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限界線星食および二重星に関する研究

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限界線星食および二重星に関する研究
三重県立津高等学校SSC部
中野恵介
柴田大貴
川口幸輝
目次
1.はじめに・・・・・・・2p
2.観測方法・・・・・・・2p
3.観測結果・・・・・・・5p
4.考察・・・・・・・・・8p
5.まとめ・・・・・・・・13p
6.参考文献・・・・・・・13p
7.図・・・・・・・・・・15p
1
はじめに
月が天球上を運動する過程で後ろの恒星を隠す現象を「星食」という。特にその中でも恒
星と月の縁が接触するように通過していく現象を
「接食」
という。
2008 年 4 月 12 日(57AGem
)と 2009 年 3 月 30 日(ZC522 +23°483)に「接食」の※1限界線が学校の近くを通っている
ことがわかったので、校外の観測者と共同観測で行った。そして、恒星が食された時刻を正
確に測定し、観測した結果から月の輪郭の地形を推定し描いた。さらに、4 月 12 日に観測
した恒星は離角が小さい二重星であるので、二重星の離角とその位置関係についても調べ
た。
(ヒッパルコスカタログによると 57Agem の主星は光度 5.90 等、伴星の光度は 5.90 等)
図 1 星食の様子の模式図
観測方法
(1)観測地の決定
観測年表から限界線の緯度、経度を調べ、図2-1、図2-2の地図上に記入する。
限界線から+1” 、-1”の線を記入する
限界線付近で観測に適当な場所を探し、図2-1、図2-2のように決定する。
2008 年 4 月 12 日は観測点を限界線をはさんで 6 点定め、図2―1中の 6 ヶ所に別れて観
測を行った。
2
(2)撮影方法
ビデオカメラにマイコン※2GHS 時計の表示をタイムインポーズして時刻を録画できるよ
うにする。しかし、マイコン GHS 時計の台数に限りがあったので、数が及ばなかったビデ
オカメラに関してはマイコン GHS 時計の時間を観測の前後に録画して、ビデオカメラの内
部時計を補正する方法をとった。
望遠鏡に高感度 CCD(ワテック 100N)を接続し、恒星を追尾してビデオカメラで恒星の潜入、
出現を録画する。
(3)潜入、出現時刻の計測
ビデオをスロー再生させ、モニターで潜入、出現を確認した。
時刻の確定は、マイコン GHS 時計の時刻を同時に録画されているものはその時刻を読み取
った。しかし、マイコン GHS 時計の台数に限りがあったので、マイコン GHS 時計の時刻
を同時に録画できなかったビデオカメラについては以下のような方法で時刻を確定した。
ビデオカメラでの観測前後に録画されたマイコン GHS 時計の時刻と、ビデオカメラの内部
時計の差を測定し、それを補正値とする。次に、ビデオカメラの内部時計を用いて潜入、
出現の時刻を読み取る。ビデオカメラの内部時計は 1 秒単位であるので、秒表示の切り替
わるフレームから何フレーム目で潜入、出現が起こるかを調べ、30 分の 1 秒単位で測定で
きる。このようにして測定した時間と補正値を使って潜入、出現の正確な時刻を求めた。
観測結果(時刻はすべて JST)
上記の方法で求めた各ポイントでの潜入・出現時刻は資料1―1、1―2のとおりであっ
た。
考察
(1)月縁の推定について
月と星の見かけの距離が最も近くなる時刻が同じポイントを地図上に線で結んでみた(図
2―1の直線A、図2―2の直線B)ところ、図2―1では①から④ポイントは同一直線
上にあった。⑥ポイントだけその直線上になかったので、⑥ポイントと直線Aとの地図上
での距離を計り、比例配分で他のポイントとずれていた時間の分だけ補正する。
(⑤ポイン
トも一直線上になかったが、観測に失敗していて記録がないので補正は行わなかった。)
図2―2では、④ポイントは直線B上にあったが、⑤ポイントはその直線上になかったの
3
