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S よ PA の素晴らしさを り多くの人へ伝えるために

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SPA の素晴らしさを
より多くの人へ伝えるために
ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル
後藤
由佳
1. はじめに
日本にホテルスパが誕生して約 10 年、2005 年前後の導入ラッシュ時から比較すると一
時期のブームは落ち着きをみせてきた。ホテルスパ業界は成長期から成熟期を迎え、各社
既存ユーザーのシェア率向上を図るための方策に努めている。たとえば、自社以外の美容
に関心の高いユーザーを多く保有するサイトやその他会員組織等を通して価格を下げて
販売するホテルスパもみられるようになってきた。今後、こうした価格競争が激化すると
ホテルスパ業界は共倒れになってしまう危険性があると予測することができよう。
スパ業界に約 10 年間従事している経験と業界関係者とのディスカッションに基づいて、
ホテルスパ業界には次のような問題点があると考えられる。
① ホテル内のスパとエステティックにおけるターゲット顧客層の類似性
② 目に見えない感覚的経験をすべての顧客に認知させることの困難さ
(癒し、リラクゼーション、リフレッシュ、等)
③ 売上に占める人件費率が相対的に高く非採算的な部門である
こうした問題点を踏まえて、業界関係者としては、将来的に縮小する危険性のあるホテ
ルスパ業界を再活性化させていかなければならないと考える。
そこで、本論文では、マーケティングの見地から新たな市場創造としての理想的なホテ
ルスパを企画提案することを目的とする。
2. ホテルスパの企画提案
理想的なホテルスパを企画提案するために、弊社のホテルスパにおける業務データおよ
びホテルスパ業界関係者からのディスカッションを分析し、マーケティングの観点から次
のように整理した。
2-1)ターゲット顧客、2-2)プロダクト、2-3)収益戦略、2-4)プロモーション、
2-1)ターゲット顧客
弊社の業務データである性別年代別セグメントをみると、25~45 歳代女性の利用率が全
体の約 6 割を占めている。日本では、ホテルにスパが導入される以前よりエステティック
という美容を目的としたサービスが存在し日本独自の発展を遂げている。既に美容分野で
歴史のあるエステティックとスパのターゲットを考えたとき、類似した部分が多い。同ホ
テル内で存在するエステティックとスパのターゲット顧客が類似していることは、お互い
に顧客を取り合うこととなるので、戦略的に得策とはいえない。
その理由として、癒しから美容効果を求めたスパ、美容に加えてリラクゼーションを取
り入れたエステティック、その差は消費者である顧客にとってはわかりにくいものとなっ
ている。そこで、ターゲット顧客の区別を明確にすることを目的として、女性中心からユ
ニセックス・ユニバーサルをキーワードとした、新たなターゲット顧客層を企画提案する。
表 1 新たなターゲット顧客の概要
《MENS》
現状
年齢層
「スパ=女性」の固定観念(イメージ)を持つが、リピート率が高い
30歳代後半~50歳代
特徴
高収入、時間的コントロールが可能なポジション、健康に対する高い関心
地域
近隣在住又は近隣企業に勤務、会議等の定期的な出張(宿泊)
フィットネスと併用(フィジカルケアの一環)、健康維持(皮膚状態も含む)
ニーズ
ストレスリリース、セルフメンタルケア、利便性重視(地域/目的 等)、
家族サービス、新しい情報より馴染みの安心感、等
2010年度 弊社顧客ランキングトップ30では、半数が男性である。
男性の利用率が高いことは、エステティックと異なるホテルスパの特徴の一つである。
現在、上記一定層を中心に市場が成立しているが、
今後はミドル層へのスパ文化浸透・開拓を視野に入れていくべきである。
《SENIOR》
現状
ニーズ
プレゼント→初回利用、高い満足度、ゆとり(時間・金銭的)、不安感
健康効果への期待、初体験のため不明慮な不安材料の解消、等
年齢を重ねたお客様の施術後の感想はどの世代の方よりも新鮮味を帯び胸に響く。 「オイルのマッサージってとっても気持ち良いのね。」
「初めてこんなにのんびりした時間を過ごしたわ。」
