SBAS-GBAS整備状況資料

航空局におけるGBAS・SBASの整備について
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
1.GBASの概略
GBAS
(Ground-Based Augmentation System:地上型衛星航法補強システム)
地上からGPS(Global Positioning System)の精度や安
全性を向上させる補強信号や航空機の進入降下経路情
報を送信し、航空機を安全に滑走路へ誘導するためのシ
ステムです。
GPS衛星
曲線精密進入
補強情報
機上装置
直線精密進入
補強情報
基準局受信機
VHFデータ送信装置
データ処理装置
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2.GBASの特長
GBASの有する特徴により、ILSとは異なる新たな運航の可能性が広がります。
複数滑走路での使用
GBAS地上装置1式で、複数の滑走路端に対する進入方式の提供が可
能です。
CAT-I GBASは既にSARPs化されており、各国ではGBAS地上装置1
式で複数滑走路に対する進入方式の提供が開始されています。
制限区域不要
ILSと異なり制限区域が不要となることから、GBAS運航機材着陸時に
は、Holding Line を滑走路近傍とすることが可能となり、タキシング時間
の短縮が期待されます。
曲線精密進入
進入経路に曲線経路を組み合わせることにより、障害物を回避した経路
設定が可能となれば、騒音軽減、経路短縮が期待されます。
国際的には、現在、RNP to GLSによる曲線進入方式の導入を目指して
おり、将来的にはGLSのみによる曲線進入方式(TAP)を目指すこととな
ります。
可変接地点等
一式で複数の進入経路設定が可能となることから、技術的には同一滑走
路に複数の接地点等を設定することも可能であり、将来的に導入が実現
した場合には、騒音低減や後方乱気流間隔の短縮への寄与が期待でき
ます。
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3.GBASの国際動向
精密進入(カテゴリ I GBAS)運用中
ブレーメン空港
ドイツ
平成24年2月
ヒューストン空港
米国TX州
平成24年4月
ニューアーク空港
米国NJ州
平成24年9月
マラガ空港
スペイン
平成26年5月
シドニー空港
オーストラリア
平成26年5月
フランクフルト空港
ドイツ
平成26年9月
チューリッヒ空港
スイス
平成26年10月
ロシア国内(6)空港
ロシア
平成27年度
GBASによる高度な運航(Increased Glide Slope)
高角度進入による騒音低減効果の検証や、効率的な降下角設定の実
現性について評価・検討を実施中
IGWG-17 Boeing プレゼン資料より
カテゴリ I GBAS設置済み(運用準備中)
金浦空港
韓国
評価中
上海空港
中国
評価中
天津空港
中国
評価中
チェンナイ空港
インド
評価中
リオデジャネイロ空港
ブラジル
評価中
ロシア国内(75)空港
ロシア
評価中
GBASによる高度な運航(KRNP to GLS)
RNP(RFレグ)とGLSを組み合わせたRNP to GLS進入方式設定基準
の検討をICAO専門パネルで実施中
欧米では、RNP to GLSの導入に向けた評価・検討を実施中
カテゴリ I GBAS計画(整備中)
ヒースロー空港
英国
整備中
メルボルン空港
オーストラリア
整備中
パース/ブリスベン空港
オーストラリア
調達計画中
JFK/LGA/SEA空港
米国
調達計画中
ドバイ空港
UAE
調達計画中
クアラルンプール空港
マレーシア
調達計画中
ダカール空港
セネガル
調達計画中
シャルルドゴール空港
フランス
調達検討中
IGWG-17 Air Services Australia
プレゼン資料より
IGWG-17 United Airline
プレゼン資料より
4.国際動向(機上装置)
GBAS対応機材搭載状況
機体メーカー
Boeing
Airbus
機種
B737NG
B737max
B787
B747-8
B777-X
A320 Family
A380 Family
A330 Family
A340 Family
A350 Family
IGWG-17 Boeingプレゼン資料より
標準/オプション
オプション
標準搭載を予定
標準
標準
標準
オプション
オプション
オプション
オプション
オプション(SBASとセット)
IGWG-17 Airbus プレゼン資料より
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5.日本におけるGBAS整備
CARATSではGBASは空港のアクセシビリティを改善する有効なツールであることから、国