でのずれていた時間の分だけ補正する。(①から③ポイントに関しては恒星が通過したので
補正はしなかった。)
限界線から各地点の観測ポイントまで地図上で何 cm 離れているか計る。限界線と+1”の線
の地図上での距離を計り、各ポイントで星が通過する場所の平均月縁からのずれ角度θ(単
位”
)を求める。平均月縁に対する通過高度(月縁の山谷の高低により潜入、出現する)は、
みかけのずれ角度θ(単位 ”
)と地球と月の距離 R=36.96×104km を用いて、h=θ÷(360
×60×60)×2πR で求める。
図3
模式図
月の天球上の移動速度は 1 日に 13.5°であるから月は天球上を恒星に対して1秒間に
0.5625”移動する。これは、月面上の距離にして1秒間に 1.01km の動きとなる。
観測結果を方眼紙に③ポイントでの測定結果を y=0 として、
y 軸に各ポイントでの星の平均
月縁に対する通過高度をとり、各ポイントでの潜入から出現までの時間を実線で表す。こ
の部分が月縁の山の部分となる。各ポイントの結果から、月縁が明確な所は実線で表し、
潜入から出現までの不明確な所は点線で表した。
(図4―1、図4―2)
4
図4―1
月縁予想図(縦方向を 20 倍に強調)
図4―2
月縁予想図(縦方向を 20 倍に強調)
また、今回推定した月縁が地球から見た月のどの辺りにあたるのかを天文観測年表より求
めた。
①観測年表に載っている観測した日の※3W.A.から推定した月縁の緯度を求める。
②観測年表から、地球から見た月の平均的な中心経度と観測日の月の中心経度のずれが分
かる。このずれの分だけ、観測した月縁は平均的な月の経度90°からずれる。これを利
用して推定した月縁の経度を求めた。
5
W.A.
17.45°
11.00°
2008 年 4 月 12 日
2009 年 3 月 30 日
中心経度
+5.43°
-3.24°
接触点の緯度
+72.55°
+79.00°
接触点の経度
-84.57°
-93.24°
(+が中心経度から東、-が西を表している)
2008 年 4 月 12 日
2009 年 3 月 30 日
57AGem
ZC522 +23°483
(天文観測年表より)
(2)二重星について(2008 年 4 月 12 日に観測した恒星=57AGem)
二重星とは地球からみて恒星が並んで見えるものを言う。明るい方を主星、暗い方を伴星
と呼ぶ。(ヒッパルコスカタログによると 57Gem は二重星で離角は 0.1″以下)
第1ポイントと第4ポイントで撮影したビデオをパソコンに取り込み、AVI形式のファ
イルで保存する。
次に、※4Limovie を用いて、取り込んだビデオに映った星の潜入、出現に伴う明るさの変
化をグラフ(図7)に表し(縦軸が明るさ、横軸が時間)、フィッティングをかけて明るさ
の変化の近似を求めた(図7中の赤色のライン)ところ、単独の星が隠れる場合と同じよ
うな変化の様子であった。しかし、第1ポイントの第1出現、第2潜入、第4ポイントの
第1出現では他とは異なる光度変化を示した。これは観測星が二重星である為であると考
えられるが、2つの星の光度変化を明確には分離できないので、以下の伴星存在領域の解
析には用いなかった。
先に推定した月縁の図(縦横比1:1として地表の傾斜を実際と同じにしたもの)を用い
6
てそれぞれの潜入、出現地点の星の進行方向に対する山の傾斜を推定し、傾斜の傾きを直
線で図に写した。星の進行方向に対する月縁の傾きから主星に対する伴星の存在範囲を推
定する。第1ポイントの第1出現、第2潜入、第4ポイントの第1出現以外の潜入、出現
に関して主星、伴星が 0.1 秒(ビデオで3フレーム)以内の時間差で潜入、出現していると
推定された。時間差 0.1 秒は、見かけの角度 0.056”に相当する。第 1 潜入における伴星の
出現範囲を簡略化すると、図5中の色のついている範囲だと考えられる。
図5
第 4 ポイントの第1潜入における伴星の存在領域の簡略図
このように描いた図をパソコンに取り込み、フォトショップを用いて描き直した。
