今回、手術した腕(脚)むくみの症状などは何もありませ んが、“リンパ浮腫”の事を気にする必要がありますか? 手術時にリンパ節郭清をすると、手術をした方の腕(脚)から心臓へリンパの帰 る道の多くが使えない状態になります。この道は残念ながら手術前の状態と同等の 状態に回復することはできません。 現在、自覚症状が出ていないのは、損傷を受けずに済んだリンパ管が必死で働い ているからです。例えば、旅行や家族の介護、葬式等、疲労や使い過ぎが原因でリ ンパ菅の許容量を超え、腕(脚)がむくんでしまう事があります。 日常生活に気を配り、むくみのない状態を維持することが大切です。 まだ、自覚症状はないのですが、 ストッキング(スリーブ)を使用したいです。 ストッキング(スリーブ)の使用を考える前に、今の自覚のない良い状態を維 持していく為に、あなたの日常生活を振り返りましょう。 *あなたの下着は体に合っていますか? *また、手術した腕や脚を部分的に締め付けるような衣服を着ていませんか? *皮下脂肪が増えることも(肥満)もリスクファクターです *手術側の脚(腕)を動かさずに同じ姿勢を長く続けていませんか? (会議、長時間のバス旅行など) 日常生活を整え、それでも症状が強くなるようなら、ストッキング(スリーブ) の着用を考えましょう。 リンパ浮腫には「マッサージ」が良いと聞きましたが、近 くのお店でマッサージを受けてもいいですか? また、自宅で空気圧マッサージの器械を使用してもいいで すか? 指圧マッサージや美容目的で行われるリンパマッサージは、基本的に健康な 人を対象にしています。手順や圧の強さが、リンパ浮腫に対するリンパドレナ ージとは異なるため、リンパ浮腫の部位に対して行うのは適切ではありません。 但し、リンパ浮腫を起こす可能性のない部位でしたら美容目的のマッサージ を受けることは可能です。 また、空気圧マッサージ器のリンパ浮腫に対する効果は検証されていません。 セルフマッサージは 1 日に何回くらい行ったらいいです か?毎日続けなくてはいけませんか? 毎日セルフマッサージを行う方が良いかどうかは、あなたの体が教えてくれ ます。試しに 1 日サボってみてはどうでしょうか。その翌日、手術した側の腕 (脚)がだるく重苦しい、にぶい痛みがあるなど自覚症状が強くなるようなら 毎日行った方がいいでしょうし、何ともなければ、1 日くらいマッサージを行 わなくても大丈夫なのでしょう。 日々のセルフケアは、セルフマッサージをする事だけではありません。 *体に合った下着を着ているか *足にあった靴を履いているか *寝不足になっていないか *疲れをため込んでいないか *寝るときの姿勢に無理はないか *腕のだるさが翌日も取れないほどの力仕事をしなかったか など、リンパ浮腫の悪化につながる生活習慣があれば修正をする事が大切です。 上肢にリンパ浮腫がありますが、重いものを持たない方が いいでしょうか?また、どれくらいの重さの物なら持って も大丈夫でしょうか? ○○kgなら大丈夫とは言えません。重いものを持つことだけに限らず、手術 した側の腕の使い過ぎがリンパ浮腫のリスクにつながります。 リンパ浮腫の初期症状として、腕のだるさや鈍い痛みがありますので、どれ位 の負荷をかければ腕が重くなるのか、また、どのようなケア、どの程度の休息を とれば楽になるのかを、試行錯誤しながら、自分で見つける必要があります。 手術した側の腕(脚)には傷をつけないようにと言われま したが、毎日家事をやっていると、どうしても傷つくこと があります。どうしたらよいでしょうか? 確かに、日常生活の中ではどんなに注意していても手術した側の手指(脚) をうっかり傷つけてしまう事はあるでしょう。しかし、手術を影響を受けた腕 (脚)は、傷がつくことによって感染しやすくなり、「蜂窩織炎」と呼ばれる 炎症を起こす事があります。また、蜂窩織炎がきっかけでリンパ浮腫を発症し てしまう場合もありますので、傷をつけないように保護することはとても大切 です。もし、傷が出来てしまったら、傷口を流水できれいに洗い、しっかりと 消毒して絆創膏で保護をし、回復するまで観察しましょう。 蜂窩織炎とは、どんな症状ですか? また、蜂窩織炎になった場合、どうしたらいいですか? 蜂窩織炎になると手術した側の腕(脚)に発疹が出たり、赤くはれたりしま す。それと同時に 38 度以上の発熱があります。蕁麻疹と勘違いする場合もあ りますが、発疹やはれや全身に出るのではなく手術した側の腕(脚)に限られ ます。また熱が上がりますが、風邪と違って咳や鼻水は出ません。 傷から感染して起きる場合もありますが、傷がなくても疲労が原因で起こる場 合もあります。 蜂窩織炎になった時は発疹やはれが引き、熱が下がるまではセルフマッサー ジや圧迫を一切中止し、はれた腕(脚)を心臓より高くして安静にし、熱があ る場合は患部を冷やしましょう。必ず病院を受診しましょう。主治医が必要だ と判断すれば抗生物質が処方されます。 リンパ浮腫の治療に保険は利きますか? 今のところ、手術を受けた病院で退院前に医師または医師の指示により看護 師、理学療法士が患者さんに対して行うリンパ浮腫の予防指導料は有料ですが、 保険がききます。また、ストッキング、スリーブ、包帯が治療上必要になった 場合、加入している保険から購入費用が療養費として払い戻される制度があり ます。 あいにく、リンパ浮腫の治療(複合的理学療法)に対しては、まだ保険が適 応になっておらず、治療する施設によって費用が異なるのが現状です。
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