際動向や飛行方式の開発状況、装備動向を見つつ段階的に導入することを意思決定
航空局としてGBAS初号機を2020年度中のCAT-I運用開始を目指し、羽田空港へ整備するこ
とを決定
高カテゴリーGBASについては、国際標準化動向と装置開発状況を勘案し今後導入の検討を
進める
羽田へのGBAS設置の理由
最もGBAS搭載機が多く運航している
4つの滑走路を有し、将来的にGBAS
により高い便益が期待される
将来的にはGBASの高度な運用が空港
の機能強化へ繋がる可能性
本邦エアライン殿のGBAS対応機
6.GBAS導入の考え方
【GBAS整備フェーズの想定】
【フェーズ1 (初期的導入段階)】
【フェーズ2 (段階的導入段階)】
評価運用のための試行的導入
(CAT-I直線進入(ILS-Look alike))
対応機就航空港への導入
【フェーズ3 (本格的導入段階)】
主要空港への段階的展開
RNP to GLS等高度運航の導入
CAT-III進入の試行的導入開始
H35(2023)年頃
CAT-IIIGBASの展開
ILSからGBASへの置換の検討
H45(2033)年頃
GBAS導入空港の選定
GBAS対応機が就航している(又は就航見込みがある)こと
→ 本邦エアラインにおいて現時点のGBAS対応機はB787及びB747-8
GBASを用いた進入方式の設定が可能であること
→ 現在GBASで設定可能な進入方式はILSと同等の直線進入のみ
→ 地形、障害物件の評価、周辺空域の状況を勘案
→ 精密進入設定のためには着陸帯(300m)が必要
GBAS導入による便益が見込めること
→ 非精密進入側の最低気象条件緩和による就航率向上
→ 経路短縮
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7.SBASの概略事後対応から事前予防対応へ
SBAS
(Satellite Based Augmentation System : 静止衛星型衛星航法補強システム)
静止衛星からGPS(Global Positioning System)の精度や、安全性を向上させる補強信号
を提供し、洋上エンルート~滑走路へ着陸する航空機を安全に誘導するためのシステムです。
GPS衛星
静止衛星
航法信号
アップリンク信号
SBAS信号
監視局
アップリンク局
観測信号
処理装置
Google earthより
事後対応から事前予防対応へ
8.世界のSBAS(運用中)
WAAS(米国)
EGNOS(欧州)
(Wide Area Augmentation System)
(European Geostationary Navigation Overlay Service)
運用主体:米国連邦航空局(FAA)
米国本土、アラスカ、メキシコ、カナダで施設性能LPV-200を達成
2016年4月現在、4257本のLP/LPV方式を設定
GPS-L1,L5に対応したDFMC-SBASを開発中
運用主体:欧州連合(EU),欧州委員会(EC)
欧州内の各国と順次EGNOS利用協定を
締結し、エリアを拡大している。
2015年9月、LPV-200のサービス開始
2016年4月シャルルドゴールに1本目の方式を設定
LPVを順次導入し、利用頻度の低いILSは
更新しない計画
Eurocontrolにおいて独立した監視機能を
構築(EDCN)
2016年4月現在、261本のLPV方式を設定
年度内に340本の設定を目標としている。
GPS,GALILEOの2周波に対応したDFMCSBASを開発中。
MSAS(日本)
GAGAN(インド)
(MTSAT Satellite-based Augmentation System)
(GPS Aided GEO Augmented System)
運用主体:日本 航空局
施設性能ER/NPAで運用中
2015年12月からMTSAT2
1機体制へ移行
2020年にMTSATから準天
頂衛星へ移行予定
電子研がDFMC-SBASの
研究を開始(H27~)
運用主体:インド空港公社(AAI) & インド宇宙研究機関(ISRO)
2014年2月に施設性能NPAで運用開始
インドが独自開発した最新の電離圏アルゴリズムを搭載し、電離圏の活発な
低緯度地域においても高精度で安定した測位性能を提供
2015年4月に施設性能APV-1へ移行
【エリア拡大のシミュレーション】
中東、東南アジア地域へのエリア拡大を計画
9.世界のSBAS(整備・計画中)
事後対応から事前予防対応へ
SDCM(ロシア)
(System of Differential Correction and Monitoring)
運用主体:ロシア
現在試験電波発射中、2020年までに運用開始を予定
補強対象のコア衛星としてGPS,GLONASSを予定
SAFIR(アフリカ地域)・・・計画中