「至福のときってこういった時間を云うのだろうね。」
「いつも身体がすごく冷えるのに、とってもぽかぽかしているわ。」
満足度は非常に高いことが特徴である。来館は贈り物としての利用が多く、
購入者とプレゼントされる側の対価価値に差が生じ、満足感はより高いものになる。
《LADIES》
現状
ニーズ
基本情報の把握→比較(目的別活用)、トレンド志向と本物志向の二極化
美容効果、癒し効果、高級感、コストパフォーマンス、新鮮さ、等 《NON-JAPANESE》
可能性
訪日外国人の増加、日本文化・習慣への興味、都市部を中心とした行動範囲
2-2)プロダクト
①
PHYSICAL EVIDENCE / 効能の見える化
○ シニア層に馴染み深く・外国人も興味を示す日本文化(温泉・料理)を取り入れる
立地条件もさることながら法的規制が厳しいホテルスパ業界であるが、地方の名湯(温
泉地)とコラボレーションし温泉水を使用することで、身体的効果面、新たな市場創造に
おいても優れた形態を構築できうる。一部のホテルやスパ施設では温泉水を日々運んでい
る。条件さえ合えば不可能ではない。また、日本料理の調理法や食材選び、食べ方を参考
にしたデトックス(体内浄化)を促すプログラムを組み合わせることで、より健康効果を
高めることが可能になる。
○ 明確な効果(エビデンス)を掲げるためのスタッフィング
現在、多くのスパトリートメントでは法律上、医学的効果を伝えることはできない。
それは多くのセラピストが持つディプロマは、国内外問わず民間の資格である場合がほと
んどであることが理由である。今後のスパ業界では、「健康になる・改善される」がキー
ワードとなってくると予測される。その際に、ホテルスパには医師や理学療法師、管理栄
養師、鍼灸師、心理カウンセラー、等のスペシャリストが必要となり、相互が協力するこ
とで明確な効果を掲げやすくなると考えられる。
日本の現行の休暇制度や国民性といった課題はあるが、こうしたスタッフィングやツー
ルを活用することが可能になれば、食事を含めた連泊・目的指向型のスパ利用者が増え、
ホテル全体の集客にもつながると予測されよう。
2011 年 1 月 5 日に配信された「月刊 Diet Beauty (健康メディア.com)」によると、次の
ように報告されている。
『スパの健康効果については、2~3 年前から幾つかの検証がなされている。08 年の国際
抗疲労学会ではスパと脳波の関係が発表された。首都圏の 30~50 代女性 12 人を対象に
沖縄本島北部のリゾート地で実験を行った。スパ体験後は集中力を発揮することを示すア
ルファ波と、浅い睡眠状態に計測されるシータ波が体験前の約 3 倍程度脳全体で増加して
いた。ベータ波も前頭葉で増加することが分かった。(当時、北陸先端科学技術大学院大
学の一石英一郎教授のグループ)また、琉球大学の荒川雅志准教授は、海水浮遊のリラク
ゼーション効果実証、海を利用した健康増進プログラムの開発と計測、ヘルスツーリズム
への応用モデル開発へ着手している。最近では、温泉地のスパで使用するファンゴ(温泉
泥)の温熱や肌への効果を検証する研究を始めたグループもある。少しずつだが着実にス
パの健康効果が解明されている。こうした研究成果をもっと広く消費者へ発信して、消費
者の認識を「スパ=癒し」から、「スパ=健康効果」へと変化させていくことが重要だ。』
このことから、スパに対する健康効果を求めるニーズが高まってきていることが、読み
取れよう。
②
PEOPLE / セラピスト軸で、トリートメントメニューを考える
この 10 年間で、スパの認知度が向上するにつれて、手技やメニュー構成は多様化して
きた。セラピストを商品の一つとして位置づけた時、それは顧客の満足度を左右する最も
重要なポイントとなる。精神的癒しが必要な場合、運動後で筋疲労を取り除きたい、話を
することでストレスを開放したい、といったようにお客様の求めるものは様々であり全て
に対応していく必要がある。
形(手技)の決まった多種多様なメニューの中から一人一人に合ったトリートメントを
提案するのも一つの方法であるが、ニーズに合わせたカスタマイズが出来るスキルを持つ
セラピストとメニュー構成をとることが、今後のニーズの一つとなると考えられる。個の
才能を引き出しプロデュースし、能力に合わせた権限委譲と報酬制度に反映することで従
業員の満足度を向上させ、それが結果的に顧客の満足や利益向上につながる。さらに、業
