電子投票の法的規制

23 Nov 2004 第1回学際的セキュリティシンポジウム 23-A8
報告の概要
電子投票の法的規制
湯淺 墾道
(九州国際大学法学部)
2004年大統領選における各郡投票方式
パンチカード
DataVote(パンチカード)
n 2004年アメリカ大統領選挙における
電子投票とアメリカの投票制度
n 電子投票における「
段階論」
と実際
の障害
n 物理的監査証跡の必要性
n 導入した場合の問題点と課題
アメリカの選挙制度
【
州】
【
州】
選挙制度の策定権限
選挙制度の策定権限
【
連邦】
【
連邦】
紙
州憲法
連邦憲法(司法審査)
連邦法
マークシート光学スキャン
州法、州規則
Voting Rights Act of 1965
電子投票
カウンティに委任
Voting Rights Act of 1982
レバー式
混合
Source: Election Data Services (2004).
Regulation
Motor Voter Law
Help America Vote Act of 2002
1
わが国における電子投票導入
n
n
n
n
n
n
n
1999年7月 自治省「電子機器利用による選
挙システム研究会」設置
2000年8月 研究会中間報告
2001年6月 「e-Japan 2002プログラム 」で地
方選挙における電子投票導入を規定
2001年12月 電磁記録投票法公布
2002年2月 研究会報告
2002年2月 電磁記録投票法施行
2002年6月 岡山県新見市で実施
第1段階における障害
n
n
アメリカにおける多数の障害事例
¨ Diebold事件
わが国における障害事例
¨ 岐阜県可児市(
2003年7月20日)
n 全投票所で一時的に投票不能
n 一部有権者の複数投票発生
¨ 神奈川県海老名市(
2003年11月9日)
n 得票総数不一致
n 不明票(
約2,000票)の発生
「3段階論」
(研究会中間報告)
第3段階:
いわゆるインターネット
投票
第3段階:
いわゆるインターネット
投票
投票所での投票を義務付けず、
個人の所有する
コンピュータ
端末を
用いて
投票す
る段階
投票所での投票を義務付けず、
個人の所有する
コンピュータ
端末を
用いて
投票す
る段階
第2段階:
ネットワーク
接続の解禁
第2段階:
ネットワーク
接続の解禁
指定された投票所以外の投票所
指定された投票所以外の投票所においても投票
においても投票できる段
できる段階
階
第1段階:
スタンドアロン
第1段階:
スタンドアロン
選挙人
選挙人が指
が指定された投票所
定された投票所において電子投票機を用い
において電子投票機を用いて投
て投票
票する段
する段階
階
物理的監査証跡の必要性
n
必要性
¨ 第1段階ですら多くの障害が発生している(
第2、
第3段階ではさらに障害等が発生すると予想され
る)
¨ 憲法15条の保障する選挙権の重要性にかんが
み、有権者の権利保障の観点からは投票および
投票・開票過程をできるだけ可視的にすべき
¨ 物理的監査を可能とする監査証跡(
記録証紙)発
行が望まれるのでは?
2
物理的監査証跡導入のうごき
n
n
第1段階における障害の教訓
アメリカにおけるpaper record、paper trail導
入のうごき
¨障害への対応とrecount
n 連邦法(Help America Vote Act)
¨Paper trail
n カリフォルニア州
n ネバダ州
n ニューヨーク州 等
カリフォルニア州法における要件
n
n
カリフォルニア州選挙法改正
¨州務長官の認可のない電子投票機使用を
禁止(California Elections Code, ch.4,
et.sec.)
州務長官(Secretary of State)
¨ソースコード、脆弱性等を事前審査・
認可
¨既存のDRE方式投票機に対し、
Accessible Voter Verified Paper Trail
(AVVPAT)を義務づけ
アメリカ連邦法における要件
n
Help America Vote Act of 2002におけるpaperの
規定
¨ audit (audit paper)を規定(§301 (a)(2))
n “permanent
paper record with a manual
audit capacity” → Recountへの対応
n 有権者に対しpermanent
paper record の記
録前の投票変更・訂正権
n 有権者に対するtrail発行は義務づけず( →
改正の動き)
導入の問題点(1)
n
物理的監査証跡(記録証紙)発行時
¨選挙の秘密(
投票の秘密)の保持
n 発行時、発行後に秘密の確保が必要
¨投票の変更、訂正権
¨原本性の確保
¨有権者の保護
n 記録用紙発行が投票の強要・
買収等を
誘発しないか
3
導入の問題点(2)
n
物理的監査証跡(記録用紙)の保存の是非
¨どこに誰がどのようにして保存?
¨保存した場合の投票の秘密侵害の恐れ
n 判例
¨ 誰に投票したのかを取り調べてはならない(
最判
昭23・6・1)
¨ 投票用紙の差し押さえは違憲(
大阪地判堺支部昭
61・10・20)
¨ 投票用紙の差し押さえによる利益侵害はない(
最
判平9・3・28)
法的課題
n
有権者本人の権利の再構成
¨ 従来
n 選挙の効力に関する異議の申出(
公職選挙法
202条1項)、審査の申立て(202条2項)、選挙
無効訴訟(203条、204条)
n 有権者本人による投票の検証権は認めていな
い
導入の問題点(3)
n
選挙無効の訴え
¨ 電子投票における選挙無効を認める司法審査の
基準
n 選挙の自由公正が著しく
阻害(最判昭27・12・
4) → 電子投票機の障害による全投票所一
時的投票不能(可児市)は該当しないのか?
n「
選挙結果の異動」基準(最判昭29・9・24)
→ 物理的監査証跡による監査が可能であれ
ば基準の厳格化を行うべきではないか
n 現行法は選挙自体のやりなおしが 前提 →
Recount を命じる判決は可能か
おわりに
n 電子投票
¨「
人の知覚によっては認識することが
できない」方式による投票
¨スタンドアロン型でも規制の再検討が
必要
¨ 物理的監査証跡を認める場合
n 有権者による開示請求の是非と範囲
4