それぞれの潜入、出現毎の存在範囲図を統合し、重なる範囲(図6中の色がついている部
分)に伴星が存在すると考えられる。
7
図6
第 4 ポイントでの各潜入・出現から推定される伴星の存在領域
まとめ
今回の観測により、限界線星食により月縁の凹凸を明らかにすることが出来ることを知っ
た。また、二重星を二つの恒星にはっきりと区別することはできなかったが、伴星が存在
する範囲を推定することができた。ただ、今回は二重星の離角が小さく二つの恒星を分離
することが困難であったことが残念だった。次の機会にはより精度良く月縁の形を推定し
たい。また、この手法で二重星の主星・伴星の位置を決定可能であることを確認したい。
※1 限界線について
平均月縁と恒星が接する様子が地球上で見られる地点を結んだ線。平均月縁と実際の月縁
では形が違うので、実際は距離にして±1 秒ほど限界線から離れたところからでも観測が出
来る。平均月縁とは、月縁の山と谷を平均し、月縁を円に見立てたもの。
※2 マイコンGHS時計について
GPSの電波を利用して簡単に精密な時刻を得ることのできる時計。
8
恒星の潜入、出現の時刻を正確に測定するために使用した。
(せんだい宇宙館 早水勉氏考察)
※3 W.A.について
Watts Angle、ワッツ角とは、ワッツの月縁図において使われている方向角。月の自転軸か
ら反時計方向に測った角に相当する。
※4 Limovie について
キャプチャーしたビデオに記録された星の光度変化を定量的にとらえ、解析するソフトウ
ェア。
(宮下和久氏 作成)
資料1―1
2008 年 4 月 12 日(57AGem)
第1ポイント
三重県津市片田田中町
東経 136°27’ 17”
北緯 34° 42’
59”
標高 10m
世界測地系
潜入 20:53:33.83―出現 20:53:37.37
潜入 20:53:38.55―出現 20:53:40.54
潜入 20:53:48.63―出現 20:53:57.07
潜入 20:53:58.03―出現 20:54:00.23
潜入 20:54:09.27―出現 20:54:13.27
(観測機材:D=102mm FL=920mm 屈折鏡筒+WAT-100N、赤道儀による自動追尾、録画
SONY DV ビデオ SONY DCR-PC300)
第2ポイント
東経 136°27’ 25”
北緯 34°42’
91”
標高 10m
世界測地系
潜入 20:53:33.33―出現 20:54:03.03
潜入 20:54:08.04―出現 20:54:13.98
(観測機材:口径 12.7 センチ F11.8 マクストカセグレン(ビクセン MC127L)+WAT-100N
赤道儀(運転時計付き)
、録画 SONY DV ビデオ DCR-PC350)
9
第3ポイント
東経 136°27’ 09”
北緯 34°42’
44”
標高 10m
世界測地系
潜入 20:53:32.62―出現 20:54:28.49
潜入 20:54:38.12―出現 20:54:38.79
(観測機材:D=108mm FL=816mm 屈折鏡筒+2.4 倍バーローレンズ+WAT-100N、赤道儀
による自動追尾、録画 SONY DV ビデオ DCR-HC1000)
第4ポイント
東経 136°27’ 13”
北緯 34°42’
35”
標高 10m
世界測地系
潜入 20:53:29.83―出現 20:54:32.89
潜入 20:54:35.79―出現 20:54:40.67
潜入 20:54:46.21―出現 20:54:49.91
(観測機材:D=108mm FL=816mm 屈折鏡筒+2 倍テレプラス+TGV-M、赤道儀による自
動追尾、録画 SONY DV ビデオ DCR―HC30)
第5ポイント 操作ミスにより観測できず。
第6ポイント
東経 136°26’ 43”
北緯 34°42’
26”
標高 10m
世界測地系
潜入 20:53:17.92―出現 20:54:59
(観測機材:D=102mm FL=1300mm 屈折鏡筒+WAT―100N、赤道儀による手動追尾、録