界従事者全ての意識や環境向上、多岐にわたるトレーニング時間も減少し人時生産性など
の面においても相乗効果が生まれると考えられる。
表 2 新たなトリートメントメニュー
画一的メニュー から ヒューマニックメニュー創出へ
メニュー
現
在
提
案
利点
多種多様、メニュー毎の手技(動作)がマニュアル・細細分化
高いブランド価値、話題性、「広範囲からの興味」マスマーケット
問題点
トレーニングコスト圧迫、品質の低下、多様過ぎて分かりにくい
メニュー
お客様個人にフォーカスした、オーダーメイドの技術やサービス
構成
所要時間数と大枠カテゴリー分類に留めたメニュー設定
利点
本質的な満足度向上、「あなただけに」ダイレクトマーケティング
問題点
人材採用・育成(セラピスト/レセプショニストの高い能力)
先述した提案内容に沿った施術を提供する場合、セラピスト個人の高い能力が求められ
ることとなる。高い能力を構成する主要素には、1)セラピストとしての技術や知識のほ
か、2)レセプション業務における事務処理能力、 3)ホテリエとしての基礎的知識と心
構え、4)状況に応じた対応能力、5)対人能力、6)顧客を魅了する人間力、等がある。
アロマセラピスト、スパセラピストといった民間資格を取得した後、ホテルスパのセラ
ピストとして従事するのに特化した資格制度や研修プログラムがあればホテルスパ業界
従事者のレベルもさらに向上すると考えられる。
こうした資格・研修制度に賛同する各社による共通のブランド基盤に基づいてプロモー
ション展開していく業界団体を立ち上げ、より良い人材育成制度を構築することが、未来
の理想的なセラピストを育むことに寄与することとなる。
③
BEAUTY ITEMS /ジャパネスクを世界へ
○ ユニバーサルな視点・シニア層獲得を考慮した、日本素材のオリジナル商品開発
海外ブランドにも負けないデザイン性と品質を持った日本のスパブランド開発を進展
させていく余地は十分あると考えられる。国内化粧品会社とホテルスパの W ネームブラ
ンド等が存在するとしたら、スパ業界だけでなくホテル業界においても話題性は大きい。
現在、大部分のホテルスパは海外のブランド製品を使用し、美容や癒しを目的とした商
品販売・トリートメント展開となっている。外国製品の持つブランド力や歴史的信用、ホ
テルスパというツール自体が外国製のため、それはごく自然のことである。
しかし、日本にも多くの和ハーブが存在し、各地方からの働きかけや団体により徐々に
その効果を伝える運動や商品開発が進んでいる。大手化粧品メーカー・カネボウを例にと
ると、2009 年のスイス ヴィクトリア・ユングフラウ・グランドホテルを皮切りに、和の
素材を感じさせる小石丸シルクと日本の温泉を融合させたトリートメントを提供する
SENSAI SELECT SPA の展開を始めた。今後、ホテルが日本から世界進出を考えたとき、
日本製品のコンセプトやクオリティの高さは海外でも高く評価されよう。
2-3)収益戦略
海外リゾートAのブランドスパの 2010 年度売上に占める費用をみると、最も多いのが
人件費であるが、それは約 20%と日本とは比較にならない程低い(図 1)。次いで、15%
のマネジメントフィー、15%の電気料金、10%の水道光熱費、となっている。
【費用利益構造 : 一例】 Resort Hotel & SPA
Profit
25%
Insentive
2%
Salaries
20%
Treatment&Retail
5%
Other Expenses
Electricity
8%
15%
Management fee
15%
Water&Fuel
10%
図 1 海外リゾートホテルAのブランドスパ売上に占める費用利益構造
日本におけるホテルスパの収益構造は、人件費が相対的に高いことが収益を上げる上で
大きなネックとなっている。さらに、冒頭で述べたように、今後価格競争が激化していく
とすれば、ホテルスパ部門単体で収益を上げることは非常に困難であることが容易に予測
することができる。
スパ部門単体で収益を上げるためには、トリートメント収益以外の構成要素が重要にな
ってくると考えられる。ある一定の面積(スパ施設の充実を図る)を確保した上で、リテ
ール販売やアクティビティプログラム、食事提供、などを組み合わせた販売を強化してい
かなくてはならない。