(Satellite navigation service for AFrIca Region)
運用主体:EGNOSアフリカ
EGNOSベースのSBASでアフリカ地域
全体をカバーする予定
2023年頃、NPA~LPV-200のサービス
を提供予定
KASS(韓国)・・・計画中
SBAS搭載の動向
(Korean Augmentation Satellite System)
運用主体:韓国国交省
2019年頃、オープンサービス開始予定
2022年頃、静止衛星2機体制による本運用を予定
(LPV-200の提供を計画)
機体メーカー
機種
標準/オプション
ボーイング
全機種
未対応
エアバス
A350
オプション(GBASとセット)
A320/330ファミリー
搭載の検討中
三菱航空機
MRJ-70,90
標準
ATR
ATR-42/72-600
標準
ボンバルディア
Cシリーズ
標準
CRJシリーズ
オプション
DCH-8-Q400シリーズ
標準
ERJシリーズ
オプション
E-JETシリーズ
オプション
228
標準
BD-SBAS(中国)・・・計画中
(BeiDou SBAS)
運用主体:中国
中国独自にSBAS開発中
補強対象のコア衛星としてGPS、
BeiDouを予定
エンブラエル
ドルニエ
※各社HP及び関係HPで調査した結果によるもの。
ボーイングはADS-BのみSBAS対応予定との情報もある。
(FAAは2024年からADSのセンサーとしてSBASを義務化が検討されている
アビオニクスメーカーとしては、ロックウェルコリンズ、ハネウェル、ユニバーサルが主体
事後対応から事前予防対応へ
10.次期MSASの概要
○次期MSASは内閣府が整備する準天頂衛星システムを利用して2020年からSBASサービスを提供予定。
準天頂衛星を利用したSBASのイメージ
GPS
航空局
SBASサービスの提供
内閣府
準天頂衛星
(静止衛星)
準天頂衛星システム
航法信号
主管制局
SBAS装置
SBAS運用
追跡管制局
SBAS信号
SBAS信号
観測信号
常陸太田・神戸
観測信号
監視局
常陸太田
○内閣府が整備する多数の監視局により性能が向上する見込み
【次期MSASの監視局配置・APV-Ⅰ性能】
【現行MSASの監視局配置・APV-Ⅰ性能】
監視局:6局
最内の点線で囲われた範囲が
Availability90%以上
最内の青色の範囲がAvailability99.9%以上
監視局:13局
※現行MSASベースのシミュレーション結果
(GPS27機、電離圏静穏時)
※QZS-ISより
※現行MSASの認証試験時における実性能データ
11.将来計画
事後対応から事前予防対応へ
○次期MSASは今年度から整備を開始し、2020年4月からの運用開始を予定しています。
○宇宙基本計画では平成35年を目処に準天頂衛星の7機体制化を予定しています。
内閣府においては、これに向けた検討を開始しており、7機体制におけるサービスの検討を行なっております。
(平成29年度から7機体制整備に着手予定)
【次期MSASに関連する整備工程案】
H27
(2015)
H28
(2016)
H29
(2017)
H30
(2018)
H31
(2019)
H32
(2020)
H33
(2021)
H34
(2022)
H35
(2023)
H36
(2024)
H37~
(2025~)
【1.準天頂衛星システムの開発・整備・運用】
宇宙
基本
計画
工程表
(本文該当箇
所)
4.(2)① i)
測位衛星
内閣府
の動向
1機体制運用(初号機「みちびき」の維持運用)
4機体制の運用
2~4号機体制の開発整備
打ち上げ▲ ▲ ▲
(GPSと連携した測位サービス)
初号機「みちびき」後継機の開発整備
打ち上げ▲
7機体制に向けた追加3機の開発整備
7機体制の運用 (持続測位)
打ち上げ▲
▲
▲
【2.準天頂衛星システムの利活用の促進等】
準天頂衛星を利用した航空用の衛星 航法システム(SBAS)による
測位補強 サービスの検討・整備 [内閣府、国土交通省]
初号機 調査
準天頂衛星を利用した航空用の衛星航法 システム(SBAS)による
測位補強サービスの 運用 [内閣府、国土交通省]
初号機 更新整備
追加3機 調査
5~7号機 整備
基本設計
【MTSATによるSBASサービス】
MTSAT 1機体制(1機・2信号体制)
2機体制
CAB
SBAS
整備
MT-2退役▲
▲MT-1R退役
【準天頂衛星によるSBASサービス】
要件調査
準天頂衛星対応SBAS整備
次期MSASサービス(準天頂衛星)
(静止衛星1機・1信号体制 1PRN/ER-NPA)
調整・試験電波(PRN187)
CARATS
LP/LPV
OI-12
国際動向
★KASS(韓国SBAS)
★BD-SBAS(中国SBAS)
★WAAS
2周波対応(GPS-L1,L5)
★EGNOS
MCMF対応(GPS,GALILEO2周波)