ディスプレイの反射防止 (AR:Anti Reflection)による 眼精疲労の低減効果 三宅みのり※1 野島孝之※2 松本幸裕※1 坪田一男※1 ※1東京歯科大学市川総合病院 ※2日本油脂株式会社化成品研究所 背景 zVDT(visual display terminal )作業に おける眼精疲労は調節障害や ドライアイが原因とされている。 zドライアイ患者では瞬目回数(frequency of blink: 以下FB)と瞬目時間(blinking time: 以下BT) は正常者と比べて有意に増加す ると報告されている。 1 緒言 • VDT作業時における眼精疲労への対策として人 工涙液の頻回点眼、モイスチャーエイドなどの保 護眼鏡、涙点プラグなどの他、湿度の管理、静 電気防止などの作業環境の整備が重要とされて いる。 • ディスプレイの視認性と眼精疲労(ドライアイ)の 関係を調べる為、ディスプレイの 反射防止(Anti-reflection:以下AR)の有無による 瞬目の変化を測定し、自覚症状とともに検討 し た。 対象 両眼の裸眼視力が0.7以上 ドライアイを認めない z11名(男性7人、女性4人) z年齢25∼44歳(平均 29.5歳) 2 方法(1) 液晶ディスプレイの前面に反射防止フィルムを セットした状態(ARあり)としていない状態(ARなし)で、 35 分間ゲームを行い、 ゲーム前、ゲーム中、ゲーム後の FBとBTを測定した。 瞬きの測定は、ゲーム前、ゲーム中、ゲーム後、それぞれ 5分間測定を行い平均した。 また、被験者には測定していることを告げずに行った。 FBとBTの測定は 注視点解析装置 IView®(独SMI社)を使用 被験者の垂直瞳孔径から判断 Diam H Diam V 瞬き判定 ある時間の垂直瞳孔径の大きさが、直前に記録された 瞳孔径の85%以下になった場合を瞬目と判定 3 方法(2) ゲーム中は被験者の前方50cmの位置に設置した 液晶画面でゲームを行っているときの状態を測定し た。 ゲーム前・後は被験者の前方3.7mの位置に設置し たホワイトボードを見ているときの状態を測定した。 3.7m 65 cm 50 cm 壁 ホワイトボード ゲーム中 ゲーム前・ゲーム後 4 ARありのディスプレイ: リアルック8201UV(日本油脂(株)製)を貼りつけた MS樹脂版(厚さ2mm) ARなしのディスプレイ: MS樹脂板(厚さ2mm) MS樹脂板 反射防止処 ディスプレイ画面 ARなし ARあり 5 自覚症状は眼精疲労度を0∼100までとし、 被験者自身がゲーム前後に評価 結果(1) 瞬 F 目 B瞬 回 目 数 数 ( 回 / 分 ) 瞬目回数(FB:frequency of blink) ※P<0.05 40 35 30 25 20 15 10 5 0 ゲーム前 ゲーム時 T検定 ゲーム後 ※ ARなし ARあり ARなしで、ゲーム後のFBがゲーム前より有意に増加 6 結果(2) 瞬目時間(BT:Blinking Time) 0.30 ※※ ゲーム前 ゲーム時 ※※P<0.05 T検定 ゲーム後 B 0.25 T 0.20 ( 0.15 秒 0.10 ) 0.05 0.00 ARなし ARあり ARなしでは、ゲーム後のBTがゲーム前より有意に増加 結果(3) 自覚症状の変化 100% 90% 80% 疲 70% 労 60% 度 50% ( 40% % 30% ) 20% 10% 0% ※※※ ARなし ※※※P<0.05 T検定 ゲーム前 ゲーム後 ARあり ARありの方が有意にゲーム後の眼精疲労度が低い 7 結果のまとめ • ARフィルムを用いることでディスプレイの 反射を低下させることができた。 • ARなしの場合、FBおよびBTは増加してお り、ARありの場合に比べ著明にドライアイ の状態を呈していた。 • 自覚症状はARありで有意に改善を認めた。 結論 • ARフィルムは眼精疲労の低減に有用である。 8
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