このような取り組みと平行して、ホテルスパについては、これまでのように部門別に事
業収支を考えていくという視点から脱却し、ホテル全体としてブランド戦略ツールの一つ
としてスパを活用していくことを提案したい。例えば、スパ単独の利益ではなくホテル全
体の社会貢献の一環として、またはセールスツールとしてスパを活用するといったことが
考えられる(表 3)。
表 3 ホテルスパの社会貢献への取り組み提案
環境活動
地域や各種団体などと協力し、
ECO 活動や支援する団体活動に合わせた、スパ体験を実施。
老人ホームや各種施設へ出張し施術。またそのご家族に対しての
セルフケア方法や、簡単な手足のトリートメント方法を指導。
地域貢献
小中高などの学校へセラピストを派遣し、職業疑似体験の実施。
帰宅後ご両親に出来る程度のトリートメントを指導。
関連企業へ出張し、社員へのフィジカル及びメンタルケア。
セールス
ツール
宴会や宿泊、大型物件の販売促進ツールとして
スパを日売りで経費計上し、貸し切り対応。
2-4)プロモーション
○ 開かれた環境の構築 / ミドルクラスまで浸透させる一定チャネルの拡張
海外でのスパ経験がない男性が、初めてお越しになられる際必ずと言って良いほど口に
するフレーズがある。
「男性も使える?」
「エステって女性がやるものだよね?」このよう
に、日本では、
「スパは女性のもの」
「スパとエステは同じもの」というイメージが一般的
であると考えられる。一方、スパの利用は自然療法だと考えるフランスでは、男性やシニ
ア層の利用もごく当たり前のことであり、タラソパックを塗布するのも男性で、サウナも
男性と一緒であることもある。このように、スパのイメージはその国によって様々だとい
える。
今後は、現在日本のホテルスパが持つ「女性的・ラグジュアリー・美容」等の固定的イ
メージから脱却し、
「多種多様」
「女性⇒ユニセックス」
「高級=本物」
「美容⇒健康」へと
イメージ転換させていくためのマーケティングが重要である。こうしたイメージをターゲ
ット顧客となる世代やセグメントに影響力のある雑誌や新聞・WEB サイトなどのメディ
アへの情報発信をしていくことが、新たな市場創造へつながると考えられる。
3. まとめ
本論文の目的は、マーケティングの見地から新たな市場創造としての理想的なホテルス
パを企画提案することであった。そのために、弊社のホテルスパにおける業務データおよ
びホテルスパ業界関係者からのディスカッションを分析し、企画提案として次のように取
りまとめた。
理想的なホテルスパ
~温泉効能・和ハーブなどのジャパネスク資源を
コンセプト
OMOTENASHIに反映させるホテルSPA~
ターゲット
女性中心からユニセックス・ユニバーサルへの市場創造
① エビデンス(効能の見える化)
プロダクト
② クロス・マーチャンダイジング(グローバル/ジャパネスク)
③ 画一的メニュー構成から、
セラピストを軸にしたヒューマニックメニューの創出
収益戦略
あくまで付加価値プライスを維持し、市場全体の戦略的ブランド向上
市場獲得のためのターゲットミックス・プロモーションミックス
(上層のスキミングに拘泥されず、ミドルクラスまで浸透させる)
プロモーション
①マスコミニケーション、新たなイメージ戦略
②特性を生かした、One to One マーケティング展開
③メンズ・夫婦プログラムの強調、体験型ギフトプログラムの活用
最後に…
服を脱ぎ少しの不安を抱きつつ身体を委ねると、次に感じるのは温かさと優しさ。肌に
触れる「温かな手」には、疲れを癒す包容力があると信じています。目では見ることの出
来ない精神的な安息感、これこそが身体に直接手を触れるオイルトリートメントの本質的
優れた部分であると私は考えます。もし自社のスパをご体験されたことが無いような方が
いらっしゃいましたら、レストランに脚を運ぶように、是非スパもご利用になられてみて
下さい。セラピストは皆自分自身の仕事に誇りを持っています。セラピストの労働環境が
向上すると共に、より多くの方にホテルスパの素晴らしさを知っていただくことが出来れ
ばと切に願います。
参考講義:横山文人氏 (2010) 「マインドマップを活用したマーケティング発想」
参考文献:健康メディア.com(2011)
「月刊 Diet Beauty」
参考)SPA マインドマップ
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