画 SONY DV ビデオ DCR―TRV30 赤道儀による手動追尾)
10
資料1―2
2009 年 3 月 30 日(ZC522 +23°483)
第 1 ポイント
東経 136°29’ 16”
北緯 34°30’ 23”
標高 35m
恒星は通過して潜入せず
(観測機材:D=108mm FL=816mm 屈折鏡筒+2.4 倍バーローレンズ+WAT-100N、赤道儀
による自動追尾、録画 SONY DV ビデオ DCR-HC1000)
第 2 ポイント
東経 136°29’ 26”
北緯 34°30’ 7”
標高 45m
恒星は通過して潜入せず
(観測機材:D=108mm FL=816mm 屈折鏡筒+2.4 倍バーローレンズ+WAT-100N、赤道儀
による自動追尾、録画 SONY DV ビデオ DCR―HC30)
第 3 ポイント
東経 136°29 ’ 6”
北緯 34°30’ 6”
標高 35m
恒星は通過して潜入せず
(観測機材:口径 12.7 センチ F11.8 マクストカセグレン(ビクセン MC127L)+WAT-100N
赤道儀(運転時計付き)
、録画 SONY DV ビデオ DCR-PC350)
第 4 ポイント
東経 136°29’ 13”
北緯 34°29’ 57”
標高 52m
潜入 20:35:15.3―出現 20:35:20.53
(観測機材:口径 10 センチ F10 カセグレン+WAT-100N 赤道儀(運転時計付き)
、録画
SONY DV ビデオ DCR-TRV18)
第 5 ポイント
11
東経 136°29’ 14”
北緯 34°29’ 45”
標高 46m
潜入 20:35:10.87―出現 20:35:22.43
潜入 20:35:23.20―出現 20:35:28.57
潜入 20:35:29.07―出現 20:35:29.50
潜入 20:35:33.57―出現 20:35:52.07
潜入 20:35:54.80―出現 20:35:59.30
潜入 20:36:00.03―出現 20:35:00.33
潜入 20:36:00.43―出現 20:36:02.17
潜入 20:36:05.77―出現 20:36:08.90
(観測機材:D=102mm FL=1300mm 屈折鏡筒+WAT―100N、赤道儀による手動追尾、録
画 SONY DV ビデオ DCR―TRV30 赤道儀による自動追尾)
参考文献
「天文観測年表 2008 天文観測委員会編」
「天文観測年表 2009 天文観測委員会編」
地人書館
「国立天文台報 2001 年 9 月 第 5 巻第 3 号 GPSによる凡庸時刻保持装置の開発」
相馬充(国立天文台、位置天文・天体力学研究系)・早水勉(せんだい宇宙館)・下代博之
(生石高原天文台)
「国立天文台方報 第 9 巻 1-26 ビデオ画像用光量測定ソフトウェア Limovie の開発と
星食観測への応用」
宮下和久・早水勉・相馬充
「国立天文台技術系職員会議主催技術シンポジューム
価実験」
山崎利孝・相馬充・辰巳大輔・早水勉・下代博之
「天界
第 993 号(89 巻)、第 985 号(88 巻)」
大阪府・河内長野市 東亜天文学会
12
星食観測用GHS時計の運用と評
図2-1
観測地点周辺地図
2009 年 3 月 30 日は観測点を限界線をはさんで 5 点定め、図2―2中の 5 ヶ所に別れて観
測を行った。
13
図2-2 観測地点周辺地図
14
図7-1 2008 年 4 月 12 日 57AGem の第 1 ポイントにおける各潜入・出現における光度
変化
第 1 潜入
第 1 出現
第 2 潜入
第 2 出現
15
第 3 潜入
第 3 出現
第 4 潜入
第 4 出現
16
第 5 潜入
第 5 出現
17
図7-2 2008 年 4 月 12 日 57AGem の第 4 ポイントにおける各潜入・出現における光度
変化
第 1 潜入
第1出現
第 2 潜入
第 2 出現
18
第 3 潜入
第 3 出現
θ
19
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