, http://www.cnel.it/
2.
3.
4.
5.
DL-Online Website, http://www.di-elle.it/
Forma Parti Sociali Website, http://www.eformazionecontinua.it/
INAIL (Istituto Nazionale per l’Assicurazione contro gli Infortuni sul Lavoro:全国
労働災害保険公社)Website, http://www.inail.it/
INPS (Istituto Nazionale della Previdenza Sociale:全国社会保険公社)Website,
6.
http://www.inps.it/
Ministero del Lavoro e delle Politiche Sociali (労働/社会政策省)Website,
http://www.welfare.gov.it/
11
国名:イタリア (調査項目 5:労働および職業能力開発関係法令)
作成年月日:2005 年 1 月 27 日
7.
大内伸哉著、「イタリアの労働と法-伝統と改革のハーモニー」、日本労働研究機構、
2003 年 2 月。
12